アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ 作:姫鼠まりあ
コールドスウォームの時間凍結が無効となってから、この世界の気候はかなりの様変わりを見せた。
四季……というか六季の発生を始めとした多種多様な異常気象。ただしそれは次第に例年通りのものとなり、惑星全体に定着していく。コールドスウォームを起点とした球体。地球とは全く違う気象環境はそれだけでわくわくしたし、慣れるのに結構時間がかかった。
一年の日数は対して変わらんのに六季あるからな。元の暦は四の月と五の月数日という形を取っていたけれど、この六季に合わせてそれらの見直しが入る流れができている。
今は冬季。
アスガードにも雪が積もったけど、なんか呼ばれたんで俺は今帝国にいる。
ツバナ曰く今日は供養祭であるのだとか。
死に行った者達の魂を見上げ、自分たちは大丈夫だと誇示する祭り。
魔素の無い世界。けれど、魔素があった事実は消えない。
それによって滅ぼされた国。滅んだ国。人。魔物。そして魔族たち。
久方ぶりに出る供養祭だ、俺も昔を懐かしむくらいのことはしよう。
「というわけで、久しぶりだなハルフィーさん」
「何がというわけなのかわからないけれど、本当に久しぶりだねぇヴェルグさん」
「はいこれご祝儀。……五年越しだけど」
「アッハッハ、こんな遅れてもらうことがあるとは思ってなかったよ。というか、結婚で言うならもう私の孫が結婚する時期だって」
「マジか。時の流れこえー」
ハルフィーポーションは──なんか大企業になっていた。
まぁハルフィーさんのポーション作りの手腕が各方面で評価されたのがデカい。特に学術都市からのアツいバックアップがあって、ハルフィーさんは一躍時の人となった。"心化"に対していち早く反応してポーション出せたのもデカい。
また、「元気になるポーション」という俺の感覚から言うと怪しいとしか思えないネーミングのポーションが代表商品になった。これは「世界に満ちる"元気"を液体の形にして保存する」とかいう、世界に元気を満たした俺ですら原理の分からない商品で、どうしても一人で遠方に探索に行かなければならない冒険者や遭難した冒険者などがこのポーションで命を繋いだとかなんとか。
イサカリのお墨付きである。アイツ未だに一人武者修行みたいのしてるからな。孤独死加速するって一応教えたんだけど。
「供養祭ってことは、やっぱまたセックス系のポーション爆売れか?」
「まぁね。ヴェルグさんも一つどうだい?」
「いやー、俺のトコはポーション無くともガンガンだからさ」
「あはは、お盛んだこと。酔い覚ましはいる?」
「それも要らない……けど、今回は欲しいポーションがあって来たんだ」
「お、ヴェルグさんが自分から。聞くよ、何が欲しいの?」
「耐性無効化ポーション。……の、原液レベルに濃縮された奴」
ハルフィーさんは──驚いた顔をする。
ま、彼女には伝えていたからな。その有用性を。
「ってことは、ついに、なんだ」
「それでもまだ五分五分だけどなー。ここ数年、なんもしなかったわけじゃないし」
「強くなりすぎて困ってるってのに足を止めないのがヴェルグさんらしいね。……はい、これだ。ま、効かなくても落ち込まないでよ、もっと強いのを作るからさ」
「ありがとう」
その後。
二、三……近況報告をした。エルシータが子供達に子ども扱いされてずっと怒ってるとか、帝国ギルドの冒険者が結婚ラッシュ入っててとんでもないことになってるとか。
ちなみに俺のやり方からインスピレーションを得たらしく、ハルフィーさんは「吸収無効ポーション」という避妊薬も作っている。強い。
「っと、ちょいと話し込み過ぎたな。んじゃそろそろ行くよ。さみーから、風邪ひかないようにな」
「薬屋に何言ってんのよ」
「そりゃそうか」
店を出る。
寒い、ね。……この世界に来てから一度も感じたこと無いけど……このポーションで、もしかしたら、かぁ?
アポなしで研究院に来た。当然待ち時間が発生する──かと思いきや。
「……ヴェルグ殿」
「よう、レジーナ。いつもみたいな蒼白な顔はどこやったんだ。随分と嬉しそうだけど」
「ふ──ふっふっふ。まぁ、いつもは、その……"最初の失敗"があったから、新しい成果を見せるのには恐怖があった。兄から懇切丁寧に何がダメなのかを諭されていなければ、私はもうこの世にいなかったのやもしれない」
レジーナ・イングリディアナ。
人工聖石の件で俺が襲ったあの日から縁は切れたものだと思っていた……のだが、兄のリチャード・イングリディアナの下を訪ねた時丁度いて、丁度いいかラ、と仲直りをさせられた。リチャード・イングリディアナ曰く、「妹は視野狭窄が激しいけどネ、方向性を与えたラその方向にちゃんと突っ走れる良い研究者だヨ」とのこと。
バーリアントゥのように、"心化"が起きても、ドゥームスの声が聞こえなくなっても、人間が嫌いである、という魔族はまだ残っている。同じく魔物もまだまだ人間の脅威足り得る。
それらから人間を守りたいという気持ちは変わっていないそうで、俺が帝国を訪れ、研究院に来るたび成果報告……あるいは経過観察をする次第となった。
最近の報告は正直言って「言葉が出ない」くらい微妙なものだったんだけど、なんぞ今回は自信があるらしい。
「これだ」
「……粉?」
「そう。これはとある女性冒険者の体質を調べさせてもらった時にできたものでね。大気に晒してから二十四時間の間魔物を誘引し続ける。近づけなくさせる、という考えに固執し過ぎていたのが今までの失敗だった。逆だったんだ。一か所に集めてしまえば人間の通る道ができる」
「……」
魔物を誘引する体質の女性冒険者……。
「一応聞くんだけど、これ原材料は?」
「し、心配ない! 魔物など使っていないし、何より少量から多くを製粉できて」
「これエリザヴェータの愛液だろ。エグいのは相変わらずだな」
「いや……その……あっちから提供してきてて」
「マジ?」
ノズヴェルガーとデルフォイアーの娘、エリザヴェータは、予定していた年齢から五年ほど遅れて冒険者になったらしい。曰く自分の強さを過信する期間は終わったとかなんとか。厨二が抜けたのかと思ったら、厨二を馬鹿にしてクールぶる奴になってた時は本当に将来有望だなって思った。
で、彼女の体質は、アリスの危惧通り「それはもう」だったようで、こっちの大陸に来てから凄まじい頻度で襲われ、犯されているのだとか。ただ面白いことに魔物はそれでエリザヴェータを食べようとはならず、守らなければ、となるようで、召喚士でもないのに数多くの魔物をテイムする……テイマーとでも呼ぶべきジョブになっているとかなんとか。
なお、無事色狂いだそうで。いろんな魔物と日夜交わっているらしい。友人の娘のそういう話あんまり聞きたくなかったんだけど、有名過ぎて嫌でも耳に入ってくるんだわ。
その愛液。
「……まぁ本人がいいならいいけどさ。エリザヴェータの体質が変わったり、出なくなったらどうする気なんだ」
「それまでに量産体制を整える。なんとしてでも」
「原材料の公表は? もうやったのか?」
「……していない……のだが、知り合いの研究者は皆私へ変態を見るような視線を向けてくるようになって……」
「まぁエリザヴェータ有名人だからな。そりゃな」
機械姦スキーとしてはカプセル型の機械に繋がれたエリザヴェータが一生愛液絞り取られる……みたいなのを想像をしたけど、そうならなくて良かった良かった。
……あれ、待てよ? そういやハルフィーさんとの世間話の時、エルシータが新しく開発した一体型エロ魔物の件で、そういうのを聞いたような。
丸呑みからの愛液絞り……消化液が出ない魔物になっているから、安心安全なままイき果てられる女性用エロ魔物とかなんとか。
提携してたりして。
「そういえばヴェルグ殿。兄が結婚した件は聞いているだろうか」
「え、マジ?」
「やはり知らないか。……学術都市の二十一人の志願者。その内の五人と結ばれたそうだ。いや兄とはいえ他人の恋路にとやかくいうつもりはないが、そんな甲斐性が兄にあったのかと驚きでいっぱいだよ。……しかも、その……日夜人には言えないようなコトをしているらしいのがまた」
「はー。……やっぱ変態揃いだったんかな」
それしか手段が無いから石化、まではいいけど。
どうせ石化するなら露出したい、は善悪関係なく変態だろってずっと思ってたんだよな。
「レジーナはしないのか、結婚」
「しばらくは。私の恋人は研究なのでね」
「研究院に籠ってるから出会いが無いだけじゃねーの?」
「……今回の成果報告はこれで終わりだ。帰ってくれ」
地雷踏んだか。
んじゃお暇お暇ーっと。
色々考えて最後に回そうかと思ってたんだけど、丁度近くを通って目が合ったのでそのまま天幕の中に入る。
「うひー、寒ぃ寒ぃ。しっかしお久しぶりですねぇ旦那さん」
「結構久しぶりか、そういや。ん……この天幕の中、なんか焚いてるのか?」
「冬季と雨季の間だけは火燃石を地面いっぱいに敷いてるんでさぁ。奴隷の皆さん方が風邪ひいたらいけねぇから」
「お前本当に偉いよな」
暖かいのかどうかはわからなかったけど、炎元素が視えたから問うた。
実際檻の中にいる人々は寒そうにしていない……どころかちょっとくつろいでいるまである。なお、彼ら彼女らが全裸に見えているのは俺の視界がそうってだけで。ノズヴェルガーは随分と前から奴隷たちに服を着せる方針を取っている。
帝国の奴隷市場に合わせて服をひん剥いていたけれど、何言われようと自分を貫くから構わない、と言ってそういうスタイルを取るようになったそうだ。
「しっかし、すいませんね旦那さん。今奴隷売ってなくて」
「え、じゃあこいつらなんなん」
「もう売り手予約のついた奴隷の皆さま方でさぁ。ちょいと資金調達に準備がかかるお客さんとか、供養祭終わってから迎えたいってお客さんとかが多くてですね。今のあっしはこの人らの健康管理をするだけの店主って奴で」
「へー。……相変わらず厄介ごとの塊みたいなのが揃ってるけど」
「目利きには自信がありますよ。大丈夫、信頼できるお客さんしか通しませんから」
ちなみにこのスタイルになったのならデルフォイアー呼べるんじゃね? というのを前に話したんだけど、曰くデルフォイアーは二人の帰りを家で待つから来ないとかなんとか。まぁバーリアントゥが次元スキル使えることが判明してからは、結構頻繁に転移して会うようになっているらしいけど。
バーリアントゥは結局デルフォイアーの眷属になったらしい。外法によって削がれた全ステータスは帰ってくること無く、アリスと共にデルフォイアーの屋敷で働いているとか。
そういえばあのデカいマギピコクについてだけど、アレはエリザヴェータについていったはず。思えば一番に彼女を見つけて一番に惚れこんでたのがアイツだったんだろうなー。
「ああそうだ旦那さん、丁度いい機会だ、これ受け取ってくださいよ」
「ん? ……指輪?」
「妖狐族が婚姻の時相手に贈るものでっせ。ほら、あっしらは契約スキルを解いちまえるから、結婚の契りがあんまりでけぇ効果を持たねえんでさ。ところがどっこい、少なくともこのリングを嵌めている間はこのリングが相手の契約スキルを縛り付けるんだ。そうすることでより強固な契りを為せる」
アイテム名はそのまま【エンゲージリング】。効果は契約スキルの効果増大、及びペアリング済みの【エンゲージリング】と共鳴し、契約スキルを固定する。
……こいつめ。
「ヒヒヒ、旦那さんが誰と恋仲になるかなんてな知りませんが、必要になることはあるでしょうや。旦那さんの分と誰かさんの分、二つ。渡しておきますからね」
「……もう二つあったらくれ」
「ヒヒっ、なんだ、旦那さんは既にわかってんじゃねぇですか。いいですよ、あっしは嬉しくて仕方がねえからサービスしますよ」
見透かしたような顔しやがって。
さっきレジーナにサンプルで貰った粉くれてやろうか。「これお前の娘の愛液だぞ」って。うわこの発想エグ。
「お幸せに」
「お前もな」
──天幕を出る。
雪が強くなって来たな。歩きづらくなる前に、あと一か所回って、ケル邸に行こう。
「戦士スキル:暴走制覇!」
いきなりの斬撃を剣で受け止める。……ん、重い。
弾くのは無理だと判断して、往なす。と思ったら返しの剣が速いな。防御は間に合わなそうだけど、そこはスキルだ。
「聖女スキル:光ノ壁」
「む!?」
「はっはっは、どーだ。ノールック光ノ壁。今はもう無い聖気で出来た壁だぞ~」
「聖気だと……どうなるのだ?」
「いやなーんにも関係ない。キラキラしてるだけ」
蹴り。それも光ノ壁で止める。
その後続く連撃も、全部止める。オート防御じゃないぞ。ちゃんと手動で発動している。
「……さらに硬くなってどうするのだ」
「お前の暴走制覇がその程度って証明できる」
「はぁ。……初代皇帝といいヴェルグといい、余を虐めるのが相当好きであると見える」
「独裁政治やってる悪い皇帝をやっつけてるんだ。良い行いだろ」
「もうそんなものはやっていないし、悪いつもりもない。……そろそろ皇位を退く予定ではあるがな」
「ってことはついに?」
「ああ。スイが次期皇帝となる。だが、それには余と、そしてこの帝国にいる猛者を全員倒さねばならぬ」
「それってシーファとかも含まれんの?」
問いに。
ラムナザール四世は少し考え──手を打った。
「帝国民であるのだから、含まれて当然だろうな」
「難易度跳ねあがったか」
「ほう? ということは、お前はあの魔族の娘を高く買っているのだな」
「かなり。アイツ自身の性格が邪魔してるだけで、強いよ、ちゃんと」
友達想いなのと道具扱いされたいフェチズム。
あれを取っ払えるなら、アイツはこの国でも有数の実力者になれるだろう。
ただ。
「厄介なのはシーファじゃなくてアウラニだけどな」
「……確かに。元とはいえ天使に勝てる者など……」
「そういうこと」
なんかフツーにしてるけど、天使のアウラニって天界を一回牛耳ってるからな。ウリエル以外全員倒してるんだ、その実力は人間の範疇にない。
スイがいくら強くなっても調停で一発K.O.じゃないか?
「退位はまだ先になりそうだな」
「そもそも余が勝てるかわからぬ。……生涯修行、だな」
「見上げる精神だよ、ホント。……そういえば皇妃は今いないんだな」
「ミミカは今カラバ村という王国近郊の村に行っておる。なんでもその地下に温泉が湧いたとかなんとか」
「……あそこアースドラゴンいるけど大丈夫か?」
「なにっ!? ……少し行ってくる!!」
言うやいなや、窓ガラスに向かって腕を交差しながらダイブするラムナザール四世。あ、あれは伝説の仮面ラ〇ダー破り!?
独裁政権じゃなくなって色々手続き必要になってたはずだけど……ま、頑張れ下っ端たち。胃に穴開いたらハルフィーさんに治して貰ってくれ。
……これくらいかね、挨拶回りは。
おーっす、なんて言ってケル邸に入れば。
「あー! ご主人様久しぶり!」
「いつまでお前ご主人様とか言ってんの? 何年前だよ奴隷契約解除したの」
「呼びやすいからいいじゃん。あ、ほら見て見て。あっちで今ケルちの子供達と一緒に料理してるのが今年生まれた私たちの子!」
「……えーと、玄孫?」
「昆孫!」
孫の孫の孫。
いやね、繁殖サイクルが短くなるとは言ったよ。にしたってだろ。
「ご主人様、お帰りになられたのですね。ご主人様用の食事の準備はもう少しお待ちください」
「ああいいよいいよ、こいつら優先で。なんなら俺食わなくてもいいし」
「お主、その空気読めない所まだ直っておらんのか……」
「あん? ……なんでツバナいんの?」
「いらいでか。……ま、深夜には帰るがの。儀に参加するくらいの時間はある」
「一回成功したら後でもいいんだから、今日くらい家族のトコにいてやりゃいいのに」
「妻も夫も子も了承済みじゃ。心配するな」
サプライズ~、とか、ない。
もうこの数年で彼女らの子供は生まれまくっている。し、成長しまくっている。
その子たちからの俺の扱いは……なんだろうな、親戚のおじさんだけど血が繋がっているわけではないのは知っているから扱いの難しい人、みたいな……俺から見て、割合いたら面倒だって思うタイプの人。
こいつら優しいからそう言ってくることないけど、少しは思ってんじゃねーかって。……ああいけないいけない、これ思想の押し付けね。
「ケルとツゥは?」
「グノーシス及び
「それだけ、大事な、記憶、なのでしょう。辛くとも、苦しくとも」
「アウラニ……天使の方か」
「ええ。人間の、私は、今、あちらで、もみくちゃに、されています」
あちら。
大勢がいるケル邸の中でも、とりわけ年齢層の低い……生まれたての子供たちがいる区画。
両親がエロいからか知らんけど、生まれてくる子供たちは皆「興味津々」だそうで、毎度毎度ふたなりであるアウラニは標的となっているのだとか。
多分こっちのアウラニは天使スキル使って逃げて来てるんだと思う。阻害してやろうか。
「そういえばご主人様、ノーラちとパインズちからの手紙溜まってるよー」
「ああ、後で全部読むよ」
ノーラとパインズは、数年前に俺のもとを離れた。
性奴隷であり続けることもアリだったらしいんだけど、もう何年か見世物遠征を自分だけでやってみたいとノーラが言い出して、ならばパインズも付いていくとなって。
既に仲間……エロ体質と俺が勝手に呼んでいる称号・能力持ちを集めて、オトナのサーカス、みたいなのを全国行脚でやってるらしい。一回くらい客として見に行きたいものだけど、アダルトMOD君が全部台無しにしないかだけ心配。
「ヴェルグさーん、【ソーマ】頂戴【ソーマ】~」
「もしかしないでももう酔ってんのか」
「えへへ~、耐しぇー無こーかポーションさいこー!」
耐性無効化ポーションは当然だけどマスカルウィンにも効果があって、最近の彼女は耐性無効化ポーション+媚薬ポーションとか強い酒とかを呷って楽しんでいる。その暴走とさえ言えるジャンキーっぷりにユグドラシルも辟易しているらしい。時たま助けを求めてくるけど顔が笑ってるから多分アイツも楽しんでる。
「マスター。この日のために股に人間の女性器を模した器具を取り付けました。生き物のように動かすことも可能です」
「あ、馬鹿。バラすなよサプライズにしようとしてたんだから」
「無理じゃろ。この家来るたび毎回試してるんじゃから」
「でもバルクスちがそう言うってことはついに、だったりする?」
「まぁ──」
「──皆さんお久しぶりですの。食べ物をたくさん持ってきましたのよー」
「あ、リアち!」
わーわーと。
一斉に彼女ら……大所帯も大所帯な住民たちがリアに殺到する。
ラクニシェルが丁寧に全員を捌いていく中で、彼女らの持って来た「お土産」に見覚えのあるフルーツがあるのを発見した。
「リア、それ」
「ええ。──ようやく生りましたの。エイルニルス公国特産エインドフルーツ。国民が心血を注いで育て上げた最高級の一品ですのよ。──皆、ヴェルグさんに多大なる感謝をしていますから、このエインドフルーツには皆の心が詰まっていると思ってくださいまし」
はー。
なんだか感慨深いな。光陰矢の如しを一番感じるかもしらん。
亡国アンダーテイカー。それが今や、だもんなー。
「リア、早く入って。寒い」
「あら、ケル。ツゥさんも。お帰りなさい」
「ただいま」
「ありがとう。でもリアさん、寒いからできれば……」
「勿論ですの」
おー。
揃ったなー。
……なんという密集感。増築と隣の家々を買って繋げて……とかやった上でのコレだからな。エグいよ。
と、世界がセピアに染まる。
これは。
「や、ヴェルグ」
「お前に関してはマジで久しぶりだな。閉鎖解いたのか」
「うん。不便だからね」
「……?」
なんだ、この違和感。
……??
「お前……ファントムじゃないだろ。え、あ、いや待て、え、そういうこと?」
「うぁ……やっぱり騙すとか、ボク、向いてないよ」
「もっと自信もってやり通さないとそりゃバレるよ。君もボクなんだから、ちょっとくらいさ」
「──草案世界のファントム!?」
流石に驚く。
おかしかった。なんというか、この……この、陰の感じ!
ファントムの後ろからもう一人のファントムが出てくる。
おお。おおお。
「え、どうやって来たんだ?」
「……その。こ……こっちの情報が、ある悪魔を通じて、流れて来て……羨ましくなっちゃ、って、その……ホーリーウッドの森の転移紋を、解析して……どうにかボク一人だけを転移させる方法を、編み出して」
「あーもうじれったいなぁ! ヴェルグ、君に会いたくて来たんだってさ! で、今回呼んだ理由だけど……こんなんでもボクだからさ、実力拮抗してて追い出せないんだよ。面倒だから引き取ってくれない?」
「む、無理だよ、ボク、見た目が」
「一々どもるな! ……ボクは育児で忙しいから、自分じゃない自分の面倒なんか見てらんないの。ほら、ヴェルグ、とっとと連れ帰って」
天女の羽衣をつけた全裸包帯美女が、うつむき加減の全裸包帯美女を押す。
どん、と。
俺に寄り掛かる──感触があった。
「え」
「や、やっぱり、変だよね。ボク、その……あの……」
「生身が無いと世界渡りはできないから肉体作ったんだってさ。ヴェルグ、君は魂を視ているから気付けないだろうけど。ほら、だから言っただろ。ヴェルグは君の身体のことなんか気にしない、って。というか今のこの実体のないボクに欲情する変態なんだから、今更何が来たって」
「快楽スキル:強制連続絶頂」
「──!?」
どうだ、久しぶりだからキくだろう。スキルが終わるまで慣れることもできないからな。精々子供達に痴態を晒してくれ。
……しかし。
「マジで久しぶりだな。……来たいなら来いよ。普通に友人として歓迎するよ」
「……うん。行く」
じゃあ。
未だイきまくってビクンビクン跳ね回っているファントムに手を振って──セピア色を抜く。
「──え、何ご主人様。いきなり女の子出現させるとか、なにごと? また奴隷買ったの? 包帯しか巻いてないけど……そういうフェチの人?」
「友人でな。ファントムっつーんだわ」
「あ……えと、ごめんね、身内の、こんな楽しそうな場に、いきなりボクみたいなのが……来たら、迷惑だよね。あ、そ、その、ヴェルグ、また来るから」
目配せ。
アイコンタクト。
「よーし子供達! 新しいおもちゃだぞ!」
「え、え、ヴェルグ!?」
いっぱいいる子供たちの方にファントムを放れば、バケツリレーか大玉運びか、流れるように先程人間のアウラニがもみくちゃにされていた部屋に輸送されて行く。
連携力抜群だな。
「ちょぉ……ぅぁ、どこ触って、ヴェ、ヴェルグー!!」
「……いいの、アレ。あの子たち本気で遠慮とかしないけど」
「あれくらいが丁度いい」
よし。じゃあひと段落ついたところで。
チャイムが鳴った。
……律儀にチャイム慣らすってことは……身内じゃないのは確定だけど。
誰だろ。
「こんばんはー」
「『開けて』」
「夜分遅くにすみませーん」
おや。
この声は。
「なんだラヴ・グラットル。久しぶりだな、ドゥームスとヴァネッサも」
「お久しぶりです! ヴェルグさんがこっち来てるってドゥームスが察知したので、来ちゃいました」
「マジか。そんなことわかるのか」
「……来たから、来ただけ」
「察知したのは"陰に潜むモノ"の異質な気配だが、それをラヴ・グラットルやヴァネッサに言っても仕方が無いからそういうことにしたらしい」
「成程。すっかり通訳だなヴォーガー」
「不本意だ」
ふむ。
しかし……流石にこいつらは身内とは言えないんだけど。
「あ、わかってます……って、ヴェルグさんに会うと敬語癖抜けなくなっちゃうんだよなぁ。……じゃなくて、大丈夫、本当に少し寄っただけだから。私達はこの後メルキオルさんと待ち合わせしてて、転移で神殿に行ってポリウィックと会うつもりで」
「……次元スキル:時間停止」
久方ぶり周囲の時が停まる。おいおい、あんま大規模なのはやめてくれって。
「すぐに終わるから、大丈夫」
「そうかい。で、どうしたドゥームス。限界か?」
「それは、問題ない。本当の目的は、これを渡すこと」
これ。
ドゥームスが自らのアイテムボックスから取り出したのは──薄いピンク色に光る球。
「まさか、メモリーオーブか?」
「何故か世界は、私を選んだ。メッセンジャーか、押し付けか。多分貴方に、会いたくなかった」
「確かに次会ったら強制絶頂くらわしてやろうと思ってたとはいえ、まさかドゥームスを使い走りにするとは……」
「原因、判明。……確かに、届けた。一生分の、礼と共に」
時間停止が解除される。
ドゥームス。今の彼女の記憶や人格は、酷く曖昧な状態になっている。全てを思い出している素振りを見せたかと思えば、見た目相応の童女のような反応を見せたりする。
ま、内心はアイツのみぞ知るだろう。
「なんで、本当に挨拶だけでした。それじゃ!」
「失礼します~」
「『再会を』『願う』」
「おう。じゃーな」
受け取ったメモリーオーブをインベントリのお気に入りに入れて。
さて、今度こそ、である。
「こんだけ賑やかなんだ、厳かな空気とか作らんでちゃっちゃと終わらせよう」
「ん」
「じゃの」
「……毎回、怖いね」
「大丈夫、です」
「酷い目に、あいました……」
「お帰りなさいアウラニ様」
「マスター。──恐らく閾値に達する最後の鍵はそのフルーツかと思われます」
「え、本当ですの?」
「食べないならわらひが食べちゃうー」
齧る。
皮ごと。
溜めも前置きも余韻も、やっぱり俺には必要ない。
食べて──わかる。
流れ込んでくる全てが。
「行けそうだ」
「ホント?」
「ああ」
続けざまに耐性無効化ポーションの超濃縮版を飲み干し。
「発動の仕方自体は習ってる。──行くぞ」
「ん」
別に参加者は全員じゃない。
やりたい奴だけだ。
ただ──俺に、手の甲を向けて。
異口同音に、そのスキルの名を言う。
「契約スキル」
──無論。
異口同音なのはそこまでだった。その後がごちゃって、誰が何を言ったかの犯人捜しが始まったのは──それも一興という奴なのだろう。
誰が何の契約を交わしたのか、なんて。
もうわかり切っているけれど。
それで有耶無耶になって……あとから「あー!!」と気付いたシーファが奇声を上げるのまでが確定事項。
俺の"心化"。
確かに、だ。
それから時が目まぐるしく過ぎて行った。
世界は様変わりし、そして人間関係もどんどん変わって行き。
俺は。
「ご主人様。もうそろそろ次の惑星に到達いたします」
「俺は準備できてるけど、あの飲んだくれは大丈夫なのか?」
「酔っぱらっていてもまぁ戦力にはなりますし」
「戦力云々じゃなくて余計なことしないかが心配なんだけど……」
見渡す限りの黒。
無数の光。
──"異常な力場を検知しました。マスター、離脱か着陸か、どちらにしますか?"
「着陸で。機体がヤバそうだったら強化するけど」
──"問題ありません。着陸までの間に自己改造可能です"
「ちょ……うっぷ、揺れる揺れる……」
「マスカルウィン様。貴女にはパッシブスキルの胃酸強化があるということをお忘れなきよう──床を溶かした場合、一か月お酒抜きですよ」
「それは困る。よし異族の女、この身を食え。そこでならいいだろう」
「……夢の世界をダストボックス扱いしないでください」
銀色の艦橋。
響き渡るバルクスの声。
「ヴェルグ……ボクは奥にいるね。その……もうすぐ産まれそう、だから」
「おー、ようやくか。えー、でもそれなら着陸遅らせたいな。俺ファントムの産卵シーン見てーよ。いっつも見せてくれないじゃんか」
「だ、だだ、だって、恥ずかしいから、そんなのっ!」
──"マスター?"
「冗談冗談。着陸で頼む。ああそうだ、俺フィルター入れた場合の現地住民はどう見える?」
──"相変わらずの肌色一色です。……いえ、何か……岩のようなものに身を包む存在がいくらか見えます"
「お! 新種族か。俄然楽しみになって来た」
「異族の女。良いのか。──本気で吐くぞ」
「はぁ。……怪異スキル:賢淵」
ずぅん、と音を立てて、宇宙戦艦B.A.R.C.U.Sが新たな星に着陸する。
んじゃここに転移紋を描いて、と。
「いっちばん乗り~!」
「……お前さ、自分の子供より子供なのどうにかならんの?」
「これは我が子のために母親が先陣切って調査しに来てるだけだからグェ」
「シーファさん。まだ、書類を、書き終えて、いません。遊びに、行くのは、終わってから、です」
「ちょちょちょアウラニち、転移紋から腕だけ出してるの怖い怖い怖いぬぁー!!」
……。
よし。まぁ転移紋は設置したから。
「メアリー、バルクス。探検行くぞ」
「酔いが覚めた段階でマスカルウィン様も吐きだしますので」
「……本体の起動を確認しました。おはようございます、マスター、メアリーさん。留守中のファントムさんの守りは万全です。行きましょう」
「アイツに危害加えられる存在がいるなら何よりも先にバルクスが逃げた方が良いけどな……」
外に──出る。
酸素濃度は低いけど、関係ない。
重力はちょっと重めか。加えてさっきバルクスが検知してた異常な力場……何か地面に向かって引き付ける類の何かがあるな。
未知だ。良いね。何気なしに薬指に嵌めた指輪を撫でる。
「……ただし住民は全員全裸、と。しかも武器が……武器がぁ。美少女の頭部から骨が連なってる、みたいなのにしか見えなくてぇ!」
「ご主人様。私の目には祭器のようなもので武装した集団と、戦闘用に飼いならされた魔物に見えます。ご注意ください」
「いつも通りフィルター半分で行きます。……おや? マスター、気のせいでしょうか」
「いや多分気のせいじゃない。……これどういうことなんだろうな」
「情報共有をお願いします、ご主人様、バルクス様」
「いや……なんか全員乳首が陥没してて」
「彼ら彼女らの武装を剥いだら全員陥没乳首なのでしょうか」
「死ぬほどどうでもいい情報に聞こえますが、一応留意しておきましょう。一応」
さぁて。
モロにインベーダーに見えてるだろうけど──友好的ダヨー。
言葉は絶対に通じるからな。色々見せてくれ、お前らの星を。
んで気があったらエロいことしよう。
やりにくいなら、やりやすくして行きゃいいってな。
万象とおせっせできるアダルトMOD──最高! ってことで。
「俺達の戦いはこれからだ!!」
「戦闘モードに移行しますか?」
「戦うのであれば今マスカルウィン様を吐き出すのでお待ちください」
「……いやまずは話し合いからね。戦いは最終手段ね」
つーわけで、俺の物語、完!
これにて完結!
続編無し! 短編とか小話とかも無し! やるとしたらチラ裏に投げるかもだけどこの小説はこれ以上の更新無し!!
ぼかした部分はお好きに想像してくだされば!
ではおさらばです。
ジュワッ!
おまけ
| ヴェルグ | "編纂者" | 不変 |
| あの惑星に未知は尽きないし、際限なく出て来るけれど、やっぱり宇宙のロマンが捨てきれなかった | ||
| ケル | "アサシン" | 人間 |
| ツゥとの第一子が自分より房中術に長けてて喜んでいいやら複雑な気持ちやら | ||
| ツゥ | "アサシン" | 人間 |
| ケルとの第二子に「お母さんの喋り方ってちょっと芝居臭いよね」と言われて落ち込むなど | ||
| ツバナ | "考古学者" | 鬼族 |
| ツゥにお悩み相談された時、快活に「私も喋り方がババ臭いと娘に言われたぞ」という慰めをした | ||
| シーファ | "造形者" | 魔族 |
| 先立つ者達を見送るたびにがっつり落ち込んで、その後空元気を発揮して、アウラニや子供達によしよしされるまでがルーティン | ||
| アウラニ | "開発者" | 人間 |
| スキルを開発する楽しみを覚え、新たなスキルを生み出しまくったことでスキルの開祖と呼ばれるに至る。またエロスキルの伝道師とも | ||
| アウラニ | "第一位" | 天使 |
| そうであるがゆえに必ず訪れる別れ。でも、だからこそ、忘れないし色褪せない。そして自分もシーファも、いつかは。 | ||
| メアリー | "奉仕者" | 夢の一族 |
| 分裂の運命は避けられないから、一個体一個体の人生を大切にすることに決めた。子供を作ったかどうかはシークレット。今のメアリーはもう元の彼女ではないけれど、心はそこにある。 | ||
| マスカルウィン | "皆既変食" | ハイエルフ |
| 一向に老いないし一向に衰えない。どこぞの賢者が「君だけは唯一あり得るのかもしれないね」と言ってくれたので、飲んだくれながらも日々頑張ってる | ||
| バルクス | "宇宙航行艦" | 機械 |
| メモリーオーブ・ADを入れると視界がフィルタリングされ、搭乗者の視界と同じになれる。視覚センサーの半分にだけそれを適用すると、衣服を透過しているように見える為、実際一番このMODを楽しんでいるのは彼女かもしれない。 | ||
| ファントム(陰) | "陰で怯えるモノ" | XX |
| 自分でも知らなかった。……ボクのこの感情が、友達へのものから、す、……好きに、変わっていたなんて。 | ||
完結/お疲れ?