※この作品はR-18です。

アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ   作:姫鼠まりあ

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急転の叫び(G度ちょっと)

 一日空けて、スカイアントリオンの様子を見に来た。

 俺を飲んだ個体を呼んで欲しい、と出会ったスカイアントリオンに告げる時、危うくアダルトMODの情報を言いかけるというアクシデントこそ起きたけど、無事合流。

 経過観察というか経過診断というか、あの後どうなのかを聞く。

 

「そうか、空の方の罠が機能しなくなっているわけじゃないんだな」

「はい。ただ、やっぱり事故は続いてて、私じゃありませんが、あんまり美味しくない魔物が入ってくることがよくあって」

「……最悪の場合、魔化した魔物が来るかも、か」

「あんまり考えたくないですね……」

 

 ただ、なんとなく原理はわかってきた。

 ゲーム的に考えれば簡単だ。今スカイアントリオンの罠には「入り口が二つある」というバグが起きている。そういうバグが起きる理由はなんだって考えた時に、同じようなバグに遭遇した経験を思い出せた。

 それはリリース当初に起きていたハウジングバグ。壁のある一面にしか扉の無い部屋を一か所に向けて両側から設置すると、設置ができてしまうバグ。

 どちらの扉から入っても部屋の中には入れるし、部屋の中から見て扉は片方しかないんだけど、外側から見ると扉が二つあることになっている。ただし部屋の中から外に出る場合に、外に通じる扉は必ず一方のものだけで、つまり「Aという部屋に隣接する扉に入ったからAという部屋に入る」という情報と、「Aという部屋から出る時に使う扉は扉αである」という情報が矛盾しないが故に起きるバグだ。

 

 よく聞けば一瞬で思いつく話でもあった。

 スカイアントリオンが自らの意思で獲物を胃袋の外に出す時は、必ず胃袋の出口に出せる。他の場所に転移することはない。「スカイアントリオンの胃袋」と「スカイアントリオンの罠の口」はしっかりリンクしていて、その後に別の入り口が設定された証拠だ。

 

 さて、このバグの直し方に移ろう。

 これからするハウジングの方は修正パッチが入ってからできなくなっているけれど、既存の……すでに作られていたものを直す方法もfix bugsに書いてあったのを覚えている。

 

 方法は単純で、要は重なり合ってしまっている部屋を撤去すればいいってだけ。

 だから自分の罠の入り口がどこにあるのかわかっているスカイアントリオンを一体一体バグった入り口に連れて行き、そこで罠を閉じてもらえば終わる。

 ただ自分の罠がどこに繋がっているのかわからないスカイアントリオンもいるので、そいつらにはこの先入って来た獲物に「どこから来たのか」を聞くよう指示した。一週間置きくらいに行って閉じれば大体終わるはず。

 

 バグ対応はこれくらいでいいんだけど、問題はそれが何故起きるのかの方。

 ハウジングの件で考えるなら、「どこかで誰かがスカイアントリオンの胃袋を設置している」となるんだけど、それはちょいと荒唐無稽過ぎるしやる意味もない。何か偶然のはずみであると考えた方がしっくりくる。

 そこで気になってくるのが何故全て山の麓に繋がるのか、という部分。

 

 この世界における「山」は、魔族大陸のコールドスウォームを除いてすべてが山脈である。火山じゃない。コールドスウォームだけが火山……というか、それもちょっと違うんだけど、まぁ分類上は火山。

 ロサビスなんかは海底火山らしいけど、ゲーム本編で触れられなかったので割愛。他、海底には火山がたくさんあるっぽいんだけど、どれも露出してきていない。

 地上にある山は全て山脈で、プレートの歪みがどーたらこーたらの奴……なんだけど、流石に剣と魔法のファンタジーに地層プレートがどうのって詳しい設定があるわけではなく、ただ資料館に「火山はコールドスウォームだけである」と記載されているだけ、というのが正解だ。

 

 またこの世界の地下にマグマはない。

 掘るスキルがあるからか、デッドゾーンが存在しない。どんだけ掘っても一生同じ地層のまま。じゃあ鉱石系がどこで取れてるんだって、そういう山々に点在する洞窟から取れてるんだけど。

 カラバ村地下の洞窟ダンジョンや神殿地下の祭壇のように、地下に広がる鉱脈みたいなのは限定的に用意されてはいるものの、他の場所で何を掘ったってなにも出てきやしない。それがこの世界。

 

 堆積とか無いのである。化石とかない。だから石油とかもねーんじゃねーかな。死んだ魔物が残り続けることを許さない世界だし。

 ただ海抜はずっと上がり続けている。トラーヴァの魔本取りに行った時の海底遺跡も、もともとは地上にあったもの。なんで海抜が上がり続けているのかについてはちゃんと設定がある。

 

 で。閑話休題。

 

「ええと……じゃあ、始めますね」

「ああ、頼む」

 

 それ過ぎた話を戻すけれど、つまりスカイアントリオンの胃袋に二つの出口が設定されてしまっているのは、ハウジングの件の真逆。

 外側から部屋を設置したら二重にできてしまった、ではなく、部屋を設置したら二重になった結果入り口が二つできちゃった、という感じ。

 

 だからまずは何が起きているのかをこの目で見てみることにした。

 戦士スキル:過集中により体感時間の流れを遅くする。次元スキルと違って時間がどうこうなっているのではなく、ただ遅く感じているだけ……という設定のスキル。これなら十六手四面も現れない。

 

「──」

 

 スカイアントリオンが大きく口を開く。

 ゆったりとした世界で、まぁ多分何か言ってるんだろうけど長すぎて聞き取れないので無視して、そこ……スカイアントリオンが宣言した作る予定の罠入り口を注視。

 

 まず、空間に歪みの渦のようなものが出現。それはこのゆったりした世界でも速いと感じるほどの速度を見せて、水平方向に穴を開く。

 その際穴が二度明滅。……そっからは何も起きない。

 過集中を解除する。

 

「終わりか?」

「はい」

 

 ……今の明滅がヒントだな。

 コールドスウォーム以外の山がある種「すべて同じである」ことと、罠を開く際に起きた明滅。

 二重になった胃袋。一方通行の出口。

 今までにこんなことはなくて、一か月前から起きるようになった。

 一か月前。俺とファントムが大規模な時間停止をやった時。且つ、アウラニを二つに分けた時。

 

 符号は合致しそうだけど、うーん。

 俺の頭がなぁ。

 

「この罠作るのって結構消耗するか?」

「いえ、そんなことは。種族スキルですし、魔力が尽きない限りは行えます」

「んじゃちょっと実験付き合ってくれねえ?」

「わかりました! それで問題が解決するなら!」

 

 いい子過ぎる。

 

 んじゃちょいと、ぴょんぴょん転移して罠作ってもらって、時折MP回復させてまた罠作ってもらってを繰り返しましょうね。

 

 頭良い奴なら符号だけで解けたんだろうけど、俺は頭良くないからさ。

 試行回数ゴリ押しマンで行かせてもらう。

 

 

 

 結果として。

 

「この海域が悪い!」

「……みたいですね」

「うん、すまん。何の解決にもなってないのは承知してるけど、そうとしか言えん」

 

 この海域……丁度ミニマップのデフォルト範囲で表示されている海域っつーか空域で罠を作ると、必ず入り口が二つになる。

 でもそこから離れると通常通りの罠を作れる。

 つまりこのチャンクがバグってるって話だ。で、俺プログラマーでもなんでもないから、世界がバグってることに関しては手の出しようがない。

 

「色々ありがとうございます。ここが悪いことはもうわかったので、私達は移住しますね」

「すまんな、ホントは全部解決してやりたかったんだが」

「いえいえ。本来は関係ない方ですから、謝られる必要は」

 

 力になれるかもしれん、とか言っちゃったくせにできたのが「その場から立ち退いてもらう」って判断だけってのがなぁ。

 できないことは言わない主義に反し過ぎる。

 

「他のスカイアントリオンや、あるいは害し合わない魔物連中にも伝えておいてくれよ。ここの空域で空間に作用する系のスキル使わないように、ってさ」

「はい! それじゃ、早速行ってきますね。それと、既に罠を張っている仲間には、閉じて別の場所で作る用にも伝えます!」

「おう」

 

 そんな感じで、スカイアントリオン異変は終わり……なワケもなく。

 

 

 ……うーむ。

 俺の転移は普通に発動する。転移門も普通にいける。転移紋はスキルじゃないからわからん。

 スカイアントリオンの罠がスキル扱いじゃなくてオブジェクト扱いだったら転移紋としての扱いになってて、みたいなことは考えられたけど、それを判断する術がなぁ。

 

 こういう、「なぜそうなったのか」について考えて、けれど答えが出ない時は、「逆に考える」のが有用なアプローチだと言える。

 たとえば、「どうであればそうなるのか」。このマップでやればそうなる。

 たとえば、「何をしなければそうならないのか」。このマップの外でやればそうならない。

 

「神官スキル:遮断。……これでどうだ?」

「あ、はい。やります」

 

 俺が検証するっつったら手伝うって言ってくれたスカイアントリオンと一緒に頭を悩ませる。

 いやホント、スカイアントリオンいい子しかいない。魔物だから餌については普通にシビアなんだけど、超協力的で。世界の意思どうこうは聞き流すことにしてるけど、それを抜きにしてもマジいい子だと思うよ。

 

「あ……止まった、かもです?」

「みたいだな」

 

 設置した罠入り口。そこからびゅーんとどっかに飛んで行こうとしたソレが遮断結界にぶつかって止まり、そこに穴を開けた。

 

「んじゃこっちにまず落とすぞ」

「はい。……はい、入ってきました」

「次こっち」

「……確認しました。やっぱり同じ所から入ってきます」

 

 ふむ。

 

「んじゃこうしたらどうだ」

「あ……多分どっちかが弾け飛びました」

 

 今やったのはどっちの入り口が優先されるのか、みたいな実験。

 魔法スキルで石を浮遊させて、全く同じタイミングで全く同じ位置に石を落とし、それがどうなるか。

 答えは同じ出口から胃袋へ排出された石が重なり合い、どっちかが弾け飛ぶ、と。まさに壁の中にいる、だな。

 

 ……。

 ん? 石?

 俺……時間停止のことに囚われすぎてね?

 

 そうだよ、五日前の一か月前っつったらむしろそっちの方が影響デカくねぇか。

 

 人工聖石がこの世に発表された日が、まさしく丁度一か月前だ。

 正しくそれが世界に認識された日。

 

 魔族が人間を排除する理由を手に入れた日。

 

 

「邪魔だ」

 

 

 ぐちゃ、と。

 その圧力だけで潰されたスカイアントリオン。落ちていく彼女を受け止めて死者蘇生を使う。

 

「……どうしてこう、俺の頭ってのは回転が遅いのかね」

「ぇ……ぁ」

「すまん、完全に巻き込んだ。早く逃げな」

「はい……逃げ、ます」

 

 遮断結界を解いてスカイアントリオンを逃がす。

 

 そうだ。

 魔物と魔族はただの同僚。等しく世界の奴隷ではあるものの、同族ではない。

 だから邪魔に思えば殺すのだろう。況してや言葉が通じないのなら。

 

「成程ね。ここはお前達のゲートなわけだ。だからここで転移系のスキルを使うと変になると」

「不遜だな、人間。貴様、オレが誰かをわかって言葉を吐いているのか?」

「魔王だろ? 元人間の魔王サマ。自身の道化具合にも気付かねえ踊る阿呆って奴だ」

 

 照射されたデーモンスキル:黒線を避ける。

 おいおい、フレースヴェルグのより遅いぞ。アイツ信頼を築くとかやってねえで力で押せばいけんじゃね四天王も魔王も。

 

 魔王。そう、サラっと言ったけど、こいつは魔王だ。

 魔化した人間。魔を束ねる王。

 

「そうか。貴様が報告にあった人間のフレースヴェルグか。ふん、あの男の容疑がよもやこんなところで晴れようとはな」

「俺はヴェルグであってフレースヴェルグじゃねえよ、ワォスタクライン」

「……オレの名を知るか。全く以て不快だ」

「そうかい。んじゃ今殺し合うか? 俺としちゃ魔王は別に要らねえからな。今ここで死んでくれても何の問題も無い」

 

 人間を要否で考えるようになっちゃったのはどこのどいつだったんだろうね。

 

 なぁんて。

 

「……いや。此度は下見に来ただけだ。今消耗するのは望むところではない」

「逃げるのか?」

「なんとでも言え。……だが、人間。そうだな。帰ったら人間の王共に伝えるといい。次に月が満ちた夜、天より魔が降り注し」

「……ああ、考えて損したわ。お前らか、この場所から各地の山に経路(パス)繋げてんの。山の共通点とかそういう話じゃなくて、高い所が欲しかっただけかよ」

「安心しろ。お前とお前の家族は丁寧に殺してやる。意識を保ったまま全身を削り殺してや」

「んじゃ今殺すか」

「!?」

 

 お。

 ……避けられた。やめてくれ、避けるの。アダルトMOD入ってるからちゃんと全裸美女になってて……傷ついてほしくないんだよ。

 一撃で死んでくれ。

 

「お前、オレの腕を……!」

「聖騎士スキル:聖域、聖断」

 

 次こそは、確実な──。

 

 

 

 

 

「で、逃げられたと。緊急転移の手段を有していたか、他の者が引き込んだか」

「こっちはスカイアントリオンと楽しく現地調査してただけだってのに、魔王とエンカウントするとは思わないじゃんよー。なんか宣戦布告までされたし。……これ俺メッセンジャーやんなきゃダメかなぁ」

「やらなければ不意打ちになるのではないか? 人間、お前がどこに肩入れするかだろう。平等を愛すのなら伝えてやればいい」

「なんで俺なんだよ……もっと適任いるだろ……」

 

 帰ってきたらマスカルウィンしかいなかったので、久しぶりにセックスとか何もしないで愚痴を垂れることにした。

 いやホント、殺せたと思ったんだけどな。遮断結界解いたのがミスだった。逃げられたよ。

 

 魔王ワォスタクライン。……正直彼我の差を見極める目といい、覚悟といい、テュアナの方が何倍も強いと感じちゃったけど。

 でもアイツはアイツで色々あるんだよなー。知ってはいるからなー。

 

「そういやお前魔王について知ってんだったな」

「ああ。なんなら奴が魔化した経緯もこの目で見ていた」

「そりゃなんともまあ」

 

 魔王。またの名を、悲劇の英雄ワォスタクライン。

 ある意味でフレースヴェルグと似たルートを辿りながら、けれど誰にも理解されず、理解者を得られず、仲間も得られず、銅像が打ち立てられてもおかしくないくらいの功績を立てた後──祖国に裏切られた元最強。

 彼を追い立てた国は既に滅ぼされているので、今の彼を動かしているのは魔素の声……ドゥームスの声だからまた色々面倒なんだけど、とにかく話を統合すると「コイツなんも悪いことしてないのに可哀想」に落ち着く。実際善人なんだよなワォスタクライン。魔化して人間を目の敵にしてるってだけで。

 

「なんなら行って来てやろうか?」

「……正直お願いしたいくらいだ。帝国はもう人工聖石で溢れかえっているだろうし、王国は顔を合わせたくない奴がいる。エイルニルス公国くらいか、行こうと思えるのは。他の主要都市は……関わり合いないしどうでもいい」

「ならば伝えなくともいいのではないか?」

「馬鹿お前、それで人間側が"不意打ちとは卑怯な!"とか言って、それに対してワォスタクラインが"ヴェルグという人間に伝えたはずだが"とか言ったらどうするんだよ。俺丁寧に自己紹介しちゃったよ」

「お前が悪い」

 

 フレースヴェルグ装っておけばよかったよ本当に。

 アイツの魔族としての地位とか知らねーし。

 

「……次の満月は、いつだ」

「凡そ五日後だな。前後する」

「五日後に来るってよ。魔王軍」

 

 この世界、太陽はないけど月はある。太陽がないって恒星が無いって意味じゃないぞ。太陽というワードが無い。日の光は普通にあるので、違う名前が付けられているだけ。

 ……だってのに魔法スキルにライジングサンとかあるから相変わらずのテキトーネーミングゲームなんだけどさ。

 ただ月の満ち欠けだけはゲームに影響が出るレベルで優遇された扱いになっている。王家の長ったらしい呪文にも月が使われているし、リュウゼツ家の家紋のアレも月らしい。

 

 ゲーム的に言えば、満月の夜は魔力の回復速度が2.5倍になる。でかすぎ子さん。

 逆に新月の夜は0.5倍になる。俺エリクシールで回復するから関係ないぴょん。

 

「勝手口は各地の山。つまりアスガードも戦場になるってこった」

「迷惑な話だな」

「ホントにね」

 

 アスガードに越してきて、人捜しの依頼受けて、それの調査してたら魔族侵攻イベントって。

 ちょいとクソゲー気味だな今回の。

 

「越してきてすぐでよかったのではないか? 人間、お前はともかく、この家の女たちは他者への感情移入が激しいだろう。この家……ホームと言ったか。あらゆる結界よりも堅固な結界……というより空間の隔たりのようなものがホームにある以上、引きこもっていれば干渉は受けまい」

「アスガードの子供もたくさん死ぬぞー」

「前にも言ったが、種族間の生存競争に手を出すつもりはない。そこに年齢は関係ない」

「変な価値観だことで」

「お前に言われたくはないが」

 

 そうだ。

 究極、ホームに籠っていればマジで我関せずで終われる。食料が尽きない限り籠城できる。んで食料は最悪俺のインベと倉庫があるのでほぼ100尽きない。

 

 アスガードを見殺しにして、あるいは帝国、王国、エイルニルス公国も見殺しにして、俺達だけ生き残る……というのは、まぁ、できる。

 国防に俺達が手を貸すのも変な話だしな。

 

 ただ個人的な感情を言えば、どうなんだろうね。

 あいつらは友達を助けたいだのなんだの言うと思うけど、俺は。

 

「後で生き返らせればいい、とか思っているだろう、人間」

「いや? その時点で守らなかったんだ、蟠りは残る。戦争終わってからのこのこ出て行って生き返らせて、今後とも変わらずよろしくやろう、は無理だろ」

「変な価値観だなやはり。そういうところには気が回るのか」

 

 つーかさ。

 三人目は今何してん。もう魔王来ちゃうぞ。レベル上げの最中とかなら終わりだぞ。

 ワォスタクラインは言動こそかませ犬だけどちゃんと強いしちゃんと慈悲ないぞ。大丈夫か?

 

 一人目ももう少し頑張れよ。何魔素に従って襲撃に来てんだよ。ちゃんと意思持てよ。

 

「……沢山死ぬだろうなぁ」

「どちらがだ、人間」

「……」

 

 見透かされてんな。

 ……魔族が、つったら、本当に俺はそっち側になるんだろう。でも人間の知り合いって結構少なくて。

 魔族が。あるいは魔物が。

 スカイアントリオンみたいに人間に害を為さない魔物も被害を被るんだろう。邪魔だから、なんて理由で。

 

「あと五日か。……魔王殺すか?」

「それはまた、本末転倒な考えだな」

「ああ、それに人間的な考えじゃねえ。今のは俺じゃないよ」

「む?」

 

 害があるからと言って根絶やしにする奴じゃねえって言ってんだろ。

 ちまっこいところで思考に入ってきやがって。ウザったりい。

 

 ……。

 

「今面白いこと一個考えついた」

「なんだ」

「マスカルウィン、お前って神官スキルは使えなくとも結界系は使えるよな」

「努力で覚えられるものであれば全て覚えたぞ」

「じゃあやろうぜ」

「だから何をだ。情報の小出しはやめろ、楽しそうな顔をしおって」

 

 敵がどっから来るかわかってんだぞ。

 だったらやることは簡単だろ。

 

 

「世界中の山、全部に結界を敷いてやるんだよ。五日後出て来て驚くだろうな。山から出られないんだから」

「……子供かお前は。乗った」

 

 よーし。

 

 

 

 

 

 五日後。件の海域にて。

 

 月に輝くはまん丸満月。落ちてきそうなほどに大きなそれに照らされても、灯台の一つもない沖合の海じゃ眼下は真っ暗だ。真っ黒。

 波が時折煌めくくらいで、それ以外はない。海洋恐怖症の人とかはこういうのが怖いんだろうな。

 

「やるなぁ、ヴェルグ。ワォスタクラインの奴カンカンだぜ。にしてもお前魔力量どうなってんだ。あんなデカい結界をいくつもいくつも」

「俺だけじゃないからな、結界張ってんのは。で、どうだよこの作戦。効果的だろ」

「ワォスタクラインも四天王も最高に怒ってるよ。んでその矛先は全部お前に向いてる。俺が誰の仕業か言ったからな」

「自分の仕業だって言えばよかっただろ。どうせ魔族全員倒すつもりなら」

「色々条件があるんだよ、こっちにも。んで? こっからどう片付けるつもりだ?」

「いやノープランだけど。知恵貸してくれよ、最強の騎士団長サマ。魔王軍のヘイト買い過ぎたヴェルグ君はどう動くのが正解だと思う?」

 

 そりゃお前。

 異口同音に──言葉を発する。

 

「魔族大陸に行くしかねぇよな?」

「魔族大陸に来るしかねぇだろ?」

 

 王国から逃げて、帝国から逃げて。

 アスガードの奴らとも仲良くする気が無いって言うんなら──それしか方法はない。

 

 だけど。

 

「だけど、だ。フレースヴェルグ。俺に魔族を滅ぼすなんて意思はない」

「そうか。そりゃ勝手にしろ。俺は滅ぼすつもりで動いてる」

「んじゃまあどっかでぶつかるかもな」

「だが、どうする。お前にそのつもりがなくとも、魔族はお前を狙いまわすぞ」

「ああ、だから」

 

 お前が守ってくれよ。

 そうすりゃ万事解決だろ?

 

 

 

 

 という経緯をマスカルウィンがつまらなさそうに話せば、反応は一様だった。

 

「アイツは……また勝手な。というかいきなりすぎるじゃろ」

「置いて行かれた。仲間なのに」

「でも、私達は魔素に抵抗できないから、仕方ない……のかしらね」

「う、うーん。何も言えない。……私はついていけるけど、ついて行ったところで何もできないだろうし……」

「家主の、帰りを、待ちましょう。ヴェルグさんが、いないと、何もできないと、いうわけでは、ありませんし」

「……ということは、ご主人様がいない間は普通の料理を作ってもいいのでは?」

「ほう! そうか、人間に合わせていたが故にあのような妙な料理ばかりだったのだな異族の女」

「嬉しそうですねルウィン様。はい、ご主人様のオーダーの無い料理も勿論作れます」

「切り替え早いのぅ。……まぁ、引き摺ることでもないか」

 

 呆れ。

 そして切り替え。

 

「……ヴェルグの仲間であるためには、魔素に耐性をつけないと……」

「いやぁ、ケルち。あのね、それって無理でね。……ダメだよ無理しちゃ。ツゥち、ちゃんと見張っておいてね?」

「勿論よ」

「聖気を纏う、装備で、全身を固めれば、ある程度の、抵抗はできます。……シーファさんが、傷つくので、やめて、ほしいですが」

「いや私は純粋な聖石むき出し、とかじゃない限りは大丈夫だけど……でもまぁ確かに家の中に聖石あると嫌かも」

 

 誰も。

 

 誰も――当然のように、心配はしていない。

 それは信頼であるのだから。

 

「ルウィン様。ご主人様はどれほどかける予定と言っていましたか?」

「知らん。結界の様子を見るために度々山を回るつもりではあるが、奴の動向について問うことはしなかった。奴自身もわかってないだろう」

「そうですか。……帰って来た時に温かいご飯を出せると良いのですが。作り置きしてアイテムボックスにいれておけばいいでしょうか」

「あ、そうだったな異族の女。お前もアイテムボックスを使えるのだったな。……気になってはいたのだ。お前の使う怪異スキルとやら。食えば覚えられるか? ついでにアイテムボックスも手に入ることは」

「は?」

「あの見えないのを出せ。ちょっと齧らせろ」

「……ルウィン様。ここにクロルフェネックがいます」

「今は快楽などどうでもいい。食わせろ。全部とは言わん、齧るだけでいい」

「齧るだけでも痛いのですが」

「文句が多いな。なら痛覚軽減ポーションを作ってやる。それでどうだ?」

「なにそのポーション。聞いたこと無いんだけど」

「天使スキルに、痛覚軽減、というものが、ありますが……ポーションでも、できるのですか?」

「む? ……あぁ、もう失われた技術か。ふむ。よし、忘れろ」

「無理じゃろ」

「痛覚軽減ポーション。あったら有用そう。教えてルウィン」

「弛緩じゃダメなのかしら? メアリーさんを弛緩させて、その間に齧れば」

「なぜそっち側なのですかツゥ様」

 

 ──こっちは観測の必要なさそうだね、とは。

 どこの全裸包帯ストーリーテラーの言葉なのか。




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