※この作品はR-18です。

アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ   作:姫鼠まりあ

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懸念と告別の憐憫(G度無し)

 魔素には聖気が一番効く。それはまぁ確かに事実なのだけど、攻撃力の高さで言えば魔剣ソロヴォリヨが一番だし、属性魔法ならそれぞれの最大威力を上げる装備があり、範囲拡大にまで手を伸ばすとまたそれぞれ変わる。

 これ一つでいーじゃん、にはならない仕様なのだ。

 で、ドゥームス対策もそう。魔素耐性は勿論必要だし聖騎士スキルも必要なんだけど、聖王の粛清剣で戦えばいいってわけじゃない。それだと足りない。

 なら逆に前述べたようにビッグバンを当て続ければいいじゃん、ってのもまた違う。いや合ってるんだけど、当て続けられないのだ。ドゥームスはしっかりと意思を持った生物であり、ちゃんと避けてくるから。

 

 準備を色々して、ソロヴォリヨを使ったビッグ・リップにプラスして色んな魔法をぶち当てる。

 ソロ討伐を目指すならタイミングシビアなこれをやり遂げるしかない。

 

「おはよっ、ヴェルグさん!」

「ああ。……っとすまん、朝食は外で済ませて来たから」

「なんか夜出かけてたもんね。わかった、お母さんに言っとくね」

 

 ……ちゃんとステータスがマスカルウィンだからな。やっぱ気付かれてたか。

 

「マスター。一日の天体観測により、飛来天体の到着予想時刻が出ました。予想される時間は二日と二十時間後。ただし、着弾地点についてはまだわかりません。私の製造時代においても"どこに着弾し、どこから湧いてきているのか"については日夜議論が交わされていましたが、はっきりとした結論が出ることなく人類は二度目の滅亡を迎えました」

「助かる。んで、今日はコレの解析を頼む」

「……これは?」

「サンライトソードと太陽の石。昨日魔物から貰った。明らかに俺達の世界にない鉱物だから、何かヒントが得られそうだなって」

「承知いたしました。すぐに解析に移ります。安全面を考慮し、街から離れた場所で行おうと思います」

「いや、上空に結界を張るからそこでやってくれ。あまり遠くに行かれると困る」

「わかりました」

 

 遮断結界を上空に張って、バルクスを転移させる。

 一応見知らぬ土地だからな。ミニマップに映る情報は散らかっていない方が良い。

 

「おはようございます。ご主人様用の朝食も用意いたしましたが、要りませんか?」

「あー、してくれたのか。でもすまん、アイテムボックスに入れておいてくれ。ちょいと今は時間が惜しい。夕食も同じ感じに言いくるめといてくれ」

「はい。では」

 

 成程、情報収集だけじゃなかったのか。

 俺が食えるカタチの朝食にするための食材交渉とかもしといてくれたのかね。いやーつくづく。

 

 それはでも最終日の楽しみにでもしておこう。

 

 虚数スキルを使い、世界をセピア色に染める。

 

「ファントム」

「あ……ほ、本当に来てくれたんだ」

「用があったからな。それで、昨日話してたことだけど」

「ん……ざっと見た感じ、この世界に"リシ"って人はいなかったよ。ボクの生まれた時代からまでしか遡れてないから、それ以前だとわからないけど……」

「いや、十分だ」

 

 いやホントありがたい。

 ファントムは世界の外側にいるから、世界の内情を外から調べられる。観測ができる。

 だから色々調べてもらってたんだ。

 

「ほ……他に、何か聞きたいこととか、ある?」

「んー……。ああそうだ、太陽については聞きたい」

「太陽? ……空にある太陽?」

「ああ。俺達の世界には無いものだからな」

「え……それって大丈夫なの? 君達の世界って、極寒だったりする……?」

「代わりにアルターって恒星がある。俺達の世界とこっちの世界はよく似てるんだけど、そこだけがかなり違っててさ。アレについて知ってることなんかないか、って」

 

 昨日はなんでいないのだろうか、とか思った八咫烏だけど、そういやアイツ太陽の化身みたいなとこあったからな、伝承というか信仰として。だからいなかったのだろうと思われる。

 

「知ってること……。アレはね、燃えている大きな岩石なんだ。あれそのものの温度はそんなに高くないけど、あれが放つ熱はかなり高くて、だからこの星にも熱が届く」

「岩石なのか」

「うん。実際行って確かめたから、間違いはないかな……」

 

 ……やっぱりちゃんと聞いてよかったな。

 地球の太陽とは全く違うらしい。ガス球体じゃなかったら引力とかヤバそうだけど。

 

「体積で言うと1.77垓km3くらいで、表面温度は5,500℃くらいで……」

「ああいや、すまんそういうことを聞きたいわけじゃないんだ。どういう逸話があるのかとか、どういう信仰があるのかとか」

「あ、あっ、ご、ごめんね。変な勘違いしちゃって……。えっと、逸話。逸話か。……こ、これはボクも生まれていなかった頃の話だから、完全な伝承になるけど、良い?」

「聞かせてくれ」

「──曰く」

 

 曰く。

 はじめ、この世界には何もなかった。極寒にして暗黒。生物はおろか地さえもない無。

 ここに白が一つ描かれる。その白は世界に熱を与え、影を与えた。影は大地を作り、熱は生物を作り、そうして世界は今の形になった。

 

「……思ったよりありきたりな創世神話というか」

「まぁ、口伝の昔話だからね……。あんまり長い言葉は伝わらないと思うよ」

「そりゃそうか」

 

 気になるのは影が大地を作り、のとこかね。

 先が影なのか。

 

「信仰で言うと……いつか太陽は二つに分かれる、って言われてるよ」

「そりゃまた、どうして」

「太陽の石っていう鉱石が時折降ってくるんだけど、それはもうすぐ太陽が分裂しようとしているからだとか、二つに割れようとしているからだとか……。こっちは信仰というか迷信というか、古くから言い伝えられていること、って感じだけど」

「太陽の石ってのはホントに太陽から降って来てんのか」

「ああ、それは間違いないよ。ボクも何度か目撃しているし……過去の記録を遡れば、決定的なシーンの一つや二つは見つかると思う」

 

 ……。

 気になってはいる。

 

 小イベントと大イベントの関連性からして、一つの場所(この惑星)を取り合う二陣営(人と魔素)があって、片方(魔素)から片方(人の住む惑星)への侵入(飛来)があり、侵入者(魔素)が撃退される……というのが今回の全体イベントの仕組みだと考えていた。

 ユグドラシルが勝手に予知したように、俺が衛兵の役割をして、このパラレルワールドの世界から魔素を撃退するのだと。

 

 にしては……この太陽という要素が邪魔すぎる。

 本筋に関わらないもののはずなのに、主張が激しい。

 

 んー、考えられるのは入れ子構造のイベントの可能性か。

 こっちの世界と違う天体がパラレルワールドに存在すること、そのものが小イベント……?

 

「ヴェルグ。君のいた世界は、こことは別の世界で、且つ未来……だからさ。そっちの太陽の名前がアルターだって聞いた時、思ったことがあるんだ」

「分裂予定のこっちの太陽。分かたれた(アルター)太陽が俺達の太陽、って話だろ?」

「うん。とすると、ボク達の世界とそっちの世界は、案外密接な関係にあるのかも、って」

 

 ……確かに?

 マスカルウィンがこっちからあっちに転移してきていることや、今回ヘネツクの塔の下の転移陣から簡単にこっちの世界に来られたことを考えるに、初期草案とか没データのパラレルワールドってより……ちゃんとゲームに格納された要素だったってことか?

 ただ俺も、ゲームやってた他の奴らも見つけられてなかったってだけの。

 

 それは。

 

 ──それは、ちょっとわくわくするな。

 

「また来るよ、ファントム。ちょいと現地で調べたり準備したいことが増え過ぎた」

「うん、またね、ヴェルグ。……何か疑問に思ったら、いつでも聞きに来ていいから」

「ああ」

 

 セピアから現実に戻る。

 一時も経っていない現実世界。

 

 ただ、周囲の時が止まってる。

 

 そして現れる十六手四面。

 

「お前はフツーに来るのね」

 

 時間停止は使ってないけど、虚数スキルも体内時間ズラすからな。溜まってたのが来たんだろう。

 フツーに処理していくべきところに行く。最早障害にもならん。

 

 ……でも頭には入れておく。理不尽ゲーなんでな。無駄な事でも覚えておかないと怖い。

 

 

 

 

 魔法使いスキル:遅延を指定時間に設定し、各地にビッグバン含む魔法を配置していく。

 もうエリクシールがぶ飲みだ。MPが足りん足りん。

 

 勿論人間の大陸の方へも行く。というかあっちが本命になるだろうことはわかっているから、念入りに準備するのはむしろこっちでばかりだ。

 現地人……というとなんか未開地域の人々に聞こえるけど、特に現代と変わらない人々とたまに会ったりなんだりしながら、着々と準備を進めていく。

 ほとんどの国名は知らないものばかり。そりゃそうだ、何万年前の前文明。フレーバーテキストにも記載されていない時代をどう知れと。

 

 けど、地名……洞窟やら森やらの位置は変わっていないし、なんなら名前もそのままだったりするのにはやはり驚かされる。オニキス・リオンたちとの旅の時も言ったけれど、洞窟はまだしも森が残ってるのはマジで凄いと思う。

 あとありがたい。場所が測りやすい。

 たとえば今いる棘の森とかね。こっから方角と距離合わせれば帝国へ行ける。帝国なんか今無いけど。マスカルウィンが拓く国だからなぁ。当人に拓いたつもりはないとはいえ。

 

 時間をしっかり計算しながら行う準備作業は案外頭を使うし案外疲れる。頭良くないゴリ押しマンにやらせることじゃねーよなーとか思いながら、けれど間違いのないよう作業的にならないよう注意を払いながら設置を続けること一日。

 そろそろ今日分は終わりかね、とか思ってたら──誰か近づいてきた。

 

「……人間……では、ありませんね。精霊力が」

「あん? メアリー?」

「……確かに私はメアリー・スーと名乗っていますが、そうも親し気に話しかけられる謂れはありません」

 

 普段通りのメイド服姿。

 だけど……なにか、ずるずると引き摺る音がする。

 

 これは。

 

「成程、お前分裂前か」

「……警戒態勢」

 

 ど、と。

 それはもうミニマップを埋め尽くす勢いで赤点が出現する。

 

 おいおい、いっぱいいるじゃねーか。あるいは人類滅亡と一緒に希少生物になったのか?

 

「やめとけやめとけ。お前らじゃ俺には勝てんし、俺もお前らと戦うつもりはない。俺はもう帰るからさ、縄張り荒らしたんなら悪かったよ。謝る」

「謝るのであれば、そこの結界の除去を求めます。その内側に隠した破滅の気配も」

「そりゃ無理だ。もうすぐこれよりもっとやべー破滅が来るから、それ対策に置いてんだわさ」

「オルトコルリウムの滅亡予言ですか。それはまた、強大な力を持っていそうな割に俗なんですね」

「勝手に言っててくれ」

 

 オルトコルリウムって誰。ノストラダムス的な?

 んでもってマジで予言してたらソイツ大賢者だから早く保護した方が良いぞ。

 

「撤去する気は無さそうですね。では」

「ソレで攻撃するつもりなら、斬るけど……良いんだな、お前ら」

 

 寸止め。

 奇跡の命剣の腹で不可視のソレを止める。見えなくてももうわかるよ。

 

「ッ……!」

「痛いんだろ、コレ斬られると。ならやめとけ。この結界も中のものもお前らを害するものじゃないから、気にするな」

「間合いを完璧に理解している様子。……知り合いでもいましたか、私達の」

「ああ。一人な」

「一人。……おかしなことを言うものですね。まるで人間のような呼び方で」

「ん、結局お前らって人間じゃないのか」

 

 言えば──きょとん、という顔をされて、そしてクスクスと笑われる。

 周囲、見えはしないけれど、それはもうたくさんから笑われる。

 

「この姿のどこを見て人間だと……。私達を人間だなんて言ったのは貴方が初めてですよ。ああ、面白い」

「人間でも魔物でもまぁどっちでもいいけどさ。でもメイド服着てるのは変わらないんだな。そっちの方が面白いわ」

「……ああ、成程。貴方は魂が見える方ですか。……常に魂を見ていると、不便では?」

「切り替えできねーんだわコレが」

「仕方ありませんね。このまま怖がられないのは癪ですし……脱いであげましょう」

 

 言って、メアリー・スーは──脱衣する。

 メイド服を脱ぎ、全裸になった。

 

 ……言わんとすることはわかる。魂の装飾とやらを解いたのだろう。だけど……スマン、今度は逆にアダルトMODが作用して、全裸美女にしか見えん。

 あれ? でも前メアリーが同じことやった時は普通に人の皮を着た姿、みたいになったような。

 

「それでも怖がらない、と」

「まぁ怪異的には怖がってくれた方が嬉しいってのはわかるけど、日常的にお前らの内の一人と接してるからなぁ。怖さはないよ」

「いいでしょう。ここは退きます。ただ……その結界はいつまでありますか?」

「二日後くらいまで。それが終われば俺共々消える」

「そうですか。……オルトコルリウムの滅亡予言は、確定した未来なのですね」

「滅亡させに来るのは間違いないが、滅亡するかどうかについては確定してない。そのための準備をしている」

「単身で世界を救うとでも?」

「些事だよ」

 

 またクスクスという笑いが起きる。

 けれど、今俺と話しているリーダー格っぽいのが手を挙げ、それを制止した。

 

「助力は必要ですか?」

「おいおい、そんな簡単に信じるなよ」

「信じられるだけの根拠を貴方の中に見ました。問題ないでしょう。たとえ空振りに終わったとしても、私達のプライドに傷がつくだけ。であれば──"異邦人にただ救われるところを見ているしかなかった"などという汚名を背負うより、そちらの方が万倍マシです」

 

 ……へぇ。

 覚悟がキマってんな。好きだよ、俺は。お前みたいなのは好きだ。

 

「怪異スキルに光属性を底上げできるものはあるか?」

「ありません。闇属性の底上げならあります」

「どっかに精霊いないかね。光精霊がいれば反転させられるはずだけど」

「精霊は話が面倒なので嫌いです」

「俺も嫌い。んー、じゃあ、魔法の威力を底上げする類のものは?」

「……怪異スキルにはあまり、バフに関するスキルは存在しないのです。どちらかというとデバフ特化で」

「あー。そいやそうだったな。蛇睨みだの迦楼羅炎だの」

 

 ただ……うーん。

 俺はドゥームスを迎え撃つのは大気圏外でやるつもりだから、そこまで付いて来いってのは無理だろうし、何より危険……っつーか邪魔なんだよな。

 こいつら別に魔素に耐性あるわけでもないから、余波だのなんだので魔化されたら堪ったもんじゃないし。

 

「どうやら私達は思ったより役立たずである様子」

「だな。いいよ、どっかに隠れてろ」

「いえ──これでも私達は上位種族。バフを得意とする種族に声をかけ、手伝わせることは可能です」

「強制的に、ってか。要らん要らん。塵が積もっても吹けば飛ぶような山にしかならん」

 

 照射にしてるから大丈夫だとは思うけど、万一ビッグバンに巻き込まれでもしたら責任取れん。消し飛ばすから蘇生もできないし。

 

「──どうやら私達を非常に舐めておられる様子。二日後、でしたか。ええ、その時は世界中の恥晒しが浮き彫りになるでしょう。このような結界を世界中に設置するつもりなのだと判断しました。異邦人、貴方が舐め腐ったこの世界各地の種族の底力に驚きやがれください」

「あぶねーから言ってんだよ。滅亡の未来を捻じ曲げてやろうってやってんのに、その手段で死なれたら本末転倒も良い所だろ」

「それを舐め腐っているといっているのです。──ええ、どの道もう関係がありません。貴方が何を言おうと、私達に見て見ぬふりをするという選択肢はありませんので」

 

 急速に周囲の赤点が減っていく。

 もう動き出したってか。アイツに似て行動の早いことで。

 

「空中は危険だから、それ以外の場所にいろ。地上か地中。いいな?」

「いいでしょう。それでは二日後」

 

 メアリー・スーも消える。

 強情だな。そういうとこもそっくり。

 

 分裂で増えるんだっけ。ならそっくりも納得だけどさ。

 

 ──転移で帰る。

 

 

 

 ホーリーウッドの森に帰ってきてすぐ、マスカルウィンに会った。それはもう楽しそうなマスカルウィンに。

 脳バグるわー。

 

「あ、ヴェルグさん! もー、どこ行ってたの? どっか行くなら言ってよ! 今の私はヴェルグさんの奴隷なんだからさー」

「奴隷になんで行き先言わなきゃいけないんだよ」

「えー? だって……私はえっちなことに使われる奴隷、なんでしょ? なら常に一緒にいた方がいいじゃん?」

「記憶無くなっても色狂いは変わらんなぁホント」

「別に記憶失くしてないってばー!」

 

 今のマスカルウィンが起きた時の記憶は、最大威力の快楽から始まっている。

 曰く、目がちかちかする程の、甘美と限界の混ざりあうような、今まで生きて来て初めてってくらいの突き抜ける快楽だったんだぁ──が、起き抜けの彼女を襲ったらしい。だから退行してからも退行する前と同じくらいにはオティヌティヌや過激なプレイを求めてくる。

 困ることが一つあるとすれば、今の発言をそれなりの声量で言うところ。周囲からの視線が痛い痛い。

 

 ホーリーウッドの森には奴隷という文化がないため、まずそこで引っかかり、さらには性奴隷であるという発言を臆さずに言うのでもーね。

 まぁマスカルウィン自身が楽しそうにそれを語るからか、こっちを咎めんとしてくる奴は今んとこいないんだけど。

 

「今日、どう?」

「やらんやらん。ヤるとしても帰ってからだ」

「じゃあ早く帰ろ!」

「帰るのは二日後。だからそれまでお預けだ」

「えー!」

 

 大きな声を出すなっつーの。

 

「……じゃあさ、じゃあさ。今日の夜、ご飯食べたあと一緒に来て欲しい場所があるんだけど、だめ?」

「それはセックスの代替として言ってるのか? 俺あんまり野外でとかは好かないんだけど」

「来てからのお楽しみ! ね、ダメ?」

 

 うーん。

 まぁ……いいけども。

 

「わかった」

「やたっ!」

 

 脳バグるなー。

 特にこの……好意があるように見えるムーブが特に。どっちかというと快楽目当ての……セフレみたいな関係だろ、俺とお前。性奴隷だけどさ。

 どういう理解してんだろうな。

 

「それじゃ夜、ユグドラシルの根元に来てね。あ、転移紋の方には入らないで」

「はいはい」

 

 そう言って、くるくる回ったりスキップしたりしながら家の方へ帰っていくマスカルウィン。鼻歌まで歌ってやがる。今割と遅い時間なんだけどな。

 

「……アンタ、ヴェルグさん、って言ったか」

「ん?」

「よく……あの暴力女と付き合う気になったなぁ。いや俺達感動しててさ。……アイツは昔っから喧嘩っ早くて、何かあればすぐに拳が出る奴で……」

「ああ、懐かしい。それで俺奥歯折られたことあるんだよ。森を出た時は外で指名手配か何かになって逃げ帰ってくるんじゃないかとか思ってたけど」

「それがまさかこんなイケメン連れてくるとは……まぁ見てくれだけは良いからなぁ」

「性格以外はまぁ、認めざるを得な──」

 

 飛来する結構な大きさの岩石。話しかけて来た酔っ払いの若者二人に当たる直前に減速させて、止めずにリリース。

 ぶべらっはぁ!? とか言いながらぶっ飛ぶ二人。

 

 だから威力威力。

 ……そういえば一日目を離してたけど、大丈夫だったろうな。

 

「おー……イテテ。ったく、地獄耳……のぉっ!?」

「ゆ、ユクス!? お前、股間になんかめり込んでるぞ!?」

「へへ……どうだ……俺のも、立派に、なっただろ……」

「ああ、長さはな! けど細い!」

 

 なんかの枝が股間にぶっ刺さってる。速いっつーか威力出なさそうだったから見逃したけど、刺さるくらい行くとは思ってなかった。

 大丈夫か? なんかギャグ調だけど、かなりの大怪我……と思いきや。

 

 ユクスと呼ばれた若者は、その枝を抜き……股間に回復魔法特有の光が集まって、一瞬で再生される。

 なんだ? ……ダメージ無効か、再生系のスキル?

 

「ったく、幾つになっても馬鹿だねえあの子たちは。ああマスカルウィンちゃんの彼氏さん。そんな心配そうな目でみなくても大丈夫だよ。あたしら月の民は月が出ている内は死なないのさ。月の光があたしらを癒してくれるからね。満月の間は昼でも頑丈だよ」

 

 ああ……月のフィールド効果か。

 成程、それを最大限に受け取れる種族なのか。俺にとってはMP回復が早くなる程度の恩恵しかないけど、こいつらにとっては蘇生や再生にまで至ると。

 エルフってそうなんだ……。

 

「でも、マスカルウィンちゃんをお嫁さんに貰ったってのは、ホント驚きだよあたしたちは。……ここだけの話、どこに惚れたのか教えちゃくれないかい?」

「何話してるのかなー? アルカナムおばさーん?」

「おっと……これ以上は身の危険を感じるねぇ。それじゃ、今度あの子がいない時に聞かせとくれよ!」

 

 そそくさと逃げ帰る女性。

 うーん、別に恋人ではないのだけど。

 

 ただ……どうもこれ、アイツ否定してないっぽいよな。あるいは奴隷という言葉が理解されていないかだけど。

 

 どういうつもりなのやら。

 

 

 

 

 深夜、草木も寝静まった頃。

 指定の場所……ユグドラシルの根元に来ていた。さっきからユグドラシルの視線を感じるんだけど、ガン無視してる。あっちもなんかカッコつけて別れた手前、出てきづらいんだろうな、とは思ってる。

 

「ヴェールグさんっ」

「来たか」

「うん。じゃ、こっち来て」

 

 手を引かれる。

 されるがままにユグドラシルを回り込まされて、着いた場所は……さっきと特に変わらない根本。

 

「ユグドラシル様、ユグドラシル様。どうか二人のための扉を開けてください。朝と夜とが重なる刻に、二人がいるべき場所を教えてください」

「いいだろう。入れ、人間とハイエルフ」

「フツーに出てくんのかよ……あ、おい引っ張るな」

「人間、お前にしか聞こえんからな。ふふ、ある意味で対価だ。精々学びを得て来い」

 

 根が持ち上がり──洞窟か、縦穴か。とにかく人が入れるくらいの大きさの"路"が開く。

 そこに入っていくマスカルウィン。連れられて俺も。

 

 入って。

 

 

 ──出た。

 

「……これは」

「凄いでしょ? ホーリーウッドの森自体も綺麗だけど、やっぱりここが一番綺麗だと思うから──ヴェルグさんに見て欲しくて」

 

 出た。

 これは……星空、だ。満天の星空。だだっ広い草原。背後にある樹木がユグドラシルなのは変わっていないけれど、あまりにも清々しい空気はホーリーウッドの森のものとは違う。

 

 これはどちらかというと──ダンジョンの最奥の空間に近い。

 ファントムが用意するような、記憶の空間。

 

「ここはね、ヴェルグさん。見たいものが見えるの。心の中で強く念じてみて? ヴェルグさんが今最も欲しているものを」

 

 星が瞬く。

 それは流れ星となり──激しく軌道を変えて、俺の目の前にまで来た。

 発動しかけた防御スキルは、しかし意味の無いものだと知る。

 

「──異邦人。それはまだ生まれていない"概念"。不思議な人。異邦から来る人。隣の少女のように、"冒険"を望むモノだと思った」

「……お前は?」

「"答えがないもの"。けれどそれはこの世界での話。貴方が欲するものは、貴方の時代に存在するはず」

「答えのないものであるくせに、はっきりと答えをくれるんだな」

「"称号"を与える。いつかあなたが、そこに辿り着くための」

 

 視界にあるメニューの内の、自身のステータスを表示する最小化ウィンドウにNewの文字が出る。

 

「あるんだな、あっちにも」

「変わらず」

「良い情報だ」

 

 雲散霧消する。

 声だけだった。光さえもなかった。見たいものが見えるっていうから願ったソレがアダルトMODに汚染されることはなかった。

 

「ヴェルグさん、今の何? 独り言?」

「ん? いや、ここで見たいものを願って、来た奴と話してた」

「……喋るのは無理じゃない? 光景が見えるだけだし」

「お前に無理だってだけだよ。俺にはできる」

「ふーん。……よーし、じゃあ本題!」

 

 本題! と。

 マスカルウィンは──服を脱ぎ始める。

 

「呪詛スキル:眷属:行動制限」

「む! ぬ、ぐぐぐぐっ! うーごーけー……る!」

「そういえばそうだった。んじゃ最大主教スキル:封印棺」

 

 封印されてくれるマスカルウィン。

 ワォスタクラインと違って流石にこっから出てくることはない……っぽいな、良し。

 

「見たいもの、ね」

 

 群星。

 それらは俺の前に来て──世界各地にある「幸福」を映し出す。

 

「変な奴。自分が中にいる必要はないのか」

「見たいと思えば、お前の運命の相手も見えるのに」

「生まれていればだが」

「他者の幸福を本心から見たがるなんて、何が目的なの?」

「怖いな。世界はどうなってしまうんだろう」

「怖がることはないよ。彼は世界を救ってくれるのだから」

「誰が消えるのかな」

「生まれてもいないものが生まれなくなることは、消えることだとは言わないよ」

「世界は依然として美しい?」

「美しいよ。彼が美しくし続けてくれる。だって彼は」

 

 口々に喋り出す"誰かの幸福"たち。

 その中でひと際耳に残る言葉があった。

 

「この世界が、好きなんだから」

「好かれていたいなら、美しく在り続けろよ。せめてこっちの世界くらいはさ」

 

 "誰かの幸福"たちが離れていく。

 んじゃ俺も帰りますかね。……ユグドラシル、頼むわ。コイツ封印棺から出したくないからさ。

 

 

 その後、ちゃんと出ることができた。

 マスカルウィンは朝まで封印棺に入れておくことにした。出したらセックスセックスうるさそうだったから。

 

 さーて、また準備をしますかね。

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