アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ 作:姫鼠まりあ
考える。
考える。
アダルトMODが入っているこの世界において、俺が無理であること。それは別に市場に人体が並んでいることとか、装備に人体が使われていること、ではないんだ。
俺は激痛系のエロが全般無理。グロがダメなわけじゃない。ただ痛みを想像できるのがキツい。そして痛みに苦しんでいるのがキツい。それが美女美少女となれば尚更だ。
それを克服できるか、と問われたら。
「──
できるできないじゃなくて。
なんでそんなこと俺がしなきゃいけないんだよ、っていう。
「ヴェルグ、お前……今何を決断した。未来が……闇に」
「諦めた。目と鼻の先に答えがあるらしいけど、知らん。俺は俺を捻じ曲げてまでそれが欲しいとは思わん」
うん、それがいい。
それでいい。
それを乗り越えなければ概念と対話ができないというのなら、できなくていい。
答えに辿り着くためのアプローチがそれしかないと誰が決めたんだ。結局これは近道だろう。なら──もう少しばかり時間を貰って、自分で至る。
葛藤するくらいなら、できないと諦めた方が俺らしい。
「そういうことだ、ユグドラシル。もう要らんから帰らせてくれ」
「……」
言えば──リヴァイアサンは、その口からの氷撃を停止する。否、リヴァイアサンが停まったわけではない。
世界が停止した。
「……人間。世界は違えど、お前の為した所業は知っている。問う。今お前は、全ての答えを知り得る位置にいる。魔素と魔族を切り離す術だけではない。ありとあらゆる事象と
「全部わかってて断ってる。俺は今の俺を殺してまで答えを欲さんとするような奴じゃあないのさ」
リシの背後。
まるで亡霊のように……あるいは本当にゴーストにでもなったか、草案世界の彼女と同じ姿のユグドラシルがいる。
受け継いだ、と言っていたか。リシもまた停止している。
「別解を探すまでもない。考えるまでもない。他人に思想を押し付ける気は無いけど、思想を押し付けられたのなら俺は逃げるよ。俺は俺の世界観を変えるつもりは一切ない」
一手目、二手目までは良い。心の理解。魔素の理解。
それはあるいは、資料室に載っていなかったというだけで、本来俺が知っていなければならないものだったから。
だけど無理なものを受け入れろ、はまったく別ベクトルだろう。
「ユグドラシル。出してくれ。出してくれないならこいつら持ってトラベルチップを使うよ。概念空間からだとどこに飛ばされるかわからんが」
「すべてが無駄になることを理解しているか、人間。魔王の気付きも、異族の立ち直りも、天使の自負も」
「無駄にはならんだろ。無駄にするかどうかはそいつら次第だ。加えて、別に辿り着くのが俺である必要はないだろうし。良いんじゃね、ワォスタクラインとアウラニあたりが挑戦して答えを得たら、それはそれでいいことだろうよ。俺が成し遂げなきゃいけない、なんて強い思想は持ってないよ」
それに。
「概念空間も世界の一部だろ。そこの用意する試練に則って行くのは良い子ちゃんだけでいい。ちょいと直前に審判と邪悪から背押しされててな。どうやら俺は、世界を踏みにじることを期待されているらしい。だから答えは、知るかバカ、だ。後生大事に受け取っておけ」
「……」
背後、扉が開く。
光の扉。勝手口はそこだと言わんばかりに開いたそれ。
「最終通告だ、人間。ここにはお前の欲す答え以外にも、様々な概念がある。あるいはお前の視界に関するものもあるだろう。……そして、仮に次、同一の者達でここへ来たとしても……ここへ入ることはできない。それでも」
「それでも構わない。お前が"視"た未来がどんなに美しく、どんな幸福で満ち溢れているものだとしても。あるいはお前が勝手に恩義を抱いているのだとしても。俺は俺を変えないし、俺は俺を曲げない。その結果未来が暗雲に包まれるというのなら、また宙でも切り裂いて晴れにしてやるよ」
「そうか。……この人格の残滓はもう消える。あとは頑張れ、人間」
「おう」
ユグドラシルのゴーストが消えて。
リシの意識が戻る。記憶はあるのだろう、俺を真剣な目で見つめる彼。
「ようやく理解した。ヴェルグ。……お前は、フレースヴェルグではないのだな」
「今更だろ」
「……」
ユグドラシルが開いた光の扉に足を踏み入れる。封印棺三つも引き連れて、俯いているリシの首根っこを引っ掴んで。
出て。
──他全員を天界にある泉のほとり……ソーマが手に入る場所に転移させる。封印棺は解除。
「聖騎士スキル:十字鎧」
「……!」
俺がいる場所以外の全てが砕ける。割れる。
凄まじい衝撃が周囲を伝い、枯れ木も結界も、そして聖樹さえもひっくり返された。
「なんか用かよ、クレイドル」
「……魔素源王とクリフォトの接続を断ったのはお前だな、二人目のフレースヴェルグ」
「おいおい、焼き増しが過ぎんだろ。今その話したばっかだよ」
「余計なことをしてくれた。おかげで魔素源王が本来の力を取り戻したぞ」
クレイドル。
リザと同じ、ファントムの四天王の内の一人。リザが完全魔法のタイプならコイツは完全物理タイプ。デバフ無効で常時リジェネ。まぁどっちも剣使うからリザの方が初見殺し感は強いんだけど。
武術だけで虚数世界に辿り着いた一種の傑物。魔族のくせにっつーと種族差別過ぎるけど、魔族のポテンシャルで研鑽され尽くした武芸に手を出したらまぁそうなる、の最高峰。
「弱体化してたドゥームスを斬りたかったのか。そりゃいい趣味だな」
「挑発は要らん。……わかっているのか? 魔素源王がすべての魔族に注いでいた意思の全てを取り戻したのだぞ。──今まで奴が座していたのは、そのリソースが膨大だったからだ。だが──魔素源王が本来の力を取り戻してしまえば、奴自身が動けるようになる」
「あー、まだラヴ・グラットルが弱いからやめてほしかったってことでいいか、要約」
「……それは我が主の意向だ。俺の意向ではない」
へぇ。
なんだ、ファントムの奴部下の制御できてないのか。それともある程度の自由を許可してる感じか。
ゲームじゃこういう世間話する、なんて機会無かったから新鮮だな。絶賛すさまじい威力の一撃が俺を襲っているとはいえ。
「二人目のフレースヴェルグ。魔素源王を舐めるな。奴の復讐心は、決して癒されるものではない」
「知ってるよ。で? その忠告しに来た割には結構本気で斬りかかって来たみたいだけど、結局何がしたかったんだお前」
「
「……フレースヴェルグが、ねぇ」
「あの馬鹿な男は、二度も同じ手段で堕ちた。学習というものを知らんらしい」
「人質か。ネレット・テッペルヴィナに、他にもイゴナとかいうのもいるんだっけか」
「覇道を進むと決めたのならば、情のある相手を傍に置くなどしなければいいものを。……それはお前も同じだぞ、二人目のフレースヴェルグ。魔素源王を強化し、そして最短で辿り着ける術を切り捨てたお前は、だというのに周囲に弱者を置きすぎている」
「心配してくれてんのか忠告しに来てんのか殺しに来てんのかハッキリしてくれ」
「殺せぬとわかっているからこうして雑談に興じている。俺ではお前には届かん」
さっぱりしてやがる。
にしちゃ本気の一撃だけど。アレか、勝てないのはわかってるけど一応全力はぶつけたいみたいなアレか。
迷惑な。
「堕ちた、っつーのはどれくらいだ。自由意思も無い感じか」
「縛りを受けているのは確実だろう。どれほど抗えるかは奴次第だが、抗えば弱者がどうなるかもわかっているはずだ」
「……で、助けに行けって?」
「そんなことは言っていない。先も述べた通り、お前まで同じルートを辿られるのは面倒だ。故に、早急に切り捨てろ。情をかけかねん弱者は捨てろ、二人目のフレースヴェルグ」
「別に囚われても殺されても生き返らせりゃいいだけだろ。魔化しただけならそのままでもいい。ドゥームスの復讐心が乗らなくなった以上、魔化にデメリットは対して無かろうさ。精々聖気が無理になるだけだ」
だからアウラニが可哀想になるのはそう。
ま、そしたらまた取り戻すさ。クリフォトの樹がない以上、もう苦闇のお香での手段は使えないだろうから、また別の方法を模索して。
「感情と執着が乖離している。お前、なんだ?」
「見ての通りだが」
「……虚数スキル:落葉」
地面に穴が開く。
掘削とかのソレじゃない。転移や──あるいは繰り込みに近いスキル。ファントムの部下が使う、虚数世界へ帰るためのスキルだ。
そこに、押し込まれる。
地面が無くなったから押し込まれはしたけれど、弾かれはしない。
むしろ十字鎧を解除する勢いで剣をはじき返し、クレイドルを虚数神殿の柱まで退かせる。
……正規の手段で来たのはゲームぶりだな。いつも繰り込みで近道してるから。
「何事だ、クレイドル。……と、お前は」
「久しいな、リザ」
「そう気安く名を呼ばれる謂れは無いが、確かに久しいか」
「なんだ……知り合いか?」
「同じ魔物を追悼した仲だよ」
リザ。真紅の幽姫。んでクレイドルに、また集まりつつある残りの二人。
でもそれが来る前に。
「──や、ヴェルグ。本当の意味で会うのは初めてだね!」
「おう。いつも正規の手段使ってないからな。ちなみに久しぶりの感じはしてないよ。別世界で結構お前と会ってたし」
「えー、なにそれ。ボク嫉妬しちゃうなー」
「正直あっちのお前の方が俺の好みではあった。今のお前も……言動がそれでなきゃ良いんだけどさ」
「ああそう、それそれ。この前人間に"この姿のボクに欲情するか"を聞いたら苦笑いされたよ。やっぱ君オカシイよ」
「聞くなよ。俺がおかしいことくらいわかってんだろ最初から」
ファントム。
おどおどファントムの方がオティヌティヌにはティンと来るんだけど、まぁ流石に「ファントムと言えば」で出てくるのはこっちだなー。
なんやかんや草案世界のファントムとは友好的な関係のまま終われたし。アイツ、あっちでちゃんと仲間作れてたらいいんだけど。
「それで、今日はなんで正門から?」
「自分で来たんじゃなくてクレイドルに連れてこられたんだよ。俺がクリフォトの樹伐採したからドゥームスが強くなって困るー、ってさ」
「別に困りはしない。俺が困るのは、お前が魔素源王の手に落ちた場合だけだ」
「あー、クレイドル。それ杞憂だよ杞憂。ナイナイ。ヴェルグがドゥームスの手に落ちるとかあり得ない。それじゃ解散でいい?」
「おう。ああ色々懸念して今回の同行者を天界に転移させちまったからさ、俺を天界に放り出してくれないか。自分で行くの魔力勿体ないし」
「ヒュウ、ボクをリーディーホース代わりに使うって? いいよー」
「いいんだ」
まぁ、本音を察するのなら、正規の手段で来た俺に暴れられると困るからさっさと帰ってほしい、ってトコはありそう。繰り込み使ってない状態の俺は100%の力でここ破壊できるからな。繰り込み使うと45%くらいまで出力落ちる。
そうじゃなきゃ前にドゥームスの首落とそうとした時、ファントムに止められる、なんてことにはなってないってね。
「あ、そうだ。今ラヴ・グラットルはどんな感じなんだ。ドゥームスと魔族を切り離す研究をまたイチからやり直そうとしてる段階なんだけど、もうドゥームス倒せるくらいまで来てたりする?」
「流石にもうちょっとかかるかなー。今のところ"自分の限界という名の壁"に当たらせて、挫折を経験してもらって、仲良くなった人の死も経験したから精神的には結構いい線来てるんだけど……思ったより身体の方が伸びてなくてさ」
「聖気を発露できるとかいうのじゃ足りないのか」
「足りないね、結構。まだ扱い間違えて魔素中毒になったりするし。周囲の人間が助けられる状況でしか魔族を当たらせてないからなんとかなってるけど、単騎で状況をひっくり返せるような……フレースヴェルグやワォスタクライン、そして君のような存在にはなり切れてない」
あー。
んー。確かにその状態で完全体ドゥームスと当たったら、死ぬなぁ。
「んじゃワォスタクラインを師匠につけるとか」
「それは……面白いね。彼なら最後まで面倒を見てくれそうではある。だけどそれ、ストーリー性が止まっちゃうんだよねー。こう……修行パートはダイジェストであればあるほどいいっていうかさ」
「わからんでもない。その間ドゥームスをどうにかしておかなきゃ、ってことだろ」
「そゆことー。君に頼んでもやってくれなさそうだし……かといって今のドゥームスを年単位で押し留めておける存在とかいないし。ケッコー悩み中」
うーん。まぁそう言われると確かに責任の一端は俺にあるか。
「要は短期間で強くなりさえすれば、その後はお前の"ストーリー性"に任せられるって認識であってるか?」
「できることなら肉体面の強化も物語でやりたかったんだけど、そうも言ってはいられない状況になっちゃったからね。出来れば彼女が精神的な成熟というか大人になる前にもう一段階……欲を言えば二、三段階は上に行ってもらいたいかな」
「んじゃワォスタクラインとアモルファス聖とマスカルウィンを師匠にして強化合宿とかどうだ」
「……それくらいするしかないかぁ。あんまりそういう強引な強化はやりたくなかったんだけどなぁ」
「300レベルまで行ったら俺がティル・ナ・ローグで限界突破させて」
「いやぁ、ヴェルグに会わせるのはちょっと……」
「大丈夫だろ。前会った時は変装してたし」
「絶対気付かれるよ。彼女おっそろしい程勘鋭いし。虚数神殿から観測してたボクの視線に気付いたくらいにはすごいよ」
「そりゃもう確実に三人目だな」
「ねー」
大人しく黙っているファントムの四天王たち。
まぁこいつらに引き合わせるのはない。魔族だから。
……いや待てよ。
「疑念の塑像でお前達の人形を作って、それを操っていい感じの演出を……とかどうだ。それなら魔素も漏れないまま思う通りの指導ができる」
「いやいや、流石にボクやリザ達より、ワォスタクラインと聖王を当てた方が効率は良いよ。あと初代皇帝ちゃんも」
「できないのか、指導」
「ムリムリ。ボクは見ての通りだし、リザもクレイドルも……っていうかここにいる魔族に"他人に何かを教えた事のある存在"っていないんじゃないかな」
ふむ。
んじゃまぁ、決定か。
「ラヴ・グラットルの方はそれでいいとして、じゃあドゥームスどうするかー」
「どうしようねぇ」
「クレイドルから粗方聞いたけど、そんなに今にも動き出しそうな感じなのか?」
「精力的なのは事実だよ。フレースヴェルグを御して、コールドスウォームの噴火から逃げ延びた有力魔族たちも取り込んで。魔素で意識干渉ができなくなったとはいえ、そもそも魔素の制御はドゥームスの方が上だからね。彼ら彼女らの血肉にも等しい魔素を好きに操れるんだ、勝てる魔族はいないでしょ」
「こいつらは?」
「ボクが隔離してる。けど正面切っては無理じゃない? 今のドゥームス、飛来してきた時より強いし」
うーん。
外堀が埋まっているな。
「俺とお前で全力の時間停止またやるとか。アイツにだけ。それで……一日くらいズラして、十六手四面に襲わせて、ズレ直して出てきたらまた止めて……は、嫌だな。俺が時間的拘束食らうし。無し」
「自己完結したね。そしてボクもヤだよ。修行パートでも彼女の物語は見ていたいし」
「……放置は無しなのか」
「世界終わっちゃうでしょ。三度目の滅亡になるよそれは」
えー。
八方塞がりじゃん。
二人してうーんと悩む。
俺の研究。ファントムの趣味。ラヴ・グラットルの修行。ドゥームスの停滞。
全てを成り立たせる方法。
「……一個考えついた。が、お前の協力必須」
「長期拘束されない奴ならいいよ。どういうの?」
「ダンジョンの最奥の空間作ったのってお前だったよな」
「ああ、うん。まぁね」
「あれって要は歴史における一シーンを切り取ってあそこに張り付けている、って理解で良いか?」
「大体はあってるよ。ちょっと違うのは、歴史における一シーンというより、ダンジョンの意思を汲み取って、そのダンジョンの見ていた原風景を空間に落とし込んでいる感じだけど」
「つまり限定的なパラレルワールドだよな、あそこは」
「まぁ、そう、言えなくもない……かな?」
「俺この前ちょっとパラレルワールド行ってきたんだけどさ」
「ああうん、一瞬世界から君がいなくなった時があったよね。それがさっき言ってた別世界のボクがどうこう、って話かな」
「そうそう。その時に使った転移紋がな、もう起動しなくなってるんだけど、一応残してあるんだ。ちょっと解析してどういう原理か調べてくれないか」
「……えー。結局ボクの時間減るじゃん」
「まぁ聞けよ。確かに今お前が使える時間は減る。けどもっと楽しめるようになる」
「……まぁ、聞くけどさ」
マスカルウィン関連の話の時に図説したように、実は草案世界は二つ、ないしはそれ以上の数があると推察される。
その中に、少なくとも「マスカルウィンとユグドラシルが出て行った世界」が存在するはずなのだ。草案世界A──ある意味ではじまりの世界。そしておどおどファントムが言っていたように、草案世界ではフレースヴェルグが生まれない。俺も騎士団長も、そしてラヴ・グラットルも。
であれば、草案世界Aは──あるいはもう、落ちていると。ドゥームスの手によってすべてが魔化していると、そういう可能性もある。大いにある。違ったらそういう場所を探せばいい。
考えているのはパラレルワールドへドゥームスを追いやって、その間にラヴ・グラットルを作戦だ。ただ本編世界と同じような世界にドゥームス飛ばしても押し付けにしかならないしその世界に果てしない迷惑がかかるからやりたくない。
でもすべてが魔化した世界なら。全てがドゥームスの手に落ちた世界に、別世界のドゥームスがやってきたら。
対消滅する、とは考えない。
でもどっちかがどっちかを取り込む結果になるだろう、とは考える。
「それ、単純に二倍強くなっちゃうけど」
「ラヴ・グラットルをそこまで成長させればいいだろ。俺が魔素と魔族を切り離す研究を完成させさえすれば、俺が助力してもいい。心配することはない。つーか成長したラヴ・グラットルでも勝てない存在に成り果てたら、その時は俺がやる。ただ──」
「……まぁ、確かに。敵は強ければ強いほど、圧倒的であれば圧倒的であるほど……映えるよね」
「そういうこと」
ファントムは少し……というには長い時間だったけど、ひとしきり考えて、うん、と頷いた。
「ちょっと口車に乗せられている感じは否めないけど、それで行こっか」
「お前のちょろい所は好感が持てるよ」
「そういうのは口に出すべきじゃないよヴェルグ。……ただ、ボクだけ働くのは嫌だから、君にも手伝ってもらいたいんだ」
「……いや俺は俺の研究が。それに転移紋のことなんか俺何にも分からんぞ」
「バーグとして、彼女の師匠役の一人になってほしい。そして良い感じに裏切っていい感じに死んでほしい。恋愛的な好意を抱いていた自分より強い相手。それも恩人に近い存在が実は敵で、なんとか辛勝したらしたで実はどうしようもない事情があった……とかだと色々イイ。──わかるよね?」
わかるけども。
えー。
「折角なら彼女を凌辱するのもアリだね。年頃の少女だから、裏でそういうことをして来たらダメージは大きいだろうし」
「……我が主。カタルシスを狙うのであれば、ギリギリまでそういうことは避けた方がよろしいかと。日常的に手を出していたら、百年の恋も薄れましょう」
「あと単純に俺の好みじゃないんだよなラヴ・グラットル。俺元気っ娘苦手だし。幼すぎるし」
「君のフェティシズムは心底どうでもいいよ。ボクに欲情する変態な時点で普通の人間が性的対象にならないことくらいわかってるから。ただ役割として、バーグが裏切って……そうだな、一回圧倒的な力を見せつけて裏切って凌辱までして、姿を消して……ってのはどう? そこで一時離脱すれば時間も増えるよ」
「いやだから、勃起しないんだって。仮にラヴ・グラットルが俺の目の前で全裸でドエロイ踊りだのオナニーだのをしたとしても勃たないぞ」
「……はぁ。注文が多いなぁ。これだから人間は。……いいよ、じゃあアレとか。なんだっけ、魔王のペットの……忘れちゃったけど、でっかいウネウネで犯すのもアリ」
「ジャイアントアネモネか。まぁそっち路線ならイケるか」
ちゃんと痺れさせるなりなんなりしないとジャイアントアネモネが殺されそうで怖いけど。
うーん。
裏切り、なぁ。
こう……「ずっと仲間だったけど実は裏切り者だった」系で、且つソイツの実力が高すぎると、「いや仲間のフリしてないで全員後ろから刺せば良かったじゃん」って思っちゃうのは多分ダメなんだろうなぁ。特にこの世界裏切り者がいな……。
いやエリック・サンダーソンがいたわ。そういえばアイツだけか、ちゃんとした裏切り者って。グノーシスは単純サイコパス、ガーリーは野心漏れ漏れ。その中で燦然と輝くちゃんとした裏切り者エリック・サンダーソン。もう死んだけど。
えー。
でもなぁ。バーグに恋心だの親愛だのを抱いていた少女がバーグに犯されるの、ちょっと心苦しくない?
俺エロは純粋な快楽派なんだよね。いや石化とか固めが好きなのは確かにあるんだけど、NTRとかBSSとかの「精神に負担がかかるエロ」って苦手で……。
「好き嫌いが激しいなぁ」
「激しくなかったらそもそもこの世界に現れてないよ俺は」
「……それってどういう」
アダルトMOD入れる奴がエロの好き嫌い激しくないわけないだろ。
こだわりがあるからMOD入れてエロを楽しむんだぞ。別にグロテスクな世界をファンシーにする全年齢向けMODだって一応あったんだ、そういうのを選ばなかった時点でだろ。
「とにかくバーグで師匠して裏切るまでは良いけど、凌辱はナシで。やるとしても召喚獣だけど、多分やらない」
「まぁ、虐めすぎて折れられても困るからいいけどさ」
「加えて言うとラヴ・グラットルの仲間にヴァネッサっていう精霊遣いがいるから、最悪バーグで行ってもバレるぞ。ヴァネッサも流石に少しは成長してきてるだろうし」
「ああその子なら死んだよ。仲良くなった人の死。一緒にいた聖女の子も死んだ。死ぬような物語を組んだ」
え。
あ、マジ?
「……それ大丈夫か? 既に心折れてたりしないか?」
「見た感じは大丈夫そうだったけど」
「ちなみに心臓は残ってたりしないのか。つーかヴァネッサ死ぬってことは精霊が見放してないと無理だと思うんだけど」
「少し手こずったけど、精霊はしっかり隔離してからやったよ。心臓は確認してないな。魔物が食べたから消化されたんじゃない?」
「隔離したあと精霊の動向は見てないのか?」
「……まさか精霊がその子を蘇生させるって言いたいの?」
「というよりほぼ100」
「完全に死んだのは確認したんだけど」
「完全に死んでから蘇生させて自分たちを愛させたいって言ってたよ」
「うわー。……だから精霊って理解できないんだよなぁ」
「わかる」
とにかく、ヴァネッサと、ついでにポリウィックも生死不明判定だな。正直な話、ラヴ・グラットルにとっての「仲間になるNPC」枠であるヴァネッサとポリウィックがそう簡単に死ぬとは思えん。聖女は聖女で自己蘇生系のスキル持ってそうだし、ヴァネッサは蘇生されてそうだし。
……ラヴ・グラットルの心が壊れている可能性も考えて、二人の捜索もしておくべきかな、これは。
けーっきょく時間取られるんだよな。
「なんにせよファントム。お前が解析頑張れなかったら全部皮算用だ。解析する前にドゥームスがラヴ・グラットル潰しに行っても終わりだからな。早くしろよ」
「頑張るけど、本当に間に合わなさそうだったら頼んでもいい?」
「お前が俺に借りを作ることを良しとするならば」
「……何度も言うけど、ボクに生殖機能は無いからね?」
「なくてもできることはあるぞ」
沈黙。
四天王たちはファントムを守ろうとする……のではなく、俺へ奇異の視線を向けてきている。まぁMOD導入前にこういうこと言ってる奴がいたら俺もその目を向けてた。
けど今は見てくれだけはちゃんとエロいし、実体ないなら色々できそうだからヤってみたい欲あるしで……うん、結構そそられてんだよな。
「さて、そうと決まれば行動開始だな。さっき言った通り天界に出してくれ。あとは自力で回収して戻るから」
「はいはい」
足元に穴が開く。
ゲームの時から思ってたけど、この演出ちょっとコメディ表現寄りだよな。ここで足バタバタさせて上に泳いだりして時間稼いで、けど落ちて行って目だけ残って手で目を回収していくヤーツだろ。
猫と鼠見過ぎ。トマトゼリーだ。
「そんじゃあな」
「ばいばーい。さて、じゃあクレイドル。君はドゥームスの動向調査で、リザは──」
おー、ちゃんと組織の長してんじゃん、とか思いながら穴から落ちて行って。
純白の世界に、出た。
「……あら? 人間……にしては精霊力が」
「俺is蜃気楼」
メアリーの位置に転移する。
デカめの全裸美女天使。アレ多分熾天使の誰か。あびねーあびねー、あのままあそこにいたらまた天軍とのバトルが始まってたぜ。
二番煎じは別の奴とやってくれ。俺今忙しいからさ。