アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ 作:姫鼠まりあ
真白の筋の残る青空の下、大きく伸びをして──二度寝に入る。
「ご主人様。現実逃避は後にしてください」
「うわなんでいるんだよメアリー。ここティル・ナ・ローグだぞ?」
「聖堂の……失礼、
ここはティル・ナ・ローグ。死者の国。
別に俺が死んだとかって話じゃない。あの時例に挙げ忘れていたけど、"鬼の国"もまたアダルトMOD適用範囲外にいたなーってことを思い出して、淡い期待と共にネフティスのタリスマンを使えば──そこは楽園だった。
ティル・ナ・ローグは
全存在全裸化計画。
それは100%、いやさ1000%完遂した。目論見通りヒトも魔物も魔族も「そうではない存在」となり、男女関係なくアダルトMODが適用……というか再適用されて、美男美女から美女美少女且つ全裸という凄まじい世界へと変貌した。俺の視界だけ。
ただ……なんだろうね。
アダルトMOD入れるくらいには俺の脳はエロいんだけどさ。
その。
……どこを見ても誰を見ても全裸で肌色で、当然彼女らは服を着ていると思っているから隠しもしなくて……それが知り合いでも当然のように"そう"であると。"ソウ"で来られると。
辟易する、というか。
落ち着かない、っつーか。
だから一縷の望みに賭けてティル・ナ・ローグに来て、感動して、もう永住しようかなとか思ってる次第。
「……」
「ご主人様。なぜ私の身体を舐めまわすように見ているのでしょうか」
「いや。……こうなってくるとお前、ありがたいなって」
「はい?」
魔素も聖気もこの世界から消えた。ちゃっかり修復端末もアレに触れていたそうで、文字通り全存在が
仮にこの世界に新たに魔素や聖気が生まれたとて、それらは一瞬で駆逐されるだろう。心化のエネルギー……ある意味で「元気」とでも呼ぶべきそれは、魔素と聖気の性質を併せ持つ。魔素も聖気も弾くし呑み込むから、それら単体ではどうやっても敵わないのだ。
そしてそれは、互いの他の性質も併せ持つ。
魔素の伝播。聖気の浄化。まークサい言い回しで言うのなら、「元気な奴がいると元気が移って行くし、暗い雰囲気も一発で明るくしてくれる」、ってのがこの世界の設定になった、って感じ。
また、
これをかけて、リチャード・イングリディアナが呪詛スキルを解けばそれで終わり。
一時ばかりの「英雄」は、熱病が如く過ぎ去ったってわけだ。その後の二十一人がどういう道程を辿るのかは知らん。冒険者を再度目指すのか、別の生き方を探すのか──世に絶望して命を投げ捨てでもするのか。
そこまでの面倒は見てられん。
自殺。……今までは「自己犠牲による自殺」はできても、「世に絶望したから自殺」ってのはできなかった。それが、善人でも悪人でも善悪どちらも行使できるようになったから……そういう選択肢が増えたのは事実だ。
残酷な考えを植え付けたのやもしれん。とはいえ誰かの選択の責任、その全てを俺が背負うつもりはない。余計なお世話だろうしな。
だからまぁ、そういう結末を誰かが選んだのなら、周囲にいる「元気」な奴がそれを分け与えてやればいい。
普通のことだ、まったく。
「ご主人様。たそがれている暇があったら帰ってきてください。散らかしたら片付けをする。常識です」
「むしろ散らかってたのを綺麗にしまえるようにしたって感じなんだけど」
「しまう人がいませんので」
「赤ちゃんにも程があらぁなー」
まぁ、つい先日乳離れしたばかりなんだ、仕方ない。
では──と言って消えるメアリー。成程分け身を送ってきてたのか。まぁティル・ナ・ローグに送る、なんて万一があるからな。如何にオニキス・リオンと言えどメアリーの本体は無理だったか。
「なんだ、もう行くのか、人間」
「クク、聞いたか汝。今の素気の無い問い。だが吾は知っている。この聖樹、一丁前に寂しがって──のわ」
「お前、生命の樹を名乗るのやめて、邪悪の樹に改名し直したらどうだ」
「長く在ったのは邪悪であった時間だからな。そうなるのも仕方がない。──というわけで、たまには来い、異邦人。聖樹が寂しがって吾とまぐわいかねん」
「マジでヤったらなんらかの記録残しといてくれ。興味ある」
「良いだろう。──ほら、聖樹。言うことがあるのだろう? 吾はどこぞへ行っておいてやるから、愛の言葉でも別れの言葉でも叫ぶがいい」
とかなんとか。
適当言ってぴゅーんと逃げ去るセフィロト。俺も同意する。アイツはクリフォトのままでいいと思う。
「……言いたいことって?」
「そんなものはない」
「ああそうかい。まぁ別に、っつーか俺の心の安寧のために結構頻繁に戻ってくる予定だから、そんなに気にするなよ。んじゃーな」
「──待、待て」
ん。
……遠く。逃げ去ったセフィロトがニヤッニヤした目で見てきてるけど、コイツ気付いてないし良いにしておくか。
「……前も言ったが、この聖樹ユグドラシルは……その、お前に買われ、様々なことをされた……人格だ。だから、その」
「呪詛スキル:眷属」
「!?」
お、縛れた。
なんだ、死んでガード甘くなったのか? ネームドボスは同意がないと縛れないんだけどな。
「何を──」
「おーいセフィロトー。コイツ持って行ってもいいかー? お前も行くかー?」
「いいや、構わない。吾はここでのんびり暮らすとも。ネフティスのタリスマンもそこまで数を揃えられるわけではあるまい。時折、そうだな、長期休暇だとでも思って聖樹と共に帰ってこい。汝らの幸運を吾は祈っているよ」
「おう。……つーわけだ、ユグドラシル。生き返るぞ」
「待て、言っている意味がわからん! そもそも肉体と言える聖樹はお前とあの魔族の衝突で吹き飛んだ! それ以前に枯れている──戻ったところで、ゴーストにでもなるのが関の山だ!」
「マスカルウィンがな。人格を切り替えて遊ぶのは楽しいけど、最近は結局どっちも自分なのがわかってきちまってマンネリ気味なんだと。──快楽には切り替えスイッチがあった方が良い。そういうことだ」
「どういうことだ!」
発動、【イシスの錫杖】。
いつもの余裕はどこへ行ったのか、ぎゃーぎゃーうるさいユグドラシルを連れて現世に戻る。
場所は──マスカルウィン城。
「おお、ようやく帰って来たか、人間。……と。おお!!」
「……」
「ご要望通りってな。んじゃ」
「うむ。──久方ぶりだな、聖樹。いただきます」
「は?」
がぶっと行って、ずごーっと吸って。
口元を拭って──。
「……は?」
「そういや結局お前の補繊毛ってなんなの? 月の民はみんなそれ持ってんの?」
「んーん、昔食べた魔物に乗っ取られかけて、逆に乗っ取り返した時に手に入れた……待て、待て、待て待て! いつのまに霊体に干渉できるようになった! いやそうではない、これは呪詛に近いぞ、わかっているのか!? わかってるよー。でもさ、長年連れ添った……ずっと守っててくれた聖樹を使い捨てとか、それこそあっちの世界の聖樹ユグドラシルに申し訳ないし。何より私が楽しいし!」
「人格切り替える時は一拍置いてくれるか。こんがらがる」
にひひ、と笑うマスカルウィン。直後怒ったような悲しんでいるような──嬉しがっているような百面相になるマスカルウィン。
うん。
ま、お前が目をつけたのは厄介な奴だったってこと。
「……本当に、いいのか。折角手に入れた自由だろうに」
手を叩くマスカルウィン。
「自由も何も、私まだヴェルグさんの性奴隷だし。束縛されたまま。だから勿論、ユグドラシルもえっちなことしてもらえるよ──期待通りな、聖樹」
手を叩くマスカルウィン。
「期待などしていない。……はぁ、だがまぁ、少しばかり安心した。心は完全に癒えたか」
手を叩くマスカルウィン。
「うん。ありがとね、本当に」
手を叩く──。
「いや一拍置いてってそういうことじゃないんだわ。……それ以上は自分の心の中でやってくれ。俺が聞く意味ねーだろ」
「はーい」
止めなかったら一生やってたんだろうけど。
俺が全部のボケ拾うマンだと思うなよ。めんどかったらスルーするぞ簡単に。
……さて。
「んじゃ俺家に帰るけど、一緒に来るか?」
「勿論!」
ひしっと抱き着いてくるマスカルウィン。ずっと突っ込まなかったけど奥の方でボロ雑巾みたいになってるラムナザール四世は良いのかな。なんかみんなが魔素の造物と戦ってる間にラムナザール四世と遊んでたらしいんだよなコイツ。圧勝だったらしいけど。
……いいか。ラムナザール四世から「早く行け」オーラ出てるし。
転移する。
「はい残念」
精神耐性低下、蛇睨み、その他拘束系、呪詛系、ありとあらゆる「俺をどうこうする」スキルを全部避けてマスカルウィンを身代わりに差し出す。
どしゃぁ、と崩れ落ちるマスカルウィン。
「あちゃー。ごめんねルウィンち、効かないだろうなーとは思いつつ、試さざるを得なかったというか」
「むしろお主効くんじゃなこういうスキル」
「何か、魂の重みが、増えている、ような?」
「死者の、魂……これは、聖樹でしょうか? 少し、懐かしい、気配ですね」
「どうでもいいけど解いてあげたら?」
「もうアサシンスキル:弛緩は解いているのだけど……色々絡み合っていて、解呪には時間がかかりそうねぇ」
姦しい。いや今更なんだけど、さらにというか。
「ご主人様。お食事の準備はできていますが、いかがいたしましょうか」
「あ、マジ? じゃあ食ってくわ。久々だし」
「はい。──ところで、約ひと月と二週間ほど、一生放置調教を施していたポリウィック様ですが」
「あ、やべ、忘れてた。……ってアレ? 俺ヴァネッサは解放したよな」
「ヴァネッサ様を封印棺から解放した際、彼女の存在についても言うか言うまいか迷いましたが、言いませんでした」
「言えよ」
……。
ポリウィックか。どーしよ。
善悪云々が解決したとて、アイツの恨みは消えてないだろうし。……どっか、っつーかアモルファス聖のとこに帰すのが一番か。制御はしてくれるだろ多分。
「お前的に調教は完成してんの?」
「完成と言われると、まだと返します。完璧には程遠い……まだ芸を覚えさせられます」
「んじゃそれ終わったら神殿に返すよ。ああ元神殿な」
聖堂と神殿は、表面上は解体された。
正確に言うと教会に吸収された。元々分派だった聖堂は元鞘に、起源が違う神殿は、けれどカワードがいないからな、教会への迎合を了承したらしい。とはいえ運営権は譲渡してないとかで、まだまだそこはギスってる。
そうそう、神モドキの三柱。神殿のカワード、邪神崇拝のヴィシャス、んで教会で祀られてるオブセルウェルっつー魔物についてだけど、当然聖気を操れなくなった以上人語を解すだけのただの魔物。神でないことがバレて席を追われる……なんてことはなく。
神扱いこそされなくなったけど、なんか上手くやってるらしい。多分俺が普通に【聖魔混水晶】を使って全存在全裸化計画を遂行していたら惨劇が起きていたんじゃないかって予感があるけど、ラヴ・グラットルの心がどうにか「暖かい方向」へ全てを導いた……ってクサい憶測を立てている。
いやホント、英断だったんだと思う。
全存在全裸化、心化は世界中に大混乱を齎すの覚悟でやったんだけど、諍いらしい諍いは今のところ聞いていない。悪意を持てるようになったんだ、いきなり大戦争もあるかとか思ってたんだけどな。
どうやら直前に魔素の造物と戦っていたこと……立場や身分を無しに手を取り合って戦っていたのが効いたらしい。今んとこそういう話は無いっぽい。
とはいえ殺人含む悪事なんてのはふとしたきっかけで起こるものだろうから、一々目くじら立てる気も無いんだけど。
「よ! お帰りご主人様。調教すらされない性奴隷が配膳してやるよ!」
「いや俺だってお前の1m20cmは早く弄りたいよ。でも今忙しいんだよごめんなマジで」
「冗談冗談! この家おもろい奴ばっかだし、あたし自身のスキルアップにも繋がるし。見世物小屋にいた頃も楽しかったけど、ここも楽しいから」
「そりゃよかった」
配膳された料理は、うん、いつものメアリーの料理だ。
元の形状がわからないよう調理された料理。ああそう、別に全存在全裸化計画を行ったからと言って俺の視界に映る魔物素材や食材に変化が起きたってことはない。依然としてフツーにグロい。
ただ市場には出られるようになった。なんでって、どこもかしこも肌色だからな。まぎれる。
──この家の住民もまた、メアリー以外全員全裸である。
シーファは元からだけど、俺の中ではツゥとかは「ケルの女」みたいな認識強いから、なんか……なんかな。あと天使も魔族も関係なくなったんでフツーに帰ってきてるアウラニも……こう、なんだろう、逆に、みたいな。
そこの二人っつか三人も心化の後に感動の再会をしたみたいなんだけど、その時にはもう俺ティル・ナ・ローグに籠ってたから全然知らないんだよね。
「あ、そうだ。シーファー」
「なぁにー」
「ちょっと来てくれー」
「はーい」
食事中だけど、思い出したうちにやっておこうと思って。
呼び出したシーファの頭に手を置いて。
「呪詛スキル:眷属:解除」
「──え?」
「すまんすまん、ずっと忘れてたわ。そんだけ」
んじゃ食事を再開──。
ずどん、と。
俺の頬に鋭利な槍が突き刺さる。元は魔素の槍。今は「元気」の槍。シーファの種族特性は「魔素を自在に操る」から「元気を自在に操る」に変質したらしく、だから戦闘力はそこまで落ちてないとか何とか。
しかし眷属の呪いを解除した瞬間に殺しに来るとはー、余程溜まっていたのかー。
「──早くかけ直して」
「やっぱそっちか。良いだろー別に。俺もうお前の体質研究する気ないもん」
「メアリち、ルウィンち、ノーラちにはかけたままで、なんで私だけ解除するの?」
「家事奴隷、性奴隷、性奴隷兼家事奴隷。別に良いだろ、お前自分の家あるんだし。ケルの家だっけ?」
「……わかった」
お。
やけに物分かりが良いな。ようやく俺を理解したか。
「じゃあ食べ終わったら私の部屋に来て。セックスして」
「いや……アウラニ二人がいるだろお前には」
「もう魔化の心配ないんだから、セックスできるでしょ」
「俺にNTR趣味ってなくってぇ」
「別に私ノーラちとかツバナちとかともセックスしてるけど」
あっちの部屋で「ブホァ!?」という飲み物を噴く音が聞こえた。
へー、ツバナ、ヤってたんだ。
「……理由を言え理由を」
「"わからせ"る。私とのセックスが一番気持ちいいってご主人様がわかれば、私から離れられなくなるでしょ」
「もうご主人様じゃないが。……うーん。アウラニー」
「構いません、私は」
「私は、構いません」
「ああそう……。……うーん。う~~~ん」
たとえ同意の下であっても、「私達将来を誓い合いましたよ」みたいなトコに男が割って入って行くのは……なぁ?
ふたなり3Pレズカップルに男が挟まるとか惨殺の挙句体の全パーツを引き千切って一つ一つ串刺しにして世界各地に晒されても文句言えないだろ。
気が乗らねえ。だから勃ちもしない気がする。
「あーっと……シーファ」
「なに」
「別に俺離れたりしないから、それじゃダメか」
「……信用できない」
「って言われてもな。ほら、俺、できないことは言わない主義だから、離れたりしないって言ったら絶対しない」
「信用できない」
マジ?
俺これ以上出せる誠意無いよ。適当人間だから。
「じゃあ、運命の契りを結べばいい」
「それだ、ケルち!」
ぬっと出て来たケルの言葉。
あれじゃん。ケルの因縁の契約じゃん。本人全然気にしてないみたいだけど。
「ご主人様の精神耐性を考えれば、契約スキルなど弾かれてしまうのでは?」
「……」
三流台本ってもういなくなったんだよな?
んでもってファントムは今ラヴ・グラットルのストーリーで忙しいよな?
これ……出来過ぎな感じあるけど、気のせいだよな?
「……ここに、耐性無効化ポーションがある。ハルフィーさん曰く、俺にも媚薬なんかが効くようになるポーションだとさ。……これ使って俺の耐性下げりゃ、家族の契りだの運命の契りだのは効くとは思う」
「なんですかそれは。買い溜めします」
「が!」
一つ。
最大の問題がある。
「……俺契約スキル使えないんだよね」
「へ? なんで? ……その辺の子供だって使えるよ? ……そんなに契約したくないの?」
「あたしでも使える基礎中の基礎みたいなスキルだよーご主人様。ウソは良くない」
「いやぁ」
……。
何を言い渋っているのか。そんなに知られたくないか、俺。
散々異邦人異邦人言われてきてんだ、わかる奴にはバレバレだってのに──自分の口から言うのがそんなに嫌か。
はぁ。
なら、仕方がない。
──これも巡り合わせなんだろう。
「テーレッテレー。超強力自白剤~」
「おやそれは」
ハルフィーさんから貰った、グレイス、グノーシス、そしてグレイスとセックスしただけの俺にまで効果を齎した劇毒レベルの自白剤。
その最後の一本。
俺に言う勇気がないのなら。
俺でもなんでそんなに嫌なのかわからないのなら。
──飲んで吐いて、すっきりしようぜ。
ってことで──飲み干す。
「……」
耐性無効化ポーション飲んでからの方が効果高かったんじゃね、とか。
わかってないってことは理由とかないんじゃね、とか。
そういう心を──理性を無視して、口が言葉を紡ぐ。
「ま、なんだ。……なんつーかなぁ。俺は……多分死んでんだよね」
……まぁ、それはわかっていた。
俺はこの世界に来た時。目覚めた時。無意識に「転生した」という言葉を使った。転移じゃなかった。
自殺した覚えはないけれど、俺の記憶はまだ老衰で死ぬような歳じゃない頃で止まっている。だから多分、適当に心臓発作とか事故とか、知らんうちに死んだんだろう。
「そんな死人を呼び寄せたのは世界だった。別の世界の霊魂。それを人間の味方に仕立て上げようとした。その目論見は外れて、世界まるごと末端人格に乗っ取られる始末になったんだけど……そんな感じで、俺ってばこの世界出身じゃないのさ」
ああ凄い。自白剤凄い。もうスルッスル出る。いやホント、何を嫌がってたんだ俺は。
「この世界出身じゃない。だからこの世界の住民が当然のように覚えているスキルを使うことができない」
「……そうなんだ。じゃあ、無理、かぁ」
「でも、方法がないわけじゃない」
お。
……今の俺の言葉じゃないな。誰だ?
「事実俺は、パラレルワールドの未来で、ラヴ・グラットルと婚姻を……運命の契りを結んでいる」
「へ?」
「誰じゃそれは」
「ツバナさんダメよ、声が大きいわ」
「あぶぶぶ……盗み聞きなんかバレバレだと思うけどー」
──なんだ。
何しに来やがった、コイツ。
「妻を助けてくれた礼をしに来たに決まってるだろ。──おう、良く聞けよコイツを引き留めたい奴ら。俺とは全く別の道を辿り、コイツが出会ってきた奴ら。コイツが"この世界的"になる方法はいくつかあるが、どれもこれも現実的じゃない。だから唯一お前らができそうな策を授ける」
誰、とか。
どうしたの、とか。ノーラでさえも聴かない。完全に雰囲気に呑まれてる。
いやさ、つーかハルフィーさん、この自白剤もしかしてそういう効果なの? だったらエグ過ぎるんだけど。自白剤っていうか世界渡っちゃってるんだけど。
「フレースヴェルグとラヴを探せ。あいつらはコイツの裏と逆。つまり、対偶もどこかに存在する。フレースヴェルグの逆。ラヴの裏。この世界におけるそれが何なのか、誰なのかは皆目見当もつかないが、それは必ず存在する。──そしてソイツなら、このヴェルグという男をこの世界に馴染ませることができる」
「……質問です、別世界の、ヴェルグさん」
「順応早いな。ああ、そんなに長居はできないが、聞く。なんだ」
「貴方は──奥さんを、何だと、思っていますか?」
「命に代えても良いくらい大事な相手。まぁこれ言うと怒られるから言わないんだけどな。アイツ、自分は犠牲になろうとしたクセによく言うよな……と、危ない。惚気るところだった」
……ラヴ・グラットルと恋仲になった世界線の俺、ねぇ。
ま、あの時渡した【聖魔混水晶】が役立ったようで何よりではあるけど……折角世界の厄介ごとが片付いたってのに、まだコイツらに試練を課す気か。もう俺の事とかほっぽって好きに生きさせたれよ。どんだけ俺関連で気を揉ませるんだよ。
「ホントにヴェルグ? 吐く言葉が人間らしすぎて逆に怪しい」
「別世界だと、こうなるんですね、ヴェルグさんは」
「ラヴって結局誰なんじゃ。フレースヴェルグは……どっかで聞いた気もするが」
「フレースヴェルグはヴェルグさんの元の名前じゃなかったかしら。ほら、王国の」
「ツゥ様、それはデマというか勘違いというか、私のミスといいますか」
「フレースヴェルグってあたし聞いたことあるよ。王国に見世物遠征行ってた時、隊長がその騎士に注意受けてたんだ。公序良俗に反する見世物については時と場合を選べ、って。それがまさにあたしの芸なワケだけど」
ん。
……効果切れそうだな。意識がはっきりしてきた。
「マズイ、そろそろ効果切れだ。他何か聞きたいことある奴はいるか。これはもう一度切りのチャンスだ、二度はないぞ」
「──じゃあ、私から」
痺れから立ち直ったマスカルウィンが手を挙げる。
なんだ、アイツが一番興味無さそうだったのに。
「今、ヴェルグさん……幸せ?」
「心から」
「そっか。──じゃあ、こっちの世界のヴェルグさんにもそうなってもらわないと!」
「……心配無さそうだな。こっちはこっちで良い奴らに囲まれてる。すまんな、アンタら。愛する者のいない俺っつーのは身内のラインがかなり狭い、えげつないレベルの食わず嫌いだ。もうちっと苦労を掛けると思うが──なんとか打破してやってくれ」
うるせー。
ほら用が済んだら早く出てけ出てけ。んでどっかの世界で幸せにやれ。
ラヴ・グラットルは言ってたぞ、別世界の俺とはいえ気付いてほしくなかった理由。
──「だって、別世界のヴェルグさんでも……カッコよくて凄い私だけを、見ていて欲しいから」って。嫁にかっこつけられてんのがデフォとかお前、こんなとこで誰とも知らねえ奴らにかっこつけてる暇ねーだろ。
早く帰ってイチャコラしてこいよ。
「じゃあな、俺。──先に幸せになった俺からの、プレゼントフォーミーだ」
うぜー。
自分ってこんなにウザいんだな。もうちょっと言動気をつけよう。マジでカッコつけたがりのおっさんみたいで嫌だわ。
あと意味被ってるし。色々終わってるよお前。
「……はぁ。今割と最悪の気分」
「あ、戻っちゃった。……ちなみに意識はあったの?」
「あったよ。……まー、探すとか調べるとかは勝手にやってくれ。俺は手伝わん」
「だと思った。でも、シーファ。私達は協力する」
「そうじゃなー。運命の契り程とはいかずとも、家族の契りくらいは結んで起きたいものじゃし」
「じゃあ私は恋人の契り結んじゃおっかなー」
「ルウィンさん、応援、しますよ」
「馬鹿か天使。今のはツッコミ待ちだ」
「ああやっぱり、魂が、重複していますね。聖樹、ユグドラシル、ですか」
「はいはい話は一旦終わり。俺は飯食うから解散解散。……で、まぁ、アレだ。ホントに方法かなんか見つけてきたら、俺は拒まないって約束するよ。耐性無効化ポーション使ってお前らと契りを結ぶ。──これでいいか?」
最後に見るのはシーファ。
彼女は。
「──勿論だけど……結局セックスは?」
「しませーん。性欲発散ならアウラニ達とイチャイチャラブラブ変態ふたなりレズセックスしてろ。ノーラとかツバナとか交えて」
「お、大歓迎だよーん……ってか、あたしとはしてくんないわけ? こっちは性奴隷なんですけどー」
「まだ用事があんの。終わったら真っ先にヤるから覚悟しとけ」
「おっしゃー!」
なんだ。
……そこまでして、とか。まだ思っちゃうけど。
まぁ、愛されてんなぁ、ってのは、ちゃんと伝わってるよ。