※この作品はR-18です。

アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ   作:姫鼠まりあ

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意識の叫び(G度低めR18ほんのり)

 アスガードでの生活一日目。

 白銀章冒険者ということでギルド長との面談があった。色々依頼が溜まっているのだとか。が、俺がそこまで戦えないことなどを話すと、何も問題ないと言う。無理強いはしないと。なんだ、ギルド長は全員善人か?

 ただ依頼は受けて欲しいとのこと。どういうものかを問えば。

 

「人捜しねぇ。……確かに俺向きではあるが」

「私を護衛に選んだのは何故じゃ。他にもおったじゃろ」

「他の奴らは他のことができる。お前はなんにもできない。だから連れて来た。シーファに許可は取ってある」

「……はっきり言いよるわ」

 

 現地調査に長けたアサシン二人。交渉に長けたメアリー。その護衛についていったマスカルウィン。他者の懐に入るのが得意なシーファは引っ越しの挨拶と共に情報収集。

 で、丁度ツバナが余っていたから連れて来た。それだけだ、理由は。

 

「これでも強くなった自負があるんじゃがのぅ」

「ほーぉ」

「待て、腕試ししてやろう、とかはやめい。勝てるわけないじゃろ」

「いやいや。ニュービーが言うこと第一位なんだよその台詞。"そろそろ俺も強くなってきたと思うんだけどな!"っつって格上に突っ込んで行って死んでくの」

「……もう言わん」

「ああすまん、ネタ潰したか。お前のそういう言動集めて本当に強くなった時に聞かせてやればよかった」

「畜生じゃの本当に!」

 

 黒歴史はほとんどの生命体に効く毒薬なんだぞ。

 集めないはずがないだろう。

 

「それで! 捜し人の特徴を教えい。私、まだ何の情報も共有されとらんのじゃが!」

「テークスという少年。銀章冒険者への昇格試験中に行方不明になって三日。戦士スキルと剣士スキル、んで道士スキルっつー……なんというかちょっと使いどころの難しいスキルを中途半端に覚えてるそうだ。髪の色は黒で、目はアンバー。最後に着ていた装備はシールドラミアの鱗鎧」

「三日か。……それはなんとも、望み薄じゃな」

「まーな。つっても死体が見つかってないみたいでさ。アスガードの金章冒険者三人くらいが探して見つけられなかったってんで、俺にお鉢が回って来たわけ。またぞろゴブリンの巣穴にでも連れ込まれてるか、単純に魔物に食われたか。なんにせよ痕跡さえ見つけられたら依頼達成だとよ」

「蘇生はしてやらんのか?」

「そいつより蘇生に使う俺の魔力の方が貴重」

「はぁ……相変わらずじゃの」

 

 俺は聖人じゃない。

 なんで見ず知らずの冒険者にそこまでしてやらにゃならんのだ。まぁそれやれば覚えはよくなるだろうけど、死者蘇生が使えるってのはあんま大っぴらにしない方が良い情報だしな。

 

 そんな依頼のもと森を探すこと一時間。

 いねーわ。足跡ハイライトまで使ったけど、その後追いで探しに来た金章冒険者の足跡ばっかりあって、少年っぽい歩幅の奴がねーのだわさ。

 

 一度引き受けた依頼だから達成したいところだけど、まぁ別に失敗でもいいかなーとか。

 

 矢先である。そう思っていた矢先。

 

「ん? ……ツバナ、ちょっとこっち来てくれ」

「なんじゃ。はぁ、落ち葉が多くて歩きづらいの……んん?」

 

 んん? だよな。

 

「……これは、穴? ……空か?」

「わからん。初めて見る」

「ヴェルグで初見なら私が知っとるはずもないじゃろ。……石でも投げ入れてみるか?」

「やってみたけど、そのまま飛んでったよ」

「……なんじゃこれは」

 

 そこにあったのは空だった。

 正確に描写すると、まず樹木があって、そのウロに空がある。

 なんじゃそりゃ。

 

「転移門……いやダンジョンの転移紋か? あるいはその出口……」

「私とパーティを組んで、ここに私が残り、お主がこの中に入って確認後、また転移してくる、というのはダメなのか?」

「それでもいいけど……お前一人で大丈夫か? 俺今一応威圧使って魔物牽制してんだけど」

「ああだから一切襲われなかったのか。……ふん、さっきも言ったじゃろ。これでも強くなっておる!」

「ニュービーの」

「ホントのことだから良いんじゃ!」

 

 サイデッカー。

 ……ま、うだうだ悩むのは好きじゃないってもう何百回も言ってる話だし。

 

「ちょい行ってくるわ。暗くなったら切り上げて宿に戻っててくれていいからな」

「ああ。お主に言う言葉じゃあないが、気をつけろよ、ヴェルグ」

「はいよ」

 

 パーティを組んで──足を踏み入れる。

 抵抗感はない。するりと入った足は、そのまま。

 

「おっとマジ空」

 

 落ちる──。

 

 

 

 

 何かと便利な天空のブーツをショトカに入れてあるので取り出して履いて、しかし一切陸地が見えないことを理由に装備外して自由落下してるんだけど。

 

 一向に地面が見えん。

 なんじゃここは。

 

 ミニマップさんもNO ANSWER。もといNO DATA。

 俺を示す青点以外何もない。マップ縮小しても何も映らないので別空間は確定なんだけど、何の目的の場所なんだここは。

 

 ……テークス君がここに落ちたのだとしたら、三日間落ち続けていることになる。発狂してて終わりでは?

 

 んー、埒明かんしとりあえず一旦転移で出るか。

 

 あなんか弾かれたわ。

 

 ……結界系の弾かれ方だったな。なんだろ、こことアスガードまでの間に堅固な結界があるか、この空間を囲う結界があまりにも強固かのどっちかなんだけど。

 転移はなー。強度とかないからなー。

 

 試しに一メートル上空に転移してみる。……これはできる。

 だから転移が封じられてるわけじゃない。

 

「あと二秒で出て来なかったら空間全域に最大威力ぶちかますぞ。はい、いーち」

 

 ……。

 よーし。

 

「魔術師スキル:マナエクステンド。魔法使いスキル:マナエクステンド。神官スキル:マナエクステンド。聖騎士スキル:マナエクステンド。魔剣士スキル:マナエクステンド。召喚士スキル:マナエクステンド。奇術師スキル:バルブデュアル、バルブデュアル、バルブデュアル、バルブデュアル。魔法使いスキル、充填、遅延、拡散、消費MP90%、マジックアップ、メディケーション、マルチプリケーション、レンジエクステンド、エリアエクステンド。魔剣士スキル:プリズムオーラ。仙人スキル:瞑想、止水。魔術師スキル:反復、開始位置固定、放出後回転」

 

 全砲門解放。

 これをやると貰える称号に肖って名付けられた最大範囲火力砲撃。

 

「魔法スキル:死が世界を別つ刻(ビッグバン)

 

 ……まぁ正式名称で言うならスーパーノヴァ・エクスプロージョンなんだけど。ゲームでここまでやるとこの称号が手に入るので、wikiなんかにおける通称がこれになっている。

 直撃し続ければドゥームスのHPも三秒くらいで溶かせるこの威力。さて──たかが結界に耐えられるかな!

 

「あの、今謝るのって遅いでしょうか」

「遅いが、簡潔に事情を説明すれば消してやらんことも無い」

「あ、言葉通じてる。ダメ元でも話しかけてみるものですね」

「じゅーぅ、きゅーぅ」

「あ、えとえと、私達はスカイアントリオンという魔物でして、その、なんでかはわからないんですけど獲物用の引き込み口が変な場所に繋がっちゃう現象に見舞われていてですね」

「はーち、なーな」

「なので人間を狙っての行動じゃないといいますか! 三日ほど前に落ちて来た人間も保護していますので! どうかお許しください!」

「ろーく」

「だ、ダメ!?」

「いやふざけただけ。……スカイアントリオンっつった?」

「は、はい」

 

 ビッグバンを消して、落ちながら向き直る。

 ツインテールに髪を括った全裸少女。ほぼ俺と等速で落ちている少女は、けれど空気抵抗を受けている様子が無い。……映像、あるいは投影の類か。

 

 スカイアントリオン自体は知ってる。

 トラーヴァ手に入れた後、空の旅を楽しんでいるとたまに遭遇する魔物で、空飛ぶアリジゴクな魔物。主な獲物は人間ではなく、彼女らと同じく飛行を行う魔物。罠の大きさに反して体躯は小さく、トラーヴァ手に入れてる時点の強さの主人公一行にはまともに牙も立てられないくらい弱い魔物だ。

 空の旅がダルくてマンネリ化しないように作られ、けれどロサビスとかの探索には邪魔すぎて結局ダルくなる原因となってしまった可哀想な魔物。

 

 ……でも生息地は今ロサビスって述べたように、大陸南の、さらにもっと南にある「名前の無い海域」周辺だったはず。アスガードとはほぼ真逆の位置だ。

 

「あ、と、とりあえずここから出しますね」

「ちなみに結界突き破ったらどうなってた?」

「死んでました! 私が!」

 

 ああそう。

 やんなくてよかった。

 

 投影だろう少女がその薄い胸をぽん、と叩く。

 瞬間景色が変わる。燦燦と降り注ぐ恒星の光線。広がる海。けれど立てる空。

 

 ……懐かしい光景だことで。

 

 ミニマップさんも調子を取り戻す。

 そして周囲に映し出される表示は全て青。……人間を狙ってない、というのは事実らしい。

 

「あの……その」

「ん。ああ、スカイアントリオンか。個体名はあるか?」

「あ。やっぱりここでも普通にお話しできるんですね。で、えーと名前……というのは、ごめんなさい、わからないです」

「いや謝らんでいい。三日前に来たって人間はどこにいる?」

「空だと寒い寒いと言っていたので、近くの島に降ろしました。……な、仲間が見張りをしてます! 大丈夫です!」

「別に俺そいつの仲間とかじゃないからそんなに焦んなくていいよ。案内してくれ、スカイアントリオン」

「は、はい!」

 

 せわしなく動いている青点はあるけれど。

 ……まぁ、多分。

 

 

「こちらです! ただ昨日の夕方過ぎくらいからずっと眠り続けていて……」

「もう動かないよ。栄養失調だろ。お前らが取って来れる獲物だと足りな過ぎるんだ。そんでもって、コイツ結構暴れただろ」

「あ……はい。その、取り押さえるために少しばかり……傷つけました。ごめんなさい」

「だから謝らなくていーって。冒険者なんてそんなものだ。お前らも傷ついたんじゃないのか?」

「仲間が一人、顔に剣を……あ、あ、でも、すぐ直ります。時間をかければ」

 

 テークス少年を見る。

 栄養失調も……だけど、一番デカイ要因は失血かね。失血と緊張で体力使い果たして回復できずに死んだか。

 

 魔物はなー。

 死んだらその瞬間に世界に還るから、わかんないんだろうな。ミラージュオウルみたいな召喚獣ならまだしも、野良魔物は"死体"というものを本質的に理解していない。

 動かなくなった仲間。動かなくなった獲物。

 だから食べやすくなるし、だから使いやすくなる──程度の認識。

 

 人間の死体もそうだ。

 動かないから食べやすい。だから魔物が群がってくる。死んでいるから、じゃない。

 

 そして、今の今まで生きていた人間が死んでも、死んだかどうかの確認はしない。眠った、動かなくなった。それだけだ。

 

「お、あったギルド章。……俺これさえ持ってかえりゃいいから、あとは食っても良いぞ」

「いやぁ……人間はあんまり美味しくないと言いますか。魔力が潤沢だったりしてくれたらいいんですけど、私達の舌にはあんまり……」

「まぁそうか。美味かったら主食にしてるよな」

「はい、まぁ」

 

 ふむ。

 んじゃまぁテークス少年は持って帰るとして。

 

 ……こういうところが、「魔物についた」って言われる所以なんだろうけど。

 

「で、罠の出口が変な場所に繋がるってのは、いつからの話だ? 詳しく話してくれ。力になれるかもしれん」

「ほ、ほんとですか!? わかりました、すぐに仲間を集めてきます!」

「おう」

 

 な。

 人間相手だったら「勝手にしてくれ」ってなるのに……魔物相手だとこうなの。

 そりゃ三人目も出てくるってな。

 

 

 

 口々に発される内容をまとめるに、スカイアントリオンの罠というのは「自らの胃袋を空間的に拡張し、その口と空の一か所を繋げる」とかいう不思議原理によって成立しているものらしい。その際転移に似た力が働いていているのも確認済み。正直なんじゃそりゃ案件。

 ただその口で起きる転移がおかしなところに接続されて、欲しくもない獲物が入ってくる……というのが多発しているのだと。

 

 具体的な日数はわからないものの、おおよそひと月くらい前かららしい。

 

 ひと月くらい前というと、うん。

 俺がアウラニを分離した時期で。……ファントムと一緒に大規模時間停止やった時期なんじゃねって疑惑が。

 

 またズレか? 俺のせいか?

 

「ただ、全ての罠が他の場所に繋がるワケじゃないんだよな?」

「はい。あと、繋がる場所にもある程度の規則性があるといいますか。どこから入って来た獲物……もとい魔物も、自分たちの棲み処が山の麓だと言うんです。この人間もそうでした」

「山。……ふーむ」

 

 山というと、アスガードの山……より、コールドスウォームの方が印象深いけど。

 山になんかあるのか。なんかってなんだよ。

 

「大口叩いといてアレだけど、この情報だけじゃわからん。すまんな」

「いえ、いえ。元々は私達の問題ですし」

「まぁアドバイスになるかね。人間入ってきたら世話しないで海にでも捨てると良いぞ。どうせ食わないんだろ?」

「え、でも……食べない獲物を罠に嵌めて、棲み処にも帰さずに放置というのは……」

「倫理観たっか。……んーまぁでもそんなもんだよ。特に人間は適応能力の化け物だから、お前らが世話しなくても海……まぁよほど気になるならこういう島とかに放置してやれば、あとは自分で生きるから」

「そうなんですか?」

「そそ。むしろほら、普通の人間はお前らの言葉わかんないだろ? そうなると絶対戦いになっちまって、双方損するだけだ。スカイアントリオン、お前らの胃袋の中に落ちてわけもわからない、ってなってる内にさっさと排出しちまうのが吉だ。たまーに俺みたいなヤバいもん入ってくるからな」

「……わかりました。これからそうします」

「おう。んで、俺が入って来た口の方はあっちで閉じてみる。明後日にでも経過観察にくるから、お前……えーと、最初に話したスカイアントリオン。お前の胃袋に獲物が引っかからなくなってたらそう言ってくれ。もうちょい考え直す」

 

 俺にできるのはこれくらいかな。

 もっと頭良い奴ならもっといい方法あったんだろうけど、おあいにく様ってね。

 

「何から何まで……ありがとうございます!」

「そこまでやってないよ。俺この人間持って帰るだけだし。ま、なんだ。折角言葉が通じて、互いに害し合うつもりがないんだ。仲良くやれるならそれに越したことはないってな」

「はい! 人間とお話して、お友達になれる日が来るとは思ってませんでした! 感激です!」

 

 友達。

 軽いな。こんなんでいいのか?

 

 ……アダルトMODの恩恵はもう一つあったかもな。

 導入前のグラフィックだと絶対誰が誰かわからなかったけど、アダルトMOD入ってる状態だと似てはいるけどそれぞれに些細な違いがあって見分けがつく。声も違うし喋り方もそれぞれ。

 しょうみここまで多いと全裸であることにも気が散らなくなるというもので。

 

「それじゃあな。また明後日」

「はい! さようならです!」

 

 ツバナの元に転移する。

 

 一気に変わる気温。日差し。そして──。

 

「ボロボロだな。強くなったんじゃなかったのか?」

「……帰ったか。ふん、戦士じゃが、私は盾を持っとらん。傷つくのは当然じゃろ」

 

 周囲。

 美女美少女たちの、惨殺死体。

 

 ……。

 

「倒した魔物は、ギルドに持ち帰るか?」

「ああ、そのつもりじゃ。大した金にはならんじゃろうがな」

「そうか。俺はこの少年……死んでたけど、これをギルド長に届けて来なきゃならん。ああ、とりあえず回復か? 司教スキル:再生」

「別に、大した怪我はしとらんがな。それで、急ぐなら急いで良い。私は此奴らの血抜きをしてから行く。……なんじゃ、まだ心配か」

「いや」

 

 参ったね。

 俺は……本当に魔物側になったのかもしれない。

 

 そう思っちゃってさ。

 

 

 

 

 一応体裁を保つための遺体袋に入れたテークス少年をギルド長に見せれば、彼はぎゅっと目を瞑り、「そうか……残念だ」と心から悲しむように、というかなんなら涙までして見せた。たかだか銅章冒険者によく……とか思うのはヤバいか、流石に。

 

 ギルドを出ると、丁度ツバナが帰ってきていて。

 あ、そういえばってさっきのところに転移して結界を施し、そこでようやく一息を吐く。

 

「お母、さん……?」

「すまんな。それについては摂理だよ」

「……人間」

 

 少女。

 最初から悲痛な顔をしているその少女は、必死に地面を……先ほど惨殺死体が複数転がっていた場所に顔を近づけて回る。

 

「……」

「俺が立ち去るよ。ここはお前らの場所だもんな」

「……」

 

 そうだ。

 昇格試験、なんて……人間のためだけの行為で勝手に行方不明になった人間のせいで、余計な死が。

 

 ……んー。

 

「虚数スキル:繰り込み」

「わぁびっくりした。珍しいね君からボクに会いに来るのは。しかも虚数神殿に来るとか」

「お前ってさ、これ聞こえてんの?」

「主語を頂戴」

「この、あらゆる事象を人間のせいにしたがるうるせー声。明らかに俺の思考回路にない結論出してくるのがキモい」

「ああだから、それが世界だよ。キモいでしょ」

「成程。お前が嫌ってんのコイツか。俺も嫌いだわコイツ」

 

 成程ね。

 んで、魔素に操られる魔族や魔化人間の気持ちも理解できたわ。

 

 うるせー。勝手に俺の意思面すんな。騙されると思ってんのか?

 

「ボクなんか常に聞こえてたよソレ。ほんっと、バッカみたいだよね」

「ってことは今は聞こえないのか?」

「今ヴェルグだって聞こえてないでしょ? 虚数神殿は世界の外にあるからね、聞こえないの」

「マジか。ここ住みたくなるな」

「……普通ならボクから誘惑するんだけど、君ってばボクのコレに欲情する変態だからなぁ、身の危険を感じるよ」

「俺が変態ならお前だって変態だよ。ドエロイ恰好しやがって」

「……今度部下にこの格好が扇情的かどうか聞いてみるよ。多分頭を疑われるだろうけど」

 

 実際のところ、実体無いから見えている部分には触れないんだろうけど……あ、じゃあなんだ。胸に手当てたら透りぬけるのかな。疑似ニプルファックまでいける説。

 

「そろそろ帰るわ。帰って女を抱く」

「うん、至極どうでもいい報告だねそれは」

 

 帰る。

 元の森に。セピア色だった景色は次第に彩度を取り戻し──未だ俺を威嚇する少女も動くようになる。

 

 帰るよ。そして、恨むなら恨むと良い。それも摂理だからさ。

 

 

 

 

 宿に戻ると、メアリーがドヤ顔して待っていた。

 どうやら既に家を買ったらしい。

 

「他の奴らはもう?」

「はい。家具類も設置済みです」

「ほー。流石」

「ご主人様のご要望通り、シャワールームやトイレは男女で分けました。ただ」

「ただ?」

「湯船付きの家だったのですが、そこを男女で分ける、ということができず」

「ああそれはいいよ。交互にはいりゃいいし」

「……ご主人様。私達の男女比をお忘れですか?」

「最後か最初にはいりゃいいだろ。なんなら一緒でもいいよ風呂は。そこはそこまで気にしない」

「申し訳ございません。普段はご主人様の価値観に一歩寄り添えている自覚のある私ですが、そこの判断基準はよくわかりませんでした」

 

 毎日浴びるシャワーで男女混合だと気が散るけど、ゆったり風呂入る時なら別にただの目の保養だから良いってそれだけなんだけどな。

 アダルトMODで男女差が無くされているからその辺は説明がめんどい。

 そういやアダルトMOD、視覚は俺だけなのにスキルとか価値観とかは全体に作用してんのな。……MODの適用範囲とか考えてても仕方ないんだけどさ。

 

「ツバナは?」

「先に行っています。ご主人様が最後です」

「んじゃ案内頼む」

「はい」

 

 ミニマップ。赤点表示。

 

 だけど、遅い。ガサッと草を掻き分けて出て来た……飛びついてきた全裸の少女。

 

「死ね、人間──」

「おや、新たな食材が」

「っ……ぁ」

 

 それが、不可視の何かに食いつかれ、瞬時に絶命する。

 ……すまん。

 わかっていたなら、止めてやれば良かった……のかね。わからん。

 

「と……ああ、申し訳ありません。この魔物を使うのは明日以降にします」

「ん。気遣いありがとうな」

「いえいえ、これは失態ですから」

「けどそれ、精液とかついてないのか?」

「だから男性器でありません」

 

 メアリーの理解は、けれど。

 多分、果てしなく遠いもの、なんだろうなぁ。

 

 

 

 夜。

 全員が入った後の湯船に身を沈めて、今日を振り返る。

 なんだかんだいって帝国のマイホームの風呂ほとんど使ってなかったからな。久々だ。前世から断然シャワー派なせいで、こうやってゆっくりすることないんだよなー。

 

 最後に入ったのってアレか。マスカルウィン城の大浴場か。あれ以来って結構だな。

 

 あの時は確かスイが入ってきて……とか考えるから悪いんだよな。フラグすぎ。

 

「ヴェルグ。邪魔するぞ」

「マジで邪魔だから帰ってくれ」

「知らん。二度風呂がしたくなったんじゃ」

 

 なんだいツバナさん。

 どうせなんか相談とかあるんだろ。ゆっくりしたいから早めに話して出てってくれないか。

 

「ヴェルグ。……そのじゃな」

「はよ話せ。どうでもいい話題だったら全裸のまま家の外に転移させるぞ」

「なんじゃ、今日はやけにご機嫌ナナメじゃの。……ああわかったわかった、魔力光を出すな。……イゴナ、という魔族について心当たりはあるかの?」

「知らん」

「そうか。……」

 

 誰だソレ。

 イゴナ。……ネームド魔族でもないな。誰だ?

 でもツバナの口から魔族なんて言葉が漏れるくらいだ、余程俺と結び付けられる符合があったと見るべきだが。

 

「リアからのな、情報なんじゃ。本当は皆で秘密に……というかお主が話してくれるまで聞かないつもりだったんじゃが、最近考え事が多くての。少しでもタスクを減らしたいから、直接聞きに来た」

「なんでリアが魔族のことなんか知ってんの?」

「ツァリラストュ遺跡なる場所でエイルニルス公国が魔族を撃退した時の話じゃ。逃がしてしもうた魔族の女がの、"私はフレースヴェルグの女だ"と叫んでおったそうじゃよ」

「ほーん」

「ほーんて。……フレースヴェルグ。この名はシアルル王国に泊まった時も聞いた。最強の騎士団長フレースヴェルグ。……ヴェルグ、お主は」

「別人だよ。生き別れってレベルで顔も声も性格も似てるけど別人」

「そう、か」

「ああ、そういうことにしたい、って話じゃなくて、マジで別人ね。フレースヴェルグ今魔族だし。大方イゴナって魔族も本当にフレースヴェルグの女なんじゃね?」

「そうか……。……なんじゃと?」

 

 何を聞き返したかったのか。

 今回俺適当言ってないぞ。真実真実。

 

「フレースヴェルグは、魔族になっとるんか」

「ああ。なんならもう二回くらい戦ってる」

「……最強、なのじゃろう? それが魔族になど……」

「俺の方が強い。終わり」

 

 ただ、全力だともう少し戦闘は長引くはず。精神の蓋とかいうのと、バフを一切かけないで戦うフレースヴェルグは、あくまで「身体が言うことを聞かないから」という止む無しの理由で戦っている戦士だ。

 それが仮に「魔族のため」……それこそ女関連でそいつを守るため、とかいって全力で来たら、そこそこダルそう。覚えられるデーモンスキル全部+魔法とか戦士とか剣士とかのスキル使ってくるんでしょ? ゲームにいたらクソボスの類だろうなぁ。

 

「お主は……」

「おい人間、遅いぞ。抱くなら早くしろ。待ち遠しいのは嫌いだ」

「ああすまんすまん。もう面倒だからこっち来いよ。風呂の中でぬくぬくセックスしようぜ」

「ほう。それは初体験だ」

「激しいことはでき……るけど俺があんまり好きじゃないからやんない。ただいつもよりぬくぬくでおもろいぞ」

 

 首絞めックスとか窒ッ息スとかはなー。

 絞められる側が気持ちよさそうにしてくれるならやるけど、そうじゃない奴の首絞めたってなー。

 

 マスカルウィンは頑丈だからやったらハマりそうだけど、ハマるまではただ苦しいだけだろうし、ただ苦しがっているだけだと俺が萎えるんだよな。

 

「ん? 鬼の女、お前も混ざるか?」

「混ざるか! ……この色狂いめ、奴隷となってから盛ってばかりではないか」

「性奴隷だからな。羨ましいか?」

「羨ましくないわ! ……ふん、明日の湯船に精液だの愛液だのが浮かんでいたら許さんからな!」

「それはメアリーの仕事次第じゃね」

「許さんからな!」

 

 ドタドタと出て行くツバナ。

 ほら、二度風呂したいなんて嘘じゃん。

 

 んで、ちゃぷ……と足先をお湯につけて、俺の上に乗っかり、しな垂れかかってくるマスカルウィン。当然のように挿入完了。

 

「で、この後は?」

「いやこれでぬくぬくしてるだけ。激しく動くとお湯零れちゃうし」

「……つまらん」

「激しいだけがセックスじゃないんだよ。たまにはゆっくりしろ」

「つまらん!」

「呪詛スキル:眷属:行動制限」

「む」

 

 ぐでん、となるマスカルウィン。

 

 あー、身体もオティヌティヌもぬくい。好みの容姿の女抱きしめてるだけで心もポカポカする。

 

 いやね、世界君。人間滅ぼしたらダメだよ。

 セックスできなくなるからね! シーファ以外は魔素漏れるんだしさ!

 

「……つーまーらーんー」

「はいはい、じゃあ窒ッ息スするか。お前に適性あるかわからんが」

「おお早くやれすぐにやれ。概要は聞かせなくていいファーストインプレッションを楽しみたい」

 

 このあとめちゃくちゃ窒ッ息スした。

 マスカルウィンは適性大だった。

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