アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ 作:姫鼠まりあ
高ランク依頼という形を取ったラヴ・グラットルの修行──は、意外や意外、かなり順調に進んでいる。
つーかアモルファス聖の「人に物を教える」スキルが高い。ワォスタクラインはずっと孤高の戦士で、マスカルウィンは自由人。俺はまぁこんなだから、消去法もある……んだけど。
単純に組織のトップで、単純に元から多くを導いてきた実績があり、そして何よりも良い人。ワォスタクラインも良い奴なんだけど、まだ影を帯びることがあるからな。その点アモルファス聖に一点の翳り無し。──王国を滅ぼす気でいたこと、なんてのはおくびにも出さず、だけど。
"ストーリー"については……俺はあまり口を挟まない。
ファントムは俺に配慮とかしない。この調査地帯には普通に魔物が出現するし、魔族もいる。魔族……粉末魔素で魔化した人間を鹵獲したもの、らしいけど。
気は、乗らない。
ラヴ・グラットルのレベルは現在144。歳と冒険者期間から考えたらかなり高い。だけどせめて300……というか限界突破してLv.50くらいにはなってないとドゥームスにダメージ与えるとか無理。
このまま遅々として依頼お遊びを続けていたら絶対に届かない、ってこと。
ゲームにおいての経験値は魔物や魔族を倒さないと手に入らなかった……けど、同時にイベントでNPCを倒し、殺し切らなくても経験値が入る、ということはあった。ラムナザール四世は好例だろう。
それと同じで、ワォスタクライン、アモルファス聖、マスカルウィン、そして俺と模擬戦して経験値を稼いでもらう……が一番丸いし一番早いとは思う。
ただそれは"ストーリー性"が無いのだそうで。
ちょっとダルって思った。
「バーグ。そろそろだぞ」
「ああ」
そろそろ。
調査地帯。
そもそもこの高ランク依頼がなんなのかについては、少し触れておこう。
ファントムが"物語"のために用意した偽の依頼。だけど中身はしっかりとイベントイベントしているというか。
曰く──実は魔素源王の着弾地点が発覚していた、と。
よって俺達は山を越え山を越え──海は越えていない──、遺跡と洞窟とダンジョンを一つ越えて、そこに辿り着いたわけだ。
デルヴァーザン丘陵。
ゲームの頃にもあった場所だけど、どちらかというとこの先にある遺跡にあるアイテムを取りに行くために通る場所、という扱いでしかなかった場所。
それが今──。
「魔素が」
「ああ、所々魔素フィールドになっているな。……クライン、どう思う?」
「すべてに魔族がいるということはないだろうが、魔素フィールドを作り得るだけの強大な魔族が一人はいると見た方が良いのは事実だろう」
マップに映る赤点は無数にあるけれど、大きいのは四つ。
誰を当てるか知らないけど、流石に段階踏まないといきなり魔族は──。
ちゃんと、思いっきり、剣を振る。
「っ!?」
「──お前が防いだら意味がないだろう。退け」
「戦士スキル:軽量化」
「!」
テュアナの時にも使ったノックバック剣を左手に取り出し、その腹でそいつをぶっ飛ばす。
「バーグ!」
「すぐ戻る。お前達は拠点づくりにでも勤しんでいろ」
そのまま追撃する──ように見せかけて、さらにぶっ飛ばして声の届かない範囲まで行く。
「……何のつもりだ」
「お前こそ何のつもりだクレイドル。まさか自分の実力をわかってない、とか言うわけじゃないだろうな」
「あの人間に魔素源王を倒させるのだろう。お前こそまさか、今のように蝶よ花よと囲い込んでアレが強くなると考えているわけなかろうな」
「細部のやり方はこっちに任せるって話だったけど」
「同じだ。"やり方は任せるから納得の行くストーリーを作ってね"──それが我が主の命。故に一度、死の間際まで追い込む。それが俺のやり方だ」
あー。
ファントムくんさぁ!
「邪魔をするな、二人目」
「いや。ちょいと今回は本気で邪魔するわ。成り行きとはいえ完全に師匠枠に収まったんでな、ここらで力でも見せつけておくよ。狂戦士スキル:独擅場」
「──愚かな。狂戦士スキル:独擅場」
クレイドル。
容姿の話はそういえばしていなかったけれど、野性味溢れる黒髪の女性だ。言葉からして確実に男だけど、アダルトMODは全部を美女美少女化するのでそう見えるってだけ。元はミイラ……というか"顔を剥いだ剣豪の死体"みたいな見た目だったはず。
それが大きな胸と鍛え上げられた肉体を惜しまず隠さぬ野生児っぽくなっているのは、多分その戦い方に所以するのだろう。
前も述べた通り、クレイドルは魔族の身でありながら武芸に手を出した超高ポテンシャル+研鑽という化け物。ただし人間の中にある型で収まったわけではなく、「あらゆる技術を内包した我流剣術」のようなものを使ってくる。
あるいはその戦闘は、恐竜か何かが戦っているかのように映ることだろう。破壊痕がデカすぎて。
「デーモンスキル:魔域」
「聖騎士スキル:聖域」
「──良いだろう、千日手に終わるのは性に合わん。勝てぬとわかっている戦いに挑むのは久方ぶりだが、今ばかりは自らの快楽に興じさせてもらおう。魔素覚醒」
「マジで言ってる?」
テュアナ。ヒポグリフ。あるいはティル・ナ・ローグでのシーファ。
彼女らが使った魔素覚醒は、戦士スキル:覚醒の魔素版。つまるところ本気ってことだ。
すぐ戻る、って言ったんだけどな。
これはちょいと時間かかるかね。
「殺す気はない。それでも良いか、クレイドル」
「無論だ。俺とて我が主に背を向けるつもりはない。ただ──少しばかり、俺も楽しみたい。それだけだ」
「オーケーだ。それなら俺は気持ちを切り替えられる。ただ、それでもあんまり傷ついてくれるなよ。あんまり簡単に負傷するようならすぐにやめるぞ」
「彼我の差を考えれば当然とはいえ、舐め腐ったその言動には唾を吐きたくなるな」
逆手に持たれた小剣。
それが俺のノックバック剣の腹を捉え……おっとマズイ。インベントリにしまって事なきを得る。
「いきなりソードブレイクとはご挨拶だな」
「そのような小細工の剣を使っていないで、本気のものを出せ。魔剣ソロヴォリヨ。あれがいい」
「馬鹿言え、そんなの使ったらお前消し飛ぶぞ」
「それが舐め腐った言動だと言っているのだがな」
踏み込み。逆手で左手に持った小剣。その柄を右手で押して──ゼロ距離砲撃のような威力が俺の腹部に突き刺さる。
俺の身体に収まり切らなかった"威力"が背後の雲を割り、その威を示す……も。
「お前こそそれで本気かよ。ホーリーウッドの森でやった奴くらいじゃないとこっちは傷一つつかないぞ」
「……良い。──心の踊る化け物だ」
基礎防御力はそれ以下の攻撃力で行われた全てを無効化する。
今のは、たとえばアモルファス聖が直で食らえば胴体に大穴が開いていただろう威力をしていたけれど、俺の基礎防御力の前には無に同じ。まぁアモルファス聖はアモルファス聖でしっかり捌くだろうけど。
魔素覚醒。結構だ。けど独擅場と聖域、魔域のぶつかり合いでバフは魔素覚醒のものしかないのだから、その程度で俺の基礎防御力を超えられると思わないで欲しい。
とか思っていたら、クレイドルの雰囲気が変わる。
「剣士スキル:極彩色」
「へえ。良いスキル持ってんな」
「剣士スキル:遡上、焼刃、真雲、天辺」
野性味溢れる美女から、凛とした剣客へ。
戦い方を変えたのだとすぐに分かった。……これで全裸じゃなきゃ俺もノれるんだけどな。
「謝罪しよう。舐め腐っていたのは俺の方だった。
「良いよ、忘れてやる。これから来るのがお前の本当ってことにしてやる」
「感謝する」
声は背後から響いた。
肌を撫でる風。そして──斬撃。
防ぎはした。
威力はそこまででもない。ただ今のは……スキルじゃない。
ふら、ふらりと。
空中を踏みしめて、クレイドルはもう一度先程の構えを取る。逆手、左手に持った小剣。その柄を射出するために右手を添えたそのスタイルで。
「十字鎧!」
「──」
顔面。
顔の中心に向かって放たれたその突きを、防御スキルで防ぐ。
今のは危なかった。基礎防御力以上の攻撃だった。
けど、なんだ。今の一瞬で何が変わった。
「……ここまでか」
「ん、もういいのか?」
「これ以上やれば死ぬ。それは我が主の意に沿うことではない」
言って。
ぶしゃぁ、と……全身から大量の血液を吐き出すクレイドル。
最大主教スキル:完全再生。
「治癒など、必要はなかったが」
「俺が見てらんねーんだよ。……なんだ、自傷スキルかなんかか?」
「似たようなものだ。……いや、今更隠し玉が通じる相手でもないか。……それに答える。だからお前も一つ俺の質問に答えろ」
「ああ、いいよ」
「取引成立だ。……俺がしたことは単純、体内に抑え込んでいた魔素を爆発させ、加速力とした。それだけだ。その速さは音を超える……が、この肉体はそこまで強い作りをしていない。今のようにたったの二度で自壊する」
「諸刃の剣が過ぎるなそれは」
「だが……二人目のフレースヴェルグ。お前はどのようにして攻撃を防いだ。見えていなかっただろう。事実として、お前の眼球は俺の姿を捉えていなかった」
ああ、それは。
「動体視力と反射神経は別物なんだよ」
「……そんなことはないはずだが」
これはゲームシステムの話である。
本来、動体視力は反射神経に含まれるものだけど、このゲームでは動体視力はAGI、反射神経はDEXという割り振りが為されている。これが実際の戦闘にどうかかわってくるかと言えば、つまり肉体をどれだけ早く動かせるか、が変わるのだ。
見てから動く、ではなく、見ることと動くことが同時にできる。
勿論それは「ステータス」や「ゲームシステム」を理解している奴じゃないと無理だけど、自身のステータスが何に影響しているのかを知っていれば、使うスキルの選択や装備構成を見直すことができる。
クレイドルはSTR極振りに見せかけたスピードタイプ。カリギュラと少し似たステータスをしているから、「気持ちを切り替える」と言った時にはもう装備を変えていた。ショトカに入れてあるからな。
今の俺はDEXをかなり高めている。だから、「考えるより先に身体が動いた」を故意にできる。風圧や剣圧を肌で感じて、スキルを使う……までを反射的にできる。
俺が見たとか、意識したとか、全く関係なしに、だ。
「肉体の理解……ハ!」
「案外まだまだあるぞ、できること。技を極めるのも凄いことってのは理解してるけど、自分が何に長けているのか、自分の肉体はなんなのか。そういうのを」
「良い、言うな。自分で見つめ直す。……良い。本当に良い。眼球の動き。筋肉の使い方、呼吸、聴覚。……良い。まだ上があるか。ああ、良いな、それは」
「本来そういうのは弱い種族……つまりまぁ人間が気付いて積み上げていくものなんだけどな。お前みたいなのがやってきたら人間が届かなくなるだろうに」
「だが、お前には届いていない。……良いだろう、あの人間の育成法についてはもう口を出さん。俺は東の廃砦の最奥で待つ。至り得ると確信を得た時、来い」
言って転移かなんかで消えるクレイドル。
……やりたい放題か?
で、東の廃砦は俺がさっき挙げたアイテム取れる場所なんだよね。ラヴ・グラットルの修行中にこっそり行って回収してこようとか思ってたのがパァになったわ。
帰るか。
帰って来た。
帰ってきたら──ラヴ・グラットルが血みどろになっていた。
「何があった」
「あ、バーグさん! 良かった、無事で……」
「いやどうみてもお前の方が重傷……いや、返り血、か?」
「そーだよ! 今みんなで食料調達してて、ルウィンちゃんの発案で獲物の大きさ勝負になったんだ。それで、私が狩れたのがこれ!」
どさ、という大きい音の割に──そこに置かれたのは、無数の痣と砕かれた額が痛ましい女性。
既に死したそれ。
……仙人スキル:無の境地。
「トウゴツ、か」
「そういう名前なんだ」
「よっと……ありゃ、一番乗り取られちゃった。でも私の方が大きい……あ」
大きな音を立ててマスカルウィンが着弾する。
その肩に背負うは、少し浮いた位置にいる……少女の死体。首が無いだけで綺麗なその身体は、けれどだらんと垂れ下がっている。
光。転移の光だ。
でてくるのはワォスタクライン。彼は持ち上げていたソレを下ろす。
腕に翼の生えた女性。無数の切り傷と、心臓に入った刃幅の穴。
パピルサグもまたその口に女性を咥えて着地する。噛み痕の目立つ死体。
「我が最後であるか。やはり若輩、見習うことが多いな」
最後に来たのはアモルファス聖。ずりずりという音の割に、足を持って引き摺ってきているのは小柄な女性。傷は他の死体に比べて最も少ない──ように見えて、恐らく内臓が破裂している。
根本的な問題、かね。
魔物や魔族と言葉が通じることを隠したところで。
俺が見ている世界に変わりはない。
「あ……っと、その……」
「ルーファスさん、すごい! というかエレファント種なんていたんですね!」
「是である。それなりの群れであった。強敵も多かった故、あれらを狩って修行と為すのも良いだろう」
「クラインさんのは……レイドホーク?」
「我もその反応をした。見た目はレイドホークだが、大きさの桁が違う。そういうお前は、成程トウゴツか。中々珍しいものを狩ったな。トウゴツは喉元と胸の肉が美味だぞ」
「わ、楽しみ!」
人工聖石とは違う。
これは普通の会話だ。俺だってメアリーが調理したそれを食べている。
……。
「えっと……バーグさん、ちょっとこっち来て欲しいんだけど」
「なんだ」
「ルウィンちゃん?」
「あ、ごめんねグラットルちゃん。ちょっとバーグさんと今後の方針で話したいことがあって。先料理してて~」
「はーい!」
マスカルウィンに腕を掴まれ、引き摺られる。
抵抗はしない。
そのまま結構離れた所まで来て。
「人間。お前の視覚障害……まさかとは思うが、魔物が人間に見えているのか?」
「……唐突だな」
「視線の動きでわかる。わかるようになった。……成程、異族の女が隠していたのはコレか」
「……」
二周目のマスカルウィン。
隠しきれないか。オニキス・リオンにも何か察されていたみたいだったし。
「マスカルウィン。お前、普段からスキルのために人を食うような発言をしてるけど……実際食ったことあんのか」
「無い。あんなものはただの悪ふざけだ。真にその心があるなら、聖騎士、聖女、神官、司教……適当な人間を捕らえて食している」
「そりゃよかった。割り切れ、って言われたら流石に縁切ってたからな」
再生フェチと同じく、どうしても越えられない、超えちゃいけないライン。
克服するつもりはない。同じ理由で概念と対話することも諦めたんだ。食事に妥協する気はない。
ただそれ以前に……キツい、かもしれない。
このパーティにいるのが。
これから先も魔物の狩りはあるのだろう。なぜって食料だから。
それに一々文句を言っていたらキリがないし、どう考えても邪魔者は俺の方だ。
……早いとこ裏切って早いとこ死んで離脱するか。じゃないと無理だな、精神的に。
「人間。こっちを向け」
「ん? ──う」
突然キスされた。話の流れが流れだったから、口移しまであるかと思って身構えたけれど、そうじゃないらしい。
ただのキス。……なんだ、発情しただけか?
「契約スキル:五感共ゆ、うっ!?」
バチンと弾かれ、マスカルウィンが仰け反る。
……まぁやりたいことはわかったけど、ムリムリ。俺の精神耐性を抜けるものじゃあないし──何より魂に作用する系は、別のプロテクトがかかってんだ。
「なんだ、今の感覚は。……世界か?」
「そう感じたか?」
「……聖樹との世界渡りの際に感じた拒絶に似ている。世界そのものが異物を拒否するかのような、突然深海にでも放り込まれたかのような圧。人間。お前のその視界……まさか世界から呪われているのか?」
「いいや。自己責任……全部俺が悪いから、気にするな」
いやぁ。
自分で導入したからなぁ。これを世界のせいにするのはちょっと。
「異族の女に食事を作らせるか? お前の転移があれば」
「別に飲まず食わずでも一週間くらいはいけるから大丈夫。本当に腹減ったらお前の言う通りメアリーのとこに帰ってなんか食うよ。それに、この森には果実も多い。餓死はしないさ」
「……聖気を私が獲得して、私が魔素源王を倒す、じゃダメなの?」
「いきなり変わるなよ。んでそれはダメだ。この"物語"を用意した奴の思し召しに合わねーからな」
「そんなの知らない、って言うのもダメ?」
「ダメだ。まー心配すんなって。今更だから」
「……でも、ヴェルグさん……寿命、永いでしょ?」
「俺を何だと思ってんだ。人間だぞ。八十歳くらいで死ぬだろ」
「時たま下手になるよね、嘘」
いやいや。何をおっしゃいますかマスカルウィンさん。
俺は人間だって。
「いいの? ずっとずっとこのままで」
「良いも何も、ない。そういうものだ」
「……」
アダルトMOD。
確かに魔物に関しては弊害だけど、他の部分では大いに役立ってんだ。あまりそう邪険にしてくれるな、ってね。
「ほら、早く戻れ。俺が滅多に食事を摂らないのはラヴ・グラットルも知ってる。今回も食欲無かったで通せるだろ」
「……決めた」
「何を?」
「前……ほら、私がタイムカプセルを開封した直後、メアリーちゃんにお料理習ってたの覚えてる?」
「ああ」
「もう一回ちゃんと習い直して、ヴェルグさんが食べられる料理を私も作れるようになる」
「そりゃありがたいが、今はラヴ・グラットルだ。ラヴ・グラットルを育てて、魔素と魔族を切り離す研究もやって、完遂して、ドゥームス倒して……そっからでいいよ、そういう後々の話はさ」
ドゥームスも。
あるいはファントムも倒せば、この世界から脅威は取り除かれる。勿論完全な平和が訪れるかどうかは知らないけれど、世界規模で対処しなきゃいけないことはそうそう起きなくなるはずだ。
料理だの生活だのは、その時考えればいい。
「……一個気になったんけどさ」
「だから早く戻れって」
「バルクスちゃんは、どう見えてるの? ……明らかにヴェルグさんの好みの出た見た目してるのに、欲情しないとか言ってたのって……」
「あんまりうだうだ言ってると色情魔化させた状態であっちに戻すぞ」
「……精神耐性低下させる系のスキルもっと習得して、いつか同じ世界を見るから。覚えといてね」
「はいはい」
じゃあ俺も精神耐性もっと上げよう。
肌色率高めのこの世界を見られるわけにはいかないからな。
ラヴ・グラットルの成長速度が少し遅くなってきた。
レベルが上がったから、というのもあるだろうけど、ここらにいる魔物では彼女の相手にならなくなってきている……のと、アモルファス聖の教えが上手いせいだ。上手いせいで効率よくレベルが上がり過ぎて、逆に足りなくなっている。
「つーわけで、いい感じの裏切りシナリオといい感じのバックストーリー作ってくれ」
「それ君が考えるとこじゃないの??」
「うるせー、俺は作者じゃなくて読者なんだよ基本的に。ストーリーテラーはお前だろ」
「もー、ちょっと君の考える物語楽しみにしてたのに。ボクだって他人の考えた物語を読みたいんだけど」
「じゃあ世界の三流台本で我慢しろよ」
「それはムリ」
マスカルウィンが余計な気を回さないためと、俺が研究したいのと、確かに毎日アレだと気が滅入るってのの役満なので早急にファントムにストーリーを書いてもらいに来た。
「つーか、クレイドル出して良かったのか? ラヴ・グラットルが成長しきれば」
「殺される、って? それはそれで彼も本望だと思うよ。同時に、三人目にも勝てないなら、君に勝つなんて大言壮語吐いてる場合じゃないしね」
それはまぁ、そうだけど。
部下だろ。
「部下の望みを叶えるのが良い上司だよ、ヴェルグ」
「上司ならもっと部下を導いてやれよ」
迷いまくってんじゃねえか。
「それで……うーん、どうしよっかな。正直君が裏切って死ぬところについては、奇を衒うより王道で行った方が面白いと思ってるんだ」
「っつーと?」
「実は君が魔族の手先で、聖気を扱える三人目ちゃんを早い内から潰しにかかった。けれど予想以上の反抗に負けてしまう。それでも悪足搔きを続ける君に、三人目ちゃんが止めを刺す。……バックストーリーについては、君の仲間がドゥームスの手に落ちてるとかでいいんじゃない? 丁度フレースヴェルグがそういう状況なわけだし」
「適当過ぎないか」
「あ、しかもまだ三人目ちゃんはフレースヴェルグとヴェルグの違いを知らないわけだからさ。今から君がフレースヴェルグの仲間の魔族の……なんとかとなんとかの名前を呟いたりして伏線張って、その後フレースヴェルグと対峙して、なんで魔族になってるの、みたいな話になって……さらにさらに本当にその魔族たちが捕まってるって知ったら」
「ややこしくなるだけだろ。フレースヴェルグは何も知らないんだから」
「記憶失ってるってことにすればいいじゃん」
「いやアイツは記憶失ってるって言われても真っ向から否定するし、絶対こっちを疑ってくる。フレースヴェルグだぞ、ファントム。お前が思ってる通りの奴だぞ。思い出せ」
俺とファントムの脳裏に浮かぶフレースヴェルグは、まぁ多少違うのかもしれないけど。
概ね想像通りの──「面白さ優先して空気を読む」とかしない方のフレースヴェルグ。俺とは違って、ちゃんとこの世界を生きる人間だから。
「……はぁ。わかったよ。君個人で完結するような台本を書くから、君はその通りに演じてくれたらいい」
「初めからそうしてくれ」
「ただ、ちゃんとやってね? マギピコク役者はダメだよ」
マギピコク役者。
マギピコクという幻影スキルを使うクジャクの魔物がいて、そいつの使う幻影が色々過剰すぎたり下手すぎたりして簡単に見抜けることから。大根役者、あるいはHam Actorの意。
「はいはい。何万年と生きて来た大作家さんの素晴らしい物語を期待してるよ」
「ちなみに死に方の希望とかある?」
「んー。……まぁ王道で行くならラヴ・グラットルに心臓刺されて、が良いんだけど、アイツ格闘家だからな。バチボコに殴られるか?」
「普段から基礎防御力高いこと自慢してるのに?」
「……そこ含めてお前の仕事だよ。ヴェルグではないにせよ、バルクスを割断し得るようなバーグをどうやったらラヴ・グラットルが殺せるか。別にバーグが滑稽でもいいよ。自滅とか自爆とか。なんにせよちゃんと効果のある奴で頼む」
「はぁ。役者と脚本家は本来協力して然るべきものなんだけどね」
「じゃあ聞くが、お前役者と協力してストーリー作ったこととかあんのかよ」
「ないけどさ」
ほれみたことか。
……ま、その辺は信頼してるよ。俺が好きなこのゲームのイベントは、大体お前が作ってたわけだからさ。