アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ 作:姫鼠まりあ
その後。
エンシェントアンデッドデーモン・ドラゴンを倒して終わり──なんてことはなく。
なんか綺麗に五つくらいに割れた水晶玉みたいなのをドロップしたぞ、とマスカルウィンが持って来たものだから、こーれは五つ集める奴ですね、と俺のゲーム脳が作動。俺の出せる最大範囲での聖域を使えば、四方向から這い出てくるエンシェントアンデッドデーモン・リーパー、エンシェントアンデッドデーモン・スレイヤー、エンシェントアンデッドデーモン・ビースト、エンシェントアンデッドデーモン・プラント。
リーパーとスレイヤーは物理無効をしてくることが多いので対応できるマスカルウィンが、ビーストとプラントはイサカリが対処することで話が決まり、今二人は暴れまわっている。
俺はヒーリングしながら周囲の探索だ。
いや仮にこれがドラゴン玉イベントだったとして、なんでそれが鬼の国の大イベントの締めになるのかがよくわからんから。
そしてこの場所。墓地。
空が見える墓地。地下にない墓地。
ここはなんなのか。
「エトウ、オオシマ、ヒロカワ、オオイ、ワスレナ、イヤサカ……」
今「読める、私に読めるぞ!」状態だ。
文字そのものはあんまり馴染みのない文字なんだけど、細目で見ると漢字に見えなくもない。あと部首がカタカナっぽいのも助けてくれてる。
墓碑に刻まれた文字。この異空間が鬼の国の関連フィールドである証拠。
となれば探すのは。
「……リュウゼツ。だよな、ここが。多分」
でも、家紋は違う。
意は汲んでいるけれど……トオクスの爺さんが新しい家紋に、とアレを贈ったのだとしたら、どうも受ける印象が違うというか。
包まれた大事なものを取り出す、みたいな……俺の感性がおかしいのかな。
「ここは夢幻か。はたまた本物か」
死人に口なし。
だから、どうとでも言える。ヤイクニもトオクスの爺さんも、「幼い頃から見て来た」とは言っていたけれど、ツバナの側仕えでいたわけじゃなかった。そして、どちらかというとスギナという人物への忠誠が高いように思えた。
「発動、ネフティスのタリスマン」
異空間で使うべきアイテムじゃないのはわかっているけれど。
なんだか、そんな気がしたから──行ってみようと思う。
久方ぶりの、死者の国へ。
今回は試練を受けに来たわけじゃない。
だから【死霊のローブ】というアイテムを羽織る。ティル・ナ・ローグに対し、自身は害のない、そして然したる目的の無い存在だとアピールするための装備。
魔物素材の使われた装備だけど、素材は全てゴーストからドロップするもの。故にだろう、自らが纏うそれが肌なのか骨なのか肉なのかはほとんどわからない。半透明故に着こめる。手触りはシルク。
「道士スキル:ガイディングライト」
真っ暗闇が晴れる。
俺の視界に入って来たのは──長閑な農村。
「墓地、にはならないのか」
「ええ。あそこは埋葬されていない者の墓のある場所。歴史に負けた者が眠る墓所ですから、こことは重なりません」
隣に女性がいた。
たおやかな雰囲気の女性だ。そして、どことなく……いいや、がっつりツバナに似ている。
「スギナ、か?」
「はい。スギナ・リュウゼツ。ツバナの母にございます」
「……単刀直入に聞く。ヤイクニやトオクスは、敵か、味方か」
「どちらとも言えないでしょうね。敵ではありません。ですが、味方と呼ぶには、私達リュウゼツ家と戦い過ぎました」
「戦い過ぎた?」
「元よりリュウゼツ家というのは、他の家を併合吸収して出来上がった家です。あの二人は元々は別の家の者でしたが、一族の当主がリュウゼツ家に敗北し、吸収されて、リュウゼツ家の派閥に入りました。ですから──」
「どれほど取り繕っても、その根底にはリュウゼツ家への恨みがあるかもしれない、か」
だからか。
あんなに力説してまで、ツバナの帰還を拒否したのは。ツバナが戻らないことを心から喜んだのは。
「とはいえ、これでリュウゼツ家はその全てが滅びました。もはや彼らの怒りの矛先はどこへも向かいません」
「ツバナは生きているぞ」
「貴方の庇護下にあるのならば、手を出そうと思う愚かさは持ち合わせないでしょう」
……ま、シーファも十分強いから大丈夫か。
つーかもう帝国民だしな。ラムナザール四世に喧嘩を売る奴らじゃないだろう。
「荒れるぞ、これから。鬼の国は」
「そうでしょうね。そしてたくさんの人が死にます。大人も子供も」
「恨みつらみは大局から目を背けさせるか」
「終わりは来ないでしょう。クゼリ派閥で甘い汁を啜っていた商人も多いはず。此度の件で安定した生活が送れなくなった者達は、いずれヤイクニやトオクス達に復讐の火をつけます」
「面倒だな、鬼の国は。強い奴が偉い、じゃダメなのかね」
「強い者が偉いから、強い者を倒して自身の地位を向上させようとする。原理は同じですよ」
「……そうだな。すまん、今のは俺の理解が浅かった」
風が吹く。
冷たい風だ。死者の目にしか見えない光と、死者にしか感じない温もりが満ちる空間。
「言葉を届けるくらいのことはする。これでも運搬業を営んでいてな」
「迷わないこと。許さないこと。受け入れないこと。そして──隠さないことと、偽らないこと」
「そりゃ、子供に託すにはちと呪い過ぎないか?」
「ええ、死者からの呪いですよ」
風が吹く。
「それで、お前の本当の名は?」
「鬼の国」
そりゃ。
恐ろしい話だね。
「死んだか、もう。鬼の国は」
「死にゆく国です」
トオクスの爺さんを信じるなら、スギナものじゃ口調だったからな。
こいつが違うのは一言目でわかったけど、まさか国そのものとは。
「なんであそこにエンシェントアンデッドデーモン類がいるんだ?」
「かつての鬼の国で討伐された妖……魔だからですよ」
「やるなぁ、昔の鬼の国」
「その血もとうの昔に途絶えました。そして此度、リュウゼツが途絶え……後に残るのは、なんでしょうね」
「あの民草は"鬼の国"だとは呼べないか」
「ええ、違います」
「はっきりした否定だ。嫌いじゃない」
風が強い。俺の耐性を気温が抜くようになってきた。
誤魔化しが利かなくなっているのだろう。ティル・ナ・ローグが俺を押し戻そうとしている。
「意識とは、どこにあるものだ。今回の報酬はそれを選ぶ」
「では、貴方と話している私は、なんなのでしょうか」
──成程。
「それでは」
「ああ、ありがとう」
「いいえ。──ですが、もし、いつか。鬼の国の全てが瓦解した時……供養を上げに来てはいただけないでしょうか」
「魔物式でいいか?」
「はい」
「承知した。俺が生きている間に鬼の国が崩壊した場合、俺はこの国を世界に還す。──できないことは言わない。必ず約束する」
「ありがとうございます」
消える。とぷん、と水に落ちたかのように、真っ黒い墨の中に投げ込まれたかのように。
発動、イシスの錫杖。
放り出される。
「お、帰って来た」
「遅いぞ人間」
「速いよお前らが。あれ一匹一匹が金章冒険者四、五人がかりくらいで倒す奴らだぞ」
「フレースヴェルグに比べりゃ弱い」
「人間、お前の方が強いだろう」
それはそうなんだけど。
「それで? ドロップはどうだった?」
「読み通り一つの球体となった。合成を試みたら、こんなものになった。見覚えはあるか?」
マスカルウィンが差しだしてきたのは小さな根付。
俺でも読める字で「鬼」と書かれたそれからは、あの女性と似た空気を感じる。
……そうか、これが。
受け取ってインベントリのタブのお気に入り欄にしまって。
「行くべき場所ができたから、ここからはもう出る。探索し残しはないな?」
「無論だ」
「墓地に長居は気が滅入る」
じゃあ、出ようか。
そうして俺は、例の蜘蛛の村で手順を踏んで、見事あの「おっとぉ」と「おっかぁ」の意識を取り戻すことに成功した。
そして、子供も……とは、行かない。
ファントムの言う通り、子供の方は「魔化した人間」ではなく「魔族」になっていた。
苦闇のお香の空間にも、ティル・ナ・ローグにも、その魂は存在せず。
だから助けられなかったと嘘を吐いて、終了。
あの二人がこれからどうするのかは知らない。どこかへ流れつくのか、野垂れ死ぬのか。実験は成功したから俺は満足だ。
また、ヤイクニとトオクスについても似た感じ。
"鬼の国"から聞いた真実は、けれど知らない体で話を進めて、週に採れるシチサイヌの量と値段の交渉を終え、それらを成立。晴れてシチサイヌの供給が可能となった。
二人を含む「此度の勝者」は何かお礼がしたいとか言ってきてたけど断って、ようやくの帰還。
まぁ、トオクスがダメになったら、また別の農家を探すしかない。なんならそこがダメになるのと同時期くらいに元々ハルフィーさんと取引してた農家が家業を再開するんじゃないかな、とか思ってる。野となれ山となれ。
というわけで、鬼の国への小旅行編は終了……なわけだけど。
「イサカリ。お前はどうする? 俺達と来るか?」
「いや、フレースヴェルグを探しに行く。魔族大陸にいるんだろ?」
「魔素に浸されてお前も魔族になるか」
「勝手に言ってろ。ああまぁ、そうなったら迷わず殺してくれていい。フレースヴェルグもな」
「許可なんかされなくても殺すが」
「だと思ったよ。……そんじゃあな、ヴェルグ……と、ルウィン」
「ああ。お前が俺の知っている通りの奴で、俺は少し安心した。できれば魔族にはならないでくれ。俺は積極的にお前を殺したいとは思わんからな」
「……別れ際に後ろ髪を引くような言葉を吐くとことか、ホンットフレースヴェルグなんだけどなぁ。……じゃあな!」
手を振って。
イサカリの眷属の呪いを解除し、俺とマスカルウィンは転移を選択。
大イベント鬼の国の派閥闘争。
報酬は情報と【「鬼」の根付】と──そして、魔族となった少女の体内に残されていた、【魔素の結晶体】というアイテム。インベにある内は平気だけど、ひとたび取り出せば魔素を撒き散らす超危険物。
まぁ、上々の結果と言えるだろう。
何より魔化した人間を人間に引き戻す術を得られたのがかなりでかい。実現の可不可はおいておいて、レジーナに報告せなにゃー。
「人間」
「ん?」
「此度、失態の数が多すぎた。大局を見誤るとはまさにこのことだ。──ゆえに、その補填……になるか。なんでもいい、どんな命令でもいい。眷属の呪いを用いた非人道的行為でも構わない。この身体、好きに使え」
「それは──スーパードエロイ行為でも、か?」
「ああ。この老眼の耄碌婆に残された使い道は、それくらいだろう」
なんかすんごい猛省してくれてるのありがてえ。
いや別に良いと思うよ俺。子供護りたいっていうのは純粋な気持ちだろ。むしろ見境なく全部殺せばオッケー☆な俺の方が絶対ヤバい。でも全部自分が悪い、って言ってくれてるんだからそんなにありがたいことはないってな。
自分の手元に戻って来たドストライクな性奴隷。
そいつがどんな命令でも完璧にこなすって言ってるんだ。フフーフ、何をしてやろうか。
「そういえば人間。お前、この身体が完全再生を受ける時に陰茎を勃起させていたな。そういうのが好みなら、切り刻んでくれても構わんぞ」
「よく見てんなお前。……い、いや。それは……それは俺の倫理観が」
「何が倫理観だ。……おかしな奴だな、本当に」
いや本当にね。
なーにが倫理観なんだか。
でもなんかあるんだよな俺の中に。越えちゃいけないラインがなーんか。
奴隷を切り刻んで再生させて、それでシコるのは……うーん、やっぱり越えちゃいけないラインな気がする。この感性は大事にするべきだとも思う。
「とりあえず俺はハルフィーさんのトコに成果報告しに行くから、お前は先にホームに帰って、自分が思うドチャクソエロい恰好をしておけ」
「……難しい要求をするものだ」
「なんでも命令していいんだろ? ああ、シーファとかに聞いても良いぞ。心の底からドチャクソエロいと思える恰好ならなんでもいい。んじゃなー」
さて、エロいこととは完全に無縁な生活を送って来た初代皇帝様にとってのドチャクソエロい恰好とは、いったい何なのか。
俄然やる気が湧いてきたな!
俺は今、初めての涙を流している。この世界で目覚めてから泣いたのは多分初めてだ。
「シーファ……」
「なに、ご主人様」
「色々あって多分俺の事嫌いになりつつあるとおもうんだけど、一つだけいいか」
「別に。ご主人様が思ってる程私達薄情じゃないから」
「お前のエロの趣味は本当に良いな!!」
「やっぱり!? これ最高傑作だと思ったんだよね!!」
握手からのハグ。
シーファとはまぁ思想の違いで色々あるとは思うんだけど、ことエロにおいては超信用してるのでこれからも頼っていきたい。
ハルフィーポーションから帰って来た俺が目にした光景。
それは──俺にとってのドストライクな容姿の女が、猿轡と目隠しをされて、椅子に手足を拘束され、エルシータの触手だろう魔物に膣や乳首を弄りに弄られ、そしてアナルに尻尾が入っている――そんな光景。
エロい。シンプルだ。シンプルにエロい。
「ホントはもっとエロエロな服あるんだけど、どれも魔物素材使ってるから、ご主人様にはこれが一番刺さると思いました!!」
「いい仕事をする。ちなみにこのエロ魔物には何をさせているんだ?」
「ご主人様が知ってるかはわからないけど、クリってこう、二股に別れててね。それを内側からぐにっと掴んでにぎにぎする……そのためだけの習性を覚え込ませた触手魔物らしくて」
「新商品か」
「リクエスト商品かな! 私の!」
素晴らしい。
これは──予定変更だ。
「呪詛スキル:眷属:行動制限:何があってもそこから動くな」
「っ!?」
「ルウィン、確かお前、快楽程度じゃ思考領域塗り潰されないとか言ってたよな。じゃああと五時間くらいそのままで放置するけど、まぁ問題ないよな」
「おぉ、良いプレイだ……シンプルな放置プレイ!」
「召喚士スキル:サモン:ロクオンインコ」
「んーぅ……初めて呼ばれた気がするー」
「ああ。初めて呼んだ。ロクオンインコ、俺達が出た後で、この部屋で鳴った音、声を全て録音してくれ。お前最長何時間いけるんだっけ」
「十~」
「じゃあ大丈夫だな。頼んだぞ」
「りょ~か~い」
録画のできるアイテムや召喚獣がいないのがなぁ。
早く発展してくれ人類。俺は機械ほとんどわからん。自作PCくらいしか触ったこと無いから。
天界にもつながる電話とか開発されたらシーファと天使のアウラニも会えるじゃんな。頑張れよ人類。人工聖石とかいう悍ましいもの作ってないで、普通に科学を鍛えろ。
「よいしょ」
「あれぇ? ご主人様、今の行動制限、やっぱり私にもかけてたよね!」
「ああ、いつもの実験が必要になったからな。持っていく」
「あれ! 私良い働きしたよね!」
「それとこれとは別問題だ」
しかし。
何故分かったんだシーファ。俺が機械姦とか触手姦による放置プレイが好きだって。一回も言った覚えないぞ。
……エロの観察眼は侮りがたし、か。
で、いつもの実験用ベッドにシーファをこてんと置く。神官スキル:遮断。
「行動制限解除。シーファ、魔素は出せるか?」
「ええと、どれくらい?」
「できれば鋭利な形がいいから、攻撃に使うような量で頼む。硬くしてくれ」
「よくわかんないけど……はい」
シーファの腕から、メキメキと真っ黒な結晶が生えてくる。結晶っていうか、見た目はアレだな。黒曜石の打製石器。
「これ、触られて感覚とかあるのか? 痛みとかは」
「無いよー。触った感覚もあんまりない」
「そうか。じゃあ削ってもいいな?」
「いいけど……え、本当に何?」
聖騎士スキルで魔素耐性を上げて、他の装備でも魔素耐性を上げて。
その先端を、素材そのままのヒヒイロカネで削っていく。スミススキルの研磨は魔素を対象にできなかったので地力での削り。
下には受け皿。
「シーファ。この粉末状になっていっている魔素は、お前の魔素だと認識できるか?」
「……えーと、うん? 多分?」
「操作は?」
「できるよ。削られても斬られても私の魔素だし。ほら」
ふわりと宙に浮いて、この世界における文字で「シーファ」を描く粉末魔素。
「お前が魔素を出して操れる範囲ってのはどれくらいなんだ?」
「あー、それは、そんなに広くないかも。この部屋を中心に、花壇のあたりまでが半径かな?」
「それでも結構だな。ちなみにこの状態、つまり粉末の魔素は、普通の魔素との違いがあるか?」
「そりゃ、私の魔素だから、私が意図しない伝播をしない、とかじゃないかなぁ。ホントならそうやって触られた段階で魔素進行は起きちゃうはずなんだけど、ご主人様には効かないから検証はできないね」
「仮にこれを体内に入れたらどうなる?」
「魔化するよ。体内から侵入した方が魔化は速いし」
そうなのか。
それは知らなかった。ああけど、心臓近いんだから当たり前か。
「この魔素を完璧にコントロールできる体質である魔族はどれくらいいる?」
「え、全然知らない。私以外にいるの?」
「どうやらいるっぽい」
「へぇー。……それ結構マズいと思うけど」
「ああ、結構マズいことが起き始めている」
アセビが飲んだ粉末。
あれがあらゆるところに出回っていたら、魔化なんか簡単に起きる。況してやそれを「簡単に強くなれる薬」みたいな紹介で入手していたら。
「……それで思い出したけど、昨日の夜かな? なんか神殿が動いたとか何とか」
「誰から聞いた、それ」
「スイち。アクラハイルってわかる? そこで魔化のパンデミックが発生したみたいで」
アクラハイル。
簡単に言えばヴェガスだ。ラスの。歓楽街アクラハイル。
……粉末魔素横行してそうな場所だな確かに。
そんでそこでパンデミックになって、神殿が地図から消した、と。
おいおい、派手に動きすぎじゃねえか?
何が契機になって──。
「あとさー」
低いトーン。
少しの怒り。
「人工聖石、って知ってる……よね。ご主人様、研究院よく行ってるし。……あれ、ダメじゃない?」
──うわ、それか?
日が暮れる前にアクラハイルへと向かう。
ツバナのこととか、放置したままのマスカルウィンとか、まぁ色々あるけど……マストはこっちだと判断した。
そうして辿り着いたアクラハイルは。
「……だからやり過ぎなんだって」
無かった。
あるのは、巨大な穴。陥没した土地。それだけ。
これじゃあ調査のしようがない。
「聖騎士スキル:十字鎧」
「む……聖騎士だと?」
いきなり切りかかって来た女。ああいや、まだいるな。
神殿の粛清部隊だろうけど、あの時の奴はいないのか。話通じる奴一人寄越してくれないかな。
「何者だ」
「最大主教スキル:光の鐘楼」
説明が面倒なので説明の要らないスキルを使う。
ふはは、どうだ。教会の最高位にならなければ取れないスキルだぞ。ひれ伏せひれ伏せ。
……ひれ伏さんな。
「教会の手の者が、何をしに来た」
「ここは我ら神殿が預かると通達を入れたはずだ」
「いまさら何を言われる筋合いもない」
ああ。
そうか、なんか微妙な敵対関係というか、獲物を奪い合うような関係にあるんだっけ、聖堂と教会と神殿って。
最大主教スキル使ったのはミスったな。「俺は教会の人間です!」ってアピールしたようなものだ。だってのに最初に聖騎士スキル使ってるから……じゃあ神官スキル使って聖堂所属アピールでもすればもっと混乱するか?
「アクラハイルで、粉末状の薬物が出回っていた……という話を神殿は把握しているか?」
ええいぶっこめぶっこめ。
俺に頭使った交渉とかさせんじゃねえ。頭は良くないって言ってるだろ!
「……」
「知らんのならお前達に用はない。もう少し上の人間を呼んで来い」
「教会の日和見主義者が、何を偉そうに」
君じゃ話にならないから上司の人呼んできてクレームが通じない、だと。
だとしてだけど。教会の人間見下し過ぎだろ。制止する奴もいねーし。
頼む、あの話通じる奴来てくれ。名前聞いとけばよかったマジで。俺アイツとなら友達になれる気がするんだ。
「戦士スキル:威圧」
「そこまでにしてくれ、二人目のフレースヴェルグ。彼我の差も認識できない木っ端にスキルなど使うな」
来たぁ!
んで好きだねお前木の後ろにいるの。いいけどさ。
「──貴方様は!?」
「散れ。一言も発することなく」
その言葉の一言で、何か言いたげだった粛清部隊の全員が散る。
発言力あるねぇ。やっぱり幹部級だなコイツ。
「気を害したか、二人目のフレースヴェルグ」
「害してるとしたらその呼び名だよ粛清部隊。もうちっと付き合いが長くなりそうなんだ、名前くらい教えろ」
「……メルキオル。こちらは、ヴェルグと呼べばいいか?」
「お、なんだできるじゃないか。そうだよ、それでいい」
ゲームでは知らない名前だけど、名前の意味を考えたら納得のポジションというか。
神殿はみんな布面してるから、イベントだろうが所属しようが名前とか全く分からずに終わるんだよなー。
「粉末魔素について、だろう。聞きたいことは」
「ああ。アクラハイルに出回っていたはずだ。出所が知りたかったんだが、この有様じゃあな」
「……神殿は戦争に関与しない。その上で言う。出所は恐らくシアルル王国の薬物密売組織だろう。我々がここを消す前の調査段階でそう言った話が出ていた」
「やけに風向き悪いな、王国」
「お前もそう思うか、ヴェルグ」
カローライナの人身売買組織に、粉末魔素の薬物密売組織。
粉末魔素やカローライナとの結びつきはないものの、両組織ともゲーム本編にあった組織だ。
「まるで世界が王国を滅ぼさんと動いているような、うねりのようなものを覚える」
「それは個人の感想か? それとも神殿の見解か?」
「無論、前者だ。人工聖石の件もだが、近々人間は自らの行いで首を絞める結果を迎えそうだと、そう愚考する」
「大義名分ができちまったからな。周辺諸国が王国に刃を向ける理由と、魔物と魔族が帝国に牙を剥くれっきとした理由が」
いつも魔族や魔物とはあくまで同族、あるいは同僚程度の関係であって、深い関係はありませんよ、ってスタンスのシーファでさえあんな嫌悪感を醸し出したんだ。
人間に理解のない連中からしたら、人工聖石は吐き気を催す邪悪だろう。
人が王国を滅ぼし、魔が帝国を滅ぼす。そんな物語が見える。
「……お前には先んじて伝えておく。条件は限定されるが、魔化した人間を人間に戻す術を確立した」
「それは……公にするには難しい情報だな。研究院に報告するつもりであれば、やめておけ」
「ああ、俺も今止めようと思い始めてたとこだよ。……これ以上人類を調子に乗らせるのはマズい気がする」
まるで人外の発想だけど。
このまま行くと、本当に、何もかもが蹂躙されて終わる……気がする。全部気がするだけだけど、気がするだけで十分だろう。
「メルキオル。今の話を上に伝えるかどうかは任せる」
「承知した。……であるならば、こちらからも提案が一つある」
「なんだ?」
さーてこっからどう動こうかなー、とか考えてる俺の耳に入ったのは。
「神殿に所属しないか、ヴェルグ。やり方が気に食わないのであれば、お前が変えればいい。それだけの力があるのだから」
そんな誘い文句だった。
次は幕間になりますが、11/2は私用のため更新お休みとさせていただきます。ご了承ください。