フェイクラバーズ 作:かえで
2の月9日に、バロンがほぼ鎖国体制を敷いてから。
地上世界は不穏な空気が漂い始めて、緊張感が高まっていく。
そんな中、エブラーナ城に各地の諜報から手紙が届いた。
どこもかしこもバロンの動きに警戒しながらも。
国王セシルの変節ぶりに戸惑いを隠せないでいるようだ。
ミシディアに滞在するツキノワも、船便を使って手紙を届けてくれた。
しかし、これといった手がかりはつかんでいない模様。
それも数日前に書かれたものだから、現在どうなっているかわからない。
リディアが幻獣界へ向かう。それを最後に、ラルフからも報せが途絶えた。
そのため、ミストの情勢やリディアのその後もさっぱりわからない。
状況を知りたくても、エッジは立場上そちらに構っている余裕はない。
不測の事態に対する対処会議を開いたり、各部署のトップと何度も打ち合わせを行ったりするなど。
次期国王の候補問題をおざなりにしたまま、仕事に追われる日々。
2の月12日の早朝。タツミから急ぎの書状が届いた。
シビエンのそばにある、バブイルの塔の外観の監視を依頼していたのだ。
—— —— ——
付近で張り込んでいる者から、昨夜からバブイルの塔が不気味な光を放ち始めたとの報告がありました。
—— —— ——
手紙を読み終えて、エッジは決意した。
バブイルの塔が動き出したとなれば、もう我慢できない。
歩いてでも、這ってでも。じいを気絶させてでも。
何が何でも、明日バブイルの塔に殴りこんでやると。
.
***
——2の月12日 午後4時過ぎ
「さすがに燃やすのはなぁ……」
(っても、隠しても見つかっちまう)
執務机の前で立ち、腕組みしながら頭をひねらせる。
そんなエッジの視線の先には、机のど真ん中に積まれた手紙の山。
午後の書類仕事を早々に済ませてから。
執務机や部屋の後片付けという名の身辺整理を行っていた。
いつもならこの時間、処理済みの書類が床に散らばっているところだ。
しかし、本日はひとまとめにして机の上に置いてある。
現在は有事に入っているため、書類の量は多くない。
(オレが死んでから他の奴らに、こいつら読まれると思うとぞっとするぜ……!)
この先、何が起こるかわからない。運悪く死んでしまうかもしれない。
その後、残された者にあれこれほじくり返されたくない。だから身辺整理している。
現在は最後の大詰め。
リディアから届いた手紙の処遇に、思案を巡らせているところであった。
「どっかに埋め……!」
こんこん
(うわ、やべっ!)
扉を叩く音が聞こえて、慌てて手紙の山を大きな引き出しの中に押し込む。
机の上に紙を適当にぱぱっと広げて、仕事してます感にしながら。
扉の気配をたどってみたら……気配の主はじいでなかった。
「入れ」
席についてから、ようやっと返事した。
すると気配通り、黒ローブの若者が恐る恐る中に入ってきた。
『……』
ぶるぶる身体を震わせながら、タタラが一礼した。
「ああ、書類……!」
書類を渡すために、積まれた書類の山に手を出そうとしたら。
青い撒菱が、ひとつ机の上に転がっている。
片付け損ねたと思われるそれを見て、あることを思いついた。
—— —— ——
昨日の夜遅く。エッジはなかなか寝付けず、運動がてら1時間ほど修行した。
風呂に入ってから私室に戻る途中。何者かがうつむきながら廊下を歩いている。
よく見たら、その人物はタタラであった。
(こんな時間まで残業してんのか)
不思議に思い、翌朝じいにたずねてみたら。
『5日ほど前から、城で寝泊まりするようになりました』
それを聞いて、ずいぶんやる気があるように思ったものだ。
—— —— ——
じいの後釜にする気はないが、今後何かと接点は増えるだろう。
果たして、そろばんと帳簿付けで終わるような奴なのかどうか。
タタラをちょっとテストしてみたくなった。
「その前に、ちょっと聞いてみたいことがあんだよ」
『?』
「おまえさ、秘伝忍術書読んだことあるだろ」
『……』
エッジの問いに、タタラがおずおずとうなずいてくれた。
タタラは歴史編纂室時代、文殿に出入りしていたため忍術書を読んだことがある。
じいから以前そんな話を聞いたことがあったが。
本当だったとわかり、しめしめとばかりに青い撒菱を指でつかむ。
「こいつを使ったら、民の命を守れると思わないか?」
『??』
「こいつをエブラーナにばら撒いて回収して、ほとぼり冷めるまで、オレが持ち歩いてりゃいいって思ったんだが……おまえ、どう思う?」
タタラに青い撒菱を見せびらかしながら、冗談交じりで聞いてみた。
『……!』
「あ、書くもんいるな」
『……』
タタラが何も答えず、両手をぶるぶる震わせている。
このうさぎは口が利けない。答えたくても答えられないことをすっかり忘れていた。
普段は筆談用に小さな黒板を抱えて歩いている。しかし、エッジがろくに話しかけないからだろう。
書類回収時は毎回執務室に手ぶらで訪れていた。
「ちょっと待て、っと……これに書いていいぞ」
『……』
引き出しから用箋紙とペンを出して、タタラに渡す。
すると、受け取ってすぐ何かを綴ってから用箋紙を見せてきた。
【何枚か使ってよろしいですか? あと、少々お時間をいただけると幸いです】
「ああ、構わねえぞ」
『……』
災害マニュアルには、青い撒菱を使った封印術で民を避難させる記述は一切載っていない。
果たしてタタラは、その理由に気付くことが出来るか。
それとも、エッジの何気ない提案に賛成するか……。
数分後、それまで何かを綴っていたタタラが用箋から紙を1枚破った。
回答を書き終えたようで、それを机に置いてくれた。
「どれど……!?」
紙に書かれた回答を読み始めるなり、ぎょっとした。
このうさぎ、じい並みに頭がいい。そう聞いていたが……。
—— —— ——
撒菱による封印術は、お館様が全国民の生殺与奪権を握るようなもので、とても危険です。
お館様が撒菱を水洗いする前に、命を落としたりでもしたら。
撒菱の中にいる民たちが一体どうなるか、お考えになられたことはございますか?
それだけではございません。
他の誰かが、先に撒菱を水洗いしてしまう。雨が降って濡れて、塗料がはがれる。
誰かに強奪される。破壊や紛失に海やマグマに落とすなど。
封印解除が不可能になるケースはいくらでもございます。
それらの事態に陥った場合、封印された人たちは一体どうなるか。
術書には、そのような記述が一切見当たりませんでした。
人の命がかかるような実験など出来ません。よって、その答えは不明のままでございます。
そういった理由から、この術は犯罪者捕獲など短時間のご利用に留めるよう。
今一度ご再考なさるよう、お願い申し上げます。
—— —— ——
「おまえ、よく気付いたな……!」
『……』
感嘆の声を上げると、タタラが恐縮したかのように頭をぺっこぺこ下げた。
—— —— ——
災害発生時や外敵が襲ってきたら、エッジは前線に立つ。
ほとぼりが冷めて撒菱を水洗いするまでに何があるかわからない。
よって、青い撒菱の封印術は不採用。
そもそも、エッジしか使えない。そんな理由から、秘伝忍術の類は災害マニュアルに載せていない。
—— —— ——
(さすがにマグマにポイ投げは考えてなかったぜ……)
エッジが死ぬこともだが、撒菱の取扱い——破損や強奪まで、指摘するとは思わなかった。
タタラがここで賛成と答えていたら、無能認定するつもりでいた。
ところが、回答は10行ほどに渡り、予想していた以上のものだった。
『……』
「お、まだ続きあんのか」
タタラが用箋の紙をびりびり破り、こちらに見せてきた。
どうやら、2ページに分けて回答をつづっていたらしい。
いつの間にか、机の上にペンと用箋紙も置かれている。
—— —— ——
先ほどのご質問からは、お館様が民を思い、自ら何とかしようとされるお気持ちが伝わってきました。
ますます尊敬の念を抱かざるを得ません。
一方で、特殊で便利な術を唯一お使い出来るがゆえに。
わずかながらも、お館様が独りよがりで驕り高ぶっておられるようにも感じました。
何事もおひとりで片付けようとされると、じい様や御伽衆並びに、お城勤の方々……。
使用人の存在意義がなくなってしまいます。
使用人だけでなく、民も同じです。
そこまでされてまで、お館様に守っていただかねばならないということです。
民のひとりとして、己の無力さが情けなくてたまりません。
—— —— ——
「参ったな……」
読み終えると、机に肘をつき頭を抱えた。
御伽衆の調査派遣を巡る、じいとの応酬。そして、2の月に入ってからのエッジの様子。
じいからそういった話を聞いて、タタラはこんなことを書いたのだろう。
明日みんなに内緒でバブイルの塔へ単身乗り込もう。
そう思っていた矢先に、痛いところを突かれてしまった。
「悪かった」
『……』
「試しに聞いただけで、使う気全然ねえから」
『……』
「心配しなくてい……」
こちらが謝っているにもかかわらず。タタラが頭を何度も下げてくる。
用箋に記した強気な発言と対照的な低姿勢ぶりが、卑屈に見えていらっとした。
「——頭下げるぐれえなら、最初から書くなよ!」
『!!』
エッジが怒鳴ると、タタラがびくりと身体を大きく震わせた。
「おまえ、いいこと書いてんだぞ? もっと自信持てよ」
『……』
「ほれ、持って帰れ」
ひとつうなずいたタタラへ、ひとまとめにしていた書類の束を手渡した。
『……』
書類を受け取るやいなや。タタラが挨拶代わりに深々一礼をしてから。
脱兎のごとく身体を縮こませて執務室から出て行った。
エッジはそれを見送ってから、頬杖をついてこうぼやいた。
「びびりか、そうじゃねえのかどっちなんだよ……」
うさぎさながらの挙動と、筆談の温度差が激しすぎる。
それでも、じいがあのうさぎを事務方に引き取った理由が何となくわかったような気がした。
「……ん?」
よく見れば、机の上に小さく折りたたまれた紙が置いてある。
エッジは見覚えがない。どうやら、タタラが退出する前に置いていったようだ。
(なんだこれ)
エッジは不審げに紙片を手にとり、それを開いていく。
何かお小言でも書いてあるのだろうか? そう思いながら、目を通し始めて数秒後……。
(くそっ! やられた!)
——翌日 2の月13日 早朝
墓石にふたつの墓標名が刻まれた夫婦墓。その下には何も入っていない。
13年前。両親はむごい死を迎えざるを得なかった。
民を守れず、人としても死なせてもらえず。さぞや無念だったろう。
「……二度と同じ過ちは繰り返さねえ」
エッジは両親の墓前を見下ろしながら、ぼそりとつぶやいた。
—— —— ——
バブイルの塔へは、早足で向かうことにした。
現在発着場に停めてある三隻の国有艇には、非常用食料、医療用具に毛布などがたくさん保管されている。
何かあれば、民を乗せて上空に避難出来る。
行って戻ってこれる保証もないのに、それはは使えない。
私室並びに執務室の身辺整理も済ませた。
エッジがああしろこうしろ思っていたことを。
じいたち使用人が何も言わずやってくれていたため、置き手紙は残さなかった。
—— —— ——
エブラーナのことは、じいたち使用人に任せておけば大丈夫。
「……だからさ、エブラーナのこと見守って……!?」
両親に誓いを立てていたら。突然目の前に、ぼんやりとした影がふたつ現れた。
「おやじ……おふくろ……」
影の正体は……両親の幻影だった。
最後に城で会った時と同じ、人の姿でこちらを見て微笑んでくれている。
名を呼んでも返事はなく、ふたりともすぐ消えてしまった。
それでも、これから旅立つ息子の背中を後押ししてくれているように感じた。
(行ってくるぜ)
心の中でそうつぶやいてから、バブイルの塔につながる坑道に向かうために。
背を翻してその場を離れた。
§
王族の者が眠る墓地を後にして、しばらく歩いていると。
親しみ慣れた気配を背後から感じて、足を止める。
「どうした? じい?」
「……」
「オレを止めに来たのか?」
振り向かずに、後ろに控える人物——じいにそうたずねた。
「いいえ、違います」
「っ、だろうな」
じいの答えを聞いて、ふっと鼻で笑ってしまった。
じいは、エッジがいずれこうすることをわかっていた。
だから、『若様! 行ってはなりませぬ!』と止めに来る訳がない。
昨日タタラが、執務室を去る前に置いていった紙には、こんな一文も書かれていた。
—— —— ——
じい様より、以下の伝言を預かっております。
『当面の間、若様不在で業務を執り行う準備は出来ております。シビエンのタツミからも現候補並びに若様全員に、何かあればとの条件で、次期国王の了承をいただいております』
—— —— ——
『風林火山』の林や山のごとく、どんと構えて待っているように。
じいは事あるごとに、エッジにそう進言しながら。
数日前に何気にこぼした若様の独り言を聞いて、その意図を読み取った。
そして、現国王候補の御伽衆全員と、当の国王に何かあった場合。
国王に即位するように、タツミに話を付けるなど……。
若様の不在が続くであろうエブラーナを見越して、密かに準備をしていたのだ。
「じいも親父とおふくろに会いにきたか」
「それもございますが……黙ってご出立されるなどという水臭い真似を止めに参りました」
若様は、みなに見送られながら出立する人間でない。
じいはそのことをよく知っているが、せめて自分だけは主君の出陣を見届けたい。
そう思って、たったひとりでここにやってきたのだろう。
「っ……お手上げだ。死ぬまでじいには敵わねえや」
「伊達に若様の倍近く生きておりませぬぞ」
エッジが完全敗北——白旗を上げて、苦笑しながら後ろを向けば。
老齢の忠臣も薄い笑みを浮かべて立っていた。
「……しかしながら、隠居が遠のきそうです」
「オレに申し出てすぐに、あれだからな」
エッジが空に首を向けてあれを指し示すと、じいも空を見上げて隠居延期の元凶を見つめる。
空には既存の弓張り月の隣に、あれ——もうひとつの月が同じ形で浮かんでいる。
「仕方がございませぬな……しょせん、予定は未定ですから」
ため息をつきながらそう答えたじいも、覚悟を決めたようだ。
今後の状況次第では、今以上に城内が慌ただしくなり、事務方の改革どころではなくなる。
じいは引継ぎが完全に終わってないのに隠居するような人間ではない。
よって年内での隠居は厳しくなるだろう。
(ぶっちゃけ、死ぬ直前まで働いてもらって構わねえんだがな)
ちょうどいいことだし、昨夜考えたことをじいに伝えておくことにした。
「先延ばしようがしまいが、タタラの奴はしごいとけよ」
「は? 突然なにを……?」
「じいが隠居したら、奴を秘書に置く」
「ひ、秘書ぉ!?」
エッジの提案に、じいが目をひんむいてまで驚いている。
うさぎ、ひよわ……などと、散々けなしていたくせに。とんだ手のひら返しだからだ。
「じいには……なぜ若様がそうお決めになられたか、さっぱりわかりませぬが……」
困惑したような表情を見せるじいに、昨日の夕方の出来事を話した。
青い撒菱に対する回答を読み、タタラがとても賢く、使えると判断したこと。
驕り高ぶる、独りよがり……など。国王に歯に衣着せぬこともつづっていたことを。
「去り際に置いていった紙の最後にな。13年前の火傷でお上のこと恨んでた時期があったって書いてあった」
「何と、そんなことまで……!?」
「みんな右にならえで、誰もお上を責めねえからさ……そう言ってくれる奴がいて、むしろ安心したぜ」
国にも落ち度があったから、エブラーナ城が襲撃されて大きな被害に遭った。
ちょっと考えれば、それがわかるというのに……。
お上——エッジやエッジの両親は13年前の襲撃の被害者。
これまでエブラーナでは、そんな認識を持つ者しかいなかった。
元来エブラーナが盲目的に王族を信奉する国民性だとしても、少しおかしい。
エッジは長年そんな引っかかりを覚えていた。
しかし、昨日初めて当時の心情を明かしてくれた者がいてほっとした。
「……タタラが若様の目には新鮮に映ったということですかな」
「そんなとこ」
エブラーナ国内は、国王相手に白々しいお世辞を述べる者。
本音を明かさない者や、心を殺してしまう者が多い。
そんな中、例え筆談でもはっきり物を言えるだけでなく、テストも難なく通過。
たった1回の引見だけで、エッジはタタラという人材を買った。
「ずいぶん評価が上がったようですが、それで秘書とはまた無謀ですな……」
「城ん中で御用聞きなら、会計やりながらでも出来るだろ」
秘書と言っても、あくまでも城内限定だ。
ギルバートに付き添う若い女性秘書のように外に連れ回す気はない。
魑魅魍魎どもの相手はしないのだし、じいも了承するだろう。
「……じいは反対ですな」
「なんで」
「あの者は、裏方に徹するのが適しておりますからのう」
「御用聞きも裏方じゃねえか」
「若様のお側付きは別です。それ以前に口が利けぬ時点で除外ですな」
じいの答えを聞いて、思わず眉をひそめてしまう。
(ずいぶん後ろ向きだな)
御用聞きは会話ありき。口が利けないならその役はつとめられない。
じいはそう思っているようだ。
「筆談じゃだめなのかよ」
「……」
「口が利けねえってだけでアウトじゃもったいねえだろ」
「そこまでおっしゃられるのなら……出来る限り……努力いたします」
「ああ、そうしてくれ」
どこか煮えきらない口調でも良返事をもらえたので、それでよしとした。
—— —— ——
タタラを事務方に引き取った張本人にもかかわらず。
なぜこの時、じいがこうも言いあぐねたのか。エッジは知る由もない。
—— —— ——
「それとさ」
「何でしょうかな」
「オレが死んだら『奴』もいっしょだ。適当に理由つけて、あいつに伝えといてくれ」
「……」
じいが黙り込んでしまった。
仮にエッジが死んだら、『奴』——ツクヨミも死んだことにしろ。
若様のそんな意をすぐ察したのだろう。
—— —— ——
じいは何も言わない。けれど、エッジがツクヨミとしてリディアに会いに。
ミストへ足を運んでいることを知っている。
じいなら『任務中の事故で死亡』などと。上手くリディアにごまかしてくれるだろう。
—— —— ——
(しょせん綺麗事だが……)
将来リディアが他の男のものになるかもしれない。そう思うと、嫌で嫌でたまらない。
それでもエッジが死んでしまったのなら、はっきり彼女に伝えてあげて欲しい。
「——わかったな」
「っ、かしこまりました」
厳しい口調で命じると、じいが渋々ながら応じてくれた。
「御伽衆が戻りましたら、バブイルの塔に向かうよう伝えればよろしいですかな」
「それでいい。この先、何が起こっても臨機応変に対応してくれ」
「もちろんです」
これでエブラーナのことを完全に任せられる。もう思い残すことはない。
そう安堵しながら、再びじいに背を向ける。
「後は頼んだぞ」
「……ご武運と1日も早いお帰りをお祈りいたします」
見送り役がたったひとりしかいない出陣式も終わった。
エッジは『風林火山』の『風』のように速く駆け出す。
そして、13年ぶりとなる戦いの渦に身を投じるのであった。
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