アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ 作:姫鼠まりあ
入るぞー、とノックをしながら言いながら開ける、じゃあ断った意味とノックの意味はあったんかい、って行動をしながら部屋に入れば──ふつーにカローライナが朝食を摂っていた。先程のマスカルウィンとは比べ物にならないほどに背筋を伸ばし、丁寧な手つきで、整ったテーブルマナーで。
「……銀閃のカローライナの時からそうやって食ってたのか?」
「……」
突然フォークを握り締め、何の肉かわからないように調理されているそれに切っ先をぶっ刺して持ち上げ、口に運んでギチチチッと食いちぎり始めるカローライナ。
いや。いいよ。別に。
そっちでやれって強制したわけじゃないよ。ごめんじゃん余計なツッコミだったよごめんじゃん。
「まぁ食べやすい方で良いんだけどさ。……食いながらの会話は止めた方が良いか?」
「別に。……構いませ……構わねえ」
「いやだからいーって。楽な方で。丁寧な言葉遣いの方が楽ならそっちでやれって」
「……構いません。貴方の目は気にするほどの人目ではないでしょうし」
「おお毒だないきなりの」
「……泣いていましたよ。騎士団にいた、貴方を慕っていたすべての兵士たちが。最強の騎士団長フレースヴェルグの失踪に」
「銀糸の第二王女サマのお転婆に手を焼いてて、それがストレスで泣いてたって可能性は?」
「無いとは言いません。無理を言っていた自覚があります。それでも、彼らが貴方を想う心は本物だったと私は思います」
じゃあ。
まぁ、シーファだけじゃなく、そいつらのためにも魔族と魔素を切り離す研究はしないとかもな。本当に慕われていた方のフレースヴェルグ君を取り戻すために。
「それだけ話をしてくれるようになったのにはどんな心変わりが? 昨日はだんまりだったクセに」
「……黙っていることのメリットが、貴方と会話をして情報を聞き出すことのメリットを下回った。それだけです」
「流石のドライっぷりだ。俺と飲む酒はさぞかし美味いだろうな」
銀閃のカローライナ。
主人公が王国派に所属すると、急激に近寄ってくる先輩冒険者。その詰め寄り方は怪しさ満点であるものの、損得勘定でしか動かないドライな部分と、言葉に見合うだけの強さを見せつけられ、冒険者とはイグニスのような人たちだけではないのだ、ということを教えられる。
また彼女はメアリーやアッシュ、ラクニシェルなんかと同じく仲間にできるNPCであり、遊撃手として結構な強さを見せる。しかも魔法も使える。
ただカローライナを仲間にした時点から王国のイベントがドカッと増え、中にはなんというか、政治の裏側、とか悪人のあくどさ、みたいなイベントが挟まってくるので、そういうのが楽しめないプレイヤーはカローライナを仲間に入れなかったはずだ。特別なんかいいアイテムが手に入るキャラってわけでもないし。
そして、カローライナを仲間に入れても入れなくても、王国のイベントを進めて行くと彼女の正体が判明する。
……判明したところで別にパーティを抜けたりしないので、ラクニシェルより好感度は高かった覚えがある。やはり持ち逃げは悪。
「で、まぁ俺は面倒が嫌いでね。呪詛スキル:従属:行動制限:真実だけを口にしろ」
「……呪い」
「ノズヴェルガーから引き継いだだけのものだが、呪いが好きならもっと上のをかけてやってもいいぞ。屈服、眷属。どれも使えるからな」
「結構です。それで、聞きたいこととは?」
「なぜお前が奴隷になっていたのか、だ。話せ」
当然の質問をすれば、彼女はくしゃっと顔を歪める。
ゆがめて、けれど呪いが彼女を縛る。彼女が口を閉じるのを咎める。
「うら、ぎ……られ、ました」
「誰に、どういう経緯で」
「エリック……サンダーソンに。王国内に、蔓延っている……人身売買組織を、潰す名目で……潜入した先に、彼が」
「……エリック・サンダーソン。
「よくご存じで……」
うーん。
うーん。
そっかぁ。そのイベントもう始まってるんだぁ。
いや、いや。エリック・サンダーソンの国家転覆計画、というイベント自体はゲーム内にある。ただそれは主人公が王国派且つ王国騎士団に所属……所属枠を二つとも王国で使い切り、世界を巡らずに王国のイベントだけを進めて行った場合に起きる、クリア後イベントと呼ばれるものの一つ。
世界中を巡らなくてもトラーヴァの魔本に類する「絶対起こるイベント」は起きるし、魔王もラスボスも隠しボスも出る……んだけど、その後、つまりクリア後の世界で発生するイベントが他と大きく変わる。
ある意味で第二の隠しボスが出現するのだ。それがエリック・サンダーソン。
騎士団長となったフレースヴェルグ君は、けれどラスボスor隠しボスとの戦いで負傷し、その座を退くことになり……エリック・サンダーソンを後釜に任命する。まぁプレイヤーが選んだって言うか選ばされたっていうかなんだけど。
そこから始まる人身売買組織の暗躍とキナ臭くなっていく騎士団に関するイベント。それらは最終的にエリック・サンダーソンの国家転覆イベントの伏線になっていて、引退したはずの……つまりバッドステータスをいくらか負った状態の主人公を操ってエリック・サンダーソンを倒す展開になる。
が、まぁ弱い。
いくら永続状態異常やバッドステータスがたくさんついていたって、ドゥームス倒した後だと死ぬほど弱く感じる。ファントムは強いっていうかエグい系の敵だからまた違うにしても、四天王、魔王、ドゥームスまで倒してたらエリック・サンダーソンの動きのなんと……なんと人間臭いこと。
人間の出来る動きしかしてこないし、騎士団にいればよく見るスキルしか使ってこないから超弱い。あと仲間は引退してないのでやろうと思えば圧倒できる。
と、ここまで説明したけど、やっぱりだ。
やっぱり時系列がごちゃってる。魔族侵攻が一年前だから、全てのイベントが前倒しになっている……とかなのかな。魔族になったフレースヴェルグ君が元来の主人公で、王国派王国騎士団所属のイベント全部やって、そんで魔族になったから俺が現れて、俺が魔族の研究し出したから新たなる芽吹き君が現れて。
今ある情報だけで考えるならこれが一番妥当なルートだ。
「その人身売買組織からノズヴェルガーのところに売られたのか?」
「……いいえ。同じ……身売りにあっていた、リシ、と名乗る男性に……」
「リシだと?」
「はい……その男性が、その場で……私を買い取り……"信頼のできる者の所へ流す。あとは天運に祈れ"と……。同じ奴隷の身で、どのようにして私を買ったのかは……定かでは、ありませんが」
リシ。彼も仲間になるNPCの一人だ。
神官と最大主教を足して二で割った、みたいなスキルツリーの専用職業賢者である彼は、そのジョブが表す通り非常に思慮深い性格と、物事を見通すような台詞の多いキャラクターだった。
ただ彼が王国に関連するイベントに出て来た、という覚えはない。そもそもリシがいるのは魔族大陸だったはず。魔素の影響を受けない聖樹と呼ばれる小さな木の根元に住んでいる……まんまドルイドみたいなNPC。
主人公たちが魔族大陸に渡ったあとじゃないと絶対に仲間にできないNPCなだけあって、加入時レベルも相当。だから奴隷になるなんてほとんどないはずなんだけど。
いや、いや。
……アレか?
カローライナがエリック・サンダーソンの裏切りに遭うことを見越して、そこにいたのか?
そしてノズヴェルガーの元に届けるために……ってのは考えすぎか? 俺がリシを英雄視し過ぎてるか、これは。
「何故言いづらそうにしていた? エリック・サンダーソンと恋仲だったのか?」
「それは、あり得ません。……言いづらそうに見えていたのなら、それは勘違いです。私は……貴方が思っているより、損得勘定が早くないだけです。メリットとデメリットの計算と、その後起きる影響の計算は……一日をかけなければ行いきれません」
まだ従属の呪いだから鋼の精神で嘘を吐いている可能性もあるけど、これは多分本当。
カローライナはリシ程の頭の良さは有していない。でなければ王家の血筋であるその身で冒険者ごっこなんて危険を冒すはずがない。まぁ強さはあるんだけど、それでも万一はあるだろ。んであったらそれこそ国家転覆も企めるくらいのアレソレを引き起こせるだろう。
しかし、なんでエリック・サンダーソンはカローライナを人身売買組織に売り渡したんだ? 持ってた方が交渉カードとして役に立つだろ。
……知らなかったとか?
まっさかぁ。
「呪詛スキル:従属:行動制限解除。……まぁなんだ、一日考えてメリットが勝ったっていうのは、まさかとは思うがその事情を話せば俺がエリック・サンダーソンの討伐に協力してくれるかもしれないと考えたから……とかじゃないよな」
「その通りですが……まさか」
「ああ、フツーに断る」
「……なぜ、ですか。なぜですか。なぜですか!? 故国に愛はないのですか!? あんなに……あんなに慕われていて、ご自身もあれほどシアルル王国を愛していたというのに! 貴方が民に向けていた、心の底から平和を慈しむようなあの顔は、嘘だったとでもいうのですか!?」
一人目のフレースヴェルグ君、そんなことしてたんだ。
……そうか、そういう性格ならキーロやらスヴェロニカやらの態度も頷ける。あと俺を知ってるクサい奴らが俺の性格知った時の何とも言えない空気も。
そんな聖人じゃねーって。……あれでもスヴェロニカとファントムは俺の事適当人間だって知ってたような。
アレか?
良い適当人間と、悪い適当人間が、変に重なっちゃってたか?
言うまでもなく悪い適当人間が俺である。
「俺はもう一般帝国民だ。王国の騎士団長じゃない」
「……一年前の戦いで、最後の最後まで戦い続けた貴方の身に……何があったのですか」
おっとこれは勘違いされてますね。
それが原因で変わっちゃったんだ系ですね。それが原因で変わっちゃったっぽいのは本当なんだけど。
「まぁ色々あったんだよ。……で、だ。カローライナ。俺としてはお前が火種に見えて仕方がない。帝国と王国との戦争の火種に」
「……はい。それについては、自分でもわかっています。私がここで奴隷になっているという事実自体が、意味の無い戦火を生む結果になるだろうということは」
「だから俺は穏便に後腐れなくお前を王国に返したい。俺は王国がなんで帝国に戦争吹っ掛けてるかも知ってるし、王国の地下にあるものについても知ってる。だから戦争が起きた場合どっちにもつかない。どっちの言い分も頷けるからだ。で、そんな俺が戦争のきっかけを作るってのはちゃんちゃらおかしい話だろ? 参加もしないくせに」
これでガッツリ帝国側につく、とかだったらまぁいいかもしんないけどさ。
戦争の火蓋落としておいて「勝手にやっててくれ」はダメだろ。流石に。
「王国暗部の存在は知っているな?」
「はい」
「そこにスヴェロニカという、人心はわからないが実力的に申し分ない……普通にエリック・サンダーソン程度倒せるくらいの奴がいる」
「……そのような方であれば、暗部にいるより騎士になった方が良いのではないでしょうか」
「俺もそう思ってる。まぁアイツの所属はどうでもいいんだけど、まず第一の選択肢として、お前をスヴェロニカに預ける、というのがある」
ようやく食べ終わったらしいカローライナは、食器を置いて、ふむ、と考え始める。
損得勘定をしているんだろうけど、それを待ってやるほど気が長くないヴェルグ君なので気にせず先を口にする。
「今回の件が完全なエリック・サンダーソンの裏切り……無論騎士団の腐敗はあるんだろうけど、王国暗部の関わっていない話であれば、それですべてが解決する」
「騎士団の、腐敗」
「そこを丁寧に説明するつもりはない。だがこの選択肢には穴が二つ存在する。一つは"王国暗部が関わっていなければ"という前提条件。関わっていたら同じ轍を踏むだけだ。そしてもう一つは」
「私が餌である可能性……ですね」
「おお、なんだ、やっぱり頭の回転早いじゃないか」
まぁこっちも王国暗部が関わっていなければ、に通じるんだけど。
つまり王国暗部が王国を裏切ってそういう行為をしている場合と、王国暗部がエリック・サンダーソン含む王国の膿を出すためにこういう行為をしている場合とで、意味合いが少し変わる。
だからといって第二王女を人身売買組織に、ってのは乱暴すぎるけど、もしそうだった場合、リシがそこにいたのは予想外だろうし、もしかしたらカローライナを買う奴まで王国暗部の手が伸びていたかもしれない。こちらは「リシがどこまで予想できていたか」で可能性のパーセンテージが変わってくる。
いやだっておかしいんだよな。エリック・サンダーソンは別に謀略家とかじゃない。彼の動向を暗部がチェックしていないわけがないし、同じくカローライナも見張っているはず。それをこんな簡単に奴隷に~、なんてのは……スヴェロニカへの信頼度的にあり得ない。
今回のはいろんなのが噛み合っちゃった結果、とんでもない奴に買われた、ってのが正しい、気がする。
「どちらにせよ、王国暗部の潔白が証明されない限り、この手に頼るのは危険、ですね」
「そういうことだ。お前の身の危険か、王国の危険か。どちらもお前にとっては嫌な結果になる」
「ですが……そうなると、手詰まりです。王国のギルドを頼る、という手ももちろんありますが、そこまでの責任を彼らに押し付けるのは酷が過ぎます」
「そういう責任感はあるのになんで冒険者ごっこなんかやってたんだお前」
「……」
「ああいいよ、今は呪いかけてないからな。だんまりでもいい。んで次の案だ」
次の案。それは。
「姿も名も声も変えて、帝国人として生きる。ぶっちゃけこれが一番丸い。まぁ帝国人じゃなくて旅人とかでもいいけど」
「……故国を、捨てろ、と」
「捨てろとは言ってない。別に帝国人やりながら王国を偲んだっていい。お前の中にどんな差別意識が……帝国人への偏見があるかは知らないが、帝国と王国の違いは酒場の賑わい程度のものだ。あと奴隷制度。ほとぼりが冷めるまでこの地に根を下ろし、エリック・サンダーソンが討たれたら国へ戻る、でも良いだろう」
「──彼の裏切りが、国をも揺るがす程となったら、どうするのですか」
「王国という国が潰え、しかしてエリック・サンダーソン如きにはあの地下に眠るものを御しきれず、諸共破滅する。それだけだな」
「民は、どうなるというのですか。何も知らぬ無辜の民は」
「巻き込まれて死ぬか、逃げるか。立ち上がる者もいるのだろうが、流石の後釜団長もロクに鍛えていない有象無象に負ける程弱くはないだろう」
あとはギルドがどう出るか、か。
イグニスは義憤で立ち上がりそうだし、どっかにいる新たなる芽吹き君もなんやかんやで立ち上がりそうな気はする。
カラジェット君はエリック・サンダーソンより強いはずなのでまぁそこで阻止されて終わりなんじゃね、感はある。王家がギルドからの援助を断ったらまた話が変わってくるんだけど。
ここもなー。微妙なんだよな。
ギルドと国って別に手を取り合ってるわけじゃないから、ギルドの発言力が大きくなりすぎることを危惧してギルド及び冒険者を冷遇する、みたいな国も無いわけじゃない。
王国も帝国も今のところそういう面は見せていないけれど、困窮に瀕したらどんな行動を取るかわからないのが人間だ。国も同じだろう。
「……もう一つ、あります。選択肢は」
「ほう?」
「私が貴方を説得する、という道です。別にもう……王国に戻ってほしいとは言いません。ですが、力を貸してほしいと……帝国人の貴方に依頼をすることは、おかしくないでしょう」
「断る」
「断りたくなくなる魅力を、報酬を、こちらが提示できればいい。違いますか?」
……。
まぁ。
そうだね。俺は王国で起きるアレソレがダルくて帝国にいるけど、それが無きゃ別に……って感じは、確かにそうかもしれない。気分次第なトコあるからなヴェルグ君は。
「初めに言っておくが、今のお前は俺の奴隷だ。だが家事炊事や戦闘、そして性処理をさせる奴隷としては購入していない。何か役割を与えること自体が火種になりかねないからだ」
「……」
「その上でこれを承知してほしい。俺は戦争を起こしたくない。戦争に起こってほしくない。戦争が嫌だ。これを理解した上で俺を動かせる何かを提示できたら──そうだな、一晩くらいは王国へ旅行へ行くことも考えよう」
「十分です。そして、家事炊事、及び戦闘も私はできるので」
「いいや、やらなくていい。お前は考えることに集中しろ。誰かから知恵を貰ってもいい。ああ身分とかは隠せよ?」
ただし。
「ただし、だ。期限を決める。……ひと月でどうだ」
「そこまでに貴方を説得できなかった場合は?」
「俺はお前を遠い異国の地に連れて行く。資金は援助してやるから、そこで暮らせ。それで、少なくとも王国と帝国の戦争の火種にはならなくなるだろう」
「わかりました。……最大限の譲歩、感謝いたします」
「後は変装だが……まぁ銀閃のカローライナのままだと気付かれかねないから、ウチのアサシン二人に色々聞いてくれ。いいか、帝国で過ごす間は絶対バレるなよ。んでバレたら口封じしろ。どんな手を使ってでも」
「……無暗に人を殺すことはありません」
「あれ、お前使えるだろ。王家の専用スキルの、なんだっけ、月の光、みたいなスキル」
目を見開くカローライナ。
……あ、そうか。これ秘中の秘だわ。
「どこで、それを」
「俺にはたくさんの隠し事がある。それだけだ」
なんだっけな。月の光がうんたらこうたら! みたいな長ったらしい名前のスキルで、特定条件下のもとなら記憶を封じる、とかいうのができるんだよな。
なんだっけなー名前。すげー厨二だったのは覚えてんだけど。
……そういやガーリーの謎スキルもグノーシスの召喚妖精も記憶だの知識だのをどうこうする系だっけ。
この辺、なんか……あるのか?
「用はそれだけだ。食事を邪魔して悪かったな」
「いえ……こちらこそ貴重な時間を割いていただき、ありがとうございました」
「奴隷が何言ってんだか。……いや奴隷の言葉としては妥当か?」
王国民から見る奴隷ってどんな扱いなんだろうな。
なんか無駄に酷く虐げられてそう。ソンナコトナイヨー。シナイヨー。
ハルフィーポーション。
先述した通り様々な効能のポーションを作っているここには、これまた様々な客が来る。
「こんちゃーっと、うわでっけぇ兄ちゃんだ。あ、ハルフィーさん! 接着ポーションくださーい!」
「はいよーっと……ああクイン君。もしかして、またいつもの?」
「そそ。とーちゃんが勢い余って看板割っちゃって。これで何百回目だって家族全員大笑いだよ。かーちゃんはカンカンだったけど」
「アルベルトさんは昔は剛力無双なんて呼ばれてたのにね。はい、接着ポーション」
「ありがと。銅貨一枚で良いんだよね?」
「そうよ~、誰かさんのおかげで仕入れがしやすくなって値下げしたからね~」
「ありがとー誰かさん! じゃ、また来るな!」
「つまりまた壊すってことね」
みたいな子供とか。
「ハルフィーちゃん、ハルフィーちゃん。洗髪ポーション、くださいな」
「あらミルトお婆ちゃん! 一人でここに来たの? ゲンノさんは?」
「あ奴は今ネジアの婆さんと釣り行っとるよ」
「二人とも……ホント元気なんだから。ああ、はい、洗髪ポーション」
「ありがとうねえ、いつも助かってるよ」
みたいなお婆さんとか。
「ハルフィー殿! ハルフィー殿! 解熱ポーションを頼む!」
「解熱ポーション? あるけど……アンタその症状、解熱なんかしたら逆に苦しくなるよ。ハッカダケでしょ、食べたの」
「おお、よくわかったな!」
「森で道に迷った冒険者はなーぜか絶対あの魔物食べるのよねぇ。ほら、下剤。こっちでお腹の中のキノコ全部出したらよくなるから、行ってきなさい」
「そうか! すまぬ、恩に着る! ああ、診察代込みで銀貨一枚を受け取ってくれ!」
「はいはい、次来た時にお釣り渡すから、早くトイレいってきて」
「では!」
みたいな暑苦しい奴とか。
色々、来る。
「医療の知識もあるのか」
「そんな大したものじゃないよ。経験則でやってるだけだから、もしかしたら見当違いのこと言ってるって可能性もある。あんまり責任は取れないから、良くないとは思うんだけど……解熱ポーションじゃないことだけはわかったから、ああして勧めただけ」
「状態異常回復ポーションは売られてないようだが」
「あんな高いの店頭に置かないって。あるにはあるけど、そんな"誰が診ても見当もつかない症状"自体が少ないからね。基本はピンポイントな効果を有するポーションを売るよ」
確かに。
状態異常全部治します、は大雑把か。
「そういえば少し前にメアリーさんが買いに来てたけど、宣伝でもしてくれたの?」
「ああ、消臭ポーションはかなり便利だからな。ウチの連中は何かと臭いにまみれやすいから、重宝するだろう」
「そういうことなら、今作ってるポーションに防臭ポーションもあるよ。噴射すると一週間くらい効果が持続する……予定。ちょっと材料が足りないから悩み中なんだけどね」
「仕入れ先が無いのか」
「そそ。少し前までは売ってるところもあったんだけど、結婚して子供出来たのを境に販売やめちゃってねー。子供が育ったら再開するとは言ってくれたんだけど、まだまだ先のことだし、でもそこを無理強いするわけにもいかないし」
そりゃ。
難儀だな。……他の仕入れ先を探すにしても、じゃあそこが販売再開した時に「もう要らない」になっていると色々ありそうだし。
でも結婚はなー、仕方ないよなー。
「それはそこでしか見つからないのか?」
「……あー、まぁ、鬼の国では一年を通して売られてるって話だけど、流石にそこまで行かせるのはねぇ」
おっと。
そう繋がりますか。
「……確約はできないが、なんとかなるかもしれない。少しウチの連中と相談して……」
いや。
別にツバナ俺の奴隷じゃないから関係なくね?
俺が鬼の国へいく分にはどうでもよくね?
「いいや、明日にでも出立しよう。その材料の名前や見た目を詳細に書いてもらえると助かる」
「……そりゃいいけど、ヴェルグさんは魔物が」
「絵は大丈夫だ」
流石に絵にはアダルトMOD適用されないからね。
防臭ポーション。普通に色々役立ちそうだし、鬼の国との交易ルートが確立できれば、もっといろんなポーションを開発してくれそうだし。
行くかぁ、鬼の国!