【書籍化】大司教の権力を悪用して純真無垢な聖女とセックスしたら、毎晩イチャラブご奉仕されるようになった話 作:月見ハク
第一王子の儀式から、一週間が経った。
今日は王子に同行し、オレンダイ領の視察へ出立する日だ。
往復で三週間、視察の状況によってはもっと掛かる。
マイにとっては初めての長旅だ。
だからこそ慎重に準備をしてきた。
同行する聖騎士を厳選し、王子に付いてくる近衛騎士の素性も調べ上げ、旅のルートや停泊する村々も吟味を重ねる。
道中に魔力枯れを起こさないよう、一方で十分な睡眠もとった。
万端とはまではいかないが、マイに危険が及ぶリスクはできるだけ排除できたはずだ。
残る不安要素はといえば――。
「ここが大司教様の執務室……! さすがは聖職者の
執務机を挟んで、布で目隠しをした女が立っていた。
陰の女。
マイの護衛と剣技の稽古相手にと、第二王子から借り受けた手練れだ。
「聖騎士長から説明は受けていると思うが、君には聖女マイの護衛を頼もうと思っている」
「ええ、存じております。聖女様をお護りできるなんて、平民生まれにはもったいない
第二王子直属の隠密部隊に所属していて、相当な腕を持つことは確認済みだ。
何度かテストをしてみたが、不穏な動きは見せなかった。
聖女に並々ならぬ思いを抱いていることに目をつむれば、役に立つ護衛といえる。
「ここでは新人の聖女見習いとして過ごしてもらう。神殿内での所作はロレンティアから教わってくれ」
「よろしくね、ええっと……?」
俺の隣にたたずんでいた金髪の元聖女が、陰の女に名乗るよう促す。
俺もこの女の名を知らない。
隠密部隊に所属しているからか、いくら調べても詳しい素性が分からなかった。
「紫と、そう呼ばれております」
「紫さん、ですね。私はロレンティアです。お部屋も同室ですから、分からないことがあったらいつでも聞いてね」
ロレンティアの包み込むような笑みに、陰の女がハァとため息を漏らす。
「元聖女様と同室だなんて……夢のようです」
陰の女は頬を紅潮させ、口角を歪ませた。
こちらまで興奮が伝わってくる。目が隠れているので表情はいまいち読み取れないが、きっと熱のこともった目でロレンティアを見つめているのだろう。
まだ、マイには会わせないほうがよさそうだ。
ロレンティアには悪いが、聖女を前にしたときの立ち振る舞いもしっかり叩き込んでもらおう。
それにしても、紫か。
おそらく彼女の髪の色にちなんでいるのだろう。
王城で会ったときは給仕用のブリムを被っていたから気づかなかったが、彼女の髪は艶のある紫色だ。
癖毛なのか、肩のあたりで切りそろえられた毛先がわずかに外へ跳ねている。
聖女見習いの白いローブと、紫色の髪のコントラスト。
赤みがかった唇は常に口角が上がっており、どことなく妖艶な雰囲気を漂わせている。
マイに余計な知識を植え付けないよう、言い含んでおいたほうがいいだろう。
「紫――いや、呼びにくいな。他に名前はないのか?」
「ありません。もしよろしければ、大司教様に名付け親になっていただければと」
「ふむ……」
彼女の紫の髪から連想されるものを、頭の中の書庫から探す。
「ヌべリエ、はどうだ?」
「ヌべリエ……」
陰の女が見知らぬ呪文を唱えるように繰り返す。
「北方地帯に生えている、夜にしか咲かない花だ。紫色の花弁は麻痺毒を治す薬の材料になる」
一方でこの花は、麻痺毒の元にもなる。
俺は、彼女をまだ信用していない。
「素晴らしい名です……大司教様」
ゴーンと、昼過ぎを告げる鐘が響き渡る。
そろそろ出立の時間だ。
「では私は聖女とともに視察へ向かう。ロレンティア、留守を任せた」
「ええ、お任せください」
落ち着いた笑みを浮かべるロレンティアに安心しつつ、席を立つ。
ヌべリエの横を通り過ぎたとき、彼女がこちらに向き直った。
「あの大司教様、私は視察には同行できないのでしょうか」
「君には、まず聖女見習いとしての所作を学んでほしいと言ったはずだが?」
「存じております。ですが私は聖女マイ様の
抑揚のない声だ。
声色だけをみれば、淡々と役目をこなす仕事人といった感じだが。
やけにマイに同行したがるのが気にかかる。
「すまないな、ヌべリエ」
俺は彼女の肩に手を置くと、魔力を込めた。
「んぅッ……!?」
ヌべリエの体内に魔力を浸透させていく。
「ぁぁッ……ん、ぐっ……ッ」
ふむ。
俺の魔力に抵抗するような反応はないな。
後ろ暗い企みを持つ者なら、呪いや罠を仕掛けられる恐れのあるこの行為に対し、無意識に抵抗を見せるものだ。
どうやら彼女はただ純粋に、マイを護りたいだけらしい。
俺は魔力を解くと、ヌべリエの震える肩をトントンと叩いた。
「魔力が乱れているようだ。少し休むといい」
「はぁ、はぁ、大司教様の身体検査は、やはり凄まじいですね」
先ほどよりも頬を紅潮させたヌべリエを置いて、扉へ向かう。
「では行こう、聖騎士長」
「はっ」
扉の前に立っていた聖騎士長をともない、俺は執務室を出た。
***
神殿の廊下を歩き、正門へと向かう。
そこでマイとともに神殿の馬車へ乗り込み、神殿の外に待機している第一王子の隊と合流する手はずだ。
「聖騎士長、同行する聖騎士は何名だったか」
「はっ、十名です」
長旅に出る以上、教会神殿に脅威が迫るとも限らない。聖騎士のほとんどはそちらの護りに回している。
だが同行する十名はいずれも精鋭。そして信用に足る者たちだ。
大勢の聖騎士に囲まれるより、むしろ安全といえる。
正門が見えてきた。
木造りの簡素な馬車の前に、外出用の白いローブを着たマイが立っていた。
「マイ、待たせ……」
声を掛けようとして、止める。
彼女は正面に立つ青年と、何やら話し込んでいた。
茶色い平民の服を着ているが、あれは紛れもなく第一王子だ。
静かな笑みを浮かべるマイに、爽やかな笑顔を向けている。
俺は歩調を速めると、厳かな声で呼びかけた。
「王子殿下、ここは神殿内ですよ」
「おお大司教殿! 良い天気に恵まれたな!」
片手を上げて親しげに話してくる様子は、まるで本当に平民と錯覚する気安さだった。
彼らのもとへ歩み寄ると、マイと王子の間に割って入る。
「殿下、王族であっても許可なく神殿内に立ち入るのはやめていただきたい。あまつさえ聖女に近づくなど」
「なるほどすまないな! いや、早く到着したので俺自ら聖女のお迎えに上がろうかと思ってな。なに、無礼なことはしていない。今もこの天気について意見を交わしていたところだ」
「天気、ですか」
背中に隠していたマイを振り返り、「そうなのか?」と視線で問う。
すると彼女はふんわりとした聖女の笑みを浮かべた。
「はい、大司教さま。空模様も女神様のご意思によるものだと、興味深い話を聞かせていただきました」
「その通り! この空を見れば分かる。聖女マイは女神に祝福されているな!」
大きなため息が出そうになるのを、ぐっと堪える。
第一王子は長い赤髪を後ろで縛り、愉快そうに空を見上げていた。
足の先から頭のてっぺんまで、粗末な格好で統一されている。どこからどう見ても、市井の……それも下町の貧民だ。
「王子殿下、その格好は?」
「ああこれか。身分を隠すにはこれが一番いいんだ! 放浪の旅をしていたときは、もっと酷い格好をしていたぞ!」
いろいろと、型破りな王子だ。
聖女に懸想する第二王子ですら、ここまで大胆な行動はとらなかった。
マイも突然王子に話しかけられ動揺しただろうに、
清らかな聖女の笑みを貼り付け、静かに目を伏せている。
(さすがだな)
「そろそろ出立です。殿下もご自分の馬車へ戻ってください」
「もうそんな時間か! ではな聖女マイ。また後で話をしよう!」
そう言い残して、赤髪の青年は走り去っていった。
「ふぅ……」
走り始めた馬車の中で、俺の口からため息が漏れた。
「あの、大司教さま」
正面に座ったマイが、心配そうな顔で見つめてくる。
さっきまでの落ち着いた雰囲気から一転、彼女は幼い少女のように金色の瞳を揺らしていた。
「どうした?」
「王子殿下とお話をしたのは、よくなかったでしょうか……」
「いいや、あれは誰も予想がつかない。今回は仕方のないことだ。だが聖女は、相手が王族であろうと無闇に会話を紡いではいけないよ」
「はい……気をつけます」
しゅんと肩を下ろす姿は、まるで叱られた子どものようだ。
悲しそうに眉尻を下げた顔を見ていると、無性に嗜虐心が刺激される。
「マイ、こちらに来なさい」
俺は自分の隣の席をトンとたたく。
「はい……」
さらに叱られるとでも思ったのだろう。彼女は下唇を噛んで、俺の隣に座った。
ふわりと、俺の贈った入浴剤の匂いが香る。
「殿下に、妙なことはされなかったか?」
優しい口調で、心配しているという雰囲気を込めて聞く。
マイは一瞬息を吸い込むと、ほぅと安堵したように胸を撫で下ろした。
「大丈夫です、大司教さま」
無意識にだろう、彼女の二の腕が俺の腕に当たる。
その部分が熱を帯び、股間に血が巡ってくる。
「どこも
「え? いえ……どこも」
その言葉に安心しつつ、俺はマイの太ももに手を伸ばす。
ローブ越しに、彼女の柔らかい肉感を撫でる。
「んっ……あの、大司教さま……」
「この旅は村々を回り、時には野営をすることもあるだろう。先の遠征のときのように、王子に呼ばれたからといって、許可なくテントを抜け出してはいけないよ」
優しい声色はそのままに、マイの体をいやらしくまさぐっていく。
太ももをぎゅっとつかんで揉み、徐々に腰のほうへと移動させる。お腹を撫で上げていくと、手のひらが豊満な下乳に当たった。
「あっ、んッ……大司教さま、あんっ……もう、抜け出したり、しませんっ……」
マイは体を震わせながらも、素直に俺の愛撫を受け入れていた。
触れられるたびに、握り込んだ手をきゅっと力ませる姿が情欲をそそる。
「ならいいが、王子が無理を言ってきたら聞いてしまうのではないか?」
俺の手のひらに収まりきらない乳房を、下からすくい上げる。ローブ越しでもはっきり見て取れるその巨乳が上向いた。
「大丈夫、ですっ……んッ、もう言いつけは、破りません」
「だが相手は王族だ。先ほども王子に話しかけられて動揺していただろう。魔力が乱れているのではないか?」
布越しに乳房を揉み上げながら、魔力を浸透させていく。
すると彼女の体がビクンと跳ねた。
「んぅッ、ぁっ……はぁッ、大司教、さまっ……あぁんっ――」
性感に悶えながらも、マイは嫌がることも、どうしてと聞くこともしなかった。
ただ俺の愛撫を従順に受け入れる。
一週間前の処女検査で思いを告げたことで、心境の変化があったのだろう。それが態度として表れている。
だいぶ、俺の色に染まってきたようだ。
その実感に背中がゾクゾクする。
「大司教、さまっ……魔力が乱れたか、どうか」
乳房を揉んでいる俺の手に、マイの手が重なる。
彼女の揺れる瞳が、俺を捉えた。
「確かめ、ますか……?」
それはうかがうような上目遣いだった。
何かを求めるように、唇を近づけてくる。
「んむっ、んんッ……」
俺は夢中で唇を奪った。
舌先に魔力を込めながら、彼女の小さい舌を絡め取る。
くちゅくちゅと唾液をかき混ぜ、温かい粘膜を舐める。
「んぁっ、ぇ……ぁ、あぁんっ、んッ……ふぁっ……」
いつしか俺はマイの後頭部をつかみ、覆いかぶさるように口づけをしていた。
彼女を背もたれに押し付けた衝撃で、馬車がガタンと揺れる。
細い体を抱き寄せながら、マイの熱い口内を頬張る。
口づけの合間に彼女が甘い吐息を漏らす。それを塞ぐようにしてまた唇を重ねる。
まるで待ち焦がれていたように、マイも舌を健気に絡ませてくる。
数日ぶりのキスが気持ちよすぎて、やめ時が見つからない。
「マイ、もし言いつけを破ったら酷い罰が待っている。分かっているね」
乳房を
「んっ……はい、大司教さま」
「よろしい。最後にここを弄って魔力を確かめるから、大きな声を上げないように」
長いローブの裾をまくって、白い美脚を露出させる。
太ももの内側を手のひらでなぞりながら、肉感の増していく股のほうへと分け入っていく。
指先が、彼女のパンツに触れた。
「んんッ……!」
マイが甲高い声を発する。
さすがに抵抗されるかと思ったが、彼女は俺のローブをぎゅっとつかみ、胸元に顔を埋めてきた。
必死に目をつぶり、これからされることに耐えようとしているようだ。
(本当に、可愛い子だ)
俺は指先に魔力を込めると、パンツの布地をずらして膣穴へと挿入した。
「ん゛うぅっ……うッ、くぅっ……んううぅぅぅっ――ッッ」
マイがくぐもった嬌声を上げ、膣中がきゅっと締まる。さっそく達してしまったらしい。
この長旅で、彼女を
何事もなければ、せいぜいが視察前に祝福を授けるその前夜くらいだろう。
だったら今のうちに、マイの体を堪能しておこう。
「あっ、ん゛うッ……」
俺は必死にしがみついてくる彼女を、何度もイかせることにした。
***
ガタガタと、馬車が小刻みに揺れ始める。
足場の悪い岩場地帯に入ったのだろう。
カーテンをわずかに開けると、外はすっかり夕闇に沈んでいた。
「んっ……」
俺の胸元で寝息を立てるマイが、まぶたをピクリと震わせる。
あのあと俺は彼女の膣を愛撫し続け、何度も絶頂させた。
五回目くらいからは、もう数えていない。
執拗な愛撫を、マイが気を失うまで続けていた。
どうも彼女のイき顔を見ていると、責めが止まらなくなる。俺自身が精を吐き出していないせいもあるだろう。
小さい体で俺の劣情を受け止め続けた少女の頬を、そっと撫でる。
彼女の下着はぐっしょりと愛液にまみれ、ローブの内股の部分もうっすらと湿っていた。
「マイ……」
襲い掛かりたくなる衝動をごまかすために、俺は遠視の術を発動させた。
閉じたまぶたの裏に、ロレンティアの姿を映し出す。
――金髪の元聖女は、自室のベッドに腰掛けていた。
隣のベッドには紫髪の陰の女――ヌべリエが座っている。
元はニーナの寝ている場所だったのだが、ゴーゼ司教を倒した今、彼女を常に見守る必要もなくなった。
同室を解かれてニーナは残念がっていたが、俺の
今、神殿内でもっとも監視が必要なのは、間違いなくヌべリエだ。
ロレンティアを通し、ヌべリエの素の姿を暴く。
これが、この目隠し女をマイの護衛につけるかどうかの最終テストだ。
「――はい、終わり。これが治癒魔法ですよ」
ロレンティアが、ヌべリエの体にかざしていた手を離す。
「なるほど、とても慈愛のこもった魔力ですね。さすが元聖女様、まるで温かい毛布に包まれているような心地。気持ちのいいものでした」
「ヌべリエさんは、治癒魔法を掛けられるのは初めてなのですね」
「ええ、私たちは陰。傷ついて死んだらそれで終わり。致命傷を負ったら、情報が洩れぬよう自ら毒をあおります」
「……そうですか」
ロレンティアが悲しそうに長いまつ毛を伏せる。
「ロレンティア様も、本当にお優しい……まさに王国の至宝とまで呼ばれた聖女様」
反対にヌべリエは口元に愉悦をにじませ、うっとりとしていた。
そんな様子に、ロレンティアがふっと苦笑する。
「ヌべリエさんもここでは聖女見習い、私の大事な妹の一人です。あなたが傷つくことのないよう、私や聖女マイが守ります。だから、安心して?」
「ああ、そんな、聖女様からそんな言葉を掛けていただけるなんて」
ヌべリエが体を震わせ全身で感激を表現した。肩を縮こませ、両腕で自身をかき抱いている。
そんな彼女の体をロレンティアが包み込む。
暗殺稼業の女を、優しく抱き締める元聖女。まさに一枚の宗教画のような光景だ。
「ふふ、ヌべリエさんは見かけによらず甘えん坊さんみたいね」
紫色の髪を撫でながら、ロレンティアが微笑む。
だがその顔には、わずかな緊張が見て取れた。
さすがの彼女も、素性不明の暗殺者を少なからず警戒しているのだろう。
相手の心をときほぐしながらも、冷静に見定める。
やはりロレンティアを
――コンコン。
不意に馬車の窓を叩かれ、まぶたを開けた。
コンコン、と再び窓をノックされる。
(なんだ?)
『大司教様』
馬車の近くにいるはずの聖騎士長が、念話の術で頭に話しかけてくる。
『聖騎士長、誰が窓を叩いている』
『王子殿下です』
『なんだと? 殿下は馬車に乗っていないのか』
『それが数刻前に近衛騎士の馬を奪い取り、ずっと大司教様の馬車の周りをうろついたり、窓を覗き込んだりしています』
『……そうか』
窓のカーテンはぴっちりと閉じているし、馬車の内側には防音結界も張ってある。
先ほどのマイにした淫らな行為を気づかれてはいないだろう。
『どうなさいますか?』
『無視する』
俺は念話の術を切ると、三度目のノックも無視をした。
どこまでも型破りな男だ。
マイに妙なちょっかいを出さぬよう、警戒を強めないといけないな。
「ん……おはようございます、大司教さま」
「ああ、おはようマイ」
王子の立てた音のせいで、マイが起きてしまった。
「あっ……どうしよう」
彼女が頬を真っ赤にして内股を押さえる。愛液で濡れた下着やローブに焦っているのだろう。
「すまない、気が回っていなかった。今乾かそう」
俺はマイの下腹部に手をかざし、炎熱魔法を発動した。
「……とても、温かいです」
彼女が目を細め、心地よさそうに微笑む。
「着たままだから、あまり熱くはできない。だが停泊する村に着くまでには乾くはずだ」
「私たちは、どこに泊まるのでしょうか?」
「君も行ったことのある村だ。直轄領の外れにある、豊穣の儀式を行ったところだよ」
「あ、そうなのですね……」
マイが嬉しそうに頬を緩める。
これから向かう先は、彼女が初めて遠出を行ったあの村だ。
どうせ長い旅になるなら、マイにとって馴染みのある場所に寄ろうと思っていた。ちょうどオレンダイ領への道すがらにあるため、宿泊地としても最適だ。
それにあの村には、マイに懐いていたあの聖女見習いもいる。
マイと同じ黒髪の。
確か名前は――。
「ペペぺトラと言ったか。君は彼女のことをずっと気にしていただろう?」
「ペトラです、大司教さま」
「そうだったか」
窓のほうに顔を逸らすと、聖騎士長が念話の術で話しかけてきた。
『大司教様、緊急です』
『どうした』
即座に馬車を護っている防護魔法の強度を上げる。
『今先触れが戻ってきました。村が賊に襲われたようです。このまま向かいますか?』
『殿下の判断は?』
『救出に向かうと言っています』
「ちっ……!」
俺は思わず舌打ちをした。
「え、あの……大司教さま?」
マイが驚いた声を発する。少し怯えも混ざっているようだ。
「マイ、緊急事態だ。君はこの馬車から出ないように」
「っ……はい、分かりました」
彼女もすっと表情を切り替える。
俺は
「王子殿下、少し待つんだ!」
「なっ、大司教殿!?」
第一王子は今にも馬を駆って飛び出しそうになっていた。
「無闇に迎撃へ向かうのは愚策。まずは村の状況、敵の人数と位置を把握するのが先です」
「なにっ! そんなにもたもたしていたら手遅れになるかもしれんだろう!」
まったくこの王子は。
ここには何より守るべき聖女マイがいるのを忘れたのか。
「だからこそ作戦を立て、こちらに被害が出ぬよう確実に掃討すべきだ。聖女が同行しているのだぞ、第一王子」
「……あ、ああ、すまなかった大司教殿。頭に血が上ってしまったようだ。うむ、まずは情報収集が先決だ」
「あなたの隊の中に斥候もいるでしょう。素早く探らせてください」
「わかった!」
王子が騎士たちに指示を出していく。
俺はそれを横目で見ながら、思考を巡らせていた。
俺たちを狙った背信者の仕業だろうか。
いや、その可能性は低い。
背信者だったら、俺たちが村に着いた後に急襲してくるはずだ。
先回りして停泊地を襲撃するなど、ここを避けてくださいと合図するようなもの。
だとしたら、本当に賊の可能性が高い。
ふと、あの黒髪の少女――ペトラの顔が脳裏をよぎる。
「……聖女狩り、か?」
しばらくすると、一羽の鳥が王子の肩に止まった。
その足首には紙が巻かれている。
村に潜行した斥候からの連絡だろう。
「よし、村は無事! だが聖女見習いが一人連れ去られた。襲撃があったのはつい先刻、まだ遠くには行っていないと見る!」
王子が斥候からの文を読み上げる。
「そんな、ペトラが……」
声に振り向くと、馬車から降りたマイが呆然とした表情を浮かべていた。
俺はすぐに彼女へ駆け寄る。
「マイ、心配はいらない。あの聖女見習いは必ず救出する」
「でも、村が襲われて、ペトラが、連れ去られてっ……」
マイの呼吸が荒い。
金色の瞳はどこか虚空を見つめ、ガタガタと震えている。
故郷が襲撃されたときのことを思い出してしまったのだろう。
マイの奥底に眠る、癒えないトラウマだ。
「大丈夫だ、ペトラは助かる」
「いや、いやだ……」
「マイ!」
俺は彼女の肩をつかむと、無理やりに視線を合わせた。
「私が、これまで君との約束を破ったことはあったか?」
落ち着いた声で、小さい子どもをなだめるように言う。
するとマイは見開いていた目を、ゆっくり細めていった。
目を閉じ、下唇を噛む。
再び開かれた瞳が、まっすぐ俺を見つめる。
「ありません、大司教さま」
彼女は襲ってくる不安や叫び出したい気持ちを飲み込んで、聖女の笑みを浮かべてみせた。
「村にけが人がいるかもしれない。心を乱すことなく、治療ができるね?」
「はい……大司教さま。私は、聖女ですから」
迷いのない、覚悟を秘めた声。
マイの呼吸は、もう落ち着いたものになっていた。