アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ 作:姫鼠まりあ
特に情報は更新されていませんが、忘れてしまったキャラがいる方はどうぞ。
幸福と総量の天秤(G度無し)
早速、ということになるのだろうか。
今朝ケルが帝国から走ってきて、その次第を伝えてくれた。
曰く。
幽閉されていたグノーシスが魔化し、ラムナザール四世らの手によって葬り去られた、と。
彼女はそれだけを伝えて帰ったけれど、表情は読めなかった。
少なくとも「ありとあらゆる手段でスキルは封印されていて」「完全拘束」「人との距離は最大限離してあった」との情報はくれた。幽閉。故に魔素の接触による魔化ではないと。
調べたくはある。だけど、こちらでも今問題を抱えているから──調べるのならその後、だろう。
困った。言う程困ってはいないけどそこそこ困った。
快活な笑顔と共に、メアリーの隣で料理をする女性。覚えることが楽しいようで、それはその時から変わらない性格なのだろうことが窺える。そんな女性のバイタルサインを絶えず測定しているバルクスは、時折こちらを見て、けれど首を振る。
うーん。
「ルウィン」
「なぁに、ヴェルグさん」
「……あーっと、記憶の方はどうだ。少しは」
「うーん、やっぱり私が記憶喪失って勘違いなんじゃないかなぁって。私は今までの全てを覚えているもの。ただ……かなり時間が飛んでることには驚いたけど! これがコールドスリープなのね~」
これである。
一週間に渡る「固め」の責め。ずーっとずーっと余裕のありそうだったマスカルウィンは、ある時から本当の限界を迎えたように吹き出しエモートすらぐちゃぐちゃになった。
しめしめ、と思って彼女を包むソリッドリキッド等々を解除し、抱いてやれば、それはもうヨガるヨガる。吹き出しエモートは解除していなかったけれど、口に出す言葉と心境吐露が全く同一で、これは完璧な仕事だったな──と思った矢先。
「ルウィン様、次の工程に入りますよ」
「あ、はーい! それじゃヴェルグさん! 私お料理に戻るから、後でね!」
戻らなくなった。
年の頃は多分十七から二十一くらい。幼さとあどけなさと、少しばかり大人の階段を昇り始めた頃……くらいになった。精神が。
最初は演技だと思って虚偽開告とか色々使ったんだけど、どうにもそうではないっぽくて。
マスカルウィンは──幼児ではないにせよ、退行した、らしい。
これには流石のヴェルグ君も大反省。バルクスの診断およびメアリーの「魂の触診」曰く脳にも魂にも損傷はないということなので、耐えきれない快楽に対して一時的な退行をすることで自衛を行った……というだけっぽいのだけど、反省。
コイツの限界を見誤った。あの「またなー」の時点でまだまだ余裕があると思っていた。それがこれだ。
精神の治療。記憶の修復。
それこそケルの時もそうだったけれど、俺の手に余る……手を出せない領域の話。
この事態は、しかし俺が思ってもみなかった方向に急転換することとなる。
「そういえば、長いことお家に帰っていないから……一回帰りたいなー」
「家? 帝国にあるのか?」
「帝国? ……どこ? それ」
現在のマスカルウィンの記憶は、恐らく彼女が「元のマスカルウィン」の性格に変わる以前で止まっている。そう考えると、自然とあのマスカルウィンに遷移していったのではなく、何か契機があって性格がガラっと変わったのだろうことが推測される。
であれば、この快活な少女に元の道程を辿らせれば、それをきっかけとしてマスカルウィンが戻ってくるんじゃないか説。
というわけで、こういう雑談タイムを多く設けているのだけど、その中の一幕がこれだ。
「帝国についてはまぁいいよ。お前の家がどこにあるのか知りたい」
「ホーリーウッドの森! わかるかな?」
「……真ん中にユグドラシルの生えている森で合ってるか?」
「そう! 私はあそこで生まれてね、でも色々あって出て来てー、あ、家出とかじゃないよ? でも私にはホーリーウッドの森は狭すぎたから、更なる強者と刺激を求めて世界へ! って感じで羽ばたいたの!」
ホーリーウッドの森。
ゲームにおいてはそう呼ばれてはいなかったけれど、真ん中にユグドラシルが生えている森ならば知っている。
少し前、話題に上がった──仲間になるNPCの一人、リシが住まう聖樹と、その周辺の枯れ森。あの聖樹こそがユグドラシルであり、その周辺の木々も枯れているにもかかわらず朽ちる気配がないという不思議な森だった。
しかし、魔族大陸出身だったのか。
「マスター。彼女の年齢を考えると、あちらの大陸が魔族大陸になる以前の話である可能性が高いです」
「あー。……そうか、そうだよな」
ドゥームス。魔素。
宙から降り立ったモノは、元からこの世界にあったわけではない。前文明は二度の滅亡を迎えているけれど、その内の一つ……一度目の滅亡の原因が魔素だ。まぁ二度目の滅亡の原因も魔素なんだけど。
魔素の飛来によって壊滅的な打撃を受けた当時の人類が、トラーヴァやバルクスなどを作って魔素に抵抗せんとし──しかし破れた。それが前文明の二度の滅亡の真相。
マスカルウィンがその時代から生きているというのであれば、成程。魔族大陸が魔族大陸になる前の話というのにも納得が行くし、ホーリーウッドの森というのを快活に語っている理由にも得心が行く。
ただ……今の魔族大陸は大変なことになっている。リシとホーリーウッドの森も無事かどうかは怪しい。あとイサカリも。
それでも。
──俺可哀想は可愛いはイケるんだけど、流石に自分の罪悪感が勝ると勃たないから早く戻ってほしいんだよね。
という本音を隠して、マスカルウィンを元に戻すためにホーリーウッドの森へ向かう所存である。
「メアリー」
「いえ、此度は付いていきます。ご安心ください。魔素対策はしてきました」
「……つーと?」
「何度もお話しているように、この肉体は肉の寄せ集め。よってここに聖水を馴染ませて、疑似人工聖石化してきたのです。……いえ、勿論ご主人様は嫌な顔をするだろうな、とは思っていましたが、あくまでこの肉人形が聖気を帯びているだけですのでお気になさらないで頂けると」
「……お前の本体は?」
「聖気を帯びた肉に埋めてあります。腹部を切り裂かれでもしない限り問題ありません」
「あんまりそういうこと言うな。フラグになる」
意思は固いらしい。
まーた人工聖石かよ、とか思ったけど、どっちかというと聖水がヒトの形を保った……聖水スライムみたいなもんか。それならまぁ。まぁまぁ。
「マスター。私も行きます。終末防衛機構ですので、魔素に対する防護手段は持っています」
「元ボディじゃないのにか?」
「はい。以前媚薬ポーションを噴霧する装置を作りましたが、あれを改良しました」
こっちも聖水ってことね。
……ま、前文明の産物であるバルクスは確かに連れて行っていいと思う。何かと知識が必要だし。
あとの問題は。
「ルウィン。今のお前の故郷は少し様相が変わっていてな。辿り着くまでに魔素……毒に似たものを乗り越えにゃならん」
「大丈夫! ホーリーウッドの森には転移紋があるから、そこを使えばいいと思う」
「転移紋?」
……いや知らんな。無くね? あったらゲームに出てきてそうだけど。
「それはどこに繋がってる?」
「この近く! あ、そっか。今の私はヴェルグさんの奴隷だから、ご主人様に許可を貰わないといけないのか。……お願い、ご主人様ぁ」
「そんな媚び売らんでも連れて行くっつーか一緒に行くつもりだったからいいけどさ。んじゃ全員支度は……ああもう完了してる感じだな。じゃあルウィン、準備を」
「家に帰る上に、転移で帰るんだから、準備も何も!」
「確かに。……んじゃ行くか」
一応書置きは残す。今回は先にグノーシスの魔化という一報が来ていたから、もしかしたら俺を頼って誰かが来る可能性あるからな。
今世紀最大の甲斐性だ。俺らしくもない。
「それじゃ、しゅっぱーつ!」
快活な。
どこまでも快活な──あるいはラヴ・グラットルをも彷彿とさせる、「世界には希望しか満ちていない」とでも言いたげな目をしながら、マスカルウィンは……というか俺達は、その転移紋とやらに向かった。
アスガードから少し離れた場所にある、ヘネツクの塔という元ダンジョン。なぜ元なのかというと、発掘が終わったから……ではなく、ほぼ倒壊しているから。盗賊も魔族も住み着きようがない。危険すぎて。
ゲームにおいてもここは宝箱が三つ四つあるだけの場所だった。そういう「ミニ遺跡」みたいなのは各地に点在しているからここもそうなんだと思ってたけど、まさか。
「よい、っしょ!」
「おお。……マジであるとは」
「なによ~、信じてなかったの?」
「それなりに」
ミニマップで見ても転移紋を示すマークはない。拡縮しても変わらず。
しかし、今マスカルウィンが開いた蓋のようなものの先に、確かにそれはあった。土に埋もれた蓋。あるいは王国地下のバルクスのボディと似た材質のソレ。気のせいでなければマスカルウィンが手を当てて何かを認証していたみたいだったから、生体認証通らないと開かない系の奴なんだと思う。
……マスカルウィンを仲間にする方法が実はあって、それで彼女をここに連れて来ていたら開いた……とか? あるいは前文明の……だから、そうか。ソロクリアでバルクス倒してバルクスの魔本でバルクス作って、そのバルクスをここに連れてくれば……ってわかるか!!
まず王国地下ダンジョンのソロクリア及びレイドボスバルクスのソロ討伐が難しいオブ難しいなのに、そっからどうやってヘネツクの塔を連想するんだよ。
あーでも、なんか懐かしい。そうそう、このゲーム理不尽なんだよな色々なー。
「よ、っと……はい、起動成功!」
「お」
ミニマップに転移紋のマークが出現する。
成程、起動してなかったから。へぇー。
「一応聞くが、ルウィン。これの接続先はホーリーウッドの森であってるんだよな?」
「勿論!」
「ホーリーウッドの森の内部……ユグドラシル周辺か?」
「洞の中だねー」
それならまぁ安心、か。
最悪の場合を考えて自己蘇生スキルだけセットしておいて。
メアリー、バルクスを抱き寄せて。
「じゃあ、行くよ。開紋!」
俺達は光に包まれる──。
──初めに耳にしたのは、雑踏の声。ざわざわ、がやがやという賑わいの音。
「ついたー! ん~、ざっと十年ぶりくらい? あ、いや、何万年経ってるんだっけ? そんな感じしないけど」
「……」
ミニマップに映る、青、青、青。
いやそれだけじゃない。ユグドラシルとは名ばかりの小さな聖樹。そしてリシを除いて何もなかったはずのここ。けれどマップには──街がある。
抱き寄せた二人を確認する。奴隷メニューから情報もチェック。異常なし。
「バルクス。何度か知識データベースの更新をしていたように思うが、古いデータは呼び戻せるのか?」
「格納してあります」
「よし、お前だけが頼りだ」
「……! 今度キャスパーさんに自慢します」
明るい。
洞の外は……というかこの樹木自体の大きさも……ああいや今は外の話だ。
暗鬱とした魔族大陸からは考えられない程の明るさ。「気持ちのいい朝」という言葉がしっくりくる感じの──魔素の気配なんか欠片も感じない空気。
察しが悪いつもりはない。
「三人とも~? 早く早く! 家族に会わせるから、こっちこっち!」
過去だ。確実に。
……タイムパラドックス系は思考が面倒になるから苦手なんだけどなぁ。
「マップデータを取得中……」
「ああそうだメアリー、お前って何歳なの?」
「正確な年齢はわかりませんが、この時代には生きていないですね」
「はーやーくー!」
さて。
……お約束というかテンプレートではある。異世界の過去編。
ただ、ファントムは時間遡行とかできないはずなので、この物語を書いているのは世界と思うべきだ。ただの事故の可能性もミリ。
仮に世界の物語だとしたら。
ストーリーもへったくれもない、小イベント挟んでからの大イベント──カタルシスも納得感も何にもない「理不尽」が襲ってくるはず。
ただの里帰りには、ならないだろうな。
「この人が私のご主人様! ヴェルグさん!」
とかって馬鹿正直に話しやがったせいで空気がどん底に……落ちることはなく。
マスカルウィンの両親は、「あらあら、ウチの娘をお願いしますね」とか「手を焼くだろうが頼んだ!」とか、特に否定的な様子はない。奴隷というものを理解していない可能性もあるが。
「お母さん、私の部屋って残してくれてる~?」
「勿論よ。たかだか十年で娘の部屋を壊すような酷い母ではありませんもの」
「十年? 何万年じゃなくて?」
「……ヴェルグさん。ごめんなさいねぇ、ウチの娘は昔からこう……夢見がちというか、突飛なことをいう子で。ご迷惑、かけていませんか?」
「問題ない。少し思い込みが激しい所はあるが、概ね、な」
「おお、娘のことをよくわかっているお人だ! 良かったな母さん、良い人に恵まれたようだぞ!」
「ええ、本当に……。貰い手なんて百年経っても出てこない、なんてみんなで言っていたのに……ふふふ、しかもこんなに格好いい人を」
「おうおう母さん、俺もまだまだ捨てたもんじゃねえだろ?」
「何言ってるのよ。アナタが一番。当然でしょう?」
ああ。
ちょっと良いな、この空間。いや、他人の惚気が一番嫌、って人結構いるけど、俺はそうでもないんだよな。
幸せ家族を見ていると気分が落ち着く。良いよなー、俺の周囲全部こうであれ。
「あった! ね、見て見て見てこれ!」
「こら、廊下を走らないの!」
「ん……」
ドタバタと走って何かを見せに来たマスカルウィン。
それは。
「……月の形の……ブローチ?」
「あら……あらあらあら! なに? もうそこまで進んでたの? これは、今日はパーティね!」
「ほほう? どうだい、ヴェルグさん。今日は俺と一杯飲み明かさねえか。俺も親父として、色々言いてえことがあるからな!」
「え、なんでパーティ?」
「なんでって……貴女、それを異性にあげる意味は前教えたでしょう?」
「うん! 大切な人に贈るんだよね? だからヴェルグさんにプレゼント!」
マスカルウィンの両親二人が「あちゃー」という感じで額に手を当てる。
大体理解はした。
「ルウィン。まだ時期じゃない。お前が全部を理解した時まで大事に持ってな」
「え。……そーなの?」
「あらあら……ねえアナタ、このまま勘違いさせたままでもいいんじゃないかしら。ヴェルグさん、本当に素敵な人みたいだし」
「色々理解して顔赤らめるアイツってのも見てみたいモンだな。ハッハッハ!」
「もー! なに? 隠し事? それとも私に嘘吐いたの!?」
しかし。
月、か。
……頭の片隅に入れておこう。この世界じゃ月は含有する意味の量が大きいからな。
「すまない、俺もホーリーウッドの森に来るのは初めてだから、少し観光して回りたいんだが、いいか?」
「あら! ならマスカルウィン、貴女が案内してあげなさい」
「はーい!」
あっ。
隠しに隠していたマスカルウィンの本名があっさりバレ……ありゃ、驚いてないな二人とも。
まぁこいつらにとってはどうでもいいこと、か。
「それじゃ、行こ? ヴェルグさん!」
「ふむ。それではルウィン様のお母様。少しばかりお願いがありまして」
「何かしら」
「私、ご主人様の家でメイドをしている者でして……ですので、ルウィン様の舌に合う味付け、というものを知りたく」
「あらあら! ええ、勿論。色々教えてあげるわぁ!」
ちらりとこちらに目配せするメアリー。
アイツ本当に有能だな悪戯が絡まないと。
マスカルウィンに手を引かれて、家を出る。
「マスター。私は航行モードで周辺域のデータを集めてきます」
「ああ。体力減ったら問答無用で俺が行くから、減らさんようにな」
「無論です」
さて。
これでマスカルウィンと二人だけになった。
行こ、行こ、と。過去だとしても結局街中は魔物素材の嵐なので、上ばかりを見ながらあっちこっちへ連れていかれるのを連れていかれるままにして、思考を巡らせる。
多分だけど、今転移紋に触れても起動しないか、起動しても過去のアスガードに飛ばされるはず。世界の用意した「三流台本」をクリアしない限り、俺達が未来に戻る術はない。
だから小イベントを見逃してはならない。今回は鬼の国と違って、初めから初見のゲームを攻略するつもりで行く。
……そういや鬼の国の時もマスカルウィンと二人きりだったな。
「ヴェルグさん! それでね、こっちがね」
──警報、のようなものが鳴る。
直感的に警報だと感じただけで、そうではないかもしれないけれど……周囲の人々の顔つきを見るに、多分あってる。
早速来たな。
「もー、タイミング悪いなぁ。あ、でも大丈夫だよヴェルグさん。ホーリーウッドの森の衛兵は強いから、侵入者なんて一発で倒しちゃうんだから」
「侵入者、の警報なのか」
「そーそー。たまにあるんだよねー。十年前は毎日っていうか一時間毎くらいに来てたけど、今は落ち着いてるんだーって思ってたら……コレ。はぁ、あいつらって学ばないっていうか」
「敵もわかっているのか」
「敵……っていうか、まぁ一応隣人? んー、なんて言えばいいんだろう」
「気になる。見に行ってもいいものか?」
「間違ってこっちの衛兵を倒しちゃったりしなければ大丈夫だと思う。私の顔も利くからねっ!」
ミニマップに赤点はない。
俺に敵対していないからか、それともマスカルウィンの言う通り敵ではないからか。
なんにせよ気になるので、彼女を抱いて、その指示通りに現場へと向かう。
そこには。
「やい! この蛮族め、聖樹を返せ!」
マスカルウィンより五歳くらい年下の少年が、衛兵らしき男に組伏せられていた。小イベント終わるのはっや。
「はぁ……。だから、そちらの族長にまず問えばいいものを。前回の族長討議から五十年間、この森は私達月の民のものだ。あと少し待てばまた次の族長討議がある。その時にそちらが勝てば、次の五十年はお前達がこの森に暮らす」
「んなこと知ってんだよマヌケ! その族長討議にフセーがあったって何回も言ってんだろ! チッ、お前みたいな下っ端じゃ話にならねえ、族長呼んで来い!」
「お前みたいな下っ端に族長がお会いになるわけがないだろう。帰れ。魔法スキル:ガスターウィンド」
「のわ──っ!?」
ギャグみたいな断末魔で飛んでったけど、ガスターウィンドそこそこ威力出る風属性魔法だぞ。
大丈夫かアレ。
「大丈夫大丈夫、私達はみんな頑丈だから。……こんな感じでね、私達月の民と、あいつら太陽の民はいっつもこの森を巡って争ってて」
「……太陽、だと?」
「うん。あれっ、もしかしてヴェルグさんのとことは言葉が違うのかな。ごめんね、私田舎者だから」
太陽はない。
この世界の太陽は違う名前だ。月は一緒だけど太陽は違う。それはゲームシステムの話。そしてゲーム本編においても、資料室にさえも、太陽という言葉は一回も出てこない。
だけど、この何万年も前である過去にあった、というのなら。
前はあったのか?
「あいつらはいつもはどこに住んでるんだ?」
「あっちにある山の先にある村だよー。……私が出てった時と変わってなければ、だけど」
……今のを小イベントだと考えた場合、要素は三つ。
一つ、一つの場所を取り合う二陣営がある。
二つ、その片方から片方へ侵入者があった。
三つ、侵入者は撃退された。
拡大解釈は色々できる。魔と聖。善と悪。過去と未来。二陣営だといくらでも考えられてしまう。
いや、一つの場所を取り合う、が大事か?
たとえば……もうすぐ魔素が「宙から降り立つ」はず。ただしそこは魔族大陸ではないはずなので、魔族は自身の安寧の地を求めてこっちの大陸に来る。魔素の安定供給の為されない人間の大陸はずっといるにはキツいって理由で。
そういう意味で、現地人と魔族が一つの場所を取り合うことにはなる。
ただ。
……ここの民に魔素への対抗手段はない。
取り合う以前に負けるだろう。そうしてこっちは魔族大陸になる。拠点を得た魔族は勢いを増し、人間の大陸に攻撃を仕掛けて文明を滅亡させ、それでもと立ち上がった人間たちがバルクスやトラーヴァを作って、再度負ける。
大まかな歴史はこれになるはず。
いや……マクロに見過ぎか?
小イベントがこれだとして、大イベントがそんな何十年もかかる話になるとは思えない。
もっとミクロな大イベントがある、か?
「大丈夫? ヴェルグさん」
「ああ。……いや、ルウィン。その太陽の民の村、というのは……行けるものなのか?」
「え? うーん……行けはするけど、すぐ追い出されると思う」
「排他的なのか? それとも月の民がダメなのか」
「後者かな! あ、だからヴェルグさんとメアリーさんとバルクスさんだけなら大丈夫かも?」
「それはどうやって見分けている?」
「へ? 見た目でわかるでしょ?」
……これは、アダルトMODの弊害なのか。
それとも血の契りと同じで俺が習得できないスキルの話か。
うん、行くにせよ行かないにせよ、一旦帰ってあいつらと作戦会議かね。
「止まれ、そこの男」
声。
それは、さっきの衛兵のもの。……見てるのバレたか。まぁ隠れてすらいなかったからな。
「何か用か?」
「──まさかとは思うが、マスカルウィンの彼氏か、お前」
「彼氏って……もー、十年経ったら少しはその恋愛脳も落ち着いてるかと思ったら酷くなってる!」
「いーや! 俺は見逃していない。お前達がここに辿り着いた時、お前はコイツに姫抱きにされていただろう。俺は知ってるぞ。アレはラブラブカップルしかやらない移動方法だ!」
「え……そ、そうなの?」
「そうだ! だから聞いている……この男はお前の彼氏か、マスカルウィン!」
「えっと……ご主人様、だよ」
「ご主人っ……!? ……ぐはぁっ」
鼻血を噴いて倒れる男。
……いやシリアスシーン苦手ヴェルグ君だけどさ。
なんだこの村。住民全員ギャグ漫画出身か?
「じゅ……十年で、マスカルウィンが……お、オンナになった……!」
「失敬な。十年前から私は女ですぅー!」
「一大事だ……一大事過ぎる! ホーリーウッドの森全域に響き渡るニュースだ!」
「言・い・過・ぎ!」
多分、昔のノリなのだろう。
ノリの感じでグーパンしようとしたマスカルウィンを既のことでとめる。
あっぶねぇ。お前今の自分のステータス忘れてるだろ。この程度の奴にその勢いでグーパンしたら弾け飛ぶぞ。
「あ……あ、大丈夫だよヴェルグさん、こんなのじゃれ合いだし」
「ヴェルグ……ヴェルグというのかお前。……こんな暴力女のどこに惚れたんだ! 何かあればすぐに手が出るレイジモンキーの亜種みたいなやつだぞ!」
「ヴェルグさん、放してー? ぐっちゃぐちゃにしてくるー」
マジでぐっちゃぐちゃにできるからやめておけ。
……マスカルウィンに
「く……くそ、目の前でイチャイチャしやがって……ど、どどど、どこまでヤったんだょ……」
「なにが?」
「はぁっ、お、俺に言わせんのかよ。……だ、男女が番ってヤることなんか一つしかないだろ……その」
「ああえっち? したよ、さいっこーに気持ちよかった。今までの人生で一番ってくらい!」
「ぶべらぁっ!?」
鼻血を噴射し、きりもみ回転しながら吹き飛ぶ男。
……うん。
「帰るぞ、ルウィン」
「もー、ヴェルグさんは心配性だなぁ。ずっと手放してくれないしー」
「俺の奴隷になったことでお前には常にバフがかかってる。お前、今お前自身が思ってるより力強いぞ。危ないんだよ」
「へ? ……あ、そうなの?」
「ああ。止めてなかったらあの男、怪我どころじゃ済まなかった」
「……そうなんだ。止めてくれてありがとっ!」
「まぁ主人だからな」
さて。
こっから、どうするかね。