アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ 作:姫鼠まりあ
そこは──来たことのある空間だった。それも、何度か。
逆さになった樹木。天へと吊り下がる蓑。真っ黒な世界。
周囲に人影は無いけれど、ミニマップでは青点表示が四つある。
時間停止の修正空間と似た異相……んでもって、苦闇のお香を使わずに正規の手段で来た、って感じかね。
「然り。フレースヴェルグ。お前は幾つもの罪を犯した。その罪を清算せぬ限り、目的になど辿り着けるとは思うな」
「黒無常。お前もしつこいなぁ。今時俺をフレースヴェルグ呼びするのはお前くらいだぞ」
「清算を行え。でなければ、世界の名の下にお前の足を引っ張ろう」
そりゃまぁ熱烈なストーカーだことで。
「まぁ、今はちょいと機嫌が良い。聞いてやるよ。俺の罪ってなんだ?」
「死の冒涜」
「聖堂関係者なら死者蘇生は使えるだろ。他にも蘇生系スキルはそこそこある。俺だけってのはおかしな話じゃないか」
「死者の冒涜ではない。死の冒涜だ、フレースヴェルグ。魔化は摂理である。魔化そのものを止めるのはいい。だが、一度魔化した者を引き戻すのは、この世の摂理を破壊することと同義」
「善悪関係なく魔素に取り込まれたら魔化、善人が悪しき心を抱いたら魔化。それがこの世の摂理だって?」
「然り。残酷ではあろう。理不尽ではあろう。だが、この世が作り上げられたその時から、それは決まっていたことだ」
ま、異論はない。
ゲームシステムという面では「魔化した人間は元に戻らない」は絶対だった。だって資料室でさえあのアニス・ウォーズマンを救った時の力技以外「治す方法はない」って断言されてたわけだし。
そこを無理矢理こじ開けたのが俺。残酷で理不尽だからといって覆していい"ルール"ではない、と言われたら、そりゃそーだわな、って納得する。
「俺の罪についてはわかった。んじゃ質問を変えよう。俺がお前に裁かれなきゃならん理由は?」
「罪を犯した者が法のもと裁かれる。当然であろう」
「俺がいつ法に守られたよ。法を守るのは守られるためだろ」
「この世界にいる。それだけで十分だ」
「なら虚数世界だったらやってよかったのか? ああいや、そもそも聞いてるのはそこじゃあない。なんでお前に裁かれなきゃならねーんだってとこだ。お前別に法の番人とかじゃねーじゃん」
黒無常。
その役割はどっちかというと死神で、閻魔様じゃあない。ああ無論、このゲームでは、の話だ。民間信仰の役人なんだ、口伝での役割なんて沢山あるさ。
「故に清算を行えと言った。裁くのが誰にせよ、何にせよ、罪を認め、贖うのはお前だ、フレースヴェルグ」
「つまり俺が認めなきゃ踏み倒せるってことか」
「その場合、ここから出ることは許さぬ」
「じゃあ、聞こうか」
天空のブーツも履かず、真っ黒なそこを階段でも上るかのように進んで行く。
進む先。
それは、この樹の根っこだ。
「世界の摂理。黒無常の意地。果たしてそれは、俺の歩みを止めて良いものであるか」
「……」
「なぁ、クリフォト。お前の声も聞こえているし、俺の言葉もわかるんだろう? 出て来いよ、ちぃと話をしようぜ」
黒無常が消える。
弁えた、というべきか。
黒無常が去って、樹木だけが残る。
そこに、立っていた。
上下逆さまになった──少女。裸なのは最早ご愛嬌だけど、だからこそ神秘的ではあるのかもしれない。
三白眼。それに……魔素を纏っている、と付け加えようとしたけど、それ以上にドヤ顔なのが気になる。アレアダルトMODの弊害か? それともコイツの性格か?
「初めから見えていたわけではないだろう。しかし、そうも自信に満ち溢れているのは、何かの背押しがあったからか、異邦人」
「それもあるし、自分で気付いた点もある。だってここといい元の世界といい、あからさま過ぎるしな」
真っ暗で、神がいなくて、善か悪かのどちらかにしかなれなくて。
太陽が無くて、残酷で醜悪で不安定で。
どこを見ても、どう見ても……あまりにも"適っている"。
「汝の言う通り、吾はクリフォトを名乗る概念だ。して、何用か」
「お前を斬り倒したい。いいか?」
「理由に因る。吾も別に、ここに囚われていたいわけではない」
「魔素と魔族を切り離す術。その第一手は心の理解だった。世界の摂理に歪められた人々への理解。それはもうした。だから次の手がこれだ」
「何ゆえに。吾に吊り下がる者達は魔化した人間なり。魔族ではない」
「二手目だ。魔素の理解。この星から追放され、宇宙の最果てに幽閉され、しかし復讐心を以て帰還を果たした魔素源王。
魔素が何か、についてはゲーム本編においては触れられなかった。
だけどドゥームスの過去自体は知っている。それはあるいは、「この世界には善人か悪人かしかいない」という設定への後付けのために作られた存在なのかもしれないけれど。
この世界のNPCたちが何故そうなのか。
そうであるとデザインされたから。ただし、そうであるようにと生み出されたわけではない。
元は「人間」として作られたキャラクター像から、善心や悪しき心を取り除いてデザインされたのがこの世界のNPCだ。仲間になるNPC、登場人物であるNPC。あるいは主人公……フレースヴェルグでさえも、その選択にきっぱりとした善悪を求められる。
そうしたデザインをされたのなら、そぎ落とされた心の半分はどこへ行ったのか。
これがドゥームスの始まりだ。人々が生まれると同時、そぎ落とされ、不要とされた心は全てドゥームスの一部となって終結する。宇宙の彼方、あるいはティル・ナ・ローグにも似た「影」の中に。
「ゆえに、魔化した人間とは捨てた心を返された人間であると言える。クリフォト。お前に流れる魔素は、魔化した人間たちが持っていた心の片割れ。だから魔族はあんなにも誇らしげに生きている。果てしなく"人間らしく"」
「吾を斬り倒せば、心を取り戻した人間はまた片割れに戻ろう。それを望むか、異邦人」
「望む。俺は聖人じゃあないんでね、今そうでないものがそうであるようになることの全てが善だとは言い切らない」
あるいはワォスタクラインのように「取り戻す」のかもしれない。
でも別に、取り戻さなくてもいいだろ。そこは好きにしたらいい。
「ただ、今の魔素は全部ドゥームスの息がかかってるからな。折角すべてを取り戻した奴らもうるせぇうるせぇと大批判だぜ。アイツの復讐心が伝わってきて、誰も彼もが反転しちまうとさ」
「認めよう。吾に流れる魔素は要らぬ意思が入っている。だが、それでも、魔素と魔族を切り離す術のために吾を斬り倒す理由にはならぬ」
「じゃあ問題だ、クリフォト。──今の魔族に、純粋な魔族はどれだけいると思う?」
問いに。
逆さまの少女は、ニヤリと嗤う。
「純粋な魔族。純粋な魔族か。おかしなことをいうものだ、異邦人。お前は見て来たのだろう、魔素源王の飛来を。逆に問おう。汝は魔素源王の中、あるいは背に、魔族が付いてきているところを見たか?」
「一人たりとも」
「では──汝の言う純粋な魔族とは、なんのことだ。どれを指す」
「初めから魔族であったもの。根源から魔素であったもの。だけど」
言葉は異口同音に重なる。
「
オニキス・リオンは言っていた。
考えた時点で概念は生まれるものだと。
だというのに草案世界で俺の前に現れたのが"答えのないもの"の概念だった理由は、簡単なんだ。
魔素と魔族を切り離す術など存在しない。
あるのはただ、魔素と生物を切り離す術だけ。
だって、今いる魔族は全て、あの日飛来したドゥームスによって魔化した人間の、その子孫たちであるのだから。
どんな形をしていても、どんな力を持っていても。
だからテュアナも、ヒポグリフも、リザやネレットも、そしてシーファも。
元魔化した人間の子孫。彼女らが思っている程、彼女らは純粋な魔族ではない。
「勿論お前を斬り倒したところですべてが解決するわけじゃあない。これはまた数ある内の一手に過ぎない。だけど、少なくともお前に流れる魔素は吊るされた果実から切り離され、ドゥームスの意思は魂に干渉できなくなる」
「良い。吾は汝を赦そう。全ての魔族を奴の意思から解放するがいい。だがそれでも、魔素源王を殺さば現存するすべての魔族が死ぬことに変わりはない。そこをどうするかは──」
「お前が気にすることじゃあないよ、クリフォト」
「……ああ。──黒無常、白無常」
「……」
「あ、はーい……とと、なんか厳かな雰囲気……?」
現れるは黒と白。
世界が黒すぎてそれが黒白であることしかわからないけれど、成程白無常もいたのか。出てこないなとは思ってたけど、なんか役割あったんかな。
「喜べ。ここの役割が今終わる。吾はようやくの眠りに就く」
「……裁きは」
「不要だ。"心の返還は善である"──故に"魔化した人間は丁重に管理しなければならない"。汝の気高い心は、しかし今役目を終えた。どこへなりとも行くと良い。あるいは異邦人、吾の頼みを聞き届けてくれるのであれば、この二つの願いを」
「ここが眠りに就くのであれば、共に」
「んーと、話の展開が早くてついていけないんですけどー……つまり、もう眠っていいってことですか?」
「らしい。すまないな」
……。
やれ、ってか。まぁ、見えてないからできるけどさ。
「報酬は?」
「フレースヴェルグ、お前は」
「……良いだろう。これをくれてやる」
インベントリに何かが入る。
武器。……グラフィックは……あー。
「使いたくない」
「そう言うな。吾の生前を模った姿だ、好ましく思え」
マジか。じゃあアダルトMOD関係なしにこういう見た目ってこと?
この……刀身がまんま全裸のクリフォトな……いやいや、違う違う。そうだ、そもそもクリフォトが全裸少女に見えているのはアダルトMODの影響だから……これは木の剣みたいなもんってことだな、よし。
「銘をセフィロト。魔素に冒される前の吾の名だ」
効果としては……光属性の威力増加、持続時間増加、効果範囲増加……うあー、こりゃまた有用な。
この見た目じゃなかったらバンバン使いたい。鉱石系でこういうのくれよ……。
「生前の自分に死後の自分を斬らせるってのは、皮肉だな」
「良い趣味をしているだろう?」
「流石だよ、邪悪の樹」
でも。
まぁ、オーダーだしな。
「いいよ、これでこの世界ごと全部ぶった切ってやる。……そうだ、どうせだし、なんか称号くれよ。今から行う、光属性の最大威力攻撃に対してのさ」
「欲を張るものだ。……吾は名付けというものを行ったことが無い。黒無常、白無常。良い案はないか」
「……」
「い、いきなりそんなこと言われてもー」
「そうか。ならば決めた。くれてやるから、誇れ異邦人。吾が初めて名付けた名だ」
称号一覧にNewが出る。
自分で言っといてなんだけど、そんな簡単に作れるものなんだ。
全裸でドヤ顔をしている少女──目の前で逆さになっている少女の白黒を反転させたような姿のそれ。
その生足を掴む。帰ってくる感触は柄のそれだけど、見た目が、見た目が。
……今は良いか。あとで悩もう。
今はただ、この三人を見送るだけでいい。
「魔術師スキル:マナエクステンド。魔法使いスキル:マナエクステンド。神官スキル:マナエクステンド。聖騎士スキル:マナエクステンド。魔剣士スキル:マナエクステンド。召喚士スキル:マナエクステンド。奇術師スキル:バルブデュアル、バルブデュアル、バルブデュアル、バルブデュアル。魔法使いスキル、加速、同時、集束、消費MP90%、コールトラウオン、レンジエクステンド、エリアエクステンド。魔剣士スキル:プリズムオーラ、HP上昇オーラ。仙人スキル:瞑想、止水。戦士スキル:ウォークライ、パワーアップ、ライフゲイン、重量化、諸刃の剣、虎穴虎子。剣士スキル:無我の境地、明鏡止水、以水滅火、雲竜風虎。狂戦士スキル:独擅場、桃源郷。魔術師スキル:開始位置重複。歌唱スキル:鼓舞のロック、闘争のオーヴァーチャー。踊りスキル:集中舞踊、過熱音頭。弓兵スキル:標的固定。呪詛スキル:ステータス代替【DEX、回避率→STR】【AGI、スタミナ→STR】、身焦がしの炎【HP90%→STR】」
エリクシールを飲んで。
「フレースヴェルグ」
「ん、なんだよ黒無常」
「罪を罪と思わず、踏み倒すのならば」
この世界の終わりを告げられてから、ずっと黙っていた黒無常が。
その声を響かせる。
「踏破せよ。残酷で理不尽で無慈悲たるこの世界など──踏み躙ってやれ」
「ヴェルグ。ただのヴェルグだよ、俺は。最後くらいそう呼べ」
「行け、ヴェルグ! 今ここに、世界摂理のその一部を切除しろ!」
オゥケィ。
「
新たな光属性最強の攻撃。
魔法においてはビッグ・バンが先を行くけれど、光属性の攻撃であればこちらが上となろう。
その一撃は、黒い世界も、クリフォトの樹も、黒と白も、そして──逆さまながらにドヤる少女も。
全てを斬り伏せて、消し飛ばした。
はじき出された場所は海。
海?
「っと、舵を切るっつったけど、マジで海とは思わなんだ」
「ご主人様! よくぞご無事で……」
「ヴェルグ、さん。戻ってきて早々で、悪いのですが……手伝って、ください」
「次、来るぞ!」
ワォスタクラインが叫ぶ。操舵しているリシ、その身体を支えているアウラニ、不可視のソレを使って船上を維持しているメアリー。
それらに、少女……じゃない、レプラカーンと同じ、ミニマムサイズの女性数百人が噛み付こうとしているのが見えた。
飲んでいる暇が無いのでエリクシールを取り出して頭突きで割って浴びて、回復したMPで神官スキル:遮断を使う。この船の全貌を把握していない以上こっちを囲うのは船体の破壊になりかねないから、飛んできている女性の全てを結界で囲う。
……いや、ダメだな。船体が揺れたら結界にぶち当たる。この船の耐久度がどれほどかは知らないけど、俺の結界の方が強いのは明白。
「ヴェルグ、結界を解け。そしてこの場にいる全員の耳を塞げ!」
「また難しいことを言うもんだ。魔法スキル:バウンスバブル」
ワォスタクライン以外の顔にそれを出現させて、強度を上げる。んで結界を解けば、額をぶつけてイライラした顔をしている女性たちがまた露わに。
確認の合図はない。ただこちらを信頼しているとばかりに見向きもせず、ワォスタクラインは何かのスキルを使った。
肌の震えからして、多分音。叫ぶ系の……ハウリングハウルとかかな? でもあれデーモンスキルだから、別か? それとも人間に戻ってもまだ使えるとか? よくわからん。
ただそれをくらって、女性たちはぽとぽとと海へ落ちていく。
バウンスバブルを解除すれば、また聞こえてくるようになる嵐と波の音。
……うーわ。
なんだこの赤点の量。この海域の至る所に敵が居らぁや。
「リシ、この船が海に浸かってる必要は?」
「無い。だから早くやってくれ」
「提案もしてないのにわかるのは流石!」
次元スキル:絶対配置。
「何かに掴まっておけ! 持ち上げる!」
「天使スキル、光鎖。……仮に落ちても、私が、拾います」
「任せた」
足元、甲板から少しの高さのところに神官スキル:隔断の結界を置いて、そこに足をかける。
それを両足、段階をあげつつ解除と生成を繰り返して昇っていく。
次第に持ち上がる船。……もうちょい速度あげないとまた来るか。
一段飛ばし、二段飛ばし、三段飛ばし。
面倒だから船体が真横になるくらいまで持ち上げて、一気に跳ぶ!
「……っと。ここまでくれば流石に追いつけないだろ」
「無茶苦茶な男だな、本当に……」
「うぅ……酔いました」
「天使スキル、状態異常回復」
メアリーこそああいう手合いは得意だろうに、なんで対処してないのかと思ったら酔ってたらしい。そして船酔いって状態異常回復で治せるのね。
ああでもそう言えば、ハルフィーさんのトコにも船酔い治しってあった気がする。
「ヴェルグ。これはガレー船だ」
「ああその情報があれば持ち上げずに済んだのに」
重さを考えて隔断結界を張る。色々面倒だから一辺が60mの立方体。余分なスペースできまくるけどまぁいいでしょ。
そこにソリッドリキッドをだぶだぶ注いでいく。意図に気付いたらしいワォスタクラインとメアリーもなんらかの液体を結界の中に注ぎ込んでくれた。
そんで俺が船を離せば──ざぶん、と。んでソリッドリキッドを固まらせれば揺れもしないと。
空中のボトルシップの完成である。全然ボトルじゃないけど。
「ふぅ……」
「お前、予知できるなら最初から説明しておけよ」
「……お前がいなくなることは完全な予定外だった。加えて、この概念空間がどのような場所になるかは、共に入った者の性質を依代にする。幾つもの予知はあったが、どれも確定しないものだった」
「俺がいなくなったのは俺のせいじゃないんでな、んじゃお相子にしようか」
「別に、誰が悪いなどという話はしていない……」
そいつぁどーも悪ぅござんした。
で。
「……俺が来たわけだけど、この世界は変わらないのか。あの星空世界は?」
「そこへ行く予定だったが……何かの概念が阻んでいるらしい。この光景に心当たりのある者はいるか?」
まさかマスカルウィンがいないといけない場所ってことはないだろうけど。
……。
あ、わかった。
称号を『涯無き生命の光』から『至者』に変える。
こーいうこったろ!
「いや、我に心当たりはない。だが、嵐というと……迷いや躊躇を連想する」
「私も、覚えが、ないです」
「……海には因縁がありますが、こういう嵐は特に……」
変わらんかったわ。
えー? これ辿り着くための称号なんじゃないのー? おい"答えのないもの"、答えをくれよ。
「そもそもなんで概念空間に魔物がいるんだ。エクソシーダディだろあれ」
「我に聞かれても困る。我は確かに魔王であったが、魔物とはそもそも縁が無い」
「聞くな、ヴェルグ。概念空間は元より"何故そうであるか"の答えがない。お前の見たあの光景もまた、なぜそう見えたのかについての答えはないだろう」
……確かに。
なんでトラーヴァの魔本のあった空間と同年代の場所で、なんで星々が輝いていて、なんでそれが概念として成り立っているのか。
その答えについては確かに知らん。
「んー、でも場所としての心当たりはあるっちゃあるんだよな」
「どこ、ですか? 私は結構、いろんなところを、見て回りましたが、こんな場所は、覚えが、ないです」
「南の海域……は年中穏やかなイメージがありますね」
「いやほら、アウラニとメアリーは覚えてるだろ。前行った海底遺跡……というかその砂浜。あそこだよ」
「あそこ、ですか。……どこに、似た、要素が?」
「ところどころに見え隠れしてんじゃん。鳴り傘」
たまに、波で水位が下がると顔を見せる、ビーチパラソルのようなもの。
そんでもってこの空模様に洪水に似た海。さらには船。
ってことは、ここで出てくるのは。
「──がおおおお!!」
リヴァイアサンだよな、って言いながら先手必勝仕掛けようとして、つんのめった。
……うーん。
だからさぁ。
「リヴァイアサンか。流石にこの人数では手を焼く相手だな。時間をかければ我一人でも対処可能だが……ヴェルグ、足場を貰えるか」
「あれがリヴァイアサン……。ひとたび海から陸に上がれば、一国を丸々飲み干すまで終わらないという」
「魔素は、感じませんが、生物として、強い……そう、思います」
うーん。もしかしてレイドボス全部そうだったりする?
おかしいなぁ、俺アダルトMOD導入した時に一応魔物はさーっと見て回ったんだけど……リヴァイアサンも、なんならバルクスもああじゃなかったと思うんだけどなぁ。
なんで。
なーんでロリにしちゃうのかなぁ。巨大ではあるけどもさ。
「こらー!! そこのー!! 船ー!! 降りて来おおおい! 降りてこないならー!! 撃ち落とすぞー!!」
超巨大ロリ。
その口に、水属性の魔力が集中する……ってヤバい。
「アウラニ、さっきのスキルで全員結べ! リシ、この船無くなるのはヤバいって考えていいんだよな!」
「ああ、この船は無くすべきではない。だがヴェルグ……何故殺さない? ここは概念空間だぞ。あれらはどうあっても概念上の──」
「うっせ!」
アウラニが光鎖を使ったのを見て、隔断結界に絶対配置を使う。
俺だけ外に出て──後は天空のブーツ履いて猛ダッシュ。
「
直後、俺、というかこの船のあった所を、氷の柱が貫いた。
「このー! ちょこまかとー!!」
「おいおい二発目のCTは七分だったはずだろうが!」
レイドボスである。
あんな最強の攻撃バンバン撃たれてたら堪ったものではない。だからあの攻撃は再装填に七分かかる、みたいなことをキロン・シトロン他弓兵スキル使えるNPCが観測して、そこから作戦を組み直す、みたいなフェーズがある。
それをガン無視して撃った直後に再装填は聞いてない。
「ヴェルグ。我を外に出せ。お前が囮になるというのであれば、我が」
「だからうるせぇ! 今平和的解決手段模索してるから待ってろ!」
「概念空間だ、ヴェルグ。これは試練と受け取った方が良い。ならば話し合いでは──」
「いーからお前は全部が丸く収まった未来でも予知しとけ!」
避ける。
避ける。
どうするか、これ。
範囲魔法……はどう考えてもダメだ。他を巻き込む。エクソシーダディが何百体と死ぬ。何より超巨大ロリが全身やけどしてる姿とかエグいのでNG。
避けて、えーと。……攻撃はこの際全カットして、拘束手段を考えろ。封印棺は? ……あの大きさ入るのか? つーかレイドボスに効かなかった気がする。無し。
バインドプラント……は凍らされて終わりっつーか地面が海底だからダメ。階梯の間は多分レジストされる。隔断結界……はいけるだろうけど、タイミング考えないとリヴァイアサンに自傷ダメージが入りかねんん。候補として残してはおくけど、もう少し安全策を取りたい。
メアリーの蛇睨みとかアウラニの調停でなんとかしてもらう……はアリ。
つーかソレかなりアリ。効くだろうし。
そう思って振り返ると。
「……出してください、ご主人様。ご主人様ができないのはわかっていましたから、私達がやります」
「魔物を、殺せない。……ワォスタクラインさんの、記憶で……ヴェルグさんは、活き活きと魔族や、人々を、殺していたので……トラウマは、治ったものと、勘違いしていました」
「すまない、ヴェルグ。お前にそのようなトラウマがあったとは知らなかった。……無理をさせたな」
最大主教スキル:封印棺。
思わず使ってしまう。
魔素を失ったワォスタクラインも、天使のアウラニも、上位種族のメアリーも。
アイン・ソフ・アウルを放った時のバフが残っていたのだろう、大人しく封印されてくれる。
……。
「ヴェルグ。……お前、何を見ている?」
「予知しろよ、それくらい」
「魔物の死骸を直視できないことは知っていた。……だが、食してはいるだろう。形を曖昧にしてでも、誰かが狩った魔物を。それに、お前の武具の八割は」
「だから勝手に知ればいいだろ。それができるんだから」
「……不可能だ。予知とは、そう万能なものではない」
「なら黙ってろ。今考えてんだよ無い頭絞って」
避ける。
リヴァイアサンが赤点表示……敵対存在であることは変わらない。
どうする。こいつら一旦結界で最大限囲って、真っ向勝負で行くか? レイドボスの一撃は……まぁ耐性ガン盛で行けば大丈夫だろう。
あいつの氷全部砕いてアイツの前に躍り出て……で、どうする。
帰ってもらう、のか? なんで出てきたのかもわかってないのに?
「そうか。……ずっと見えていなかった最後の一手。これか、ヴェルグ」
「お前最悪な事言うの得意だよな。……そりゃ参るよ、ちょっと」
激痛系が全般無理。ここを変えろ、ってのは……無理だ。
なんかないのか、別解。
頼むよ、なぁ。