※この作品はR-18です。

アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ   作:姫鼠まりあ

8 / 100
新たなる取引(G度濃い目)

 家族は家族。仲間は仲間。奴隷は奴隷。

 その辺のラインは結構しっかりしているつもりだ。待遇差というか優遇というか優先順位というか。

 だからどれだけ奴隷を買ってきてもケルを蔑ろにするつもりはないし、グレイスにどれほどの翳りがあろうと与える仕事を減らしたりはしない。個人差を、生まれ持った素質を考慮しない、というのは今の時代のコンプライアンス的にアレなのかもしれないが、誰に向けてのだよって話で。

 

 ただ、奴隷によって用途が様々あるのは致し方のないことだと思って欲しい。それは素質というか、商品価値なのだから。

 

 

◇

 

 

 ふぅ、と一息を吐く。

 

 掴んでいた腰を離せば、どさりとベッドに倒れ伏すグレイス。当然のようにマグロだったけど、まぁ見た目が良いので良し。

 アダルトMODと言っても感度3000倍とか一瞬でイかせられるとか、なんだろう、エロゲ目的で作られたゲームのMODってわけじゃないから、そういうのは入っていない。おせっせのモーション作るだけでもかなりの容量食うのに、一人一人のイキモーションイキ顔グラフィックなんかを作るとなれば、そりゃもうMODじゃなくてエロゲ作った方が早いってそれ。

 おせっせのモーションとおせっせの時の追加テキストが一人一人違うだけでもすげーことなのに、そこは求めすぎね。

 

 んでもって、ゲームの時には無かった、アダルトMODにもなかった――けれど普通に存在している媚薬の存在。どこの世界も考えることは同じってこった。今回使ってないけどいつか使うつもりはある。

 

「しかし、吸収無効オーラにこういう使い方があるとは」

「……」

 

 返事は期待していないからいいとして、独り言ちた俺の視線の先には白く染まったオティヌティヌ。

 そう、自身のオティヌティヌに魔剣士スキルの〇〇オーラ、その中の吸収耐性オーラ、そのさらに最終形の吸収無効オーラというのをかけておせっせしたら、なんということでしょう。

 

 膣の感触はあるのに、精子が零れないのである!!

 そもそも吸収耐性というのは、主に魔族……サキュバスやインプの類が使ってくるMP吸収に耐性をつけるスキルで、これを纏っているとMP、あとたまにいる吸血鬼とかからHPも守ってくれる優れものスキル……なのだが。

 成程、確かに女性上位のおせっせにおいては吸精とか言うし、本人にその意思がなかろうと膣で精子を受け止める、という行為は「吸収」に分類されるのだろう。らしい。ほんとか?

 

 とはいえ事実、ちゃんとおせっせをしたのにカウパーすらグレイスの膣に入っていないのは純然たる事実。なんという避妊方法。みんな、魔剣士スキルは育てた方がいいぞ!!

 

「おーいシーファ。終わったから、まぁ汚れちゃいないとは思うがグレイスを洗ってやってくれ」

「はいほい! ……あれまだビンビンじゃんご主人様。私とヤる? ヤる?」

「お前との性行為で魔素が漏れないかどうかの検証が終わったら考える」

「だから漏れないって~。……え? その検証どうやるわけ?」

「さぁな」

「それやらないって言ってるようなものじゃ」

「はよ風呂行ってこい」

「あ眷属の呪いズルいって!!」

 

 心が壊れていて家事炊事のできないグレイスは性奴隷。魔族でありながら魔素の漏れないシーファは研究対象兼雑用。種族が鬼であり、剛力であるツバナはケルと違った役職の戦闘員兼雑用。

 そんな感じで使っている。

 ただツバナは元が姫、というか姫候補で剣も弓もわからん奴だから、戦うっつったってゴリ押ししか無理。そこんところをケルに教えてもらうにしても戦闘スタイルが違い過ぎるから、今は戦いというものに慣れるため二人組でギルドの依頼を熟したりなんだりしているそうだ。

 

 よって相変わらず料理担当はケルのまま。ケルの休日を増やしたくて奴隷を買いに行ったのに、結果的にケルの仕事を増やしてしまった気がしていて頭を抱えている。

 ……シーファも料理はできるんだけど、如何せん魔族なのがな……。魔族は人間とは価値観も味覚も嗅覚も色々と違うので、美味しい料理を作るのは難しいのだとか。

 

 ツバナの戦闘を俺が教える、というのは絶対無理。だって俺型とか知らねーし。俺こそ究極のステータスゴリ押しマンだし。

 

 どーしたもんかなー。カラジェット君に頼む、みたいな手もアリではあるんだけど、そういう雑用的な依頼はあんまりしたくないんだよなー。これはただ俺のプライドというか勝手に感じている「イグニスはカッコイイ」みたいな英雄像の話ね。

 

 吸収無効オーラの効果が切れる前に俺もシャワーを浴びて精子等々を洗い流し、ふぅむと考える。ちなみに前に述べたようにアダルトMODのせいで男女差が無くなっているこの世界、当然風呂やトイレも男女共用になっていたんだけど、俺の倉庫にあった家具はMOD導入以前の物だったので、この家ばかりはちゃんと分かたれている。

 ケルにもリアにも奴隷にも「意味が分からない」という顔はされたけど。

 

「ねーご主人様ー」

「なんだ」

「グレイスちの心、癒してあげないの?」

「そんなスキルは持っていないし、なんなら俺がトラウマ持ちだ」

「別にグレイスち喋れないとかじゃないんだから、話聞いてあげるとかさー」

 

 ……。

 壁越しに聞こえて来たその提案に、ため息を一つ。

 

「俺、グレイスの声聞いたこと無いぞ。俺には喋ってくれん」

「ああ嫌われてるんだ成程。まぁ自分を性処理道具に使ってくる奴と喋りたくないかー」

「逆にどうなんだ。魔族は洗脳系スキルでトラウマを封印、とかできないのか」

「できる奴もいるんじゃない? 私は無理でーす」

「ちなみにどういう種だ? 最悪狩ってきて眷属にしてグレイスの治療に当たらせることも考える」

「んー、妖精とかじゃない? あいつら、ちっこいクセして自分の数十倍、数百倍ある相手を幻惑して仕留めてるからさ、そういうの知ってそー」

「妖精ね」

 

 妖精か。

 ……メンド。

 

 妖精。これはMOD導入以前は各色に光る玉で、死ぬと虫みたいなグロめの身体を晒す魔物だった。アダルトMOD入れてからはちっこい美少女だ。加え、一部のボス妖精には専用おせっせモーションまである。所謂オナホコキをする奴ね。

 ただひたすらに面倒くさい。今シーファが言った幻惑ならレジスト可能なんだけど、レベル差ステータス差関係ない状態異常系を一生放ってくる魔物で、しかも一回に遭遇する数がむちゃ多い。倒すだけなら範囲魔法ぶち込んで終わりなんだけど、生け捕りにするとなるとどーかなー。

 

 範囲魔法で消し飛ばしてから一匹だけ蘇生……うーん、エイルニルス公国で見せたのでわかってくれると思うんだけど、蘇生魔法って範囲指定なんだよね。要らないのも蘇りそー。

 

「サキュバスやインキュバスはどうなんだ」

「あいつらじゃダメだよ。あいつら相手の精気食べて殺すことしか脳にない色ボケだし。あいつらがやってるのは幻惑ってより夢渡り……対象が夢見てて、且つ入り込める余地のある夢じゃないと無理だから、多分グレイスちには手も足も出ないんじゃない?」

「グレイスの夢には余裕がないのか?」

「余裕ある子は心こんな壊れてないって」

 

 タカアシガニ。じゃない、確かに。

 

「そういえばお前種族なんだ?」

「ニンフだよーん」

「じゃあなんだ、歌唱系、踊り系のスキルはいけそうだな」

「行けるけど、なんか意味ある?」

「戦闘をな。仮に行う場合、どの役職か、という話だ。お前がバッファーでケルが遊撃、今修行中だがツバナが前衛、俺が治癒」

「絶対ご主人様の位置違うって」

「もう忘れたのか。俺は血が無理なんだよ。ああまぁ、最終手段でお前達ごと最大威力魔法で吹き飛ばして、あとで蘇生する、というのはあるが」

「げ、蘇生まで使えるとか……ホントなに? ご主人様って教会のお偉いさんだったりする?」

「そう見えるか?」

「全然」

「ま、想像は自由だ。勝手にしておけ」

 

 眷属の呪いって「無理矢理に相手を崇拝させる」くらいの効果を持ってるかなり強い呪いなんだけど、流石は魔族、全然効いてないな。多分屈服の呪いくらいまで格下げされてる。ま、その方が気楽でいいがね。

 

「よっし、そろそろ俺は仕事に行ってくる。言いつけさえ守ってりゃ何してても良いからな」

「はーい」

 

 仕事。

 ギルドの──ではない。

 

 ハルフィーポーションの運搬の仕事である。俺はアレを天職と定めたね、うん。

 

 

◇

 

 

 網籠に詰められていく、眠るように目を閉じた緑色の少女たち。勿論裸で、下半身は根っこみたいになっている。

 

「こっちがマンドラゴラ」

 

 その網籠には木の仕切りがいれてあって、もう半分に体色が青くなった似たような少女が詰められる。

 

「こっちがドリアード」

 

 蓋の為された網籠。その横には金属の鍋みたいなものがあって、そっちはもう既に蓋がされている。

 保存の関係上、そのままにしておくよりすり潰す方が良いんだってさ。すり潰す前のカタチは見ていないし、何の魔物なのかも聞かないことにした。想像しちゃうから。

 

「で、こっちが頼まれてたエッジスネークの防腐剤漬け。……大丈夫かね、アンタ」

「ああ、これくらい状態が良ければ気分が悪くなることはない。すまないな、気を遣わせて」

「いやぁ、太客との大事なパイプラインだからねぇ。アンタがいなけりゃハルフィーさんのトコと商売するなんて考えもしなかったわけだし、ちょっとくらい気を遣うさ」

「ありがたい」

 

 防腐剤。つまりホルマリンみたいなものなんだけど、あっちで言うホルマリンとは全く成分が違う。

 ミロクガエル、という寒い地方にしか生息しない蛙の魔物がいて、そいつは胃とは別に捕らえた獲物を保存しておく保存袋、みたいなのを体内に有している。その保存袋の中の液体は包み込んだものの鮮度や状態を限りなく保ち、且つ特殊な液体──つまりミロクガエルの体液──でしか洗い流せないという特徴を持っているため、長距離運搬や鮮度命の食材・素材の保存にはもってこいなんだとか。

 

 一応、そういう話を聞くのが初めてだったから、一応、一応な? ミロクガエル、というのを見せてもらった。殺しているわけじゃないって言ってたから大丈夫だと思って。

 そうしたら……なんだろうなぁ。本来カエルに乳房ってないんだけど、なんかあってさ。緑っぽい体色の女の子が、右乳から青い液体、左乳からオレンジの液体を絞られてた。

 

 これは、正直興奮したね。うん。いや普通に搾乳だし。

 ただ説明は聞かなきゃよかったとは思ってる。曰く、その通りカエルに乳房なんかないから、生(・)き(・)た(・)ま(・)ま(・)膨(・)ら(・)ま(・)せ(・)て(・)穴(・)を(・)開(・)け(・)て(・)管(・)を(・)通(・)す(・)のだそうだ。つまり無理矢理乳房を作って、乳首を作って、そこに管を通して胃液と保存液を取り出している、と。

 う、うーん。

 これらは別にミロクガエルにとって快楽のともなう行為というわけでもないらしく、なんならちょっと苦しそうな声を上げていたので早々に切り上げた。

 

 とまぁそんな保存液に漬けられているのがエッジスネークと、こっちも魔物だから全裸少女。体育座りor三角座り。実際はもっとぐにゃぐにゃさせられてるんだと思うけど、アダルトMODを通しているからこう見えているんだと思う。元通り身体をぐにゃぐにゃにされた感じになっていなくて感謝。

 ……そういうフェチは、実はあるんだけど。まぁまぁまぁまぁまぁまぁまぁまぁね?

 

 エッジスネーク自体はあんまり特徴のない魔物だ。背中に刃持ってる蛇。強さはそこまででもないけど、攻撃が全部裂傷判定持ってるから対策してないとダルいくらい?

 アダルトMODを通してみると、その裸体の背骨部分にギザギザと鋸状の刃が付いてる感じになっている。こっちはぶっちゃけ普通に可愛い。……死んではいるんだけど、状態良いからサ。

 

「んで最後にこの壺が大目玉。これはウチで新しくやるつもりの素材で、ハルフィーさんに買ってくれるかどうか打診するための試供品ってトコかね」

「俺は聞かない方が良いものだな?」

「流石に察しが良い。いいかい、これはアンタのためを思って言うけど、ハルフィーさんにも中身の概要は聞かない方が良い。ウチらが今まで見て来たアンタの観察結果を考えるに、運ぶのも嫌になるレベルの代物だ」

「忠告、本当に感謝する。礼と言ってはなんだが、返事を貰えたらその日のうちに届けよう」

「……毎回思っちゃいるけど、俊足が過ぎるって。まぁ忠告はしたからね」

「ああ。それじゃあ」

「あいよー。アンタに言うことじゃないが、気をつけてなー」

 

 並べられた商品を全部インベにしまって、走り出す。インベの中は揺れないので壊れ物とか気にしないで良い。出す時ちょっと気を遣うくらいだ。

 

 いや、いや。

 なんというか……良い商売人の元にはいい商売人が集まる、というかさ。あの人たちは一応農家? 畜産業家? になるんだろうけど、気のいい人ばっかでマジで心が和らぐわ。

 マジ天職。いろんなところ行けるし、正直状態の良い魔物素材はエロいと思ってるし。バッキバキになったらグレイスで処理すればいいし。

 

 生活、安定してきましたねぇ!

 

 

◇

 

 

 とかそういう事思っちゃいけないんだよね。フラグって言うの。

 

「……参った」

「フハハハそうだろうそうだろう! この状況! 絶望しない方がおかしい!」

「いやそうじゃないんだけど……どうするかなぁこれ」

 

 雨降り出してんなー、とは思ってたんだよ。ただ特に関係ないからそのまま突き進んでたら、前方に竜巻が現れて、中から全裸少女が五人現れて。面倒に思いながらサーチのスキル使ったら「フロストドラゴン」だってさ。こんなナリしてっけどフレイムドラゴンと同格の奴で、しかも五体。

 これ帝国に持ち帰るのはアレだよねー。

 

「あー。何か用か、とだけ聞いておく」

「我ら魔物が人間を襲うのに理由が必要か!?」

「そりゃごもっとも。だけど五に……五体で来るくらいだ、俺になんか思うところあるんじゃないのか」

「自意識過剰な人間だな、と言ってやりたいところだが、その通りだ。お前からは強者の匂いがする! ゆえに我らは全力で貴様を狩る!」

 

 彼我の差わかるタイプってことは、少なくともこの前のフレイムドラゴンより強いな。少なくともっつーか遥かに。そんでもって群れで行動してて、ちゃんとリーダーが話している間は喋らない部下共。統率が取れてらぁ。

 

「む? そういえば貴様、言葉が通じるな。下劣で下等な人間種族の癖にやるではないか!」

「まぁ俺はちょいと特殊でね。そんで、俺はちょいとハンデがあってさ。まともに戦えないのよ。血を見るのが苦手でね、できることならお前らを斬りたくない」

「フフ、フフハハハハハ! その驕り高ぶった言葉! そんなことを言っていられるのも今のうちだ! 見よ! 天を! この暗雲の立ち込める領域、その全てが我らフロストドラゴンの支配下! どこに逃げようと隠れようと、この雲が獲物を逃すことはない!」

 

 当然だけど聞いちゃくれねぇ。

 いやまぁ全裸美少女に見下されてるのは……まぁ悪かない気分なんだけど、この後のことを思うと憂鬱で憂鬱で。

 

 どうする? 多分グラとコリジョン違うから、見えない部分だけを切り落として勝つ……とかいけるのか? 見えない部分斬ったら本体に傷ついたりしない? しそう。

 エグいなー。……スーパーノヴァで消し飛ばす、がぶっちゃけ一番良いんだけど、周辺に誰もいないかどうかの確認ができてない。っつーかいるんだよななんか。林の中に青点が。もし助けようとしてくれてんならマジでやめて。逃げて。邪魔すぎる。

 

「……彼我の力量差がわかっていて挑む理由はなんだ、フロストドラゴン。五体集めれば勝てると本気で思っているのか?」

「不遜。不遜だなぁ人間! 数日前にフレイムドラゴンのチビが人間に殺されたと聞いたが、まさかその参加者か? クク、あの程度を殺して調子に乗っているようでは」

「魔剣士スキル:ダークオーラ」

「──……ッ!?」

 

 ぶわっと。

 周囲一帯、今しがたフロストドラゴンが「支配下に置いている」と言っていた領域を覆うレベルの範囲に、闇が満ちる。魔素とは違う闇色のオーラ。闇属性の気配をふんだんに含んだそれは、彼女らの目から見てもわかることだろう。

 明らかに俺から発されていて、明らかに易々と自分たちの命を摘み取り得るものであると。

 

 まぁこれただの強化スキルなんだけどね。これ纏った状態でやるスキルが強いのであって、このスキルに威力は存在しない。

 ただ威圧にはなんじゃねーかな。フロストドラゴン達の様子を見るに。

 

「こ……れは」

「もう一度言う。俺はおまえ達を斬りたくない。だが、ここが回帰不能点(ポイント・オブ・ノーリターン)だ。食料目的でなく、ただ"魔物であるから"、なんて軽い理由で俺に手を出すのならば」

 

 さらにここに、戦士スキル:重圧を重ねる。こっちはれっきとした威嚇スキルね。レベル差在り過ぎる相手を逃がしたり、格上相手のヘイトを買ったりできる。

 

「本当に、容赦はしない」

 

 ……頼むから逃げてくんないかなぁ。

 

「ま」

「ま?」

「ま──まぁ! 餌は別に、他で調達すれば良いことだし! 別にお前でなくともよいし! そうだ、確か近隣にある程度人間の集まった巣があっ──」

「魔法スキル:ブラックホール。……あと、魔法スキル:バインドプラント」

 

 声も無く。断末魔も無く。

 ただ悲壮な顔で、「なぜ」という口の形で……闇属性の超引力に飲み込まれて行くフロストドラゴン達。ついでに周囲の青点も飲まれかけるけど、素早く出した拘束魔法でひっ捕らえてこっちに連れ戻す。なんだこいつらほんとに。フクロウの仮面? どっかの国の暗部かなんか?

 

 急速に闇が収まる。晴れる。

 あとに残ったのは。

 

 ──掌に収まるほどの球形に圧縮された、ぐちゃどろの血肉のカタマリ。

 

 仙人スキル:無の境地。

 

「……アンタらが何者なのかは知らん。助けてくれようとしていたことは伝わった。だが不要だ。これ以降俺に近づくな。邪魔すぎて困る。……ソ(・)レ(・)をフロストドラゴンの素材だと認識できるのなら、使えばいい。じゃあな」

 

 ソレを、腰が抜けて立てないでいる集団に投げ渡し、バインドプラントを解き。

 立ち去る。……無の境地が切れる前にハルフィーさんに会って、家帰ってトイレで吐こう。何、効果時間は把握してるからな。急げばいいだけの話だ。

 

 ……俺に近づくな、って。今時の厨二キャラでもコメディリリーフくらいでしか使わんぞ。

 

 

◇

 

 

「……頭領。ありゃ、いったい……」

「ハルフィーさんとことの繋がりだ、絶対に死なせちゃならねえと来てみれば、とんだ化け物が運搬業なんてものをやってたねぇ。……元からそのつもりはないが、怒らせるようなことは厳禁だ。全員に通達しておけ」

「はい。……この元ドラゴンは、いかがしましょうか」

「とりあえず体液抽出すりゃなんかの役には立つさね。……それより、なんでいきなり攻撃したのかがちょいとわからんな。逆鱗はできるだけ踏みたくないんだが……」

 

 フクロウ面の下で、農家──正確には元ある国の軍隊、現農家な男達がうーんと考える。

 

 ただ、答えがわかる者はいなかった。それはそうだろう。

 

「というか頭領、オレにゃあの人がフロストドラゴンと喋ってるように見えたんですけど、気のせいですかね」

「可能性はゼロじゃあないが、判断のしようもないし、聞いたりすんじゃないよ。ウチらは友好的な取引先として今後もやってくんだ。今見たことの他言も無用。いいな」

「了解です」

 

 散って行くフクロウ面の男達。

 頭領と呼ばれた男はただ一人、ハルフィーポーションとの運搬を受け持つ彼の背を遠くに見やる。いいや、もう見えはしないが──。

 

「血を見れなくなった、化け物みてーな強さの冒険者、ね。……聞き覚えしかなくて本当に困る。ま、当事者は全部を忘れるのが吉さね。さぁ仕事仕事」

 

 そんなことを。

 

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