アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ 作:姫鼠まりあ
帝国からエイルニルス公国へ向かうにあたって、安全なルート取りをしようと思うと、いくつかの街道を使う必要が出てくる。けれどその全てが遠回りであり、片道だけで半日かかるかかからないか、という距離だ。
ただし最短ルート……魔物の多く生息する森を突っ切って、崖から飛び降りてまた森を抜ける、というルートを取ればその時間は二時間とかからない。それほどまでに危険な森であるし、それほどまでに広大な森である。
だから、多少の強さを得たとはいえ、まだまだ銀章冒険者──怪力を除いて──程度であるツバナがエイルニルス公国で訓練を行うためには、毎回誰か一人が付き添いをする。ツバナ一人であの森を突っ切るのは多少の不安が残るからだ。
ただし今日は違った。
それはもう大勢での大移動──昼食を作るためのメアリーの分け身をホームに残し、その他全奴隷・元奴隷がエイルニルス公国に向かっている。
何故って今日は約束の日だから。
そう。
──女子会の日である。
「皆さま、ようこそエイルニルス公国へ……というやりとりは、もういいですのね」
「流石に七回目だし」
「ええ、では。あちらへどうぞ」
円状のテーブルに着くケル、ツゥ、シーファ、アウラニ、ツバナ、メアリー。そして最後にリアが座って、それは始まった。
第七回奴隷女子会。かっこ元奴隷も含むかっこ閉じ。
「では──まず、議題のある方を優先しましょう。誰かありますか?」
「私とツバナ様、シーファ様、ツゥ様、アウラニ様から一つずつ」
「あら、ケルはいいの?」
「特にはないかな」
「わかりましたわ。じゃあ……話の長そうなシーファさんは後にして、ツバナさんからどうぞ」
「おかしい、密接なかかわりはほとんどないはずなのにこの扱い……どうして、どうして私はいつもこんなぞんざいな扱いを……!」
「日頃の、行いでは、ないですか?」
「アウラニち!?」
議題。
これは女子会ではあるが、会議でもある。例の馬鹿野郎が議題に上がることはもちろん多いけれど、それ以外のことも結構あがる。それら議題についてあーだこーだみんなが言って、納得したりしなかったりして、完全燃焼したり不完全燃焼になったりして、そろそろいい時間だし帰るねー、までが女子会の流れ。
実のある話はほとんどないのである。
「では一番槍を務めさせていただく。私からの議題は──男からの誘いの断り方について、じゃ」
「なに、自慢?」
「モテるもんねーツバナち」
「美しい、方ですから、ツバナさんは」
「ええい茶化すな茶化すな。真面目に困っとるんじゃこっちは。……近頃本当に多くての。ギルドにいようが街にいようが、やれ"俺達とレストランにいかないか"だの"一杯どうよ"だの……そんな尻軽に見えるか、私は」
「尻軽に見えるかどうかはさておき、単純に噂が原因であるかと推測します」
「噂? なんのじゃ?」
「──ご主人様に見向きもされず、好き合いかけた男は別の女とくっついた、もうすぐ婚期遅れの鬼女」
「お主じゃなメアリー。その噂流しとるのお主じゃろ!」
「おや、どうしてバレたのでしょう。出所は巧妙に抹消……隠しておいたはずですが」
ワーギャーし始めた二人を余所に、リアとツゥがふむと考える。
そして同じ考えに至ったのだろう、二人は顔を合わせて、では私が、とリアが口を開く。
「あの……何か不都合がありますの? それ」
「は?」
「いえ、ですから……良いことではありませんか。勿論ツバナさんにも選ぶ権利はありますし、そういう軽薄な男性が嫌、というのなら仕方のないことですけれど、その……ヴェルグさんが好きで好きでたまらない、というわけではないのでしょう?」
「……いやまぁ、それは、そうなんじゃが」
「でしたらむしろ出会いの場と考えても良いのでは? ヴェルグさんのあの調子を見るに、当分は恋愛だのなんだのをしなさそうですし、ずっと奴隷でいては本当に婚期を逃してしまいますのよ?」
「ツバナさんは鬼の国へ戻る気もないと言っていたし、帝国に根を下ろすのであれば、ヴェルグさんも応援してくれるんじゃないかしら」
「む……いや、その……あるじゃろ、こう、主への……なんじゃ、恩とか色々」
「それは別に持っていても問題ないでしょう。私だって返し切れない程の恩がありますのよ。けれどこうしてエイルニルス公国にいますし、政治的な話になってしまいますが、いずれ婚姻も結びますの。それでも、誰と結ばれても、子を産んで母となっても、老婆となっても、その死の直前であっても……恩は忘れるつもりはありませんわ」
刺さる刺さる。
元箱入りお嬢様であり、従者との死別や自身の瀕死をこそ経験すれど、ツバナ自身の精神は未だ幼いと言わざるを得ない。ギルドでの、冒険者としてのあれこれで急激な成長を見せているけれど、見た目に反してまだまだ子供だ。
対しリアは似たような境遇にありながら既に大人としての自己を確立させている。考え方もそうだし、割り切り方もまたそう。
正面切って戦うにはあまりにも分が悪すぎた。
「結婚や恋愛が全てとは言いませんわ。生涯独身のまま生を終えることも、本人が良いのなら良いのでしょう。けれど少しでも興味があって、そして自身の所在に居心地の悪さを感じているのであれば──結婚は一つの契機になり得ます。そこは恩義に縛られていい部分ではありませんわ」
「居心地の悪さ……」
「ええ、そうですわ。感じていると聞いていますのよ。家事もできず、戦闘に長けるわけでもない貴女は、ヴェルグさんにとって要らない存在なのではないかと悩んでいる、と」
「……もうここの訓練兵に愚痴を零すのはやめる」
「ふふふ、これは私の失礼が過ぎましたわね。ごめんなさい」
悩んでいる、どころではなかった。
事実だった。ツバナは、というかツバナも、他の奴隷たちも、それは感じている。ヴェルグなんかは面と向かって言っている。
現状最も何もできないツバナの居所は、と。
「あとは、そうですわね。正式にエイルニルス公国の兵士となる、という未来もありますわ。この国に住めば、男性から声をかけられる、ということはなくなりますのよ」
「リア様。それは何故ですか?」
「この国は女性の方が強いんですの。ラクニシェルやアニスもそうですが、全体的に女性兵士の方が男性兵士より強い傾向にあって……だからこそ、皆悩んでいますのよ。誰も声をかけてくれない、と。この国の女性からしたら、ツバナさんの悩みは頬をひっぱたきたくなるようなものでしょうね」
「てゆかさ、良くない? 一回ヤってみて、合わなかったらバイバイでいいじゃん。どーせそういう風に声かけてくる奴らって一夜のことしか考えてないよ。一回ヤらせてあげて、下手なら下手って言って鼻っ柱折ってやればいいし、性格好きじゃなくても上手かったら時々使えばいいし。超幸運にも気があったら付き合っちゃえばいいしさ」
「シーファさんの考えは極端ですけれど、同意見ですの。それに、ツバナさんはヴェルグさんの奴隷であることを公言しているのですから、よほど愚かでもない限り、ツバナさんを陥れようとはしていないのではないかと思いますの。本当にただお茶をしたいだけですわ」
「いやただお茶をして何になる。体目的でしかないだろう」
「だからー、ツバナちは美人だから、美人と一緒にご飯食べるだけで楽しいの、あっちは。ツバナち反応も可愛いから、勿論セックスは考えにあると思うけど、それなしでもとりあえず仲良くなりたい、とか思ってるだけだと思うよー」
下ネタに弱いアウラニも、黙ってこそいるがシーファに同意するように頷いている。
普段が"アレ"だからわかりづらいけれど、ヴェルグの庇護下にある、という盾は非常に強い。
「恋愛ってそっからだよ、ツバナち。そういう所で友達になって、気があったら段々仲良くなってって、気付けばゴールイン。女ばっかの奴隷ハウスで過ごしてたら出会いとかナイナイ」
「……少し、考える。私の議題は取り下げじゃ、リア」
「はい、わかりましたわ。ご自身が満足できる判断をしてくださいね。それでは……次は、アウラニさん。お願いしますわ」
「はい」
議題が解決しようとしなかろうと関係ない。
言いたいことあーだこーだ言って本人がもういいやってなったらその話は終了である。
「私の、議題は、私について、です」
「アウラニさんについて?」
「はい。ご存じの方も、いるでしょうが、最近私は、天使と人間のハーフ、ではなくなりました。人間に、なりました」
「……それ開示権限大丈夫ですの? 私……」
「大丈夫ですリア様。口外しなければ」
「わ、わかりましたわ」
ハーフを片方の種族に分離する。
それは当然ながら誰もが知る技術ではない……というか、なんなら最高位権限でないと存在を知ることさえ許されない外法をもとに成り立つ術。仮にレジーナやどこぞの粛清部隊がメルキオル、あるいはラムナザール四世であっても開示を許されない秘法。
リアは公姫ではあるけれど、本来ならば聞いてはならない情報だったと言える。
「ええと、申し訳、ありません。失念、していました。……それで、その、私は、天使ではなくなったので、天使スキルが、無くなってしまいまして」
「あーねー」
「天使スキルというのは、一部のスキルは、ヴェルグさんにも、通用するほど、強力なもの。私は、それを用いて、敵にデバフをかけたり、味方にバフをかけたり、していました。けれど」
「ああ、人間になったことでそれらが無くなって、人間として覚えているスキルしか残っとらんのじゃな。……にしては強いように思うがの。少なくとも私より」
「そうですね。アウラニ様は天使スキルが無くとも高い運動能力を有しています。ツバナ様より強いのは確実でしょう。それで、そんなアウラニ様の悩みは……ずばり、どんなジョブを選べばいいか、ではありませんか?」
「そうです。私の、新しい、ジョブ。何が良いと、思いますか?」
ジョブ。それによって覚えられるスキルが決まる、人生における決断の一つ。
無論一つのジョブにしかなれないということはないけれど、実戦に耐えうるほどに鍛えるのなら、一つのジョブを極めた方が効率が良い。
今までは種族スキルで事足りていた全てに穴が開いた状態であるアウラニ。その穴埋めに足るジョブは。
「アサシン、やる?」
「それなら私達が教えられるわね」
「無理じゃろ。アウラニはゆったりおっとり系じゃし。普通に戦士はどうなんじゃ?」
「戦士スキルは、ほとんど、覚えています」
「そ、そうか……じゃとすると、デバフ……呪い師とかになるか」
「元天使と人間のハーフなアウラニちが呪詛スキル使いまくるようになったら……闇堕ち感あっていいかも!」
「闇堕ち……?」
「やはり、そう、ですか。……わかりました。それに、してみます」
「あら、そんなあっさり決めてしまって良いんですの? ここにはいろんな種族、あるいはスキルを使える方がいるというのに」
「私は、あくまで、デバッファー。前と同じ、使用感のスキルを、使えた方が、咄嗟の時に、対応しやすそうです」
「……本人がいいならそれでいいですわ。では次に行きましょう。……ツゥさん、どうぞ」
「ああ、私の議題は多分シーファさんと同じだから、メアリーさんを先にどうぞ」
「え、そうなの?」
「ええ」
ツゥとシーファはちらりとケルを見る。
タイミングが同じだったためだろう、二人は通じ合うように笑顔を浮かべた。
「では僭越ながら。──議題はご主人様についてです」
「メアリーさんの挙げる話題はいつもそれですのよね。そして決まって同じお話を」
「はい。七回目となりますが──ご主人様を参ったと言わせる方法について、どうかお力添えいただけたら、と」
全員が「またそれか」「やっぱりか」の顔になるのも気にせず、メアリーは続ける。
「最近、ご主人様からの私へのセクハラが酷くなっています。そろそろ復讐したいです。知恵をお貸しください」
「そもそも先に仕掛けてるのメアリちじゃん。はいこの話終わり」
「そうねぇ、あんまりヴェルグさん自らメアリーさんを、というのは……ああでも、この前の海の時は完全にそうだったけれど、あの時メアリーさん一人だけ逃げていたし……」
「お主が悪意持って主に接しなければ仕返しもない。終わりじゃ終わり」
「皆様、私の扱いがシーファ様並みに酷くなってきていますね。でも私が納得していないのでもう少し話を続けます。つまりですね、私が言いたいのは亀頭責め以外のご主人様の弱点を見つけたい、という話なのです。何かエピソード等あればお聞かせください」
サッと両手で耳を塞ぐアウラニ。
けれどその手を剥がす者がいた。
シーファである。彼女はニタァと、ニヤニヤァといういやらしい笑みを浮かべながら、アウラニを拘束する。
「アウラニちさぁ……この中で唯一、オティヌティヌついてるよねぇ」
「確かに。男の弱い部分についてはアウラニが一番詳しいじゃろ、そういう面では」
「ちょっと、あの、やめてください。あ、シーファさん、椅子を引かないで、その、ちょっと」
どれどれ、みたいな感じでアウラニに元へ集まってくる面々。
彼女の手を後ろ手に拘束したシーファは椅子を引き、突然の注目に頬を赤らめ始めた少女の股間を露にする。無論脱がせるまでは行ってないないが。
「実際、どんな感じなの? ついてるって」
「確かに気になるわ。触ったら痛いのかしら。それとも気持ちいい?」
「女のソレと同じなら、強すぎる刺激は痛みにしかならんのではないか? やはり優しく触り、包皮を含めて擦り上げるなどが効果的じゃろう」
「ほう、ツバナ様の自慰はいつもそうやっている、と」
「い、一般論じゃ一般論!」
聞くのは憚られていたけれど、やはり気になっていたこと。
だって他の皆には無いから。アウラニだけが、両方持っているから。
「ほらほら、アウラニち。答えないと捲っちゃうよ~?」
「ど……どんな、感じと、言われましても……生まれた時から、あったものなので、答えられません!」
「何されるとキツいの? やっぱり頭を擦るやつ? それ以外は?」
「まぁ女でも陰核をああして擦られたらキツいからの。それ以外が知りたいところじゃ」
「ほう。ツバナ様はそれをやったことがある、と」
「ええいさっきからうるさいぞ! そういうところが反撃の要因じゃろうが!」
アウラニは思わず調停を使いたくなった。静観しているリアを除く全員に。
でも天使スキルは天使の自分が全て持って行ってしまったので使えない。今だけ貸してくれませんか
「房中術には、尿道責め、というのもあるわ。勿論いくらか慣らしてからじゃないと痛いだけだけど、幾つかのスキルと併用すると非常に効果的な責めになるのよ」
「あ、そっか。ツゥは昔からやってたんだ」
「ええ、この幼い体を使って、一頻り満足させた後に殺したり、逆にわざと拙くして油断させて殺したり」
「いきなり物騒じゃな」
「それで言うと、私も結構知ってるけど、やっぱり持ってる側の意見が聞きたいかナー私は」
「……その、先端は、弱いと、思います。……触ったことは、ありません。あと、陰嚢も、触られると、痛みを伴います。にょ、尿道は……わかりません。やったことが、ないので」
これでもかと顔を赤らめながら言うアウラニに、シーファはそれはもう有頂天だ。ニヤッニヤしている。
そんな、最悪レベルのセクハラムードを壊す者がいた。
リアである。
「あの……正直言って、アウラニさんは経験人数の問題的に、ヴェルグさんへの参考資料にはならないと思いますの。ヴェルグさんは性行為に躊躇が無いようですし、恐らく私達の知っている以上の女性を抱いてきて、その都度色々なプレイをされていると思いますわ」
「一理あります。穴に突っ込んだこともないアウラニ様と百戦錬磨のご主人様では何をされて弱い、という話での参考資料にはならなそうです」
「逆に、やはりシーファさんやツゥさんといった経験人数多めの方に、男性がどのようなことをされて喜ぶか、弱るか、よがるか、というのを聞いて行った方が良いと思いますの」
「それなら……そうね、まず媚薬はお尻から直接直腸へ入れること。効きが早まるわ。あと、陰嚢と肛門の間にある会陰という部分は、精嚢から陰茎へ精液を送るための管が通っているの。ここをぐい、と押してやると、男の射精は止まる。初めから圧迫している状態で射精させてやれば、頭は射精しているのに体はしていない、という状態になって、通常より多く射精させられるの。これとアサシンスキルの弛緩を併用することで、連続射精で心臓発作を起こさせる、っていう少し遠回しな暗殺手段が取れるわ。これの良い所は証拠が全く残らない事。そして男はずっと気持ちいいだけだから、死ぬ寸前まで殺されかけていることに気付けないの。そういうプレイだと思うから」
「ストーップ! ツゥさん、ストップですわ! アウラニさんが茹でオクトパスのようになってしまっていますの。続きはメアリーさんとツゥさんでこっそりお願いしますの」
「……あら、まだ序の口なのに」
「あとツゥ、途中から暗殺手段の話になってた」
リアは心の中のメモに一つ書き加える。
・ツゥさんも割と暴走しがち。
「皆様、ありがとうございました。ツゥ様、あとでもう少し詳しいお話をお聞かせください」
「ええ、いっぱい教えてあげるわ」
「仲良きことはなんとやらですわ。それでは最後の議題。ツゥさんとシーファさんの共通の議題というのをお聞かせくださいまし」
「はーい」
「んじゃツゥち、言って言って」
「いいえ、私が抑えるから、シーファさんがお願い」
「あ、成程。りょーかい!」
何かを察したのだろう。
ケルがその場を離脱しようとした、その瞬間……不可視のナニカがケルの背を押し、その態勢を崩させる。彼女がキッとメアリーを睨むも時すでに遅し。ほとんど同じ技量であるツゥにケルは押し倒され、拘束された。
「私達からの議題は──ケルちの感情について、でーす!」
「余計な、ことを……!」
「まぁまぁ」
まるで罪を犯した罪人のように。
ケルの答弁が始まった。
「ええと、では司会進行もお任せいたしますわ。なんとなく察しましたので」
「了解! じゃあケルち、単刀直入に聞こう──ご主人様のことをどう思っているのかな!」
「仲間。以上」
「恋愛感情は?」
「前はあったかもしれない。でもそれは、恋に恋をしていた、に近しい。今の私がヴェルグに向けるのは、ただ彼の近くに在ればいいという感情のみ」
「ほんとにィ~?」
「本当に。ああでも、一度は抱かれてみたいとは思っている」
「恋愛感情ないのに!?」
「無くてもセックスはしてみたい。私はまだ大人とのセックスをしたことがないから、身を預けられる男性というとヴェルグくらいしか思い浮かばない。……アサシンの性質上、余程信頼できる相手じゃないと、セックスなんていう隙を晒す以外の何物でもない行動は、なかなか難しい」
成程、と納得する面々がいる一方で、未だ「ホントにィ~?」な顔のシーファとちょっと困り顔のツゥ。
加えてメアリーもなんだかおかしな顔をしている。リアは難しい顔だ。
「遠回しにしなくていい。聞きたいのは私とグノーシスがセックスしたことについて、でしょ」
「ぬっ……う、うん。まぁそうなんだけど。……あれ、レイプ……じゃないんだ、よね? 合意のもとって……」
「そう。確かにグノーシスの理想の落日やガーリーの精神操作はあった。だけど、今でも私はグノーシスやツゥのことを家族だと思っている」
「騙されていたに等しいのにか?」
「悪意があろうと、裏切ってこようと、自分本位だろうと、家族は家族」
「いや家族だからセックスできる、はおかしいと思うんだけどナー」
「そこはただ雰囲気が良かったから。久しぶりに会ったし、変わってなかったから、シた。自分で言うのもなんだけど、子供同士の児戯に等しかったし……私はセックスにそこまで高い敷居を設置していない。互いの所在を確かめ合うツールでしかない」
シーファにとってセックスは快楽を得るためのツールだ。ツゥにとってのセックスは暗殺のための手段だ。ツバナにとってのセックスは婚姻を結ぶ男女が行う神聖なものという認識で、生殖機能の無いメアリーにとっては気持ちのいいらしいもの。
アウラニは未だその存在を知らず、リアは──。
「ケルさん。一つ質問良いですの?」
「なに?」
「ケルさんって結婚願望ありますの?」
「無い。誰かと番いたいとも、子を為したいとも思っていない。ただ、今のところヴェルグのそばが一番心地いいから、いるだけ」
「成程。そういうことですわ、ツゥさん」
「そういうことみたいね。……ねぇ、ケル。もしヴェルグさんが突然いなくなったら、悲しい?」
「悲しい。泣くと思う」
「じゃあヴェルグさんが誰かと結婚して、あの家からいなくなったら?」
「それは別に良い。祝福する。ヴェルグについていける女がいるとは思えないけど」
「じゃあその女性が何かしらのしがらみを抱えていて、一生ケルとヴェルグさんは会えない、ってことになったら、どうかしら」
問われ。
ケルは一瞬だけ考えて。
「それでも祝福する。さっきみんながツバナに言ったのと一緒。恩はある。抱えきれない程の恩がある。私は勝手に救ってもらったと思ってる。ヴェルグにそんなつもりがなくとも。でも恩があるからって、私の人生も、ヴェルグの人生も、互いに縛り付けて良いものじゃない。いなくなったことに虚脱感を覚えて泣くかもしれない。後悔するかもしれない。でもそれは多分、私にとって必要な事」
だから。
「死、だけは……かな。彼が幸せになる未来なら、そこに私がいる必要はない。私が幸せになった分、私が救われた分を、救われたらいい。それは私の手によるものである必要はないし、私の手によるものでもどっちでもいい。だけど、死だけはダメ。ヴェルグが死んだら、悲しいのもあるけど、私は一生後悔するから……それが嫌だから、私は仲間として彼の隣に在りたい」
「恋愛感情じゃなくても、家族愛じゃなくても、愛情って成立するものよ。それは親愛だから。ケルの価値観、世界観は少し独特かもしれないけれど……今はこれで納得してくれないかしら、シーファさん」
「あ、やっぱりツゥちは"ソッチ側"からケルちのことを見てたんだ。……んー、まぁ。いいんだけどね。私から見るとケルちって常に身を引いているというか、なんか我慢してるように見えてたし、レイプのこともご主人様へ心配をかけないように和姦だったってことにしようとしてるのかなー、とか思ってたけど」
それはあるいは、あまりにも良い好例としてヴェルグがそうであるように。
あまりにも一般からかけ離れた価値観を持つ者たちは、一見して理解され難い。「隣にいる」という言葉の重みも、価値観の相違で簡単に軽くなるし、簡単に重くなる。「仲間」という言葉もそうだ。「家族」「奴隷」「幸せ」。
ケルにとってのソレ。ヴェルグにとってのソレ。皆にとってのソレが、ただ、そうであったか、そうではなかったか、の違いがあるだけで。
ここの関係性は実は全く拗れていないのである。
「では、お二人の議題はこれで終了でよろしいでしょうか」
「ええ、大丈夫」
「はーい」
「ありがとうございますわ。……最後に、私から一つ」
「ああ、あるんだ。なになに?」
「これはここで出すべき話題か微妙なのですが──先日わが国で行ったツァリラストュ遺跡大攻略時の話です」
リアは、いっぱいの空気を肺に溜めて、吐き出して。
「そこにいた魔族……名をイゴナという魔族が……その逃走の際の去り際に、こんなことを言い残しまして」
それは。
「"私はフレースヴェルグの女だぞ!"と……。皆さんどう思います?」
それは。
夕方の更新も幕間になります。
簡易登場人物紹介 -主要人物編-
| ヴェルグ | 三周目ステータスゴリ押し&圧倒的手数初見殺しマン |
| ケル | 元奴隷暗殺者 |
| ツゥ | シーファの奴隷暗殺者 |
| シーファ | 実験対象奴隷 |
| ツバナ | シーファの奴隷鬼の国の女王 |
| メアリー | 家事炊事奴隷 |
| アウラニ | シーファの奴隷兼戦闘奴隷 |
| アウラニ | 色々吹っ切れた天使 |
| マスカルウィン | 性奴隷兼戦闘奴隷兼初代皇帝兼老眼の耄碌婆 |
| カローライナ | 火種奴隷兼王国第二王女兼銀閃のカローライナ |
| リア | 元奴隷現公姫 |
| スイ | 帝国ギルド長 |
| ラヴ・グラットル | 拳少女 |
| メルキオル | 神殿粛清部隊 |
| ハルフィー | 癒し店長 |
| ノズヴェルガー | 訳アリ奴隷専門店商人 |
| ラムナザール四世 | 皇帝 |
| ドゥームス | 魔素源王 |
| ファントム | ストーリーテラー |
主要人物以外は午後の幕間で。