アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ 作:姫鼠まりあ
翌日。
「改めて。昨日は本当に助かったよ、ヴェルグ殿。それと、君のそういった話を聞いていたにもかかわらず、君にそういうことをさせてしまったことを心よりお詫びしたい」
「いや、構わない。魔化については国家間も個人間も関係なく全人類が対処すべき問題だ。あの女もなりたくて魔族になったというわけではないだろう。なら、感謝は受け入れるが詫びは要らん」
「そうか……。ああ、やはり君は高潔な人のようだ。姫様には断られたのではなく見つけられなかったと報告することにするよ」
改めてカラジェット君との会話だ。
相も変わらず武装解除状態での参加だったけど、昨日のケルのバックスタブを剣で止めていたあたり、割とフツーに武器は取り出せるんだろう。あくまで礼儀の問題かね。
「ただ、そうだな。……今回の件。俺が魔化を防いだこと含めて、他言無用で頼む。簡単にできることではないというのもあるが、俺は」
「わかっている。君は血が無理なんだろう? それなのに昨日はアニスを救ってくれた。そこまでされて君の状況を悪くするような酷い人間ではないつもりだ。むしろ、僕達イグニスはこれから君に全面的な協力姿勢を示すよ」
「そこまでしてもらう必要はない。知っての通り、俺は白銀章だ。大抵のことは自分でなんとかなるし、ウチにも心強い仲間がいるからな」
今この場には参加していないけれど、ケルの自室でかたりと物音がしたのを聞き逃さない。アサシンスキルの聴力強化とか使ってるなコレ。
「……こういうことを言うのはどうかと思うのだけど、一つ提案があるんだ。聞いては貰えないだろうか」
「内容次第だが、なんだ?」
「君は……別にその、戦闘職に拘る必要はないんじゃないか? 確かに僕達とですら隔絶した力の差を感じる。けれど君は戦えない。なら、ただ神官として振る舞う、というのは……何かダメなことがあるのだろうか」
……。
……?
……何も問題なくね?
あ、そうじゃん。別に戦士である必要ないじゃん俺。最高位プリーストとか医者としてやってりゃいいじゃん。いや血が苦手血が苦手って言ってるけど、他人の怪我を見て気分を悪くするような人間じゃないよ俺。あくまで自分がやるのとか、進行形で傷ついていくのが無理ってだけだから。
考えれば考えるほどデメリットがない。帝国で開業医、は全然アリだなマジで。
俺の中のカラジェット君の株がさらにぐーんと上がる。
「そういう未来も、まぁあるやもしれん。だが今の俺はとりあえず生活するので手一杯でな。戦闘も補助も、そもそも戦場に出ること自体を避けている。だが、ありがたい導きだ。もし帝国で凄腕の医者が医院を開いた、とでも噂が流れだしたら、そういうことだと思ってくれ」
「ああ、楽しみにしているよ」
手を差し出されたので、それを握り返す。
良いね、友情って感じだ。
「……ところで、ヴェルグ殿」
「呼び捨てでいい。なんだ、カラジェット」
「ああ、ありがとう。一応、さっき言った通り姫様には見つからなかった旨を報告するつもりなんだけど、何故王国の招聘に応えないのか聞いても問題ないかな」
ああ、そういえば。
「別に、見つからなかったと言わなくともいい。断られたと言え。そして理由だが──俺は王国に所縁がある。どこの誰であるとは、まぁ、もう探しても見つからない話だとは思うが。だから王国には行きたくない」
「それを聞かされたら、余計見つからなかった、というよ、僕達は。……そうか。余計な詮索はしないけれど、そういう何かがあったんだね。……うん、わかった。君のその過去が癒えるように、なんて大口は叩けないけれど、いつか共に肩を並べられる日が来ることを夢見ているよ」
「ああ。じゃあな、カラジェット」
「うん。また、ヴェルグ」
もう一度手を握り直して。
今度こそカラジェット君は去って行った。いやー好青年。爽やかイケメン。清涼剤だわー。
……で、なんだけどさ。
「先ほどから隠れているつもりか? 別にやましいことがあるわけでもないのなら、出て来い。カラジェットも気付いていたぞ」
「ふぇっ!?」
ヘンな声が上がる。
アダルトMODで全女性が美女美少女化しているとはいえ、言動はそこまで変わっていないはず、なんだけどなぁ。
なんでこの子こんなにドジっ子属性ついてんだろ。ゲーム時代はそれこそ「聖女!」みたいな雰囲気の落ち着いた女性ゴリラだったのに。
「ユナ、だったか。俺に何か用か?」
「あ、あぅう……そ、その」
「落ち着け。逃げる気は無い」
「は、はい! ……えと、その。たたた、単刀直入に聞きます! ティル・ナ・ローグという場所を……国を知っていますか!?」
一瞬迷う。
それは魔族化防ぎレベルの機密情報だ。MOD入ってないイグニスメンバーにだったら全然教えるのも吝かではないんだけど、果たしてこのドジっ娘に話して大丈夫なものか。
「私の口から秘密が漏れることを危惧しているのなら、く、屈服の呪いをかけてくださっても構いません! お願いします! 真実を教えてください!」
「少し待て。声が大きい」
神官スキル:遮断。
これはケルにさえも聞かせるべき話題ではないので、部屋を結界で囲う。音漏れどころか内部の情報も見えなくなったはずだ。
「う、ぅぅ、私より練度の高い神官スキル……」
「これでいい。……ティル・ナ・ローグ。確かに俺はそこを知っているし──行き方も知っている」
「え」
唖然。そして、ごくりと生唾を飲み込む音。
ティル・ナ・ローグ。ノーグではなくローグ。別名、死者の国。それはこの世界に実在する。いやこの世界に、というか、概念的には隣の世界、重なり合った世界になるのかな。そこにある。
そしてティル・ナ・ローグには文字通り死者がいる。アンデッドではなく、死者だ。死霊ですらない。安寧へと導かれた死者の魂がそこにはある。
「わかっていると思うが、これは教会総本山においても秘中の秘とされている情報だ。それでも聞く覚悟があるか?」
「……いえ!」
お?
強い目をしたものだから、「あります」と来ると思ったんだが。
「実在することを聞けただけで十分です。場所や行き方は自分で模索します。……ありがとうございました!」
おおおお。
やっぱりカラジェット君だけじゃないな! イグニスメンバーは全員……いやこの信頼できる感エッグいなマジで。
そして実際がどうなのかはゲームのグラフィック的に知っているんだけど、まぁ今この見た目だからだろう。父性が働いてしまう。
ゆえにインベントリから、簡素な十字のお守りを彼女に差し出した。
「えと、これは?」
「ネフティスのタリスマンという。どこにあるのか、どうやって入るのかはお前自身の手で見つけると良い。だがこれがないとティル・ナ・ローグには入れない。そしてこれはもう手に入らない物だ」
「え、いや、そんな希少なもの受け取れないです!」
「貸すだけだ。お前がティル・ナ・ローグに行き、やりたいことを叶えた後に返しに来い。何もティル・ナ・ローグに定住したい、というわけではないのだろう?」
「そうです。定住じゃなく……いえ、そうですね。……わかりました。ありがたく使わせていただきます!」
まぁティル・ナ・ローグに定住するって死ぬこととほぼ同義だし。
そうじゃないのはわかっている。なら、それを応援するのはアリだろう。今俺からのイグニスメンバーへの好感度青天井レベルに高いし。
ちなみにこのネフティスのタリスマン、「十時間以上セーブしていない状態で主人公が死に、セーブポイントへ戻る」という条件を達成すると手に入るアイテムで、インベに百個くらい入ってる。いや条件めんどいけどマジで有能なんだよコレ。
ティル・ナ・ローグに入れるってのはぶっちゃけおまけ機能で、身に着けているだけで命剣と似た効果を発揮する。限定条件下……「HPが半分以下の時、死に至るダメージを受けた際にHPを1残す」という蘇生効果というか死亡対策効果というか。
HP全快時にはつけてても意味無いから俺は普段つけてないんだけど、分の悪い相手と戦う時とかはマジ重宝する。十時間のノーセーブもゲームつけて放置しておけばいいだけだしな。
とはいえこの世界で主人公……俺なのか別の誰かなのかは知らんが、ソイツが死んだら死んだままだろうから、希少な事には変わりはない。でもまー百個あるし! イグニスだし! 大丈夫だろ。
結界を解いてユナを見送る。
こちらへ振り返って何度も何度もペコペコ頭を下げながら去っていく彼女に、カラジェット君とは違った癒しを感じた。
そして、なんというか次から次へと、だけど。
「そろそろ出てきていいぞ、アニス・ウォーズマン」
「!」
パキ、と。
空間が罅割れる。そこから出てくるは人間の腕。そう、彼女は今の今までずっとここにいたのだ。ただ位相が違っただけで──おっと。
「ぬぎゅぇっ」
「ケル。まぁ異様な出方に驚いたのはわかるが、いきなり攻撃を仕掛けるな。アニスだ。昨日魔族化しかけた奴。元からこういう能力者なんだよ」
「す、すまない。すぐに出るから勘違いしないでくれ!」
まぁなんかやべー雰囲気なのはわからんでもない。だからケルは問答無用で攻撃しようとしたんだろうけど、あっちに害意があったら首元とかに現れて剣でざっくりの方が効率良いだろ。効かねーけど。
それにフルネームで呼びかけたのには理由もあるしな。俺側からの理由が。
今回の話は機密性のあるものじゃないから結界も張らないでいい。さて、アニス・ウォーズマンが空間の裂け目から出きったあたりで話を始めるとするか。
「まず──」
「まず、謝意を。命を助けてくれてありがとうと言わせてくれ」
「お、おう。それはもうカラジェットから十分に貰ったよ」
「それでもだ! リーダーにだけ言わせて私から何も言わないわけにはいかないだろう!」
ああ、うん。
それはまぁそうね。
「わかった、謝意は受け取っておく。それで、アニス・ウォーズマン。聞きたいことがあるんだろ? 俺からも言いたいことがある」
「ではまずそちらの話から聞こう! 私の話など些事に過ぎん!」
声でけぇ。まぁ本来はイグニス一番のゴリマッチョで武器は大槌とかいう超パワー系だからなぁ。もう一人のメンバーのタンクの奴より背もガタイもでかいという姿をしている。
「わかった。じゃあまず、お前の愛用の武器を見せて欲しい。いつも使っている奴……この帝国に来てから魔族を潰すのに使ったやつだ」
「了解した!」
そう言って普通にアイテムボックスから武器を出すアニス。
うわぁ。
えーと。
レディポット、で伝わるかな。伝わんなかったら諦めてくれ。
「……これは地龍の素材、だな?」
「おお、よくわかったな! そう、地龍グラントマギアスの素材で作ってある!」
「……気付いていない、か」
「何がだ?」
「魔素だよ。このハンマーヘッド部分に魔素が溜まっている事、気付けないか?」
「なんだと!?」
インベから聖水を取り出そうとして、けれどそれよりも速くアニスが腰の麻袋から聖水を取り出し、ハンマーヘッドにかける。
すると黒い靄がジュワァと消えて行った。
「本当だ……だが何故だ!? まさか」
「まだ仮説段階でしかないがな。高位魔物の素材は、魔化した魔物や魔族と戦うことで、その魔素を吸ってしまう傾向にあるらしい。ただし、それだけなら恐らく問題はない……が」
「アイテムボックスか!」
おお。よくわかったな。
「聞いたことがある! アイテムボックスは私達の精神と密接なつながりを持っている! だから、魔素を溜めた武具をアイテムボックスに入れてしまうと」
「そう、昨日みたいに突然の魔族化が起きるってわけだ。ただ今まで魔化してきた奴ら全員がアイテムボックスを持っていたとは考えにくいから、これもまた一例の内の一つでしかないんだろうが」
「待て! ならばカラジェットが危うい!」
「そりゃ大丈夫だ。カラジェットの武器は確か聖剣コルネリウスだろう?」
「よく知っているな!」
「あれにはむしろ魔素を祓う力があったはず。ただ気を付けるべきはもう一人の奴……ゴロンド、だったか。タンク職の」
「合っている!」
「アイツの盾は危険かもしれない。話が終わったらすぐに聖水かけにいってやれ」
「承知した!」
昨日の時点で兆候が見えなかったから大丈夫だとは思うんだけどな。
まぁ杞憂であってくれたならそれでいいわけで。
「では私の方の用事を済ませよう! ──ヴェルグ殿。我が故郷、エイルニルス公国を救っていただき心からの感謝を。……リアライズ姫やラクニシェルから手紙が届いた時は何事かと思ったが、まさか本当に全てが蘇ったなど、今でも信じられない。……これは公開されている情報ではない。だからこそ、こうして直接感謝を伝えたかった。ありがとう」
そう、アニスはアンダーテイカー、エイルニルス公国出身なのだ。
その件で何か言いたげだな、ってのは昨日の時点から察してたからな。
「ああ、ちゃんと受け取っておく。礼の類は要らんから、早く仲間の所へ行ってやれ」
「重ねて感謝を。──多大なる感謝を!!」
声でけぇ。
言って空間を拳で殴ってバリンと割り、中へ入って……空間が閉じる。
いやね、戦闘スタイルと性格と能力があってないのよ。ちなみに彼女、あのガタイで斥候ね。だからこの前スイといる時に来た奴はマジでなんもわかってない奴ってこと。
「ふぅ」
「ヴェルグ、お疲れ様」
「ああ、ありがとう。……んじゃ俺はちょいとギルドに行ってくる。さっきの魔素を吸引した武具の話をギルドに伝えておく必要がありそうだからな」
「わかった。あ、あと、奴隷の話だけど、ヴェルグが必要だと思ったら全然買ってくれていいからね。この前はその、捨てられたくなくて一人でできるとか言ったけど、その」
「わかってるよ。じゃ、行ってくる」
「ん」
そういやそうだったなー。
奴隷。やっぱりケルだけで回すにゃ家が広すぎる。俺も掃除を手伝うようになったが、料理はずーっと任せっぱなしだし、ケルの休日、みたいな時間が一向に作れそうにないし。
ギルドへの伝達を終えたらもっかい奴隷市場行くかぁ。
そんなわけでやってきました奴隷市場。
ギルドで魔素と魔化の考察をスイに上げたら、すぐに研究院に上げてくる! と言っていなくなってしまったので、まぁその後の伝達は追々になるだろう。
「おや、旦那。また奴隷がご入り用ですかい? もしかしてあの奴隷、もう壊れちまったとか……」
「ああよかった、またお前の所で買いたいと思っていたからな。それと、壊れたわけではない。家を広くしたから足りなくなっただけだ」
「成程! んじゃまた家事の出来る奴を見繕って来やすが、それでいいですかい?」
「……もしできるのなら、奴隷の保管庫に通して貰えないか? どんなのがいるのか見てみたい」
「問題ありませんよ! 旦那なら信頼できますし。ささ、こちらです! 説明が必要でしたらジャンジャン聞いてください!」
いやホント良い奴隷商人だな。あとで名前聞いておくか。
「おー」
通された奴隷の保管部屋。
首輪の繋がれた全裸の美女美少女たちが、檻の中で縮こまっている。男はいないのか、別の檻なのかな?
別にハーレムを作りたいとかじゃないから男がいてもいいんだけど、まぁ社内恋愛に発展すると面倒くさいって一番。
「ん?」
ちょいと奥まった方。
そこにいた、右腕左足左目の無い美女。こんだけ包帯巻かれてても美女だとわかるくらいアダルトMOD君は凄いんだけど、流石に痛ましい。
そして痛ましい以前にまたエグい称号持ってらっしゃる。
「店主、コイツはどこで入荷したものだ?」
「へい! っとと、あぁこいつは森に捨てられてたやつですな。この欠損状態で捨てられてたってこともあって、かなりお安くできまっせ」
「森……」
「ああすいやせん、棘の森です。拾った当初はもうちょっと傷だらけだったんですけど、流石に商品にならねーんで治しちまいました」
偉くねコイツ。マジで。
俺の中の奴隷商人って奴隷を治癒するとか考えもしない感じなんだけど、うわ好感持てるわぁ。
「まずコイツを貰おう。他も見て良いか?」
「勿論です! んじゃあっしは台車を持ってきますね。一本足じゃあ歩けやしませんから」
「頼む」
えーと、あと。
もう称号鑑定常時オンで見た方が早い気がしてきたな。
……一人称号とか関係なしに俺のオティヌティヌにティンと来る奴隷がいた。単純なフェチぶっ刺さりの奴。これは買うとしてー。
「店主のいない今だから言うが、そこのお前。魔族だろう。従属の呪いくらいレジストできるくせに、何をしている?」
「あはー、やっぱりバレたか。でも安心して、私魔素の漏れない体質の魔族だから! それでー、レジストはできるんだけどー、そのー……こう、道具みたいに扱われるのが好きって言うか、想像するだけでぐちょぐちょになるっていうか! どう? 私買わない? 耐久性だけで言うなら他の子と比べ物にならないよ?」
あーねー。
そういう子ねー。
……魔素が漏れない体質、というのは、ちょいと研究してみたい欲はある。解剖とかは絶対にしないけど、試したいことはある、な。
買うか。従属の呪いじゃちょいと怖いんで眷属の呪いかけさせてもらうけど。
ん-、これくらいでいいかな。あんまり大所帯になるのもアレだし。
「店主、いるか?」
「へい旦那! 台車持って来やした。他はお決まりで?」
「ああ。そこの緑髪の奴と、そっちの黒髪の奴だ。ああ元気な方な」
「了解でっす! んじゃまー色々細かいとこ省いて金貨百枚でいいですよ!」
「そんなことないだろう。欠損のは安いだろうが、こっちの二人はそれぞれ百枚ずつくらいするだろう?」
「今後ともご贔屓に、って奴ですよ! 特に欠損奴隷は最悪破棄するしかないんで、買ってくれるだけありがたいですし」
奴隷の破棄。
たとえ奴隷であっても正当な理由──罪を犯したとか──なしに殺すのは法律で禁止されているため、欠損や心の壊れた奴隷というのは奴隷商でも持て余すらしい。場所は取るし飯を食わせんで餓死させるのも殺すに該当するしで、勝手に死ぬのを待つしかないんだとか。
それをわかっていてこの欠損女性を拾って来たあたり、この商人の信頼度がまた上がるというものだ。
「金貨百二十枚だ。これは俺からのお前への信頼だと思え。そして名前を聞かせろ。お前とは今後ともよろしくやっていきたい」
「そんな過分な……いいんですかい? いや、ご好意を無駄にする方が失礼ですね。それじゃあ取引は成立で、あっし……あたしはノズヴェルガーってモンです。名前の響きがこの辺じゃ聞かねえとは思いますが」
「北の孤島の出か。珍しいな、あの島の人間が外にいるのは」
「おお! 知ってるんですかい!?」
「ああ、訪れたこともある。そうかそうか。余計にお前を信頼できるようになった。これからもよろしく頼むぞ、店主」
「へい! こちらこそでっせ!」
北の孤島の話はまた今度で。
欠損女性、俺のフェチぶっ刺さり女性、そして魔族少女を台車に乗せて運ぶ。
奴隷市場を出た辺りで結界を構築、家にまで転移。いや俺も特色豊かな全裸少女たちを台車で引き回すのは気が引けるんだよ。
「転移魔法!? げ、もしかしておにーさん超高位魔法使い?」
「なんだ、げ、って。物として扱われたいんだろう? それともなんだ、飽きたら主人を殺して容姿を変えて、また奴隷に戻って他の主人を探すつもりだった──とかじゃないだろうな」
「わぁなんかやっべー雰囲気! ごめんねご主人、私あくまで自分優位じゃないと安心できない性格で」
「呪詛スキル:眷属」
「ぎにゃぁ!?」
以前の皇妃様の時よりも遥かにおどろおどろしく、それでいてやべーかほりのする魔法陣が展開され、逃げようとした魔族を絡めとる。
魔族はどーにかこーにかできないかともがいていたけれど、次第に大人しくなっていった。まぁ眷属の呪いレジストできるのってボスID持ってる奴だけだからな。
「うぅ……こんな強い人なら先に言ってよ……知ってたらアピールしなかったのにぃ」
「彼我の強さを見抜けないお前が悪い。名前は……シーファか。よしじゃあシーファ、こっちのグレイスと一緒に風呂に入ってこい。汚れを落とせ」
「りょうかーい。さ、行くよー」
グレイスというのは緑髪の、つまり俺のオティヌティヌビンビン女性な。
心に若干の翳りがあるらしいグレイスは無気力な状態でシーファに連れられて行った。ま、メンタルケアは追々で。
そんで、最後にこいつ。
「ツバナ・リュウゼツ。意識はあるか?」
「……なんじゃ。このような壊れ物を買うお主様よ」
ロリではないが、のじゃ口調だ! 昨今擦られ過ぎて逆に珍しいまであるのじゃ口調だ!
とか騒いでる場合じゃないな。
「あーっと、一応聞いておくけど、お家騒動って感じで良いのか?」
「ああ、主はリュウゼツの名を知っておったか。大陸も違うというのに、博識じゃな……」
「その反応は是と受け取るが」
「そうじゃ。それで合っておる。お家騒動に負けて棄てられた。ただそれだけじゃ。……命からがらこちらの大陸に渡ったというのに、手足も目も、従者も……何もかも失って、奴隷となってしもうた。蝶よ花よと育てられて来たからの、家事もロクにできん女じゃ。どの道使い勝手は無かったじゃろうが」
北の孤島もそうだけど、この世界結構大陸が分かれている。で、この女性は日本モチーフの大陸出身。日本モチーフなのに列島じゃなくて大陸なんだ、ってツッコミは開発者にしてくれ俺は知らん。
「主よ。慰み者にする気なのはわかっておる。じゃから、どうせならもう片方の手足も切り飛ばしてくれ。邪魔じゃろう? ク、なんならこっちの眼球も潰してくれて構わんぞ」
「その要求はちとエグいな。つーかなんで買った奴隷壊さにゃならん。治すに決まってんだろ」
覚悟決まってる奴多すぎなんだよバーカバーカ。
俺はもうヤだよ人体に手ぇかけるの。痛いもん俺の心が。
だから、カラジェットよろしくハイプリーストみたいなことをやって精神の安寧を図ることにする。
まず、ツバナの全身にある包帯を解いて……うーん、処置はちゃんとされてるけど、酷い傷だな。
「最大主教スキル:完全再生」
ぐじゅる、と。
手足が。そして眼球が、全身の傷痕が──塞がっていく。
まるで植物の成長を早回しで見ているような光景に、どうやら当事者であるツバナも声が出ない様子で。
……やべ。俺そういうフェチはなかったはずなんだけど、ちょっと勃ち気味だな。
欠損には勃たないんだけど、再生には勃つの、ちょっと特殊過ぎない?
「お……お、お?」
「終わったか。んじゃお前も風呂に入ってこい。シーファがグレイスを虐めていたら止めてやれ。鬼の怪力というのは魔族の上を行くだろう?」
「いやいやいや! まだ話したいことがあるんじゃが! ちょ、従属の呪いが、この、あとで全部聞かせてもらうからの! 覚えておけ!!」
「はいよー」
ツバナの称号。
鬼の国の女王──。元、とか敗れた、とかがついていないので、多分まだ正当継承者。つまりどエグい存在ってこと。
……ま、そんな具合で。
新たなる奴隷三人追加!