フェイクラバーズ 作:かえで
(幕間)潜入捜査
5 years later
——某施設
ゲッコウが施設の調査を始めてから、早や10ヶ月が経過した。
最初は鳴かず飛ばずだったが、途中から傭兵見習いに扮して施設内に潜入。
中の様子を探るようになったおかげで、やっと地下1階の存在を確認することが出来た。
今日こそ、手がかりにつながるような会話を拾えるだろうか?
姿が消えているにもかかわらず、息を潜めながら室内の様子を眺めていた。
「……こちら被験体33-4番の過去1週間の生体記録と、投与した調剤配合一覧表です」
「どれ……」
白衣を着た若い男性が、2枚の用紙を手元から引っ張り出す。
年配の男性が、椅子に座ったままそれを受け取った。
内容を確認し始めた年配の男の背後に、そろそろと近付く。
生体記録は裏返しの状態で机に置かれている。これでは内容が把握出来ない。
残りの一枚、年配の男が今読んでいる調剤配合一覧表に視線を移す。
そして、そこに記載されている文字の配列を目で追い始めた。
「いかがですか」
「……この配合。少しこっちの量を増やしてみたらどうだ」
「わかりました。早速調整します」
年配の男が、書類を2枚とも若い男に返してしまった。
(……何とか間に合ったか)
ほうと胸をなでおろす。
長い時間確認してくれたおかげで、内容を頭に叩き込むことが出来た。
「また1週間様子見か」
「それぐらいの日数など短いものかと」
「それもこれもルゲイエが残してくれた資料のおかげだな」
「はい、来週また記録をお届けに上がります」
ばたん
若い男が立ち去ると、年配の男が何も置かれていない机に向かう。
しばらく様子を見ていたが、男は何をする訳でもなく、前方をじっと見つめるだけ。
目は開いているが焦点が定まっていない。様子がおかしい。
これ以上は、何の情報も得られないだろう。
懐から小さな玉を取り出し、男に向かって投げつけると、もくもく煙が立った。
煙には睡眠効果がある。
男が机に突っ伏して、眠りについたのを目視確認してから、部屋を去った。
(忍具もそろそろ底を尽く、いい加減戻るか)
このままここにいたら、正式に傭兵として採用されて他国に派遣されかねない。
そうでなくても、正式な身分として行動を管理制限されてしまうだろう。
同じ場所、同じ身分のままでの立ち居振る舞いはもう限界だ。
いつもなら寝床にしている2階の大部屋に戻るが、もう行かない。
1階へ向かい、非常口から屋外へ出る。
走っている最中、術の効果が切れて姿が現れてしまったが。
すぐさま暗闇に紛れて、エブラーナ城まで走り続けたのであった。
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