※この作品はR-18です。

アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ   作:姫鼠まりあ

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新たなる門出(G度無し)

 それはある昼下がりのこと。

 

「最強の騎士団長フレースヴェルグ……ですかい? ……すいやせんね、あっし物覚えが悪くて。つったって帝国にいたらちっとは聞き覚えあるとは思うんですが、記憶になくて、へぇ」

「そうか。……店主。もしそいつを見かけたり、知っていたりした場合は、すぐに連絡が欲しい。ギルドで俺の……スヴェロニカの名を出せばすぐに通達が行くはずだ。見かけた、という情報なら金貨1000枚、所在地の情報があれば白銀貨もくだらないだろう」

「そ、それ……もし情報が虚偽だったり、見間違えた、って場合は?」

「そう怯えるな。報奨金が出るのは報告から少し経ったあと。つまり身辺調査や現地調査の後になる。見間違いならそうだとわかる。虚偽であれば、まぁ、俺の口からは何も」

「で、ですよね……あ、あっしは本当に知りやせんよ!?」

「待て、そう怯えるな。脅しているわけじゃない。……参ったな、さっきからどこへ行ってもこれだ。帝国はちょっと罪というものに過敏になり過ぎじゃないか……?」

 

 そんなことをぼやきながら去っていく黒服の男。

 彼と、彼の取り巻きが十二分に離れたことをミニマップで確認してから、俺はアサシンスキル:霧隠れを解いた。

 

「すまん、ノズヴェルガー。巻き込んだようだ」

「いやいや、この程度はなんのその。前も言ったようにあっしは……あー、まぁ帝国や教会のお偉いさんと通じてますんでね。仮に旦那さんと知り合いじゃなかったとしても、王国の尖兵なんかにゃ情報は漏らしませんよ」

「……王国は嫌いか?」

「嫌いっていうと語弊がありますが、やり方はちょいと気に食わねえって感じで、へえ」

 

 実は帝国、ラムナザール四世の独裁政権とはいうものの、果たして国としての形を成しているかと問われると微妙だったりする。それでなぜ国が回っているのかはわからないけれど、ラムナザール四世の下に権力を持った者がほぼいないのだ。

 いるのは実力者と金持ちと、ギルドの冒険者たちだけ。

 ここで重要なのは冒険者と実力者は違う、という所。そもそもこの国はラムナザール四世の強さを慕って強者が集い、結果的に築き上げられた国であり、つまりまー「俺が倒すんだから俺が守る!」みたいなやつらがごまんといるんだと。

 

 そういう自由極まりない……ラムナザール四世の機嫌さえ損ねなければほぼ何でもしていい帝国に住まう奴らからしたら、ガッチガチに法整備されてる王国は奇異に映ることだろう。

 統制の取れた騎士団。存在しない奴隷システム。異種族を異種族と分けて考える考え方。

 そして、今みたいな……他国にまで出張ってくる暗部。

 

「何より、嫌ですねぇ。また戦争の始まりそうな雰囲気で」

「……」

「旦那さんは、どっちにつくんですかい?」

「ノズヴェルガー。……それは雑談か?」

「へい。あっしはただの奴隷商人ですよ」

 

 もし仮に戦争が始まったら。

 

「どっちにもつかない。俺は強大すぎる。俺一人の投入で戦争の形が変わる。……ラムナザール四世がいれば十分だしな」

「ただ、立場といいますか、視線は気になるようになっちまいますよ、それだと」

「元からだろう。今の奴が言うように、フレースヴェルグとかいう俺の名に似た誰かのことを知る奴も少なくはない。ある程度情報に精通していたら、結びつけるのも容易だろうさ」

「……符合ってのは、ヤなもんですね。すいやせんね、旦那さん。あっしも聞き覚えあったんで、調べましたわ。ただ……あっしは誓って言いふらしたりしませんよ」

「命の危機が来たら言ってもいい。それでお前を軽蔑するようなことはない」

「言いやせん。知っての通りあっしは北の孤島の出だ。だが、あの島は命より契約を重視するって考えが主流でね。でもあっしはちょいと違った。命より人情を大事にする……そういう考え方はあの島じゃ異端でさぁ、だからこうして海を渡ってこっちで商売してるって話で」

「そうか。故郷は嫌いか?」

「まさか。あそこはあそこで良いとこですよ。あっしが異端なだけなんで」

 

 戦争。

 ヤな風潮、流れて来たねぇ。

 

 

 

 

 さて、フレースヴェルグさんが誰か、という話をしておこう。

 

 ゲームにはその導入にホットスタートを起用するものも多い。ホットスタートってのは要は最初からクライマックス、って奴で、「最初からラスボス手前味方全滅」とか「暗転明け直後から軍勢を率いていって敵の親玉とぶつかり合い勝利を収めた!」とか。

 どうしても導入っていうのは緩慢で冗長になりがちだから、そこにはじめっからトップスピードの緩急を入れることで、世界設定の説明やこの世界が今どういう状況にあるのか、を省く……そんな手法があるわけで。

 

 このゲームにもそれがあった。

 ただし自由度の高いゲームなので、その切り取りシーンはあくまで「そういう派閥を選んだ場合に起きる最終決戦」みたいな扱い。選ばなければそのイベント自体が起きない、なんてのは普通にある感じの。

 

 もうお気づきだろうが、フレースヴェルグさんはその「緊迫した未来の主人公の名」であり、「チュートリアル操作の元エンシェントデーモン君をぶった切る最強の騎士団長」として描かれる誰かさんだ。俺のこのヴェルグという名前も「主人公名フレースヴェルグ君は長いしかっこよすぎやろ……せや、半分に折ったろ!」で名付けた名であり、そのヴェルグさんかと言われたらそうであるともそうでないとも言えない。

 ただこちらもお気づきの通りだろうが、今話したエンシェントデーモンぶった切りの件は未来……主人公が王国派閥に所属している状態で起きる魔族侵攻イベント内での出来事。

 

 まだ先の話のはずなのだ。

 

 だけど、帝国に来た当初、スイが勝手に勘違いして漏らしていた言葉や、今のノズヴェルガーの話、他にもちらほらと聞こえる「なんか俺の過去を知ってるっぽい奴ら」の話を統合すると……どうやら、一年前に魔族侵攻というのは起きていて、その余波で帝国と王国は小競り合いを起こしたらしい。

 でもそれで王国ルートのメインヒロインがモントルテンシュ辺境伯領から王国に向かうわけで……リアも遺骸になっていない時期だったし……何より主人公が冒険者になる時にはもうイグニスは大陸全土に知られる程有名になってた。今は未だなりはじめの時期だ。

 

 ごっちゃごちゃなのである。時系列が。

 元から無理だろうなとは思ってたけど、ゲーム本編での大まかな歴史を参考にするのはもうやめようと思う。アンダーテイカーが実はエイルニルス公国とか、そういう設定上の知っていることだけで生きて行こう。

 つーか結局フレースヴェルグさんは誰なの? 実在するの? だとしたら主人公もう一年前にいたりするの? でもイベント何にも……よし! 負のスパイラル終了! 閉廷!!

 

 そんな風に気分を切り替えて帰って来た先で。

 

 

「ご主人サマよ。俺の従属の呪いを解け。そして一騎打ちをしろ。──俺が勝ったら、ツバナとグレイスを貰っていく」

 

 何事?

 

 

 

 普通に考えると奴隷の反乱……なんだけど、にしては正々堂々過ぎるし、ツバナがめっちゃあわあわしてるし。ケルとシーファは静観。メアリーはどこにいるのかわからんが多分家事やってくれてる。グレイスは普通に家の中にいるっぽい?

 

 ん-と。

 

「キンゾイ。まずは事の経緯から話せ」

「経緯もへったくれもねぇ。アンタの悪行はちょいとばかし目に余る。余り過ぎる。……俺はもう心に誓ったんだよ。ツバナを故郷に返すってな」

「ああまぁそれは勝手にしてくれていいが、グレイスはなんだ」

「なんだ、はねぇだろ。無抵抗の、それも心の壊れた女を慰み者にしやがって。主人を名乗るならせめて心のケアくらいしやがれってんだ」

「成程、返す言葉も無いな。グレイスに関しては単純に性処理用として買ったわけだから、奴隷をそう使うのが目に余るというのならもうどうしようもない」

 

 さて。

 ノズヴェルガー曰く、キンゾイ君はいわゆる「謂れなき罪を被せられて奴隷落ちした冒険者」らしい。しかも被せて来たのはキンゾイ君が長年親友だと思ってたやつ。キンゾイ君側にも全然抵抗の余地はあったらしいんだけど、親友を想って身を引いたとかなんとか。

 つまり超正義漢の超善人なのである。口調は死ぬほど悪ぶってるけど。

 

 だから信頼できる度合いで言えば全然カラジェット君に次ぐ……んだけど、ぶっちゃけそんなに強くないのがネック。

 キンゾイ一人で鬼の国制圧できるかなぁ。多少強くなったとはいえまだ素人のツバナを連れて、ツバナの怪力で且つ達人の多くいる鬼の国を……ううん。

 

 無理っしょ。

 

「ツバナ。お前の意見を聞かせろ」

「おい、今俺と話してるだろうが! どうせツバナの言動はてめぇが操っ」

「呪詛スキル:従属:解除:対象ツバナ」

「ハ──なんじゃと!?」

 

 今俺の中にある問題点は二つ。

 一つは鬼の国の攻略法。俺一人なら容易だとは思う。ただ他連れて行くとちょいと邪魔すぎるんで、連れて行くとしてもケルかな。遊撃で。

 でもう一つは、キンゾイ主導の話にするかどうか、だ。

 ツバナの従属の呪いを解くのは別にどうでもいい。ノズヴェルガーから買った時の値段も安すぎたし、それでいて箱入りお姫様過ぎて家事炊事に何にも役に立っていないツバナは、今のところ要らない。ただ「買ったから」という縁でここに置いているだけだ。

 リアの時もそうだったけど、俺は所有物は大事にするんだよ。けどそうじゃなくなったら……というか所有物やめたいっていうんなら止めないし、従属の呪いが生きることの枷になるなら簡単に解いてやる。去る者は追わず、って奴ね。

 

 キンゾイの話は良いことだと思う。

 だけどツバナの意思はどうなのか。従属の呪いが解けた今、ツバナはどうしたいと思っているのか。

 

「お、お主!? 何をしとる!? 何故従属の呪いを解いた!」

「解かないと言葉を信用できないらしいからな、キンゾイが」

「まさかとは思うが、こんなあっさりと……私はお主の奴隷ではなくなるのか!?」

「なんだ、奴隷でいたかったのか?」

「当たり前じゃろう!!」

 

 その言葉は。大声での肯定は、キンゾイにとっては衝撃すぎる一言だったらしい。

 

「元姫が奴隷に身を落としていたい。それは何故だ、ツバナ」

「もう家族などおらんからじゃ! どうせ国に帰ったところで私を歓迎する者などおらん! おらんから追放されたのじゃ! それを、死にかけていた私を拾い、身体を癒し、役割まで与えてくれようとしていたお主に、奴隷といえど同じ卓で食事を囲うまでの扱いをしてくれていたお主に、恩義を感じておらんはずがないじゃろう!」

「恩義ならもう十分だ。これでいいか?」

「折角できた家族から私を引き剥がすなと言うておるのがわからぬかこの朴念仁めが!!」

 

 ツバナは俺に詰め寄り、肩を掴む。掴んで揺さぶる。鬼の怪力を一切の手加減なしに発揮して。

 でも俺の方が防御力高いんだよね……あんまり強くつかむと指折れるからやめとけ。

 

「キンゾイ! お主の好意はわかった。しかと伝わった。そして……私が鬼の国を想うておるような言葉を漏らしたことも私の落ち度じゃ。じゃがな、わかってくれぬか。あの国に帰ってももう一人ぼっちなんじゃ。仮にキンゾイ、お主と暮らすとして……誰にも望まれぬ姫と、どこの馬の骨ともわからんお主が頭となった国の未来がどうなるかなど容易に想像がつくじゃろう!」

「一瞬でクーデターおきそー!」

「シーファ。今大事な話してるから声シリアスにして」

「……はい」

 

 ケルもシーファの扱いに慣れて来たらしい。

 

「だそうだが、どうする、キンゾイ。それでも俺との一騎打ちを望むか」

「……ああ。だが、ツバナを連れて行くのはやめる。彼女にその意思がないのなら、それは俺の悪行になる。それでも、グレイスのことだけは許せん。彼女の解放のためにも──俺はお前を打ち倒す」

 

 さて。

 ……まぁ。いいかね、別に。いや俺のフェチにビンッビンだったんだけどなぁ。まぁなぁ、今の俺じゃどう頑張っても王国との戦争を引き起こしかねないし。王国行って、仮にフレースヴェルグさんとやらと俺の容姿が合致していたら、そのままもう面倒オブ面倒が起きるようにしか思えないし。

 

「呪詛スキル:従属:解除:キンゾイ」

「──感謝する」

「そんで、シーファ。グレイス連れてきてくれ」

「はーい」

「あーっと、どこ行ったかなあの資料。……ああこれだ」

「おい、何してるご主人サマ。……ああいや、ヴェルグ。剣を構えろよ」

「ちょっと待て。先に渡したいものがあるんだ」

「?」

 

 タッパのデカいグレイスを軽々背負って連れてくるシーファ。

 俺は俺で、ノズヴェルガーから貰った情報を紙に認めたものをキンゾイに渡す。

 

「これは?」

「グレイスの出身がどこなのかを調べた報告書と、確証はないがグレイスの心の翳りとなっている彼女の娘についての目撃例だ。一年前の惨劇の後、荷馬車に隠れて王国へ向かった緑髪の子供の姿を見た冒険者がいた、というだけの簡素なものだが、希望にはなるだろう。年の頃は……一年経って、十五か十六、低くても十四くらいだと推測される」

「……お前、こんなに分かってて……」

「すまんな。こんな俺にも立場がある。無いように見えてあるんだ。だがお前は今奴隷契約を外された元冒険者。どこへでだって行ける。そうだろう?」

「っ……任せられる奴が来るまで使うつもりだったってことかよ!」

「奴隷だからな。ただ飯食らいを置いておくわけにはいかんだろう。奴隷は等しく奴隷だ。家事炊事と同量の仕事をさせていたに過ぎん」

 

 唇を噛むキンゾイ。

 いやまー。

 

 良いんじゃない? そういうのがあってもさ。

 だってすごいだろ。今しがた惚れた女にフラれたばっかみてーなモンなのに、もう他の、しかも一児の親だってわかってる女のためにこんだけ怒れる。

 

 どんだけ善人だよ。

 俺の実力を正確に図れていなかったとしても、一騎打ち自体決死の覚悟だっただろうしな。

 

「一騎打ちはしない。俺とお前じゃ勝負にもならん。試したかったら、お前の最強の技で俺を斬ってみればいい。お前の腕の方が先に折れる」

「……んなことが」

「そして頼みがある。元銀章冒険者キンゾイ。お前が今も冒険者なら依頼にしたが、そうじゃないから頼みだ」

「……」

「引き受けたからには、必ずグレイスを守れよ。途中で捨てるな。諦めるな」

「そんなこと、言われなくてもわかってる!」

「そして一つ希望を加えるのなら──」

 

 まぁ、これは嘘になるけれど。

 

「俺も王国にいた頃、緑髪の少女を見た覚えがある。……ほら、キンゾイ。シーファからグレイスを受け取れ」

「っ……お、ああ」

「路銀は金貨十枚くらいでいいか?」

「いや多すぎだろ!? 金銭感覚だけは本当に馬鹿のままだなお前!!」

「そうか? 移動費に加えて食費、宿代、王国についてからの生活費。一度ギルド章を剥奪されたお前じゃ金稼ぎにも一苦労だろう。何かしらの職を手につけるまでは金があった方が身のためだ。キンゾイ、お前の心配をしてるってよりグレイスの心配をしてるんだがな」

「~~~~っ! ああ! じゃあありがたく貰っていく!」

 

 キンゾイは俺の手から麻袋をぶんどり、シーファから渡されたグレイスをしっかりと背負い直し。

 

「あと、ツバナ!」

「……なんじゃ」

「俺がグレイスの心治して、家族と再会させて、それで俺が要らなくなったら……今度こそ嫁として迎えに来る! 鬼の国じゃなくてもいい、どっかで俺と暮らしてくれ!」

「要らなくなったら、か。つまりそれまで私は未婚でいろと? 我儘じゃのぅ」

「い、いや、他に好きな男とかできたらそっちを優先しろ! 俺のことなんか忘れろ! ……ご主人サマ、じゃねえ、ヴェルグだけはやめとけ。これは男の勘が言ってる忠告だ。絶対幸せになれねえからやめとけ」

 

 おーおー好き勝手言いなさる。

 でも多分正解なんだよね。俺は一人を幸せにするのにとことん向いてない性格してるからな。かといってハーレム願望もないし。いやこんだけ家に女の奴隷おいといて何を今更ってのはそれはそうなんだけど。キンゾイ行っちゃうし。

 

 ……ま、言うべきことは全部言っただろ。

 

「達者でやれよ。王国との道中で男女の死体が、なんて話、俺は聞きたくないからな」

「馬鹿にすんじゃねえ。これでも元銀章冒険者だ。女一人守れねえような弱さはしてねえよ」

「そうか。じゃあ」

 

 次元スキル:転移。

 

「あ? んだ、この光──」

「未練がましく振り向かれてもダルいんでな。あとは勝手にやれ」

 

 光に包まれ、キンゾイとグレイスは消えて行った。

 飛ばした場所はちゃんと人がいない場所だ。別荘……というか、貸倉庫? 手ごろな値段で借りられるらしかったから、セーフティハウスとか転移先とか用に借りてあるんだ。帝国中に点々とな。

 その中でも最も市場に近い場所に飛ばしたから、あとは何とかするだろ。

 

「監視とか、つけないの? 護衛とか。帝国を出るまでだったらやるけど」

「要らんだろ。薄情な言い方になるが、無理だったら無理だった。そういう運命だ。あ、グレイスの従属の呪いも解除しとかないと」

 

 解除解除と。

 

 よーし。

 

 これで一件落着かねぇ。またツバナの師匠役探さなきゃいけなく……おっと。

 

「そうか、従属の呪い解いたから攻撃できるのか。それでどうだツバナ。俺の顔面を殴ってみての感想は」

「──死ぬほど痛い」

「だから言ったのに、としか思わないが。で、どうするんだお前。ウチに留まるならケルと同等の役割を与えるぞ。今まで奴隷だからと許されて来たアレコレは、"同居人"に格上げされることで許されなくなる」

「あ、私このままずっと奴隷でいーや! 気楽だし!」

「ヴェルグ。ツバナは何にもできない。やらせるならイチからちゃんと覚え込ませないと怖くて仕方がない。メアリーがいれば十分だし」

「だよなぁ。まぁ鬼の怪力があればキンゾイから習った中途半端な剣でも戦えはするだろうけど、正直要る要らないで言ったら」

「おいお主ら! 私はキンゾイに、私を家族から引き剝がすな、という名目で奴の誘いを断ったんじゃぞ! それをお主らが突き放してどーする気じゃ!」

「いやでもそれお前らの問題だし」

「ツバナち、鬼の国の姫って称号失ったらかなり価値下がるかも?」

「ノズヴェルガーに奴隷として売ってくるのはアリ。買った時より高く売れる」

 

 揶揄いとはいえ酷過ぎる言葉がケルから出た辺りで、ツバナは。

 

「もう一度従属の呪いをかけてくれ! 私は奴隷がいい!!」

「でも、奴隷だとして何の役割やるの? ツバナち、グレイスちの代わりにご主人様の性処理する? あ、でもそんなことしてたら今度こそキンゾイが怒り狂ってご主人様に斬りかかるかも。そのまま死ぬかも」

「いやそんなカウンターは発動しないが」

「そもそも絶対要らなくならない。グレイスの子が見つかったら、グレイスは多分キンゾイに求婚する。彼女の夫が戦死しているのは聞いてるし、キンゾイの印象も悪くないみたいだったし」

「まー、そうだよねー。あれこれつまり、ツバナちは永遠に貰い手がないまま既に幸せになった男を待ちながら朽ちていく悲劇のヒロイン……ってコト!?」

「外野がうるさい! いいから従属の呪いをかけろ主! 役割はその後決めればいいじゃろ!」

「わかったわかった。呪詛スキル:従属」

 

 大人しく従属の呪いを受け入れるツバナ。

 ……そういえば従属の呪いって相手とのレベル差によっちゃ弾かれるんだけど、ノズヴェルガーの奴よくシーファやキンゾイに従属の呪いかけてたな。誰かから受け継いだだけか? それともアイツ、レベルかなり……。

 

「ふぅ。……そ、それと。夜の……方は、別に良いぞ。私が何もできんのは本当じゃし」

「鬼とヤると握り潰されそうで怖くね?」

「あ、ご主人様の防御力ってソコはどうなの? 亀頭攻めに弱いくらいだから、やっぱそこだけ柔らかいの?」

「あー、まぁ挿れ差しはできるが、剣で斬ったり噛み千切ろうとすると無理、って感じだな」

「え゛、なんで知ってるのそんなこと。試したの?」

「ああ。グレイスとヤる時に粗方試したよ。アイツがなんか反抗できるスキル持ってないとは限らなかったし」

 

 亀頭が弱いのも、痛みはほとんどなくて摩擦の感触だけあるから変な感じになってエグいってだけで、それで肌荒れとかはしないと思う。

 

「……ねー、ご主人様。そろそろ私とヤらない? ホントのホントに魔素漏れないからさー」

「おい待て、そこの役割まで奪われたら私の立つ瀬が」

「ツバナちの立つ瀬なんか最初っから無いってば。少しでも役に立ちたいならメアリちに頭下げて家事教えてもらいなよ。ぶっちゃけ戦いなら私とケルちだけでも十分だしー」

「なんだシーファ、お前前衛行けるのか。ニンフはバッファじゃないのか?」

「おうおう、魔族舐めてるねーご主人様! 魔族ってだけで銀章冒険者くらいの実力はあるよ~子供でも、どんな種族でもね!」

「そう、か?」

「ご主人様にとっては全部同じかぁ!」

 

 タハァ、なんて古臭い仕草で額を打つシーファ。

 いやだって、仮にそうだとしたら人間なんかもう滅んでるだろ。

 

「魔族は魔素の少ないとこに居続けると弱るからね、だから人間の国は滅んでないのであーる」

「じゃあお前今激弱りか?」

「ところがどっこい! 魔素が漏れない体質の私は魔素が少ないとこにいても関係ない! 体内の魔素が抜け出ちゃうのが弱体の原因だから、そういう意味では私は最強なのだー!」

「聖水かけてみていいか?」

「ヤメテ!?」

 

 いや。

 知らん話だった。……実験対象としてシーファはここに置いているわけだけど……今の話、というかこいつから魔族事情聞き出せたら、色々……特にレジーナ辺りは狂喜乱舞するのでは。

 

 ……今日あったのは割と普通の人間関係だったけど。

 魔素の話や、先日のリザとの話、レジーナの研究。

 

 なんか。

 ちゃんと原理、ありそうだな、魔化。

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