セックスでチート付与できるならハーレムができるのは必然です~ただし、私はTS聖女でハーレム入りするほうです~ 作:恋偲川幹
私が目を覚ますと、見知らぬ天井が目に入りました。
「ここは……?」
次第にはっきりしてくる意識の中で気を失う直前までの出来事を思い出します。
そうでした、私はダンジョンの落とし穴から落ちてしまったのです。
かなり長い間落下して途中で気を失ってしまったのですが……怪我はなさそうです。
私は指や腕、首、脚と体の各部が動くことを確認していき、最後にゆっくりと起き上がります。
「私、あんなに高いところから落ちたのに……」
私が寝ていた場所には天井があります。
落とし穴の直下ではないのでしょうか?
そういえば、と意識を巡らせると私の寝ていたところに枕代わりの畳まれた毛布がありました。
「誰かに助けられたのでしょうか?」
辺りはダンジョンの中の少し広い広間という様子です。
邪悪な気配はなりを潜めて、むしろ聖なる気配がほんのりと漂っているのが感じられます。
「やあ、目が覚めましたか?」
タッタッタッと足音がして男の子が一人、私の方にかけよってきました。
相手が何者かわからないので、私は警戒のために立ち上がろうとします。
「ああ、まだ休んでいた方がいいですよ。ここは聖結界の中ですからゆっくり休めます」
男の子は立ち上がろうとした私にそう告げてきました。
「聖結界」というのはダンジョンの中に自然発生している聖属性の結界のことです。
魔物が近寄れないので安全地帯として利用されており、ゲームで言うならダンジョン内のセーブポイントといえるでしょう。
「僕はセルティスといいます。見ての通りの冒険者です」
自己紹介してニッコリと微笑んだセルティスはまぶしいほどの美少年でした。
蜂蜜のような琥珀色の髪、中性的でまばゆいばかりの顔立ちには、深いブルーのぱっちりとした瞳が輝いています。
年の頃は高校生くらいのようで、現世の私よりも年上なのでしょう。
服装はいかにも冒険者といった服装で頑丈で耐久性の高そうな厚手の衣類の上に、ブレストプレートや手甲、脛当てなど重要部位だけを防御した戦士スタイルです。
腰に差したブロードソード、背中に担いだバックパックとシールドが冒険者らしさを感じさせます。
「あなたが吹き抜けの天井から輝きを放ちながら降りてきたときには本当にびっくりしました。天使が空から降りてきたのかと思いました!」
人懐っこいくるくるとかわいらしい笑顔で私と出会った時の状況を語ります。
「落ちてきた……ではなくですか?」
私はすごい勢いで落下する中で気を失ったはずです。
「いえ、ゆっくりふわふわって降りてきましたよ」
「そんなことが……? あっ、ステータスオープン」
私は何かスキルでも覚えていたのかもしれないと、ステータス画面を呼び出しました。
レベルアップで増えたステータスの中に『聖女の降臨』というものが見つかりました。
そこには落下ダメージ無効という効果が記されていました。
このスキルのおかげで助かりましたが、通常の使い道が今ひとつわからないスキルですね。
「それで。お嬢さんはどこの家の子でしょうか? 冒険者の年齢には見えないですけれど? どうしてこんなダンジョンの中に?」
私はそこで自分がまともにセルティスと話をしていないことに気付きました。
「失礼をいたしました、セルティス様。わたくしはミシュリーヌと申します。神殿から授けられた使命により若輩の身ではございますが、冒険者登録をさせていただきました」
私は居住まいを正してセルティスに挨拶をしました。
セルティスはちょっと驚いたような顔を見せます。
「神殿はこんないたいけな子供をダンジョンに連れ込むなんて酷いことをしますね」
「いえ、わたくし自身も聖女としての仕事をはやく務められるようにとレベルアップを望んでのことです。神殿を悪く言わないでいただきたいです」
「子供にそういうことを言わせるのが……まあ、小さなあなたに言っても仕方ないですね。でも、このダンジョンに潜ってきたのはさすがにパワーレベリングで来たのだと思いますが、護衛の方は何をされているのです?」
私からすれば、セルティスも十分に子供の年齢であるのですけれど、成人年齢が日本よりも低い世界です。
セルティスがちゃんとした大人として振る舞おうとしている様子は微笑ましくもあります。
「実は……」
私は罠にハマって落下するまでの経緯をセルティスに説明します。
「それで落下ダメージ無効のスキルのおかげで、僕が受け止めることができたというわけですね。キラキラと輝きながらおりてくるミシュリーヌさんはとても美しかったです」
中性的な美少年のセルティスにそんなことを言われると、前世が男性であった私でも思わずドキっとしてしまいます。
「それにしても、あの多くの亡骸があった広場は上層階のトラップから落下してきた人たちの成れの果てだったのですね。このダンジョンの上層階は十分に探索済みですから、新しい亡骸がなかったのも納得です」
私は気を失っている間に聖結界エリアまで運ばれましたけれど、そんな死体だらけの場所があったのですね。
『聖女の降臨』で助かりましたけれど、聖結界でない場所で気を失ったままであったら果たして無事であったかどうか。
「セルティス様はわたくしの命の恩人なのですね。わたくしにはその御恩にすぐに報いる力はございません。ですが、わたくしの家族も神殿も、わたくしの命の恩人であるセルティス様に多くのお礼をしてくださるでしょう。わたくしは時間がかかっても、その立て替えてくださった御恩を返すことでセルティス様に報いたいと存じます」
今の私にはセルティスに十分なお礼をすることはできません。
ですが、私の家族や神殿は強い力を持っています。庇護者の力は私の力ではありませんが、セルティスへのお礼を立て替えてもらうくらいは甘えさせてもらおうと思います。
いずれ、私が立派な聖女になってお金が払えるようになったら神殿や両親に報いることにしましょう。
「あー、そうですね。当面のピンチをしのいだって意味では命の恩人かもしれません。ですが……残念ながらお礼を言うのはまだ早いと言いますか……」
セルティスが何か苦笑いして、煮え切らない様子でブツブツと言い出しました。
「あの? セルティス様、何か問題がございますでしょうか?」
セルティスの様子を訝しく思った私はその顔を覗き込むように尋ねました。
「実はですね、僕もこのダンジョンで仲間とはぐれて遭難中なんです」
セルティスはつとめて明るい笑顔を見せながら、重大なピンチが継続中であることを私に告げたのでした。
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