【書籍化】大司教の権力を悪用して純真無垢な聖女とセックスしたら、毎晩イチャラブご奉仕されるようになった話 作:月見ハク
聖衾の部屋でお互いローブを着終えるころには、マイはすっかり聖女の顔に戻っていた。
さっきまで濃厚な口づけを交わしていたとは思えないほど、清廉な
彼女が部屋の扉に手を掛ける。
「神殿のみんなも本当に心配していました。大司教さまの元気な姿を見たら、きっと喜びます」
「そうか」
本当はこの密室で半日ほどマイを抱き潰したかったのだが、咄嗟にいい口実が思いつかなかった。
それに、口づけを終えたあと彼女が不思議とよそよそしくなり、慌てた様子でローブを手渡されてしまったのだ。
部屋を出ると、別棟の廊下が続いていた。
遠視の術で何度も視てはいるが、実際に立ち入るのは初めてだ。綺麗な白い壁と床は神殿と変わらないが、どことなく甘い花の香りが漂っている。
マイがいつの間にか手元に持っていた小鐘を振った。カランと耳通りのいい音が鳴り響く。
「それは?」
「大司教さまが回復したら鳴らすようにと、ロレンティア様が」
しばらく待っていると、最初にやってきたのはロレンティアではなく桃色髪の聖女見習い――ニーナだった。
「大司教様っ!」
タタタッと軽快な足音とともに駆けてくる。
桃色の髪を肩の上でふわふわと浮かせ、苦しそうな吐息を漏らしていた。だいぶ遠くから走ってきたらしい。
胸元に飛び込んでくるかと思いきや、彼女は目の前で急停止した。
マイのいる手前、はしたない姿を見せたくないのだろう。
「もう歩けるようになったのですねっ、わたし、すごく心配でっ……」
新緑を思わせる翠色の瞳が見上げてくる。普段は吊り目がちの目元が今は下がっていた。
「ニーナ、廊下を走ったら危ないよ」
マイが妹をたしなめるように微笑む。
「マイ様も、本当にお疲れさまです……さすがです」
「ニーナも水や食べ物を運んでくれてありがとうね」
どうやらニーナもかなり手伝ってくれていたらしい。そんな彼女の貢献を、マイは俺に伝えたいのだろう。
「そうか、助かったよ」
「はいっ……」
大司教らしい柔和な笑みを送るとニーナは照れくさそうに笑った。なんとなく桃色髪を撫でるのはやめておく。
「大司教様、ご快復されたようで何よりです」
「ロレンティアか」
金髪の元聖女が、他の聖女見習いたちを引き連れてやってきた。
ニーナとは違い長い金髪は乱れていない。王国の至宝とも呼ばれた整った美貌に、相変わらずの上品な笑みを浮かべている。
「大司教様が眠っているあいだ、特段変わったことは起きておりません」
「何よりだ」
一番に神殿内の様子を伝えてくるあたり、やはり優秀な
「ティア姉さまもずっと心配していたんですよっ、毎晩夜になるとお部屋で――」
「ニーナは湯浴みがまだでしょう、入ってきたら?」
同室のニーナの暴露をロレンティアが制止する。
「あ、じゃあ私も入ろうかな」
マイがすたすたとニーナに歩み寄る。
「やったっ、マイ様と入るの久しぶりです!」
「ふふ、そうだね」
「マイ様、湯浴みもそのお部屋で済ましてらしたもんね」
「ニーナ、いこうか」
マイが聖女の笑みを貼りつけたままニーナを促す。
耳がわずかに赤くなっているのを見るに、俺に知られるのが恥ずかしかったのだろう。
この五日間、寝ているすぐ側で彼女は体を清めていたのか。
ますます意識を失っていたのが惜しい。
静かになった廊下を、ロレンティアと共に出口へ向かって歩く。
聖女見習いたちも一緒に浴場へ行ったので、今は金髪の元聖女と二人きりだ。
「ロレンティア、変わったところはないと言ったな?」
「ええ、ありませんでした」
「マイの様子が少し不自然だ。何かあったのではないか?」
先ほども、一度も目を合わせようとしなかった。
素朴な疑問に対し、ロレンティアがふふと楽しそうに答える。
「さあ、マイに直接聞いてみたらいかがですか?」
廊下の先を見つめる彼女の顔には、悪戯っぽい笑みが浮かんでいた。
***
回復してから、さらに五日が経った。
大司教としての執務に戻ってすぐ、俺は大量の書類の整理に追われることとなった。
溜まりに溜まった陳情書や報告書などに目を通し、決裁していく。
変わらない日常だ。
変わったことといえば、やはりマイが妙によそよそしくなったくらいだ。
日課の執務室での修練中もやけに他人行儀で、修練が終わるとそそくさと帰っていく。
「ふぅ……」
そして目下の悩みの種はもう一つ。
「第一王子の帰還か」
机に置かれた手紙を眺める。
第一王子。
あの第二王子の腹違いの兄で、正統な王位継承者。だが自由奔放で政治には一切興味がなく、従者を引き連れて王国内を放浪する変わり者だ。
王宮内での評判は悪く、だからこそ弟の第二王子を次期国王に推す声も多い。つまりは派閥争いの元凶。
そんな第一王子が二年の旅路を終えて王城に戻ってくる。
厄介なのが、帰還を祝う儀式を行いたいと言い出したことだ。
第一王子たっての希望で、聖女マイに祝福を授けてほしいのだという。
「まったく、次から次へと」
第二王子の言う通り、第一王子派には教会を良く思わない貴族もいる。
ゴーゼ司教の背後関係もまだ洗い出しきれていない。そんな状況で面倒な派閥争いに巻き込まれるのは避けたかったのだが。
「……まあいい」
儀式は儀式。
俺としては、マイを堂々と抱ける機会を得たのだからむしろ喜ばしいことだ。
――コンコン。
タイミングよく、執務室の扉が叩かれた。
「入りなさい」
「失礼いたします」
普段使いの白いローブに身を包んだマイが、静かに入ってくる。
「大事なご用命があるとロレンティア様に伺いました」
「ああ、手短に伝えよう」
俺は立ち上がると、扉の前から動かない彼女に近寄る。
「三日後、大聖堂で第一王子に祝福を授ける」
ピクっとマイの肩が震えた。
「……それは、儀式でしょうか」
「そうだ」
さらに近づくと、彼女は気まずそうに目を逸らした。
「では、その、検査を……?」
「ああ、処女検査を行う」
「っ……」
マイはついに下を向いてしまった。胸元で手を握り締め、白い頬を真っ赤に染めている。
どんな表情を浮かべているのか、目元が前髪で隠れていて分からない。
「嫌か?」
「い、いえっ……あの、準備が」
「準備? 必要なのは直前に体を清めることくらいだが」
「あ、えと、そうではなく、心の……」
いまいち要領を得ないな。
「とにかく今日から体を休めておきなさい。検査は体力を使うからね」
「……っ、はい……では失礼します」
結局一度も目を合わせようとしないまま、マイは執務室を出ていった。
閉じていく扉をじっと眺める。
やはり、不自然だ。
だが俺は。
よそよそしい彼女の態度に、なぜか股間を硬くしていた。