【書籍化】大司教の権力を悪用して純真無垢な聖女とセックスしたら、毎晩イチャラブご奉仕されるようになった話 作:月見ハク
目の前に、黒髪の少女が立っていた。
まだあどけなさの残るその容貌は息をのむほどに美しい。
「マ、マイと申します。ここでお世話になっております」
執務室の扉の前で、緊張に顔を強張らせている。
「君は今いくつだね?」
「えっと……十一になりました」
これは、初めてマイと会った場面だ。
夢、か。
確か俺は、教会を襲撃してきたゴーゼ司教を罠に嵌めて倒し、聖域の中で、自分を責めるマイを慰め、彼女に支えられながら温室を出ようとして……。
強烈な魔力枯れで、意識を失った。
だからこれは眠っている俺が見ている夢だ。
「――そうか。しっかり励みなさい」
夢の中の俺が柔和な笑みを浮かべる。
「は、はいっ、大司教さま」
幼ないマイが、金色の瞳を輝かせて屈託なく笑った。
「神殿の暮らしには慣れたか?」
「あ、はい、ティア姉さま……いえ聖女様がたくさん面倒を見てくれて」
ふんわりとした笑顔は、聖女に見合う慈愛と清廉さを感じさせる。だが、どこか借り物のようにも思えた。
皆を安心させるために無理をしているような。俺と同じように、お手本を張り付けたような笑顔だ。
「マイ、君はどうして聖女になりたいのだ?」
ふと気になって質問を重ねる。
マイの隣に立つロレンティアが目を見開く。俺がここまで初対面の聖女見習いに興味を持ったことがなかったから、驚いているのだろう。
マイは一瞬真顔になってから、まっすぐに俺を見据えた。
「力が……みんなを守る力がほしいんです」
それは、聖女を目指すにはあまりに欲深い望みだ。守るというのは一見真っ当な理由に思えるが、戦う力を欲するのと同義でもある。
それは全てを慈しみ、赦し、愛を注ぐ聖女の心とは相反する。
だが。
「ああ、君ならきっといい聖女になれるだろう」
俺は不思議な高揚感に包まれていた。
マイの眼差しの奥に宿る意思はとても高潔で、魅力的に感じたからだ。
思わず小さい黒髪をポンポンと撫でる。
すると彼女は初めて満面の笑みを浮かべた。その笑顔はこれまで見たどの聖女よりも優しさと強さに満ちていて。
俺は生まれて初めて心から、欲しいと思った。
ゆっくりと意識が浮上していく。
まぶたを開けると、夢の中よりも数段美しく成長したマイがいた。
目覚めた俺を見て、驚いたような、安堵したような表情を浮かべている。やがて彼女の金色の瞳が細められる。
「おはようございます、大司教さま」
「おはよう、マイ」
思わずその美貌に触れようとして、体が重いことに気づく。
背中が柔らかいものに沈んでいる。仰向けでベッドに寝ているようだが初めての感触だ。
掛かっているシーツの下、俺は全裸で眠っていた。
見上げる天井は高く、ステンドグラスから虹色の光彩が降り注いでいる。
「ここは……どこだ?」
「
ベッドの横に座っているマイが、安心させるような声色でささやく。
「聖衾……」
噂で聞いたことがある。
彼女たちが暮らす別棟の奥に、聖女しか立ち入れない秘密の場所があると。
ここがその場所なのだろうか。
ふとマイのほうを見て、格好に驚く。
彼女は純白のシルクの布を体に巻き付けただけの、あられもない姿だった。
布越しに魅惑的な凹凸が浮き出ているから、おそらく布の下は全裸だろう。
「その格好はどうした?」
「あ、えとっ……処置をするのに必要で」
「処置?」
「はい、大司教さまは重度の魔力枯れだったので、ティア姉さまが特別の処置が必要だと。それで、ここに連れて来たのです」
「どういう場所なのだ?」
「その……聖女が特別な治癒を行う場所です」
どうもさっきからマイの説明が回りくどい。
頬を真っ赤に染めている様子から、その処置というのは相当に恥ずかしいもののようだ。
「マイ、特別な治癒について教えてくれないか」
「ぇっ……」
彼女が肩をビクつかせて硬直する。「あ」「えっと」と目を泳がせている。
こんなに慌てふためくマイを見るのは初めてだ。嗜虐心に似た感情が沸々と湧いてきてしまう。
「大司教として知っておく必要がある。詳しく説明しなさい」
低い声で言うと、彼女は観念したように目をつぶった。
「あの、ティア姉さ……ロレンティア様から教えてもらって、私もこれまで知らなくて……それで」
ふむ。代々聖女から聖女へ口伝される秘儀のようだ。
「言われたのは、治癒を掛けながら肌と……肌をくっつけて、撫でてあげて、なるべく肌をこすり合わせて、治ってほしいという思いを口にして、その……片時も離れずに」
なるほどな。どうりで俺は今全裸で、体中からマイの甘い香りがするわけだ。
聖女が裸になって同衾し、肌と肌を重ね合う儀式。だから聖衾か。
まるでセックスのようだが、もっと淫らで神秘的なものに思える。意識を失っていたせいでまったく記憶にないのが口惜しい。
「倒れてからどれくらい経った?」
「あ、えと、二日です」
「二日間も、君は聖衾を行ってくれたのか」
「はい……意識が戻ってくれて、安心しました」
見ればマイの頬には涙の渇いた痕があった。そこに新しい涙が流れる。
「心配を掛けたな。もう大丈夫だ」
頭を起こそうとすると視界がぐらりと揺らいだ。後頭部が再び枕に埋まる。
「無理をしないでください、ロレンティア様があと二日は安静にする必要があると」
「そうか」
どうやら相当の魔力枯れに見舞われていたらしい。それも危うく命を落としかける重篤なものだ。ロレンティアの見立てどおりしばらく回復に専念するほうがいいだろう。
となると、心配なのが。
「教会の守りはどうなっている?」
「聖騎士長さんが守ってくださっています。大司教さまが快復するまでは、この棟にネズミ一匹通さないとおっしゃっていました」
そうか。ならひとまずは安心だろう。
俺はもう一つ気に掛かっていたことを聞く。
「君が、ここまで私を運んだのか?」
温室から別棟までの短い距離とはいえ、マイの細い体で大柄な男を運ぶのは無理だ。
となれば聖騎士の誰かに手伝ってもらった可能性がある。あの露出の多い修練服姿を見られたのだとしたら、大問題だ。
「いえ、ロレンティアやニーナ、それに聖女見習いたちが手伝ってくれました」
「近くに聖騎士はいたか?」
「いなかったです」
マイがきょとんとした顔で答える。
「そうか」
どうやら聖騎士長が温室から人を遠ざけてくれたようだ。やはりあの男は信用に値する。
心配事が解消されたからか、どっと眠気が襲ってきた。
「あの、そろそろ聖衾を再開しますね……なので」
マイが体に巻き付けていた布をゆるめる。するりと衣擦れの音がして、彼女の魅惑的な上乳が見えた。
思わず生唾を飲み込むほどに煽情的な光景だ。
「ふむ、しばらく起きていよう。大司教として聖衾を体験しておきたい」
「あ、だめですっ……」
「なぜだ?」
「その、とても恥ずかしくて」
それはますます味わってみたい。
「マイ」
先ほどよりも低い声を出すと、彼女は困ったように眉をハの字にした。
「ごめんなさい……大司教さまが起きていたら、きっと治療に集中できないです」
色香を含んだ声色に心臓がドクンと跳ねる。
するとマイが困り顔のまま顔を寄せてきた。
「だからどうか、心地よい眠りを……リンゼ様」
彼女のおでこがコツンと当たり、その瞬間全身が沈んでいくような眠気に見舞われる。
(子守歌以外にも方法があったとはな)
マイの催眠魔法の多様さに感心しながら、俺は眠りの底へ落ちていった。
***
甘い香りに誘われるように、再び意識が浮上していく。
春の花蜜を煮詰めたようなマイの匂いに、懐かしい果実の香りが混じっている。
(これは……りんごか)
目を開こうとすると耳元でシャリ、シャリと聞き覚えのある音がした。
――遠視の術。
まぶたを閉じたまま、その裏にマイの姿を映し出す。
シルクの布を体に巻いた彼女がベッド脇の椅子に座り、りんごの皮を剥いていた。
片手にはあの短剣が握られている。調理用のナイフではないので剥きにくそうだ。眉間にシワを寄せて少しずつ皮を削っている。
「でこぼこになっちゃった……」
マイが落ち込んだような声を出す。
その手には円球ではなく、角のある多面体のりんごが出来上がっていた。
「こっちは私のぶん、でいいかな」
彼女は角ばったりんごを皿に置くと、もう一つに手を伸ばす。
「今度こそ…………あ、あぁっ……」
さっそく失敗してしまい、マイが再び肩を落とす。
俺はくすりと笑いそうになるのを堪え、寝たフリを続ける。
彼女の素の様子を垣間見る機会はそうない。遠視の術で覗いても、マイは一人でいるときでさえ聖女としての気品を保とうとしている。
だからこれは、初めての皮むきに試行錯誤している今しか見られない貴重な光景だ。しばらく鑑賞することにしよう。
「いつっ……」
彼女の白い指先が赤くにじむ。
思わず手を伸ばしそうになるが、マイは即座に治癒魔法で傷口を治した。
「はぁ……修道女さんにこっそり教えてもらえばよかったな」
りんごを削りながら投げやりにつぶやく様子が面白い。
修道女とは、引退した元聖女見習いたちだ。教会神殿に住み込みで働き、その多くが調理場で従事している。
現役の聖女見習いはナイフや包丁を持つことを許されない。
人を傷つけうるものを持つと、治癒魔法に影響があると信じられているからだ。その刷り込みのせいで彼女たちは調理場には近づかない。
というわけで、聖女見習いは料理が不得手だ。
「あっ」
マイの手元から角ばったりんごが滑り落ちる。ガキンと耳元で嫌な音が響いた。短剣が皿にぶつかった音だ。
俺は慌ててまぶたを開ける。
「マイ、切るのは私がやろう」
「あ、大司教さまっ、おは……あの、これは」
みるみる頬が染まっていく。相当に慌てているらしい。
「りんごを剥いてくれたんだね」
「あ、はいっ、起きたらきっと食べたいかなって……」
口調が素のままなのが微笑ましい。丁寧な言葉遣いに戻すのを忘れているのだろう。
「ああ、朝から好物を食べられるのは嬉しいよ」
「そっか、よかった……です」
思い出したように語尾を丁寧にした彼女に笑いかけ、俺は短剣を受け取った。
シャクシャクと、りんごの果肉を頬張る。
「……美味いな」
「はい、すごくおいしいです」
二人で、二個分のりんごをペロリと平らげる。甘い水分が体中に浸透して渇きが満たされていく。
「このりんごは君が用意したのか?」
「はい、調理場でいただいてきました」
「調理場に行ったのか」
「本当は、りんごのパイの作り方を教わりに行ったのですが、それは聖女のすることではないと言われてしまいました」
残念そうに肩を落とす様子が、なんだか面白い。俺は苦笑するのを堪えながら気になっていたことを聞く。
「今度は何日寝ていた?」
「三日です」
つまりゴーゼ司教の襲撃から五日間も、俺とマイは聖衾を行っていたのか。
邪魔の入らない密室で、昼夜問わずひたすら肌を重ねていたと。
「大司教さま?」
自然とマイの口元に目が行く。果汁で潤んだ唇がりんごよりも美味しそうだ。
「聖衾では口づけも施してくれたのか?」
「えっ……あ、えっと」
不意の質問に彼女が目を泳がせる。
巻いた布を胸元でぎゅっと握り、何かを思い出すように目を伏せた。唇をわずかにこすり合わせる仕草で正解が分かってしまう。
本当に、マイは素直だ。
こんな子が土壇場や欲するものがある時には嘘をつくのだから、たまらない。
「マイ、体が快復したか診てくれないか」
「あ、はい」
彼女が手を伸ばして俺の胸板に触れた。
「ああ、口づけにしてくれ。私も君の魔力に異常がないか確かめたい」
「ぇ……はい、わかりました」
一瞬、金色の瞳が揺れる。俺の胸に添えられた手がピクリと震え、だんだんと力が込められていく。
先ほどよりも頬を染めたマイの顔が、近づいてくる。
「ん……ぇぁ……」
いきなり舌を差し出されて少し驚く。
粘膜を重ねたほうが魔力を確かめやすいという俺の戯言を、律儀に守っているようだ。
もしかしたら、この五日間はずっとこういうキスをしていて癖になっているのかもしれない。
その証拠に、彼女の柔らかい舌を通して治癒の魔力が流れ込んでくる。
今のマイにとって口づけは純粋な治療行為なのだろう。
「んッ……あっ」
こちらも舌を絡ませると、小さい舌がビクンと震えた。反応が返ってきて驚いたという感じだ。
「……んっ、はぁっ……ん、ん……」
今度は彼女も舌を絡ませてくる。ねろねろと舌腹同士を舐め合い、吐息混じりの濃厚な口づけに移行していく。マイの唇も舌もりんごの甘みがあって美味しい。
舌先を左右に動かすと、彼女も応えるように舌を揺らしてくる。治療行為とは程遠い、情感のこもったキスだ。舌が性感帯になったように気持ちがいい。
この五日間を取り戻すように舐め合い、甘い唾液を交換する。
やがてゆっくり舌先が解かれていく。離れゆく彼女の目には涙がたまっていた。
「……異常、ないみたいです」
「ああ、体がすごく軽い。ありがとうマイ、君のおかげで助かった」
体を起こしながら、震える黒髪をそっと撫でる。
「はい、お帰りなさい……大司教さま」
マイは緊張の糸が切れたように微笑んだ。
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