※この作品はR-18です。

フェイクラバーズ   作:かえで

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エッジ視点
自慰場面あり


偶然と言う名の確信犯 ※

 

 

 

 収納庫の一番奥で、ひとりの男が四隅の角に向かって膝立ちしていた。

 前のめりの姿勢になって、股ぐらでそそり立った自身のモノをしごいでいる。

 

「っ……はぁ、っ……ディ、ア……」

 

(あぁ、そろそろイキそ……!)

 荒い息をつきながら好きな女の名を呼んでから。

 それまで以上に、自身のモノをしごくスピードを加速させる。

 

「……ぅ、っ!」

 

 程なくして、うめき声と共に二、三度身体を大きく震わせた。

 息を整えながら頭をゆっくり上げると、右手を顔の前に近付ける。

 

「あいつに偉そうなこと言えた資格ねえんだけどなぁ……」

 

 白い欲望の塊でまみれた手のひらを視界に入れながら。

 男——エッジは、自嘲の笑みをこぼした。

 

 —— —— —— 

 リディアは信じていない

 リディアとはじめて出会ってから

 エッジがリディアのことを大人の女として見ていることなんて

 

 リディアは気付いていない

 リディアがセシルを思うように

 エッジもリディアに思いを寄せていることなんて

 

 リディアがローザをうらやむように

 エッジもセシルがうらやましくて仕方がないことなんて

 

 せめて今日はリディアのそばで夜を明かそうと

 『隠れみの術』を使って、密かに待ち伏せしていたことなんて

 

 リディアは知らない

 エッジが『リディア』という妄想の産物を餌に

 ほぼ毎夜と言っていいほど、自身を慰めて……

 それが終わる度に、むなしさに打ちひしがれていることなんて

 —— —— —— 

 

 懐から取り出した懐紙で、穢れた右の手のひらを乱雑にぬぐうと。

 汚れたそれを左手でつまみながら、右の手ですいすい印を結んだ。

 懐紙は瞬く間に炎に包まれて、灰がぽろぽろ床に落ちていく。

 

「ほんと『火遊び』って、あっけねえよなぁ……」

 

 そうぼやきながらも、エッジの表情は清々しい。

 

 いつもなら空虚感に襲われるのに、今日はその気配すらない。

 それどころか『火遊び』を済ませたばかりで、満足感で満たされている。

 

 未だ手や指に残るのは、柔らかくなじむような肌の感触。

 未だ耳に残るのは、初めてであろう快感に震えるリディアのあえぎ声。

 そして未だに目に焼き付いて離れないのは、理性の欠片もないリディアの乱れた姿。

 

 突然あんなことを始めたセシルとローザに感謝したい。

 例えリディアに触れたのは、スキルを駆使して演じた『セシル』だとしても。

 あれだけ悦んでくれたのだし、今日はそれで十分。

 明日からろくに口を利いてもらえなさそうだが、仕方がない。

 

 落ちた灰は空調の風に吹かれ、てんでばらばらに散らばっていった。

 その様は、まるで敵に襲われた祖国を思い起こさせる。

 

 情動の証拠隠滅を終えて、あとは寝るだけ。

 エッジは壁にもたれかかるように座り、目を閉じた。

 固い床や壁で睡眠をとるのは苦ではない。忍者はどこでも眠れるように鍛えているから。

 

(とっととゼロムス倒してえなあ)

 祖国の再建、王位継承……。

 今の戦いが終わったら様々な問題が待ち構えているが、楽しみで仕方がない。

 リディアのことも、諦めるつもりはない。

 幻獣界はいろいろな意味で遠すぎるが、なんとかなるだろう。

 

「おい。ずっと起きてたんだろ?」

『……』

「いいもん聞かせてやったんだ。今日のことは内緒な」

『くええぇー』

 

 部屋には誰もいないのに、誰かに語りかけるようにつぶやいたら。

 静まり返った収納庫の中央から鳴き声が響いた。

 

(口が堅てえ奴で助かったぜ!)

 エッジはにんまり笑みを浮かべると、今度こそ本当に寝るために。

 両手で『短眠の術』の印を組み始めたのであった。

 

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