アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ 作:姫鼠まりあ
さて、今回の主題はそもそもトラーヴァの魔本ではない。
海──そして触手である。エルシータ開発のエロ魔物に勝るとも劣らないエロ魔物。それがスクイッド種とオクトパス種。まぁアダルトMODなしの素のあいつらはそれこそ神話生物か何かかと見紛うようなグロテスクな見た目してるんだけど、触手は触手。
当然これら魔物もアダルトMOD君が何故かロリっぽい美少女に変換し、その触手の全容を見せてはくれないけれど、世界が現実になったことで"やりよう"というものも生まれている。
「──呪詛スキル:従属:色情魔化、屈服:色情魔化、眷属:色情魔化」
トラーヴァの魔本の捜しの道程は予備を考えて二日分が予定されていた。それを一日で終わらせ切ったので、当然一日暇な日が出る。早く終わったからと言って早く帰ったって、スイはもう仕事を各所に任せ終わっているし、俺含む他の皆もそう。
あとはまぁ、メンタルケアも込みだ。シーファとアウラニは互いに互いを気遣い、思いつめていたから、責任の所在云々でこの遊ぶ時間を設けた。
というのは完璧な建前である。
俺がアダルトMODの魔物から逃げすぎて忘れられがちではあると思うのだけど、そもそもの話、アダルトMODを入れてゲームを遊ぶくらいにはエロいことが好きである。エグいのが無理なだけでエロいのはウェルカムなのだ。
そしてこれまたアダルトMODによって、たとえ本来の姿がゴリマッチョウーメン達であっても今この目に映るのが見目麗しい美女美少女であるのなら──。
奴隷とか仲間とか抜きにして、エロい目には遭って欲しい。
──の、だが。
「皆、大丈夫?」
「あ……うん、大丈夫。スイち、ありがと」
「大丈夫は大丈夫なんじゃがな。それはそれとしてというか」
「私にかけた眷属の呪いに関しては申し訳なさそうな態度をしていたのに、普通に悪用してくるのね……」
うんツゥはすまんと思っている。
だけど、それ以前の問題だった。スイの従属の呪いとかなければよかったと本気で後悔している。
スイが強すぎる。野良魔物じゃ手も足も出ない。触手を伸ばそうがなんだろうがスパンスパンだ。不可視の触手が断たれた瞬間に美少女の腕がスパンと行ったのが見えてそっから先を見ていないんだけど、音でわかる。何の障害も無くあいつらが殺されてしまったのだろうことが。
ちなみに今俺はアサシンスキル:霧隠れで姿を隠しているため、どれほど捜されても問題ない……のだけど、気のせいじゃなければアウラニとずっと目が合っている気がする。天使スキルのパッシブにどれほど耐性系があるのか知らないけど、俺レベルのアサシンスキルを見抜いてくるの普通にエグいぞ。
「息が荒い。風邪を引いている?」
「違う。これは呪い。ヴェルグのだと思う。私は呪われてないから勘だけど」
「呪い? なんでヴェルグが?」
「はぁ……はぁ……理由は、わかってしまうのが……つらいところ……!!」
頬を紅潮させ、身体を掻き抱いて自制しながらも共感してくれるシーファ。だよね、お前はそうだよね。
……しかし、これだと目的が果たせない。
仕方がない。この手は使いたくなかったが──召喚士スキル:サモン:ジャイアントアネモネ。
召喚陣から召喚されるのは、何故かハワイアンな美女。
「っ、何!?」
「突然……これは召喚!」
「なんかあり得ない称号持ってるんじゃが!?」
よく気付いたなツバナ。こいつ体高高いから上の方にあるはずなのに。
「『魔王の従僕』……?」
「し、シーファ! お主の友達じゃろうなんとかせい!」
「いや魔族だからって魔王と関りあるっていうのは最早差別っていうか」
「これもヴェルグの仕業?」
「多分。でも違ったら大変だから、倒していいと思う」
「わかった」
スイの鎌が煌めく。
カルラが炎を吐き、それを纏った大鎌が、ハワイアン美女の頭上高くに振り下ろされ──。
「え……え、う!?」
「スイ!? このっ……!」
「魔法スキル:バインドプラント」
「──カルラ!!」
恐らくジャイアントアネモネが出したのだろう、その巨大な口からの、数えるのも億劫になるほどの触肢。それがスイを絡めとり、彼女を心配したカルラが炎を吐こうとしたのを俺がひっ捕らえてひっぺがし、スイが悲痛な叫び声をあげた……というのがこの始終。
それなりの罪悪感に襲われている。
「っ、本当にアンタが主犯なのかい!?」
「本当に俺が主犯だ」
「本当にこの人が主犯ですよ~。そして今から私は無理矢理この女の子たちを襲わなければならないんですよ~」
「……ああ、クソッ! 本気で心配して損した。……つまるところ、これはアンタの下卑た野望ってワケかい?」
「おいおい、あまり強い言葉を使うなよ。泣くぞ」
ジャイアントアネモネにはしっかり「食うな」「噛むな」「自分の思うエロいことしろ」という命令を出してある。昨晩と言うか早朝に呼び出してそれ言った時は本気で軽蔑するような目で見られたし「最低ですね~」って言われたけど、「お前が断るんならスターフィッシュマン呼ぶ」って言ったら「それはかわいそうなので私がやりますね~」って言ってくれた。
ジャイアントアネモネは超巨大イソギンチャク、スターフィッシュマンは超巨大ヒトデである。
「う……は、ぁ……!?」
「まずは~、こうやって触肢の先端から弛緩剤を出しまして~。獲物が口の中で暴れたりスキルを使うと困るので~、思考能力と運動能力を削ぎ落します~」
「お前が麻痺系の毒使ってくるのは知ってたけどそういう用途なのか」
「はい~。で、ほら、まず鎌を落としてくれたでしょ~?」
砂浜にザクッと突き刺さるスイの大鎌。主人の手から離れたことで、未だ宿っていた炎が消えて行く。
空中に残されたのは、無数の触手に絡めとられるスイ。残念ながら触手そのものは見えないが、彼女の服に何か透明なウネウネが入り込んで行っているのは見えるので満足だ。
「ああジャイアントアネモネ、前はダメだ。後ろだけで頼む。口もワンチャン窒息するし」
「それは問題ないですよ~。私の触肢は獲物に酸素を送り込むための管があるので~、口にも入れちゃいます~」
「……何のためにその機能があるんだ?」
「勿論獲物により長く生きてもらうためですよ~。私達は本当にゆっくり時間をかけて獲物を消化するので~、その間に獲物に死なれると~、鮮度が落ちて~、美味しくなくなっちゃうので~」
「……ゴブリンクイーンもなんか似たようなこと言ってたな」
死ぬと不味くなるのは人間も同じなのか。
鮮度大事。
「おっと~、他の子たちも来ましたね~。けど……ちょっとレベルが足りないかなぁ~?」
次々と透明な何かに絡めとられて行く奴隷たち。あとケル。
そりゃそうだ、コイツのレベルエグいからな。テイム時点で俺と同じくらいだったのを育てたから、普通に今俺より上。いや使い勝手良いんだよねテイムモンスターとして。相手にレジスト無効の状態異常かけられるのと、相手を拘束できるの、さらに魔法防御が高い高い。んで水棲生物だから行けるマップも広い。
称号はまぁその通りだよ。その名の通り。
「あ、呪詛スキル:眷属:行動制限:完全」
「ちょぉ、やんないからやめて! 魔素とか使わないからヤメテ!」
「……ヴェルグさんの見る目、変わってしまうわね」
ジャイアントアネモネが危ないと思っての咄嗟の行動だったけど、眷属の呪いがかかっている二名から抗議の声が上がる。いやでも咄嗟に魔素出したらジャイアントアネモネが魔化する可能性あるし、怖いだろ。
そんで、それはそれとしてさっきの色情魔化が効いているのか、皆一様に「触肢に絡めとられていること」と「縛られていること」、そして「ソウイウ部位をまさぐられていること」が相俟ってか、どんどん発情していっているように見える。
よいぞ。良いぞ……!
そうだよこれだよ! アダルトMODってこうだよ! 超やりにきぃだけじゃねーんだわアダルトMODって!
エロいから! アダルトMODって! 言うんだって!
「……理解できないねぇ」
「なんならカルラも混ざるか?」
「はぁ? まさかアンタ、私にも欲情すんのかい? 同族ならともかく、人間ってのは最低限ヒトガタじゃないと無理だと思ってたんだけどね、どうやら変態ってのは見境が無いらしい」
「俺は特殊だが、それは偏見だぞカルラ。俺みたいなのじゃなくてもガチケモに需要はある」
「理解の出来る言葉をしゃべってくれよせめて」
わざわざ獣人化するのは勿体ないって話だ。
「はぁっ、ぅ……そ、そこは、だめ、です……!」
「あ、やっと反応しましたね~。ずっとだんまりだから何も感じてないのかと思ったら、なるほど~、コッチが弱点でしたか~」
「おおおおアウラニちのオティヌティヌが! 珍しくビンと勃って!! 私が全裸でエロダンスしても勃たなかったアウラニちのオティヌティヌが!!!」
「天使スキル、調停」
「あ、それやば」
元から弛緩剤でぐでんとしていたシーファの身体から、完全に力が抜ける。……というかアウラニも弛緩してるはずなのに天使スキル使えるのか。これワンチャンヤバいか?
というかメアリーはどこ行ったんだ。そういやそもそもいなかった気がしないでもない。砂浜で遊んでおけ、って言ったの怪しんでたし、どっかで勝手に色情魔化してヨガってんのかな。
「お尻の中の老廃物~、全部食べちゃっていいですかね~?」
「いいぞ。ああ、ただコトが終わって俺が満足したら、もう少し良い物食わせてやるから」
「いえいえ~、送還されたらお腹空かなくなっちゃうので~、今こうやってお腹空いてる時にいっぱい食べたいだけで~」
「そういうものなのか。……定期的にお前達召喚して飯食わせた方がいいのか?」
「もしやってくれるなら~、みんな喜ぶと思いますよ~?」
せっかく魔物の声が聞こえるんだから、そういう歩み寄りはしたいよな。
ちなみに俺の中の召喚獣の位置付けはフツーに仲間なので、奴隷より扱いが良い。
「……ヴェルグ。そろそろ不快」
「尻の穴に入って……ぅ、な、なんじゃ、何をしとる!」
「まー、私は、アウラニちの痴態を見られるだけで満足ではあるかなー。アナルも別に初めてじゃないし」
「前を使わないのは気遣い、なんでしょうか……中途半端な、ことをするんですね、ヴェルグさんって……」
「開発がちゃんとされてないとアナルと乳首だけじゃイケなくてつまんないよねー。ご主人様ー、前入れないでクリだけ、ってできないのー?」
「できるか?」
「触肢の精密操作は~、あんまり得意じゃないので~、私が絡めとっている間に~、他の子にやらせるのがいいんじゃないですか~?」
「ふむ。そうするか。召喚士スキル:サモン:パラライズリーチ。血は吸うなよ」
「なんか初めて呼ばれたと思ったら変な仕事……」
「お疲れ様です~」
使いどころ無さすぎるからテイムしたはいいものの使ったこと無い、ってモンスターはいっぱいいる。というか二周目は色々コンプ目的でやってた部分が大きいから、ほとんどの雑魚魔物は使うの初めてって場合が多い。
今出したのは麻痺使ってくる蛭……なんだけど、当然ながらジャイアントアネモネ含む他の状態異常包括して使える魔物の方が強いし、何よりアイツHP低いからわざわざサモンすることがない。ただ数を出せたはずだから、拘束してる相手に群がらせて、みたいなことはできるかも。
人によっては性的興奮より気持ち悪さの方が勝る蟲姦だけど、俺はイケる。かなりイケる。
「ひ──ぃぃっ!? は、入って……!?」
「おー!! すごい! アウラニちのオティヌティヌの穴に、パラライズリーチが! これはお宝だよご主人様! ぶっちゃけ他のみんなのクリ責めも良いんだけど、やっぱりアウラニちの痴態が一番」
「て──天使スキル! 現出:イッチースネーク!!」
「へ? ……まさかとは思うけどアウラニち、これ、あの時の……?」
「ふ、ふふふ……シーファさん、ぅ、ぅ……あの時、私は……はぅ、あ……あ、あのイッチースネークを、取り出しては、んんんっ、いない、ですよね……?」
「そういえばお尻に腕を突っ込まれた覚えはない! もしかして何かのスキルで消してたの!?」
「そうです……天使スキルは、部位情報を変えることなく、──っふぅ、ぁあ……ぁあ!」
なんかアウラニとシーファが余裕そうなのを不満に思ったのか、ジャイアントアネモネがアウラニのイチモツをそれはもうシコシコし始める。中にパラライズリーチがいるにもかかわらず、だ。いやいきなり尿道入っていったのには驚いたけど、あのサイズの少女が尿道の中に入っていくのは、それはそれでコックボア感あっていいよね。
で、なんだって? 天使スキルがなんかすごいことしてるって?
「これは~、完全に果てさせたら~、終わりですか~?」
「そうだなー。これ以上は冗長になるし」
「じゃあもうちょっと楽しみたいので~、寸止めにしますね~」
「思ったよりノリノリだなお前」
「私達戦闘系の召喚獣は~、利便性の問題でしょうけど~、あんまり呼ばれないので~せめて楽しみた~いというのが~、本音ですかね~」
ああ。
まぁ、強さ目的で呼ぶことないからな。俺が強いから。
じゃあ皆にはもう少しエロを堪能してもらって──。
「剣士スキル:フラッシュスラッシュ」
「!」
ジャイアントアネモネ、パラライズリーチ召喚解除。呪詛スキル、従属、屈服、眷属の色情魔化解除。聖騎士スキル:魔素耐性。
カルラを服の裾から逃がし、スイの元へ向かわせる。
「……っ、力つえーおっさんだなオイ」
「まだ二十代前半だ」
「十分おっさんだろ!」
見た目美少女な子におっさんおっさん言われるのはクるんだけど。
誰だコレ。アダルトMODフィルターを通したモンスターや魔族の名前ってパッと出てこないんだよな。つーか俺の楽しみ邪魔しやがって。ジャイアントアネモネ斬り殺す気満々だったのも気に食わん。
鍔迫り合いから相手を弾き飛ばし、距離を取る。
猫目と犬歯の特徴的な赤髪の少女。無論全裸。王国の姫さんを襲っていた奴とはまるで格が違う強さ。
ソイツは海面に弾き飛ばされたというのに、まるでそこを陸地であるかのように滑り、留まり、立つ。
……水系の魔族?
「何用か、と問うておこうか」
「決まってんだろ? 魔王様の従僕が勝手に人間の大陸にいるって報告が入って、駆けつけたんだよ!」
「そうか。じゃあ勘違いだ、帰れ」
がっつり俺だわ。原因。
そういえば気にしてなかったけど鳴り傘反応してないよなジャイアントアネモネに。一応場所選んだつもりではあるけど。
これワンチャン人間側からも増援来るか? それは流石に大事過ぎる上に弁解のしようもないくらい俺が悪いから最悪帝国追放なんだけど。丁度いい機会ではある。
「勘違いなワケあるかよ! この目でばっちり見てんだ──アンタの魔力に取り込まれて消えて行くのもな!」
「だから勘違いだ。アレは魔王の従僕ではなく、俺の従僕だ。俺の召喚獣を勝手に他人のものにするな」
「称号も見えねえような下等種族が偉そうなクチ聞いてんじゃねえよ!」
ちなみに多分だけど、ジャイアントアネモネは本当に魔族大陸にいる。このジャイアントアネモネは二周目のジャイアントアネモネなので、三周目の子はあっちに普通にいて、あらぬ疑いをこれからかけられるのだろう。ちゃんとアリバイ残しておけよ。
「しかし、魔王様と来たか。アイツを敬称で呼ぶということは、四天王の誰かか?」
「ふん、そういう所には気が回るのがなんとも人間らしいなオイ。──そうだ、オレは魔王様が配下、四天王のヒポクリフ!!」
……。
ええ?
そう、だっけ? お前アダルトMOD入ってる時……赤髪でもなければ少女でもなかったはずだけど。銀髪で翼の生えた美女だったはずだけど。
俺ロリにはあんまり興味ないけどオトナな女性になった魔物の姿は大体覚えてるぞ。
「嘘だな」
「はぁ!? 何言ってやがる!」
「俺はヒポクリフと会ったことがある」
「……それこそあり得ねえだろ! ヒポクリフの姉御が、人間と? 会ってたらその場で殺してるっつーの! ……あ」
真面目に誰だコイツ。今必死に魔王関係の魔物の記憶探ってるけど、一向に出てこない。二周目に遭ってない魔物……だとすると、なんか隠しイベント専用ボスかなんかか? 普通に会える奴は全部あったはず。見たいから。アダルトMOD化したらどうなるか見たいから。
んー、赤髪……赤っぽい毛並みで、水系で、成熟してない魔物で考えてみるべきか? ヒポクリフを姉御呼びするってことは、馬か鷹か、まぁその辺のキメラ的魔物だとして。
で、一応魔族。魔素漏れしてるし。
「なんにせよ、ここにはもうジャイアントアネモネはいない。帰れ。さもなくば斬る」
「ハッ、剣に殺気も乗せられねえ奴が何をほざいてやがる! だが、今現在ちっとは強いのは認めてやるよ。なら今後の道行で、魔王様の脅威となりかねねえ以上は──」
「あ、わかったグリュフォンか! グリュフォンのどれかか!」
どれか。
そう、このゲームグリュフォンとされる魔族が幾らかいるのだ。いろんな種類、いろんな色がいる。ヒポクリフもグリュフォンの一種とされていたから一瞬混乱したけど、まぁ魔族の中で何かしら順位や強さの格付けがあったっておかしくはない。
全く以てヒトガタをしていないのにグリュフォンが魔族であるのは、その知性の高さ故だ。
魔王城の上空を守り、敵を見つければ強襲する。魔族大陸全土に散らばって巡回もしているし、全面戦争では斥候の役目を務めたりする。
雑用係のクセにそこそこ強くて面倒──というのがグリュフォンだ。
「ハッ、オレの見た目でグリュフォンだってわからねえ奴が、ヒポクリフの姉御と会ったことあるワケねぇだろ!」
「いや見た目全然違うだろお前とヒポクリフ」
「人間如きがオレ達の見た目の違いに気付けるワケねぇってことくらい知ってんだよ!」
噛み合ってないのは自覚してる。意図的にしてる。
しかし、じゃあやっぱり『魔王の従僕』の称号を見た水棲魔物のどれかが通報して、こいつが飛んでやって来たって感じか。雑用というか斥候というか、うん。すまん、お疲れさまだ。俺のせいで余計な仕事増やしてごめんな。
疑問が解決してスッキリしたところで、さてどうしようか。
さもなくば斬る、とか言って、無理なんだけどね。やりたくないんだけどね。剣に殺気が乗ってないってそりゃ当たり前なんだよね。よくわかるよねそういうことね。
「──まぁ、とりあえずちょいと離れるか」
靴装備を天空のブーツにして、一瞬で距離を詰める。
驚きながらもしっかりと反応したグリュフォン。爪か前足か、恐らくそのどれかでの防御を固めたのを見てから、剣の腹でぶっ飛ばす。攻撃力低くてノックバック率高めの剣にしたんだ、怪我してくれるなよ。
ぶっ飛ばして、ぶっ飛ばした先にさらに追いついて、またぶっ飛ばす。繰り返すこと四回。
浜から大分離れた沖合の海上でようやく止まる。天空のブーツさんの良い所はこれだよね。海上に立つのにも使える。
「……どういうつもりだテメェ」
「浜に俺の仲間がいたんでな。巻き込まないように距離を置いた」
「嘘吐くんじゃねえよ。あそこには天使がいただろ。あの場で戦った方がお前にとっちゃ有利だったはずだ」
目敏いな。それでいてシーファに気付かないのは、やっぱりアイツが魔素を完璧にコントロールできる体質だからか?
魔素と聖気で種族を判断しているクサいな、これ。
「聖騎士スキル:聖域」
「!」
砂浜に届かないレベルの範囲。その全てに聖域を展開する。
離れた理由はこれだ。アウラニが回復していればあの聖界の卵とかいうスキルを使ってくれたかもしれないけど、主に俺のせいで完全にダウンしてたのは目に見えてたからな。シーファを巻き込まないで全開の聖域使うにはこれが一番良い手段だった。
さて、ノックバック剣から変更するは聖王の粛清剣。全身の装備も対魔族のものに変えて行く。
「……最高位の聖騎士だぁ? なんでそんな奴が……」
「一、単純に遊びに来ていた。二、単純に遊びに来ていたが、途中で魔が差してジャイアントアネモネを召喚し、仲間を襲わせていた。三、単純に遊びに来ていたが、ジャイアントアネモネの出現に気付かなかった。四、全ては偶然の巡りあわせである。ジャイアントアネモネはいなかった。さぁどれだと思う?」
「……レベルが測れないのは、弱すぎるんじゃなくて強すぎるからか。チッ、分が悪ィな。下等種族って油断するのはよくないってのはホントだったか……」
「Wowガン無視かよ」
そんでもって認識を革められるタイプ。戦わなきゃいけないって状況ならこの上無く厄介な敵だけど、逃げて欲しい今はかなりありがたい。どうだこの聖域。この装備。恐れをなして逃げたまえグリュフォン君。
「分は悪いが……逃げた所で逃げられる相手でもない。なら」
「いや全然逃が」
すが、と続けられなかった。
突然。本当に突然、その赤髪美少女が──自身の左目を抉り出したから。仙人スキル:無の境地。
「サモン:ルサールカ。……記録だ。これを魔王様に。頼んだぜ」
「……ご武運を」
そしてその目を、呼び出した召喚獣に持たせ、ソイツを逃がし。
「──さぁ、やろうか人間! ちいとばかしこっちが実力不足なのは認めるが──オレも魔族の端くれ! 戦って死ぬのなら本望だ! 魔素覚醒!!」
覚醒、した。
……やめてくれ。いきなりこんな覚悟決まってる奴寄越さないでくれ。
最初のキャッキャウフフどこ行ったんだよ。……やめろよ、ちゃんとした奴は。
受けて立たなきゃいけなくなるだろ。