【書籍化】大司教の権力を悪用して純真無垢な聖女とセックスしたら、毎晩イチャラブご奉仕されるようになった話 作:月見ハク
暗い視界の中に、ぼんやりと情景が広がっていく。
淡い魔導灯に照らされ、白い湯気が立ち込める空間。
ここは別棟にある聖女見習いたちの浴場だ。
俺が足を踏み入れると、湯に浸かっている紫髪の美女――ヌべリエが顔をほころばせた。
彼女の両目には、髪と同じ紫色の瞳が輝いている。
ここはヌべリエの夢の中。俺はもう十回以上、彼女の無意識を訪れていた。
「まぁ大司教様、ご機嫌
そう言いながらヌべリエは自身の隣を手で指し示す。
「ああ、昨日も言われたな。だがすまない、君と話をしたくてね」
「ふふ、昨日もそうおっしゃってくださいましたね。本当はお姉様を待っていたのですけど、まぁいいでしょう」
悪戯っぽく微笑む様は、ロレンティアによく似ている。ずいぶん影響を受けているのだろう。
俺は苦笑しながら、彼女の隣に腰を下ろす。
湯の温もりが伝わってくる。体の内側に沁みいるような気持ちよさだ。
きっと夢の主であるヌべリエにとって、この浴場が最も心地いい場所なのだろう。
以前、マイとロレンティアの三人で湯浴みをしたのが、ことのほか彼女のいい思い出となっていたらしい。最近はいつもこの夢だ。
「お姉様、か。そろそろロレンティアをそう呼んだらどうだ? 喜ぶと思うぞ」
「そんな滅相もない! 面と向かって言うなんてっ……そんな」
「マイには自分のことをお姉様と呼ばせたがっていたじゃないか。なのに自分で言うのは恥ずかしがるとは、自分勝手な聖女見習いだ」
「……相変わらず意地の悪い方」
夢の中では嘘がつけない。
俺の本性も、ヌべリエにはとうにバレてしまっていた。
トンと、彼女の肩が俺の腕に当たる。
「お姉様だなんて、こうして夢の中で大司教様に言うのが精一杯です」
「今日は、ロレンティアとどんな話をしたんだ?」
話を振ると、ヌべリエは悩ましげなため息をついた。手を頬に当て、うっとりとした表情を浮かべている。
「うふふ……今日は、昔の話をしてくださいました。教会に預けられる前、お姉様は貴族の家で下働きをしていたそうですよ」
「そうらしいな」
「あら、大司教様も知っていらっしゃたのですか。私にだけ打ち明けてくださったのかと思ったのに」
「……まあな」
眠りにつく前、遠視の術でロレンティアを視ていて初めて知った。
教会の記録ではもともと孤児だったとしか書かれていない。
聖女時代、寝物語にはなんでも話す彼女だったが、聖女見習いになる前のことには触れてほしくなさそうだった。だから俺も聞かないようにしていた。
「きっとお姉様は貴族の血筋なのです。あの気品と麗しさは俗世とはかけ離れていますもの。そうですね、マイ様が荒れ地に力強く咲いた奇跡の花なら、お姉様は荒らされた花壇の中でも輝きを失わなかった可憐な花。どちらも美しく儚げで、ああ……凡庸な私に甲乙などつけられるはずがありませんっ……」
ヌべリエが早口でまくし立てる。彼女の暴走にもだいぶ慣れた。
ずいぶんとロレンティアに懐いた、もとい心酔したようだ。
以前は執着の大半をマイに向けていたが、今はそれが二倍になった気がする。
俺はため息をつくと、彼女の言葉に思考を巡らせた。
ロレンティアが貴族出身……か。
「あり得ないな。衣食住に満たされた貴族の家から、聖女見習いが出た記録など見たことがない。大地の恵みと飢えによる死が常に隣り合わせの貧しい農村でしか、基本的に治癒の力は発現しないものだ」
断言すると、ヌべリエがすっと冷静になった。
「お姉様も、死が隣り合わせだったのでしょう」
「どういう意味だ?」
「貴族として生を受けても、置かれる環境は人それぞれ。たとえば貴族と平民との間にできた不義の子などは、過酷な暮らしに追いやられることも珍しくない。それにお姉様の、ロレンティアという麗しいお名前は、平民の親が名付けるようなものではありません」
「……なるほどな」
「あくまで私の推測です。なのでどうかお姉様にはおっしゃらないでください。詮索されるの、きっとお嫌でしょうから」
確かに推測にすぎない。だがかなり説得力がある。
素のヌべリエと話をすればするほど、彼女の聡明さには驚かされる。
ロレンティアとはまた別種の抜け目なさも持ち合わせている。
世の男なら一瞬で虜にしてしまうだろう美貌と、どこか危うさのある色香。
表情が豊かになってきた今だからこそ分かる人懐っこい素顔。
そして聖騎士や俺を相手取り、追い詰いつめたほどの魔力量。
もし彼女が聖女見習いの道を外れず、俺以外の者が大司教になっていたなら、聖女に選ばれてもおかしくない。
加えて陰の者として磨いてきた暗殺術に、洞察力や情報収集力。
気配や魔力の察知能力もずば抜けている。
やはり、ぜひ手駒に――。
「君が欲しい」
「…………ふふ、ご冗談を」
ヌべリエが涼やかな笑みを浮かべる。
いかんな。
この空間では本音がつい漏れてしまう。
まあ、今さら隠し立てする必要もないか。
もしロレンティアのおかげで生きる意味を見出したとしたら、どの道行き場のないヌべリエには俺の下で働く選択肢しかない。
「ヌべリエ、瞳をよく見せてくれないか」
彼女のほうを向き、紫色の両目を見つめる。
「……大司教様も私の体がご所望ですか? ええ構いませんよ、どうぞご自由に」
ヌべリエが俺のほうに向き直り、均整の取れた美乳をピタリとくっつけてきた。
しなやかな手が、湯の中で俺の股間をまさぐる。
その表情には、どこか寂しげな色が浮かんでいた。
どうやら勘違いさせてしまったらしい。
「いかがです、大司教様?」
首すじに熱っぽい吐息を吹きかけられた。
優しく労わるような、それでいて男の性感を的確についてくる手つきで、ペニスを愛撫される。
皇帝に仕込まれ、陰の者として磨き上げてきた性妓だ。
どんな男も骨抜きにしてしまうのだろう。
だがあいにく、俺はマイ以外では勃たない。
「せっかくの奉仕を無下にしてすまないが、純粋に瞳を見たいだけなんだ」
「え……? あらそうでしたか」
ヌべリエが股間からゆっくり手を引く。眉尻を下げたその顔は、安堵しているようにも残念がっているようにも見えた。
夢の中なので問いかければ本音をさらすのだろうが、なんとなくやめておく。
どうぞとばかりに見つめてくる小顔を両手で包み、じいっと目元を覗き込んだ。
鼻先が触れるほどに顔を近づけると、紫色の瞳が揺れる。
「……そんなに物珍しいです?」
「今君の新しい義眼を作っているのだが、色の調整が難しくてな」
「え……」
ヌべリエが初めて動揺した顔を見せた。
「私は君の瞳を奪ったんだ。返すのが道理だろう」
「そう……ですね」
「視線を逸らさないでくれないか、よく見えない」
「すみません」
深紫の瞳がさっきよりも潤んでいるような気がする。
なるほど、水気を含むと黒目のまわりに紅色がにじむらしい。
「瞳まで、北方に咲くヌべリエ花とよく似ている。花弁の奥が真紅に染まっているところまでそっくりだ」
顔を離しても、彼女は俺を一心に見つめていた。
「たしか、夜にしか咲かない花なのでしたっけ」
「ああ、月明かりを養分に変える奥ゆかしい花だ」
「ふふ……私にお似合いですね」
ヌべリエが冗談めかしく微笑む。
邪気のない、透き通った顔だ。きっと以前の彼女はこうして笑っていたのだろう。
ぐにゃりと、浴場の光景が揺らぐ。
「そろそろか。ではまた、夢でな」
「次こそ、マイ様を連れて来てくださいな」
「ここは君の夢だから、君が望めばそうなる。昨日も言ったはずだが」
「……そうですね」
小首をかしげて微笑んだヌべリエの姿が、闇の中に消えていった。
ふわりと、頭を撫でられる感覚で目が覚める。
後頭部には心地いいマイの膝枕の感触。
顔の左側が温かい。彼女のお腹の温もりを感じる。
さらりと、今度は前髪をかき分けられた。
この気持ちよさを終わらせたくなくて、しばらく寝ている振りをする。
彼女の膝枕を使うようになってから、もう十日が過ぎた。こうして寝たフリをするのも十回目だ。
「リンゼさま……そろそろ起きますか?」
「……ああ、おはようマイ」
まぶたを開けると、少し残念そうに微笑む彼女と目が合う。
こうして寝たフリを見破られるのも十回目だ。
名残惜しいが、体を起こす。
目頭を押さえながら、俺は念話の術を発動した。
『聖騎士長、ヌべリエは起きたか?』
『はっ、目覚めたようです』
地下牢獄にいる聖騎士長から思念で応答してくる。
ヌべリエは今も牢に拘束したままだ。
『様子はどうだ』
『異常ありません。頬が少し紅潮している以外は』
『いつも通りだな』
ここ最近のヌべリエは、目覚めると頬を染めているらしい。
だが夢の中で会う彼女も最近は頬が赤いので、きっとそれが素なのだろう。
『御苦労。見張りを代わっていいぞ』
念話の術を切ると、ソファーから立ち上がる。
「マイ、ありがとう。今日もいい眠り心地だった」
「あ、いえ、私も……この時間が好きなので」
「……そうか」
座っている彼女の頬に触れると、気持ちよさそうにまぶたを閉じた。
伏せられた長いまつ毛が美しい。
「ヌべリエさんは、大丈夫なのでしょうか?」
「ああ、彼女には呪いが掛かっていたんだ。それも、もうすぐ解ける」
「そう、だったのですね……よかったです」
マイは安堵したように口元を綻ばせ、それ以上言葉を発しなかった。
俺が毎日、膝枕を借りて何をしているのか気になるだろうに、彼女は何も聞いてこない。
(本当に物分かりのいい子だ)
その分、マイは一人で抱え込んでしまうところがある。
そういうところも愛おしい。
「んっ……」
しっとりとした唇に触れると、それだけで彼女は切ない声を漏らした。
「俺が寝ているあいだ、君はずっと起きているのか? 寝ていてくれてもいいのだが……とはいえ、今はまだ午後か」
ヌべリエは基本的にずっと起きていて、ロレンティアが昼食を食べさせた後にほんの少し眠るだけだ。
必然的に、俺も
マイが執務室に来られる時間帯なので、俺としては都合がよかった。
だが彼女にしてみたら長時間の膝枕は疲れるだろう。
そう思って聞いてみたのだが。
「眠るなんて、もったいないです。リンゼさまの寝顔を……あ、じゃなくて、このソファーは心地がいいのでっ、一休みになります」
彼女は目を開けると、気まずそうな顔をした。
それがなんだか可笑しくて、つい笑ってしまう。
「そうか。では明日も頼む」
「はい」
嬉しそうに微笑むマイの黒髪を撫でていると、コンコンと扉がノックされた。
神殿大工のやってくる時間だ。
今回の温室補修のついでに、俺は執務室の隣に仮眠室を増設させている。
扉の外にいる大工たちに少し待つように言うと、マイをソファーから立たせた。
大事な用件を伝えるためだ。
「マイ、明後日に第二王子殿下が訪問に来る。君も聖女として同席しなさい」
「はい、わかりました」
「では、また明日な」
大司教としての仕事が山積している。
マイとの時間をもっと取りたいのだが、こればっかりはどうしようもない。
「あの、大司教さま」
「なんだ」
「その、殿下の訪問の際には、あのっ……検査は、するのでしょうか?」
俺のローブを控えめにつまみ、うかがうように聞いてきた。
瞬間的に、情欲がこみ上げてくる。
本当なら毎日毎時間、彼女を犯したい。
だが。
「殿下の訪問は儀式ではない。ただの会談だ。だから検査をする必要はないな」
非常に残念なことに。
無理やりに口実を作れば検査することも可能なのだが、先日、俺は別棟に入ったばかりか、聖女であるマイの部屋に滞在してしまった。禁忌をいくつも破ったのだ。
本来なら大司教の任を降ろされてもおかしくないのだが、これまでの品行方正で清廉潔白な仮面が功を奏し、俺を咎める声は一つも上がっていない。
とはいえしばらくは、マイを長い時間拘束していると変な目で見られかねないだろう。
今は我慢と自重の時だ。
彼女を見やれば、下唇を噛んで斜め下をぼうっと見つめていた。
「……そう、ですか。はい、わかりました」
コンコン、と再び扉が叩かれる。
マイが目を伏せ、ローブから指を離す。
俺はそんな彼女の腕を引き寄せると、抱き締めながら唇を重ねた。
「ん、ぁっ……んッ、ぇぁ……んっ、はぁ、んむっ……ん、んんっ……」
舌を絡ませ、舌先から魔力を流し込む。マイの体がビクンと震え、ローブの胸元をぎゅっとつかんできた。
狭い口内で舐め合うと、頭の後ろが熱くなってくる。
すでに剛直しきった股間を柔らかいお腹に押し当て、彼女の豊満な乳房を胸板で押し潰して堪能する。
じゅる、じゅると唾液の交わる音が響く。
これ以上濃厚に絡んだら、外に漏れ聞こえてしまうだろう。
コンコン、とまた音がした。
「ん……リンゼさま、大工さんたちが……」
唇を離すと、彼女が申し訳なさそうにつぶやく。
だがその瞳は物欲しそうに潤み、唇も求めるように上向いている。
まったく。
こんなふうに煽るから歯止めがきかなくなる。
「ああ、そうだな。魔力にも異常はない。明後日の会談に備え、今日はもう休みなさい」
「はい、リンゼさま」
言いながら、扉を開けて神殿大工たちを招き入れた。
すれ違いざまに大工たちが、匂い立つような色香を放つ聖女に息をのむ。
俺はずいっと体を割り込ませると、彼らの視線からマイの姿を隠した。