※この作品はR-18です。

アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ   作:姫鼠まりあ

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双眸と積年の真意(G度薄め)

 残り数時間を残して、全ての準備を終えた。

 これ以上できることはない。あとはバルクスの弾道予測を貰って、そこに全てをぶつけに行くだけ。

 

 だから、ちょいと話す。

 マスカルウィンと。

 

「なぁに、ヴェルグさん。改まって話って。やっぱりそろそろ?」

「シない。……まぁなんだ。何が起きても変に気負うなよって話。俺はさー、ドライな自覚があるし、他人と身内のラインが限りなく狭い自負もあるからさ、こういうことは滅多に言わないんだけど……」

 

 彼女の目は未だ輝いている。「世界には希望しか満ちていない」という瞳。

 よく似ている。あの太陽のような少女と。

 

「そうであり続けることと、そうでなくなることは、必ずしも等価ではない。どちらかが秀でているのかもしれないし、どちらかが劣っているのかもしれない。ただ、あるいは」

「なに? 何の話?」

「岐路に立った時。俺は一度隣に置いたお前達の、あらゆる選択を祝福する」

 

 ぽん、と。

 その頭に手を置いて。

 

 ──転移した。

 

 

 

 

 

「来ましたか、ご主人様」

「ああ。バルクス、どうだ?」

「ほぼ完璧な予測ができています。ただし、魔素源王が自らの意思で軌道を変えた場合はその限りではありません」

「……ん? これマジ?」

「はい。屈折などを考慮しても、飛来する魔素源王の直径は少なくとも2000km。軌道的に直撃ではないことは救いと言えますが、史実としてこれが着弾しているわけですから魔素源王は自らの意思で軌道を変えることができるのでしょう」

「は……けどまぁアイツ魔素の塊でしかないから、着弾の衝撃とかは考えなくて良さそうだけど……思ったよかでっけーな」

 

 ヒマラヤ山脈全体の広さくらいか。やば。

 

「それで、バルクス。太陽の石とサンライトソードに関しては」

「完全に未知の物質です。少なくとも私達の世界にあるものではないことは事実でしょう。ただ、聖石のような残骸でも、鉱石のような何かが固まったものでもなく、マスターが聞いたという伝承の通り、巨大な何かから欠け落ちたもの……サンライトソードと太陽の石は完全に同一の物質である、というところまではわかりました。逆に言えば、それしかわかりませんでした」

 

 バルクスでもダメか。

 

「ん、まぁ大丈夫だろ。持って帰ってじっくり研究するさ。……で。お前らどうする? ここにいても何もできないと思うけど」

「ずっと隣にいます。お忘れかとは思いますが、今の私の肉体は聖水袋のようなもの。魔素の余波にもある程度抵抗可能です」

「終末防衛機構として、魔素を未然に防ぎ得るのならばそれは喜ばしいことだと思えます」

 

 そうかい。そりゃなんともまぁ、献身的なことで。

 ……というより、気付いてる、って顔だな。

 

「それじゃちょいと行ってくるわ。()()()

「はい。また」

「もしもの場合は援護射撃を行います」

 

 転移する。

 一気に躍り出るは地上200km。大気圏外。酸素なんてないし、普通に真空なんだけど──今回は基礎防御力に加えてバフ全盛りだからな。

 これくらいじゃ死なん。HPの減少値より回復量の方が多いんだ、減ってないのと同じってな。

 

 各地。

 十七万の砲門。その照射先を細かく変えていく。

 

 ふと。

 貰っておいたもの……俺でも食べられる見た目に加工された食事をインベから取り出して、食べる。

 宇宙で宇宙食以外を食べるのは中々ない経験だ。面白い。

 

「……楽しかったよ、ヴェルグ」

「ああ。俺もここまで話が弾むとは思ってなかった。短い間だったが、世話になったな」

「別れが……惜しいなぁ。ボクは……そっちのボクが羨ましいよ。多分だけど、こっちの世界には……何万年を待っても、君は生まれてこないのだろうから」

「なんだ、じゃあ今俺を妨害するか? 魔素が根付けば俺が出てくる可能性は高くなるぞ」

「それも……魅力的かもしれない。けど……今回ばかりは、しないかな。世界が嫌いで世界を出たボクだけど……今君がいる世界は。ううん、君が視ている世界は、美しいものだと……ボクも理解できるから」

 

 魔剣ソロヴォリヨを抜く。

 異彩な雰囲気を纏うこの剣は、虚数空間にあっても独特の存在感を有している。

 

「ファントム。一つ頼みがある」

「なに、かな」

「もしアイツが世界に襲われそうになったら、それとなくでいいから手助けしてやってくれねーかな。アイツなら自力で乗り越えそうだけど、色々……まぁ、俺の反省も兼ねて」

「一個人に入れ込むことは、本当はしないんだけど……うん。いいよ。それが君の最後の頼みなら、聞き届けよう」

「ああ。んじゃーな、ファントム。あっちのお前曰く、仲間を作れば孤独から解放されるそうだよ」

「君を仲間にできてないことが、そっちのボクの最大の失敗だよ」

 

 手を振って。

 世界からセピアが抜ける。

 

 ガチバトルとかはしない。

 久方ぶりの三周目ステータスゴリ押しマンが、最大限に準備をして、圧倒的手数初見殺しマンが、あらゆる手を尽くして──世界のラスボスをラスボスになる前に叩き落す。

 ただそれだけ。

 

 死が世界を別つ刻(ビッグ・バン)

 総てに別れを告げる刻(ビッグ・リップ)

 

 そう来たら、今回のに付ける名前は決まっている。称号が来るかどうかはわからないけれど、俺の出せる最大の、最高の火力となる。

 天体一つに人一人が挑むのだ。それくらいは名乗っていいだろう。

 

 黒が。

 

 来る。

 

 

 

別けた全てを結ぶ刻(ビッグ・クランチ)

 

 

 

 

 

 世界は見上げていた。

 悍ましい黒。本能が忌避する黒。アレに触れてはならない。アレを認識してはならない。

 本質を変えるものだ。生物を生物でなくさせるものだ。

 空を、天を、宙を覆い尽くしていくあの黒は、太陽を食み、世界を蝕み尽くすものだ。

 

「──成程。確かにアレは滅亡でしょう。決断を遅らせていれば──あるいは私達も絶滅していたものかと」

「ああ、だがなんだぁ、ありゃ。一人で滅亡に立ち向かうつったっていう人間。人間? 嘘吐けよ、ありゃ」

「魔物皆様方は雑談していないでこの結界内部の魔法の増幅を死ぬ気で行ってください」

「へいへい。おーいてめぇら、気合入れてやんねーと貌無しの嬢ちゃんたちが食いに来るぞー」

 

 世界は見上げている。

 ただ一つ、あまりにも美しく輝く白を。

 黒いインクを垂らしたかのような天に、ただ一点、一切染まることなく在り続ける絶対を。

 

 その周囲を吹き荒れる、嵐のような精霊力。

 覆い隠す黒をも覆い尽くす白。白銀。煌めきをもった純白。

 

 世界は美しい。世界は美しい。世界は美しい。

 壊れ、蝕まれゆく世界を否定し続ける純美。

 眩い魔力が濃淡を見せる密度で揺らめき合い、揺蕩い、輝きという言葉を手にして王を謳う。

 そして、世界各地、十七万の砲門から光を始めとした各種属性の魔法が宙にむかって放たれた。虹と呼ぶにはあまりにも破壊的で暴力的で、誰もが息を吞む力の奔流。

 

 降り注がんとする黒を灼き焦がし、地から立ち上がる流星の如く煌爛を支えていく。

 

 各地だ。

 世界各地の砲門に、どこに隠れていたのか、人間が見れば泡を吹いて卒倒するような量の魔物が集っていた。食い食われる関係は捨て去って、持ち得る限りの全力を注ぐ。

 天上へと駆け上る濁流は暗雲に穴を穿ち、暗黒に罅を入れる。

 滅亡。絶滅。あれが一滴でも降り注げば、種そのものが消えてなくなるものたちも多い。弱きは生きられない世界になる。寄り添いが意味を為さない世界になる。

 

 世界は美しい。世界は美しい。世界は美しい。

 否定する。あれほどの滅びの中で、白銀だけがすべてを否定する。否であると。否であると。否であると。

 

 この世界までもが悲劇を嚥下する必要はないと。

 

 

「おお……おお、おお」

 

 ある国。ある塔。

 そこに幽閉された犯罪者。

 

 誇大妄想家オルトコルリウム。予言を謳った詐欺やテロの罪でその身に幽閉の烙印を押された彼は、鉄格子から見る世界に歓喜の声を漏らす。

 それは彼が視たものと全く同じだった。それは彼が視たものと全く違っていた。

 

 世界の滅亡に打ちひしがれることしかできなかった己を、誰にも信じられなかった己を──ああ、良かった、と。

 そうならなくて良かったと。

 

 

 聖樹は眺める。

 自らの庇護下にある民がその日、一人を除いて死にゆく未来が視えていた。

 それが変わったのは先日の事。そして確定したのもまた先日のこと。

 

 些事だといった。できないことは言わないと言っていた。

 

「……人間。一つの世界を救うことに対する対価が、たったあれだけだと……ふふ、見くびるなよ。お前が思っているようにはならんさ、絶対に」

 

 天体と拮抗する一人の人間。

 それに背を向け、何かの準備を始める聖樹。

 

 

 世界は再び天を見上げる。

 

 

 

 

 足りない。

 今ここで押し留めることはできる。俺がずっとここにいれば、ドゥームスは世界に降り立てない。

 

 だけど、足りない。

 ソロヴォリヨによるビッグ・リップ、十七万の砲門から放たれた各種属性の最強魔法とビッグ・バン。

 バフ全盛りで放った合成技、ビッグ・クランチ。

 

 HPだけで言えばあるいはヨルムンガンドさえも一撃で斬り伏せることができそうな威力、持続ダメージ、各種効果──は。

 

 魔素源王そのものを斬り伏せるための背押しにならない。

 

 舐めていた。まぁ、それに尽きる。

 元のドゥームスの十倍くらいの感覚で対策練ってたんだけど、思ったより強かった。それだけだ。

 

「ふむ。まぁ初見殺しゲー、理不尽ゲー。そりゃわかってたことだし、対策したつもりがしきれてない、なんてザラにあることなんだけどさぁ」

 

 踏み込む。

 拮抗していたのだ。それによりソロヴォリヨを持つ腕がボキンと行くけれど、リジェネ効果がそれを修復する。聖域は効果を発揮しているけれど、魔域に似た領域がこっちの聖域を完全に押し返している。

 また一歩、前に出る。

 

 申し訳なさはある。

 俺の計算ミスで、テュアナの武を穢した。自己犠牲系のスキルでのHP減少以外、つけられた傷はアイツだけ、ってことにしたかったんだけど……こんな、意識のない災厄みたいなものにあっけなく削られている。

 

 一歩。

 

 一歩。

 

 腕が折れても、足が折れても、腹に穴が開いても。

 関係ない。HPは消し飛ばされた直後には全快している。

 

 だから、死なない。

 

「まー、なんだ。ドゥームス。……お前がここに来た経緯は、知ってるよ。勝手に。ただすまんな、同情はしないし、配慮もしない。同族嫌悪かね、これは。傷の舐め合いでもいいが」

 

 宇宙なんで言葉は音になっていないけれど、こうも一人だと独り言が多くなるのも致し方のないことだと思って欲しい。

 いやはや。

 

 この程度でゴリ押せると思われるのは、ゴリ押しマンの先達として許せないわな。

 

 踏み込む。

 そして、辿り着いた。

 

 巨星。黒の塊。魔素のすべて。

 その中心で、磔にされていた──全裸の美女。

 いつかシーファへの干渉に対して脅しを入れた時と全く変わらぬ姿の女性。

 

 女性の手足には黒が絡みついている。その黒は肌や肉を穿ち、入り込み、四肢の付け根までを黒に染めている。女性の顔は苦痛に歪み、何かを求めるように口を開いたり舌を突き出したりして、それでも、それでも、それでも、それでもと。

 届かない何かに縋り続ける。

 

 対する俺も、凄まじいまでの圧力を受けて腕が飛んだり脚が飛んだり皮が裂けたりなんだりしているけれど、自然回復量マシマシにしてあるから死ぬまで行かない。死んだら死んだで蘇生するようにしてあるし。なんなら死に切った方が魔力回復するからいいまである。

 魔力回復のためだけに死ぬことはないけどね。流石にエリクシール飲むわ。

 

「た──」

「わかってる」

「す、け──」

「──ああ。その答えを探しに行くよ」

「は」

 

 斬る。

 スキルを使わない、ただ横一文字に剣を振っただけの一撃。

 

 バルクスを掴んだ時も。メアリー・スーやメアリーが言っていたのも。

 ちゃんと覚えているよ、俺は。

 

 ずるり、と。

 女性の手足に絡みついていた黒が解けていく。いいや、それだけじゃあない。後ろの巨星もまた離散していく。

 

 ()()()()()()()()()()

 

「俺の最たる部分はさ。あらゆるものを超える攻撃力とか、初見殺しの手数とかじゃあないんだよね」

 

 こちらに手を伸ばしてくる女性。手を払いのけることはしない。

 俺の頬にその手をあてて、弱々しく微笑む女性に──笑いかけることはない。

 

 ばしゅ、と。

 軽い音がして、その手が弾け飛んだ。

 

「相手が何をしてくるかわかってる。そりゃ最強なんだよね、相手の奥の手が秘されていれば秘されている程」

 

 首が落ちる。

 剣を納める。

 

 そして。

 

 そして、その隙を狙ったかのように全身を破裂させた女性に対し。

 

 剣士スキル:極。

 

「魂をも囮にする。お前の悪辣さは信頼しているよ。たとえそれを見るのが初めてでもな」

 

 消し、飛ばす。

 

 

 

 

 

 結界の中にいたメアリーとバルクスを連れて、ホーリーウッドの森まで転移。

 後押し用に用意していたビッグ・バンが今天上の魔素を散らしている。むしろその光景の方が荘厳に見えることだろう。

 

 ただ、もう仕事は終わった。

 

 ホーリーウッドの森。ユグドラシルの中の転移紋。

 案の定それが起動することはなく──ただ、ゆったりとした光が俺達を包んで行く。

 

「ちょ……ちょっとー! 帰るなら言ってよ、置いて行かれちゃうじゃん!」

「ん、なんだ来たのかルウィン。綺麗な空でも見てりゃよかったのに」

「何言って……待って、すぐ準備……ああっ、間に合わない! 私も転移する!」

 

 光に包まれ、薄くなっていく俺達に混ざろうとするマスカルウィン。

 だけど。

 

「え……あれ? ど、どうして? なんで転移紋が起動しないの? ……まって、それ転移じゃない!?」

「すまんすまん、言い忘れてたわ。お前居残りな」

「なんっ……私はヴェルグさんの奴隷でしょ!? 性奴隷なんでしょ!? 私は記憶を失っていて、でもそっちの人なんでしょ!?」

 

 本気で焦っている顔をするマスカルウィン。

 その言葉が物語っているじゃないか。

 

 お前は現地人なんだよ。

 

「マスター。シリアスが苦手なのは理解できますが、色々一人で決めすぎかと」

「ご主人様は相談とかあまりしませんからね。基本的に自分自身の事情で他人を左右するのが苦手です」

 

 ユグドラシルと取引を成立させた時、そして彼女が「善処する」と言った時。

 その時点で未来はほぼ確定したようなものだった。つまり、こちらの世界のマスカルウィンが悲劇に遭うことなく──故にあの性格を被ることもなく、こちらの世界に転移することもなく。

 ただまだ「ほぼ確定」でしかなかったから、世界はそれを観測し終えることができず、俺達に干渉できなかった。

 

 けれど。

 ドゥームスを、魔素を撃退し、この世から魔素という要素が消え去った今、全ての未来が確定する。

 少女は悲劇に遭遇せず、世界を渡ることも無く、別世界で永きを生きることも、国を拓くことも、気まぐれで奴隷となって誰かさんに買われることもなく。

 

 こちらの世界の少女として、一生を過ごす。

 

 あるいは俺達にも影響があるのかもしれない。マスカルウィン帝国がなくなれば、俺達のほとんどの出会いが消える。帰った時、誰もいないのかもしれない。

 

 ただ──それでも俺は方法を見つけた。目的のための手段を手に入れた。

 

「すまんな、最初から最後まで俺がやりたいことをやってただけだ。お前のことなんか欠片も想っちゃいないよ。だから忘れて好きに生きな」

「が──我慢できないよ! あの一番気持ちいの、もう体験できないとかヤだ!」

「色狂いめ、こんな時までソレか。……まぁ、アレだ。お前は努力家だからさ。欲しいモンは自分で手に入れろよ。なんかあるだろ、こっちの世界にもエロ魔物とか」

 

 ユグドラシルが言っていた、感謝を言う暇も無く消えた未来が視えたと。

 それはやっぱり、正規の手段では帰れなかったことの示唆でもあって。

 

「マスター。最悪の場合を考えて、私のメモリーオーブを」

「ご主人様。必ず見つけ出しますのでご覚悟のほどよろしくお願いいたします」

「ああ仮インベ繋げっぱなしだったか。……まぁなるようになるだろ。んじゃーなー」

「ヴェルグさん、そんな、まだ話は終わってな──」

 

 消える。

 世界が。泡となって。

 

 虚数を渡って、流されるまま流されて。

 

 

 気付けばそこは、ヘネツクの塔の跡地だった

 

 

 

 

 さて。

 んじゃあ早速元ホーリーウッドの森へ行って、概念空間に──。

 

「馬鹿か、人間。そこは様式美としてでも"何故いるのか"を問う所だ」

「……え!? マスカルウィン!? な、なんでここにいるんだ!?」

「良い。久方ぶりに殺意が湧いた」

 

 まぁ。

 俺は予想を一個に絞る、ということをしない。

 必ずいくつかの可能性を頭に残しておく。

 

 ただ、初めに述べたように──タイムパラドックス系は頭使うから苦手なんだよ。

 原理とか考えると頭こんがらがるからな。ただ可能性を脳裏に縫い留めていただけだ。

 

「……つまらん。本気で驚いていないらしい」

「ぶっちゃけ最初から疑ってたよ。お前が限界迎えて退行したってトコから」

「反省していたではないか。萎れるくらいに」

「本心からの反省と根底からの疑念が同居することくらいあるだろ」

「あの、再会のご歓談中申し訳ないのですが、バルクス様にメモリーオーブを返してあげてください。今この通りぐでんぐでんですので。あと重いです」

 

 振り向けば、遺跡の陰から二人が。

 ……めっっっっちゃ好みのボディで白目を剥いたバルクス。……メモリーオーブ入れたら全裸ロリになるんだよなぁ、これ。

 

 仕方がないので入れる。

 全裸ロリになる。はぁ。

 

「むぅ……つまらん。つまらん! 異族の女、機械。お前達でもいい。驚け」

「わぁ」

「びっくりです」

「……」

 

 むくれるマスカルウィン。

 いやー。まー。すまんなリアクション薄い集団で。シーファとか連れて行けばよかったな。アイツだったらオーバーリアクションしてくれただろうに。

 

「これ以上やるとルウィン様が拗ねて、また面倒なスキルを使ってきそうなので……ここはひとつ、私の考えたルウィン様の行動についての推理を披露させていただきましょう。それで悦に浸っていただければ」

「むしろぶっ刺してないかソレ」

「まず、ルウィン様が可愛らしくなった現象についてですが、あれは契約スキル:タイムカプセルですね?」

「……そうだ。ある時点ごとの人格や感情を保存しておくスキル。異族の女、お前の玉手箱とやらを食らって、存在を思い出した」

「ええ、効果はほとんど同じですからね。それでルウィン様、貴方は開いたのでしょう。過去に封じた若い己……あるいはその性格を被る前の自分を」

「相違ない。ただこの性格……というか人格はユグドラシルの人格だ。自ら被ったというよりは、勝手に入って来た、が正しい」

 

 それは……あるいはメモリーオーブにも似ているな。

 人格や感情、そして記憶。

 それをアウトプットしておくスキルか。

 

「順を追ってみましょう。まずルウィン様は別世界で悲劇を経験しました。魔素源王の飛来。それによるホーリーウッドの森の全滅。先程の話を加味するに、ここで一度ルウィン様の人格は壊れ、それを癒すためにユグドラシル様が入り込んだ……という認識でよろしいでしょうか」

「不本意だがな。……聖樹には未来を見通す力があった。そして概念空間の主でもあった。聖樹はその力の全てを使い、壊れた人格を癒すための手段を"視"て、敢行した。その手段というのが異世界への転移であり、様々な紆余曲折を経て人間、お前のもとにこの身を渡らせることだった」

「なんでユグドラシルはそれをしたんだ。言っちゃなんだけど、お前はただの住民だろ。先祖返りかなんかで種族が違って、一人生き残っちまっただけの」

「遥か先の未来において、ユグドラシルが払うはずの代価をこの身が払ってしまったからだ」

 

 ……ああ。

 そうか。あの世界を救う代わりに、概念空間への行き方を教える。それが俺とユグドラシルが交わした取引だった。だけどマスカルウィンがデート感覚でそれを教えてしまったから、ユグドラシルは取引を反故する事態になった。

 

 そこまで"視"えていたと。 

 リシといいユグドラシルといい、予知持ちはこれだから。

 

「そうしてこの身はユグドラシルという人格を保持したまま幾星霜もの年月を生きた。国を拓き、その地位を捨て、強くなり、気ままに過ごし──奴隷となり、人間。お前の手に渡る。ただし……なんとも女々しい話だがな。それでも"マスカルウィン"という少女の人格は癒せなかった。癒されなかった。無論ユグドラシルはそれを込みで動いていたようだが」

「悲劇のトラウマは悲劇を覆すことでしか癒されない、ですか。そうしてルウィン様と私達は、ルウィン様の出身世界ではない──けれど酷似したパラレルワールドへ行き、悲劇を覆し」

「そこな人間に置き去りにされ、そこから魔素の無い世界で云万年を過ごし──ヘネツクの塔の転移紋を使ってこの世界に帰って来たわけだ」

 

 ややこしいから図説するとこんな感じ。

【挿絵表示】

 

 だーからタイムパラドックスは苦手なんだって。

 

「元の人格のままでも良かったんじゃねえ?」

「切り替え可能にした。これでいつでも限界を迎えられるぞ」

「色狂いめ……。……ああんじゃ、何? ユグドラシルは生きてんの?」

「いいや。受け継いだのは人格だけだ。記憶や知識は全てこの身を異世界に送り込むことに費やしたらしい。あああと、ヘネツクの塔の転移紋に細工をすることにな」

「あっちの世界のユグドラシルは?」

「あの世界のホーリーウッドの森を今でも守っている。あちらには"マスカルウィンという少女"の墓もあるしな」

 

 ああ。

 ドッペルゲンガーというかなんというか。ちゃんといたんだ、あの世界にも。

 

「これでわかっただろう。ほとんどがユグドラシルの奸計だったとはいえ、何万年ものお預けに関してこちらに非はない。性奴隷としての役割を要求する」

「奸計て。……俺としては世界跨いでも呪詛スキルが生きてることに驚きが」

「うるさい。……早くしろ」

「ご主人様。思うに、こうして上から目線な態度を取り続けているルウィン様ですが……結構寂しかったのではないでしょうか。本当に欲しかったのは再会の驚きではなく、喜びだったのだと推測され──」

「次元スキル:時間停止」

「お。使えるようになったのか」

「あちらの聖樹にあれこれ聞いた。まぁお前のように長時間止めておくことはできんが、喧しい口を閉じさせるくらいには使える」

「マスター。これは"今のは照れ隠しで合っています"と認めているようなもので──」

「次元スキル:時間停止」

 

 わかっててやってんなぁこの二人。

 まぁ、なんだ。

 

 約束したしな。帰ったらヤるって。

 

「あんまりそれ乱用するなよ? 面倒なのが来るから」

「十六手四面の怪物だろう? 既に何度か遭遇している。全て撃退したよ。食っても何のスキルも得られなかったから、出会う価値を見出せていないが」

「あれ可食部あんのか……」

 

 とまぁ、そういうことで。

 マスカルウィン帝国はなくなっていないし、だから俺達の出会いとかが消えたわけでもないし。

 

 ただマスカルウィンが魔素の無い世界ながらにも「二周目」を経験したことで、かなりパワーアップした──そんでもって色狂いが加速した。

 

 報酬としては、概念空間への行き方と、奴隷のパワーアップ。上々だわな。

 

 

 あとは。

 結局回収されなかった『太陽』に関するイベントが……グノーシスの魔化らへんで大イベントになって来そうだから、それに備えておくくらいかねぇ。

 

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