アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ 作:姫鼠まりあ
人道的か、非人道的か。倫理的かそうでないか。
各家々や店先に置かれた、悲痛な顔で世界に手を伸ばす全裸の少女像を見る。
この度、研究院が正式な発表として人工聖石を帝国中に配布した。販売はこの配布が成功してから外国向きに行われるとのことで、帝国民は無償で人工聖石を手に入れられるのだ。
「……流石に住みづらくなったな」
帝国の青空を見上げながら。
そう、ぽつりと吐き零した。
王国における依頼は達成した。
二度のフレースヴェルグの襲来。けれど三度目は来なかった。一日王国に滞在し、帰ってからも一週間ほど召喚獣に見張りを任せてみたけれど反応なし。
迎撃は適ったのだろうと見切りをつけた。
これ以降で起きる粉末魔素による魔化パンデミックや魔族の襲撃は王国の問題である。
エリック・サンダーソンがいなくなり、騎士団内部の腐敗も消されて行っている今は混迷の時期だろうが、それを補うのが暗部の役目であり役割であり、傾いた船の舵取りをするのが宰相や王家の役目。
俺が関わる余地はもう無い。
幸いにして王家の誰にも顔を見られることはなかったから面倒が起きることもなく、久方ぶりの日常に戻って──の、これだ。
だから、俺は正直に言うことにした。
「すまん。俺帝国もう無理だわ。他の国に住みたい」
「……人工聖石の件、だよね? ご主人様」
「ああ。それ以外の部分における帝国は魅力的だ。もうだいぶ住み慣れたし、人付き合いもある。が、無理だ。何度か考えてみたけど、人工聖石を当然のように──あるいはエクステリアのように飾れる奴らとは付き合いきれん」
石化というものへのフェチズムは有しているけれど、それはあくまで……なんというか、創作物に対してというか。
生きていて、言葉が通じて、意思があるとわかっていて。
それが石となったものを、誰もが気に留めることなく、あるいは自慢げにさえする国。
それはもう、多分、アダルトMOD入ってるから、とか関係ない話だ。いや意思疎通はアダルトMODの恩恵ではあるんだけど、見た目の話な。
「お主が言えば人工聖石の研究を中止にさせる、あるいは凍結させることくらい容易いのではないか?」
「容易い。一日もあればすべての資料、サンプル、人工聖石を消し炭にできる。それを研究する人間も含めて。……だけど、そういう問題じゃない」
「人工聖石を当然のように受け入れた人間が無理、ってことだよね」
「ああ。甘っちょろい考えなのはわかってる。俺が強いから言えることだというのは理解している。だから相手に変わってもらおう、ではなく、俺が出て行こう、という結論に至った」
実際、魔素から身を守れない人間にとっての人工聖石は酷く有用なものだ。
まず無償で、そして拡張するにも安価で手に入る聖石。純正聖石と違って攻撃や装備への転用はまだ不可であるものの、原理が判明し尽くしていない魔化を防げるってだけで何よりも代え難い価値があるのだろう。
それが嫌だ。
「ついては問う。お前ら帝国にどれだけ愛着がある?」
「私は無いよ~。今回ばかりはご主人様と完全に同意見。人工聖石が目に入るだけで嫌だし、単純にピリピリするし」
「あると言えばある。じゃが無いと言えばない。冒険者の付き合い程度じゃからな、そこは」
「ツバナに同意。深い親交のある人はいない。強いて言えば幽閉されているグノーシスくらい」
「ケルがいればどこでもいいわ」
「私も、お付き合いは、ありますが、深いとは、言えません。……それに、シーファさんが、行くというのなら、私も、当然、行きます」
「あ、でもカロちが頑張ってくれてるのが無駄になっちゃうかも……? それだけは」
「無駄にはならんじゃろ。どうにかして帝国と王国の戦争が無くなれば、私達も気軽に両国へ遊びに行けるというものじゃし」
ま、だよな。
その辺さっぱりしてるのは知ってた。っつーかこの家で一番帝国の色んな奴と親交深めてんのは俺まである。
マスカルウィンは初代皇帝だというのに一切興味が無いという様子。隣に佇むメアリーも同じ。
「じゃあ決定だ。実はもうハルフィーさんやその取引先には話を通していてな。鬼の国との取引も、鬼の国側から運搬してくれるそうだ。代金は割増になったが、ハルフィーさん曰くその程度なら問題ないとさ」
「ん-、じゃあスイちとかにお別れ言ってくるね。今日にでも出たい感じでしょ?」
「ああ。それと、行き先の候補をここにリストアップしておいた。多数決でもなんでもいいから決めといてくれ」
「じゃあシアルル王国……は入ってないんだ……」
「たりめーだろ」
誰が行くか。
ま。
無理してここにいたいと思える場所じゃなかったってだけだな。
「そうか。……また相まみえる時は、余と戦ってくれ。さらに強くなっていることを約束する」
「楽しみにしているよ。じゃあな、ラムナザール四世」
とか。
「ええ! 優良物件が!! じゃああたしの婚期はいつに!?」
「積極的にロリコンを探しに行け」
「見た目でわかるようにロリコン称号付与してよ世界ちゃん!!」
とか。
「……そうですかい。寂しくなりますねぇ」
「奴隷買うためだけにお前のトコには来るかもしれん」
「イッヒッヒ、なら首を長くして待ってますよ。そんで、そうじゃなくても……また酒でも飲み交わしましょうや」
とか。
「そうか、故国に。……ヴェルグ。お前のおかげで人類の歩みは数十、数百歩ほど早まった。本当に礼を言うよ」
「……ああ」
とか。
「え、帝国を出る? ……それは仕方ないけど、一回私と戦って欲しい」
「アンタのマラを大鎌で焼き切りたいんだとさ。バックにバッファーとデバッファーしこたま揃えて」
「多分それでも斬れないと思うけど、絵面が痛そうだから退散するわ。じゃーなー」
「待テ。斬ラセロ」
とか。
……色々挨拶回りして、うん。
まぁ最後はここだ。
「ハルフィーさん」
「ああ、ヴェルグさん。……もう出るんだ?」
「本当に世話になったから、二度目になるけど、別れを言いに来たよ」
「こちらこそよ。貴方のおかげでたくさんの夢が叶った。これからも叶えていくつもりだけど……寂しくなるのは、変わらないわね」
お別れの品とか、後ろ髪を引くような事とか。
言わない。
「それじゃ」
「ええ、また」
どこまでもビジネスライクな──ただ、居心地の良かった職場のお話。
夕方。
ホームに帰ってきてみれば、ちゃんと全員がいた。
「帝国出るの惜しくなった奴は残っていいからな」
「またそういう事言う……。別に、カロちともそうだけど、スイちとも永遠のお別れってことはないんだし、大丈夫だよ」
「そうかい。で、行く場所は決まったか?」
「意見割れちゅー。エイルニルス公国三票、アスガード三票」
……そうか、偶数か。
奇数にするためだけにアモルファス聖とか呼ぶべきだったかこれ。
「決選投票はご主人様で」
「おい、それだとエイルニルス公国は絶対になくなるじゃろ!」
「うん。じゃあアスガード行くか」
「そらみたことか!!」
いやその二つが候補だったらそりゃねぇ。
行こうと思えば転移でいつでもいけるんだから知り合いがいる場所にわざわざ行く必要はねぇんだわ。
「家の片付け、掃除、全て終わっております」
「アスガードか……山の麓で、水が美味い。酒も美味い」
「おおルウィンの声嬌声以外で久しぶりに聞いたな」
「……おい、話と違うぞ。シアルル王国で多少なりとも人間が人間らしくなったと聞いていたが」
「今のはただの揶揄いでしょう? それに私も同意見です。ここ最近ずっとルウィン様の調教をしておりましたので、その気丈且つ尊大な振る舞いは久しぶりです。いいんですよ、いつもの可愛らしい言葉でしゃべっても」
「え! ナニソレ! 私まだ聞いてない!」
「可愛らしい言葉で、喋るの、ですか?」
「ほーぉ、私達にも聞かせてくれんかのぅ?」
「……呪詛スキル:魅了:発情:同性愛」
「ちょ──!?」
お、魅了のアダルトMOD追加分オプションじゃん。
NPCでも使えるのか。
「ふざけてないで行くぞ。全員寄れ。……乳繰り合っててもいいから集まれ」
「ふん、これに懲りたらもう」
「ええいままよ! お忘れだろうかルウィンち! ルウィンちも、女であると!!」
「おおその手があったか! ナイスじゃシーファ!」
「私はレジストしましたが、ノっておきますね」
「ヴェルグさん、出発、しましょう」
「いいけどアウラニ、レジストできてないぞ。ギンギンじゃん」
「ああ、ヴェルグさん。私はケルとイチャイチャしているから、好きなタイミングで跳んでくださいね」
「ちょっとツゥ、どこに手入れて……」
よし。
ガン無視で行こう。
──転移。目的地は、この大陸で一番高い山の麓にある国、アスガード。
マスカルウィンの言う通り美酒と美男美女の国、なんて呼ばれている場所である。アクラハイルも似たキャッチコピー持ってたからつまりまぁそういうことなんだけどね。
アスガード近郊に転移して、決めていた役割分担通りの仕事を果たす。
関所は俺の白銀章で一発スルー。ちゃっかりアウラニとシーファが金章冒険者になっていたことも含めて歓迎された。強い冒険者はいるだけでありがたいものだからな。
で、俺はその足でギルドへ。他の奴らは宿取り。出来るのなら不動産捜し。
ネームドNPCに会うことも、チンピラに突っかかられることもなく、すべての手続きが恙なく終了し、流石にすぐに家にはありつけなかったってことで今日は宿泊まりとなっての──夜。
三部屋取って、俺が一人部屋で少しばかりの作業をしていた時のことだ。
「ご主人様、起きてる?」
「ん? なんだシーファ」
シーファが訪ねて来た。
すわ夜這かと思ったけど、どうやら違うらしい。神妙そうな顔つき。シリアスモードだ。
音を立てずにドアを閉めるものだから、よほど聞かれたくない話なのだと思って遮断結界を張る。
「人工聖石の話なんだけど」
「……今後の流通に関してか」
「うん。……今はさ、逃げて来られたけど……いずれアスガードにも、エイルニルス公国にも、王国にも……人工聖石が溢れかえるのかな、って」
その懸念は当然だ。
そして……そうだろうな、と思っているから、俺は逃げを選択した。
アイデア。あるいは知識というのは伝染病に近い。
発生源を消滅させることは出来ても、一度広まったものを消すことは難しい。況してや地続きの大陸内であれば、いずれは。
「魔素の声。わかる?」
「ああ。知っている」
「聞こえなくしてくれたのは、本当に嬉しい。あのうるさい声が聞こえなくなってから、頭の中が凄くすっきりした。人間の皆を友達だって思えるようになった。……こんなこと言ったらダメなのはわかってるけど、それまでの私にとっての人間は……消耗品でしかなかったから」
資産家や権力者の奴隷になってはそこで悦の限りを尽くし、飽きたら殺して姿を変えて、また奴隷になる……を繰り返していたシーファ。善悪で言えば確実に悪の部類だ。だけどそれは、人間基準の話。
魔族としてみたら悪でも善でもない、呼吸と同じくらいの行動だろう。
「……でもね、最近……特に人工聖石を知ってから、道行く人間を見て……ふって。ぱって。……人間なんかいない方がいいんじゃないかな、って……ごく自然に考えるようになっちゃって」
「だろうな」
「だろうな、じゃダメなんだよ。だって……私の友達はみんな人間なんだもん。それをひとまとめに考えちゃう思考も嫌いだし、こういう思考があると、いつか私は、本当に無意識のうちに誰かを殺しているかもしれないって考えると……怖くて」
ハーフを二人に分ける方法は知っている。
種族階位を上げる方法も知っている。
だけど、種族を変える方法は知らない。だから研究している。魔族と魔素を引き剥がす方法を。
でも……仮にそれができたとして。
それでも尚、シーファはこれを思うんじゃないだろうか。だって今のシーファにドゥームスは声をかけていない。ただ魔族だから、違う種族だから、人間のやることに懐疑を抱く。
「世界の流れは変えられない。俺達にどれほど強大な力があったとしても。……というのは通常の慰めだ、シーファ」
「……できちゃうんだよね、ご主人様は」
「ああ。時間をかければできる。それはたとえば、この大陸の人間を全て殺し、一人ずつ生き返らせて、知識のない奴だけ戻す、とか」
面倒だし極端すぎるからやんないけど。
他にも手法はいくらでもある。
──兼ねてからの構想は、一つだけある。
なんとも滑稽というか、陳腐というか、使い古され過ぎて味のしないガムみたいになっている手法が一つだけ。
「結局グノーシスとかいうのと同じ語り口になるのが癪だけどな。理想郷を作る──人工聖石を一切受け入れない国を作る、という手段を取れば、全てが解決するやもしれん。諸外国との問題は俺が解決すればいい。力で。国……っつーとデカすぎるから、なんか適当な島に移住して、完全な鎖国とか。そういう手はある」
果たしてそこは、楽園なのだろう。
魔物素材を使わない建築物。市場に並ぶものは果物ばかり。人工聖石などどこにも見当たらず、魔族だろうが人間だろうが気兼ねなく暮らせる理想郷。
一般人を入れなければ、シーファのその衝動も起こりづらかろう。起きても止められる面子が揃っているのだし。
でもそれは。
……それは、
そんな言葉でどうこうして良い問題じゃないのはわかっているのに。
何でも思い通りになるからこその、思い通りにならない世界はそのままでなければならない。
でないと。
世界にいる意味が無い。
「それを望むか?」
「それは違うと思う。上手く言えないけど……それは時間を止めることと同じだと思うから」
目的を失くした生物の行き先がどこか。
日々を生きることにさえ苦労しない生物の向かう先がどこか。
当然、怠惰だ。
だから俺達は、苦難と隣り合わせでいなければならない。腐ってしまわないように。
「俺は俺の研究を完遂させる。代わりと言ってはなんだが、お前もなんか挑戦してみろよ。魔族としての本能を抑える手段の構築でもいい。逆に本能に溜まったストレスをどうにかして発散する方法でもいい。そんで……どうしようもなくなって、人工聖石を作ってる人間を殺し尽くしたくなったら、俺に言え。眷属の呪いを解いてやる」
「それ」
「ああ。お前の奴隷を使うもよし、お前単身で行くもよし。俺は止めないよ」
障害の打破に暴力を用いる存在ではない、ということは知っている。
シーファの在り方は理解に及んでいる方だ。比較的だけど。
「最終的にお前が何をしたいかだ、シーファ。人工聖石が気に入らないとして、それの根絶をしたいのか。人間なんかいらないんじゃないかと思ったとして、人間を滅ぼし尽くしたいのか。人間を変えたいというのならそれに向かって努力すればいい。人間の意識改革をするために何が必要かは自分で考えればいい。誰に相談しても良いし、誰を頼ったって良い。了承が返るかどうかはまったく別の話だが」
全てが嫌になったら魔族大陸に逃げ帰っても良い。
友達と別れたくないならついてきてもらえばいい。リシのいる場所のように、魔族大陸にも人間が住み得るスペースはあるのだから。
「……ご主人様ってさ、酷いよね」
「今更だな」
「そうじゃなくて。……否定しないんだね。人間の棲み処にいる私が悪いってばっさり言っちゃえばいいのにさ」
「何が悪い。誰がどこにいようと勝手だろう。それで周囲が迷惑に思い、不快感を覚え、そいつを排斥しようとするのも当然だし、そいつが暴れてそいつがいることを認めざるを得なくなるのもまた摂理。どんなに取り繕ったって最後にゃ強い奴が勝つんだよ。それは力であれメンタル面であれ立場であれ知能であれな」
平和的に、穏便に。
人間には言葉があるのだから、暴力に頼るのは獣の手段。
──違う。それは手法が変わっただけだ。結局は言葉の上手い奴が勝つ。交渉の上手い奴が勝つ。傷をつけなければ暴力ではないとでもいうつもりか。血を流さなければ穏便だとでも言うつもりか。
同じだ。やってることは。獣の縄張り争いと、知的生命体の縄張り争いは、程度の差すら変わっていない。
「言っておくがな、魔族の娘。コイツのは極論だぞ」
「あ、遮断結界張ってんだから入ってくんじゃねえよ」
「ふん、人間。お前は強い言葉を使い過ぎだ。世界には弱者もいる。強い言葉を聞いた程度で考えを変えてしまう弱者も存在する。この魔族の娘は芯のあるほうだが、それでも若いし、弱い」
「んじゃ、お前の意見は?」
「臨機応変に行け。暴力を使う場面では使い、隠す場面では隠せばいい。我を通すことだけが生き死にではないし、同時に折れて縮こまるだけが道ではない」
一瞬ギスりかけた空気──を壊すように、シーファが溜息を吐く。
吐いて、なんだか呆れたようにつぶやいた。
「……ルウィンちの言いたいことも、ご主人様の言いたいことも、要は"好きにやれ"ってことだよね?」
「まぁ。簡潔に言えば」
「そうだな。簡潔に纏めるのなら」
さらに深いため息を吐くシーファ。
「任せな、シーファ。単身突っ込んで討伐されても核が残ってりゃ蘇生してやるよ。何千、何万回でもな」
「帝国を襲撃するなら連れて行け、魔族の娘。血のつながりは無いとは言え、子孫となる者の強さを実感するのは楽しそうだ」
「やっぱりあの時アピールしたのが運の尽き……」
「まぁ俺に買われてなくてもどっかでアウラニ達とは出会えてたかもしれんしな。自分の運の無さを恨めよ、シーファ」
ってな感じで、お悩み相談室は終わりだ。
「夜も遅い。そろそろ寝な。明日から地固めに奔走する日々が続くんだから、疲れてぶっ倒れても知らんぞ」
「その時にはアウラニちに看病してもらうんだー」
「へぇ、迷惑かけたくない、とかいう勘違いは溶けたのか」
「うん。セックスしてる時にぶちまけたら、何度も"ばかです、ばかです、シーファさんは"ってふにゃふにゃの声で罵倒されて泣かれちゃって。色々……色々深まったかな」
「そりゃ重畳。んで多分今アウラニ起きちまってると思うから、安心させるためにも寝てきな」
「はぁーい」
若い、ね。
実際あいつらが何歳くらいなのか俺はあんまりわかってないけど……マスカルウィン以外は全員若いパーティってのは事実だろう。
俺の言葉は毒かねぇ。……まだ二十代前半なんだけど。おじさんですか?
「で? 無理矢理結界に入ってきて話終わらせて、何用だよマスカルウィン。放置プレイは家買ってからだぞ」
「それはまぁ、魅力的であると返しておくが。……人工聖石の件だ」
「お前もかよ」
知ってたけど。
メルキオルと同じだろ、どうせ。
「あれはダメだな、人間。菓子感覚でつまんでいた存在が突然噛み付いてくるようになったんだ、魔族としては面白くなかろう。魔族は別に人間無しでも生きていける存在。──来るぞ、魔族侵攻が。今度は大義名分を持っているから、一年前の比ではない数が」
「そりゃなんとも、人間的だ。そうだろう?」
害があるから根絶やしにしようと思う所が、あまりにも。
「魔王が元人間なのだ。当然だろう」
「おいおい、四天王でも知らない情報をサラっと言うなよ。可哀想だろストーリーテラーの包帯が」
「ふん、アレが魔王になった経緯まで知っているんだ。何を隠せと」
魔王と魔素源王。
二つがあるのは、魔王が魔素の王ではないからだ。
魔化した人間。しかし、魔族を束ねるにまで至った人間。
結局この剣と魔法のファンタジーは人間と人間の戦い。だからこそ魔族とは消耗品であり、魔物とは舞台装置である。
「どうする気だ、人間」
「お前こそどうする気だよ。大陸中の子供護るために奔走するか?」
「静観する。種族間の生存競争に干渉するつもりはない」
「概ね同意見だが、お前が俺の奴隷であることには変わりないからな。俺が腰を上げたらついてこいよ」
「無論だ。性奴隷兼戦闘奴隷、だろう?」
「……」
「ん? どうした、人間」
ヴェルグ君は頭がよくないです。
ですけどねぇ……露骨なアピールにはねぇ、気付くんですよねぇ……。
「呪詛スキル:眷属:色情魔化」
「!」
「真面目な話は最後まで続けろよ。身体が疼いて仕方がないって顔に出てんぞ」
「……家を買うまでお預けだと聞いたら、逆にキてな。人間、お前が悪い」
「呪詛スキル:魅了:自己」
「……? 自己に向かう魅了? それは……何が起きるんだ?」
とか言いながら。
自分の秘所と胸に手を伸ばすマスカルウィン。
アダルトMOD追加オプション、魅了の詳細設定。
対象者を自己に設定すると──自分の身体が魅力的に思えてくる。弄りたくなる。そういうフレーバーテキストのもと、NPCがその場で自慰を始める。
ただし魅了はそもそも「魅了されている事」に気付けないスキルであり、ゲーム的にも自慰モーションが追加されるだけで話はそのまま進む。
つまり。
「早くしろ、人間。それともまた名前で呼べと言うのか」
「いや? 俺今作業中だから、もうちょい待ってくれたらヤってやるよ」
「むぅ……」
言葉はそのままに。嬌声さえ響かせることなく……マスカルウィンの顔から下は、それはもう激しい自慰を始める。
疑似催眠シチュ、みたいな。
「しかし、見れば見るほど俺好みの体してるよなお前」
「どうでもいい。早く作業とやらを終わらせろ」
「胸の形、尻の形。腰も背骨も、勿論膣やクリも……全部が全部ドストライクだ。声も好きだし」
「……あまりそういう、なんだ? 褒めて責める、という奴か? それでは濡れんのだ。そういうので喜ぶのはあの元天使人間だけだろう」
「お前的にはどうなの? アウラニとはヤんないの?」
「アレは魔族の娘の女だろう。仲を引き裂いてまで快楽を求める性質は持ち合わせていない」
「俺も手を出す気は無いけど、でも新感覚ではあると思うんだよな。どっちもあるって」
「……あまり言うな。気になってくる」
立ったまま、ガクガクと膝を震わせて潮を噴くマスカルウィン。
それでも手は止まらない。敏感になっていく身体を、まるで別の生物になったかのような彼女の手が責め立てていく。
「なんならシーファとヤるのはどうだ」
「何がなんならなのかはわからないが、竿のついていない者とする意味がわからん。快楽はあるのか?」
「さぁ? 俺ついてるし」
「……今度聞いてみる」
強い刺激を好むのか、マスカルウィンは自身のクリを抓んでぐりぐり潰したり、擦ったり、引っ張ったりを繰り返している。乳首や膣での自慰はすぐに終わったあたり、やっぱりメアリーの薬物類を使ったり放置したりしないと快感が薄いんだろうな。
クリか。クリ責め特化の召喚獣……パラライズリーチとかのリーチ系で責め立てるか。いや別にあいつらクリ責めのためだけに生きてるわけじゃないんだけど。
こいつ身体頑丈だからある程度激しいプレイもいけるはずなんだよな。クリ肥大化とか割と刺さるぞ俺。
「まだか、人間」
「せっかち過ぎるだろ。そんなに快楽が欲しいならその辺でオナってろよ」
「それをするなら部屋に戻る。人間、お前と番うのが気持ちいいから来ているのだ。それくらいわかれ」
「おーおーそりゃ嬉しい話で。んじゃこの前の放置プレイみたいな、素のマスカルウィンちゃんが出てくるのでもいいのか?」
「あれは……気恥ずかしいが、快楽で気絶、という体験が……心地よかったから、またやりたい」
「素直だな」
あ、イった。
でも震える膝とは裏腹に、がっちり足を踏みしめている足。そうなんだよね、倒れられないんだよね。
イっても変わらない。第二ラウンドどころじゃない。
休む間もなく激しい自慰を続けるマスカルウィン。顔だけが平凡……というか不満げ。早く終われって顔に書いてある。
「まだか」
「まだだけど、そんなに言うならまず俺のしゃぶっててくれ。挿れるなら太い方がいいだろ」
「いいだろう。机の下、潜るぞ」
「おう」
自慰は止めないままだから、激しくやりづらいだろうに……顔の、首のストロークだけでフェラを始めるマスカルウィン。へぇ、こういう処理になるのか。面白いな。
口にオティヌティヌ様を含んでいるからお小言も聞こえなくなった。
実は本当にやっている作業を進めていく。作業──魔素と魔族の関係に関する研究資料のまとめを。書くことで思いつくアイデアってあるからね。
その後、魅了が解かれ──爆発的な快楽に襲われたマスカルウィンは全身を痙攣させて気絶。
良かったな。気持ちよくて気絶、二度目だぞ。
俺もマスカルウィンの口で一発抜いていたので、気持ちよく眠ることに成功したのだった。