アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ 作:姫鼠まりあ
そもそもシーファの「魔素が漏れない体質」というのがなんであるのか。
眷属の呪いの行動制限でシーファを固め、ベッドの上に寝かせる。そういえば今まで言い忘れてたけど、シーファって何の服着ても俺の目には全裸に映るんだよね。魔族だからアダルトMODがさ。
ただ今回はちゃんと全裸にしての触診。シーファは「とうとう!? とうとう!?」とか言ってるけど性行為する気は一切ない。
むしろ──。
「ちょ、ご主人様!? なんかピリピリする! それもしかしなくても聖気じゃないよね!?」
「1%でも痛いのか」
「痛いよ弱点だよー普通に魔族死ぬよやめてよー!」
じゃあ聖水ぶっかけるのやめとこ。マジで死にかねん。
今のは聖騎士スキルの聖なるオーラというもの。魔剣士スキルとの兼ね合いで取れるスキル。それを指先に纏ってちょんと触れたら、想像以上に痛がったのですぐに中断する。
「神官スキル:ヒール」
「ほわぁ……」
「回復は聖気とは違うんだな」
「え、うん。……もしかして知らなかったの? というか仮に同じだったら私どうなってたと思ってるの!?」
「……確かに。ちょいとグロい想像をした。思い付きでの行動はやめるか」
このゲーム、アンデッドに回復魔法かけても回復するだけなので大丈夫だとは思ってたけど、ワンチャンあったか。危ない。
「聖騎士スキル:魔素耐性」
「……何にもない」
「漏れない体質と耐性は特に何も起こさない、と。それじゃあ、神官スキル:遮断。からの──呪詛スキル:眷属:覚醒」
「んぎっ!?」
目を剝き、その全身に鱗というか固まった鉱石というか、黒い蝋というか……如何とも形容しがたい何かを纏うシーファ。ただ乳首や局所といった大事な部分は何も隠れていないのが流石アダルトMODである。
「ちょ──ご主人様、ちょっとマズい、かも」
「身体が抵抗したがっている、か?」
「う、うん。今眷属の呪いで縛ってくれてるからなんとかギリギリだけど、これ解かれたら多分ご主人様を殺しに行っちゃう。あと私の身体についてる黒いの絶対触らないで。それ魔素の塊だから」
「これか」
触る。触るし、一部をパキっと折って観察する。
「なにやって!?」
「聖騎士スキルの魔素耐性に、今は聖剣コルネリウスを背負っている。他にも身体の各所に魔素耐性を上げる装備を付けているからな。効かん」
「嘘……魔素に対抗できる人間とか……ホントに……?」
黒い蝋のようなそれは、三十秒くらいでサラサラと塵になって消えた。
「固形化した魔素。これがお前の固有能力か、シーファ」
「あ──う、うん。私は他の魔族と違って、魔素そのものを武器にできるから。このままこれを剣にしたり鎧にしたりね。その恩恵で、魔素を完全に操れるから、だから身体から漏れないの」
「つまり、意図的に漏らすことはできると」
「う……はい。そうです」
ほーら危なかった。
「呪詛スキル:眷属:通常」
「っふぎゅぅ」
固形化した魔素がシーファの身体の中に吸い込まれて消える。
つるり、すべすべとした肌に今までの魔素の形跡は残されておらず、どこかに穴が開いているとかもない。
「あとは体内か」
「き、キタ! これは体の動かせない状態で私のナカを、ナカを見るために器具とかで固定されての奴! 待ってましたそれを待ってたんだよ私は!」
「格闘家スキル:霊衝拳」
「ふぇ──うぶっ……!? ……あれ、痛くない」
思いっきりの腹パン。
そのビジュアルゆえにか、シーファは来るだろう衝撃に身構え、そういうリアクションをこそしたものの、ダメージの無い腹部に違和感を覚えた事だろう。
格闘家スキル:霊衝拳。まぁ読んで字の如くだ。死霊系に打撃を与えるスキル……なんだけど、死霊に干渉できるようになるスキルっていうか拳を一時的に霊体にするスキルって感じ。だから俺の拳はシーファの腹を通り抜け、その体内へと入る。
「な、なな、なんかヘンなカンジが……」
「召喚士スキル:サモン:避魔球」
「ほへぁぁぁあっ!?」
シーファの胃だろう場所に、避雷針の魔素ver.で球ver.なアイテムを置く。魔素の濃いフィールドなどで戦う時に近くに置いておくと、周囲一帯の魔素を20%程抑えてくれるアイテム……なんだけど、魔素を抑えるとは? って思って軽く検証踏まえて色々試したら、どうにも周囲にある少量の魔素を吸うアイテムであることが判明した。
一応聖気の類でないことは確認済みだが、さて。
「お、おな、お腹の中になんかおいてきた!?」
「ああ。痛みなどはあるか?」
「無いけど違和感が! 違和感が!」
「魔素が吸われる感覚は?」
「無いけど胃液が凄いことになってる! ご主人様これ私消化できない!」
「いや消化させる気はない。もう一度、格闘家スキル:霊衝拳」
「おぅっふ」
避魔球を掴み、一度インベに戻す。手を引き抜けば──そこにはつるりとした、元のままのシーファの腹。
インベから避魔球を出してみる。
……魔素は吸収されてない、な。
「次は」
「おふぅ、ふぅ……お、おお? ご主人様、私のそんな、そんな場所じっくり見て、まさか? まさかまさか?」
「ああ、喜べ。まさかだ」
「やったー!! ぁぁああ!?」
避魔球を、それを掴んでいる手ごとシーファの膣に突っ込む。
魔素の漏れは……無さそうか。引き抜き、次は尻。
「も、もの扱いしろとは言ったけど、なんか違う、なんか違うよぉ!」
「それで、最後は口か」
「えぇっ!? 順序逆じゃない!? なんで下から上なの!?」
「いや、特に意図はないが。……自分の尻に入ったものは口にできないか?」
「そ……そういうプレイなら、まぁいいケド」
「じゃあいいな」
「もごもが」
入れる。
避魔球の反応は相変わらずだ。湧き出てくる唾液が避魔球に触れるけど、それでも魔素は吸収されない。
本当に漏れないっぽいな。本人が漏らそうとしない限り、だが。
「一度口の中だけ魔素を出してみてくれ」
「え。……えっ
「呪詛スキル──」
「わーわーふぁひ!」
滲み出てくる魔素。
それを避魔球が吸い込み──物の数秒としない内にパキンと罅が入る。粉々になる前にシーファの口から手を抜いて、これを観察。
「……許容量を超えた、ってことか」
「うぅ……魔素がぁ……私の大切にとっておいた魔素がぁ」
「ん、ああ魔素が減ると弱体化するんだったか。補充方法はあるのか?」
「え……っと、まぁ魔素の濃い空間に行くとか、魔化した魔物のそばにいくとか、かな? 人間とか魔物が魔化する時の魔素補充……じゃない、魔素中毒と同じ感じ」
「それじゃあこれをやる」
眷属メニューでアイテム分配。グラフィックを見ずにクレイデーモンの瞳というアイテムをシーファに渡す。
「……」
「なんだ、嫌いだったか?」
「いや、あの。……流石に魔族の、だから同族の目を食べるのは……」
「ああ、同族意識あるのか。そりゃすまん。じゃあこっち」
瞳をこっちのインベに入れ直し、またグラフィックを見ないでニーズヘッグの心臓というアイテムをシーファに譲渡。
「ほわぁ!? え、いいのこんな上質な心臓! 普通に御馳走だけど!?」
「そうか。知らんが、早く食ってくれ。俺は後ろを向いている」
「え、えへへ、久々の魔化魔物素材だぁ。えへへへ──いただきます!」
ニーズヘッグの角が欲しくて狩りまくったからな。心臓は強い武器の素材にはなるんだけど、一個でいいからそんなに出なくていいんだよ。だっていうのに倒したら100%ドロップだから嵩張って嵩張って。
ちなみにそれを使った剣のMOD導入前のグラフィックは覚えているので絶対に取り出さないことを誓っている。プリズンクライムよりもエグいのわかってるし。
今も背後で、シーファが……魔族であること以外普通の女の子に見えるシーファが人間の心臓食ってると思うと、ううん。なんかじゅるじゅるとかズズズとか聞こえるし。いやニーズヘッグって蛇なんだけど、多分アダルトMODはそういうところのディティールが粗雑になること許さないだろうし。
「ご主人様ー! 食べ終わったー!」
「早いな。口元はちゃんと拭いたか?」
「うん。魔素も完全復活!」
信じるぞ。
そう思って振り返ると。
「……ん?」
「なに?」
……食わせるために行動制限解除して座らせたから、か?
なんか。
成長してる、ような?
「そういえばスライムもMPの増減で大きさが変わってたな。……ふむ」
「?」
眷属メニューからMP分配でシーファのMPを倍にしてみる。
「え、何? 魔力?」
「……変わらないか。魔力と魔素は違うもんな」
「あ、戻った」
ワンチャン俺好みの身長や胸、尻の大きさに弄れるかと思ったんだが。
魔素をどうこうする術があれば、いける?
「あ、もしかして、グレイスちみたいなのが好きなの? じゃあなってあげる!」
言うが早いか、シーファはその身に闇色のオーラを纏う。魔素……じゃないな。これダークオーラとかと同じ種類の奴だ。
そのオーラがシーファの全身を覆い隠すくらいの濃度になって、そこから段々と、卵に罅が入るようにしてオーラが割れて。
「じゃじゃーん!」
「……成程。そういや姿変えて前の主人殺しまくってきてたんだっけか」
「そゆことです!」
そこには、髪色を黒にしたグレイスがいた。
……成程なぁ。成程成程。
「呪詛スキル:眷属:姿の偽りを解け」
「あ、ちょ」
今度こそぶわっと魔素が漏れ出る。
一応コルネリウスを構えて──けれどすぐにそれら魔素はシーファの中に吸い込まれていって。
あとに残ったのは。
「……いやちっさ」
あのスライムよりも小さい、それこそ妖精と見紛うくらいの超チビシーファだった。
「いやあのねー、ご主人様。ニンフって一応妖精の一種でぇ。もー、折角あの姿固定するの慣れてきてたのに、全部偽り扱いされちゃったから再構築しなきゃじゃん」
「妖精にも種類があるのか?」
「一種というか、亜種? 幻惑が使えなくなった代わりに歌唱系、踊り系に進化した妖精?」
「ほーん」
「ちょっと離れててご主人様。さっき貰った魔素分で元の身体になるから。あ、あと見ない方が良いかも」
言葉には素直に従う。
サッと後ろを向けば、何やら背後から「ゴリュ」だとか「メキョ」だとか「グチャドロバァ」だとか……形容しがたい、を一か所に詰め込んだ音が響き渡る。
どういう……何をしているんだろう。あとエグいな。……見たくなってる自分がいる。
シーファは勘違いしてるけど、俺が苦手なのってそういうグロさじゃないんだよな。
美女美少女を切り刻んで、みたいなのがダメなのであって、あとそういう素材を当たり前のように売ってたり食べてたりするのがダメなのであって。
液体化とかの状態変化は、結構イケ──。
「あ」
「……」
好奇心で振り返ったその先。
そこには、足やら手やらが全くばらばらのところから生えた、肉の塊としか言えないモノがいた。
コルネリウスを構える。
「わーわー! ちゃんと私! っていうか見ない方が良いって言ったじゃん!」
「……? 今お前、
「いやこれが本当の姿じゃないよ!?」
「違う。その、足が肩のあたりから生えていて、腕が腹と背から突き出していて、膣が首元にあって、顔に背骨が浮き出ていて……まぁその、あり得ん化け物みたいな姿に今なっているか?」
「詳細に描写されると自分でも引くけど、うん、なってるよ」
「……」
美少女に見えない。
なんでだ? 魔物判定……魔族判定じゃない?
久しぶりだ。ちゃんとしたグロい魔物見たの。魔物じゃないけど。アダルトMOD入れないと魔族って割とこういうグロいの多いんだよな。いや普通の魔物も涎垂らしてたり腐り果ててたり目が落ちてたり超グロいんだけど。
「……この状態で触るのは」
「あーダメダメ。巻き込んじゃうし、というか巻き込めなくて私が破損しそう」
「そうか。流石にやめとく」
「うんー。待って、もうちょっとだから」
段々。
段々と形成されて行く──女性。普段のシーファの言動とは明らかに違う、落ち着いた感じの、それでいてマッチョが隠し切れていない女性が完成していき。
「よーし!」
と彼女が言った瞬間、見慣れている方のシーファ、つまり美少女な彼女になった。
……ソダネ。見ない方が良かったかもね。
「魔素は平気か?」
「大丈夫。というかもう満腹って感じ! いやー、ニーズヘッグを狩れる人間がいるとは……今更だけど怖ッ!? え、もしかして単身で狩ったのアレ」
「いや、その時は仲間がいたよ」
「だ、だよねー。良かった……」
魔化したフィールドで魔化した魔物と戦う時は、自分の魔素耐性もそうだけど、定期的に聖水投げつける仲間がいると楽なんだよ。ショートカットで聖水を仲間に使う、を入れておいて、そろそろかなーってタイミングで投げてもらって、本来ヒットアンドアウェイしなきゃいけないところをガン攻めできるっていう。
効率よくやんないと聖水の消費量半端ないけど。
「仲間……って、ケルちのこと?」
なんか服を着てるっぽい動作をしている全裸のシーファ。ごめんな、それ視えねーんだ。
「いや。昔の仲間だ」
「ふぅん? その人たち今どこにいるの?」
「さぁ、どこだろうな」
「探さないの?」
「別にいいだろ。何より俺の仲間だぞ。強さも折り紙付きだ」
「あー。それもそっかぁ」
というか多分今現在いないだろうし。いやラクニシェルとメアリーはいるから他の奴もどっかにはいるんだろうけど。
俺との旅の経験はない。三周目なので。
「……ご主人様ってさ、昔は魔物も魔族もいっぱい狩ってた……んだよね? 倒してたっていうか、もう狩りの領域で」
「ああ」
「その中にニンフ、いた?」
「どうだろうな。見分けがついていなかった。妖精は……数えるのも億劫になるほど殺したが」
「ま、そうだよね。人間からしたら魔族の種別なんかわかんないか」
ニンフはでもいることは知ってた。そういう魔物がいることは。
だからどっかで倒してた可能性は全然ある。あるいはその中にシーファがいた可能性も。
「なんだ、家族か仲間か、探している奴でもいるのか」
「あはは、いたら奴隷ごっこなんてやってないって」
「確かに。俺と出会いさえしなければ、お前は好きな時にどこへでも行けていたわけだしな」
「それに……私も結構弾かれ者だからね。ほら、魔族って人間見下してるでしょ?」
「ああ、この前会ったやつには下等な種族だとか下劣だとか言われたな」
「そそ。だけど私、人間とセックスするの好きじゃん? もの扱いされたいとかさ。そういう願望、ニンフだけじゃない、魔族全体で見てもオカシイらしいんだよねー」
「人間含めてもオカシイと思うぞ」
「流石ご主人様、フォローとか無いもんね選択肢にね!」
いやちゃんと異常だろ。異常なフェチを自覚しろ。
「だから、半ば追い出される形で出てきたから……家族とか仲間とかに思う所はないよ」
「お前は魔族として生まれたのか?」
「んゅ? なに? どゆこと?」
「つまりだな、魔化した人間、ではなく、魔族の……ニンフとしてこの世に生まれ出でた。そういうことでいいんだよな?」
「うん。え、あのちっちゃい私の本体見て魔化した人間だと思えちゃうの?」
「ああ確かにそう言えば」
魔化した人間は魔族になる。その種族はまちまちだ。
だけど、それとは別に魔族として生まれてくる奴らがいる。
その違いはなんだ?
「ふぃー、酷い目にあった」
「まぁ、今日はこれくらいでいいか。収穫もあったしな」
「あ、結界解くのちょっと待って。聞きたいことあるから」
「ん?」
とりあえずシーファは解放してあとは自分で考察するか、とか考えてたんだけど、何か用があるらしい。
聞きたいこと。
鬼の国の話とか?
「ご主人様さ、アウラニちのことどうする気なの? 正直同じ家にいるだけでも結構キツいかなーとか思ってるんだけど」
「……ああ」
そういえば、そうか。
忘れてたわけじゃないけど、最近ちょいと色々あったからな。向き合っておくべきだろう。
称号エグさで買って来た奴隷──アウラニという少女について。
アウラニ。
称号は『天界の歌声』。種族は──天使。
「アウラニちも私の事わかってくれてるから絶対関わらないように、通り過ぎないようにもしてくれてて助かるんだけどさー。それでもこの家が聖気を帯びて行っちゃうの、結構キツくてさ」
「天使自体が魔族からしちゃ天敵だもんな。だけどアウラニはハーフだぞ」
「それでもめっちゃ来るよ。アウラニち、すっごい優しいから頑張って聖気抑えようと模索してくれてるみたいだけど、それでもクる。個人的にはアウラニちのこと好きだからあんまり言いたくないけど、一緒に住むのは無理かなーって」
天使、というのは一般的に考えられる神の使徒……ではない。簡単に言えば魔族が魔素の塊なら、天使は聖気の塊だ。ただ聖気には他者に伝搬したり一か所に集まったりする性質が無いので、相応の環境とタイミングが無ければまず生まれ出ない。
そんな超レア物天使と、人間のハーフ。ハーフであるとわかったのは買った後なんだけど、やべー拾い物した自覚はある。つーかなんで天使が奴隷になってやがる。魔族に対する特効薬みたいな存在だぞ。
「案は二つある。一つはこの家の改造だ。地下に空間を増築するつもりでな、そこで聖気を完全遮断する仕組みを取り入れる……のは、まぁ不可能じゃない」
「それってアウラニちか私を地下に閉じ込めるってこと?」
「ああ、そうなってしまう」
「じゃあダメ。もう一つは?」
「……気乗りしない」
「なんか痛いこと?」
「痛いし、キツいし、エグいし、グロい」
「どっちが? 私? アウラニち?」
「アウラニが」
「じゃあダメだー」
そうなんだよね。
手はあるんだ。やろうと思えばできる。けどちょっとどころじゃなくエグいことになる。
「あともう一つ、倫理観的にエゲつないのがある」
「どーいうの?」
「アウラニを二つに分ける」
「……剣で両断するってこと? ご主人様、頭大丈夫?」
「あんまり大丈夫じゃないが、そういうことじゃない。……俺にはハーフと呼ばれる存在を、それぞれの種族に分割し、それぞれに命を与える術がある、と言っている」
「やば」
そう。やばいのだ。
個人を二つに分けて、どちらも自身であるという自覚があり、けれど片方は天使で片方は人間で。記憶も人格も完全に同一。寿命も別に二分されたりはしない。ちゃんと一個人になる。
問題は、自分がもう一人いる、という自覚に彼女が耐えられるかどうか、というところ。
「……それさ、最大主教でもできなくない?」
「できないな。外法だ」
「考えたの誰? 狂ってるよ」
シナリオライター。
……ゲーム本編にあるイベントだからな、コレ。当時は気が狂っていると俺も思ったよ。人の心とかないんか? って。
しかも分けられたその二人は、最終的に自殺するってエンド。
報酬も美味しくないし絶対に通らないといけないイベントってわけでもないから、偶然引き当てちゃった一周目以外では触れようともしなかったイベントだ。
それでも、方法の一つではある。
「しかもそれ、だから人間のアウラニちはこの家に残して、天使のアウラニちは去ってもらう、ってことだよね」
「そうなるな」
「じゃあやっぱりダメ。……私が我慢するのが最善かなぁ、これ。フツーに考えて魔族がここにいるのがおかしいもんね」
実はまぁ、そう。
アウラニが人間のそばにいる分には何もデメリットがない。ただ先にシーファがいたからこうなっているというだけで。
魔族と天使。絶対に相容れないとわかっておきながら、それでも奴隷商のもとにいるのは危険だと思って買ったアウラニ。ただし俺はシーファに我慢を強いさせるつもりもない。奴隷は平等に扱う。優遇差はつけない。
……。
あと一つ、手段がある、か。
「シーファ。最終手段がもう一つあった」
「なに?」
「お前の種族の階位を上げる、って手だ。ハーフの天使の聖気くらいじゃどうにもならないくらいの階位に」
「……それ、無理じゃん。簡単にできてたら全魔族やってるって」
「できる方法を知っている。……簡単じゃないが」
「ん-。じゃあ聞くけど、それで誰かが……ご主人様含めて、この家の誰かが不利益を被ったりしない? なんか失うとかさ、なんか悲しいことが起きるとかさ」
「俺のアイテムが一個失われるがそれだけだ」
「……んー。でも簡単じゃないんでしょ? どう簡単じゃないの? っていうか何するの?」
「やる気がない奴には教えられないし、簡単じゃない、のではなく難しい、が正しい。俺とお前の頑張り次第だ」
「ふぅん。……つまりぃー、私が頑張れば、アウラニちと一緒にいられる……ってことでいいんだよね? 簡単に言うと」
「ああ」
それじゃあ、と。
シーファはにっこりと笑った。
笑って、言った。
「やろう! 私、友達のためなら全力出せる子なので!」
「よしよく言った! じゃあ死ぬぞ。せーのっ」
「へ?」
発動、ネフティスのタリスマン。
導け。俺とシーファを、死者の国ティル・ナ・ローグへ。