アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ 作:姫鼠まりあ
魔族と魔物は世界の奴隷。
彼ら彼女らが口を開けばまず言うこと。その真なる意味。
それがわかる展開だ、これは。
「つまるところ、あの絡新婦族の子供も元から魔族か」
「そう怒るな、二人目のフレースヴェルグ。全ては世界の掌の上。なれば楽しめ、この舞台を」
「怒っているように見えるなら節穴が過ぎる。こういうことで怒る奴だと思ってんなら俺を知らな過ぎる」
俺とマスカルウィンが意見で対立し、マスカルウィンが子供を庇っている状況。
二人とも既視感はあったはずだ。「またか」と。それに従えば良かった。
だから、あの証拠の揃わない、情報の出揃わない怪事件は、チュートリアルだったのだ。
この大イベントへ向けての小イベント。いつも通りのやり方。
ファントムが心から忌み嫌う、「算段通りの物語」。愛も友情もカタルシスもない。ただ用意されたパズルを解くことさえない。世界が用意した舞台装置を、その脚本に従って動かし、その脚本に沿って演じるだけの──ツマラナイ物語。
だからアイツはストーリーテラーになろうとしたんだ。世界の用意する物語が、あまりにもお粗末だから。
「エンシェントデーモン。個体名はあるか?」
「リアス。残念ながら、お前の期待に沿う魔族ではない。一人目のフレースヴェルグを連れ去ったのは私ではない」
「そうか」
巨大な槍斧を持つ、イカっ腹の童女。
クゼリという名の子供の姿のままなのかはわからないけど、全裸だから魔族確定。まぁ魔素の漏れ方でわかる話なんだけど。
聖騎士スキル:聖域。魔剣士スキル:プリズムオーラ、物理上昇オーラ、物理無効オーラ。剣士スキル:無我の境地、以水滅火、竜雲風虎。戦士スキル:神速。
「聖騎士スキル:聖断」
ノーモーションで行う斬撃。
今までは前兆モーションを入れていたスキルだけど、入れなくても使えるのは検証済み。魔素の濃いフィールドとなったここに居続ける意味も無し。イサカリとマスカルウィンにそれを届かせるのもマズい。となれば短期決戦。
必要な情報を持つ個体じゃないのなら、もういいだろう。流石のマスカルウィンもこいつに対して子供がどうこう言わないだろうし。
「デーモンスキル:黒キ壁」
「奇術師スキル:バルブデュアル。魔剣士スキル:フレイムオーラ。魔法使いスキル:拡散。魔法スキル:フレイムロード」
振り下ろした聖王の粛清剣。けれどそれは黒い壁に阻まれ、拮抗に終わる。聖断はまだ続いているけれど、その効果時間中にゼロ距離でのフレイムロードx2を放射。黒キ壁の耐久値は知っている。これで割れなければ、相手に何かバフがかかっているか、初めから二枚張っていただけ。
次のスキルを構築。魔剣士スキル:アクアオーラ。剣士スキル:霧時雨。
指。
「──聖騎士スキル:精神耐性。戦士スキル:ウォークライ」
貫かれた左胸を気にせずに精神耐性を上げる。こっちにデバフかけて来た……というより、これはアイツの仕業じゃないな。やっぱり他にもサポート術師がいるか。
再生及び治癒系のスキルを使いつつ、仙人スキル:瞑想も起動しておく。
「……?」
「呪詛スキル:釘打ち藁」
「待て、二人目のフレースヴェルグ」
「待たない」
出現させた藁人形に釘を打つ。
すると、少し離れた位置にある建物に一直線の糸筋が現れた。そこか。
「魔法スキル:スーパーノヴァ」
「デーモンスキル:黒キ壁! ……待て、二人目のフレースヴェルグ。お前はなんだ?」
「自分で答えを言っただろう。魔法使いスキル:座標指定。魔法使いスキル:集束。魔法スキル:雷霆」
魔法使いスキルのほとんどは、その後に使う魔法スキルの範囲や放出方法を決めるものだ。マナエクステンドなどの例外を除いて。
手から放つのが一番狙いやすいからそれを多用しているけれど、座標が完璧に分かっているのならこっちの方が強い。
天。空。
雲もないのに落ちてくる一筋の光線。雷撃。
肩口に斧が刺さる。斬り落とされる左腕。魔剣士スキル:ウィンドオーラ。魔法スキル:雷霆。
続け様に二本、三本と雷の光線が落ちる。貫通力だけを高めたその雷は、明らかに木造のこのダンジョンを焼くことも無く、ただ釘打ち藁の先に居たデバッファーだけを確実に殺す。
「痛みを感じないのか!」
「アサシンスキル:バックスタブ」
激昂したリアスを背後から刺す。つるりとした背中。仙人スキル:無の境地。
聖剣使うと位置バレするからな。柄で全裸の美少女が三角座りしている、マヒルドグラという剣でぶっ刺した。魔剣だ。
効果は、対象に毒と毒効果アップのデバフをかけるもの。
大振りに振られた斧が俺の頭蓋を叩き切る。
アサシンスキル:貫き手。格闘家スキル:霊衝拳。
その状態のまま、両手で行う貫通力の高いスキル二連。そしてリアスの体内に置いてくるは──聖水、ならぬ。
「純度100%の聖石だ。人工聖石とはわけが違うぞ」
「──っ、ヅァ!?」
目から上を無くした口で喋る。
そのイカっ腹には大きすぎる石を埋め込まれて、もがき苦しむリアスを見る。
「あ、が……な、……んだ、その、身体は……二人目の──フレースヴェルグ!」
「化け物か何かだと思ってんなら違うよ。これはただの外法。ほら」
ぐちゃ、なんて音がして、傷だらけのヴェルグ君二人が肉塊になる。
その後ろからご本人登場だ。
外法:フェイクドール。
奇術師スキルのフェアリーランドやアサシンスキルのミラードールと違う点は二つ。
一つ目は、自身のHPを消費して生成する分身であること。
二つ目は、消費したHP分の耐久力を持つこと。
トカゲの尻尾切りよろしく自切スキルなんて揶揄される外法の一つで、あるイベントで手に入るアイテムを用いて行うスキルではない技術。アウラニの魂を二分したのと同じ括りだな。
死途の土産に覚えておけ。
俺は三周目ステータスゴリ押しマンであると同時に──。
「圧倒的手数初見殺しマンだ。じゃあな、リアス」
埋め込んだ聖石が破裂する。
破裂し、そこに含まれた聖気を凝縮、一時的に空間が歪むほどの白を作り出す。
聖石はただ装備に加工したり魔素を寄せ付けない壁を作るだけに使われるものじゃあない。
これが本当の使い方だ。即ち──魔族への特効80%を誇るクラスター&範囲爆弾。まぁ超貴重品な聖石をこうやって使う奴が他に居たら気が触れていると思った方が良い。もう少し時間をかければ全然勝てる相手だし。
幼さしか感じない全裸の童女が光に呑まれて消える。
……魔物を殺せない。魔族を殺せない。
殺したくないだけだ。ただまぁ、無の境地が無かったら躊躇していた可能性はゼロじゃない。
なんかボス面して出て来たけどな、リアス。
エンシェントデーモンって、最終盤だと結構雑兵扱いで出てくるんだよ。知らずに死ねて良かったな。
魔素の濃いフィールドはそう簡単には消えないので、そこを一旦放置して下に向かう。
「イサカリ。どうだ」
「……手は尽くした」
「いや、沈痛な面持ちになる必要はない。最高の仕事だ。アサシンスキル:貫き手。最大主教スキル:完全再生」
止まっていた。
面白いものだと思う。なんせ、左胸の衣服だけが残っていて、他は全裸になった……縦一文字に両断された美女がそこにいたのだから。
そんなにわかりやすいことはない。
周囲には聖水の瓶が散らばっているし、マスカルウィンの肉体には切り傷がたくさんついていた。恐らく剣で皮膚を切って体内に直接聖水を入れようとしたのだろう。とても良い判断だ。
あとは俺がやるだけ。
貫き手で心臓を貫いて取り出し、完全再生を行う。こちらを咎めもしないイサカリに「成程なぁ」とか思いながら、全裸のまま再生していくマスカルウィンを注意深く観察。
ここちょっと怖いんだよな。完全再生は衣服を再生できないから、アダルトMODの恩恵が受けられん。ワンチャン魔族のまま再生している可能性もあるけど……。
「……痛いな。心臓から手を離せ、人間」
「礼が先だろう?」
「すまなかった。もう見る目があるなどとは言わない。老眼の耄碌婆とでも呼べ」
「奴隷に戻る気は?」
「ある。眷属の呪いをかけろ。受け入れる」
「呪詛スキル:眷属」
なんだか勝手に猛省してくれているらしい。
ラッキーだ。性奴隷を失わずに済んだ。
マスカルウィンの左胸から手を引き抜けば、なんらかのスキルで自ら再生を開始するマスカルウィン。……ああ、やっぱり勃つな。再生フェチ完全に発芽したなコレ。ツバナの時のは芽吹き始めだったけど、これはもうほぼ100で俺のフェチの一つだと自覚できた。
いや再生フェチエグ。
相手を傷つけてから再生させろって? 馬鹿言うなよ。しかもそれでシコれってエグ過ぎだろ。
「それで、イサカリ。説明はしてくれるんだろうな」
「説明も何も、見たままだ。操られていた。制限が死ぬほどあった。言葉のほとんどにルールが課せられていた」
「アイツがエンシェントデーモンだってのはいつから知ってたんだ」
「初めからだ。俺がフレースヴェルグ、お前を探して鬼の国へ来た時、アイツと対峙した。そこで負けて、それで終わり。無様だと笑えよ。殺してくれてもいい」
「何の擁護もできない程に無様だな。笑えて腹がねじ切れそうだ」
「そういう言葉は表情を少しでも変えてから言え。……フレースヴェルグ」
「もうわかってるんだろ? つーか聞こえてたんだろ。俺はお前達の知ってるフレースヴェルグじゃない。ただのヴェルグだ。お前達の知っている方のフレースヴェルグは、魔族侵攻の際にエンシェントデーモンに連れ去られ、魔族大陸へ渡ったそうだ」
「……なんだと」
「そんで、そこで魔族になっているらしい。どうだイサカリ。フレースヴェルグが魔族になっていると考えた時、果たして誰の手に負えると思う?」
一気に絶望の表情になるイサカリ。つまりまぁ、一人目君もそれだけ強いって話だ。
「まぁその話はあとでしよう。イサカリ、この城にはどれくらいの人数が勤めていたかわかるか?」
「少なくとも六十はいたはずだ。お前が殺した魔法使いが五、六人程度だと考えて、あと五十人以上はまだ中にいる」
「天守閣に近づかないように触れを出せる立場か?」
「いや。俺はただの剣客……というより操り人形扱いだった。俺の言葉に耳を貸す奴はいないだろう」
となると。
「仕方ない、天守閣とクゼリ……リアスがいた部屋周辺を消し飛ばすくらいでしかこのフィールドは消せなさそうだからな。老眼の耄碌婆、スーパーノヴァは使えるな?」
「ああ。光の歌声も使えるぞ」
「……それ妖精のか。アレも食うのか」
「無論だ、人間」
魔法使いスキル:放出。魔法使いスキル:圧縮。魔法使いスキル:遅延。
「イサカリ。助けたい奴がいるなら、今から五分以内に全速力で城内駆けずり回って天守閣付近にいる奴全部引っ張ってこい。遅れたらお前の責任だ。場所覚えてたら生き返らせるくらいのサービスはする」
「このっ、フレースヴェルグから優しさとか慈しみとかを全部取ったらこうなるってわかるのが嫌すぎる!」
それなりに疲れているだろうに、神速と壁走りを使って城を駆け上がっていくイサカリ。
「それで、どう思う? まだ終わりじゃなさそうでダルいんだが」
「同感だ。焼き増しこそあったが、これを一個の物語として見るのなら、まだオチがついていない。世界はお粗末ながらにも物語を用意し、そして報酬を用意する。魔族と魔物という舞台装置を用いて行う人形劇に、何の報酬もない、ということはあり得ない」
この世界の仕組み。
魔族と魔物は世界の奴隷であり、世界が用意する舞台の舞台装置という役割のためだけに存在している。ティル・ナ・ローグの門番が魔族と魔物の魂を通さない理由はほとんど後付けだ。時間が止まらないことを嫌う──それは黄泉ルンガンド君の行動理念が必要だったからつけられた"理由付け"に過ぎない。
本当の理由は、不要だから、だ。
物語の障害であり、物語の盛り上げ役であり、物語の端役である彼らは、だからこそ死んだ時に
だからこそ笑われる。
魔族と魔素を切り離すということが、どれほど荒唐無稽か。世界の真相に近づいたものであればあるほど、それを目指す意味の無さを知っている。
「もうひと悶着あるとしたら、何が来るかね。エンシェントデーモンよりも強大な存在と言うと」
「あるいは強さだけではないかもしれない。魔法使いスキル:放出、圧縮、遅延。歌唱スキル:光の歌声」
「搦め手系は勘弁なんだけどなー。魔剣士スキル:プリズムオーラ」
俺とマスカルウィンの手に光の玉が現れる。
ただのスーパーノヴァだけど、遅延で放射を遅らせている。だから時間が経つにつれて球体は大きく大きく大きくなっていく。
「もういいぞ、フレースヴェルグ!」
「まだ五分経ってないが」
「助けたい者は全員連れ出した! ──後は敵だ!」
そうかい。
そういうさっぱりしてるとこ、好感度高いよイサカリ。
「魔法スキル:スーパーノヴァ」
「合図くらいしろ。スーパーノヴァ」
極大。
ただでさえ範囲の広いスーパーノヴァの、その二重。
木造建築の城など、ダンジョン扱いだろうがなんだろうが消し飛ばすに難しいことは何もない。
魔素諸共、光の柱が全てを消し去った。
さて、これは一応後日談になるのだろうか。
俺とマスカルウィン、そしてイサカリは、小高い山の上でソレを眺めている。
「助けに行かなくていいのか、老眼の耄碌婆」
「……育てる力もない。それに、どう努力しようと……あの復讐心を癒せる気はしない」
「一族郎党打ち首の刑。鬼の国で考えれば軽い刑な方だ。長い拷問の末に獄中死、牛車での市中引き回し、首枷をつけての晒し者、水責め……この国の歴史書を読んだときはぞっとしたもんだよ。しかもそれを行うのが魔族でも悪意ある人間でもない、今の今まで正義を振りかざしていた奴らなんだから」
イサカリは今酒が入っているからだろう、少しばかり軽くなった口で、そんな揶揄をする。
マスカルウィンの顔が曇っていくことなどまったく見えていない様子で。
刑の執行を注視する趣味はない。
ただ、この後に何が起きるのか。その観察と対応のためにここにいる。
俺が気になっていることはいくつかあるけれど、一つはあのアセビという女がやったことだ。
「故意による魔族化。あいつは妖になる、とか言ってたけど」
「あぁまぁ、この国じゃ魔化をそう呼ぶんだよ。が……確かに気になるな。呪詛スキルにそんなものあったか?」
「あるワケ。……俺の見間違いじゃなければ、アセビは何か粉末状のものを飲んでいた。その後魔化が始まったはずだ。……粉末状の魔素について知識がある奴は手を挙げろ」
「……」
「……」
「まぁ、だよな」
俺も聞いたことが無い。
というか魔素が固形化する例自体……。
……。
見た事、ある、な。
「人間、気付いたか」
「ああ。そういやアイツの体質がまさにそうだ。そうか、オンリーワンだと思い込んでたけど、別個体がいる可能性はゼロじゃない」
「帰ったら検証を試みるべきだ。あの魔族の魔素を粉末にし、それを飲ませた者……魔物が魔化するかどうかを」
「……気が乗らねえな、そいつは」
「あそこまで無残にエンシェントデーモンを殺しておいて、まだそんなことを宣うか」
「やっぱ意識あったのか。本当にタチ悪いなお前」
シーファ。
魔素を完璧にコントロールできる体質。そして覚醒した時を含む、魔素の物質化。物質に干渉できるほどの硬度を持たせる能力。
あれを粉末状にして、この国に流す……麻薬とかそういう感じで、っていうのなら、アセビの魔化も理解できる。
あるいは絡新婦族の少女もソレか? 父親と母親を助けるために、みたいな?
「もうすぐで処刑が終わる。イサカリ、これ飲め」
「ん……ああ、状態異常回復ポーションか?」
「いや、酔い覚ましだ。ウチの店長のポーションでな」
「──んぐぁっ!?」
弾かれるように顔をあげるイサカリ。いや仰け反った。
一秒にも満たない時間に二日酔いの苦しみを凝縮して体感させ、それが抜けたと脳に錯覚させるポーション、だっけな。説明を受けた時。
こえーよハルフィーさん。それもう毒だよ毒。良薬は口に苦しとかってレベルじゃねーのよ。
「っでぇ……」
「今からが本番なんだ。酒飲んでる方が悪い」
「……ヤケ酒くらい許せよ。俺は……自分の無様が許せねえんだよ」
「許せないなら恥の上塗りはよせ。お前がフレースヴェルグの仲間だった所以を見せてくれよ、イサカリ」
「……その顔と声で言われるのが気色悪ぃ。変装してくれ」
知るかアホ。
「人間。来るぞ」
「お」
何かを察知したらしいマスカルウィンが腰を上げる。
遅れて俺も気付けた。ヤイクニやトオクスの爺さんがいる処刑場の上に、空間の歪みみたいなものが発生している。
「結界であれを囲む! ついてこい!」
「ああ、やってやるさ!」
「老眼の耄碌婆で良ければ力を貸そう」
神官スキル:遮断。
歪んだ空間を囲むようにして張ったソレの内部に降り立って、しっかり警戒しながら待つ。
さて、何が出てくるか。
「……」
「……」
「……なぁこれ、出てくるっつーか異空間への扉なんじゃねぇか?」
「そうらしいな。行くぞ」
「気の抜ける話だ」
うるさいな。読み違えくらいするだろ誰だって。
異空間。
ティル・ナ・ローグや天界は別世界というくくりになる。位相が違うだけの世界というか。
異空間は、たとえば苦闇のお香で行ける空間とか、アイテムボックスの中とか、マイホームの中みたいな、空間的に異なりのある場所を指す。
俺達が来たそこは。
「墓地か。そういや鬼の国で墓地ってみないな。こんだけ死んでる土地なのに」
「ああ、鬼の国は全部地下墓地なんだよ。操り人形だった時に一度見せられたよ。地下の大空洞に並ぶ無数の墓碑を」
「鬼の国は大陸全土が国であるが、その実土地の六割を魔物に占領されている。開けた墓地での土葬は魔物に餌をやるに近いからな。そういう形を取るのは当然だ」
「ほーん、成程」
墓地。一面に広がる墓地。ただ地下空間って感じじゃないな。空見えてるし。
さて、何のために用意された空間なんだか。
大クエストの締めくくりのフィールドだとは思うんだけど……何のアクションもないな。
「聖域でも使ってみるか?」
「ヴェルグお前、心をどこに置いてきたんだ? 墓地でそれは死者の眠りを呼び覚ますとかそういうレベルじゃないだろ」
「どうせ異空間だ。作られた空間の墓地にそこまで大した意味があるとは思えんが。そんなに言うなら死者蘇生するか」
「掘削してやっても良いぞ、人間。墓を掘り返せば宝の一つや二つ出てくるやもしれん」
「人格破綻してる奴しかいねーわここ」
何自分は違いますよ感出してんだ。
お前も相当だろ、イサカリ。
「けど、何にも起きないのは面倒だろ。ルウィン、お前聖女スキルとか使えないの?」
「聖騎士スキルも聖女スキルも神殿に属さねば覚えられんだろう」
「イサカリ……は、いいや。剣士スキルしか覚えてないだろうし」
「いや戦士スキルもある程度使えるが」
「ああそうだっけ。でも意味ないよ今の状況に」
……あれぇ?
こんだけ待っても何のアプローチもない。これアレか? 俺達隔離してその隙に鬼の国を蹂躙とかそういうこと?
良かった、召喚獣待機させておいて。
「聖騎士スキル:聖域」
「おい!」
いや拘束時間長いクセにプレイヤーの操作受け付けない状態が長いゲームって嫌われるんだよ。
エリクシールを飲んでー。
「お、ほら。正解じゃないか」
「……ホントに出てきやがった」
「ほう! エンシェントアンデッドデーモン・ドラゴンか! 久方ぶりに見るな!」
ああそうなの?
俺の目にはなんかドラゴンの仮面つけた血色の悪い美女にしか見えてないんだけど。全裸の。
……エンシェントアンデッドデーモン・ドラゴン? だっる。状態異常の鬼じゃん。あとコリジョンエグそうだな。
「今回俺はヒーラーに回る。ルウィン、イサカリ。全力でやってこい」
「お前、面倒くさいからって……!」
「ふん、人間。もたもたしていては、この老眼の耄碌婆が全て終わらせてしまうぞ?」
「あとアンタも! その見た目で婆とか言うな! まだ二十そこらだろ!」
いやソイツ多分千とか万とか超えてる。
「神官スキル:麻痺耐性、毒耐性、火傷耐性、呪詛耐性、音耐性、幻惑耐性、精神耐性……あとなんだっけな」
「魔素耐性と行動制限耐性もだ!」
「ああそれだ。行動制限耐性。聖騎士スキル:魔素耐性」
いやぁ、イサカリは頼りになるな。
流石最前線アタッカー、デバフへの知識量が違う。
ただ、多分耐性つけても30%くらいの確率で抜いてくるので、都度都度解除を行う。魔素が来たら聖水投げる。
前は俺がNPCに出していた指示だ。それをマクロのようにやり続ける。
そんな眼前で、ものっそい勢いで削られて行くエンシェントアンデッドデーモン・ドラゴン。例に漏れず見えている美女が傷ついていくっぽかったので、本体は見ずに眷属メニューだけを見ているわけだけど、いやもう音でわかる。
声が聞こえない距離で戦ってくれているのもありがたい。
聞こえてきたら耳塞ぐけど。
「じゃあボクから一ついいかな、ヴェルグ」
「ん」
「今回の話。気付いていると思うけど、ボクは関わっていない。だけどドゥームスは手を伸ばしているっぽいんだよね」
「へえ。いいのかよ、俺の肩を持つような情報流して」
「いいよ。これは公平性のための話だ。……いいかい、ヴェルグ。ボクはちゃんと言ったんだ。"君じゃヴェルグには勝てないから、彼の機嫌を損ねるようなことは止めた方が良い"と。だけどあの子は、
「……鬼の国の騒動は俺が来る前から起きてただろ」
「そうだね。それは確かにドゥームスの関わっていない魔族の仕業だ。だけど、あの農村の女の子に働きかけたのはドゥームスなんだよ。まるで何か強迫観念に駆られるかのように、あの子はそれを行った」
……。
「世界の奴隷。じゃあなんだ、今回の件におけるドゥームスの行動は全て操られていたが故の行動だから、許してやってくれって話か?」
「それは確かにそうなんだけど、それだけならボクはドゥームスがやった、なんて言わないよ」
「そりゃごもっともで。んじゃなんだ」
「過干渉が過ぎると思わないかい? 世界からの干渉が」
まぁ、そうだな。
大クエスト一個のために魔素源王持ち出してくるのはやり過ぎだ。
俺とマスカルウィンが感じたように、作為性も透けて見えるほどに露骨なものだった。
「ボクはこれを、焦りだと捉えている」
「焦り?」
「そう。想定外だったんじゃないかな、ヴェルグ。
「……あー」
それは。
まぁ、ありそう。
アダルトMOD入ってなかったら俺普通に人類の守護者的な立ち位置にいそうだし。先代フレースヴェルグを倒し、ドゥームスも殺し、シーファのことなんか眼中にないまま世界を平和にしてそう。その方が効率良いから。
けど、MODという、世界にとっては「ナニソレ」なツールを俺が持ち込んだことで、予定が崩れたか。
そして三人目のフレースヴェルグの名を全く聞かないあたり、まだ開花していない……とか、その辺で。
今、どうにかして俺と魔族を敵対させようとしている?
「それでもこの世界が好き?」
「ああ、良い世界だと思うよ」
「そっか」
それだけ言って。
ファントムが消える。
時間は一秒も経っていない。時間停止ではないけれど、時間の流れから脱するスキル故に。
「どうだろうな」
けれど、と。
今回の件を経て、俺が手にしたのは、「魔族を人間に戻すこと自体はできる」という成果。
そもそも魔族側についた覚えなんかないし、エンシェントデーモンは普通に殺してるし。
なんだろうなぁ。
なんというか、杜撰、というか。
やり口が大雑把過ぎて、危機感を覚えられないというか。
「俺の言う好きな世界と、お前の言う嫌いな世界は、別のものを指している気がするよ、ファントム」
前衛最強アタッカー二人に倒されるエンシェントアンデッドデーモン・ドラゴンを横目で見つつ。
そんな言葉を。