アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ 作:姫鼠まりあ
アダルトMODの弊害は散々述べた通りだけど、メリットももちろんある。まず全員が美男美女になること。そして一部の服がエロ衣装になること。踊り子とかはシースルー(不透明度0%)とかになること。
そして。
「媚薬、ねぇ」
「ヴェルグさんは、あんまり性欲とか無さそうだねえ」
「無いわけじゃない。そうだな、ハルフィーさんなら大歓迎だよ」
「あっはっは、冗談はだめだよ。白銀章とは釣り合わない」
NPCとの会話選択肢に「性的な話題」というのが追加され、追加テキストでそれに呼応するテキストが大量に増加すること、だ。
なんというか、セクハラがセクハラにならないというか。いや一部「性的な話題」を振ると氷のような視線を送ってくるNPCもいるんだけど、それはそういう層向けだったので例外。
男は基本会話に困ったら下ネタを回す。みんな奥手なだけでなんなら女性もそうだと思っている。下ネタは万国共通だ。苦手な人も勿論いっぱいいるだろうけど、要はアダルトMODのおかげでその「下ネタ苦手な人」というのがいなくなっているって感じか。
これが結構ありがたい。
この媚薬の話だって、前回ギルドに依頼した雑草抜きの雑草こと魔薬の材料をハルフィーさんの所へ持って行ったら出た話題だ。つまり、俺からの「性的な話題」だけでなく、NPC……相手側からの「性的な話題」も会話の選択肢に入っているということ。
うんうん、無知シチュじゃないけど、こういう「常識がエロい」みたいなのは好物だ。まぁ今のは「性的な話題」に入るかどうか怪しいくらいの浅さではあったけれど。
「だが、ハルフィーさんは結婚適齢期だろう? いないのか? いい男は」
「今はね。けど狙ってるオトコはいるよ」
「ほほぅ」
「おっと、誰か、はまだ聞かないで。上手くいったらちゃんと報告するからさ」
「了解した」
うん、良い。とてもいい。
ポーション調合中のハルフィーさんの方向さえ見なければ、なんて平和な日常風景だろうか。
俺はこういう日常に浸っていられたらもうそれでいいんだ。
ああ、こんな日が毎日続けばいいのに。
なんていう使い古されたフラグを心の中で吐いていたら、トラブルがやってきた。
「……まずは頭を上げろ、スイ」
「……頷いてくれるまでは、できない」
魔物ではない家庭菜園を始め、魔物素材ではない家具や道具の一式を揃え、超癒し空間と変貌したマイホーム周辺。炊事家事以外は自由にしてていいと伝えてあるケルとリアは今家におらず、それを知ってか知らずかスイが家を訪ねてきて、いきなり頭を下げたのである。
「ヴェルグが血を……見られない、というのは、重々承知してる。でも……それでも、アレに対処できるのはヴェルグしかいない」
「ラムナザール四世がいるだろう」
「ギルドの……威信の問題だから。お父様はギルド所属じゃないから、頼めない」
「あー」
たとえ関係が父子だったとしても、そういうとこ色々あんのな。
……どうするかなぁ。
「フレイムドラゴン。まぁ確かに災厄級だな。だが討伐例がないわけではないのだろう?」
「うん。私もだけど、帝国の冒険者なら何度かは乗り越えてきている」
「なら、多少強い個体でも力を合わせればなんとかなるだろう。俺を頼る話じゃない」
「魔化している、と言っても?」
「──……」
要約すると、フレイムドラゴンが帝国に向かっていて、斥候や一冒険者じゃどうにもできないから俺にお鉢が、って話なんだけど、最初から断っている通り俺は魔物を斬れないから無理だよーってところでの膠着だった。
まぁなんだ、ラムナザール四世の独裁政権のもと、強者たちが集まっているマスカルウィン帝国の冒険者が揃いも揃って降伏ってどうなんだよ、多少犠牲を強いてでも協力して倒せばいいだろ、とか思っていたら──そう来たかぁ、と。
魔化。
文字通りだけど、元が魔物なので魔化も何も感はある。その辺はゲーム開発者に言って欲しい。
なんだ、狂暴化してる、みたいな。んで体から魔素っていうなんかやべーのが出てて、長時間それに晒されると魔族になったり魔物になったりする……まぁデバフまきまくる通常モンスターの超強い個体だと思ってくれたらいい。
多分、通常のフレイムドラゴンなら誇張なくスイたちだけで倒せたのだろう。
ギルドの威信の問題と言っても国へ向かっている災厄だ、ホントのホントに危なくなればラムナザール四世が出てきてたたっきるんだろう。
けど、それでギルドが何もできなかった、となるのがやべーんだと。
独裁政権下にあってもギルドは屈さずに活動している──という実績が薄れるのがやべーんだと。
知らねーけども。
「……スイ」
「……」
「魔素を剥がせば、あとは自分たちでやれるか?」
「!? そんなこと、できるの?」
「できないことは言わん。で、どうなんだ。魔素が抜けたとしても、凶暴さは変わらんと思うが」
「できる。魔素だけが問題だった。魔化していないフレイムドラゴンなら──どうとでもできる」
よーし良いだろう。
ちょいと手荒な手段が必要だけど、魔化の弱体法は知っている。俺が直接手を下さなくていいというのなら手伝おう。ラムナザール四世がやればいいじゃんとは未だに思っているけども。
「すぐに精鋭を集めてくる! ヴェルグ、合流地点は北の台地で」
「わかった」
さて。
ま、癒し空間ではなくなってしまったかもしれないけれど、俺が斬らんくていいならエグいことにはならないだろう。残念ながら俺はそこまで優しくないので、たとえ美少女美女であっても俺の視界に入ってないところで行われる残虐な行為については全然フツーに目を瞑れるのである。
んじゃとっとと済ませて、またケルの美味しい料理でも食べましょうネー。
なんて考えはとても甘かった。
「……」
「白銀章には及ばないけど、みんな手練れ。……ヴェルグの目から見て、どう?」
「……まぁ、いいんじゃないか」
うーん。
エグい。
大きく天に向かって手を伸ばし、涙を流した状態で石化し、その口から剣が突き出ている爆乳の少女。
開かれた腹を六つに引き延ばされ、全身をも大きく開いた状態で盾に張り付かされている少女。
白目を剥いた美女の顔二つから突き出る美しい指と爪。モロに局部をメットに加工してある奴。
エギい。
までもそうだよね。魔物素材使った武具防具ってそうなるよね。
他にも大体が魔剣とか特殊防具の類で、大体どっかしらに少女や女性の身体があしらわれている。それを纏う冒険者は男女問わずそれを疑問にも思っていない顔で、うん、もう、うん。
「スイ。まずは俺がフレイムドラゴンに接触し、魔素を剥がす。俺とフレイムドラゴンの接触から魔素が完全に抜けるまで約三十秒ほどの時間がかかる。その間、俺は囮としてフレイムドラゴンを攪乱する……が」
「万一ヴェルグを無視してこっちや国にヘイトを向けた場合は、覚悟を決めろ。でしょ?」
「そういうことだ。それと、これを渡しておく」
言って投げ渡すは、何故か全裸の少女の形になっているガラス瓶。これは魔物ではないけれど、その使用頻度の高さからアダルトMOD製作者が追加で制作したものだ。
「聖水? そんな、こんな希少なもの」
「魔素中毒に陥った者に使え。ただしお前の言う通り一つしかない。誰に使うかは選べ。残酷な選択にはなるがな」
嘘です倉庫にいっぱいあります。
裏ボスのいるダンジョンとか大体が魔化してる魔物しかいないもんだから、戦闘後の聖水は必須アイテムだったんだよね。ちなみにこれは最初からあるアイテムなので、アダルトMODよろしく美少女のおしっことかではないです。
さて、縮小したミニマップに赤点が見えたので、インベから希望の命剣と聖王の粛清剣を引き抜く。前者はいつも使ってる奴で、後者は魔素を半減させてくれる剣だ。あんまり攻撃力高くないけどその効果が魅力的すぎて終盤までずっと使ってた剣。強化しても改造しても全然強くならないあたりがゲームらしいよなぁって。
なお、こんな風に剣を引き抜いたのはパフォーマンスだ。まるでこれから戦いますよ感。斬らないから使いません。使っても防御用。
ちなみにアイテムボックスことインベントリを持っているのも結構レアらしい。転移魔法ほどのロストテクノロジーではないようなのでこっちは普通に使う。
「すまんな」
「……? 何故謝る?」
「俺は少し前の出来事から、血を見ることができなくなってしまった。冒険者としては死んだも同然だ。ゆえに白銀章への尊敬など必要ない。……だから、頼むぞ、今を生きる冒険者たちよ。俺が奴の魔化を剥がす。その後、マスカルウィン帝国を守り得るのはお前達だけだ。──武運を祈る」
三周目ステータスに任せて飛び出す。
一歩。二歩。三歩目でフレイムドラゴンの眼下くらいにまで到達し、思い切り足に力を込めて──跳ぶ。
フレイムドラゴン。
MODが入っていない時は、首の長い二足の燃え盛るドラゴンだったけど、アダルトMODによって……なんだろ、全裸なんだけど所々に鱗がある美少女になっている。魔化の影響で黒い靄は出ているものの、乳首や局部はモロ見え。背中から生えたコウモリみたいな翼は絶対全体重支えられないだろって形をしているけど、そういえばアダルトMODって見た目と本物の大きさの違いとかってどうなってんだろ。
とかなんとか考えながら、思い切り腕を引き絞り。
「は!? なんだおまモガッ!?」
「やめろ。人語を喋るな。余計モチベが下がる」
その口に、聖水を突き入れる!
さらに口の中で聖水のコルクを外し、中身をリリース。全身を侵食しはじめる魔素を聖王の粛清剣が緩和し、そうでなくとも聖騎士スキル:魔素耐性が20%程の耐性を上げてくれている。
フレイムドラゴンが完全に聖水を飲み込むまでその口に腕を突き入れ続け、その喉が鳴ったのを確認する。あ、噛もうとしてきてたけど無駄です。単純防御力隔絶差!
腕を引き抜けば、げほごほと咳き込み、涙目になった美少女が……俺を睨む。
アレだね。ヘイトを買った、って奴。
その目は爬虫類特有のあの縦筋入ってる奴で、ヒュウ、中々貫禄がある。
睨まれたまま、彼女の眼前に降り立つ。空に、だ。
天空のブーツという本来女性専用の靴の効果で、アダルトMOD君が装備の男女差を無くしてくれた恩恵がここに出ている。男性のは兜装備に似たのがあるんだけど、今兜枠は違うので埋まってるから助かった。
「う、うぅ、うぇっ。……クソ、何を飲ませやがった!」
「だから人語を喋るな。お前はただ、俺という敵を見ていればいい」
んだよ、と言い切る前に攻撃が来た。
爪による斬撃効果のある殴打。それを剣で受け止める……が、やっぱりコリジョンがおかしい!!
さっき聖水飲ませた時もちょっと変だとは思ったんだけど、見た目優先してて元モンスターの当たり判定と重なってないじゃないか! アタリハンテイ力学は未履修だからやめろ!
前も述べたけど、このゲーム別にVRMMOとかじゃなかったので、間合いはMOD入れてなかった頃のを思い出すしかない。体が覚えてる、とかないのだ。え、フツーにキッツ。
ただまぁ攻撃は死ぬほど軽い。魔化したといっても野良フレイムドラゴンだからレベル50とかそこらか? なんならスイ一人でも倒せそうだな。
「爪が……くそ、ならこれでどうだ!」
フレイムドラゴンが口に炎を溜め始める。ブレスか。
防いでもいいけど、完封しちゃうと後ろの冒険者たちが「じゃあお前が戦えよ」って言い出しそうで怖いんだよな。血が無理っていうのはまぁ方便なわけで、俺が女の子斬れないだけの軟弱者だと知られたら帝国追い出されるかもしれん。
実力云々の話じゃなくて、ご近所付き合いはちゃんとしたいって話ね。
「ああだから、こういうことはできるか」
肉迫する。
不自然な位置で鱗に触れた感覚があったけれど、大体の大きさと位置を思い出しながら──上あごと下あごを、ガチンと無理矢理閉じさせる。流石に思いっきりやるとグッロいことになりそうなので、加減してね?
「ぶっ、ぐ!?」
こういう自由度はゲームの時には無かった。
ブレスはボフンとフレイムドラゴンの口の中で爆ぜ、コメディチックにその鼻の孔から黒煙を出す。ただダメージは入ってないか。ま、自分の炎に焼かれてちゃ世話ないしな。
さて。
「三十秒だ」
「……何が、だよ」
「ん? だから三十秒だよ。なぁ」
背後。数多の青点が、俺を通り過ぎていく。
エッグい武器を持った冒険者たちが、フレイムドラゴンに殺到していくのだ。一部何も見えないところに掴まってそこをぶっ刺したり、かと思えばその綺麗な腹をぶん殴ったり……あ、うん、もう帰ろう。
見ないところで行われる暴力は良い。
でもやっぱ見るのはキツいス。男女問わずとはいえ、見た目少女な子が大の大人たちにタコ殴りにされてんのを見てエッロいって思えるようには流石の俺もなっていない。
……武具化した少女たちに関しては、ちゃんとバキバキになってたんですけどね!
こうして、魔化したフレイムドラゴン退治というのはめでたく終了した。
傷を負った者はいるけれど、死者は無し。上々の結果と言えるのではないだろうか。
「ヴェルグ。今回は本当にありがとう。それとこれ、返しておく」
「いや、一応持っていろ。何があるかわからん」
「でも……」
これはちゃんとマジな話だ。実は魔化って発生原理が微妙に分かっていない。魔化した生物の近くにいる魔物は伝染するようにして魔化するんだけど、じゃあ最初に魔化したのって誰なの? っていうとわからずじまいなのだ。公式も特に解答らしい解答だしてなかったはずだし。
だから、ワンチャン帝国内でいきなり人間が魔化するとかあり得なくはない……んじゃないかな。そんなイベント一回も見たこと無いけど。人間じゃなくてもテイムモンスターが、とかはでもありそうじゃん?
あとほら、この前の奴隷商人のとこに魔族いたし。何かあるかもしれんからとっとけ、はマジでマジな話だ。
「……わかった。ありがとう」
「もういいか? ああ、討伐報酬は必要ない。冒険者たちで分けろ」
「そ、それは流石に。ヴェルグの貢献度は計り知れない」
「いや魔素剥がしただけだが」
「その前に、冒険者たちを奮い立たせた。アレで勇気を貰った……震えていた膝が止まった者も少なくはない。ヴェルグには人を導く才能がある」
「……スイ」
「……? あ、ご、ごめん。そっか、もしかして、そういうこと……?」
「まぁ、俺から言うことは何もない」
「うん……。わかった。素材は、こっちだけで分配するね」
説明しよう!
別に俺に冒険者たちを奮い立たせる気なんか欠片も無かったんだけど、導く才能がある、とまで言われたからにはこれを使わない手はないと考えたヴェルグ君は、つまりスイが言っていた少し前のエンシェントデーモンとの戦いで隊員を失った部隊長、みたいな正体なんじゃないか説をスイに抱かせる作戦を敢行したのである!
いやぁ主語のない会話は素晴らしい! 勝手に勘違いして勝手に同情してくれるからね!!
「今回は特別に手を貸したが、あまり頼ってくれるな。俺はもう日常に身を置いている。白銀章も、返上すべきなのかもしれんな」
「……残念だけど、それは無理。仮に冒険者を引退したとしても、その白銀章は剥奪されない」
「ん? それは何故だ? 俺が犯罪でも犯せば、たちまちこんなもの没収だろう」
「……お父様が、その。『あれに姿を消されては敵わん! 余の命ある限りはギルドに縛っておけ、良いな!』と」
ふむ。
「まぁ、あんまり頼られても困るという話だ。すまんな、ギルドの体裁と父親との関係の板挟みはつらかろう。今度ラムナザール四世と模擬戦をするときにぶつけておいてやる」
子供に気を遣わせてんじゃねーっての。まぁ一言一句脚色もせずに言う時点でラムナザール四世に罪擦り付ける気満々なのは見えているけれど。
さて、今度こそお疲れさんである。
人目がないことを確認し、ホームポイント帰還を使う。スイが見ているけどまぁいいだろ。見せるべき相手には見せておくべきだよ、力ってのはさ。
その夜のことである。
「む。……美味いな。これは」
「うん。自信作」
「ええ、とても美味です。ですが……記憶が正しければ、これはドラゴンの腿肉ではなくて? ケルさん、また無駄遣いですの?」
「違う。安くなってたから買った。最近討伐されたらしい」
「……」
あの子の、腿、かぁ。
美味しかったからまた今度も食べたいって言うつもりだったんだけどなあ。言う気失せたなぁ。
あとほんと、魔物は人語喋らないでくれ。余計エグいマジで。