アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ 作:姫鼠まりあ
魔化の原理。
魔素の進行が心臓やコア、あるいは精神の中枢に達さない限りは単なる魔素中毒で済む──というのが今までにわかってきたことだったけど、今回のはそれらケースとはまるで違うもののように思う。
「ルウィン、お前の生きて来た年月の中で、こういう魔化のケースはどれくらいあった?」
「五割がただ。魔化したものからの伝播は当然にしても、唐突な魔化は、魔化が恐怖の対象とされるくらいの頻度で起きている」
「……今回のはどうだ。兆候は欠片でもあったか?」
「無い。魔素に対しては細心の注意を払っていた。ただ……」
「ただ?」
「人間。お前が言ったアイテムボックスを経由しての魔化があり得るのなら、他の能力が魔素を取り込み、それによって魔化するケースもあるのだろう、と考えただけだ」
「この子供がそうであるように感じたか?」
「いいや」
封印棺が壊される気配はない。魔素が滲み出てくることもない。
だから最初に感じた四天王クラスというのはあくまで最大魔素保有量の話であって、この少女自体はただの魔化した人間でしかない。
一度殺して、両親と同じ方法で蘇生を行う……にしても、彼女が魔化した理由が分からない限りいたちごっこになる気がする。
そもそもなぜこの村で魔化のパンデミックが起きたのかもわかっていないのだ。蘇生は早計だろう。
「くるっぽー。村の中心、というか地下に何か魔素反応あるっぽー」
「地下?」
「こっちだっぽー。まだ魔素が漏れてるっぽー」
周囲の偵察に当たらせていたセイントバードが何かを見つけたらしい。
案内されるがままにその場所へ向かい、俺が何をするまでもなくマスカルウィンがなんらかのスキルで掘削を行う。
そこには。
「これは……干からびた死体?」
「いや、死んではいるが、これは元からそういう魔族だ。マミー……アンデッド系の魔族だな」
「ああマミーかコレ」
こういう所、アダルトMODの弊害だよな。
ぱっと見で何の魔族か判定できない。マスカルウィンがいてよかった。
葬列の花畑を使ってみるけど、繋がる糸は無い。もう切られて樹に括られた後なのだろう。
「だが、まだ新しいな。殺され、埋められてから一日と経っていないのではないか?」
「よくわかるなそんなこと」
「人間、お前の眼は時折節穴になるな。よく見てみろ。傷口が乾き切っていない。魔族とて生物の範疇から外れるわけではない。種族にもよるが、その体内には体液が巡っている。マミーも表面こそ乾き切った魔族だが、その体内は割合人間に近しい構造をしている」
「だから、日が経ってたらもう少し体液が出尽くしてるはずってことか」
「あるいは体液が漏れ出でないように処置をされていた可能性は無きにしも非ずだが……ふむ。魔法スキル:死操術」
むくりと起き上がる干からびた少女。
ただし生き返ったわけではない。ただマスカルウィンが死体を操作しているだけだ。
何かが隠されている、ということもない。周囲にあったのはマスカルウィンが吹き飛ばした土のみで、儀式か何かに使う陣があったわけでもなかった。
これが魔化パンデミックの原因と考えるのは容易だ。魔素は漏れ出でるものだから、こんな浅い所に埋まっていたら村民が魔素に触れるのも時間の問題だっただろう。
だが、そうなると別の問題が発生する。
誰が、という問題が。
「あの蜘蛛の男女はまだ目を覚まさないのか」
「蘇生はできてるし魔化も取り除けてる。が、意識が戻らん。魂を引っ張ってくるだけじゃダメだったのか、魔化した人間が蘇生することはやっぱりないのか」
「意識がどこかに隔離されていると見るべきだろうな。呼吸も脈拍も安定している。脳に損傷があるようにも見受けられん。意識、あるいは精神。それらを合わせてようやくの蘇生になると見た」
「それはどこにあると思う?」
「さっぱりだ」
「じゃあ手詰まりだ」
あの糸こそが精神なんじゃないか説はあったけど、あれはあくまで血の契りによる契約の鎖。肉体から伸びた糸ではなかった。
ゲーム中には精神や意識が別個にある、という話は出てこない。肉体と魂だけで話が進むし、そもそも肉体と魂の話自体もそんなに量が多いわけではない。精神耐性なんかのスキルとは全く別の話だろうし。
……手詰まりだ。
「ルウィン。あの子供を殺して他の農村に行くぞ。ここにはこれ以上の手掛かりはない」
「殺す必要があるのか?」
「封印棺のままでもまぁ良い。それが死と同等だと思わないのならな」
意識さえも止まったあの箱の中で、意識の戻らない両親の肉体と共にこの農村で骨を埋める。結構だ。それで何か、俺達が魔素と魔化について理解したあとで、ついでと言わんばかりに助けに来ることはできる。
その良し悪しは知らん。優しいとか甘いとか、子は宝だ、とか。
そういう話じゃないように思うがね。
「まぁ、俺達が帰るまでは保留にしておくのもいいだろう。その辺のエゴに干渉するつもりはないよ」
「この封印棺というスキルは、外部からの攻撃に対してはどれほどの防御力を持つ?」
「絶対だ。外部、内部共に破られることは絶対にない。術者が解除しない限り絶対の封印を誇るのが封印棺というスキルだ」
だから、ゲームの小技においても「適当なNPCを連れて来て封印棺を使い、それを盾にする」というものもあった。ブレスなんかの範囲攻撃してくる魔物に対して特に有効的で、封印棺の影に隠れてやり過ごし、ヒット&アウェイの時間を短縮する、なんかのやり方が。
ただし俺がヴァネッサに対して行ったように、転移に類する座標系スキルには弱い。封印棺に封印されたままどこかへ飛ばされてしまうことには何の抵抗もないわけだ。
「保留だ、人間。ついでにこの蜘蛛の男女にも同じスキルを使え」
「主人遣いの荒い奴隷だな」
「使われるのが嫌なら教えろ。覚える」
「どうにかして神殿に潜り込めばいいだろ。永久に時間があるならそれくらいできるだろうに」
「どうにもできぬことを知っていての言葉だろう、それは」
まぁそう。人間判定機あるからねあそこ。
マスカルウィンは普通に想定外だろうけど、魔族とかそれ以外が入ってこないようにするための判定機は、人間以外を確実に弾く。異種族も弾くのでその辺についての倫理問題があった気がするけどよく覚えてない。
政治問題のフレーバーテキストは面白くないんだよなー。
言われた通り生き返らせた二人にも封印棺をかけて、仙人スキル:瞑想を行う。MP結構削れるからね。
……魔族の魂の在り処はわかった。ただ意識を取り戻すことができなかったのは、個人的には快くない結果だ。
前進と呼ぶには少し足りない。それに、少女が魔化した理由も、マミーがここに埋められていた理由も、何もわからないままにこの農村を離れるのは……まぁゲームのプレイヤーとして考えたら考えられないことだ。イベントクエストそのまま放置とか、期限切れで進行不可になることだってあるのに。
でも今は目的がある。
だから、すまない。
保留を選ばせてもらう。
それは街中ではなくフィールド……森でも林でもない、ただひたすらに続く田んぼ道、みたいな場所を歩いていた時のことだ。
ONにしていた通知が入る。
「……死んだか」
「何が……ああ、あの四人組か?」
「今、ほぼ同時に殺されたな。元から拘束されていて一気に処刑されたか、よほど強い奴に撫で斬りにされたか」
「いっそのこと華の都に行ってみるというのはどうだ?」
「行ってどうするんだよ」
「監視の目。刺客。あまりにも作為性を感じすぎる集団魔化。出自不明の魔族。原理不明の魔化。どれもこれも繋がっているようで繋がっていないバラバラのキーワードだ。だが、視点を少し手前に置いてみろ。共通項が一つだけある」
「俺達か」
「そうだ、人間。お前がこの大陸に入ってから起きた事だ、全て。無論原因不明の魔化などこの世界では常に起きていることだし、作為性などただの偶然の可能性もある。だがな、人間。この世界に住まう魔族というのは世界の奴隷であるから、
それは。
また、メタいというか。マスカルウィンにそのつもりはないんだろうけど、でも……その通りだ。
魔族も魔物も世界の奴隷。
世界から過干渉を受けない人間は、ファントムに言わせるところの「わかっていない物語」を作ることがあるけれど、魔族と魔物は違う。
世界が好む何かに沿って動かされている。彼ら彼女らに意思があることとは関係なしに。
「少なくとも魔素に関わることには必ず理由と原因がある。魔素源王でさえもこのルールから逃れることはできないのだ。なれば此度の事件がただ保留されて終わることを、世界は良しとしないだろう」
「だから世界のために踊ってやるって?」
「
ああ、それもまた本当にメタい話だ。
こいつどこまで気付いてんだ。それはイベントの話だろう。ファントムが起こすイベント以外にも当然のように存在するイベント群。それらには必ず報酬が発生する。ゲームだから当然なんだけど、現実として見たらこれほどおかしなことはない。
何か事件に巻き込まれたら、必ず得をする──なんて。
けど、そうである世界なのだから、そうであると認識する方が得なのも事実だ。
粛清部隊の男も言っていたけど、認識がどうであれ事実は事実。現実を直視した方が益は大きい。
「興味深いな」
「唐突になんだよ」
「今、お前は脳裏で計算をしたはずだ。損得勘定を。世界に従い、報酬を得た方が益があると考えたはずだ。だというのに人間、お前の心は凪いでいる。波風一つ立っていない。益があることはお前の心を動かさない」
……。
その定期的なメンタリズムみたいなのやめてくれないか。カウンセリングなんか受けたいと思った覚えないんだけど。
「保留は変わらん。ここで世界の物語に首を突っ込めば、どれほど時間がかかるかわからん。情報が出揃わないってことは序章も序章ってことだ。なら、そこの問題解決は俺の目的から逸れる。魔族の魂の在り処がわかっただけで十分だろう、成果は」
「なるほど──効率か。報酬との距離と、目的との距離を比較したな? 仮に目的への道中、その最短効率の中に報酬が組み込まれていれば、喜び勇んで首を突っ込んだだろう。だが人間、お前には違うものが見えている。それは……そうか、"世界が用意する物語"がどれほどの規模感かを知っている。そうだな?」
「お前だって知ってるだろ。だからそんなに落ち着きがない。違うか?」
「ふふ、そうだ。その通り。久方ぶりに巻き込まれたからな。少しばかり高ぶっていた」
イベントの規模感。
小イベント、中イベント、大イベント。本編イベント、キャラクターイベント、クリア後イベント、隠しイベント。
そうだ。俺はその規模感や長さを知っている。このイベント長そうだな、っていうのが経験則でわかる。
ああいう証拠を集めて考察を重ねて、しかもいろんな場所に行ったり来たりして調べ物をしなければならないイベントは大イベントだ。そんなんやってる暇ない。
「良い。ならば許す。ただ切り捨てただけではないというのなら、潔く身を引こう」
「ただ切り捨てただけかもしれないぞ。適当人間だからな俺は」
「違うだろう。ふふ、先にも言ったがな、これでも見る目はある。お前は自身の考えを口に出すのが面倒なだけだ。他者を慮る心も相手の事情を察する頭脳も持っているが、それを表に出すことはない。期待されることや羨望を向けられることが面倒だからだ。
「はいはい、高く買ってくれてるようで何よりだ。そういうことでいいよ、その方が俺の株が上がる」
「ああ、今勝手に上げさせてもらった。また一段とお前と共に在るのが楽しくなった」
……苦手だな。
クソ、なんでこう、俺の好みの容姿の女ってのは……。
どっかにいねーかなー、ただの性奴隷であってくれるドストライクな女。心の壊れたマグロとか、こっちの分析ばっかしてくる特殊な女とかじゃないのがさぁ。
「ふふふ、観察や分析が嫌なのであれば従属の呪いを解けばいい」
「解いてもついてきそう」
「おお! よくわかったな。理解されるというのも中々貴重な体験だ」
やっべー。
やっべーの拾ったわコレ。ノズヴェルガーの奴誰からコイツ仕入れたんだよ。
「行くぞ」
「良いだろう。俄然やる気が湧いた。それと、いつか必ずお前を食う。その数多くのスキルを覚えることのできる体質を獲得することは諦めん」
「だから別に俺を食っても意味ないって」
隙を見て封印棺で封印してどっか地中深くに埋めてこようかなぁ。
そんな感じで農村を回り続けること四度。
ようやく俺達はシチサイヌの農家に出会うことに成功した。セイントバードを飛ばし、魔素を注意深く観察させる。
「シチサイヌの恒常的な取引……しかも外国から。まんら凄いことを考えるものだねぇ海の外の人は」
「元々取引していた農家がおめでたでな、仕事を年単位で休むことになったんだ。それで、シチサイヌを年がら年中取り扱っている農家が鬼の国にしかないと聞いてはるばるやって来た」
「あぁ、子宝に恵まれたんならしょうがねぇ。それで、どれほど欲しいさ。一度にどれほど運べるね」
「運ぶ量は山単位でいける」
「まんら阿呆なことを……ああいや、底なし袋を持ってんのか」
「そうだ」
ちょっと訛りの強い男性。老人なんだろうけど、アダルトMODの効果でイケおじになっている。
杖を突いている割に腰が悪いとかではなさそうだけど、ただついてるだけなのかな。
「えいよ、えいよ。シチサイヌは工芸品にばっか使われてっけど、臭い消しに使う薬師がいるとは思わなかった。そういうのは儂ら農家だけの使い方だったからねぇ、まんら、良い目をしている薬師がいるもんだ」
「金額はそちらの適正価格で良いそうだ。足元を見てくれても構わん」
「イッヒッヒ、お前さん、それを言われて足元見る奴はいないよ。まんら度胸の据わったお人だ。──が、一個だけ問題がある」
「なんだ?」
「儂らは今風当たりが強い。派閥闘争に負けたんでな。そこと取引ってなると、安定した、とは言えないかもしれないよ」
……。
……それも作為性を感じるが。ファントム一瞬呼び出すか?
いや、こういう確認には付き合ってくれなさそうだな。アイツは面白い時にしか出てこないだろうし。
ふむ。
まどろっこしいのは無しだ。
「リュウゼツ家か」
「おっと……こら、儂も潮時かい?」
「いや、国外に逃げた鬼の国の女王と知り合いで、」
「ツバナ様を知っとるのかい!? お、おお! 彼女は今どこに、元気か? 元気してっか!?」
劇的な反応。
こちらに組み付いてくる勢いと、一瞬で潤んだ瞳。
こりゃ善人だ。確定。ラッキーだな。
「従者は助けられなかったが、彼女は今も元気だよ。ただ鬼の国に戻る意思はないと聞いている」
「いやいや、それでえい! 帰ったらそれで良いと伝えておくれ、外国の人! まんら、まんらえいことだ、それはえいことだ!」
「良いことなのか? お前達の慕う方の女王が帰らないと言っているんだぞ」
「えいよ、えいよ、そんなことは。お家騒動も派閥闘争も、ツバナ様に関わってほしくはないからね。そうか、生きてて、元気で、そうか……それはえいなぁ」
しみじみと老人は言う。
……箱入りとか言ってたけど、ちゃんと慕われてんじゃん。
「そうだ、シチサイヌ。えいよ、ツバナ様の知り合いなら安く売ってやるよ」
「いや、そこは良い。風当たりが強いなら収入も減っているだろう。公正な取引の方がこちらとしても安心できる」
「……外国の人。あんた、偉いねぇ」
「偉い?」
「今の一瞬でまんら考えただろう? ツバナ様のこと、儂らのこと、鬼の国のこと、あんたの雇い主のこと。そんで、今もう一つ考えてんね? 儂らの安全をどう確保するか……違うかい?」
……。
マスカルウィンといいこの爺さんといい。
歳行ってると人を分析したくなるのか。
隠す……より、正直に言った方が楽そうだな。
「そうだ。こちらは安定している供給源が欲しい。なんだ、あんたたちを脅かしているものは。武力でどうにかなることならば、俺がやってくる」
「イッヒッヒ、そりゃ怖いよ、外国の人。ここで儂が鬼の国の全てだとでも言ったらどうしてたね」
「鬼の国を滅ぼす。俺にとっては鬼の国そのものより爺さんたちの方が大事だ」
「……そりゃあ、できることしか言わない口だねぇ。それに、あっちの別嬪さんもまんら強そうだ。本当にあんたら二人だけで鬼の国は滅ぼせるかもしれないねぇ」
可不可でいえば確実に可だ。
こっから鬼の国へ向かってスーパーノヴァ何発か撃つだけでも相当削れそうだし。
「時間と暇があればでいい。この書筒を華の都にいるヤイクニって役人に渡してほしい。そうすりゃ、儂らの陥っている現状と敵が浮き彫りになる。鬼の国の全てが敵ってわけじゃなけどね、相当手が回ってるのは事実だよ」
「世界が行けと言っているじゃあないか、人間」
最初に買った時と同じく、肉声ではない声で話しかけてくるマスカルウィン。
ニヤニヤしやがって。
「話が通じる相手か?」
「おんなじ言葉を
「そうか。……最後に確認したいことがある」
「家紋だろう? いいよ、これだろう? ツバナ様はこの家紋をまんら気に入ってくれてたからなぁ」
爺さんは自身の額に巻いていた手ぬぐいを外し、その裏側を見せてくる。
そこに然りとあるあのマーク。
「これは儂がツバナ様のお母様に贈った家紋でね、チガヤとリュウゼツラン。その二つの意味に加えて、ツバナ様のお母様……スギナ様の名も入ってる」
「家紋というのは、代々受け継いでいくものなんじゃないのか? そんな短いスパンで変えるものなのか」
「イッヒッヒ、まぁそうだよ。リュウゼツ家の家紋は別にあるのさ。でもね、スギナ様は知ってたんだよ。儂に家紋を依頼する時に言ってきたからね。──"近い内に鬼の国は割れる。追われるか追うか、どちらにせよ、リュウゼツ家もまた裂け目に飲み込まれる。じゃからな、この腹の子には、新たなる家を建てて欲しいのじゃ"とね」
……だとして、結局。
ツバナに戻る気が無いのだから──故人の夢は叶えられないわけだけど。
それは、いいんだな。
「わかった。これ以上の深入りはしない。ただ取引先の安全を守るための動きはさせてもらう」
「えいよ、えい。けどね、それであんたたちの身に危険が及ぶようなことがあったら、儂らはツバナ様に合わせる顔がない。黄泉の国にいるスギナ様に会った時、なんて顔をすればいいかわかんなくなる。だからね、逃げても問題ないからね、外国の人」
「ヴェルグだ。こっちはルウィン。そして、俺とコイツの身に危険が及ぶようなことがあったら、それは多分世界が終わる時とかそんなんだろう。爺さんの名は?」
「トオクスだ。ああ、よろしくね、ベルグさん、ルインさん」
さて。
まぁ、ここまでお膳立てされたらやるしかない。
「ルウィン」
「わかっている。この村の守護だろう? 任せろ、人間」
「ああ。行ってくる」
敵が魔物でないのなら。
俺は多分……殺せてしまうから。マスカルウィンは、要らない。
んじゃ、久方ぶりの一人旅としゃれこもうかね。
神速とか使うまでもなく、爆速で走って爆速で着いた。転移は流石に人目がな。
そんで、華の都。ゲームに出て来た街並みだから、目を瞑っていても歩けるのはデカい。
ここはその名が示す通り華美な都で、夜でも明るい。赤を基調とした街並みは、けれど日本風っていうかちょっと中国入ってる。古代中国って言えば伝わるかな。古代中国を模したファンタジー中世、がコンセプトだったはず。なんじゃそりゃ。
そんな街並みを一切見ずに、一番高い塔を目指して進む。
爺さんから言われたヤイクニってのを探すのも勿論手だけど、とりあえず覗き魔潰せば後々楽だろう読み。
ミニマップに赤。あっちから来てくれるのはありがたい。
霧隠れを使い、マスカルウィンに倣って神速と跳躍と壁走りを併用した動きで赤点の背後に回り、眷属の呪いをかける。
「……話と、違う……あの女、騙したな……!」
「呪詛スキル:眷属:行動制限:偽りを禁ずる」
「っ……うっ」
「神官スキル:死者蘇生。神官スキル:毒解除」
騙されていてもプロ意識が勝ったのか、すぐに服毒して自害したソイツを生き返らせて毒を飛ばす。
死が逃げ道になると思うなよ。
「呪い師……!」
「呪詛スキル:眷属:行動制限:自害を禁ずる。呪詛スキル:眷属:行動操作:お前を騙した女のもとへ案内しろ」
「く……そ!」
歩き出し、そして駆け出した男を追う。
向かう先はやはり高塔。人混みを避けるのが面倒なので、戦士スキル:重圧で道行く人々を威嚇する。
「おい、逃げろ、化け物だ!」
「おめおめと逃げ帰って来たかと思えば、開口一番がそれか。失望したよ、忍頭コタロウ」
「神官スキル:遮断。魔剣士スキル:物理上昇オーラ。狂戦士スキル:独擅場。戦士スキル:唐竹割り」
男女をまとめて斬る。問答は要らないだろう。言動で十分だ。
ああ。
ああ、やっぱりおかしいな、俺は。
魔物や魔族相手ならあんなに躊躇して吐くまで行くくせに、人間相手だとなんでこんなに選択が早い。
「身代わり藁!」
「身代わり藁は範囲攻撃には弱いんだよ。覚えておけ。ティル・ナ・ローグで使えるやもし──ッ!?」
バックステップ。
あと少しで殺せた。いや、その肉に俺の剣は入っていた。
だけど、その身体を両断する──その直前で女が全裸になった。これは。
「──奥の手を、こんなところで使わされるとは。ふ、ふふふ……じゃがのぅ、ああ……心地の良い感覚じゃ。妖となることがこれほどまでに甘美とは──」
「聖騎士スキル:聖域。聖騎士スキル:聖断。聖騎士スキル:裁断」
「──ぁえ?」
聖王の粛清剣と聖剣コルネリウスで行う二重のスキル使用。
子供じゃないしいいだろ、殺しても。マスカルウィンも相手が大人ならなんも言ってこないはずだ。
「か……ぁぁあ! 呪われろ、呪われろ人間!」
「呪詛スキル:身投げの炎。成程、覚悟はしてあったわけだ。すまんな、レジストする」
怨讐による呪い。
そんなものにかかってやるほど三周目ステータスゴリ押しマンは柔じゃない。
……今度こそちゃんと事切れた女と、雇われの男……コタロウっつったっけ。
そのどちらもを魔法で焼いて塵にする。ゴースト化されても面倒だし。
霧隠れを纏ってから遮断を解けば、多くの役人が雪崩れ込んできた。
「アセビ様! アセビ様! 如何されましたか!?」
「どこへ……アセビ様を探せ! 誘拐された可能性もある!」
「まさか反体制派の仕業か!?」
……あー、そういうヘイトが向くのか。
じゃあ残念だけど。
「アサシンスキル:杠」
「っ、凶手か! 暖簾!」
へえ。
今の、戦士スキルの軽量化に似てるな。敢えて自分の体重軽くして攻撃によるノックバックを増やすスキル。ただどっちかというと物理を無効にされたみたいな感覚があった。暖簾……暖簾に腕押しってこと?
なんにせよ知らないスキルだ。種族専用スキルかNPC専用スキルか。
反応も良いな。いやいや、舐めていた。役人なんて役職だ、強いのはいないと思っていたけど──これは。
「皆の衆、地を這え! 姿勢を低くしろ! 凶手が紛れている――増援を呼べ!」
「アサシンスキル:簪」
「石橋!」
防がれた。
おいおいこっち三周目ステータスゴリ押しマンだぞ。その刺突を防ぐって……いや、違うな。
他の場所にダメージが移された? なんだあのスキル。
「来い、来い、来い凶手! アセビ様を隠したのも貴様だな──この俺が相手になるぞ、卑怯者!」
「良いだろう、興が乗った」
「そこか! ……鷲の編み笠の男。報告に会った海の外の者か」
「すまんな。故あって顔は明かせんが、許せ。貴様、名は?」
「ヤイクニだ! 黄泉の国でこの名を恨め、凶手!」
……あるぇー?