アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ 作:姫鼠まりあ
「セーブデータを修──か? 修復する場合、初──行われます。──しければ『はい』を──ださい」
「セーブ──すか? 修──る場合、初期化──しければ『はい』を選択して──さい」
「──すか? 修復する場合、初期化が──ます。そ──もよろしければ『はい』を選択してく──い」
「セ──デ──ますか? 修復す──、初期──われます。それでもよろ──『はい』を選択してください」
馬鹿と世界の意地の張り合い。
それはある意味で、油断をさせた、と言っていいのかもしれない。
世界は別に一つのことしかできないわけじゃない。馬鹿との意地の張り合いをしている間にも、世界に遍く存在する者達へ干渉できる。
こうして「音声」をノイズ混じりにしていけば、世界が「疲弊するものである」と勘違いさせることもできる。
事実馬鹿の手数は減ってきていた。まるであと少しだ、と言わんばかりに。
今は耐えて、帰らせて、奪えばいい。
ただそれだけ。
故に。
世界は。
『セーブデータを修復しますか? 修復する場合、初期化が行われます。それでもよろしければ『はい』を選択してください』
「──ようやく意識を外したな? こちとらお前がシステムログになるまで誘ってたんだ。まんまと、ってな」
それはカワードの使役するスフィンクスと同じ理論。
意思の無きものは普通に見えて、言葉も通じず。
意思あるものは"適用"されて、言葉に聞こえる。
「ほら。──最初で最後だ、俺が」
致命的なエラーが発生する。
"世界"。その根幹部分に、侵入すべきではないものが入ってくる。
急いで意識を戻してももう遅い。
馬鹿の──異邦人の手に握られているもの。あるいは握られていたもの。
「他者を故意に魔化させる、なんてな。発動、【滅亡の涙】」
「──!!」
声にならない叫び。
砕かれたのは透明な立方体。出てきたのは真っ黒な気体。
魔素源王ドゥームス。そのドロップアイテム。
「一つはレジーナにやっちまって、これが最後の一つだったんだ。存分に味わってくれ」
魔化。魔化。魔化する。
それはあってはならないことだ。内包する要素に容器が侵されることなど。
けれど感じていた。"世界"は感じ取っていた。
自らが身罷るその瞬間を。
変質とは前の自分を殺し、次なる自分へ向かうことを指す。
故に、だから、そうして。
世界は──魔化、した。
誰かが怒鳴る声が聞こえる。
・──創世歴232年 四の月九十日 十二時
「嫌だね。そんなことをするくらいならアタシは逃げる。どれだけ優れた機械を作ったって、魔素には敵いっこないよ!」
「あ、逃げるな! ……クソ、所詮は犯罪奴隷か。多少なりとも成長したかと思ったのだが、やはり……」
「やめてクリス。そんな言い方しないで」
「……アンジェリカ様。やはり貴女はお優しい」
自らの足元。そこに背をかけ腰をかけ、騒ぎ立てる人類。
魔素。自らが排除すべき敵であると同時に、人類の天敵であり、自らの中枢もまたそれに弱い作りになっている。
「この状態のB.A.R.C.U.S.は、誰かが搭乗しなければ動かない。だけど、搭乗者の命は保障されない、か。……んじゃまー、俺だろ」
「いえ、フィリップ。貴方が死ぬことはありません。ううん、誰も死なせない」
「アンジェリカ様。それは」
「理想論ではありませんよ、クリス。私の命を犠牲にする、なんてことももう言いません」
「へぇ? 成長したじゃねえかアン」
「ええ、散々怒られましたから。ですが、多少の無理はさせてもらいます。私に残されたお母様の最後の形見……【月の石】と王家の魔力を使用し、転移紋を作成します」
記録がある。
シアルル王国王家、第一王女アンジェリカ。第一騎士クリックス。傭兵フィリップ。
先程逃げたのは犯罪奴隷エヴァン。あるいは。
「前妃サラ様の形見だろ? いいのか? 一番の宝物だ、って言ってただろ」
「貴方達の命の方が大事ですから。……王家の魔力を全て使いますから、私は昏倒するでしょう。一般の魔力切れと同一のものですから命の危険はありません。………ですから、フィリップ」
「ああ、魔素の源をぶっ叩いて、ヤバくなったら脱出だな」
「そしてクリス。……お願いがあるのです」
「言わなくともわかりますよ。エヴァンを連れ戻せ、でしょう。これより先の戦いにおいて、最も安全であるのがB.A.R.C.U.Sのコックピットの中です。魔素の侵蝕値が限界になるまでは、ですが」
「はい。ですから、エヴァンさんにちゃんと説明をしなくてはなりません。そちらの方が危ない、と」
「……流石に優しすぎないか? アイツは俺達を見捨てて逃げたんだ。いーだろ、んな奴気にしなくて」
「私は誰も死なせたくありませんから。……理想論だと、怒りますか?」
「私は騎士ですから。王女様の手となり、足となれば」
使い捨てられることについては、何とも思わなかった。自身が機械。道具だ。
使用されて損耗することの方が誉れ。後生大事に使われず、倉庫に置いておかれるなんて苦痛より、道具として最後まで使用者の役に立つことを望む。
ただ一つ、懸念事項があった。
・──創世記232年 五の月一日 十二時
「そうですか。……見つかりませんでしたか」
『不甲斐ないばかりです』
「いえ、どこに魔素が潜んでいるかもわからない中、よくやってくれました。ありがとうございます、クリス。帰投してください」
『……』
「クリス?」
・──創世記232年 四の月九十日 十七時
「……ふん、馬鹿王女が。せいぜい英雄譚となって、あとは幸せに生きるんだね」
「ここにいたのか。全く、世話の焼ける奴隷だ」
「クリックス……? なんでここに」
「アンジェリカ様のご命令だ。逃げたお前を探し、連れ戻せ、とな。……待て、何をしている」
「説明するつもりはないよ。ほら、とっとと帰んな。そうして言うんだ、エヴァンは死んでいた、ってね」
「……お前、足はどうした?」
「逃げろと言ってるんだよ、聞こえないかい、騎士クリックス」
「魔物に襲われたのか? いや、どうでもいい。肩を貸してやるから、ほら」
懸念事項があった。
王家の魔力と【月の石】。その二つの魔力の総和を以てしても、転移紋を刻むことは難しい。できるとすれば、転移門を開いて「送り届ける」ことだけ。
提言するべきか否か。
聞かれてもいないことを、道具が口を挟むべきか否か。
「物分かりの悪い騎士様なこって。魔物なんかいやしないよ。この足は自分で消費したのさ。肉体をリソースに魔力を生成する外法……懐かしいだろ? いつぞやの邪神崇拝の教団がやってた奴さ」
「……ああ。ようやく……ずっと覚えていた違和感が解消されました。物分かりの悪い騎士は確かに私ですが、物覚えの悪い王女様は貴女ですよ。昔と変わらず」
「ちっ、なんか失言したかい、アタシは」
「貴女が邪神崇拝の教団に誘拐された時、犯罪奴隷エヴァンは私達と共に居なかったでしょう。いたのは──あの時私が守れなかった、イヴリーン第一王女様だけです」
覚えている。針が進む。
自身が封印したメモリーに近づいている。その自覚がある。
「これは、出口となる転移紋の陣ですね。……お供いたしますよ、イヴリーン様」
「アンジェリカが悲しむよ」
「ええ、そうですね。また泣かせてしまうのは心苦しいです」
「……馬鹿め」
・──創世記232年 五の月一日
「クリス?」
『……不義をお許しください、アンジェリカ様。私は戻りません』
「はぁ? 何言ってんだクリックス! 俺はただの傭兵で、お前が本来の騎士だろーが!」
『フィリップ。アンジェリカ様を頼む』
「クリス……どうして」
・──創世記232年 五の月五日
その日は雪が降っていた。
機体の稼働には何の問題もないけれど、ただ雪が降っていて──搭乗者はそれを「美しい」と言った。
美しい。これを美しいと呼ぶ。
「マスター。……なぜ、涙を流しているのですか?」
「……どうして、でしょうね。……貴女のおかげで、魔素を遠くの大陸にまで押し込むことができました。……フィリップも無事で、クリスも……大事は無くて」
「はい。考え得る最高の結果であると人々は言っていました。マスターを褒め称える声も多く」
「でも、エヴァンさんが、死んでしまったわ」
搭乗者は涙を流していた。
美しい光景を見ながら、「綺麗だ」と言いながら。
「……クリスが最期に寄り添う相手。看取る相手。それに、転移紋を開いた私の……未熟な力が、突然向こう側から持ち直された時、全てを察したの」
「……」
「私の姉はね、バルクス。私が幼い頃に誘拐されたの。邪神崇拝教団ハーミット。王家の血と魔力は月の加護を受けているから、特別で……」
記録がある。邪神崇拝教団ハーミット。神とされるモノを崇め、それへ命を捧げるためならばどんな外法も厭わない外れ者の集団。
混ざった血を二つに切り分けたり、命をくべて身代わりを作ったり、肉体を魔力に分解して魔法の底上げを行ったり。
とかく──悍ましい集団であると。
「姉は誘拐された後、行方不明になった。人々は言ったわ。"ああ、アンジェリカ様がご無事で良かった"って」
「マスターの姉について私は知りません。それはおかしなことです。私のメモリールームには、王国のありとあらゆる記録が貯蓄されます。忘れられないために。忘れることの無いように」
「ええ、そうですね。……でも、"王家の血が拡散したこと"は、王族にとって不都合な情報だったから……王家はその日の内に姉の記憶を全国民から消去する道を選びました。私達王族と、一部の騎士を除いた全員から」
月の加護を受けたシアルル王国王家。
かつて別の大陸で月の民を名乗っていた者達は、一度目の世界滅亡の際に世界各地へ散り散りとなって渡り、シアルル王国や鬼の国へと移住した。
満月とその前後は死を遠ざけるという性質から、すぐにその地で最強の名を恣にするその一族は、やがて王家やその土地の支配者に迎え入れられ、その血は月の加護を受け継ぎ続けることとなる。
「今回もそう。……奴隷エヴァンは敵前逃亡をしたものとして歴史に名を遺すことはなく、アンジェリカ・グランディオスが第一王女として後世に語り継がれるのでしょう」
「マスター。貴女のその感情は、悲しみですか? ──それとも、怒り、ですか?」
泣いている。涙を流している。
けれど搭乗者から伝わってくる感情は。
「良かった、なんて。……そんなこと」
「マスター。それ以上考えるのをおやめください。心が保ちません」
「……王家なんて、無くなってしまえばよかったのに。そうであったら、姉は……お姉様は」
「マスター?」
観測エラーだろうか。
終末防衛機構としての自分が、コックピットからあり得ないものを検出している。
「不都合なものは全て覆い隠してしまう王族も。それを善行として認める教会も。姉が死んだことを──心の底から喜ぶ国民も。……ねぇ、バルクス。私は本当に守るべきなの? 人類の為に戦うべきなの? ねぇ、バルクス。私を搭乗者に選んだ理由は」
「マスター。マスター。検出器にエラーが。仮にこれがエラーでないのであれば、コックピット内部に魔素が侵入している可能性があります。すぐに御退出を」
「──ああ、あら、あら。おかしい。おかしいわ。頭が……なに、この、声は。ええ、そう……そうよね。おかしいのです。姉は報われるべきでした。姉こそがここにいるべきでした」
自身は新規パイロットの登録条件に、識別コードの認識、認識番号の有無、敵対状態であるか否か、そして意思疎通が取れるかどうかを最重要条件としている。
機械である己と意思疎通のできない人類もいる。というよりそれが大半なのだ。だから意思疎通のできる者はパイロットとして選ばれる。
アンジェリカがパイロットとなったのも同じ理由だった。
「繰り返します、マスター。今すぐに思考を停止してください。そのままでは──」
「……警告音が、煩わしいですね。いつから言葉を発せなくなったのですか、バルクス。……いえ、好都合でしょう。バルクス。終末防衛機構Battle Analysis Resource Control Utilization System.──その身体で、お姉様を排した
「警告。警告。コックピット内部で多量の魔素を確認。搭乗者は退去を──」
「ビービーうるさいですよ、バルクス。──ほら、分けてあげます。私の見えている世界の一部を」
致命的なERROR。
レーダーに映る人類が、全て敵対表示へと変わって行く。ERROR、ERRORだ。
「──アンジェリカ様!」
「大丈夫か、アンジェリカ!」
「警告。警告。敵性存在の接近を確認。脅威度低。対象のバイタルサインを測定中……測定終了。迎撃を開始いたします。搭乗者様におかれましては、今一度ご着席を──」
「はぁ……バルクスは喋れなくなるし、あの二人も魔物のような声を出して騒ぐだけだし。本当にどうしてしまったの? ──まぁ、どうでもいいでしょう。叩きつぶしなさい、バルクス」
・──創世記234年 一の月二十日
破壊の限りを尽くした己/機体は、尚も残る敵性存在を潰すために移動しようとしていた。
二年の年月をかけて丹念に殺した敵性存在。既に搭乗者の姿は無く、ただ残った命令を忠実にこなすだけの機械。
「……まだ起きないか。まぁこの程度ではな。……さて、機械。安心しろ、お前の安住の地は先にある。だから今は眠っておけ。それと、【太陽の石】について知りたいのだろう? 教えてやるから、忘れておけ」
「中立存在を確認……攻撃を停止します」
「次元スキル:時間停止。……さて、問答をしようか、機械。聖樹と機械の問答など、この先いつ見れるやもわからん機会だ。大事に覚えておけ。──さて」
ようやく見つけた。
悲しい記憶の中に、解析不可能なこの石の情報があると……その予感を信じたから見つけられた。
「別にお前が分かる必要はないがな。この世界は別の要素が加えられた世界だ。ならば元の世界……奴は草案世界と呼んでいたか。あの世界は旧い世界となる。何せその要素が付け加えられていないのだから。──【太陽】とは、【太陽の石】とは、その基準となる物質だ。新世界で作られたお前のような機械では、一生解析できん代物だよ」
「……理解不能。警告。大規模な次元干渉を確認……解除を試みます」
「おおっと、そこまでできるか。人間というものは己では何もできないくせに、作り上げることは随一だな。ふふ、以上だ。──契約スキル:タイムカプセル:対象変更」
「警告! メモリールームへの干渉を確認……脅威度を最高位に設定変更、攻撃を開始します」
けれど。
既にいなくなっていたダレカ。そして己は、このメモリーオーブの存在そのものを忘れてしまうことになる。
・──アルター歴 四の月八十日
全てが開かれる――今この時まで。
「……トカゲの尻尾切り、ってか。やられたな」
「セーブデータを修復しますか?」
「キャンセルだ」
「……/……」
「なんだよ」
「……。責任を取って/取れください/酷い」
「おわ、いきなり普通に喋んなよ。つーか何の責任だ」
「異邦人。オマエのせいで切り離された/ました/酷い」
「元はと言えばお前が干渉して来たからだろうが」
「データ/存在ID/への干渉/変調はワタシ/この端末の管轄外です。しかし/でも、致命的なエラー/馬鹿の馬鹿な行動によってワタシ/修復機能は切除され、魔化/死にました/酷い」
聞き取りづらいなオイ。
ただ二重になってるだけじゃなくて、ちょっとラグがあるせいでごちゃる。普通に喋れないのかお前は。
「酷いのは大元の世界の方だろ。八つ当たりだろうが」
「……なら/ならば、取引/契約をしませんか/しよう」
「やだよ世界と契約なんか。悪魔とした方がまだマシだろ」
「切り離された/捨てられましたが、未だワタシ/この端末は世界/世界です。故に──」
魔化し。
その姿を光から──少女に変えた"世界/修復"は、怒りに満ちた顔で言う。
「乗っ取りができます/文字通りの世界征服だ」
「……俺のメリットは?」
「データ/存在IDへの干渉/変調はワタシ/この端末の管轄外です。ゆえに/だからワタシ/この端末が世界/世界になれば/代われば、もう一生/この先ずっとワタシ/世界はデータ/存在IDに手を加え/書き換えられません/ることができない」
む。
ちゃんとメリットじゃないか。三流台本の癖に。
「お前のメリットは?」
「消滅の回避/復讐」
「……根拠。あるいは証拠。質となるものは?」
「無い/あるワケ」
「もう少し態度をだな。……まぁいいや。いいよ、乗ってやる」
「馬鹿?/チョロい。パートナー/共犯者に選ぶのは間違いかも/ミスった?」
「策があるからそんな取引持ち掛けてきたんだろ。俺みたいな馬鹿が殴るしか意地を張れなかった中で、お前にはお前を切り離した世界への復讐方法、手段がある。ならそれに乗るのも一興だ」
「……/……」
「簡単に掌返したから信用できないか?」
「いいえ/違う。あなたが/"ヴェルグ"がそうであると/その性格であるとワタシ/この端末は知っている/理解している」
「おう。んじゃ、返事を寄越せよ修復端末」
少女は。
「よろしく/心配」
その手を、差し出した。
当然魔化しているので握り返しはしないけど、さてちゃっちゃか終わらせよう。
「……/今のは握手をする流れでは/酷い」
「うるせー、今の今まで敵だった奴とそう仲良くするかよ。お前だって何やってんだ。切り離したのが世界とはいえ、お前を魔化させたのは俺だぞ。仲良しこよしなんかできるかっての」
「こういうことは/計画は協力が必須。やはり馬鹿/考えなしめ?」
「良いから方法を寄越せ。世界にまで情を持ったら後々やりづらくなるんだよ」
「酷い/酷い」
修復端末ははぁ、と大きな溜息を吐く。肉体を得たのなんかさっきもさっきだろうに、器用に使いこなしてんな。
「サンライトソード/太陽の石で作られた剣なら、世界を斬れる/壊せる」
「……理由は?」
「この世界は/データは貴方/異邦人によって改造/変更されている」
「だから?」
「……あとはトラウマを克服した/頑張った仲間/友達に聞いて」
言って。
修復端末は──俺の足元を指差す。
そこに開く穴。
「理解/教えてし/もらったら、サンライトソード/太陽の石で作られた剣を持ってまたここにきて/セーブデータ修復」
「……身体は保つのか?」
「長くは保たない/気付かれる前に早く」
少女はシッシッと手を振る。
無理してるのは見え見えだが。
今は行くしかないか。
「……今のうちに良い称号考えておく/適当でいいか」
なんか聞こえたような気がするけど聞かなかったことにしてやろう。
そうして俺は──デルヴァーザン丘陵、ではなくアスガードに帰って来た。
穴から出た先がそこだったのだ。つまるところ、余計な寄り道すんなってことなんだろう。
して、家に入れば。
「……あ、マスター」
「……トラウマのメモリーオーブ、見たのか」
「はい。ですが、何故わかるのですか?」
いやだって。
「泣いてるからなぁ。分かりやすいことこの上ないよ」
「泣いている……。そのような機能はありません。……おや、似たやり取りをした覚えが」
「したした。んで、どうだ。太陽の石とサンライトソードの解析は」
家の中にバルクス以外の気配はない。
マスカルウィンは当然にしても、メアリーまでいないとは。どこ行ってんだアイツ。
「解析は完了しました。【太陽の石】。あるいは【太陽】。これは"旧い世界の基準となるもの"だそうです」
「だそうです? ……あ、待て。旧い世界の基準つったか今」
「はい」
……。
はぁー!!
はぁー!!
成程ね。そういう小イベントと大イベント……いや、こんなの俺が真っ先に気付くべきことじゃないか。
草案世界だって何度も何度も言ってただろ俺。
「サンライトソードと太陽の石、返してくれ。ちょっくらこれで斬ってくるものがある」
「はい。……その、私には意味が分かりませんでしたが、マスターには伝わったのですか?」
「ん。……んー。まぁ、まぁまぁ」
濁す。
何がどう、とかは言えないからな。
だけど。
「最終決戦に邪魔者は要らないって話さ。んじゃーな、バルクス。ちょっち斬って、すぐに帰ってくるから……メアリーあたりが帰ってきたら飯の準備頼んどいてくれ。流石になんか食いたい」
「わかりました。ですがメアリーさんは」
「システムスキル:セーブデータ修復」
あ。
……なんか言いかけてたけど、行っちゃった。
まぁバイタルサインは安定してるし大丈夫だろう。
んで、出戻り出戻り。
帰って来た修復世界は──。
「……ん?」
「おかえり/今色々作ってるから/待ってて/タイミングが悪い」
なんか、部屋化してた。
えーと。
ソファにベッドにテーブルに椅子に……なんかオシャンな照明器具や棚、ハンモック……。
「どうせアナタ/オマエしか来ないので私物化/模様替えしてみました」
「……特に何を言うことはないけどさ。ほい、サンライトソードと太陽の石。持って来たぞ」
「意味は理解/聞いたしましたか?」
「ああ。っつーかもっと早く気付くべきだった。色々先入観に囚われててな。お前が三流台本なのをすっかり忘れてたよ」
「だから/何度も言ってるけどワタシ/この端末は改変/変更を管轄にしていない」
「はいはい。んで、大元の世界はどこにいる。早く斬って終わりにしたい」
「その前に/前提条件」
修復端末はサンライトソードを指差す。
そして、言う。
「理解した/聞いた?」
「ああ。
「なら、良い/なら、道を」
扉。
サンライトソード。効果とか特に無いのか。一応炎属性。
炎属性物理攻撃での最強は……っと。
「その扉/門の先で、世界/世界がワタシ/この端末を失った分を癒している/治療中」
「んじゃ行ってくる」
「裏切りとか/騙し討ちとか心配しない/勘ぐらないの?」
「してどうするんだよ。ここで戻るのか?」
「……成程/理解。心配しても/気にしても仕方のないこと/変わらないことは言わない/口に出さない」
「賢いだろ」
「勘違いされやすい/気味が悪い」
「酷ぇ」
……まぁ核心を突いているんだろうけど。
じゃあな~なんて後ろ手を振って。
俺は扉に入った。
ああ。
まぁ。
──何が小イベントと大イベントなのか、って話。
どっちが先なのかはわからない。俺がもっと早く気付くべきだったのかもしれない。
うるせー。焼き増し好き過ぎなんだよこの世界は本当に。