アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ 作:姫鼠まりあ
晴れて人間となり、シーファとの再会を果たしたアウラニは、けれど全てを察したシーファが号泣したことで、何故か自分も泣けてきてしまったらしい。
思うに彼女から天使成分が抜けたことで、天使としての価値観も消え、感情表現が顔に出やすくなった……とかそんなところなんじゃないかな。
人間となったアウラニは勿論天使スキルを失っている。ただ両性具有であることは変化しなかったので、シーファとアウラニが番う日も遠くないんじゃないかって俺は邪推している。強制するとかはないけど、あれだけ仲良かったら一発くらいヤるだろ。
で、まぁ自分でも何がというわけで、なのかはわからないけれど、帰ってきてすぐにアウラニの眷属の呪いをシーファに譲渡した。もう要らんしな。
シーファはそれはもう複雑そうな顔をしていたけれど、じゃあもっと複雑な顔をさせてやろうと思い、ツゥの眷属の呪いも譲渡した。別に解除したきゃすればいい。悪用したきゃすればいい。そこの制限をつけるつもりはない。
「ということは、今現在のご主人様の奴隷は私とシーファ様だけですか」
「そうなるな」
「……少し残念ですね。同僚である、という立場を利用しての悪戯が、シーファ様の奴隷に対して行う、だと虐めになってしまいかねません」
「別に奴隷は等しく奴隷だろ。誰のとか関係ないと思うが」
「ご主人様の価値観ではそうでしょうけれど、私の価値観では違う、という話ですよ」
「そうか」
「そうです」
まぁ、良いことだと思う。
自分の世界観を崩さないのは、社会を生きるのに必要なスキルだ。
「それでは、なぜ私が今椅子に拘束されているのか、を聞いてもよろしい段階ですか?」
「ちょいと考えることがあってな。もう少し縛られていてくれ。ああ特に性的なことをするつもりはない」
「はぁ」
今俺は、自分の考察をまとめるのに忙しいんだ。
きっかけは天使と相対した時に浮かんだ疑念からだった。
メアリーは「何らかの上位種族」としてゲーム本編で説明されている。
天使や魔族は高位種族とされている。それは恐らく人間が低位だから。だけど魔族の中にも高低はあるし、人間が限界突破しても高位種族にはならない。
なればメアリーの上位種族とはそもそもなんなのか。
ただクトゥルフ神話のフレーバーテキストを汲んだだけの悪戯心なのか。
「メアリー。お前って同族はいないのか?」
「同族、ですか。……少なくともこの世に生まれ出でてから出会ったことはありませんが……いる、ということだけは知っています」
「それは希少種族だからか?」
「恐らくは。あまり人前に出てくることの無い種族ですからね、私共は」
「お前の両親は今どこにいる?」
「さぁ……? 物心ついた頃にはこの姿で放浪していましたので、親というものがいたかどうかもわかりません」
ふむ。
概ね、ゲーム内で語られるメアリーの過去と同じだ。気付いたら各地を放浪していて、気付いたら奴隷だったこともあったし、いつのまにかメイドになっていた。ゲームで彼女の好感度を上げるとこういった会話が見られる。
異様にスクイッド種……イカに対して敵意を持つのもニャルっぽいし、怪異スキルとかいうのも神話生物っぽさはあるんだけど、如何せんそんなに強くないのがまた疑念を加速させるというか。やっぱりただのフレーバーテキストなんじゃないかとも思えてくる……が。
「あの、性的な行いが目的でないのなら、縛り付ける理由はあったのでしょうか。……あるいは私、暴れると思われていますか?」
「というより暴れさせる気でいるから縛った、が正しい」
「はい?」
「呪詛スキル:屈服:スキル使用:暴走」
「──」
バチン、と。
不可視のものが部屋の形に添うように敷いた遮断結界を叩く。ふむ、出て来てそうな場所を念入りに縛ったんだけど、意味なしか。
「あー……あー……」
そんで、見えている方のメアリーは白目を剥いて涎を垂らしてずっと「あーあー」言ってる。
不可視のナニカは一生暴れ狂っているにもかかわらず、だ。ふむふむ。
やっぱり本体はそっちで、このメアリーはエスカ……疑似餌みたいなものなんかね。
あるいはもっとでっかいのを内に秘めている可能性も高い。不可視のソレが俺の眼前にまでくるけれど、俺は結界の中に入ってないから眼前でバチンとなる。
じゃあ次。
遅延で発生元を置いておいた弓兵スキル:マーキングカラーを発動させて、その不可視のソレにべちゃりとつける。中々落ちない絵具みたいなものをつけるスキルで、こっから煙り出したり光らせたりできるのが便利。良く逃げる魔物に打ち込んで追いかける奴ね。
それを十個。
多方向から上手く調整して発射して、全容が見えるようにする。
すると。
「やはり、巨大なオティヌティヌか」
巨大な頭には口があり、視線を下げるとエッグい抉れのカリ首。そしてその下に続くグロテスクな肉の棒。
口の部分は呼吸するかのように閉じたり開いたりを繰り返していて、まぁ正直オティヌティヌに見えるだけで多分触手生物というか肉の塊というかそんな感じなんだと思う。
これが貌の無い者、メアリーの正体。
……で、上位種族ってなんなのかってとこですよ。
「呪詛スキル:屈服:スキル使用中断」
「えぁー……ハッ。……きゃあ!?」
「すまんな、素直にお願いしても協力してくれなさそうだったから無理矢理やった」
「ちょっと、性的なことはしないって言ったじゃないですか!」
「ほう。ではお前のソレは性的な部分なのか?」
「そ──んなことは、ない、ですけど」
いやまぁこの前のスライムオナホコキでどういう感触を味わっているのかは大体理解してるけどさ。
実際なんなんだ、それ。
「うぅ……辱めを受けました。……しまいます」
「呪詛スキル:屈服:行動制限。まぁ待て、俺はソレの観察がしたくてお前を縛ってるんだ」
「ひぃ、知ってましたけどこの人頭おかしい」
「俺のする質問や実験に素直にYESを答えたらすぐに解放する。言い渋るなら呪いで縛る」
「誰か! いませんか!」
「遮断は音も通さないんだなぁこれが」
なんてことを言いながら、遮断結界の中にするりと入る。使用者の出入りは自由である。
さて、色付けのされた巨大なオティヌティヌ。触ったりつついたりするだけで面白いくらいの反応を返すメアリーに、また亀頭攻めに近いことをしたくなるサドっ気が芽生える……が、ここは一旦我慢。
「これ、射精はできるのか?」
「で・き・ま・せ・ん。そもそも男性器ではありませんので」
「ふむ。じゃあこの口の部分から飲食をするのは?」
「……できます」
「やっぱこっちが本体か」
「……というより、どっちも本体といいますか。今ご主人様が見ている、見えている私も、この見えない私も、同じものです。ただ便利なので片方は見えないままにして、もう片方には肉をくっつけて人間に見せかけているだけで……だからどちらの口でも飲食は可能です」
「生殖機能は? お前のそっちの身体はセックスできんの?」
「可能ですが、子供は作れませんよ。私の種族は卵生でも胎生でもなく無性生殖……というより分裂に近いもののはずなので。ですから、先ほど聞かれた親、という存在についても、多分いるのは親ではなく元となった私とかその辺なんじゃないですかね」
ほぁーん。
……不思議生物、と。
「コレはどれくらい長く伸ばせるんだ?」
「伸ばしたり縮めたりしているというより、元の長さ分を出し入れしているだけです」
「元の長さはどれくらいなんだ」
「さぁ……あ、違いますよ。言い渋っているとかではなく、久しく元の姿になっていない上に、私も日々成長しているので、今どれくらいかわからない、という意味です」
「元の姿になるデメリットは?」
「ありません……が、単純に恥ずかしいのと、あとこの身体を気に入っているので、またイチから造形し直すのはちょっとなぁ、という思いが」
「そうか」
その辺は語られなかった部分だな。アダルトMOD入れない限りNPCに性的な話題なんか振れないし、仮に振れたとしてもそもそもゲームじゃメアリーのこの巨大なオティヌティヌは見えていなかったんだ。サイコキネシス的なアレソレみたいに描写されてたし。
「最後に本来の姿になっていた時は、どれくらいの大きさだったんだ? ああコレの長さじゃなく、全高で頼む」
「……まぁ、マスカルウィン城よりは、大きいです」
でっっっっか。
えでっっっっか。
え、えでっっっっか。
しかもそれが今なお成長してて、その小ささに隠し通せてるって何? お前がラスボスなんじゃねーの??
「それで……魔物や魔族じゃないんだもんなぁ」
「ああ、それはどうでしょうね。魔族じゃないのは確かですが、魔物ではあるのかもしれません。ただ人の言葉を操れる声帯を作り上げただけの魔物。そうであってもおかしくはないんじゃないでしょうか」
「……ま、だとしてもどうでもいいか。種族差別はそもそもやってきてないしな」
「私からすればご主人様も魔物に見えますよ。強さも考え方も」
「だろうな」
上位種族。
それがなんなのかはビミョーにわからんが、多分これはメアリーの好感度MAXにしておせっせイベントにまで入るくらい親密になってからじゃないと聞き出せないレベルの話な気がする。そしてそこまでする興味が俺にない、と。
「もうしまっていいぞ」
「ああ、はい」
ずるずるとしまわれて行く不可視のソレ。
ついた塗料がメアリーの尻とかにつく、ってこともない。そのままそれはいなくなった。
不可思議すぎる。
結界を解いてメアリーを椅子から解放。伸びさえしないあたりはもう隠さなくていいと思ったのかもしれないけど、成程実態を知ってから見ると、些か「人間らしい動きをしようとしている」感はぬぐえないかもしれない。
その先入観が無ければ絶対にわからないけれど。
「ご主人様」
「ん? ああ、すまんかったって。知的好奇心が抑えられなかったんだ」
「いえ、そうではなく。私からも質問よろしいでしょうか」
「ああいいぞ、なんだ?」
するりと。
なんでもないかのように。
「ご主人様は、その目で見ている世界が……主に魔物が、全く別のものに見えている。私はそう思えて仕方が無いのですが、如何でしょうか」
そう、言った。
「どうしてそう思った?」
「推理、というより情報の統合ですね。スイ様、シーファ様、アウラニ様に海底遺跡での色々を聞きました。ご主人様が使用したエコーロケーションというスキルの共有により、サハギンの生活模様が見えたことを」
「ああ。まぁ魔物だって生活くらいするだ」
「その際感情も流れ込んできたそうですよ。ご主人様には言わなかったようですが。──心の底から同情するような、申し訳ないと思うような……凡そ知性無き魔物に向けるべきとは思えない感情が」
……。
……そうか。言わなかったのは、俺が急いでいたからだろうな。疑念を疑念のままにしたか。そんでもってその後俺がエロ最低行為して、そのままフレースヴェルグ君を探しに行ったから、聞く機会もなかったと。
「且つ、ご主人様は魔物と会話ができる。そうですよね」
「それはお前の前で見せた覚えがないんだがな」
「こちらは観察結果です。なにせ、私も魔物の言葉がわかるので」
「やっぱりお前魔物なんじゃね」
それは初耳すぎる。ゲーム本編で一回も聞いたこと無いぞその情報。
「この時点で上がる仮説は二つ。一つはご主人様が魔物の言葉を解せるようになったことで魔物と心を交わし、ゆえに殺せなくなった上に魔物素材を見ることができなくなった、というもの。そしてもう一つは、さらに深く」
メアリーは、核心を突く。
「ご主人様には魔物がもっと違う……そう、たとえば、
「全く見当外れだ……と言ったら、信じるのか?」
「証拠が揃い過ぎておりますので、無理ですね」
まぁ。
別に、隠し通さなきゃいけない情報、なんてことはない。
「……そうだ。俺は魔物が人間に見える視覚障害を患っている。一年前のあの戦いで受けた傷が脳に達していたか、あるいは魂にまで響いていたか。市場で売られている食材が全て人間の部位に見える。魔物素材を使った装備や家具が、それぞれ人間を用いたものに見える。魔物の言葉もわかるし、魔族や天使とも会話ができる」
「後半はメリットに聞こえますが、障害が大きすぎますね。それでは食事もマトモに喉を通らないでしょう。ああ、だからああいうオーダーでしたか」
「お前は俺に復讐するだのなんだの言っておきながら、ちゃんとそういうところを守ってくれるのがありがたいよ」
「関係を壊してまでやりたいことではありませんからね。常識的な行動、という奴です。……それで、ご主人様。それを治す手段はあるのですか?」
「無いだろうな」
「……」
MODを抜くには、タイトルのMOD管理画面に行く必要がある。
ティル・ナ・ローグは確かにセーブ&ロード画面だけど、ゲーム内からタイトル画面にアクセスする方法は、少なくとも俺は知らない。なかった、と言わざるを得ない。
それに、魔物素材関連のデメリットは確かにエグいデメリットなんだけど、ゴリマッチョNPCが美男美女に見えるとか、超グロい魔物が美少女に見えるとかは、まぁメリットにもなっているというかなんというか。
俺はバリバリ相手の見た目気にするので、中身がどうであれアダルトMOD入ってないNPCとおせっせできるかっていったら微妙というか。
「では、仕方ありませんね」
「ああ、仕方ない」
「そういうことではなく。私が家事炊事を行う奴隷であり続けるのは仕方がないことだ、という話です」
「うん? まぁそりゃな。今んとこ手放す気は無いぞ」
「……シーファ様から聞いていたのですよ。同じ能力を持つ者であれば、替えが利くとご主人様が仰られていた、という話。シーファ様は酷く傷ついていました」
「ああいや、それは本心だ。今でもそう思っている。ただ考えても見て欲しい。逆にお前達がそこまで入れ込む存在か、俺は。もっといるだろ。多分、どっかには。魔族と知っても受け入れ、優しくしてくれるような奴とか、厄介な身の上の事情を抱えていたって、共に苦難を切り開き、寄り添ってくれる奴とか」
だってこんなに善人で溢れている世界だ。
悪人も勿論いるけど、そんなのは自分で見極めればいい。確かに俺は三周目ステータスで他とは隔絶した強さを持っているかもしれないけど、強さ目当てなら人格とか気にするなって話だし。
俺が良い、俺じゃなきゃダメだ、俺の近くにいたい、と思う理由が、俺にはあんまり理解できない。
ファントムも言ってたけど、よくこんなのに好意を持てるものだと心底同意する。
俺の言動に傷ついたのなら、そういう言動をしない奴の所にいけばいい。それを探すくらいの資金援助はしてやるからさ。
人付き合いって割とそんなものだぞ。嫌な上司、面倒な後輩が入ってきたらすぐに転職先を探す。転職先で受け入れてもらえるかどうかは自分の
そうして、踏み込み過ぎず、けれど離れすぎない一定の距離を保った仲にこそ「友情」や「縁」というものは生まれるんだ。見つけるのは中々至難だけど、一度見つけたそういう仲は五年十年二十年、下手すりゃ死ぬまで続くモンだよ。
相手に変わってほしいとか思うだけ無駄だろ。そこまで人間は少なくない。
「とにかく、現状は、です。ご主人様の悩みを理解できて、家事炊事能力がご主人様のストレスにならない技能に達していて、ご主人様に求められている──という奴隷は、私だけ、ということで」
「ああ何? マウントの話? いや別にいいけど、あんまりマウント振りかざすのやめとけよ。友達減るぞ」
「……こいつに言われたかねぇ、という感情が吹き荒れております」
「俺も言ってて思った」
つーかもうやめようぜこの話題。一生先輩風吹かしてるみたいで俺がウザい。俺自身に対するウザさがMAXにまで来てる。ΔMAXまで来てる。
シーファの魔素体質は替えが利かなそうだからもうちょい一緒にいてもらうつもりだけど、それが終わったら全然解放するからさ。そしたら、どっかいくのも一緒にいるのも好きにしたらいいよ。奴隷じゃなくても一緒にはいられるだろ、ケルみたいに。
「そろそろ食事の時間ですね。それでは失礼いたします」
「ああ。……あー、なんだ。そういえば最近言ってなかったけど、なんか来た時より美味くなってるよお前の料理。俺の好みを勉強してくれたのか知らんけど」
「……ええ、ありがとうございます」
……。
何だ今の。なんで俺フォローするみたいなこと言ったんだ? 全然フォローになってないし。
ラブ・グラットルの時も思ったけど、なんか最近マジで俺らしくないというか、俺が俺の行動に疑問を持つことが多くなったな。やっぱ世界も肉体も変わると人って変わるのかねぇ。
手持ちの奴隷が減って来たので、久しぶりに奴隷市場に来た。
どうせ手放すクセにまた拾うのかってツッコミは甘んじて受け入れよう。俺も馬鹿だなって思う。
「あ、旦那! お久しぶりでございまさぁ!」
「よう、ノズヴェルガー。久しぶりに奴隷を見たくなってな。また倉庫に入れてもらえるか?」
「構いやせんよ。ああ、やんごとなきお方が必要なら、ちゃんと紹介するんで」
「いや別に俺そういうの集めてるわけじゃないんだが……ああ行っちゃった」
厄ネタコレクターみたいに思われてないか。
そういうつもりは全然ないぞマジで。
さて。
いつも通り称号を見て奴隷を吟味していく。ノズヴェルガーの言う通り厄介ごとの種みたいな称号持ちがこれでもかといるけれど、その中でも一番目を引くのは──。
「んー」
「……なんだ、お前のその精霊力は。……精霊か?」
「なワケねーだろ」
つい反射的に反応してしまったけれど、今の声出てなかったな。肉声じゃない声を使うってだけでもうアレなんだけど、称号もねー。ねー?
……これ買ったところでじゃね?
買ったところで俺に何ができるんだ。いや奴隷の事情をどうにかしたくて買ってるわけじゃないけど。ただ……戦闘奴隷としては一級品だなコイツ。前衛のスペシャリストみたいなステータスとスキル持ってやがる。なんで売られてんだこんなのが。
つーか人間じゃねーのによくここまで鍛えてるな。
ただ体形は……良いな。グレイスほどティンとは来ないが、大人で、タッパも胸も尻も丁度良くて、くびれもくびれすぎてない。アダルトMODを通しても腹筋が割れているのがなんというか凄い所だけど、全体的に悪くない。
戦闘奴隷としても性奴隷としても使えるのは、お得では?
……よし。
「ノズヴェルガー。まずコイツ買うから、取引の準備を頼む」
「へい!」
まぁ金は有り余ってるんで。
要らなかったらまた得るか解放すればいいし。
で、えーと、あとは別に……。
……。
……?
「お前……銀閃のカローライナか?」
「っ」
こーれは。
こーれは……厄ネタというか揉め事の種というか。
戦争の火種というか。
「ノズヴェルガー、こいつも頼む。これで会計してくれ」
「へい! 少々お待ちを!」
銀閃のカローライナ。
身分隠して冒険者やってた、王国の第二王女。
なんで帝国で奴隷になってんだお前。
さて、今更だけど王国についてちょっと補足事項を入れよう。
王国──マスカルウィン帝国と古くから小競り合いや戦争を続けているここは、正式名称をシアルル王国という。大小さまざまな村、国、都市から成る国で、中心の王都ハウエンにある王城から東西南北へ綺麗な円形を描く国土をしている。
しているけど、東側だけがちょっとへこんでいる。そこにマスカルウィン帝国の端っこがあるから。
王国がこういう円形をしている理由はちゃんとあるけど、国土を使った巨大な錬成陣とかじゃないので安心してほしい。賢者の石とか作られない。いやアイテムとしてあるけど。
とまぁそういう"とある理由"で王国は帝国に領土を譲ってほしいし、帝国は帝国でそんなこと知ったこっちゃないから一生戦争続けてる……んだけど。
「王国暗部は何してんだ。俺なんか探すよりまずこっちだろ」
「……フレース、ヴェルグ」
「そんで俺の顔も知ってると。はぁ、買うんじゃなかった」
買って後悔したのはお前が最速だ。
いやでも戦争はなー。できれば回避したいんだよなー。誰が死ぬかわからないってのがあるし、カラジェット君が王国側で来たらあんまりアレだし、ぶっちゃけラムナザール四世が強すぎて帝国負けないの知ってるし……。
あと今度こそ魔族侵攻のどでかいのとか来そうだし。
せめて三人目のフレースヴェルグ君が台頭してくるまで待ってくれねーかな。
「まず俺はヴェルグだ。フレースヴェルグじゃない。覚えろ。良いな」
「……はい」
ただ帝国が邪魔っつったって、王国もそうポンポンと戦争吹っ掛けてられないし、兵士が疲弊するし、周辺諸国の目もあるから、多分きっかけを作りたいんだろうなーってところにコレ。
第二王女。どう考えても火種だ。帝国に火を吹っ掛けるために奴隷に落とされたんじゃないかと勘繰るくらい火種。いやマジでスパイの可能性はある。ノズヴェルガーに売れば変な奴には渡らないだろうし。でもノズヴェルガー王国のやり方嫌いって言ってたような。仕事に好悪は挟まないタイプか?
いやなー。帝国が今の姿勢を崩さない限り、絶対戦争は起きるんだよ。
あー。うー。
ど、どうすっべこれ。何も言わず綺麗な身体にしてスヴェロニカに押し付けるか?? でも第二王女を奴隷にしたのが王国暗部だったらどうすんだよ。また奴隷になるだけだろ。
……真相はっきりさせてから、後腐れなく……じゃないと無理だな。あるいはカラジェット君に押し付け……いやいや、彼は善人過ぎるから多分背負い込んでしまう。そして見えるの破滅の未来。あんな善人集団にそんな未来を辿らせるワケにはいかん。
うん。
一旦放置で!
「で、そっちの」
「なんだ、人間」
「ノズヴェルガーから説明を受けたと思うけど、俺はお前を性奴隷として買った。だから今日の夜にでもお前を抱く。異論はないな」
「あったらやめるのか? 所有者の権限を持つお前が」
「やめる。嫌なら嫌と言え。すぐに解放する」
「……ふふ、良い。人間とまぐわうのも一興よ。永い年月の中で、一度も無かった体験だ。心行くまで楽しもう」
「隠す気ゼロかよ」
今は未だ従順で、どこか怯えた態度のカローライナと。
気味が悪いほど従順に従属の呪いを受けている、やんごとなきとかそういう話じゃない奴。
称号、『初代皇帝』、種族
「このマスカルウィン、しばしの性奴隷生活を楽しませてもらう」
マスカルウィン帝国建国者、マスカルウィン。
ラムナザール四世のご先祖様を、買いました。