※この作品はR-18です。

アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ   作:姫鼠まりあ

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動き出す思惑(G度無し)

 鬼の国へ行くとなって、とりあえずそれを家で話したところ──意外や意外、ツバナの反応は薄目だった。

 

「まぁ、良いのではないか? 新たな体制がどうなっているかはわからんが、そもそも私は鬼の国事情など知らんのじゃし。箱入りじゃからの。……なんじゃその目は。私がワーギャー言うとでも思うとったのか?」

「いやまぁ、ついていきたいとか言うかと思ったのはそう」

「故郷への想いも供養祭で供養したわ。主……じゃない、ヴェルグは出ておらんかったから知らんじゃろうがな、あの祭りは故人だけでなく無念や想念も喜びに焚べる……それこそ鬼の国には無い発想の祭りで」

「ああうん一生出ないからいいんだけどさ」

「お主はもう少し歴史や文化といったものへの態度を改めた方が良い」

 

 そう言われて思い出したけど、ツバナって歴史的価値をめちゃくちゃ大事にするんだよな。

 だからとある場所でのみ取り扱われている【古銭】というアイテムを見せた時とか反応凄かった。これそこでしか取引されてない限定アイテムの取引終わったら無用の長物になるクセに破棄不可とかいう倉庫肥やしなんだけどな。

 他にも歴史的建造物……遺跡だのなんだのにも興味を示していたし、海底遺跡も暇があれば出土品を調べたいとか色々言ってたっけな。

 

 シーファに頼んで博物館でも連れて行ってもらえばいいのに。存在知らんのかな帝国博物館。

 

「一応聞いておくが、殺しちゃならんような友達とかいるか?」

「……友であろうが知り合いであろうがそうでない国民であろうが殺してはならん、と言いたいところじゃが……別に、もうおらんじゃろ。私と仲の良かった者は、良くて打ち首、悪くて拷問の後晒し刑……それが関の山じゃ」

「仮定として、もしそうじゃなかったとしたら? 何で判断すればいい?」

「そうじゃなかったとしたら、とは?」

「もし」

 

 もし、鬼の国で──ツバナの派閥が生き残っていたとしたら、だ。

 

 問えば。

 

「無い」

「だから仮定の話だよ。気付いてんだろ、自分の称号」

「……。……──そうじゃな」

 

 ツバナの称号は未だに『鬼の国の女王』のまま。『故国を追われた女王』とか『元女王』とかになってんなら納得はできるけど、この称号が変わらないってことは──まだそうだと思っている奴らが一定数以上要るってことだ。

 

「これを持っていけ」

 

 あくまで自分は行かないけれど、と。

 白い布に描かれた簡素な模様をくれた。

【挿絵表示】

 

 

「これは?」

「一応、リュウゼツ家の……それも私の家側の家紋じゃ。リュウゼツ家自体にも色々と派閥があるからの、これと少しでも違うものを身に着けていたり背負っていたりしたら、それらは敵じゃと思えばよい」

「これを包含した紋様の場合は?」

「包含? それはわからんが」

 

 要は隠れキリシタンみたいな使い方してる可能性はあるんじゃないかって話ね。

 わからんなら可能性はアリ、と。

 

 いやさ、流石の俺もツバナを追放した奴らと取引するってのがどんだけ悪手かはわかるってもので。

 ゲーム本編になかった鬼の国のお家騒動。つまりあんまりド派手にならないとか、主人公の介入できる余地のなかった出来事である可能性が高い。そういうじめじめした搦め手だのなんだのは好かん。単純ステータスゴリ押しマンの分野じゃない。

 

 できるだけ気持ちいい人間……単純善人と取引を確立させたいものだ。単純善人か単純悪人しかいないはずだから見つけやすいとは思うんだけどなー

 

「まぁ、油断をするな、などの言葉をお主に吐いても仕方ないじゃろ。旅行気分で楽しんでこい」

「バリバリそのつもり」

「……じゃろうな」

 

 そんな感じで。

 

 

 

 

 さて、棘の森を超えたり海を渡ったりせずに転移で到着しますは鬼の国。

 何度か述べたように鬼の国は大陸丸々鬼の国だ。だからというわけじゃないけど、関所というものが存在しない。

 こういう砂浜周りに見張りがいることもないし、櫓が立っているとかもない。侵入し放題の国であると言える。なんでそんな作りになっているかと言えば──。

 

「おお、流石は鬼の国。魔物のレベルが高いな」

「天然の壁って奴さな。加えて他の大陸じゃ見ない魔物も多いから、他国から侵入しようとすると簡単に全滅すると」

 

 今回のお供はマスカルウィン。戦闘兼性奴隷であるこいつを置いていく意味ないし、俺が魔物殺せないのとか関係なくコイツ戦えるからちゃんとありがたいし。

 あと世界について色々知ってるから気兼ねなく話せるのもデカいんだよな。

 

「それで、目的の材料は植物魔物だったか」

「正確には自らの痕跡を消すような……って言えばわかるか?」

「シチサイヌか?」

「おお、やっぱ知ってんのか」

 

 シチサイヌ。

 犬っぽい名前だけど全然犬じゃない魔物で、当然のように食人植物。またその生態の一番の特性として挙げられるのが、死にかけるとまるでタンポポのように種子を飛ばす。それが全身……考察班によれば「そもそもが種子の群体、クダクラゲみたいなもん」とされていた。

 それが本当かどうかはわからないけど、あんなメタスラみたいな魔物を恒久的に販売できる農家がいるのが驚きである。あと帝国にも同じ種類で違う名前の奴がいたらしい。だから今までは取引出来てたって奴ね。

 

「だから別に俺達がその魔物を捕まえるなり狩るなりする必要はない。取り扱ってる業者なり農家なりを見つけて、ラインを構築するのだけが仕事だ」

「つまらんな」

「ハルフィーさんは俺を気遣ってくれてんの。まぁ元からそういう契約だしな」

 

 なんで街中に行く必要もあんまりない。観光とは言ったけどゲームの時に散々見て回ってるし、どっちかというとゲーム本編で用の無かった農村を見たい欲はある。あるのと同時エグそうだから嫌だな、という気持ちもある。

 ゲームの時……というかアダルトMODが入ってない時は「魔物なのか異種族なのかわからない」って部分に気を遣う必要があったんだけど、アダルトMOD入ってると魔物は全部全裸の美女美少女になるのでその辺の配慮も要らない。異種族は服着てるから。

 ああだから、擬態植物の魔物もいるはずだけど、それも全裸かどうかでわかる。

 

「人間。見られているのには気付いているか?」

「いや全然。方角とかわかるか?」

「今の進行方向から見て十一時の方向だ。距離は二千と四十ほど。これは……スキルではなく能力の類だな。遠見か千里眼か、あるいは俯瞰系だ」

「アサシンスキル:霧隠れ。アサシンスキル:ミラードール」

 

 霧隠れを使うと同時にミラードールを出す。 

 すると、いきなり俺達が走り出したように見えるだろう。……とはいえ完全ソロゲーなこのゲームはPvPなんて当然存在しないので、こういうパッと思いついただけの工夫が通用するかどうかはわからない。

 見られているってなんだ。何の目的で。あとなんで気付いた。どういうスキルだ。

 

「目は逸れたか?」

「いや。成程、つまり俯瞰か」

「と思われる。俯瞰なら……まぁ天候系が良いんだが」

「ドラゴンスキル:暗雲」

「……マジ?」

 

 曇る。

 空が……これはいつかのフロストドラゴン達が使っていた奴だ。

 

「天賦である能力やアイテムボックスは無理だったがな、努力で覚えられるものは全て覚えた」

「努力でって……ドラゴンだのなんだのは種族専用スキルだろ」

「そのための補繊毛だ。食らって体内に保存し、自らの細胞と癒合させて一時的に己をその種族であると世界に誤認させる。時間は限られているが、世界が騙されている間にその種族が覚え得るスキルを全て覚えればいい」

「……」

 

 言ってることヤバ。

 

「ああ、魔族のスキルは期待してくれるな。流石に無理だった」

「無理であってくれてよかったよ。……試したのか?」

「無論だ。だが、補繊毛にどれほどの魔素耐性をつけようとも、流石に体内からの侵蝕には耐えられん。止む無く食道の一部ごと切り離す結果となった」

 

 言ってること怖。

 ああでも、それが本当なら聖石プレゼンの時に研究者の誰かが言っていた、魔化進行を極限まで遅らせれば皮膚を少しそぎ落とすだけで魔化を防げる、というのは実現するかもしれないな。

 

「俯瞰も消えたな。よし、行くぞ」

「消えたのは良いが、なんで見てきてたのかがわからんのが面倒だな」

「お前が精霊力を隠していないからではないか? 鬼の国だ、精霊力を見得る者は多い」

「どうやって隠せばいいんだよ」

「なんだ、故意に見せつけているわけではないのか。……まぁ、それも良いだろう。いつか身に着ける時まで垂れ流しにしておけ」

 

 精霊力。

 これゲームだとフレーバーテキストだったんだよな。精霊と相対した時とか精霊王と対峙した時とか、あとこういう見抜ける奴が見ると、フレースヴェルグ君の精霊力って凄まじいらしいんだけど、実際にどう凄まじいかはプレイヤー視点なんにもわからないまま終わる。

 俺が三周目だからすごいとかじゃなくて、フレースヴェルグ君が凄いらしい。だから一人目も俺も三人目も凄いはず。

 

 しかしそれで所在がバレるのはダルい……けど、まぁいいか。別にこそこそしなきゃいけないことはないわけだし。

 

「この暗雲の効果時間は?」

「次の天気が来るまで、だ」

「……」

 

 それちょっとメタいけど、そういう法則だって知ってるってことか。

 天気システムもなー。結構邪魔くさいんだよな。晴れ曇り雨雪だけじゃないからなこの世界の天気。

 

「農家への見当などはついているのか?」

「いや全く。正直どっちにしようか迷ってる。町の中心部へ行ってソレが売られてる店見つけて産地聞き出すか、地道に農村駆け巡って探すか」

「後者だろうな。お前は魔物の素材を直視できないのだろう?」

「俺が目をつむったままでお前が、でもいい」

「ほう? それでいいならそれにしよう。鬼の国へ来たのは二百年ぶりくらいだからな、食に興味がある」

「食ばっかだよなお前」

「うむ、食文化と言うのは良いものだ。常に刷新される美味美食は世界から飽きを消し去る」

 

 まぁ、俺も……アダルトMOD入ってなかったらそっちに行ってたかもしれない。

 異世界のご飯。たとえ見た目がグロい魔物でも、流石に調理されきってたら食欲の湧く見た目になってそうなものだし。ドラゴンの肉とかやっぱ憧れるよな。今となっては一切食う気しない……いや食べたわそういえばアレ。

 ……思い出さんとこ。

 

「ならば、そうだな。虚無僧笠でも買うか。それならばお前が目を瞑って歩いている理由にもなる。何故目を瞑っているのかと、毎度毎度聞かれるのは面倒だろう?」

「その配慮はありがたいんだがな……」

「うん?」

 

 帝国でもね、仮面被ったらええやん! の発想になったことはあるよ俺も。

 でもね。

 

 

 

 

「なるほど。確かにある程度の耐久性を持たせるためには単なる植物より魔物の方が適している。ふふ、このようなものを買う機会に恵まれなかった故だ、許せ」

「最初から言ってる通り、配慮はありがたいから許すも何もだ。俺としては案の定だしな」

 

 そう──編み笠の類に魔物素材が使われていることは、ゲームの時から知っていたこと。仮面もそう。鉱石だと重すぎるし、魔物じゃない植物だと弱すぎるらしい。仮面や帽子の類はたとえ子供用のものであっても──むしろ子供用のものは尚更──安全面を考慮した魔物素材を使うとかなんとか。

 唯一の例外が、それこそフロストドラゴンと戦った時にいたフクロウ面の集団だ。彼らの面はちゃんとフクロウのそれに見えたし、人間の手や指、骨が混ざっている気配も無かった。アレが欲しい。

 

 ……んだけど、あの日以来彼らとは出会えていない。「俺に近づくと怪我するZE」とか言ったせいで律儀にそれを守ってくれているんだと思う。本当にごめんなんだけどもう一回だけ出て来てくれん?

 

「しかし、やはり良いな、"文化"は」

「ツバナもそれ言ってたけど、何がいいのやら」

「スキルで起こる結果というのは良くも悪くも一定の品質が保たれる。スミススキルなどが良い例だ。だが、こういった文化を形成する……日常の中にしかない、スキルにもならない技能の集合体。それらが起こす"文化"は多種多様な色を見せる。出店で売られている物の品質。建造物の品質。街並みの品質やデザイン。これらはスキルの一言では片付けられん、努力の結晶だ」

「文化というか、ヒトの営みが好きなのか」

「文明が好きだという程達観しているつもりはない。その視点は上から過ぎる。あくまでも同じ人間の目線で、それでありながら外側からその緩やかなる進化を楽しみたいという話だ」

 

 らしい。

 博物館とか水族館とか、生態を見て楽しむ、歴史を考えて楽しむ、ってことをしてこなかった人生だったからなぁ。ゲームの考察はほら、ゲーム開発者の思考が見えるから楽しいんだけど、生態とか歴史って偶然が絡みまくるじゃん。適応進化だけじゃない変異や出来事が多いじゃん。

 そういう……なんだろうな、「しっかりしていないものをしっかり解こうとすること」が苦手だった節はある。「作者の人そこまで考えてないよ」なんて風潮もあったけれど、このゲームはちゃんと考えられていることが資料館等で裏取りできていたから、余計に考えるのが楽しかった。

 公式ホームページのコラムとかでも重要な話出たりしてたからなぁ。懐かしい。

 

「おお、良い物がある。どうだこれは。魔物の素材を使ってはいるが、どうせ目を開けないんだ。人間、被ってみろ」

「咄嗟に目を開けた時にエグかったりしないか」

「なんのための戦闘奴隷だ。咄嗟の時など訪れんよ」

 

 ……確かに。

 マスカルウィンは出店だかなんだかよくわからんとこでよくわからんものを買い、俺に渡してくる。

 どうやら、笠……類、かな? ちなみにアダルトMOD君はコリジョン変えないことからわかるように手触りなんかの質感も変えてこないので、見なければ割と普通に使えたりする。じゃあもう目を瞑って生活すればってそれは極論。

 

 とりあえず被る。一応インベントリから自身の装備アイテムを確認。

 大鷲笠……あーなんか覚えあるな。鬼の国のイベントで出た記憶あるぞ。ただ珍しい効果ついてなかった……だよね、うん。ついてない。

 ただの帽子装備だ。元の帽子もそんな奇抜な見た目じゃなかったと思うんだけど、なんでこれなんだ?

 

「首長の店主。これを作ったのは子供だろう?」

「あ……もしかして、何か不備がありましたか?」

「いや、良く出来ている。これでも目利きには自信がある。だから仕事を終えたらその子供を褒めておくと良い。網目の一つ一つが丁寧で、流れ作業になっていない……将来有望だ」

「そうですか? そりゃ、うちのせがれも喜びますよ。ただまだ見習いを脱したばかりでしてね、まだまだ詰めの甘い部分も多い」

「言っただろう、目利きには自信がある。これの製作者はいずれこの店を背負う程の職人になるぞ」

「嬉しい言葉をかけてくださいますね、美人さん。さっきのお勘定、少しだけまけましょうか?」

「いや。良い物には適した代価を払うべきだ。首長の店主、あまり息子を叱ってやるな。本当に良い出来だからな」

 

 マスカルウィン帝国初代皇帝マスカルウィン。

 その美しい見た目に反して堅苦しいというか少しばかり尊大な口調の非人間。ただ、言動はとても優しいというか、技術を有する者に対しては激甘だ。マスカルウィン帝国がラムナザール四世の代になっても独裁政権で実力主義な理由がわかるというかなんというか。

 出来の良いもの、美味しいもの、快楽のともなうもの。

 そういうのをひっくるめて"文化"と言い、それを愛する。総合すると非人間……というよりは俗人離れ、みたいになんのかね。

 

「ルウィン。その辺にしておけ。すまないな、店主。コイツは気に入ったものにたいしてはアプローチが激しい。迷惑であったのなら謝罪する」

「いやいや、ありがたいよ、そう言ってくれるのは。今日帰ったら息子にありのままを聞かせてやるさ。そうすりゃアイツもまたやる気を出してくれそうだし」

「そうか。……では、失礼する。行くぞ、ルウィン」

 

 まだはしゃいでいるマスカルウィンの首根を引っ掴んでその場を去る。

 

 俺たちの目当てはあくまで取引先の発見であって観光は二の次なんだから、あんま時間食われても困るんだよな。

 

「いや何、遊びのためだけにああも懐へ潜りこんだわけではないぞ?」

「知ってるよ。家紋だろ?」

「ああ。無関係そうだった」

「あくまでお家騒動の中心は上層部関係者だけだろうしな。こういう市井の奴らのなかには、首の挿げ代わり自体を知らない奴もいるんだろう」

「そう楽観していないから、わざわざ識別方法を聞き出したのだろう?」

「……さぁな。出来れば関係者以外と手を組みたいとは思っているよ」

 

 どこまでツバナを追いやった勢力の手が伸びているのか。

 ツバナ本人は割り切っただのなんだの言ってたけど、そういう問題じゃないのだ。

 

 彼女が未だに鬼の国の女王であるということは、いずれ担ぎ上げられ、クーデターの旗頭にされるって可能性もゼロじゃない。

 そうなったときに現政権……ツバナを追いやった側と手を組んでいると、そのクーデターの余波で取引中止になるかもしれない。

 

 だからできれば今もツバナ側、あるいはまったく関係のない奴と手を組みたい。

 

「ん……敵だな」

「ほう? 先程見られている事には気付かなかった割に、妙な感知能力を持っているようだな、人間」

「後方、七時の方向に三人、四時の方向に一人。生け捕りは可能か?」

「無論だ。次の角を左に曲がった瞬間にことを起こす。人間、お前はただ待っているだけでいい」

 

 ミニマップも生来の能力みたいなものか、確かに。

 天候関係なしの広範囲俯瞰視点且つ敵対してるかどうかがわかる脳内地図。

 ……フツーにエグいよねミニマップさん。

 

 角を曲がる。声に出さずになんらかのスキルを使ったマスカルウィンが消え、一瞬で左の三人と右の一人を落とし、こちらへ持ってくる。

 えーと、神速と壁走りと跳躍……の横移動ver.に、風を起こす魔法のなんかっぽい動きだな。一個一個のスキルの発生もだけど、使い方と練度が桁違いだ。多分俺とガチで戦闘したら千日手になると思う。俺は当てらんなくて、マスカルウィンは俺に攻撃が通らない。

 速度でどれほどこっちが勝っていようと関係のない対策をしてくると思う。ノックバック系のスキルとか使って。

 

「ほうら、持って来たぞ」

「助かる。呪詛スキル:眷属」

 

 尋問とか面倒なので眷属の呪いをかけて吐かせる。ハルフィーさんの自白剤は彼女が製造を自粛してしまったので、試供品として提出された奴しかもう現存してないんだよね。残数二本。流石に使えない。

 

「呪詛スキル:眷属:行動制限:偽りを禁ずる。呪詛スキル:眷属:行動制限:自害を禁ずる」

「……っ、呪い師か」

「お前達はどこの派閥の人間で、何の目的があって俺達を尾行してきた? その敵対心はなんだ?」

「派閥は無い。雇われだ。目的は情報の奪取。対象が対象でないとわかった場合、殺してもいいという許可が出ていた」

「雇ったのは誰だ」

「鬼族の女だ。名前も顔も知らん」

「どこで依頼を受けた?」

「華の都の最も高い塔だ」

 

 お、ラッキー。

 ゲームにも出て来た地名だ。……いやラッキーでもなんでもないんだけど。

 

「他に俺達に付いて知っていることを話せ」

「外敵。鬼の国を脅かすもの。幻影の遣い」

「幻影の遣い?」

「意味は知らん。だが女は酷く怯えていた。それだけだ」

 

 ……その代表者らしい男以外はだんまり。

 呪詛スキルを受けてこれだ。恐らくマジで知らない……情報が渡されていない、雇われの部下とか手足とかそのあたり。

 

「報酬は?」

「端金だ。異国の人間を殺すことくらいわけないと高を括った俺達が悪い」

「そうか。呪詛スキル:眷属:行動操作:自分たちに依頼を課した者を殺しに行け」

「ッ……」

 

 マスカルウィンが巻いたのだろう、やけに硬く結ばれている縄を切って四人を解放すれば、一直線にある方向……やっぱり華の都のある方へ向かっていく。

 

「追うのか? 取引はどうする」

「追うワケ。アイツらが無事に依頼主を殺せたら良し。無理だったら仕方なし。奴隷のバイタルはこっちで見えるからな。失敗したかしてないかもわかる。これから襲ってくる奴は全部この対応して、俺達は取引先の捜索に勤しめばいい」

「殺しに成功した場合はどうする?」

「俺達が鬼の国を出るまでにあの四人が死んでなかったら眷属の呪いを解除するよ。邪魔だしな」

「……成程、そういう価値観か」

 

 まるで何かを収集するように。

 マスカルウィンはそれっきり、この件に触れなくなった。

 

 人間観察されてますねーこれは。

 

 

 

 さて、商店街らしき場所をふらふら回っていると、マスカルウィンが目的のものを見つけてくれた。

 シチサイヌの浮き灯篭、という工芸品で、その名の通り一定期間中空に浮く灯篭らしい。灯りにも目印にも足場にも使えるこの浮き灯篭は、都会へ行けば行くほど多く浮いているのだとか。

 浮いている原理は勿論シチサイヌの種子。飛んで行こうとする種子を下に、その場に留まろうとする別な魔物の素材を上につけることで中間の灯篭を固定するらしい。

 

 まーよくわからんが、産地も聞き出せた。マスカルウィンが。

 

 有能過ぎる。

 

 ただ懸念点は──。

 

「家紋が、少しあのマークに似ていたな」

「隠れツバナ派か、逆にそれを飲み込んでやったぞ、という意思の表れか」

「敵意は感じなかったが……」

 

 そうなんだよな。わかんないんだよな。

 新しい家紋の中にリュウゼツ家ツバナ派の家紋を隠してるタイプなのか、俺達はリュウゼツ家ツバナ派を飲み込んでやったぜ! って意思表示なのか、俺達はリュウゼツ家ツバナ派を倒したぜ! って討伐の証なのか。

 だからしょーみここの産地との取引はどうなんだろうな、と思っている。なんにせよ関係者の匂いがするから。

 

「ドラゴンスキル:暗雲」

「ん、またか?」

「ああ。先程の刺客が向かった方向を考えるに、こちらを監視せんとしているものと刺客を放った者は同一だろうな」

「そりゃまた面倒な事で。正確な座標がわかるなら一瞬転移して殺して、でもいいけど、そこまでする必要があるかって言われると微妙なんだよな」

「命が狙われているのにか?」

「別に、余所者を怖がる気持ちは当然だし、俺の精霊力が爆発してんなら排除しようとするのも当然。生物としての本能を全うしているだけの相手にそこまでの殺意は湧かない。ただ面倒だとは思う」

 

 そして、「むやみやたらに人を殺すのは良くない」という倫理観もある。元日本人として。

 ただ「良くない」だけだ。マスカルウィンの言う通り、あっちが先に「良くない」ことをしてきているのだから、こっちも……って同害報復に出るのもまた違う話で。

 まぁ面倒くささが勝ればやるけど、基本は放置で良い気がする。帝国まで追ってきたら迷わずやるし、これからできる取引先に嫌がらせとか始めたらもう少し酷いことをするつもりではあるけど。

 

 まだ害らしい害がそこまでだし。

 

「甘いわけではない。厳しいわけでもない。……ただ、他人を同じ生き物として扱っていない……成程」

「どー思ってくれても構わない」

「いや、個人の感想は存在しない。観察記録だ、気にするな」

 

 じゃあ口に出すな。気になるだろうが。

 

 さて、あと少しで件の農村がミニマップに入ってくるはずだけど――。

 

「は?」

「どうした?」

 

 ……おい、なんか"ストーリー性"感じて嫌なんだけど。

 

「パンデミックだ。魔化の」

「……些か作為性を感じるな」

 

 ミニマップ。

 その全てに映るほとんどのNPCが赤色表示。しかもそれが急速に広がっていっている。

 

「助けられる奴は助けよう。話が聞きたい」

「いいだろう。聖水を幾つか寄越せ、人間」

「あいよ」

 

 俺とマスカルウィンは、最速での救助活動に向かった。

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