※この作品はR-18です。

アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ   作:姫鼠まりあ

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動き出す相貌(G度中くらいR18多め温度差高め)

 聖域によるステータス差、こっちのガッチガチの装備の圧。

 敵は片目を無くした美少女。その眼孔から決して少なくない血を流しつつも、もう片方の目の闘気は欠片も揺らいでいない。

 

「どうしたどうした! 同情でもしてんのかオッサン! そんだけ装備固めといて、攻撃に一切の殺気が感じられねえぞ!」

「白状をすると、その通りだ。同情している。わかるだろう、俺とお前の差が。お前の一撃は、たとえ俺にクリーンヒットしたところでダメージを与えられず、反対に俺の攻撃はお前に掠った程度で致命傷……いや、死を与える結果となる」

「だからどうした! オレは魔族で、オッサンは人間! それ以上の戦う理由は必要か!?」

 

 受ける。受ける。受ける受ける受ける。

 グリュフォンの形を思い出しながら、少女の身体の動きに合わせてくる不可視の攻撃全てを受ける。

 そして……痛ましいことに、ただそれだけで爪が割れたり、指がひしゃげたりして行っている少女。

 

 ……覚悟を決めて、一撃で葬り去るべきか。

 

「魔素覚醒! 凶刃──」

 

 ピシィ、と。

 少女の全身に傷が走る。そこから果てしない流血が始まり、同時に周囲の海がコポコポと泡立ち始める。

 熱……炎? いや、違うな。なんだ、エフェクトが見えないせいで何のスキルかわからん。

 

「聖騎士スキル:十字鎧」

「涯劾!!」

 

 何か、炎属性と風属性の強大な何か。それが聖騎士スキルの防護壁に当たる。

 防ぐことは問題ない。だが……どんどん傷ついていく少女。自傷してスキルの威力を上げるタイプのパッシブスキル持ってるなコレ。つーことは、死を代償に捧げた場合の攻撃は俺の基礎防御力抜く可能性あるぞ。

 グリュフォンの身でそれを持ってんのは……ちょいとゲームバランスおかしいけど。主人公が魔族大陸に渡った時点で遭遇したら全滅必至クラスだぞ。

 

「く、っそ……クソ! 届かねえ!!」

「今の、死を使わないスキルの中でも、最上位の威力だっただろう。……諦めてはくれないか」

「まだ言ってんのかそんなこと! ──馬鹿が、もう引き返せねえとこまで払(・)い(・)終(・)え(・)て(・)る(・)よ(・)!」

「!」

 

 まださっきのスキルが終わっていない内に、天からもう一つのスキルが降って来た。

 これは……雷霆? いや、だけどこんなに魔素が乗っているスキルじゃない。

 

「オラオラオラ! その聖気のシールド、いつまで保つんだよ!」

「……この攻撃がずっと続くのだとしても、二日は保つ」

「そうかよ。ならまだまだいけるって」

 

 ごふ、と。

 吐血する少女。……ああ、やっぱりか。

 

 外傷だけじゃないんだな、捧げられるのは。

 

「わかった。ちゃんとやる。だから頼む、名前を聞かせてくれ」

「そりゃ最高だ。──テュアナだ!」

「そうか、俺はヴェルグという。最初から真剣に向き合ってやらなくてすまなかった、テュアナ」

 

 魔剣士スキル:物理上昇オーラ。

 

「聖騎士スキル:裁断」

 

 天から降り注ぐ魔素の濁流も、正面から来ている炎と風の凶刃も、全てかき消して光の剣が振り下ろされる。正確に、精確に、ぶれの一つもない軌道で剣は少女を捉え、その身を肩から袈裟懸けに切り裂き。

 

「今だ! この命を捧げる──行くぜ、ヴェルグ! これがオレの、最期の一撃だ!」

「ああ。……できればこの結果をさっきの使い魔に持って行って欲しかったよ。挑むだけ無駄だと刻んでくれ」

 

 暴風。いや、嵐だ。炎と雷が暗雲に走り、海の水をも天へと持ち上げて行く。

 グリュフォンの身でよくぞここまで、だ。珊瑚礁の一部が大気に晒され、海中にいた魔物たちがこちらを見上げている。全員アダルトMODでヒトガタになっているから、その表情がすべてわかる。

 唖然。羨望。絶望。尊敬。

 

 半身を……左半身の全てを失った赤髪の少女は、しかし片方だけになったその目をギラリと光らせて、狂気をも感じさせる凄惨で勇ましい笑みを浮かべた。

 

 声は響かない。世界の唸る音の方が大きいからだ。だから最期の言葉も、スキルの名も、なにもわからなかったけれど。

 

「見事」

 

 剣士スキル:極。

 居合系スキルの最上位。だけど──。

 

「……この世界で目覚めて、HPが減ったのは……初めてだよ」

 

 少女は絶命した。元々絶命していたところを、居合が直撃して完全に消滅した。

 だけど、彼女が遺したあらゆる余波が俺を削ったんだ。それがたとえ、自然回復で治り切る程度の傷でも。

 決して上位の種族とは言えないグリュフォン。魔族全体で見れば下位に位置するだろう種族の壁を、忠義の一つで突破した。 

 見事、以外に言葉があるか。

 

「テュアナ!」

 

 遠くから声が響く。

 その姿は、俺が知るヒポクリフそのもの。銀髪の……まぁ、もう容姿は良いだろう。雰囲気を壊す。

 

 悲痛な声だ。ああ、やっぱり魔族にもあるんだな、そういう意識は。

 

 少女の巻き上げた海水が降り注ぐ海上。

 そこに降り立つヒポクリフは……周囲を見渡して、そして、「……そう」とだけ呟いた。

 

「もう、いないのね」

「ああ、斬った」

「……あなたが、フレースヴェルグ」

「魔王か、魔素源王が何か言っていたか?」

「ええ、できることならば正面からぶつかるべきではない相手」

 

 ファントムがソースか、それとも別口か。

 魔族化したフレースヴェルグは結局どうなってんのか。

 

「テュアナは、正面からぶつかったのね」

「ああ。そして俺に傷をつけた。自らの命を代価に捧げて」

「美しかった?」

「とても」

 

 少なくとも、俺の考え方を変えるに足る武人だったと評価している。

 

「……ああ、この世界の嫌なところが出たな。気を悪くしたらすまないが、これだけはやらせてくれ」

 

 インベントリの、新規取得マークがついた【グリュフォンの心臓】というアイテムを取り出す。

 どう見ても人間の、それも子供の心臓であるそれを、魔法スキルで燃やす。海水の雨にも負けない熱量で、消し飛ばす。

 

 魂を世界に還し、肉体を地に還すことで、供養とする。

 

「ええ、それは確かにテュアナの心臓だった。私が保障する」

「……それで、やるか?」

「いいえ。私達が戦うべきはあなたではないと聞かされている」

「そうか」

 

 俺がジャイアントアネモネを召喚していなければ、死ななかった命か。

 いいや、そういう考え方は礼を欠くな。たとえどのような場でどのような状況でも、テュアナは俺に挑んだだろうし、そして自身の死を厭わなかったはずだ。時と場合は関係ないとは──ああ、カルラの言葉か。

 

「……」

「……俺が帰るべきだな、これは。偲ぶべきは俺じゃない。じゃあな、ヒポクリフ」

 

 聖域を解除し、その地点を去る。

 ミニマップの赤点は動かない。その場を動こうとしない。だから、ミニマップを拡大して赤点を消した。

 

 いや。

 いやいや。

 

 温度差よ。

 

 

◇

 

 

 砂浜に戻ると──メアリーがいた。

 

「お帰りなさい、ご主人様」

「……ああ」

「ご安心ください。皆さん先ほどまで怒っていましたが、沖合で起きた戦いを察せられないほどの弱者ではありませんので、なんとか自身を納得させて、今は昼食を取っています」

「そうだな。すまんと伝えておいてくれ」

「はい? 自分で行きやがれでございます」

「いや、ちょっと俺は出てくる。数日で戻る」

「……火急ですか?」

「わからん。だから行く、が正しい」

 

 どうしても確認したくなった。

 俺が上げすぎたハードル。魔族側からの期待。魔族化したフレースヴェルグの存在と、俺という存在への周知。

 

 新たなる芽吹き君は、今、どこで、どうしているのか。

 

「はぁ、では皆さまの鬱憤は私がどうにかしておきます。ですので、こちらを気にせず行ってきてください。それと、皆さまの安全に関してですが……」

「召喚獣を一体残していく」

「いえ、そろそろ私もちゃんとしようかな、と思いまして。最近は無理矢理使わされていましたが、スキルをしっかりと解禁しようと思います」

「今のお前がしっかりしたところでツバナにも勝てん」

「それは……どうでしょうね。まぁ心配なら召喚獣を置いて行けばいいです。──急ぐのであればどうぞお早く。皆さまがご主人様に気付けば、また喧噪に巻き込まれてしまいますよ」

「召喚士スキル:サモン:ドリームビースト。それじゃあな、後は頼む」

 

 転移を使う。

 行き先は、カラバ村。ゲーム本編で主人公が目を覚ます……主人公が主人公としてのスポットライトを浴びる場所だ。

 

 

 

 光が晴れて。

 

「……ふぅ。まずこの……シリアスモードをどうにかしないと」

 

 無の境地が働いている状態だとシリアスモードが抜けない。リアクションが減る。まずはこのガッチガチ装備を外して、剣も奇跡の命剣に変えて。ああ、瞑想は入れておくか。MPが結構減っている。

 

 ただ……今回は無の境地が切れても大丈夫だという自信がある。あの心臓の感触が残っているとしても、それで吐く、なんてことはしない。

 テュアナ。その名を忘れることは無い。

 

 ん。

 青点……ミニマップを拡大していたから気付かなかったけど、誰か近づいてきてるな。

 

「おやぁ、若いの。こんな山中でどうしたね」

「ああ……俺は流れの旅人でな。こう言っては気を悪くするかもしれないが、こういう田舎の風景はどこか故郷を思い出す。……ふと眺めていたら、時間が経ち過ぎてしまってな」

 

 老人。男性だ。

 背中に背負ってるのは……タケノコに似てるけど色味が絶対に違うなんかの植物。魔物ではないのは凄くありがたい。

 

「故郷の風景に似ていると言われて気を悪くする者はおらんよ。しかし、そろそろ宿を取った方が良い。雨が降るぞ、大雨がな」

「む……祈祷師なのか?」

「まさか。儂みたいな老人は空気の味で天気がわかるだけよ」

 

 ああ、田舎スキル:天気予報ね。

 昔俺も持ってたな。上京して無くしたけど。

 

「カラバ村に向かいたいんだが、どこにあるかわかるか?」

「……若いの、もしや相当な方向音痴かの? カラバ村はここをまっすぐ行けば着くぞ」

「なんだ、そうだったのか。ありがたい」

「おおどこへ行くどこへ行く! どう考えたらここをまっすぐ、がそっちになるんじゃ!」

 

 フェードアウトするように消えて行く無の境地に合わせて、こういう小ボケを入れて行く。

 よし、そう、俺は適当人間ヴェルグ君。シリアスシーン担当じゃない。数分前までやってた仲間に対するエロ最低行為を思い出せ。決して武人じゃないし、決して「見事」とか言う人間じゃない。思い出せ。

 

 ……テュアナの名は忘れないけど、それはそれとしてである。

 

「仕方ないの、儂についてこい」

「すまない、新たな地は慣れるのに時間がかかるんだ」

「そういう問題かのぅ」

 

 にしても。

 この老人、なんか見覚えあると思ったら……カラバ村の村長じゃね?

 

 

 

 村長だった。

 宿の場所を教えてもらって、そこでも方向音痴ボケをかましたら、「もう良い今夜は儂の家に泊まれ!」と言ってくれた。ありがとうお爺ちゃん。騙してごめんな。

 

「世界中を旅……のぅ。まぁそうか、目的地のないままに歩くのであれば、お主の方向音痴も問題ないのかの」

「そういうことだ。俺は方向音痴じゃないが」

「そうかそうか、そういうことにしておこう面倒くさいしの。で、カラバ村に何の用だったんじゃ? 儂が言うのもなんじゃがな、ここは何にもない村じゃぞ」

 

 よく言う。

 村の中心にある井戸から高レベル帯の魔物がいる地下フィールドに行けるの知ってんだぞこっちは。この村がこんな山の中にあって魔物に襲われず、壊滅せずに済んでいるのは、そもそもここの兵士が超強いからだってこっちは知ってんだぞ。

 とは、言わない。

 フレースヴェルグ君はカラバ村にいた何の取り柄も無い好青年ではなく、血筋と環境に恵まれに恵まれたナチュラルボーン野菜人だって知ってるんだぞ。

 とは、言わないけども。

 

「俺とよく似た顔に覚えはないか?」

「……ふむ?」

「いや、経緯から話すべきだな。……俺には生き別れ……というと少々大げさだが、幼い頃に別れた兄弟がいるんだ。別れた理由は俺が旅に出たからだから家の事情とかじゃない。いやそうだな、まず俺の親の話をするべきだ。俺の親はどちらもが三兄弟三姉妹の出でな、その兄と姉が」

「その話長いかの?」

「要約するとここの村に俺に似た顔の奴をここで見た、と知り合いから聞いて、ここに来た」

「おらんのぅ。若いのみたいなのは見た覚えがない」

「……そうか」

 

 隠している、とかじゃないのはわかる。「こいつ面倒くさいのぅ」って感情が溢れてるから、そういう小細工してる余裕無いと思う。

 でもファントムはもういるって言ってたんだよな。アイツが嘘吐くとは思えないし……王国暗部が俺をフレースヴェルグだと思い込みまくってたのを考えるに、"フレースヴェルグ"は全員同じ顔だと思うんだけど、違うんかな。

 

「この雨が止むまで、この村に滞在しても良いか? 一応他の村民にも聞いて回りたい」

「構わんよ。別に雨が止むまででなくともよい」

「いや、旅人だからな。この村にいないのなら、王国へ向かった、と考えるのが妥当だろう。あちらへ向かう道中の村々でも聞き込みをする必要がある」

「……ふむ。王国へ、か。ならば提案が一つあるんじゃが、よいか?」

「なんだ?」

「依頼という形になるのかのぅ、王国へ行きたがっている娘が一人おるんじゃが……如何せん危なっかしい子での。王国まででいい、付き添ってやってはくれぬか?」

 

 うわ。

 カラバ村のこの依頼、すごく聞き覚えある。主人公が最初か二番目に受ける依頼だ。

 連れて行く子は確か王国で働きたいっていう女の子で、その子がヒロインになるのかと思ったらゲーム本編で出てくるのこの期間だけっていう……。 

 フレースヴェルグ君はこの依頼受けなかったのか、それとも時系列が前後したのか。

 

「構わない。だが良いのか? 俺は一応男だぞ」

「構わん構わん。それでくっついてくれたらむしろ御の字じゃ。あれほどのお転婆娘、貰い手にも困るじゃろうしの」

「いやそれはどうなんだ」

「はっはっは、まぁそれを抜きにしても、お主は信頼に値すると儂の勘が告げておる。枯れ木老人の勘と侮るでないぞ、これでも儂は」

「レベル240の格闘家……だろう?」

「ほう」

 

 うん。

 だからこの村やべーんだよね。限界突破こそしてないけど、普通に人間の範疇の最高レベルの奴らが揃ってるんだわ。そりゃフレースヴェルグ君も最強の騎士団長になるって話。

 ちなみに先述した地下フィールドにはアースドラゴンというドラゴンがいるんだけど、何の前触れもなしに石化効果のあるブレス放ってくる初見殺し魔物である。道中にヒントとかないから一周目だとそこでほぼ100で全滅する。

 

「わかるか。お主も相当な闘気を身に纏っておると思っておったが……」

「旅をしていると色々な危険に遭うからな。強くならざるを得なかった」

「じゃが、それをわざわざここで明かす理由はなんじゃ?」

「俺はその子を守るに十分な能力を持っている。だから余計な試練をしてくれるな。ああ、村長だけに言っているわけじゃないぞ。聞き耳を立てている奴らへの忠告でもある」

「はっはっは。……良い良い、じゃがな、若いの。儂はあの山を常に把握しておる。そこに突然現れたお主を怪しむのは仕方のないことだと思ってくれ」

「そんな怪しいやつに少女を任せるなよ」

「それを言われたら言葉を返せなんのう!」

 

 この爺さん、あれなんだよね。獅子は子を千仭の谷にタイプなんだよね。

 チュートリアルに、って村から王国への道中に魔物放ったり、魔族大陸で壁にぶち当たって村にまで帰って来た主人公一行を井戸に落としたり。

 とにかく試練を課したがるし、クリアできなくても救済してくれない。普通に前のセーブデータからやり直しになる──つまり死んでも放置ってこと。エグい。

 

「それで、その子の名前は?」

「ラヴ・グラットル。お主ほどの者ならば聞き覚えがあるのではないか? かのグラットル家の血筋じゃ」

「……すまん真面目に聞き覚えがない」

「いや……まぁ。いいんじゃがの。うん。別にいいんじゃがの」

「もしや村長、アンタがグラットル家の当主だったりは……」

「この話は終わりじゃ終わり! 知らんのか、老人の就寝時間は早いんじゃ。おやすみのう!」

 

 地雷踏んだわ。

 いやしょーがないんだよ。ゲームだと依頼主の子は「少女」だし村長は「村長」だし、名前無いNPCだから家族がどうとかわかんねーんだよ。

 

 いやしかし、あの子村長の孫だったのか。

 ……孫娘を男と二人旅に出して、主人公に対してとはいえ魔物使った試練を課すの……やっぱどーかしてるよな。

 

 

◇

 

 

 翌日、ラヴ・グラットルの家を訪ねた。

 すぐにハーイ! と元気のいい返事がして、ドッタバッタと家の中を駆けずり回る音がして、ドガァンと扉を開けて出てきたのが──左肩紐の外れたキャミにしか見えない服を着た、それはもう元気そうな金髪の少女。

 しかも植物を編んだ服なのか、魔物素材じゃないからかなり、その、普通にエロい。いやロリコンじゃないよ。ロリコンじゃないけど……なんだこの色気は。こいつサキュバスなんじゃ。魔物だったら全裸になってるから絶対違うんだけど。

 

「えーと?」

「ああ、すまない。俺はヴェルグという。村長に頼まれて、お前を王国へ届ける次第となった」

「え? 一人で良いって言ったのに……もう、お爺ちゃんったら過保護なんだから」

 

 ああその台詞も覚えあるわ……。

 なんかこれはこれでエグいな。ゲームの世界に来たんだ感をようやく、今更味わっているというか。

 

「んじゃ早速行く?」

「それでいいのか? 挨拶回りなどは」

「別に今生の別れってわけでもないし、いいでしょ!」

「お、おう」

 

 その台詞は覚えがないから、やっぱなぞりはすれどもちゃんと人間なんだな。

 ……なんだこの今更過ぎる再認識。お前この世界で何してきたんだよ。

 

「んじゃしゅっぱぁーつ!」

「いや待て、流石に荷物の確認をした方が良い」

「荷物って?」

「野宿道具や食料などだ」

「……? 魔物狩ればいいじゃん?」

 

 こんな脳筋じゃなかったはずだぞ。絶対違うぞ。

 おいあの爺さんどんな育て方したんだ。あくまで主人公のチュートリアル用の子で、この子は戦わなかったはずだぞ!

 

「あ、あたしはラヴ・グラットル! 短い間だけど、よろしく!」

「ああ、よろしく。……本当に良いのか?」

「大丈夫! これでもサバイバル技術は持ってるから! 雨が降ったって土砂が崩れたって生き残ってみせるよ!」

「……わかった。じゃあ行くぞ」

 

 あるいは。

 新たなる芽吹きの方のフレースヴェルグ君が相当なアレで、この子も感化されたとか……そういう可能性はあるな。いずれ最強の騎士団長や白銀章の冒険者となり、そして魔王に魔素源王、ファントムをも倒す存在がフレースヴェルグ君だ。

 ちゃんとアッパラパーな可能性はある。

 

 ……これさぁ、全部ファントムの嘘で、今俺がフレースヴェルグ君役をやらされてるとか……ないよね?

 

 

 

 さて、道中。

 王国へは三つの村を経由する必要があるので、しっかりとしたルート取りをして向かうべき……なんだけど。

 

 いるわいるわ、監視の目。野外フィールドでミニマップにこんな量の青点あることないからすぐわかるって。

 

「ヴェルグお兄さん?」

「……やめろと言ったのにやる方が悪い。グラットル、担がせてもらうぞ」

「へ? わぁ!?」

 

 最初に感じた色気はどこへやら、かわいらしさの欠片も無い悲鳴を上げるグラットル。わぁて。お前はドラ〇もんか?

 

 そんなツッコミはさておいて、戦士スキル:跳躍を使って跳ぶ。

 

「おぉおおおお! なになに!? 近道!?」

「そんなところだ」

「今のスキルだよね! ヴェルグお兄さんはどんな職業なの?」

「あー、まぁ、戦士だな。戦士スキルだよ」

「お爺ちゃんと私は格闘家なんだけど、格闘家もそういうのできる?」

「スキルでできるかどうかは自分で模索しろ。ただ、素でできるようになれば関係ない」

 

 一度目は監視を引き剝がすために跳躍を使ったけれど、二度目からはスキルを使わずに跳ねて行く。流石に飛距離は落ちるけれど、おおよそ人間には不可能な距離を飛んでいける。

 三周目ステータスとはこういうことを言うのだ。……まぁ一般人が仮に三周目になったとしても、こんなスペックにはならないんだけどね。

 

「これ、いいね! 着地の瞬間に腹筋が鍛えられる!」

 

 おう。

 そうだな。うん。

 

 

 

 面倒だったので一つ目の村でぱっと見フレースヴェルグ君がいないことを確認して、二つ目の村までスキップ。ここには主人公の最初の装備になるものがずらりと売られていて、道中で魔物を倒したり、一つ目の村でのイベントをこなしたりしていれば大体は買い揃えられるように設定されている。

 グラットルは腕甲を買った。もうツッコまない。

 つーか防具一個も買わねえのかよ。……ああこれツッコミだ。

 

「ヴェルグお兄さん、お待たせー!」

「ああ。……なんだそれは」

「これ? シザーマングースの腕肉! ヴェルグお兄さんも食べる?」

「……いや、いい」

 

 ああ、久しぶりだこの感覚。

 メアリーは俺に復讐する復讐する言いながらも、奴隷としての仕事……料理におけるオーダーはちゃんとしてくれていたからなぁ。元の食材を言わないことと、元の食材の形がわからないような料理にすること。

 

 それが。

 ……そうだよね、だって君達にとっては普通の事なんだもんね。

 

「あまり腹に物を入れると吐くぞ」

「大丈夫! 鍛えてるから!!」

 

 サイデッカ。

 

 あ、ダメだな。俺この子と一緒にいるの疲れるわ。もうフレースヴェルグ君とかどうでもいいから最速で王国行ってマイホームに帰ろうそうしよう。

 エロ行為の誹りも罰もちゃんと受けるから、安寧の帝国でゆったりしよう。

 

「あ、森の中にタイラントベアがいる! ヴェルグお兄さん、あれ狩って食べよう! 良い毛皮も取れるよ!」

「今食べたばかりだろうが。とっとと行くぞ」

「ええええ勿体ないー!!」

 

 タイラントベア。 

 レベル60前後だったはずだけど、もしかしてまだ試練続いてる? だる。

 ……ギア上げて行くか。

 

 

 はい、ということで到着しました王国。まぁ王国に着いただけで、カラジェット君たちのいる王都へはもう少し距離があるし、ギルドもこんな辺鄙な場所には無いから知り合いに遭う可能性は無い。

 とはいえここが王国なのは間違いないので、依頼達成、と。報酬は宿代だから前払い。

 

「なんか、あっという間だった!」

「そうしたからな。さて、ここでお別れだが……ラヴ・グラットル」

「なに?」

「俺の顔に似た、けれど俺より若い青年を見かけたら、名前を聞いておいてくれないか? あとこれからどこへ行く予定なのか、とかも」

「いいよ!」

「んじゃ、また会うことがあったら、それを教えて欲しい。じゃあな」

「ばいばーいヴェルグお兄さん!」

 

 最後まで元気な奴だった。

 ……シーファと似てはいるが、こう、なんだろうな。

 

 圧倒的な太陽感。焼け死ぬわあんなのと一緒にいたら。

 

 

 

 さーて転移転移。

 

「天使スキル、調停」

「怪異スキル:地縛霊!」

「……」

 

 レジストは全然間に合うタイミングだったけど、まぁ大人しく受けて置く。それだけのことをした自覚があるので。

 

 えーと、調停はいつも見てるからわかるけど、メアリーのは……ほー、自分の魔力が自分を縛るスキルか。面白いな。魔法タイプの敵なら完封できるじゃん。

 

「弁解は聞かない。ツバナ、アレを」

「うむ」

 

 手慣れた手つきでツゥが俺の下半身を剥き、露わになったオティヌティヌ様をむんずと掴む。ただ調停のせいで勃起はしない。元からツゥには勃起しないんだけど。

 

「見えるー? ご主人様。これね、スイちがくれたんだ。オブシダンアラクネーの糸を使ったタイツなんだけど、わかるー?」

「……そりゃまた、かなりの高級品を」

「ふふ、そして、ヴェルグさんの、勤め先である、ハルフィーポーションさんで、潤滑剤を、購入いたしました」

「それをこのタイツにかけて!」

「こうじゃ!!」

 

 亀頭に触れるザラザラのタイツの感触。潤滑剤によって十分なぬめりけを得たそれを、ツバナが力任せにゴシゴシゴシゴシする。

 うーん。

 まぁ、そうね。確かに弱点とは言ったけどね。

 

 確かに刺激が強い。気持ちよさと痛みが混同してすぐ射精しそうになる。

 けど……足りないんだよな。

 

 やっぱりこう……勃起するくらいエロい奴がいて、そいつがやってくる、っていうんなら最高に気持ちいんだけど、単純な亀頭攻めは……うーん。

 

「天使スキル、精神耐性低下」

「不和の舞い!」

 

 お。

 

「そして──怪異スキル:模倣:呪詛スキル:魅了」

 

 おお。

 おおお。

 

「どうですか、ご主人様。……ほら、この服を、こうしてハラリと……」

「おお、いいぞメアリー。ちょっとかわいいと思えた! もう少し頑張れあと少しだ!」

「アサシンスキル:房中術:誘惑」

「アサシンスキル:房中術:誘惑」

 

 恐らく魅了に似たスキル。

 ケルとツゥの貧相な体が、途端に魅力的に見えてくる。……いや貧相というのは言葉の綾であって。

 

「最後に、これじゃ!」

「おおお」

「あの……分身元から話は聞いてます。その、失礼しますね」

「ああすまん喋らないでくれ今結構いい所だから!」

「あ、はい。では」

 

 エルシータから買って来たのだろうか。

 ツバナが俺の尻に触手ちゃん──俺が話したやつとは別個体──を近づける。即座にその不可視の触手が肛門へ侵入し、前立腺を見つけ出し、裏側から刺激し始めた。

 

 触手プレイ、俺が受けるんかい! っていう。

 俺はお前らを……お前らをめちゃくちゃにしたかったのに!!

 

「この……これだけ手をこまねいても汁の一滴も出さんとは、どうなっとるんじゃ!」

「いや調停あるから生理反応起きないだけだよ。ちゃんと感じてる感じてる」

「感じてる奴の声じゃないじゃろう! ……じゃが、アウラニ」

「はい。調停を解除します」

「アサシンスキル:弛緩。……だめ、効かない」

「ここはお任せを。怪異スキル:精神の束縛」

「あ、馬鹿それは」

 

 バチン! と大きな音がして、メアリーのその不思議な何かが弾かれる。

 アウラニとシーファの精神耐性へのデバフで下げられたのは、あくまで三周目で得た俺の基礎精神耐性。ただ魂や精神そのものへ関わるスキルとなると、二周目までのステータスがダイレクトにそれを弾く。

 

「……痛い」

「だろうな……まぁ今治してやるから」

「痛い、です……」

 

 言って、縮こまって……その目の端に涙を浮かべるメアリー。

 

 あ、やべ。

 

「お? ……お主、とんだ……とんだ趣味を持っていたものじゃのぅ」

「ご主人様サイテー」

「ヴェルグ……」

 

 いやだって可哀想は可愛いんだよ!

 それは仕方がないんだよ! そりゃオティヌティヌも反応するよ!

 

「よし、アウラニち。ここは心をツバナちにしよう」

「はい。……はい?」

「この前からメアリちが触られて嫌がってるのって、コ(・)レ(・)だと思うんだよね!」

 

 むんず。

 掴み上げるは、不可視のナニカ。

 

 縮こまったまま涙をちょちょ切れさせていたメアリーは、「あ、あ」と声にならない声を出し。

 

「今ご主人様はメアリちをエロいと思えてる。この状態でこれをゴシゴシすると~?」

「……わかりました。私も、心を、ツバナさんに、します。天使スキル、調停」

「ちょ。嘘でしょう!? アウラニ様!? シーファ様はわかりますが、なぜアウラニ様まで裏切りを!?」

「私が、貴女の所業に、気付いていないと、思いましたか?」

「げ」

 

 にっこり。

 アウラニのアルカイックスマイル。メアリーに心当たりがあったようだ!

 

「じゃあ余ってるもう片方のタイツで──ぞり」

「う、ひ……ぁぁあっ!?」

 

 びくん、とオティヌティヌが反応する。

 

「へぇ、これがメアリーの弱点なんだ。どこがどうなってるんだろう」

「あらあら、これ、もしかして大きな大きな……」

「ちょ、ケル様、ツゥ様まで!」

 

 これは。これは来る。

 流石に勃つ。

 

「隙を見せたのぅ、主よ」

「……お前はメアリーの調教に加わらなくていいの?」

「あくまで私の恨みは──こっちじゃ!!」

 

 その日。

 そういえばグレイスがいなくなってから、あのメアリーで見抜きしたこと以外では久しぶりの──女性の手に依る射精、というものをした。

 とても良かったのでまた今度やってほしい。全員のMPすっからかんで、メアリーは「もう協力しません!」とか言ってたから多分次の標的はアウラニになるけど。

 

 あと、触手ちゃんMk.Ⅱはちゃんとなんか腸内で消化できる種子みたいなのを射出できるようになっていた。空撃ちの痛みは改善されたらしい。やるなエルシータ。

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