※この作品はR-18です。

【書籍化】大司教の権力を悪用して純真無垢な聖女とセックスしたら、毎晩イチャラブご奉仕されるようになった話   作:月見ハク

38 / 53
第38話 目隠し女との入浴

 視察からとんぼ帰りをして、一週間。

 

 俺はこれまでにないほど雑務に追われていた。視察の準備を優先し過ぎたせいで、大司教としての仕事が溜まりに溜まっていたのだ。

 

「ふぅ……」

 

 執務机に積まれた書類を片づけながら、周囲に聞こえないようため息をつく。

 

 思えばここ最近は、俺もマイも第一王子に振り回されっぱなしだった。

 

 第二王子から借り受けた陰の女…………ヌべリエによると、第二王子は王の命令により、一カ月ほど北方地方の視察に行かされているのだという。

 

 それと入れ替わるように王都へ帰還した第一王子。

 

 赤髪の王子があそこまで好き勝手ができたのも、反目する第二王子が派閥ごと飛ばされたからだろう。

 

 その命令を下した王が、兄と弟のどちらを贔屓(ひいき)しているのかは一目瞭然だ。

 

(くだらない)

 

 教会としては王、兄、弟のいずれの派閥にも恩を売りつつ、くだらない跡目争いには関わらないのが正解だ。

 

 マイを、欲に狂った王族や貴族に近づけたくない。

 

「――マイ様、そろそろ再開いたしましょう」

 

「はい、ヌべリエさん。よろしくお願いいたします」

 

 ソファーに座っていたマイとヌべリアが立ち上がった。二人とも、手には木の棒を持っている。

 

 彼女たちはこの執務室で、秘密の剣術訓練を行っていた。

 かしこまって頭を下げるマイに、ヌべリエが頬を紅潮させながら「聖女様が私のような者にそんな」と興奮している。

 

 俺も仕事を中断し、再び彼女たちの訓練に目を向けた。

 

 ヌべリエがゆるやかな動きで棒を振り、マイがそれを棒で受け止める。

 剣術というよりも護身術だ。あくまで身を守り、受け流す動き。攻撃性も極めて低い。

 

 それでも、最初ヌべリエは「聖女様にそのような暴力的作法を!?」と困惑していた。

 確かに護身術とはいえ、実際の戦闘を想定した動きを教わる聖女など前代未聞だ。

 

 ちなみに聖騎士長はこの場にいない。

 信用のおける男だが、彼もまた敬虔な教徒。聖女が棒を振る姿など見たら卒倒してしまうだろう。

 

 もちろんマイが短剣を隠し持っていることは、ヌべリエにも明かしていない。

 

 カン、カンと木の打ち合う小気味いい音が、室内に響く。

 

(……美しいな)

 

 マイの動きは、まるで流麗な舞を踊りながら木の楽器を演奏しているようだった。

 聖女見習いの普段使いのローブが、舞の衣装に見えてくるから不思議だ。

 

 儀式の舞の修練にも一生懸命取り組んできたから、それが体に染みついているのだろう。

 

「ああマイ様、なんとしなやかな動き……美しい白鳥(しらとり)のよう」

 

 ヌべリエが棒を打ち込みながら、うっとりとため息をつく。

 

 汗で黒髪が頬に張り付いているマイに対して、彼女は少しも息が切れていない。

 目隠しをしているというのに、的確にマイを誘導している。

 

 魔力察知の応用なのだろうが、凄まじい腕だ。

 

「はぁっ……その柔らかな身のこなし、美しい……襲ってきた賊だって、きっと魅せられてしまうっ……」

 

 いよいよヌべリエの様子がおかしくなってきたので、俺は一つ咳払いをした。

 

「マイ、そろそろ時間だ」

 

 低い声で言うと、二人の動きがピタリと止まる。

 

「あ、はい、大司教さま……」

 

 はぁはぁと肩を上下させるマイが、事後を連想させて色っぽい。

 

 もっとこの妖艶な姿を見ていたかったが。

 

「これから陛下との謁見だ。しっかりと湯浴みを済ませてきなさい」

 

 ここ最近で、一番億劫(おっくう)な用命。

 

 王陛下が直々に、視察の顛末を聞きたがっている。

 大司教である俺と会談したいというのもあるだろう。

 

 だがそれは建前(たてまえ)で、本命は、美しい聖女マイに会うこと。

 

 ロレンティアのときもそうだったが、王は無類の聖女好きだ。

 だからマイを聖女に任命してからは、儀礼的な顔合わせ以外は一切近づかせないようにしてきたのだが。

 

 先日のゴーゼ司教の襲撃時に御前会議をすっぽかしたことで、今回は断ることが難しかった。

 

(本当に、王族は揃いも揃って)

 

 秘かに奥歯を噛み締めていると、額の汗を拭き終わったマイが執務机に近づいてきた。

 

「では大司教さま、失礼します」

 

 彼女の汗混じりの甘い香りに、王族への煩わしい気持ちが一瞬で吹き飛ぶ。

 

「ああ、後ほど」

 

 股間からゾクゾクと湧き上がる情欲を、平静な顔で隠す。

 

「はい、また後ほど」

 

 にこりと微笑んだ彼女は、涼やかな聖女の雰囲気をまとっていた。

 

 

***

 

 

「……俺も着替えるか」

 

 戸棚を開け、久しく着ていなかった謁見用のローブに袖を通す。

 高級シルクに金糸をふんだんにあしらった、趣味の悪い服だ。

 

 清貧を重んじる大司教にはふさわしくないと、常々思っている。

 

 俺はため息をつきながら、気晴らしもかねて遠視の術を発動した。

 

 まぶたの裏に、別棟の廊下を歩くマイとヌべリエの姿を映し出す。

 

 

「――マイ様、湯浴みですが、私もご一緒してよろしいでしょうか?」

 

「あ、はい、もちろんです」

 

 にこやかに応答するマイだったが、笑顔が少しぎこちない。

 ヌべリエの妙に熱のこもった雰囲気に、彼女もどこか引いているのだろう。

 

 俺は念のため、ロレンティアに伝書鳥を飛ばすことにした。

 

 

 浴場の脱衣所。

 

 マイがローブを脱ぎ、透き通るような白い肌をさらす。

 だがチラチラと顔を向けてくるヌべリエが気になるのが、彼女は手ぬぐいで体の前側を隠していた。

 

「うふふ、マイ様は奥ゆかしいのですね」

 

 笑みを浮かべながら寄ってくるヌべリエは、一切恥じらうことなく裸体をさらしていた。

 

(意外だな)

 

 なめらかな肌はマイやロレンティアには及ばないものの白く、シミ一つない。

 隠密部隊出身なので、てっきり古傷でもあるだろうと思っていたが。

 

 そういえば彼女は房中術――性技や性愛を駆使して相手を篭絡(ろうらく)する業も身につけたと言っていた。

 

 ヌべリエが外に跳ねた紫色の毛先をいじり、蠱惑的に微笑む。

 

 その目を引くような所作も体も、彼女の道具の一つなのだろう。

 

(目隠しはそのままか)

 

 俺はその布の下こそが気になるのだが、ヌべリエは目を覆ったまま湯浴みをするようだ。

 

 

 幻想的な魔導灯の光が、立ち込める湯気を照らす。

 

 (ふち)に座ったマイが、湯を張った木桶(きおけ)に小瓶を垂らす。俺が贈った入浴剤だ。

 木桶のお湯はすぐにとろみが付き、彼女がそれを嬉しそうに手ですくう。

 

 細い指から粘液がとろりとこぼれる。ゴクリと生唾を飲むほど妖艶な光景だ。

 

「まぁ、マイ様がそのようなものを(たしな)むなんて……!」

 

 ヌべリエの色気を含んだ声が浴場内に反響する。

 

「これ、大司教さまがご褒美にくださったものなんです。……みんなにって」

 

 慌ててマイが最後を付け足す。

 

「ふふ、なるほど。では大司教様もその用途はご存じなかったのですね」

 

「用途、ですか?」

 

「ええ、ふふ……マイ様、私が湯浴みの介助をしても?」

 

「え……?」

 

 ヌべリエは木桶に手を入れると、ヌチュヌチュと音を立てながら粘液を(もてあそ)んだ。さらにとろみの増したそれを両手ですくい、マイの背中に塗り付ける。

 

「あっ、ん……ヌべリエさん、あの……」

 

「こうして聖女様の湯浴みをお手伝いできるなんて……王子殿下に女性の護衛が必要だと進言した甲斐がありました」

 

 王子殿下とは彼女の雇い主、第二王子のことだろう。

 

 なるほど。マイの護衛の件は第二王子ではなく、ヌべリエの発案だったらしい。

 そこにちょうど俺が、女騎士を借り受けたいと話を持ち掛けたわけだ。

 

「あのっ、自分で、できますから……ひゃぅ」

 

「なんてきめ細かい肌……柔らかい……聖女様はそのお体も、清らかなのですね」

 

 ヌべリエがマイの首筋に粘液を塗り、背筋に沿って手のひらを下げていく。腰からお腹のほうへ手を滑り込ませると、いよいよマイが体をよじらせた。

 

「んッ……ぁっ、あのっ、くすぐったい、です……」

 

「これから王城へ向かうのですよね。聖女様があのような汚らわしい場所に……私も、ご一緒できたらいいのに」

 

 ヌべリエがマイの背中にピタリと密着する。乳房を当て、ぬるぬると粘液を塗り広げているようだ。

 

 思わず前のめりになるマイの下腹部に手を伸ばすと、太ももの付け根に指を這わせた。

 ヌべリエの手からこぼれた粘液が、鼠径部に沿ってマイの閉じられた内股へと入り込んでいく。

 

「やっ、んっ……ヌべリエさん、やめ……」

 

「本当に、汚らわしい人たち。マイ様、中でも第一王子にはお気をつけください」

 

「王子殿下、ですか?」

 

 マイはやんわりとヌべリエの手から逃れようとするも、ぬるりと絡みつかれてしまう。

 体の前側を辛うじて覆っている手ぬぐいにも粘液が染み込み、彼女の豊満な胸の輪郭や、その先端の突起が透けていく。

 

「ええ、あれは軽薄で品性の欠片もない男です。視察をご一緒されて、何か不快な思いをなさいませんでしたか?」

 

「んッ……えっと、特には……」

 

 マイがまったく心当たりがないという表情を浮かべる。むしろ全身を這うヌべリエの手に困惑しているようだ。

 

 俺が大事に育ててきたためか、マイは男の欲望や下卑た視線に(うと)い。そのせいで自身の魅力にも無頓着なところがある。

 

「やはりマイ様は、体だけでなくお心までも無垢で清らかなのですね……私たちのような者とは違う、まさに聖女の中の聖女様……」

 

 ヌべリエが感極まったようにマイを後ろから抱き締める。いつの間にかその腕が手ぬぐいの下に差し込まれ、マイのお腹を撫でていた。

 ゆっくりと、手のひらが下腹部へ移動していく。

 

 一方のマイはヌべリエの淫らな手つきに戸惑いながらも、思い詰めたようにうつむいた。

 

「……そう、なのでしょうか」

 

「はい?」

 

「私は誰から見ても、聖女の中の聖女……に、なれていますか?」

 

 そこにはいない誰かへ問いかけたような言葉に、ヌべリエが即答する。

 

「もちろんです……! ああ、なぜそのようなことをおっしゃるのです。マイ様ほど心が澄んでいて、穢れを知らず、全てを受け入れ慈しみ、一心に他者の幸福だけを思い続けられる方を、私は知りません。マイ様こそ私たち下賤(げせん)な民を導いてくれる聖女……我らの星!」

 

 一気にまくし立てたヌべリエが、ほぅと悦に浸るようなため息をつく。

 

 マイは呆気にとられたように彼女のほうを振り返っていた。

 

「だからご安心ください。あなたがその在り方に不安を持つ必要など、ないのですよ」

 

「あっ……」

 

 マイのお腹を撫でていた両手が上下に離れていく。大きな乳房のふもとに添えられた手が、ふわりと下乳を持ち上げる。

 

「聖女マイ様……なんてお可愛いの」

 

 もう一方の手がするするとマイの股下へと滑り落ちたとき、浴場の引き戸が静かに開いた。

 

「あら、マイにヌべリエさん。いつの間にか仲良くなったのね」

 

 涼やかな笑みを讃えたロレンティアが、ヌべリエをじっと見つめる。

 ヌべリエは目にも留まらぬ速さでマイから体を離していた。

 

「ティア姉さま……」

 

 ほっとした様子で肩を落とすマイに、ロレンティアがふんわりと微笑む。

 

「そんなでは体が冷えてしまうわ。お湯に入りましょう」

 

「ええ、ロレンティア様」

 

 ヌべリエがさらにマイから距離を置くと、ロレンティアがその空間にすっと腰を下ろした。

 

 

 ――三人の美女がお湯に浸かる様子を視ながら、安堵の息を吐く。

 

 俺は今、別棟の入口に来ていた。

 

 伝書鳥に気づいたロレンティアが浴場に向かわなかったら、男子禁制の別棟といえども俺は突入していただろう。

 

 神殿内では、女同士の過度な交わりを禁じている。

 

 ヌべリエは聖女マイに憧れを超えた感情を抱いていた。

 それ自体は珍しいことではない。だからこそロレンティアを通じて釘を差していたのだが。

 

 ヌべリエにはマイとの入浴や着替え、必要以上の接触も禁じることにしよう。

 

 

 ――再び遠視の術を発動する。

 

 マイはロレンティアの隣で、全身に塗り付けられた粘液を手で洗い流していた。

 

「ティア姉さま、朝にも湯浴みをしていたから、今日はもう入らないかと思ってました」

 

「同室のヌべリエさんを探していたら、浴場に入っていく姿が見えたの。それにね、久しぶりにマイとお話したいなと思って」

 

 可愛い妹を愛でる姉のような笑顔を浮かべるロレンティアに、マイも人懐っこいな笑みを返す。

 

「嬉しいです。私も、ティア姉さまと一緒に入るの……好きです」

 

 はにかむマイに、その様子をじっとうかがっていたヌべリエが「ああッ」と愉悦じみた声を上げる。

 

「どうしたのかしら、ヌべリエさん?」

 

「いえすみません、あまりの光景に取り乱してしまいました……聖女様と元聖女様が、ああっ、なんて尊く麗しい、うらやましい……」

 

 ヌべリエがのぼせた顔で吐息をはく。

 布を外したら、その目はさぞや血走っているのだろう。

 

 眉を寄せて困った顔を浮かべるマイに対し、ロレンティアは平静だった。同室でもう慣れてしまったのだろう。

 

 ヌべリエの監視任務が終わったら(ねぎら)ってやらないとな。

 

「あの、マイ様っ」

 

「はい……」

 

「私、聖女見習いとしては後輩ですが、マイ様よりも四つ年上なのです」

 

「あ、そうなのですね」

 

「ええですからっ、私のことも姉と呼んでいただけないでしょうか?」

 

「えっと、ヌべリエ……姉さま?」

 

「ああッ……!」

 

 まるで絶頂したかのように体を震わせる紫髪の女にため息をつき、俺は遠視の術を切った。

 

 そろそろ準備を再開しないといけない。

 

『聖騎士長、聞こえるか?』

 

『はっ、大司教様』

 

 念話の術で思念を送り合う。

 

『王城内でも帯剣しているように』

 

『承知しました』

 

『隠し短剣も用意しておけ。謁見中も警戒を怠るな』

 

『はっ』

 

『馬車もすぐ出せるように待機させておくんだ。王城裏手にもう一台予備の馬車も忘れるな』

 

『……そこまで警戒されますか?』

 

『念のためだ』

 

 別に王城に限ったことではない。

 

 教会神殿の外にマイを連れ出すときは、いや神殿内にいるときであっても、もう一切警戒を怠らない。

 

 信頼できる者以外は、全てマイを狙う敵と考えて行動したほうがいいだろう。

 

 俺は執務室へ戻る道すがら、浴場でのヌべリエの言葉を思い出していた。

 

 ――あれは軽薄で品性の欠片もない男です。

 

 彼女が第二王子直属の者というのもあるだろうが、あそこまで第一王子を悪しざまに言うとは意外だった。

 

 ああいう悪感情は、大いに利用できる。

 

 もし第一王子と対峙することがあったら、有用な駒となってくれるだろう。

 

 俺は決してマイには見せられない表情を浮かべながら、執務室へ戻った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。