アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ 作:姫鼠まりあ
ノズヴェルガーに真経津鏡を見せたところ、「使ったことはないが知っているスキルの可能性がある」こと、及び「双方の術者を自分の前に持ってきてくれたら契約を破棄させることが可能である」とまで言ってくれた。
もう感謝しかない。眷属の呪いでシーファの位置はわかっているので、あとはケルと血の契りモドキを交わしたやつを探し出せばそれでよくなったってわけだ。
まぁそれが至難ではあるんだけど。
とはいえこうして堂々と帝国を歩いていれば、わかってくることもあるもので。
「見つけた」
「ッ──!?」
大きく後退ろうとする男の腕を掴み、そのまま握り潰す。
悲鳴を上げる男。しかし何故か声は響き渡らない。路地裏とはいえ市場に近いこの場所で、誰もこちらをみることがない。
「呪詛スキル:眷ぞ」
「栄光あれ!!」
「最大主教スキル:完全再生」
「──なに!?」
自爆の呪いだろう。その男は俺の呪詛スキルの発動兆候を見た瞬間にその選択をし、爆ぜ、しかし完全再生によりこの世に舞い戻る。
「呪詛スキル:眷属」
「ぐ……」
「で、お前名前は……キーロか。所属は……王国暗部? ああなんだ、別口かよ」
「ふ、フレースヴェルグ団長! 何故ですか、何故あなたは王国に反旗を翻し、このような行いを」
「今それどころじゃないんだわ。無暗に俺に敵意向けるのやめてくれ。敵だと思うだろ。……解放してやるから、スヴェロニカに伝えろ。今はやめろ、とな」
「団長──何故ですか。何故なんですか!」
「……殺すか」
投げた短剣が、しかし弾かれる。
……ん、俺、思ったより焦ってるか? ちょいと結論早く出し過ぎだな。あといつもならこんなに早く殺人を選択しない。なんだ、思ったよりケルのこと仲間だと思ってるな、コレ。
「あっぶねぇ……はぁ、ようやく見つけましたよ騎士団長。やっぱ帝国にいるって噂は正解でした、ね……っと」
「すまん、お前らと向き合ってやりたい気持ちは山々なんだが、今それどころじゃない。今すぐに俺の目の前から消えてくれ。じゃないと、お前らが最強と呼ぶこの力を存分にその身に受けさせるしかなくなる」
「……キーロ、全員に撤収命令だ」
「え。でもせっかく見つけたのに」
「団長が本気で怒ってる。これ、もしかしたら帝国が地図からなくなるかもしれねえ」
「へぇ? なんだスヴェロニカ。お前他人の気持ちとかわかるようになったのか」
「生憎とてんでさっぱりですが、こんだけ殺気孕んでたら流石にね。それじゃあ、また今度」
そう言い残し、キーロを連れてその場から消えるスヴェロニカ。
相変わらず……やっぱアイツ暗部にいるべきじゃないだろ。仲間にした時のステータスとんでもないんだよなアイツホント。
ミニマップから赤点がどんどん減っていく。なんだよ、じゃあ外れくじばっかだったってことか。紛らわしい真似しやがる。
最初はミニマップ様感謝! 赤点ばっかりでもうこれ全部敵じゃん楽勝! とか思ってたのに──完全に赤点がなくなった。
おいおい、慎重な奴らだな。……シーファを外に出した意味がなくなるだろ。ただシーファを傷つけただけになるじゃないか。ケルが帰ってきてた時点で帝国内に赤点がいっぱいあったからこの行動に打って出たのに。
逐一メニューから各奴隷のバイタル情報を確認する。今んとこ全員無事だな。HPはちゃんと減ってるけど、減らした時のままだ。メアリーだけ全快だけど。
さてどうするか。
ミニマップさん頼りに街中に出て来たけど、今日雨だから人も少ないし聞き込みしようにも何を聞き込めばいいのやらだし。
救いがあるとすれば市場が少ないことか。料理売ってる屋台が少ないから、ある程度目を開けて歩けるのはデカい。雨いいじゃん。これから毎日雨にするか?
「あ、あの」
「ん?」
振り返れば、まだ年端も行かない少年。マップは青点。
だけど全く知らない子だ。迷子……だとして俺に声をかける理由はわからん。俺結構見た目怖いぞ多分。
「こ……これ、受け取ってください!」
「……ああ、そういう手段ね」
「おね、お願いします!」
「構わん」
受け取る。
その瞬間、脱兎の如く逃げる少年。
貰ったプレゼントという名の爆弾をインベントリに入れて、一息。
なんか、爆発好きだな今回の奴ら。……ああいやキーロは王国か。じゃあ常套手段か何かなのか?
爆発ってあんまりな気がするんだけどな。周囲を巻き込む力は高いけど、本当に殺したい相手には然程ダメージが入らないっていうか、治癒スキルでどうとでもなるっていうか。
うーん。
「いくら離れた所から見てたって気付くものは気付くんだなこれが」
「!」
ミニマップの拡縮を帝国を覆う規模にして、みつけた赤点への転移。
ま、そうだよな。監視役は一人くらいは必要だもんな。
「呪詛スキル:眷属」
「……元王国騎士団長、フレースヴェルグ。呪いにも精通しているという話は本当だったか」
「さぁ、吐け。お前らの目的と所属組織。ケルにした契約が何か、ケルと契約した者が誰か」
「知らん」
「……なに?」
「我らは
「にしてはお前に従属や屈服の呪いはかかっていなかったように見えたが」
「そんなものがなくとも従うように育てられている」
ああ。
ケルが、そういやなんか言ってたな。思い出すのも嫌な場所。施設。
でもそれ潰れたとかじゃないっけ? 再建したのかな。
じゃあそこが敵か。
「だとしても、関係はないが。お前の知っていることを全て吐け。命令だ」
「知らん。だが言葉は正確に紡ぐべきだ。主の命令だからな。──今も知識が抜かれて行っている。あと数秒で俺は言葉も話せぬ傀儡となるだろう」
「知識を抜く? 遠隔で? ……なんだそのスキル」
「ああ……まあ……同情は、する……ぉ、ぅー……」
白目を剥いて口の端から涎を垂らし、立ち方すら忘れたというかのようにぐでんとなる男。
……知らんスキル。血の契りと同じくこの世界に住む者にしか使えないスキル的なモンってことか。
まぁいいや。遠隔で抜けるってことは遠隔で詰め込むこともできそうだから、動けないようにはしておいて、と。
「俺は同情とかしないよ。すまんね」
その場を後にする。
……まだ、いるな。一々遠いが、とりあえず全部当たるか。全部捨て駒っぽいけど。
やっぱり全部捨て駒だった。
あと、さっきの子供が気になって彼の駆けて行った方に向かってみたら、子供も病気だったっぽい親も、どっちも殺されていた。子供がナイフ持って無理心中くさいが、見せかけだろうな。一応スイ個人への連絡は入れておいたけど、ギルドが動くかどうかは知らんし、ギルドが調査する前に終わらせるつもりだからあんまし関係ない。
悪人は悪人、か。
「そろそろ考えるのがダルい。帝国丸ごと消し飛ばすのはアリか? ラムナザール四世」
「その後エイルニルス公国のように蘇生を、と? 余が言えた事ではないがな、ヴェルグ殿。些か大雑把過ぎやしないか、何事も」
「俺は参謀タイプじゃねぇんだよ。で? 来たのはアレか、俺の違反を聞きつけての粛清か?」
「うむ。余には無理だと言ったのだが、周囲が聞かなくてな」
奴隷であってもむやみに傷つけたり殺してはならない。
それがラムナザール四世の定めた奴隷制度の法の一つだ。それを今回俺はやりまくってるから、帝国民から通報が行ったかね。
「やるか?」
「まさか。まだ余はあの時から一歩半程しか進めておらん。今やった所で二の舞だ」
「一歩半進めたなら凄いことだとは思うが」
「五十歩進む必要があるのだ、塵に等しい距離よ」
じゃあ、何をしに来たのか。
「自身より強き者に媚び諂うのは、何かおかしなことか?」
「ほう? なんだ、わざわざそんなことを言いに来たとは、マスカルウィン帝国の名が泣くぞ」
「泣いて困る程度の名など泣かせておけばよい。──ヴェルグ殿には家族を救われている。そのヴェルグ殿の仲間が窮地にあるのならば、余が手を貸すのにどの理屈が道を阻もうか」
「俺が手を焼いている案件に首を突っ込むんだ、皇妃様やスイに危害が及ぶやもしれんぞ」
「それも守る。余はおかしなことを言っているか、ヴェルグ殿」
いいね。
良いポジティブだ。見習う所が多い。
「幼少の頃から暗殺技術を叩き込んで兵士にするような施設に心当たりはあるか?」
「神殿の粛清部隊か?」
「……いや、違う。少なくとも神官スキルも聖女スキルも使って来ていない。どちらかというと契約や呪詛スキルを多用する相手だ」
「ふむ。……既に消えた場所でも構わぬか?」
「むしろそれがアタリの可能性が高い」
「一年前だ。王国との小競り合いと、魔族侵攻の事件。それに隠れる形で『
「潰れた理由は?」
「余波だ。魔族侵攻の」
……ふむ。
今更だけど、こうしてちゃんとした奴から「魔族侵攻があった」と聞けたのはデカいな。
「つまり、組織は散り散りになったが、再集結している可能性はある、と」
「そうなるな」
「……構成員などはわかるか?」
「いや、まちまちだ。そのあたりを歩く子供がそうであることもあるし、決して表には出て来ない者もいる。いずれにしても共通点は名が無いことくらいか。どのようにして管理されているのかはわからぬが、奴らには名がない。あるいはあったとしても、余らの前に引き出される頃には覚えていない……のやもしれぬ」
ケルには最初から名前があった。が、それが暗殺者時代につけられた名だとは聞いていない。一年前にその組織が崩れたのなら、その間に色々あって名付けられ、奴隷の身に落ちて、も全然あるだろう。
一応ノズヴェルガーにはケルの出品者を聞いてある。ただ──曰く「ちゃんと取引はしやしたがね、ある日蒸発しちまって。名前は勿論、容姿ですら覚えてる奴がいねぇってのは不気味で不気味で」らしい。
ノズヴェルガー自身がカモフラージュ用に仕入れている奴隷以外は、どれも何かしらの厄介ごとを持った奴隷。だからノズヴェルガーはケルを仕入れる時にその厄介ごとを知っていたはずなのだが、それを問えば酷く焦った顔で「そんなはずは、そんなはずはないんですが……あっしは、なんてことだ、忘れちまって……すぐに記録を確認いたしやす!」と言ったきり、地下にあるらしい記録庫から戻って来なくなった。
記憶。知識を抜く。契約。
その辺の……イベントは一個だけ心当たりがあるが、それファントム関連なんだよな。だから絶対違う。アイツはこういう「手掛かりを残さないイベント」はやらないから。物語が遅々としてしまって面白くないから、とか言ってたか。
「
「頼む」
「では、戦士スキル、神速!」
同じく神速を使い、彼を追う。
これだけ慎重な組織なら痕跡なんか残さないとは思うが……果たして、だな。
そこは帝国から結構離れた山の中。倒壊した入り口をラムナザール四世が剣で斬り開くと、そこにはゴブリンの巣穴でもありそうな空間が広がっていた。
だけど、あれほど雑多じゃない。ちゃんとした「施設」だ。知性を感じる。
「召喚士スキル:サモン:スレイプニル。どっかに死体が埋まってないか探してきてくれ。骨でもいい」
「ああ」
犬だから、って理由でスレイプニル使ってるけど、この理由知ったら怒るのかなコイツ。
「……想像以上に綺麗だな。暗殺者の組織というからには、もっと壁や床に血がこびりついているもんだと思ったが」
「
「虐待施設ってわけじゃないってことか」
「あったぞ、死体が」
お。
はっはっは、ダメじゃあないか裏面君。片付けはちゃんとしないと。
「案内してくれ」
「ああ」
「余はここで見張りをしていよう。何かあったら召喚獣か何かを寄越すが良い」
「助かる」
やることがやることだしな。
ラムナザール四世は「見ない」という選択肢をしてくれたんだと思う。そういうところもカリスマの一種だよなぁ。
とかく。
すまんね、ティル・ナ・ローグへ行って長いとは思うが──俺のために目を覚ましてほしい。
「神官スキル:死者蘇生」
共同墓地らしき場所には何も無かったが、スレイプニルが見つけた、子供しか通れないような壁の穴の、その奥にあった簡素な墓地にその死体はあった。
蘇る──少女。
「……?」
「すまんな。呪詛スキル:眷属」
「……」
暴れられても口を閉ざされても面倒なので、初めから眷属の呪いをかける。
さて、名前は……NO NAME。本当にそうやってんのかぁ。ってことは、ケルの名前を出しても意味は無さそうだな。
「自分の最後の命令を口に出せ」
「……自身の最も大事に想う相棒を、任務終了後に後ろから刺せ」
「成し遂げたか?」
「いいえ。私は壊れてしまっていたようです。任務を拒んだ不良品なんて」
だから殺し返されたか、組織に殺されたか。
なんにせよアタリだ。
「この少女に見覚えはあるか?」
「……あります。私の、大事な、相棒」
「ちょいとアタリが過ぎるが、まぁいい」
スクショを「画用紙」というアイテムに張り付けるとゲーム内アイテムとして部屋などに飾ることができるハウジング機能。それをただの写真として使った。いや写真機があるのは知ってるけど素材がね。……この画用紙も……ちょっと人皮っぽさは出てるんだけど、今はそこを気にしないように努めている。
「お前も相棒も名は無い。そうだな?」
「はい。私達に名はありません」
「お前以外にこの少女と関わりの深かった者で、男だった者はいるか?」
「はい。二人います」
「呪詛スキル:眷属:行動操作。その二人の完璧な似顔絵を描け」
「はい」
本人の絵心に関係なく絵を描かせることのできるこのスキルの特性は、本来は主人公が王国暗部に所属した時に初めて明らかになる機能だ。ちなみにこれは魔物相手にも可能で、そういう意味での監視の目も使える。
「……どちらも見覚えは無い、か。スクショはするが……」
「片方は私達と同じで名はありませんが、もう片方にはあります」
「何故だ?」
「私達を使う者だったからです。名はガーリー。ただし、本当の名であるかはわかりません」
「いや、十分だ。……一応聞く。お前をこのまま……つまり生き返らせたまますることも、この少女に引き合わせることも可能だ。そして同時に、ここで殺し、今度こそティル・ナ・ローグでの安寧を得ることもできる。お前はどちらを選ぶ?」
「……申し訳ありません。私達に選ぶという機能はありません。あなたが選んでください」
「だがお前は殺さないことを選んだだろう? 選べるんだよ、お前は。だから選べ、生か死か」
ぁ、と。
小さな声を出して、少女は。
「……申し訳ありません。生か死か、そのどちらがいいかを判断する材料が不足しています。ですが……」
ですが。
「私は、この子に会いたいです。会って謝りたい。この子の心に、大きな傷を付けてしまったことを」
「それが生きたいという願望だ。判断材料として覚えておけ」
「了解しました」
さて、しかし名無しだと色々面倒なので、名前つけるか。
……ま、ネーミングセンスは期待するなってことで。
「今日からお前の名前はツゥだ。呼ばれたら返事をしろ。いいな?」
「了解しました」
「んじゃツゥ、ここと共同墓地以外に死体がありそうな場所、及びお前達は入ってはいけないとされていた部屋なんかがあったら案内してくれ」
「わかりました」
俺はこれを厄ネタだとは思わない。ケルが本心から俺の敵になっていた場合に引き戻す材料にもなるかもしれないし、幸運だと捉える。
流石にもう証拠らしい証拠は残っていなさそうだが、果たして。
「おい」
「ん? どうしたスレイプニル」
「人間じゃないが、魔物の死体があった。どうする?」
「魔物を視認。殺しますか?」
「いや、俺の召喚獣だ。気にするな。スレイプニル、案内してくれ」
「ああ」
マージでコイツ有能。いや召喚獣みんな有能なんだけどさ。
さて、しかし魔物か。
……蘇生して殺すのか。憂鬱だな。
ソレのゴーストがいたので叩き斬って、死者蘇生を使う。
且つ眷属の呪いをかけて。
「ミラージュオウル。個体名はあるか?」
「無い。……魔物の蘇生を行うなど、この人間は気が狂っているのか?」
「狂っていないし、聞こえている。無いなら種族名で呼ぶが構わんな?」
「……魔物の言葉を解す人間だと? ……ああ、種族名で構わん。なんだ、オレに答えられることであればなんでも聞け」
ミラージュオウル。その名の通り本来はフクロウの魔物で、カメレオンみたいに自分の姿隠してくる系なんだけど。
アダルトMOD越しで見ると、その……なんか水玉コラみたいになってる。ただ水玉部分の先の景色が見えるから、ただ立っているだけで既にグロい。こんなんだっけ?
「お前のこの施設での役目はなんだった?」
「監視と催眠だ。子供たちが逃げないようにな。そして反乱の兆しを見せたり、自身らの境遇に少しでも違和感を抱いた兆候があれば、オレがそれらの記憶を封じていた」
「記憶の封印は、ミラージュオウル専用のスキルか」
「いや、他にも使える魔物はいるはずだ。妖精などが好例だろう」
ああ。
そういえばグレイスの話の時に、ちらっと出てたな。
「すまん、こちらから聞き返すことは可能か? 不可能であれば眷属の呪いでもう少し強く縛ってくれ」
「いや、構わん。何が聞きたい?」
「グノーシスはもう死んだのか? いや、オレが殺されてから何年経っている?」
「すまんがグノーシスというのが誰かはわからん。お前が殺された時期も知らん。だが、この施設は一年前に潰れたと聞いている」
「一年か。……なら、まだ契約は生きているな。今すぐオレを殺し、オレの心臓を素材に忌憚呪穴を使え。使えるだろう、それほど呪詛スキルに長けているのなら」
「……使えはするが、まず説明をしろ」
忌憚呪穴。あるイベントで使う以外使う機会のない、超限定的なスキル。
呪詛スキルの一種であり、その効果は「対象NPCが心の底から嫌っている相手を探し出す」というもの。ただしスキルの発動条件に「対象NPCの心臓」が必要であり、探し出すだけで呪ったり危害を与えたりできるわけじゃない……正直言って使いどころのないスキル。
そのイベントの条件下においては結構有用になるのでガンガン使うのだけど、イベント後に使った記憶は一回もない。
「まず、グノーシスはこの施設、この組織の頭だ。そんでもってオレを使役していた召喚士でもある。が、オレは望んで奴の召喚獣になったわけではないし、この組織のやり方も心底嫌いだった。オレは種族問わず子供が好きなんでな」
「そうか。それで?」
「これ以上が必要か? オレが奴の召喚獣で、オレが奴を心底嫌っていて──お前達は奴を探している。違うのか?」
「少し違う。グノーシスとやらに興味はない。俺が探しているのはガーリーという男とこの少年だ」
「合っているじゃないか。このチビがグノーシスだよ。子供を使い、子供を道具にし、子供を貸し出すビジネスを思いついた狂気の子供。それがグノーシスだ」
「そうか。──協力、感謝する」
「ああ」
仙人スキル:無の境地。
そして──これほどまでに協力的で、心の底からツゥを気遣うような目をしているミラージュオウルを──斬る。穴だらけの女性は満足したような顔でその剣を受け入れ、倒れた。
その胸に手を突き入れて、心臓を取り出す。見えている場所に胸が無いのは知っていたけれど、見えていなかったミラージュオウル本体の心臓を取り出したら、見えている女性の胸からも心臓が引き抜かれた。
……無の境地が効いている間に全部済ませないと。
「呪詛スキル:忌憚呪穴」
消費アイテムとして消える心臓。伴い、ミラージュオウルの肉体も消える。
これで蘇生は効かなくなったが……まぁ、これ以上ゴーストとなることもない。供養としてほしい。
「平気か?」
「なんだスレイプニル。お前、俺のトラウマ知ってたのか」
「主人の体調くらいわかる。馬鹿にするな」
「……平気じゃないが、それどころじゃない」
「そうか。時間を取らせた。行け」
「ああ」
行く。
血濡れた手でツゥを掴み、抱き、施設の外を目指す。神速も使用して、だ。
入り口にいたラムナザール四世はこちらを見るなり神速を使用。何も聞かずに並走を始めた。
「怒りで我を忘れるでないぞ、ヴェルグ殿」
「今抱いているのは怒りじゃないさ。どちらかというと感謝だ。そして余計に俺は──魔物を殺せなくなった」
「そうか」
そういう奴もいるのだと知ってしまったのは最悪だ。
だけど、ありがとうと言えたのは大きいよ。
「ラムナザール四世。少し荒業を使う。後処理を任せる」
「……帝国を消し飛ばす類ではないだろうな?」
「違う。だが次第によっては良からぬ噂が立つ。俺は気にしないが、俺以外への誹謗中傷が出るやもしれん」
「そうか。最悪の場合ヴェルグ殿の奴隷や仲間を城に匿うことも考慮しよう」
「助かる。んじゃツゥを持っていてくれ」
「ぬおっ、神速の最中に投げ渡すのは」
跳躍し、忌憚呪穴の指す地点の真上にまで来る。
ミニマップで青点の人数を確認。二人か。まぁ巻き込んだのならすまないで済ませる。
「魔剣士スキル:ウィンドオーラ。魔法使いスキル:集束。魔法スキル:雷霆」
帝国上空に広がった緑のオーラ。それはバリバリと紫電を帯び始め、その激しさが雨天を、暗雲を退かしていく。雨に雷が勝る。その光景がどれほどに異様か。
「戦士スキル:落下速度向上。重戦士スキル:落下速度向上。弓兵スキル:落下速度向上」
剣に雷を携えて、三重にかけた落下速度向上を用いて行うは──人の身による
空より落ちし光は本物の雷よりも酷い音を響かせたことだろう。一般家屋に落ちたその一撃は、一ミリのズレもなくソイツを突き刺す。
「──ガ、ァ!?」
「次元スキル:時間停止」
刺したのはグノーシス。一緒にいた青点はガーリーと呼ばれた男だった。一石二鳥か。
あとは、もう簡単だ。
刺した少年を剣に番えたまま、そしてガーリーという半分焼け焦げた男を引っ張って外に出る。
ざわつく帝国民。彼らの状況把握が終わる前に、ミニマップから見たシーファのもとへと跳ぶ。
シーファはすぐに見つかった。まぁミニマップから辿って来たから当然なんだけど。
「──シーファ」
「ひ、ぅ……ご主人、様」
「ケルを返せ」
「こ、断る! ます!」
「次元スキル:時間停止」
……ちょいスキル使い過ぎだな。MPが減る減る。流石にエリクシール飲むか。瞑想での持続回復じゃ追いつかん。
時間停止したシーファとケルも抱えて、ノズヴェルガーの元へ。
あとはアイツの腕次第、か。
……いやホント、シーファを傷つけた意味がまるでなかった。いや一応監視者という名の捨て駒を見つけることはできたけど……ラムナザール四世がいれば良かった話だし。
それもこれも王国暗部のせいだ。あいつらがずっといるから勘違いした。つーか連れ戻す気ならなんで敵対表示なんだよ青点であれよ。
いかんな、ようやく余裕ができたから愚痴が止まらん。早くしないと無の境地が切れて吐瀉物が大変なことになるんだから、最速で行かねば。
……一回吐いてから行くべきか?
着弾するようにしてノズヴェルガーの店に辿り着き、すぐに遮断と霧隠れを使用。
なんだか消沈している彼の前にケルと腹に剣が突き刺さったままのグノーシスを置く。
「……! こ、この少年でさぁ! いまようやっと思い出しました! あっしにケルさんを売ったのは!」
「なんだと? ……いや、だとしても構わない。二人の間にある契約を切ってくれ」
「わかりやした。……一応確認しやすが、契約の内容はご存じで?」
「いいや。……知っておいた方がいいことか?」
「へぇ、これは、あっしも見るのは初めてですが──結ぶにゃ相応の覚悟のいる契約でさぁ」
それは。
「運命の契り。この先、苦楽を共にし、身を重ね、死をも共にする……覚悟の契約ってやつなんで」