フェイクラバーズ 作:かえで
——午前10時半すぎ エブラーナ城
ここは城内の地下に位置する書庫。
使用人なら、誰でも出入りが自由となっている。
細長い格子付きの高窓しかなく、丈が高い書棚が整然と並ぶだけの部屋だ。
そんな暗くて殺風景な場所にいるのは、ザンゲツただひとり。
奥壁にもたれて座りながら読書をしている。
忍者は夜目が利く。暗い中でも、行灯や篝火なしでも書を読める。
「はあぁ……素晴らしい……!」
ザンゲツは至福の声をもらしながら、満足げに表紙を閉じた。
2日がかりで『異世界への誘い』を読み終えた。
発売後半年足らずだが、近々世界ベストセラー入り予定。
顔なじみの書店員がそう話していた。
『ミストに移住してまだ10年も満たない僕が、この書を出版する事が出来たのは、他ならぬミストの村のみなさま並びに、リディア殿の多大な協力のおかげです』
著者がそんな感謝の一文を、あとがきに記していた。
実はこの書。唯一幻獣界を直に詳しく知るリディアも、監修として名前が載っている。
幻獣界を『正しく』知るための、リディアとミストの村公認幻獣界ガイドブック。
そんな『異世界の誘い』が売れるのも当然とも言えよう。
—— —— ——
ザンゲツが、お城勤から『御伽衆』に昇進して、約1ヶ月が過ぎた。
同じ御伽衆のイザヨイとゲッコウは特殊任務のため、現在エブラーナ城にいない。
イザヨイは、単身で1週間前から大陸北部の某屋敷へ。
ゲッコウは、3日前からお城勤3人を連れてトロイアへ向かった。
御伽衆がお館様から命じられる特殊任務は、ほぼ極秘扱い。
それ以上のことは、ザンゲツも知らない。
ザンゲツは同僚だから、かろうじて行き先を知ることが出来る。
しかし、御伽衆以外の使用人は、ふたりが今どこで何をしているか全く知らない。
『あの人たち、仕事でどこかに行ったみたいね……』
ふたりを城内で見かけなくなって、はじめて特殊任務についたと気付く。
イザヨイ唯一の友人である女中ハツイも、毎日休憩中寂しそうにしている。
ザンゲツがいなければ、じいも他の使用人と同じ枠に入っていた。
—— —— ——
ザンゲツは昇進したものの、お館様からの扱いは以前とほとんど変わらない。
『お城勤や事務方が忙しいようなら応援に入ってやれ。あとは書庫で歴史本でも読んで、奴らがくるのを待ってろ』
当面の間、城内待機をぞんざいに命じられた。
それ以来、毎朝出勤すると、まずお城勤や事務方のお仕事状況を伺う。
応援が不要なら、朝から晩までこの書庫で読書にふけっている。
ザンゲツは歴史と活字だいすき人間。現状に不満はない。
ところが、ここにある書物は、9年前のエブラーナ城襲撃の難を逃れている。
ほぼ全て、若い頃から空き時間に読んでいたものばかり。
ついに先日、読む本がなくなってしまい、それからは自前で書物を持ち込んでいた。
「さて、次は何を読も……ああ……これか……」
そばに積んでおいた数冊の書物から1冊、適当に手にとった。
その書物の表紙とタイトルを見て、思わず苦笑を浮かべてしまった。
「いやはや……齢50過ぎた男が、こんな本を買ってしまうとはなぁ……」
表紙には、女性好みの美麗なイラストが描かれている。
おまけに書のタイトルは、『いつ如何なる時も貴女を護る』。
恋愛小説の書名は、どうしてこうもこそばゆいのだろう。
『いつ如何なる時も貴女を護る』は、エブラーナ初の世界ベストセラー小説だ。
内容は覆面忍者とお嬢様の悲恋もの。
女性向け小説の割に、戦闘場面が多いので購入する男性もかなり多いという。
(おっ、お勧めだから買っただけよ! 拙者の好みではない……!)
書店員から勧められて、買わぬ訳にはいかない。
実際買うか買わぬかお店で迷っていたら、数人の男性が買って帰っていったし。
心の中で必死で言い訳しながら、恐る恐る表紙を開いた。
ぱらぱらページをめくって、肝心要の本編を読み始める。
ここまで来ると、ページ内には文字がだだーっと並んでいるだけ。
表紙が女性好みだろうが、きらきらしてようがどうでもよくなる。
小説の世界に没頭するには、全く時間がかからなかった。
読み進めていくと、主人公の覆面忍者が自身の過去を回想する場面に入った。
ザンゲツも、ついつい自身の半生を走馬灯のように振り返る。
(器用貧乏とは、まさに拙者のこと……得意分野が幅広いと損よなあ)
ザンゲツは内勤業務を希望して、試験に合格。使用人として雇われた。
しかし、たった数年で現場——お城勤に転属させられた。
気が付けば、人生の半分近く現場忍者をつとめている。
お城勤の仕事は、一部を除けば特に不満はない。
けれど、未だに内勤業務への憧憬を止められないでいる。
内勤は現場より給与は低い。一方で、定期的に休みをもらえるし、ほぼ定時で帰れる。
結果的に、愛妻と過ごす時間が増える。
カルミネの潜入捜査は、半年も妻と会えず本当につらかった……。
「ザンゲツ……」
「……」
「おい」
「……」
それが今はどうだ。現場職でありながら、ほぼ内勤職と変わらない。
こうして書物を読みふけることも出来る。
定年まで、毎日こんな生活が続けば申し分ない……。
「——こら」
ぺちんっ!
「っ!!」
突然おなじみの声が聞こえると同時に、額に鋭い痛みが走る。
「じい様……」
顔を上げれば、白ひげを生やした老人が何とも言えぬ表情で行灯を手にしながら。
こちらを見下ろしており、一気に現実に引き戻されてしまった。
「御伽衆とあろうものが、隙を見せてどうする」
「……」
(拙者はお城勤や御伽衆に、好きでなった訳ではないのに……)
じいの言葉がやけに引っかかる。
返事をせず、じと目でじいを見やってから小説に視線を戻す。
「なんだ、その態度は」
「もうどうでもよいです……」
「っ、現実逃避しおって……!」
呆れ声のじいをよそに、ザンゲツは小説の活字を追い続ける。
(行灯を床に置いて……ここに長居するおつもりか)
かたりと物音が聞こえてきて、その方に視線を移せば。
じいがかがみ込んで、ザンゲツの本を1冊ずつ眺めている。
「……もう『お館様被害者の会』は、解散でよいでしょう」
「は? 何を言うとるのだ」
「ちいとも会員が増えませぬしなぁ」
「先月、継続する言うておったではないか」
確かに、前回の会合で『おっ、「お館様被害者の会」、このまま継続ですぞ!!』と言った。
言ったが、あれから状況が変わった。だから、解散もやむなしである。
「記憶にございませぬ」
「くっ……1か月でもう折れたか。情けない奴め」
「おかしいのは、じい様ですよ」
「何だと?」
「事前の予想通り、お館様からつまはじきにされつつあるのに、なぜそうも堂々としておられるのですか」
「……検閲のことか」
「そうです」
じいは、エブラーナの内政を取り仕切っているにもかかわらず。
自身の予想通り、エッジに冷遇されている。御伽衆に関してはほぼ蚊帳の外。
—— —— ——
じいは、昔から城内で様々な権限を持っている。
そのうちのひとつに、信書の管理権限がある。
お城発着の書簡や伝書鳩での通信文などを、真っ先に検閲する役目を担っていた。
ところが、この月からその権限をお館様に奪われて(ほぼ強奪)しまった。
現在は、じいの代わりに、お館様。
もしくは、お館様が丸め込んだ内勤の者が検閲している。
お館様側が不都合と判断した受信物は、一切閲覧出来ない。
なぜなら、お館様の手元に渡り、すぐ処分されてしまうから。
—— —— ——
「まあ、ミストの情報が追えなかったら、何か手を打っていたかもしれんがな」
「ツ、ツキノワからの報告書を確認出来るのですか?」
「ミゼル殿の依頼と、ミストの諜報は御伽衆の管轄ではないからのう」
「そうでしたか……」
ツキノワから送られてくる報告書は検閲後、じいも閲覧出来るという。
じいがミストの情勢を知ることが出来るのは、唯一の救いかもしれない。
朗報を知り、安堵した。
「何にせよ、わしも使用人人生に先が見えておる。若い者に任せるいい機会よ」
「ま、まだありますぞ??——あんな術をかけられた以上、お館様にもう太刀打ち出来ませぬよ」
「そなたは、前から若様に敵わないではないか」
「っ、拙者ではなく、じいさまのことですよ」
「ふむ……」
じいが渋い表情で、あごに手を添えた。
それを目にして、ザンゲツも自ずと自身の左の首筋に軽く触れる。
じいの右の手のひら。そしてザンゲツの首には。
米粒ふたつ分ほどの小ささだが、黒い逆五芒星の紋章が刻まれている。
—— —— ——
エミール特製の毒による、お館様の身体に起こった変化。
それが原因で、いずれエブラーナは禅譲制に移行する。
実は『ツクヨミ』とかいう、覆面忍者の正体はお館様……など。
じいとザンゲツは、他の使用人が知らない秘密をそこそこ抱えている。
だからだろう。現在ふたりは、お館様に制限をかけられている状態である。
まずは、ミストの村長ミゼルがエブラーナ城にやってきた翌日。
城内にこんなお触れが出された。
『今後ミゼルはエブラーナ城に出入り禁止。現れても追い返すこと』
続けて、ザンゲツとじいはお館様にこう命じられた。
『今後、ミストの村長と会うな。連絡も取るなよ』
理由を聞いても教えてくれなかった。
ミゼルが使用人、特にじいやザンゲツと仲良くなる。
それがお館様が気に入らないことだけはわかった。
更に、ツキノワがミストに旅立ってから3日後。
ザンゲツとじいは、お館様によって特殊な忍術をかけられた。
その証として、黒い逆五芒星の紋章を身体につけられてしまった。
それが消えない限り、ふたりはある人物2名のそばに近付くことが出来ない。
—— —— ——
「せめて、あれの解術法がわかればよいのだが……」
「さすがに拙者、文殿の書物は目を通しておりませぬ」
「仮に書庫にあったとしても、歴史ものではない。そなたはしっかり読んでおらぬわ」
「う、それは……」
「書が若様の手元にある限り、盗み見も厳しいしのう」
じいはゼロ。遁術を使えない。ザンゲツは術にあまり興味がない。
ふたりとも、その術の詳細が記されている某忍術書の存在をすっかり忘れていた。
……お館様に術をかけられるまで。
「そもそもですなぁ、お館様は他の者に優しすぎますよ」
「仕方がなかろう。そなたとわししか秘匿事項を知らないのだからな」
お館様に対する意識。お館様の振る舞いや態度。
じいやザンゲツ、それ以外の使用人で温度差があるのも問題だ。
—— —— ——
お館様は、ザンゲツとじいへ強引な手段に出る代わりに。
ふたり以外——他の使用人の前では、いつもと変わらぬ振る舞いを見せている。
だから、誰もお館様がおかしいと思っていない。
このままでは、『お館様被害者の会』の会員が増える前に。
現会員の心労がたたって、あの世へ行く方が早いかもしれない。
—— —— ——
お館様のミストやシビエン家に関する動向にも、大いに疑問を感じる。
果たして、何の目的で動いているのかよくわからない。
「もう拙者は……くたびれました」
「おい」
禁術をかけられた。ただでさえこわいお館様が、今はめちゃくちゃこわい。
お館様の影武者任務は大嫌い。そんな仕事やりたくないのに、またやらされる……。
『御伽衆』に昇進してから、ザンゲツは不満がたまっている。
本を読んでいないとやっていられない。
「こうやってですなぁ。定年までここの牢名主で」
「——ばかもんがっ」
ぺちんっ
「っ!」
本を読むふりしながら、ぶつぶつつぶやいていたら。
またもや、じいに叩かれてしまい、額に再び鋭い痛みが走った。
「ごちゃごちゃ言うておるが、そなたは単にシビエンが来るのが嫌なだけではないか」
「まあ、そうとも……言いますなぁ」
「こうして愚痴をこぼせるだけでもマシと思え。若様が『深海の碧』なら、今頃わしらは傀儡にされとるのだぞ?」
「……なにゆえ、じい様はそうも余裕しゃくしゃくなのですかぁ?」
じいは、お館様の最側近を長年つとめてきた。
お館様からの冷たい仕打ちに、もっと落ち込むかと思っていたのに。
ザンゲツは不思議でならない。
「若様にとって、わしらが都合が悪い存在ならば、左遷や解雇すればよかったのよ。そうされなかった時点で、少なくとも国益のために必要とされておるという証左ではないか」
「確かに……今こうして、『お館様被害者の会』の臨時会合を開催出来てはおりますな……」
じいの言う通り。お館様は、もともと情が厚く非情に徹し切れない人間だからだろう。
ザンゲツたちを野放しにしている面もあるように見受けられる。
「それよりな。わしは、そなたに謝らねばならぬことがあってな」
「はいぃ?」
「——やはり、仮説は正しい」
「!?」
「ここ数年の若様の行いは全て、リディア様に繋がっとる。——すまなかった」
じいに頭を下げられたことで、ザンゲツの胸がじわじわ熱くなる。
長年、力説してきたことがついに報われた。
—— —— ——
『ジェラルダイン家に生まれた者は、特定の人物、事物に強い思い入れを持つ傾向にある』
初代国王が、エブラーナと民。前国王は、おそらく王妃。
エミールは、エブラーナ国王の座……。
ジェラルダイン家最後のひとり、お館様は——リディア様に違いない。
前々より、ザンゲツは『お館様被害者の会』の会合で、そんな仮説を訴え続けていた。
じいは、今までお館様の思い入れ対象だけは認めようとしなかった。
しかし、ここ約1ヶ月間のお館様の動向を見て、仮説は正しい。
そんな結論に至ったと思われる。
—— —— ——
「や、やっとお認めになられましたかぁ……!」
長年エブラーナの内政を仕切り、王家に尽くしてきたじいが認めたのだ。
もう確定でいいだろう。
「シビエンもだが、ジェラルダインも相当厄介な血を抱えとるわ」
「どちらもここまで繁栄出来たのは、それも一因だと思われますが」
「そなたの言う通り。しかし……先にジェラルダインが逝くとはな……」
じいの表情が、どこか寂寥感漂っているように見えた。
シビエン家は建国以来、血の影響がいい方に動いた。
だからこそ、エブラーナ王家最大支持勢力の位置を維持し続けている。
同じくジェラルダイン家も100年近くに渡り、この国を治めてきた。
それがエミールのせいで、もはや風前の灯火。
禅譲制に移らざるを得ないことに、じいは未だ悔いがあるようだ。
「それでな、ザンゲツ」
「はい」
「そなたに、『お館様被害者の会会長』として頼みがあるのだ」
「頼み? 仕事ですか……?」
「ああ。悪い話ではないと思うぞ——」
会長のじいが、副会長のザンゲツにひそひそ声でこう耳打ちした。
「今から、『 』の元を訪ねて、『お館様被害者の会』の勧誘をしてくるのだ」
「どうやってですか?? 『 』とは、接触したくても出来ませぬぞ?」
その人物が会員の条件を満たしているのは、ザンゲツも十二分に知っている。
しかし、じいもだが、ザンゲツもこの人物のそばに近付くことが出来ない。
一体どう勧誘しろと言うのだ。
「遠くからでも意思の疎通が図れる方法はある」
「何ですとぉ!?」
じいはご丁寧にも、その道具まで準備していた。
その方法なら、道具の素材と環境条件がよければ。
最高100mぐらい離れていても、意思の疎通が可能だという……。
「いやぁ、素晴らしい……! さすが、じい様ですなぁ!」
お館様から、過去にない厳しい仕打ちを受けながらも。
じいが悠然と構えていたのは、この方法を思いついたからだったらしい。
「本日『 』は、夕方までひとりで過ごしとるはず。勧誘には絶好の機会よ」
「ツキノワがいないのならば、報告されることもありませぬなぁ」
「さよう。本日さえ乗り切ればこっちのものよ」
この先は別の方法で連絡を取ればいい。
それなら、お館様にバレても難癖つけて突っぱねられる自信があるという。
「しかしながら、今から出かけてバレないでしょうか?」
「若様は、もうお逃げになられた」
「えぇ……?」
お館様がいなくなったから、じいはここにやってきたという。
—— —— ——
つい1時間ほど前、お館様がエブラーナ城から脱走した。
じいはそれを知り、昨日ミストから届いたツキノワの報告書(検閲済)を読んだ。
『リディア様は、明日ご友人の方と薬草園にお出かけになる予定。帰りに城下町へ向かうと話していました』
報告書にそんな記述が残されていたのを確認してから、城の倉庫へ足を運んだ。
保管されている国有艇の鍵を調べてみたら、1本消えていたという。
—— —— ——
「おそらく、若様は覆面……『ツクヨミ』として、発着場でミストからやってくるリディア様を待ち伏せて、国有艇で薬草園に連れていってさしあげたのであろう」
「もう到着しているでしょうな」
「昼過ぎまではお帰りにならんだろう。国有艇が一隻空いとるから、行って戻って来ても十分間に合うぞ」
「でっ、では今から……!」
(鬼のいぬ間に何とやらだ! 早く脱出せねば!)
『お館様被害者の会』の発足から約10年近く経った。
ついに新会員様入会の好機とわかれば、がぜんやる気も湧いてくる。
ザンゲツは床に置いてあった書を全て胸に抱えて、さっと立ち上がった。
「待て待て」
「え?」
「まだ話は終わっとらんぞ」
「……まだ何か?」
じいに呼び止められてしまい、勢いが削がれてしまった。
「『毒をもって毒を制す』とよく言うであろう」
「はあ……」
「わしはな、毒を制するのは、やはり薬だと思うのよ」
「薬、ですか」
「——若様を止められるのは、リディア様しかおらぬ」
「!?」
ザンゲツは、じいが何を言わんとしているかすぐにわかった。
迷走しかけているお館様を、毒——内輪の者の力では抑えられない。
やはり、薬——リディア様でないと収まりはしないということ。
「しかしですなあ。リディア様が、お館様のことをどう思っておられるか。じい様はご存知なのですか?」
「さすがにそこまではわからぬ」
「まさか、事情を全て打ち明けて、お館様を止めてもらうよう頭を下げるおつもりですか?」
ザンゲツにそう問われると、じいが懐に手を入れてごそごそしながらこう言った。
「それをやる前に、まず確認せねばなるまいな」
「……観測気球を飛ばすと」
「さよう。だからな、そなたにもうひとつやってもらいたいことがあるのだ」
(こ、これは……!!)
じいが、にやりと笑いながら懐から何かを取り出す。
すると、それを手のひらの上に乗せてこちらに見せてきた。
「本日は忙しくなるぞ?」
ザンゲツは、青く塗られた何かを目にした瞬間。
観測気球の狙いに気付き、じいへにやりと笑みを返した。
「これぐらいどうってことありませぬ……!」
「全く。調子の良い奴じゃ……」
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