アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ 作:姫鼠まりあ
相貌の叫び(G度薄め)
神殿に所属しないか、というメルキオルの誘い。
それを俺は。
「断る」
「そうか」
断った。
「お前達が気に入らないのなら、変えるのではなく潰す。神殿の本拠地がどこなのかもわかっている。わざわざ所属して是正して粛清して在り方をどうこう、なんて世話をしてやる理由がない」
「聖堂、教会、神殿の全ての真髄に精通しているお前ならば、その決定には納得が行く。それならばこちらからも情報を一つ開示しよう」
「神殿の方針か」
「そうだ。これから我々は、
「……まるで証拠が出ること自体は確定している、みたいな言い方だな」
「上はそのつもりなのだろう。狂っていると吐き捨てたところで変わりはしない」
そのつもり。
成程、メルキオルが感じていた「うねり」は、俺の持っている情報だけじゃなかったか。
「お前の行動を制限するつもりはない。指図をするつもりもない。だが……何か王国に縁を持っているのならば。あるいは王国が消えて都合の悪いことがあるのならば、早めの行動をした方が良い」
「王国に消えられてマズい理由はあるが、俺の理由じゃない。世界にとっての理由だ。神殿がその方針を持っているってことは、その理由を神殿上層部は知らないと見て良いんだな」
「……聖騎士スキル:階梯の間」
一気に世界が変わる。荘厳な気配が満ちる。
聖騎士スキル:階梯の間。本来であれば自身と敵の一対一の空間を作り上げ、必ずどちらかが天に召されるようにする……という決闘のためのスキル。
無論メルキオルがそのためにスキルを使ったわけではないことくらいわかる。
「外部からの目を遮断したか。それで、何を話したい」
「神殿はもう終わっている。上層部の極一部を除き、他全ては魔族を滅した己らが世界の王となって君臨することしか考えていない。──王国の地下に眠っているモノの存在を上層部は知っている。知っていて呼び覚まそうとしている。腰の重い魔王より、認知の遠い魔素源王より、もっとも"それらしい人類の危機"だからだ。その際に発生する犠牲は、仕方がないものとして扱おうとしている」
なーるへも。
……じゃワンチャン、エリック・サンダーソンがこんな時期にコトを起こしたのも、神殿が関与している可能性アリ、か。
あー……となると、一人目のフレースヴェルグが魔族になってるのはマズいな。最強の騎士団長は実は魔族だった、なんてでっち上げもできる。人間にしちゃ強すぎるスペックと、現時点で魔族である事実。死人に口なし。死んじゃいないが、魔族となったフレースヴェルグの言動は信用に足りない。
カローライナの話を抜きにしても王国へ行くのはアリ……だが。
「メルキオル。それは救援要請か?」
「否。神殿に自浄作用は無くなっているが、それでも我ら末端はヒトを魔から救わんと志した者の集いである。仮に上層部の思考に
「腐っても上層部。聖騎士と聖女がわんさかいるぞ」
「故にだ、ヴェルグ。──近い未来において、神殿はその機能を失うだろう。死力は尽くす。だが止められるかどうかは五分に近い。いや……五分に持っていけたら、幸運、といったところか。そうなった時、再度の魔族侵攻を止められるのはお前しかいない。聖堂と教会は護りには長けていようが攻撃力に欠ける」
「人類の守護者になれ、といわれているように聞こえる」
「忙しくなるぞ、ヴェルグ」
人類の守護者になるつもりはないけど。
別に王国が無くなったって構わない。イグニスメンバーやグラットルなんかの知り合いはいるけれど、自らの生活を崩してまで守りたい相手かと言われると微妙だ。イグニスなんかは自分たちでどうにかするだろうし。
「神殿はお前が見ていない仕事をしている。様々なことをやっている。その全てが機能しなくなった時──お前は新たな秩序を作り出すしかなくなるだろう」
「忠告はありがたく受け取っておく。だけど、いざとなったら俺はお前達の敵に回るやもしれん。秩序側でいるかどうかは俺の目的とあまり関係がないからだ」
魔素と魔族を剥がす。
その研究に、人類の行く末はあまり関係がない。
ただ、だからといって帝国の知り合いに死んでほしいってわけじゃないし、戦争が起きて欲しいと願うわけでもない。一辺倒にはなりきれない。
……ならば。
「メルキオル。一つ考えが変わった」
「なんだ」
「神殿に所属するつもりはない。だが、神殿潰しなら手伝う。その上層部の極一部とやらを除き、全てが腐敗しているというのならば、それらの是正の助力はしよう」
「理由を言え、ヴェルグ。今までの態度から一転した理由はなんだ」
「俺は強い。その自覚と自負がある。だが俺は一人だ。一人ですべてを守り切るには世界が広すぎる。同時多発的に起きる事象については手を伸ばし切れない。──仲間が必要だ」
「一般的な感性であると言える。つまりお前は、我々に貸しを作りたいのだな?」
「ああ。特にお前は転移を使えるだろう? 神殿にいる転移の使い手で、誠実でありそうな人間を俺はお前しか知らない。お前を抱き込みたい」
「堂々としたヘッドハンティングだな。だが、良いだろう。こちらとしてもお前の助力はありがたい。その見返りがお前の周囲の者の守護であるのなら、それもまた我々の行動理念に通ずる」
どうせ神殿が機能不全になって、立て直しに時間がかかるなら。
そして所属して上り詰めて是正してって手順が面倒くさいなら。
潰して残党を私兵にするのが一番良いだろう。メルキオルは確実な善。信用に値するしな。
「そうと決まれば善は急げだ、メルキオル。反意を持つ仲間を見極めておけ。俺は帰って一度支度をしてから合流する。そうだな、合流場所は」
「我らが本拠地上空で良いだろう。見せかけの神殿には見せかけのトップしかいない」
「わかった。──後悔だけはするなよ、メルキオル。俺を助力に使うことが、何を意味するのか。分からないお前じゃないとは思うが」
「無論だ。
互いに転移を始める。
それは本当に良い皮肉だ、メルキオル。
お前も欲を持った。腐敗を切除し、全うな組織にしたい──その欲が神殿の穏を害し、争乱の火種となる。自虐であり皮肉であり、そして。
ホームに戻るなり、マスカルウィンの部屋へ行く。
むわっとした女の臭い。飲まず食わずで平気なマスカルウィンだ、五時間どころか十時間くらい経ってるけど未だ生気は衰えず、眷属の呪いに従ってその場から動かず、ただ快楽に身を窶している。
そんな彼女の猿轡を外す。
「ぁー……ぅ、あ……」
「なんだ、快楽程度じゃ思考領域は塗り潰されないんじゃなかったのか?」
「……いや何、猿轡を取った瞬間はこういう反応をした方が人間は喜ぶと魔族に言われてな。どうだ、"ドチャクソエロ"だったか?」
「ああ。もうちょっと続けてくれてたらドチャクソエロだった。速すぎだよ演技やめるの」
「演技ということもないぞ。存外思考領域を食われている。今すぐにでもその剛直で膣を貫いてほしいと思うくらいにはな。ただ言語を正常に操るのに支障がないだけだ。ふふ、頭の中はすでに快楽のことばかりを考えているぞ」
「そうか。じゃあもうちょっと保ちそうだな。俺今から神殿潰してくるから、多分一日かかるかかかんないかくらいなんだけど、次第によっては二日くらいだ。その間も動くなよ、快楽を享受しろ。ああそれと、呪詛スキル:眷属:色情魔化。これでもっと気持ちよくなれる。メアリーとシーファに色々な世話を頼んでおくから、通常じゃあり得ない放置プレイを存分に楽しめ」
「……鬼畜か?」
「畜生ではあるんじゃないか。割と自覚ある」
本来なら戦闘奴隷のマスカルウィンは連れて行きたい……んだけど、一応コイツ初代皇帝だから、しがらみがあるんだよな。
鬼の国は国交が無いに等しかったから良いけど、神殿は古い記録とか持ってるだろうし、マスカルウィンの姿も記録されている可能性がある。そこも潰せばいいってのはそうなんだけど、なんらかのアクシデントで「帝国が神殿に喧嘩を売った」って話が漏れるのはまずい。
その後実際に神殿が沈むわけで、その後粉末魔素や魔化で色々が起きる可能性があるわけで。
そうした場合、王国じゃなく帝国にヘイトが向かうって未来もあり得る。
なんでマスカルウィンはお留守番。同じ理由でカローライナもダメ。というか今回のコトに関わる人数は少なければ少ない程良い。よって此度のお供はゼロで、メルキオルが仲間になるかな。
「わかった、人間。余裕ぶったことは謝る。今すぐに行くというわけではないのだろう? 一度この火照りを鎮めてから、というのはどうだ。今ヤれば、永久においても一度も体験しなかった快楽が得られるように思うのだ」
「じゃああと一日二日寝かせたらもっと味が良くなるよ。今の放置プレイに飽きたってんなら安心しろ、メアリーとシーファにはもう二段階くらいキツいの用意させるから」
「──ご主人様、ドア越しに色々聞いておりました。──ここにイッチースネークの痒み成分だけを抽出した液体と、浣腸器がございます」
「ご主人様~、ケルちに教わった聴力強化スキルで色々聞いてたんだけどさ、ここにシェイクイールっていうエロ魔物がいてねー?」
「流石だ二人とも。後は頼んだ」
「お任せを」
「任せて! じゃあ許可も出たし、ルウィンち──覚悟してね。私達本気でルウィンちの余裕潰しに行くから」
目隠しで見えないけれど、明らかにマスカルウィンと目が合う。まっすぐにみられる。
そして──口元をヒクつかせて。
「失態の補填なんだろう? レジスト、するなよ?」
「……いいだろう。ふふ、この程度の児戯で──」
バタン。
部屋を後にする。よし、神殿潰しちょっと遅らせて三日くらい帰らないのアリだな。限界を超えろマスカルウィン。
「あ……ヴェルグ……さん」
「ん。どうした、カローライナ」
「忙しそうだ、ですね。その、もう心が決まりましたので……また時間のある時に、お願いします」
「まだまるまる一か月くらいあるぞ」
「はい。でも、大丈夫です」
……ほーぉ。
良い目をするようになったじゃないか。誰かに焚き付けられたか?
「わかった。少しばかり時間がかかる仕事に出てくるけど、帰ったらちゃんと話を聞く。その間、待ち遠しいかとは思うが」
「いえ、大丈夫です。その間はここの方々と共に少しでも自身を磨いておきます」
「そうか。頑張れ」
「はい」
ストイックだな。
銀閃のカローライナ。アダルトMOD入れてからも彼女を仲間にすることはなかったけれど、おせっせシーンとかどんなんだったんだろ。少し気になって来た。
……それに、ああいう強い目は、本当に。
「ヴェルグさん」
「なんだアウラニ。……なんだそれは」
「何だと、思いますか? ……あ、質問です、これは」
「いや……見たことが無い。ちょっと貸してくれるか?」
ひょこっと出て来たアウラニから、そのナニカを受け取る。
見た目は真っ白な水晶玉。一度インベに入れてアイテムの説明を見る。
……。
「成程。ちょっと危険だな」
「え、そう、なんですか?」
「ああ。どこか……シーファから離れた場所で、これを自分の胸に押し当ててみろ。恐らくあっちも試しに作ってみた、程度のものなんだろうけど、中に聖気が多少入ってしまっている」
「それって」
「そういうことだ。んじゃ俺急ぐから、後は好きにしろ。返事をしたいっていうんなら、まぁなんとかしてやらんでもない」
説明欄は簡素なもの。【天界の言伝】-天使の言葉が入った水晶玉。天界で製造されたのか、多少の聖気を内包している。
だとさ。
あいつ、あんだけ感動的な別れしといて、もう我慢できなくなったのかね。まぁこういう手段があるなら全然いいよ。郵便屋をやるつもりはないけど、時々なら互いの精神衛生上にも良いだろ。
……さて、これ以上誰かに会う前に……と思ったけど。
えーと、奴隷の位置……ん、カフェ? あいつカフェなんか行くのか。いいけどさ。
転移……は目立ち過ぎるので、走って跳んではい現着。
カフェに入ってその姿を探せば……あ。なんか……男といる。
え、これいい雰囲気か? なんか盛り上がってる感ある。……流石に空気読むか。えーとじゃあ仮インベにアイテム分配で。
「ちらっちら見ておらんでも良い! なんじゃ、用があるんじゃろ!」
「ああ気付いたか。いや良い雰囲気だったから邪魔しない方が良いのかと思って」
「あ奴らは商工会の者達で良い雰囲気とかじゃない! で、なんじゃ」
「いや、昨日俺鬼の国行ってたじゃん。その時に、スギナを名乗る別人からこれを貰った」
「なんじゃと!? ……は? 別人?」
「ああ、別人だ。言伝は"迷わないこと。許さないこと。受け入れないこと。そして──隠さないことと、偽らないこと"。んでこれがお前に託されたアイテム」
「ちょ、ちょっと待てヴェルグ! 説明をしろ、色々言い過ぎじゃ!」
「今色々あって忙しいの。意味とか理由は自分で考えな。──じゃあな、託したぞ」
"鬼の国"。
彼女がスギナの恰好で現れたのは、決して偶然や悪意のある行為ではないと思う。
あるいはスギナこそが最も"鬼の国"の理想に近かったか、死者となったスギナもまた"鬼の国"に会ったのか。
どちらにせよ、俺はこれを託されたものだと解した。
鬼の国はもう終わった。ならば、最後の血こそが。
……なんてな。はいはい転移転移……じゃない、ここカフェ前だった。あぶねえ。
「ちょ、じゃから説明を──」
フェードアウトしていくツバナの声。
今なら違う意味が見えるよ、ツバナ。お前にまだ『鬼の国の女王』の称号がついている意味がさ。
さて。
人目につかないところから転移を選択し、着いた場所。
そこは──赤土の陸地。その中央。
俺が天の軍勢から逃げる時に目指していた場所。
「来たか、ヴェルグ」
「ああ。……少なくないか」
「足りない、ということはないだろう?」
メルキオルの後ろにいたのは五人の粛清部隊。
その中には、あの時俺に対峙した話聞かない女も含まれている。
「案外人望無いのな」
「どうやらそのようだ。皆に内心を訪ねたところ、逆らうなんてとんでもない、などと言って尻込みする者ばかりだった。勝機無しと見られたようだな」
「んじゃ後ろの五人は見る目のあった奴らってわけだ」
「少なくとも意思を持つ人間ではあったのだろうよ」
言うねぇ。結界も張ってないのに。
いやまぁ、ここに来た時点で今更か。
「メルキオル様。失礼を承知で質問があります」
「なんだ」
「この方は──何者ですか? とても……とても、人間とは言い難い精霊力を感じます」
お。あのでっかいの、精霊力が見えるのか。
俺まだ全く分からないんだよな。隠すだのなんだの。
「単身で世界を滅ぼし得る御仁だ。礼を欠くな」
「──承知」
「余計な事吹き込むなよメルキオル。そんな大した奴じゃねーよ。つーか御仁って。地位的な偉さは無いよ、俺は」
「できるだろう?」
「できるけど」
ただ単身だとファントムをまずなんとかしないとだから時間かかるよかなり。
アイツ逃げに徹したら最強になるからな。
「さて、雑談はこの辺りでいいだろう。少し下がっておけ。神殿を啓く」
「魔剣士スキル:ウィンドオーラ。魔法使いスキル:集束。魔法使いスキル:遅延。魔法スキル:ガングニールの慟哭」
メルキオルが自らの人差し指の腹を噛んで切る。
その人差し指で、中空に文字を描き始めた。……懐かしいな。神殿所属になった状態で進めるイベント。本来ならばあれを主人公がやるんだよな。
「聖騎士スキル:神殿層成」
神殿層成。
これをしなければ、人々は神殿を知覚できない。知識として知ってはいても、その本拠地がどこにあるのかを誰も知ることができない。
天と地、双方から一筋の光が走る。
それはあるいは、透明で巨大な扉が開くさまにも見えた事だろう。
事実荘厳な音を立てて、事実世界重圧な重みを持って。
それが啓かれる。
溢れ出すは黄金の光。聖気の清純さとはまた違う、神が存在するのだと叩きつける圧倒的な光だ。
これは位相の扉。ある意味でこの先はティル・ナ・ローグや天界と同じ、普通の手法では辿り着けない空間になる。
あるいは天使でさえもこの扉は開けられない。人間以外の一切を許さない選別の扉。だから俺ここ向かってたんだけど。
「こ、れは……」
「ここが、神殿の本拠地」
「気を抜くなよ。我々の反意は既に伝わっている。出迎えが来るぞ」
「まぁメルキオル、一番槍は任せろよ。今ここに用意しておいたんだからさ」
魔法スキルには用途と、その用途にあった最上位魔法が存在している。
目の前の一切合切を消し飛ばす光属性のスーパーノヴァ。目の前の一切を貫き焦がす炎属性のフレイムロード。前者は範囲と威力、後者は貫通力と威力。
そういう用途によって使い方を変える魔法の中で、風属性の最上位がこのガングニールの慟哭と雷霆。
雷霆はもうお馴染みだろう。貫通力と威力の最上位魔法。
であるならば、ガングニールの慟哭は。
「地に伏せておくことを推奨する。──風穴を開けろ、文字通りに」
それは槍だ。否、水平方向にした竜巻だ。
黄金の光を遮るほどの豪風が、地面も、構造物も、そして待ち構えていたあらゆるものを穿って進む。
「メルキオル。今俺が殺したやつの中に、その極一部とかいうのはいたか?」
「いない。全て腐敗した者の手先だ」
「そりゃ好都合だ」
いたら死者蘇生すればいい。
死が盾にならないこの世界は、本当に恐ろしい場所だと思うよ。これ以上をやったら殺してしまう。だから何? なんだもん。
諸手を挙げて暴れられるって話だ。
「団体行動と単独行動。どっちが良い」
「こちらは唯一の良心を助けに行く。それ以外は全て不要だ、ヴェルグ」
「オゥケー」
踏み入れる。
黄金に。
さぁ──開戦だ。
なんて大見栄切ったはいいものの、思ったより敵が少ない。
全部メルキオルの方に行っている、とかではなさそうなんだけど、少ない。いやいるにはいるけど……。
「大勢が待ち構えているんじゃなかったのかよ、メルキオル」
「ヴェルグ殿。これでも十分に大勢かと」
「一国の国民くらいしかいないのにか? もっといるだろ神殿所属」
メルキオルは一人だけをこちらにつかせた。連絡役だそうで。
なんでも念話みたいな能力を有しているらしく、限られた範囲内であればパーティメンバーとの交信ができるんだと。
ゲームは完全ソロゲーだったうえに、NPCの行動もプレイヤーが決めてたからなぁ。念話って概念がなかったけど、仮にMMOだとしたらつまりパーティーチャットだろ。便利だよな。
「しかし、メルキオルもああ見えて優しいのな」
「……ええと?」
「いや、改心の機会って奴だろ。お前が裏切り者なのはアイツもわかってるけど、どっちに付くべきかを今ここで見極めろ、ってさ。諦めた方が良いぞ、どんな場面で、どれほど隙を晒していたところで、俺もメルキオルも背後から刺されたりしないよ」
「っ!?」
神殿の中はダンジョン扱いだからミニマップ君機能しないんだけどさ。
赤土の陸地にいる時はバリバリ機能してたから、見え見えだったんだよね赤点。メルキオルも決してこいつには背を向けない位置取りしてたし。
多分メルキオルはコイツを有能だと思っている。能力が重宝できるものだと考えている
だから抱き込みたいんだろう。同時に、死んだところで何とも思わないんだろう。
俺をダストボックスに使ったのは思う所あるけど、まぁ貸しがもう一個できたってことで。
「な……なぜ、ですか。何故神殿に反旗を……」
「メルキオルが言った通りだ。神殿の上が腐ってて、王国を標的にしている。それは神殿の在り方として正しくない。故に是正しなければならない」
「……ですが、こんなやり方では……変わりませんよ、何も」
「変えるつもりはない。潰すだけだ。そして残党を新たな神殿とする」
「他にやり方があったでしょう……こんな暴力だけで、何が」
「アサシンスキル:催眠」
メルキオル。すまんが俺無理。
俺お前ほど優しくねーからさ。ま、ここに放置する程度で許してくれ。起きた後に向かってきたらそのままグサ。
……しかし、仮にこいつがスパイだったとしても、だからこっちには兵士が来ないのだとしても、……少ない。
何か外でやってるとか?
魔素……粉末魔素のパンデミックがまたあったとか。
やーめた。
考えてもわからんことを考えるのは性に合わない。答えが明確にあるものじゃなさそうだし。
「不敬である」
「不遜である」
「不浄である」
「不幸ではあるんだろう。さいならさん」
なんか面倒そうな三人衆を斬る。
……いやマジで、おかしいとはおもうよ。魔物にはあんなに躊躇するクセに、人間相手のこの冷淡さはなんだ、俺。どうした?
あるいは──俺も"この世界的"になってきている?
「不滅である」
「──聖騎士スキル:不死殺し」
珍しい。自己蘇生の能力持ちか。
そんなあなたに蘇生封じ~。聖騎士スキルは蘇生封じだの再生封じだの、対魔族に使うスキルのオンパレードなわけだけど、周りまわってこういう特殊な能力を持つ人間にも効くスキルばっかになってんだからおかしな話である。
魔族は再生持ちとか自己蘇生持ちいっぱいいるからね。必要なんだよね。
「はいそこの奴、ちょっと待ちな」
「剣士スキル:唐竹割り」
「光ノ壁」
ん。
……聖女か。
「ひゃぁ、怖い怖い。ただの剣士スキルで光ノ壁に傷をつけるとか……」
「エラボートか、お前」
「おっと……外部に名前が割れているなんて思いもしなかった。メルキオルの奴にもこの顔は見せた覚えないんだけどねぇ」
エラボート。
ゲーム本編にいたキャラクターで、聖女。結構台詞量あるNPCのくせに仲間にはならない。というか完全な悪人。聖女スキルのほかに呪詛スキルや戦士スキルも使ってくるオールラウンダーな奴だけど、最も厄介なのはその能力。
「舐めてかかっている内は絶対に負けない──だったか。お前のふざけた能力は」
「……二人目のフレースヴェルグ。話には聞いていたけど、本当に全知に連なる存在のようだねぇ」
自分より格下だと思い込めている内は、たとえ相手が本物の強者であろうと負けない。
ただし絶望を──相手を認めてしまったが最後、彼女は普通のオールラウンダーに戻る。まぁそれでも十分強いんだけど。
エラボートが主人公を格下だと思っている内はダメージが1しか入らないという、黄泉ルンガンド君と似た負けイベの性質を持っている。
ただ、今聖女スキル:光ノ壁に傷がついたってことは、もう既に。
「聖騎士スキル:裁断」
「聖騎士スキル:裁断」
……押し、斬る。
「っ、無理か!」
「馬鹿ねぇ、相手は二人目のフレースヴェルグよ? 同じスキル使って力で勝てるわけないじゃない」
「だが剣は折れなかった! ──奴は無敵ではないぞ、エラボート! 勝ち得る存在だ!」
またネームドだ。ケリュン・ジャック。主人公が神殿に所属し、粛清部隊に配備された時の直属の上司。聖騎士スキルと戦士スキルを極めている他、STRがイサカリと同じくらい高いため、力押しができる。使う剣が聖石使ってるNPC専用剣なのもでかい。
「魔剣士スキル:物理上昇オーラ。魔剣士スキル:ダークオーラ。魔法使いスキル:拡散。魔法スキル:閉闇」
「──聖女スキル:日、我ノ味方セリ」
「闇属性魔法の閉闇。それを戦闘で使う者がいようとはな! 二人目のフレースヴェルグ、貴殿には驚かされることばかりだ!」
閉闇。
日光を遮るだけのスキルだけど、こういう閉所で使うと一時的な闇の泡みたいなものを作ることができる。ちゃんと闇属性な上に拡散をつければ闇属性のバブルが敵に向かって跳ぶ。
まぁ今聖女スキルで全部消されたけど。前にも述べたけど、闇と光は表裏一体の元素なので、中和ができちゃうんだよね。
そんなことは十も承知なので。
「魔法使いスキル:マナエクスプロージョン」
「っ、エラボート! 吾輩の背後に! 聖騎士スキル:十字鎧!」
「十字鎧は確かに絶対の防御力を誇るスキルだ。けど、弱点が無いわけじゃない。──ケリュン、お前は知っているはずだ」
「……いつの間に、そんなところに!?」
十字鎧は両手の剣を十字に重ね合わせ、そこを起点とした球体で己含む周囲を守る鎧を作るスキル。
俺がガブリエルの攻撃防ぐのに使ったくらいには最上位の防御スキルなんだけど、弱点がある。
あくまで球体を作るスキルだから、懐に入られた状態ではソイツの攻撃を防げない、って点だ。
「戦士スキル:ガイアスラッシュ」
「光ノ壁!」
カラン、と音を立てて落ちるはポーションの瓶。
……へぇ、エリクシールじゃん。俺みたいにいっぱい持ってるわけでもないだろうに、いいのかこんなとこで使っちゃって。そりゃ魔力は回復するだろうけど、ド貴重品だぞ。
「ケリュン、そのまま十字鎧を維持できる?」
「任せておけ! そして、任せたぞエラボート!」
中和された魔力が連鎖爆発し続けている以上、十字鎧は解除できない。
だからその十字鎧の中でエラボートはケリュンを守りつつ、俺を倒すしかない。
エラボートは悪人。ケリュン・ジャックは善人。だけどこの段階ではその二つは露呈していない。だからこその共闘。互いを知らない神殿所属の共闘は、まぁ美しきかな、に含まれよう。
だけど。
「聖騎士スキル:階梯の間」
「──あらヤダ、私死んだカモ」
対象はケリュン・ジャック。
この瞬間、エラボートはケリュン・ジャックの十字鎧から吐き出される。そして俺が、隙を晒したままのケリュン・ジャックを排除すれば、はい終わり。
……まぁ。
個人個人にかけた時間としては、ラムナザール四世に匹敵するかもしれない。それだけだ。