アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ 作:姫鼠まりあ
棘の森──。
以前ノズヴェルガーがツバナを拾った場所。この森は海岸線に隣接していて、その海を抜けた先に鬼の国がある。鬼の国は以前述べたように妖怪の国みたいな場所で、島国じゃない日本モチーフな大陸だ。なんじゃそりゃってそれはそう。
とまぁ鬼の国の話はいいとして、今棘の森に俺はいる。俺とツバナはいる。
先日の事件でミラージュオウルの供養をした時に、少しだけ思う所があったのだ。
だから、もし日本モチーフの……そういう倫理観や価値観を持っている可能性のあるツバナなら、従者の供養をしたいんじゃないか、って。
俺にしては珍しすぎる甲斐性。
そりゃそうだ。だって話の発端はラムナザール四世にまで遡るのだから。
曰く、帝国ではもうすぐあたりの時期に「供養祭」というのをやるのだそうで。今年一年で死んだ命、魂を供養するためのその祭りは、けれどしんみりしたものではなく、むしろどんちゃん騒ぎなんだとか。
どんちゃん騒ぎは王国の専売特許なんじゃないかってくらいどんちゃん騒ぎのない帝国で、唯一騒ぎ倒せる日。それが供養祭なんだとか。
それを聞いての発想である。俺発案のていで行こうとしたら速攻バレた。全員に見抜かれた。何故だ。
「しかし……私も強くなったものじゃな」
「何が? どこが?」
「腕っぷしの話じゃあない。……奴隷としてあの檻にいた時は、仕えの者の供養をしに行く、など……発想自体がなかった。怖かったからじゃ。奴らは最後まで私のために命を賭してはくれたが、結果私は奴らに何を返せた。挙句鬼の国に戻らないとまで言って……それなら助けなければよかったと、後悔しているのではないかと……」
「恨まれてたらなんだ。何をすべきだと思ってたんだ?」
「合わせる顔が無いとは思っておった。じゃが、そうではないのだと最近思い始めた」
「へぇ。そりゃまたなんで」
ミニマップを開きつつ戦士スキルの威圧を使って野生魔物を遠ざけている。低レベルのはこれで消えるからありがたい。
今は探し物の最中だからな。縄張り荒らしてごめんだけど、諦めてくれ。
「お主は聞いておらんかったじゃろうが、あの事件のあと、ケルとツゥはなんとも泣ける話をしておったのよ。二人がどういうサダメにあったのか、そしてツゥが下した決断と覚悟。大切だと思う者のために身を賭すという言葉を理解していないあの少女が、しかし言葉も理解も出来ぬままに取ったその行動」
「長いか、その話」
「そうかそうか。良い、拳が壊れる覚悟でぶん殴ってやろう」
聞き手として最低のムーブをかましたところで、とりあえずの目的地にたどり着く。
「ここ、じゃな。私が最後に覚えておるのはここじゃ。丁度あの大木にもたれかからされて、仕えの者は魔物と戦っておった」
「ふむ……死者蘇生。……反応なしだな。やっぱり死体はない」
「じゃろうなぁ。魔物にとっては良い餌じゃ。残っていても装備くらいじゃろうが、鬼の国ではこちらのように鉱石を使った装備、というのが武器くらいしかなくての。他は食われてしもうたんじゃろう」
「ま、わかりきってたことか。んで? 鬼の国の供養作法とかってあるか? 墓石の形とか」
ツバナはその木の根元にまで歩いて行き、ザク、と何かを差す。
……刀、じゃないな。普通に剣?
「
「湾曲刀くらいはあるだろ帝国」
「あるがアレはまた違う。……というか、いいんじゃよ。奴らの死体はここにないんじゃしの」
「そうか」
本人が良いなら、良いか。
「これだけか?」
「本来であればあとはこの刀に血をかける。一滴程度じゃ。親類、友人、その他関りの合った者の血を刀が吸いて、死者の国へ想いを届ける。血には感情が乗る。武器は主人の魂と繋がる。鬼の国では昔からそう信じられてきた」
「血をかけると流石に魔物が寄ってきそうだな」
「ああ、じゃから今回は良い。ただ、共に手を合わせてくれぬか。それだけで十分じゃ」
ああ、そこは同じなのね、とか思いつつ、まぁ合掌って別に日本だけの文化じゃねーわな、とかも思いつつ。
南無。
「……うむ。良しじゃ」
「短いなオイ。もう少しないのか?」
「無いじゃろ。どこまで行っても箱入り娘と従者。私はこの者達の名と顔も一致せんくらいの薄情者よ。命を賭すにはあまりに惜しい存在じゃったと今でも思うとる。そこは変わらん」
「そうか。なら、もう戻るか」
「うむ。あまり長く森にいると、魔物も困るじゃろ。特にお主のせいで」
「ああ、今威圧ばら撒きまくってるからな。死ぬほど脅威に思われてると思うぞ」
……鬼の国。
ツバナを追い出した国。果たして、ゲーム本編で鬼の国に行ったときは、誰が頭だったかねぇ。
というわけで、帝国は今供養祭の準備期間に入っている。
雰囲気としては割と日本のハロウィン寄りかね。万聖節ほどの厳かさはないけど、一応死者を供養するための飾りなんかを作って、あと酒を含めた豪華な料理を作って、みたいな。まだ祭り始まってもいないのにすでに売り出しているところまである始末。
だから俺はもう街へはいけなくなった。だって飾り、ほとんど魔物素材なんだもん。
「お前達は供養祭に出たことあるのか?」
「奴隷に何聞いてるのご主人様」
「ない。
「私も同じです」
聞く相手を間違えたとは、聞いてから思ったけれど。
そうかそうか。出たこと無いか。
「なんか作法とかあんのかな。ちょいと聞き込みしてきてくれねぇ?」
「無いでしょう。無法国家にも等しい帝国でそんなもの」
「いやいや、突然子供が魔物素材被って家訪ねてきて、"捧げもの無くば呪い殺すぞ"とか言ってくる祭りの可能性はあるだろ」
「どうしたんじゃ主。棘の森でなんか変なものでも食べたか」
お前らは知らないんだ。
引っ越し先にそういう内輪文化が根付いてて、仕事してたらいきなり子供がチャイム押してきて「おかしください!」とか言われる恐ろしさを。あと挨拶回りとかって大切なんだなって思う哀愁を。
「まぁ、魔物の素材が溢れかえっている今の帝国がヴェルグにとって脅威なのは変わりない。つまり情報収集という名の買い出しと、あと安寧の地を探してきてほしいという依頼。違う?」
「おぉ~、ケルちご主人様の理解度が高い」
「全然違うけどそれでいいよ」
「あら、恥ずかしがって否定している、とかではなく……本当に違いそうですね」
そういえばなんとなしにツゥがそのまま住み着いてるのはどーしたもんかなーとは思ってる。いやケルに家買ってやるって言っても断られたし、じゃあツゥを仲間に思う、ってのは流石に成り行きが過ぎるし。そんじゃま俺が出て行くかぁ、って言ったら「流石に頭が悪いと思う」と言われた。
じゃどーしろと。
「ご主人様。提言があるのですが」
「なんだメアリー」
「良い機会なのでは? ──Let's トラウマ克服、です」
「絶対嫌だ」
嫌だった。
けど、確かにこの世界で生きて行く上で、ずっと無理だ無理だ言っているのも……いつか本当の意味での無理が来る。だから、来て──当然のように後悔している。
照り焼きにされた少女の太ももに串が刺されていて、その先端が脛の際から出ているタベモノ。
薄くスライスされた上腕が丸皿に並べられ、中央にはその少女の顔がデン、と置かれている。口からはグラスが飛び出し、そのグラスにはなみなみとなんらかの液体が。
焼いて潰した指の集合体みたいなものに、肌色の液体、固まった皮のようなもの、半分にされた目玉、耳一つが乗せられていて、それが窯で焼かれていて。
尻から口までを一直線に串刺しにされた全裸の女性。肘から下、膝から下は切られて処置がされていて、ほかはそのままの状態で丸焼きに。
唯一見たことのある形状の円筒状のタベモノ。そりゃそうだ。腸詰めなんだから。原材料まで丁寧に書いてあった。
「これとかどうですか、ご主人様」
「……」
口から膣までを一文字に斬られ、開かれた色白の少女。それが台に置かれていて、開いて取り除いたのだろう元の箇所全てに敷き詰められた、他の少女の部位の数々。
「ああ、あれは美味しそうですね。昔食べていました。ケル、思い出しましたか?」
「あんまり昔食べていたものとか覚えてない」
「そうですか? 安くて栄養があって手軽で汚れない。機能的な食事だったと思いますが」
乳房の皮だけを剥いで串に差し、それを幾つも重ねたものに、なんの、かはわからないけどタレをつけたもの。
その横には皮の無い乳房。乳首にチャップ花が付けられていて、今既に売られているものを購入した奴らは、その部分を持って乳房にかじりついている。
「ほー、骨付き肉とは。鬼の国じゃ見ることのない食べ物じゃの。帝国はなんというか、豪快じゃよな」
「いいえ、ツバナさん。あれは、帝国の、基本的な、料理では、ありませんよ?」
わざわざ元の形通りにならべられた骨。その骨と同じくらいの年頃の少女が、新しい少女を持ってきて、手慣れた手つきで捌き、骨だけを取り出している。
「あ、軟骨揚げだ! 私あれ好き! 人げ……帝国料理の中でも私が美味しいって感じるもの!」
「くどいよあれ」
「私は好きですよ」
「シーファ様の好みは私でもイマイチわからないんですよねぇ。……おやご主人様、どうかいたしましたか?」
どうかいたしましたか? じゃねーんだわ。
戦士スキル:神速。戦士スキル:跳躍。一瞬の砂埃は許してくれ市場の皆さん。俺は消えます。
「エグい……マジで」
ひと気のない場所にまで行って、ようやく口を開く。
違うんだよな。
メアリーはまだ、俺が何に対してエグいエグい言ってるかわかってないんだよ。
そりゃ全部アダルトMODフィルターかかってる魔物が料理されてんのはエグいよ。うん。そりゃエグいさ。
でも本当にエグいのはそっちじゃなくてさ。
「久々に、キたな……」
バッキバキの。それはもうガッチガチの、オティヌティヌ様。
そうさ、エグいと思う心の半面で、「あの料理でヌける」と思っている俺がいるのが、一番エグいんだ。
「おやおや、辛そうですね、ご主人様」
「……転移……いや、影伝いか?」
「こちらのスキル事情を知られているのは些か面白くありませんが、さて、どうでしょうか。トラウマは治りましたか?」
「治るわけがないだろ。……はぁ、この際お前でいいや」
「はい?」
神官スキル:遮断からの、屈服メニューで行動制限をかける。
「脱げ。魂のメイド服も、今来てる服も」
「な……なにを、くっ、身体が勝手に」
「……まぁ自分でもどうかと思うけど、
奴隷だけど、無理矢理襲う、とかじゃない。
ただメアリーを裸にして、「そっちで抜く」というだけだ。俺は決してあれら「料理」に興奮し、性欲を発散するのではなく、メアリーという普通に可愛い女性の裸を見て性欲を処理するのだと。
このことに何の意味があるかはもう知らんよ。
ただ、まぁ、最後のラインとかそんなもんだろ。
「ぬ──脱がせて何もしないんですか!?」
「なんだ、なんかしてほしかったのか?」
「恥ずかしいです。単純に!」
「そりゃあ良い。ああそうか、お前魂を見られるの嫌なんだったな。んじゃコレも出してやろうか」
真経津鏡を置く。俺の両脇に。
俺からは見えてないけど、メアリーの目には自分の、本来の自分の魂のカタチが一糸纏わぬ姿で見えていることだろう。
カァ、と紅潮するメアリーの頬。
……良いな。そうなんだよな、顔と身体は全然イケんだよなメアリーは。性格が終わってるからヤりたくないだけで。だったらグレイスみたいなマグロの方がまだいい。
ただ、見抜きする分には最高の奴隷かもしれない。ちゃんと恥ずかしがるし。羞恥プレイも好きだぞ俺は。
良いことを思いついた。
「アサシンスキル:霧隠れ。神官スキル:遮断:解除。魔法スキル:ファイアボール」
遮断を解除し、霧隠れをした状態で、上空に向かって魔法を放つ。
それはポンッと不発弾のような爆発を起こし──。
「ちょ……ちょっと、変態ですか?」
「なんだよ。元々お前奴隷としてそうやって売られてただろ。今更何を恥ずかしがる」
「あれは奴隷市場だからで」
「しかし良いのか? 俺は声漏れないようにしてるけど、お前の声は漏れるぞ、普通に」
「!」
ざわざわと。
人が集まってくる。なんだなんだと。
「……んー。自分でやっといてなんだけど、衆人環視のもとシコんのはアレだな。今普通に萎えたわ。まぁ目的は達成したし、これでいいか」
「──!」
「おいおい涙目じゃねぇか。そんなに嫌だったか? ああそれとも、魂が全裸なのが嫌なのか?」
……ふむ。
おや?
可愛いと思えて来たぞ??
俺にこんなサドな一面あったんだなぁ。
「ま、声漏れするってのは嘘だよ。声が漏れてちゃ霧隠れの意味ないしな」
「呪詛スキル:迦楼羅炎!!」
「レベル差レジストだ。効かん」
しかし呪詛スキルの中でも物理的被害を齎すスキルの、それも最上級のを俺のオティヌティヌ様に使ってくるとは。屈服の呪いから眷属の呪いに変えておいた方が良い気がしてきた。マジで寝首かかれかねんぞ。
「く……ならば、怪異スキル:蛇の目」
「お?」
「怪異スキル:紫陽花!」
もう隠そうともしなくなったらしい。
メアリーはそのスキルを俺にかける。レベル差レジストが起きないってことは、害のあるものじゃない、あるいはレジスト関係ない類のスキルってことになるが。
……何も起きんな。
「はぁ!? そんなわけ……怪異スキル:貉祟! 怪異スキル:蛇女中! 怪異スキル:天鼓蝕!」
「知らんスキルばっかだな。そんなにあるのか、性に関するスキル」
「そんな専門スキルなわけがないでしょう……かくなる上は!」
ずるり、と。
何か。
不可視の何かがメアリーの背のあたりから這い出て来たのを感じ取る。屈服の呪いを受け付けていないのか、それは俺の足元までぬたりぬたりと這い寄ってきて。
「ひゃああんっ!?」
「なんだよ触られたら感じるのか? だったらそんな弱点露出させんなよ」
なんとなくむんずと掴んだら、メアリーがそれはもう色っぽい声で鳴いた。
もにゅもにゅしてみる。なにこれ。見えないのにやわっこくて不思議だ。ゲームの中のメアリーも絶対に手の届かないところにあるものを取る、とかやってたけど、アレスキルじゃなくてこの透明のもにゅもにゅでやってたんかな。
「あぁ、っぅ、つぅ……ん、っはぁっ」
「これはお前にとってのなんなんだ? クリか?」
「だから、そんなわけ──ぃやっ、ぁああああ!?」
その先端と思われる部分を、掌でゴシゴシしてみる。
所謂亀頭攻めと呼ばれる奴だ。
反応は抜群。白目を剥いてがくがくと膝を震わせ、そして──あ、イったなアレは。
これまさか、触手オティヌティヌ?
「っふぅ、っはぁ……覚えて、おいて、くださ──嫌、爪、爪立てるのはダメ!」
「こうやって軽く掻いてやるとかしてな」
「馬っ……ヵ、ァ──」
とりあえず俺がされてエグい奴をやってみる。
おーおー、そうかそうか、弱点これかぁお前。でも流石にこの太さだとフェラしてくれる奴いないと思うぞ。……いや待てよ。
「呪詛スキル:屈服:色情魔化」
「こ……れ、以上、なに、を」
「んで、ほれ」
「ひゃんっ!?」
その透明なモノに、いつぞやのスライムを乗せる。
レベル差的に食われはしないとは思うが、一応スライム側にも行動制限を軽くつけて、と。
「主人の苦手に付け込んで悦に浸ろうとした罰だ。その後、追い打ちをかけようとしたこと含めてな」
「ま──まさか、このまま置いていく気ですか」
「安心しろって。俺のスキルだぞ。霧隠れは二日くらい保つ。んで色情魔化は半日くらいで終わる。その間に落ち着いてスライム剥がして服整えて帰ってくればいいだろ。あ、スライムは殺すなよ。まだ利用価値がある」
「……帰ったら、死よりも恐ろしい目に遭わせてや──いやっ、やめ、やめなさい! そんな包み込むような……ああ、ぞりぞりと、スライムの消化毛が、うぅぅぅううう!」
成敗。
悪は去った。
さて、恐ろしい市場も脱したし、メアリーも封じたし。
……帰るかね。ちなみにだけど、ふざけてた間も奴隷とパーティメンバーのバイタルチェックもちゃんとやってる。同じ轍は踏まない。ツゥは最初に眷属の呪いかけちゃったからアレだけど、奴隷じゃないから今どうしようか悩み中。本人気にしてないみたいだけど、ケルの家族みたいなやつに眷属の呪いかけとくのはなーって。
霧隠れから出ても一定時間は周囲の人間に気取られることはない。霧隠れ自体が認識されないスキルだからな。
そうして出て、うろちょろ歩いて──はぁと溜息を一つ。
「よう、団長。今度ってのはいつなんだ?」
「俺今割と良い気分になりかけてたんだけど」
「じゃあまた今度、ってのは、虫が良い話だろう。騎士団長フレースヴェルグ」
……さて。
今日中に帰れるかなぁこれ。ファントムの話全部信じるにしても……根深いぞ~。あと説明が面倒くさいこと面倒くさいこと。
ま、ずっと赤点表示されてるのもダルいし、向き合っておくべきか。
「ここは街に近すぎるから移動する。構わないか?」
「構わないが、なんだ。まるで戦闘でもするみたいな言い草だな」
「意見が食い違えばその未来もあり得るだろう」
「こちらとしてはあっちゃ欲しくないが……」
神速を使わずに移動する。当たり前であるかのようについてくるスヴェロニカ。マージでステータスエグい。良かったぁオティヌティヌバッキバキの時じゃなくて。集中できなかったらワンチャンあったかもしれん。
言い訳。
どうしようかねぇ。
帝国から少し離れた場所。勘違いでなければ、ティル・ナ・ローグにおいて第一の試練をやった地点な気がする。
そこで──俺は奇跡の命剣を抜き、スヴェロニカに向ける。
「……なんのつもりだ」
「力技以外で連れ帰れると本気で思ってんのか?」
「ハッ」
ニヤ、と笑うスヴェロニカ。だからだろ、ずっと敵対表示だったのは。
説得や交渉でこっちが動かねえの知ってるから、臨戦態勢だったってだけだ。ホント邪魔。
「んじゃ──行くぜ、この一年で俺も強くな」
「聖騎士スキル:聖域。戦士スキル:スラッシュ。……最大主教スキル:完全再生」
相手とのステータス差を強制的に100%開かせるスキルの後からの、現在のSTRをそのまま威力にする基礎中の基礎スキルによる斬撃。
この一年で強さを増したらしいスヴェロニカを真っ二つにして、すぐに完全再生をかける。
「──っ、っはぁ……はぁ、はぁ」
「どうだ、スヴェロニカ。
「!」
斬られた所が痛むのだろう。完全再生は完全に再生をさせども、痛みまで消すスキルじゃないからな。
だけどそこは暗部。すぐに呼吸を整えて、こちらの言葉を聞いた。聞き入れた。
「……どういうことだ、騎士団長」
「……」
「一年で──こんなに差が開くわけねぇ! それも、魔物を殺せなくなったアンタが、帝国でポーション素材の運搬屋なんかをやってるだけのアンタが、どうやって……ッ!?」
「そうだ。そんなわけがない。だからわかっただろう。俺はお前達の知るフレースヴェルグではないと」
「はぁ!? ……そりゃまた、アレか? 俺が人の心わかんねぇって弄りの延長線上か?」
「違う。俺はお前達の知るフレースヴェルグではないという話だ。俺はお前達を知っているが、お前達が知っているフレースヴェルグではない」
「……仮にだ。仮にその言葉を信じるとして、じゃあ俺達の知ってる団長はどこにいる」
「魔族大陸」
スヴェロニカはサイコパスだけど、同時に死ぬほど頭が良い。
こんな引っかけ言葉みたいな言い回しでもこっちの言いたいことを正確に理解できる。
「魔族大陸の……どこだ」
「どこか、までは知らん」
「……その適当さ加減。やっぱり団長だろお前」
「確かに俺はフレースヴェルグかもしれないが、お前達の知っているフレースヴェルグじゃないと言っている。そしてお前達の知るフレースヴェルグは──現在魔族になっている、とも」
投げナイフを避ける。丁寧に毒が塗ってあらぁ。
しかし。
なんだ、サイコパスサイコパス言ってたけど、こいつこそこの一年でなんかあったのかね。
「そんなわけが、ないだろ……ッ! あの人は最強なんだぞ!!」
「俺から伝えられることはそれだけだ。これ以上俺の生活を乱すな。次からは容赦しない。キーロも含めて、俺に敵意を持っている王国暗部の全てを殺す」
「……待て。団……いや、ヴェルグ。一個だけ聞きてえ」
「なんだ」
「生きては、いるんだな?」
……その情報に何の意味があるのか。
生きていたところで、完全に魔族化した人間をもとに戻すことなどできないというのに。ドゥームスを殺したって戻りはしない。消滅するだけだ。
「答えてくれ、ヴェルグ」
「……生きている。これで満足か」
「お前が確認したのか?」
「いいや。だが信用できる……できはしないが、信じるに値するところからの情報だ。あとは自分たちで確かめろ」
ファントムを信用できるかって言ったらうーんなんだけど、アイツ"ストーリー性"以外の所では真面目だから嘘じゃないと思うんだよな。嘘付く意味もわからんし。
「……わかった。団長が魔族化しているという話の真偽がわかるまで、アンタには近づかない。だが、頼みがある」
「なんだ。俺はもう帰るんだが」
「もし本当に魔族化してたら……あの最強が魔族になってたら、俺達じゃ倒せねえ。アンタに助けを請う」
「断る。俺は魔族も魔物も殺す気は無い」
「……そうか」
まぁ安心しとけって。
もうすぐ芽吹き……元来の主人公君が目ぇ覚ますってファントムも精霊も言ってんだから。
そいつが何とかしてくれるよ、全部な。
ハードル上げすぎじゃないといいけど。