※この作品はR-18です。

アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ   作:姫鼠まりあ

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新たなる策謀(G度濃い目)

 リアが俺を呼んだ理由。それは。

 

「知っての通り、我がエイルニルス公国は一度滅びました。……その滅びの原因。ヴェルグさん、あなたはそれがなんであるかを知っていますか?」

「……いや、知らない。そういえば……調べたことが無かった。すまない」

「謝らせるために呼んだわけではありませんの。ただ、貴方の奇跡によって我が国が復活したとしても、我が国を滅ぼした元凶が消えたわけではなく……今その危機がまた、この国に迫っています」

 

 そういえば気にしてなかった。

 街の破壊具合から暴動が起きたのかな? とか思ってたけど、騎士も民も忠義に篤いし、どこか特定の国を恨んでいる様子もない。

 亡国アンダーテイカーが何故亡国アンダーテイカーになったのか。そして何故リアやラクニシェル、アニス・ウォーズマンだけ逃げ切れたのか。

 

「エイルニルス公国を滅ぼしたのは──ゴブリンなのです」

「あー」

 

 あー。

 ……いや大丈夫。侮ったりしない。このゲームでもゴブリンは雑魚敵じゃなかったし、某ゴブリンをスレイしてヤー! する作品のおかげで警戒度はMAXだ。そんな雑魚に滅ぼされる国なんて、とか思ったりしない。

 ただ、だとしてもエイルニルス公国の騎士のレベルは高い。ラクニシェルに始まりアニス・ウォーズマンもそうだし、まだ名前聞けてない長身長髪の女性騎士もそうだ。

 

 余程の数が来た、とかでない限り、ゴブリンに滅ぼされるってのは……。

 

「あの時我が国を襲ったゴブリンは、十万を超えていました」

「……」

「ラクニシェル。あの時来ていたゴブリンの種別は覚えていますか?」

「覚えてるし、復活してから経緯を全部記録してあんよ」

 

 渡される資料。

 ゴブリン、ゴブリンライダー、ゴブリンスケルトン、ゴブリンクイーン、ゴブリンメイジ、ゴブリンソーサラー、ゴブリンサモナー、ゴブリンキング……勢揃いか。ゴブリンゴーストだけいないのは、あいつらはやっぱゴブリン扱いなんじゃなくてゴースト扱いなのかね。

 

 事の経緯を時系列でまとめたものは、しかし酷く簡素だった。

 正門前に突然現れたゴブリンキング。その対応に騎士が集まった隙を狙い、エイルニルス公国全土からこれまた突然ゴブリンが現れた、と。

 そこから始まる大混乱と大虐殺。命からがら逃げだせたのは数人で、けれど逃げられないように公国の全体を囲うゴブリンまでいた、と。

 

「突然現れたのはゴブリンサモナーだろうが……ちと知性があり過ぎるな」

「はい。確かにゴブリンは狡猾ですが、ここまでのことを組み立てられる知性はありませんの。まるで」

「まるで人が知識を貸したような、だな」

「……はい」

 

 メアリーに言わせるなら「この世界的」な話だ。

 人間に一貫性のあるこの世界において、基本ほとんどの人間は善人である。だがキンゾイの親友のように、初めから他者を利用し、陥れることしか考えていないような悪人も存在する。ツバナのお家騒動もそういう奴の仕業だろう。

 悪人は悪事しか働かない。時には動機さえない場合もある。

 

 悪いことをするために生きている――そう運命づけられた奴らがいるのだ。

 

「だがすまん。知っての通り俺は魔物を斬ることが……」

「わかっていますわ。というより国防を貴方に任せていては、ゴブリン以外にも……他の何か脅威が来た時に国を守れませんもの。ただ、今回ばかりは知恵をお貸し頂けないか、と思いまして。今しがた言い放った偉そうな言葉を反しますが、この通り頭を下げますの」

「ふむ」

 

 もしかして俺頭良いと思われてるか? これ。

 ゲーム知識無双してる奴が頭良いワケ。

 

 ただ、やれることがないわけじゃない。

 

「少し……そうだな、調査に出てくる。俺もこの世界の全てを知り尽くしているというわけではない。だから調査だ。ただ原因が判明しても、俺にそれを潰す手段はない。だから仮にどんな危険が原因だったとしても、お前達に報告するだけになる。それでいいか?」

「構いませんの。どうかよろしくお願いいたしますわ」

「わかった。……ああ、報酬とか考えなくていいぞ。お前らが献上できる物は大体持ってるし、金にも困ってない。……と言おうかと思ったが、そいやアレだ。リア、お前とは入れ違いになったが、ほら、お前が家に来た時に新しい奴隷が幾人かいただろう?」

「ええ、いましたわね」

「その内のデカいの……ツバナという女が、力だけは強いまだまだ半人前の剣士でな。この問題が解決したらでいい、時折ここへ送り込むから、稽古なりなんなりをつけてやってほしいんだ」

「……どう頑張ってもヴェルグさんのようにするのは無理ですわよ?」

「わかってるよ。ただ修行が中途半端に終わっちまったんでな、ある程度完結まで持ち込みたいだけだ」

 

 キンゾイがやってくれていた修行。

 アイツは自分より弱い相手に限るけど、相手の強さに合わせることが上手い奴だった。だからツバナも数日でメキメキ成長した。いなくなっちゃったけど。

 だから下地はできてるはずなんだ。あとはもっと前線の兵士と兜突き合せれば、戦えはする、程度にはなると思うから。

 

「わかりました。それで契約を成立といたしますの」

「ああ。じゃあ早速行ってくる。メアリー」

「ぅ……ぅぅ、は、早く解除を」

「いや、お前そのままな。俺が帰ってきたら解除してやるから」

「嘘、待っ」

 

 見てるのがリアとラクニシェルとメアリーしかいないので、転移を使って消える。

 

 まぁ報復が怖いので嘘だ。すぐに解除して、と。

 

「んー。周辺にゴブリンの巣とかあったかね」

 

 一旦上空に転移して、落ちながら周囲を見渡す。

 この辺のマップなぁ。アンダーテイカー以外森だったから、特に思い出がねーんだよな。

 

 つーか十万はエグいな。仮にゴブリンサモナーの仕業だとしても、そいつどんだけMP持ってんだってレベル。サモンチェーンでもしたのか? あぁサモンされた奴がサモンしてサモンされた奴がサモンして……って奴ね。

 それにしたってエグいが。

 

 今考えている可能性は二つ。

 

 一つはどっかにゴブリンの巣穴がある。ラクニシェルの報告書曰く、ゴブリンクイーンもいたそうだ。この世界のゴブリンは別に雄しかいない種族ってわけじゃないから、アリの巣よろしく一匹のゴブリンクイーンと種ゴブリン数百匹で番って爆発的に増える、ができる。

 これは元グラの話だけど、ゴブリンクイーンには穴が十以上あるっぽいのだ。それが膣であると明言されたわけじゃないからアレだけど、どうにもそうっぽい。

 そして子宮も同じだけあるのか、ゴブリンクイーンの腹部はヒトガタとは到底言えない程に肥大化していた。アダルトMOD導入後は普通の美女になってたけど、見た目がそうってだけで本当は、ということはフツーにあるので。

 

 ただゴブリンの巣穴を探すのは結構手間だ。 

 ゴブリンの巣穴って所謂モンスターハウス且つ経験値の稼ぎ場で、入ったが最後中のゴブリン倒し切るまで出られない代わりに経験値ザクザク、みたいな、ある種レアスポット扱いんだよね。だから見つけるとかじゃなくて偶然ある、が正しい。

 それがこの世界でもそうなのかは微妙だけど、つまりこっち側からサーチするスキルはないってこと。

 

 んで二つ目の可能性は、やはり先ほどの知性の話。

 賢すぎる襲撃を人間が仕組んでいるのだとすれば、一斉召喚にも納得は行く。サモンチェーンより良い方法で大量召喚するサモナーは結構いるから。俺もできるし。

 

 でもその場合においても調査なんてできたもんじゃない。今そいつがエイルニルス公国の近くにいるとは限らないわけだし……。

 

 ……。

 

 ま、相手が召喚士ならこっちも、ってな。

 

「召喚士スキル:サモン:インビジブルバード。サモン:スレイプニル。サモン:ハンタービーズ」

 

 適当な場所に降り立ってから召喚するは、透明な鳥と犬と、蜂の群れ。当然全員美少女。インビジブルバードだけ見えないけど多分美少女。

 

「この周辺にゴブリンの巣穴がないか、あるいは小さな人間の集落がないか探してきてくれ。巣穴跡、集落跡でもいい。ただし攻撃はするな。見つかりかけたら自己送還してでも戻ってこい。いいな?」

「りょ~」

「いいだろう」

「ハッ! 我々にお任せを!!」

 

 ……召喚獣と喋れるの、ちょっと色々思うところあるな。

 ゲーム時代はその、所謂ヨッ〇ー乗り捨てみたいな方法で高い所行ったりしたことあるから。ああでも、見た目美少女ならイチャコラするには丁度いい、のか? コリジョン次第だけど。

 

 さて、召喚獣たちが森へ入って行ったのを見送ってから、俺は俺で動く。

 

「アサシンスキル:噴き出しの罠」

 

 罠の設置だ。

 できるだけ見た目がエグくならない罠をエイルニルス公国周辺、けれど人が入ってこないような場所に設置していく。召喚獣は俺の罠見えるので大丈夫。

 

「おい」

「ん? なんだスレイプニル。もう見つけたのか?」

「違うのがあった。一応、報告は入れておいた方が良いと思ってな。ついてこい」

 

 サバサバしてんな。

 俺から見て黒い鬣の全裸少女が四つん這いで駆けて行ってるようにしか見えないけど、俺の記憶が確かならこいつは雄。で一匹狼みたいな設定、だったような?

 

 まぁ魔物の性格なんてあんまり気にしないので、言われるがままについていく。

 ついていくと。

 

「……死体か」

「まだ死んでから日が浅い。だとしても食われていないのはおかしい。オレは罠か、毒があると見た」

「確かに」

 

 死体。少女の死体。寝間着のようなワンピースを着た、銀髪の少女の死体だ。だけどスレイプニルの言う通り、こんな森の中にあって野生魔物に食われていないのはちょいとおかしい。

 

「少し離れてろ」

「ああ」

 

 神官スキル:死者蘇生。

 ……何も起きない。魂がここにない、とかではない。これは。

 

「人形だな」

「ああ、それで臭いがしねぇのか」

「そっちを先に言え」

 

 これは人間の死体に見せかけた人形。

 だから恐らくこれに近づいて介抱しようとしたり、せめてもって埋葬しようと近づくと──。

 

「こうなるわけだ」

 

 アサシンスキル:ミラードール。

 早い話が分身の術だけど、某チャクラの奴よろしく簡単な衝撃で壊れるあんまり意味ないスキル。砲門を増やす目的くらいでしか使わない。

 

 それを人形に近づけさせれば、瞬間ボコッと大穴が開いて、穴に落ちたミラードールは地面に突きたてられた剣群によってめった刺し、すぐに消えた。

 

「近づかなかったのは英断だな」

「そういう命令だっただろう。当然だ」

「よし、スレイプニル。お前はこれ担当だ。ゴブリンの巣穴や人間の集落はインビジブルバードとハンタービーズに任せて、お前はこの罠っぽいものを探してこい。勿論だが」

「近づいたり調査するようなことは禁物。わかっている」

 

 そう言って森の中に消えていくスレイプニル。

 ……なんかいいなアイツ。かっけえわ全裸じゃなけりゃ。

 

 

 その後、スレイプニルの報告回数が群を抜いて上がって行って、エイルニルス公国周辺の罠は大体潰し切ったんじゃないか、って頃合いに、インビジブルバードが来た。

 

「何か見つけたか?」

「たぶん? 人間の野営地跡? わかんねー」

「よし、案内してくれ。スレイプニルは引き続き罠の捜索だ。ただ報告には来なくていい。場所を覚えておいて、あとで全部報告してくれ。できるか?」

「舐めるな」

 

 それだけ言って以下略。

 ……かっけぇ。

 

 んで、なんかゆっるゆるなインビジブルバードの案内のもとその野営地跡に向かう。

 

 着いた場所にあったのは。

 

「……確かに野営地跡だな。結構古い……」

「周辺であったのはこれだけ。も帰っていい?」

「ああ、構わん。休んでいいぞ」

「はーい」

 

 ああいうゆるふわは、あんまり好みではないけれど。

 成果はでかした、というべきものだ。

 

 さて、調査調査。

 

 ……。

 

「……それはエグくないか」

 

 思わず口に出す。

 野営地跡。そのほとんどが片付けられているし、証拠となるものは残っていなかった……んだけど、焚火の中になんかあったので、真っ黒こげなそれにスミススキル:修復を使ってみましたらアラ不思議!

 

 王国の国章が出てきましたわ!

 

「火種以外のなんでもないんだけど。……いやいや、王国はでも、王国ルートではそんなこと……」

 

 俺が今帝国にいるから王国が不透明になってて悪者に見えるけど、そんな他国を陥れて国土を広げようとする国じゃないのは一周目でよく知っている。

 じゃあこれはただエイルニルス公国周辺で王国軍が野営しただけ……ってンなワケ。じゃあエイルニルス公国行って宿借りろよ。

 

 暗部、かぁ?

 確かに暗部はあくどいことやってるんだよな。王国守るためとはいえ。特に暗部のスヴェロニカ君。ノズヴェルガーのもとに来た奴だ。

 アイツは単純サイコパスというか、人の気持ちが理解できないし、自分の行動の善悪がイマイチ分かっていない。ただやってることの結果は全て王国の利益につながるので、結果的に結構な地位にいる「俺なんかやっちゃいました?」の極致。

 あと強い。お前暗部じゃねーだろってくらい強い。あと武器種三種くらい使える。おかしい。お前騎士やれよ。

 

 だとして、王国暗部がエイルニルス公国をゴブリンに襲わせる理由はなんだよって。

 

 戦争をせずにエイルニルス公国を滅ぼしたかった? ……なんで?

 地図上で見ても、王国とエイルニルス公国はかなり離れている上に帝国を挟んでいる。帝国と王国は仲が悪いので、戦略的に見るならエイルニルス公国を取り込んだ方が色々と楽なはずだ。兵站の観点で言えばエイルニルス公国より帝国の方がデカいから後援国にはなり得ないし。

 んー?

 まだパズルのピースが足りない。あと野営地跡がここだけ、ってのもおかしいな。

 他の場所……いやここは隠れ蓑……?

 

 うーん、俺マジでこういう戦略ゲー全然やってこなかったからわっかんねーんだよなぁ。単純武力で全部解決じゃダメ?

 

「あるじ様! 我々ハンタービーズ部隊、敵主力戦力を発見いたしました!」

「敵? ゴブリンか?」

「はい! 高レベルのゴブリンクイーンを筆頭に、洞窟内に巣を作っています!」

「よし、じゃあ案内してくれ」

「ハッ!」

 

 ……そうか、可能性は二つだけだと思ってたけど、もう一つあった。

 王国の善性を信じつつ、ゴブリンの悪性が爆発する可能性。

 

 

 ──マモレナカッタ……だな?

 

 

 

 

 ゴブリンクイーンは悩んでいた。日に日に減っていく食料について悩んでいた。

 今も眼下、というか棲み処にしている洞窟内では自身の子であり夫であるゴブリンたちが、それはもう騒ぎ倒している。何も考えずに踊り狂い、一部は寝て、一部は意味もなく笑っている。

 多少の知性を獲得したメイジやソーサラーでさえそうなのだ。溜め息も吐きたくなる。

 

 彼女は偲ぶ。自身らを率いていた最強のゴブリン、ゴブリンキングを。

 人間に倒されてしまったから逃げ帰る始末となったが、あの時ゴブリンキングを殺した人間も既に死んでいる。復讐相手はもういないのだ。

 

 ゴブリンクイーンは重い体を引き摺って、獲物を納めてある部屋へ向かう。

 攫って来た人間含む他種族の女。手足を折って動けなくしてまとめてあるそれの一つを抓んで持ち上げる。

 

「や……め、て……たべ、ないで……」

「おかしな話よねぇ。こっちの言葉は通じないのに、そっちの言葉はわかるなんて」

「やめて……やだ、やだ……食べないで……!」

 

 あーん。ぱく。

 騒ぎ立てる人間の雌を一口で飲み込めば、喉や胃の中でじたばたと暴れる感覚があった。ゴブリンクイーンはこの感覚が大好きである。彼女の腹は沢山の子を産むために非常に硬くつくられていて、手足の折れた人間が暴れた程度ではどうにもならない。腹の皮肉も胃も子宮も、ただその衝撃を受け止める皿でしかない。

 その何とも言えない異物感が心地よく、そして。

 

「ぁや、だ、ど、げぇ……る゛ぅぅ……いだい、いだい、いだいいだいいだいっ──!」

 

 自身の消化液によって消化されて行く獲物の声を聞くのも、大好きだった。

 体の大きくない普通のゴブリンには絶対にできない所業だからだ。

 

「……でも、一匹で我慢。そろそろまたどこか襲わないと……食べ物、無くなっちゃうわねえ」

「だずげ、ぇ、が──ヵ」

「あらまだ生きてる。やっぱり足から食べると中々死なないのねぇ」

 

 頭から食べるとすぐに溶けて声を出せなくなって死んでいくけれど。 

 足から食べれば、中々死なずにずっと暴れてくれる。

 

「……そんなシシャモみたいな感想、どうなん?」

「あら?」

 

 中空から声がした。

 何もいない、誰もいないはずのそこから、人間の雄の声。

 

 雌も雄も美味しく頂けるゴブリンクイーンにとって、それは降って湧いた幸運。「雌の方が食う所が多いし柔らかい」とか言って雄を殺してしまう下級ゴブリンたちが滅多に持ってこない雄。それを味わえる機会など、もう来ないと思っていたのだから。

 

 だからあんまりにも嬉しくて嬉しくて、その正体を暴かんと手を伸ばし。

 

「──ッ!?」

 

 伸ばし、かけた。

 

 その手に悪寒が走らなければ伸ばしていただろう。

 

「ああ、やっぱりか。お前相当レベル高いな。俺とのレベル差わかるってことは、かなりだ」

「……ああ、もしかして私の命、ここで終わり?」

「いや。俺は魔物は殺さん。だがここのことは報告する。エイルニルス公国に潰されるか、お前達が再度勝つかはわからん。この堕落しきったゴブリンたちが今のエイルニルス公国に勝てるとは思わないがな」

 

 その通りだった。

 ゴブリンクイーンが食糧難に悩んでいたのは、兵士としてのゴブリンたちの質の低下が問題だった。

 ゴブリンキングというカリスマを持つ頭がいなくなってしまった今、形式上のトップはゴブリンクイーンだけど、その反面で彼らは彼女を「子を産む機械」としか認識していない。今しがた生まれ出でた子であっても、だ。

 だからどれだけ節約しろと言っても聞かないし、戦えと言っても襲えと言っても、自分たちの腹の空いた時にしか動かない。

 

 キングがいたころは、彼の我欲のままに全てを襲い、全てを滅ぼしてきたゴブリン軍団がこのザマだ。

 

「俺は割とさっぱりしててな。特に関係性を持っているわけでもない奴が食われてたところで特に助けたりはしない。流石にそれに関しては俺の視界に映るものの方が勝る。だが、どうだろうか。――中で溶けかけて、いいやほとんど溶けて死にゆく者よ。まだ生きたいか、助けて欲しいか。それとももう無理か」

「もしかしてぇ、私のお腹、斬る気ぃ?」

「──ず、げ……で」

「ふむ。まぁあんまりこういうことしないんだけどな。流石に目の前だったし。ああ、ゴブリンクイーン。お前を斬ったりしないよ。ただいきなり腹が減るだろうから、俺の見てない所でまた食ってくれ。俺は見なかった物は起きなかった事と同じにするクチだから」

 

 瞬間、ゴブリンクイーンのお腹の中にいた獲物が消える。

 暴れまわることも、悲鳴を出すこともなくなる。

 

「最大主教スキル:完全再生。アサシンスキル:催眠」

「……私を殺さないの?」

「俺は殺さない。が、お前らに恨みを持つ人間が殺しに来る。抵抗できるかどうかはお前ら次第だ。俺は参加しない」

「……じゃあ私は逃げちゃうケド」

「勝手にすればいい。さっき言った通り、俺は見なかったものに対しての興味が酷く薄い。エイルニルス公国を守るために散って行った、お前達の策謀を真っ先に見抜いた王国兵のことも、お前とゴブリンキングという突出した個が作り上げた最強のゴブリン軍団も、どこぞから連れて来られて今餌にされようとしている人間も」

 

 見えなかったら、いないのと同じだ。

 

 そう言い残して──雄の気配はなくなった。

 

「……アレ、どう足掻いても無理ねぇ。……逃げましょうか。はぁ、また新しい家を探すところからねぇ」

 

 ゴブリンキングがいない以上どうしようもない。

 ゴブリンクイーンにできることは子を増やし続けることだけ。けれどそれさえ意味ないというのなら、またゴブリンキングの素質を持つ子が生まれるまで子を産み続けるしかない。

 

 彼女はゴブリンクイーン。

 齢にして千を超える──太古から存在する魔物の女王。ただしその本質は、「引き際の悟りが異様に良い」ことから来る恐ろしいまでの非戦闘主義が由来であったことなど、誰も知る由はないのであった。

 

 

 

 

「報告します。ヴェルグ殿に頂いた地図のもと、ゴブリンの巣穴を発見。ゴブリンキング、ゴブリンクイーンの姿は見当たりませんでしたが、一万近いゴブリンの掃討を確認。また囚われていた我が国及び他国の女性たちも保護いたしました」

「おう、報告ありがとよ。……それで? も一個の方は?」

「はい。確かに野営地跡はありましたが、その近辺の樹木に文字が刻まれていまして。曰く"カイ、フラウ、アンドリュー、ここに眠る。勇敢にも数万のゴブリンと戦いし者の名。そしてこれを刻むリチャードもまた"と。現在王国の方へこの名の騎士の所在確認をしているところです」

「……ああ。罠とかいうのは?」

「全て発動済みで壊されていましたが、いずれもゴブリンが使うものではありませんでした。ただ人間が作ったものとも……どこか、そうだとは言い切れないような」

「いや、騎士団長。お前の言い分を信じるよ。いずれの処理も慎重に行え。兵士の欠けがないかの確認もな」

「ハッ!」

 

 そんなやり取りを見て。

 

 卓に、着く。

 

「以上が俺の調査結果とその後の話になる、かね」

「ええ。ゴブリンの巣穴を見つけられたことは幸いでしたし、王国の方々が人知れず戦ってくれていたことを知れたのも良かったですの。けれど」

「罠。……俺からしてもあの人形の精巧さはちょいと引っかかってたよ。ゴブリンの仕業でも人間の仕業でもなさそうだ、ってな」

 

 あのゴブリンクイーンは凄まじい知性を持っていた。だけどありゃ生存本能の知性であって、戦略に長けてるわけじゃない。

 

 精巧な人間の死体を作って罠を仕掛けたり、ゴブリンの軍勢を一気に国へ流し込んだりは、草案こそゴブリンキングの可能性はあるけど、しっかり固めたのは別の奴だろう。

 

 だからそれは。

 

「魔族、ですね」

「おお、落ち着いたのか。ま流石に半日あればな」

「ええ、あとでお覚悟を。それより……精巧な人間の死体の人形を作る魔族には心あたりがあります」

 

 変わる空気。

 俺別にそれがわかっててメアリーを連れて来たとかじゃないんだけど、なんか噛み合ったな。

 

「それは、どういう?」

「人間には聞き馴染みのない魔族だとは思いますが──ここから遥か北方の洞窟内部にとある遺跡がありまして。そこにドールマスターと呼ばれる魔族が住み着いています。魔素の濃い空間であり、通常の人間では近づくことはおろか発見しただけで一級警戒令が出される程の濃度です」

「……遺跡?」

「はい。ツァリラストュ遺跡と言うのですが、ご主人様はご存じですか?」

「あぁ、あそこ……あそこかぁ」

 

 でもあそこ魔族なんかいなかったって言うか魔素フィールドじゃなかったはずだけど。つーかダンジョンですらないけど。

 

「ご主人様が疑問に思うのも無理はありません。あの遺跡を居住区、採掘場としていたのはドワーフたち。数年前までは王国や帝国、及びエイルニルス公国とも取引を行っていた種族がいた場所です」

「俺の記憶と違わんな。なんでも珍しい宝石が出土するとかで、ドワーフ内部の種族間で採掘権争いが発生するほどには希少な遺跡だったはずだ」

「ドワーフが魔化すると、ドールマスターかダークスミスのどちらかになるのです」

 

 ……そんな法則性あるのか?

 魔化した人間がなる種族はまちまちだ。それは異種族でも変わらなかったはずだけど、ドワーフだけ?

 

「それは確かな情報なんだな?」

「はい」

「……で、だとして。そのドールマスターがエイルニルス公国を狙った理由はなんだ」

「それについての心当たりは、むしろエイルニルス公国の方々の方があるのでは?」

 

 メアリーがリアとラクニシェルを見る。

 もう。

 

 もうすでに、表情を硬くしている二人。

 

 もうちょっとポーカーフェイスをだね。

 

「リペアストーン、ですわね」

「ええ。アレはドワーフとしての意識、あるいは記憶を持った状態の魔族であれば、喉から手が出る程に欲しいもののはず」

「リペアストーン? ってコレか?」

 

 インベから出すリペアストーン。

 青色の石で、武器の耐久値の回復とかに使う石だ。

 

「ええ、それですの」

「お、純度の高いの持ってんね。大切にしなよ」

 

 いやあの。

 装備の耐久値回復にバカスカ使っちゃってますけど。

 

「エイルニルス公国の地下には、リペアストーンの鉱脈がありますの。戴冠の杖の宝石部分もリペアストーンですのよ?」

「ドールマスター本体はそこまで強くない種族ですが、元がドワーフである場合、知性は一級品です。よってドールマスターはなんとしてでもエイルニルス公国を手に入れたいと思っている……と推測できます」

「それで我が国が狙われた、と。いえ、罠が張ってあったことを考えるに、今も狙われている。そしてゴブリンという駒がなくなった今」

「はい。別の手段で攻めてくる可能性が高いです」

 

 ですので、と。

 メアリーは俺を見る。

 

「最も簡単な対処法は、ツァリラストュ遺跡を壊滅させること。――ご主人様。斬れなくとも吹き飛ばすことは可能だと仰られていた覚えがあります。ドールマスターを視界に収めるまえに、ツァリラストュ遺跡ごとあの山々を消し飛ばすことは──可能ですか?」

 

 ……いや言ってることエグ。

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