アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ 作:姫鼠まりあ
まぁ、どこの世界にも下卑た輩はいるものだ。残念ながら。
アダルトMODによって全員が美男美女になっているといっても、やっぱり中身は変わらない。元がピンキリな……善人は死ぬほど善人で、悪人は死ぬほど悪人で、他の雑魚モブは世紀末、みたいな世界だったからな。
そういうこともあるんだ。
「襲われた、か」
「うむ。抵抗することも考えたが、お主の名に泥を塗るわけにもいくまい。私は鬼じゃしな、衝動的な抵抗で相手を殺してしまうやもしれん」
「思ったよりヴェルグが私達みたいな奴隷を集めてること広まってるみたい。名指し……一言一句違わず言うけど、"あの調子乗ってるヴェルグって臆病者のトコのガキじゃねえか"って言われた。ヴェルグが戦えないことも、多分どこかから漏れてる。あ、今私は奴隷じゃないけど」
ま、人の口には戸が立てられない。フレイムドラゴン討伐参加者の口から漏れたか、はたまた別の所か。
俺への風評醜聞は一向に構わないけど、俺の所有物に危害が及ぶというのなら出るとこ出ないといけなくなる。
……。
ふむ。
つまり諸問題は、俺がクソ舐められていることと、戦えない、つまり報復に来ないと思われていることが原因だと考えられる。
「少しギルドへ行ってくる。ケル、ツバナ。これからは地上を使わず屋根を伝って移動するんだ。それだけで大分撒けるはず。それでも絡んでくるやつがいたら、人目に付く場所まで誘導してからボコボコにしてやれ。殺すまでいくのはやり過ぎだが、それに値すると思ったら全然やってくれていい」
「いやいや、お主の立場が悪くなるじゃろう。それにこの家にまで戻ってくれば奴らは入って来られんしの」
「忘れたのか。ここはマスカルウィン帝国。ラムナザール四世の独裁政権だ。そんでもって俺はラムナザール四世より強い。──最悪俺がこの国を統治することもできる、というわけだ」
そんな面倒なことするつもりないけど。
ただ、良い機会だな、とはおもった。
「む、むぅ。……あいわかった。じゃが、それでもできるだけ穏便にことを運ぶぞ?」
「それは当然。ツバナ、貴女はまだ自信がないようだけど、私の首をめいっぱい掴んだらそれだけで私を殺せるくらいの力がある。貴女は全身が凶器であることを本当のところで自覚しないとダメ。──それと、ヴェルグへの中傷は私だって苛立つ。その場で逃がして、あとで暗殺するくらいのことはする」
「バレるなよ」
「足は洗ったけど、腕まで落とした覚えはない」
ま、自分が何に手を出しているのか、って理解くらいはな。
「ふ──よもやこうも早く事が実現しようとは。余にとってはありがたきことだが……再度確認する。本当に大丈夫なのだな? 余は恩人に仇を返す皇帝ではないつもりだぞ」
「ああ、相手が魔物じゃなけりゃ大丈夫だ。ついでに言うと、そう簡単に死んでくれる相手でもないしな。アンタがどこまで高められたのかは無理矢理察知しないことにしているんだ。期待外れでないことを祈る」
「ハハハハハハ! 良い! 挑戦者の気分──ああ、久しく感じていなかった高揚感だ! ゆえに、どうか願いがある!」
「手は抜くな、だろう? たとえ今、帝国中の民が観覧しているとしても。あるいは他国の者や、何か良からぬことを考えている者がいるとしても、そんなことは一切気にせずに戦え。そうだな?」
「そうだ! 余はここで力量差を正確に図り取る! なんなら魔法も使ってくれてよいぞ!」
「使う奴は使うが、攻撃魔法はやめておく。
「……! いや、いや、そうだな。余は皇帝、か。フフフ、今ほどこの座を降りたくなったことはないが──ありがたい。では、そろそろ始めよう!」
ここはマスカルウィン帝国が一部、円形闘技場。いいや、処刑場として使われることの方が多い場所。
ラムナザール四世の独裁政権に異議を唱えた者達が、ラムナザール四世本人の手で処される……その力の強さを身を以て刻まれ、それを民に周知させる場所だ。
だから、観客の反応はまちまちだった。
ラムナザール四世の処刑を楽しみにしている者。俺が何の罪を犯したのかと憶測する者。あと純粋に俺を心配してくれているのもいるな。ハルフィーさんあたりか? ……と思ったらなんかイグニスいねぇ? 王国帰ったんじゃなかったのか。
んで、ケルや奴隷たち。
……と、気のせいじゃなければどこぞの公国の使節団。まさか使節団が処刑現場見るためだけに出張って来たりしねーよな。
「知り合いか?」
「知り合いと言えば知り合いだな。ま、勝手な感情だ。そっちが気にする必要はない」
「そうか、ならば──始め、」
るぞ、と彼が言い切る前に踏み込み、【奇跡の裁定剣】という剣での切り上げを行う。いつも使っている【奇跡の命剣】がこっちのHPを1残す剣なら、裁定剣はその逆。魔物のテイムの時とかに使う剣だな。
ラムナザール四世の強さは信頼している。彼との剣戟であれば勢い余って、ということにはならないと理解はしている。
それでも事故は起こるからな。これがセーフティ。んで、これやってもなお殺しちゃったら大禁呪使って時間止めて蘇生する。ゲームの時から大禁呪扱いされてたものだから、この世界じゃロストテクノロジーのどころの騒ぎじゃないんだろうなぁ。
「問答無用! 成程、その通りだ!」
「テンション上がって気付いてないようだが、額切れてるぞ。もっと回避に集中しろ」
「む!? ……良い! 魔剣士スキル! 物理耐性オーラ!」
おお。
NPCがスキル使う所、こっち転生してきてから初めて……じゃねーな。ケルとかシーファで見てるわ。
「戦士スキル:突破」
「──耐性では無理か! ならば短期決戦となってしまうが、魔剣士スキル、物理無効オーラ!!」
「そうだ、ラムナザール四世。後先考えて手を安くするな。常に全力で来い。俺はその上を行かせてもらう」
「良いぞ! 良い、良い、良いぞ……久しく感じていなかった高揚感だ! ──ああ!」
ラムナザール四世は突然アイテムボックスを開いた。アイテムボックス、持ってたんだ。
そこから取り出すは──げ。
ええと。
その。四人の美少女が密接に絡み合い、しかし互いに互いの左目に親指を突っ込んでいる、という……悪趣味でなかったらなんなのか、みたいな剣が出て来た。あと刀身はアレ加工されてるけど大腿骨か? となると、コリジョンエグそーだな。
「それは?」
「魔剣プリズンクライム。余の持つ魔剣の中で、最も対人に適した剣だ」
「あぁそれプリズンクライムなんだ……」
確かにそういや、あの剣は柄で蛇がウロボロスってたっけ。四匹の蛇が互いに互いを食い合っている、みたいな柄の剣。刀身の長さと効果を思い出しつつ、口には出さないけど仙人スキル:無の境地を使う。
人型特効40%、回復無効、移動速度低下、逃走不可……だっけな、この剣。
成程確かに処刑にゃ持って来いな魔剣だ。
「ヴェルグ殿、お主も持っているのではないか? 魔剣──余のこれよりも、さらに高位のものを」
「持っている。だが使う必要がない。必要性を感じさせろ、ラムナザール四世」
「──その通りだな!」
嘘です怖いだけです。
インベや倉庫の奥底にある魔剣類。奇跡剣はね、鉱石でできてるんだ。だから使える。粛清剣もそう。
だけど魔剣……むっちゃ強い効果持ってる系は、魔物の素材死ぬほど使ってるから、ぜったいエグいことになってる。そんなの持てる気がしないから使ってないだけ。
──顔を上げる。その顎先数センチをプリズンクライムが通り抜ける。うん、やっぱりコリジョンおかしいね。見た目の二倍近い刀身持ってるわ。
左から来る回し蹴りを同じく蹴り止めて、さらにそのまま地面にめり込ませるほどに踏んで固定。
そこから斬撃、ではなく肘鉄を彼の顔面に食らわせる。
「ぶぐっ、ヵっ!?」
「なんだ、剣だけを使ってくるとでも思っていたか?」
「……いいや! 余が油断しただけだ! もっとだ。もっと鋭く……もっと速く! 戦士スキル! 神速!!」
へぇ。アンダーテイカーの時に俺も使ったけど、神速ってかなり戦士スキル育てないと習得できないんだ……って相手ラムナザール四世だった。ラスボスなんか目じゃない程に強いんだ、持ってて当然か。
眼前にまで来ていたプリズンクライムの見えない切っ先を──
三周目ステータスを舐めるなよ。曲芸だってちゃんとした攻撃になるんだ。
顔を狙って体勢崩して連撃を、なんて普通のこと考えてくれるな。デーモンとかに挑むつもりで来いよ。
「……治癒は、してくれるのだったな」
「ああ。全力で来い」
「良い! ならば──狂戦士スキル! 暴走!!」
空気が割れた。大気がぶっ叩かれた。
観覧席にいる奴らはそんな錯覚を覚えた事だろう。いいや事実、天にあった暗雲が晴れている。バチバチと雷を外側に向けて放出しながら、けれどラムナザール四世の真上からは退散している。
まるでそこにいたら消えてしまうから逃げた──とでもいうように。
「フゥ──ッ!」
「良いスキルだ。自身の意識を手放し、全ステータスを一定時間100%向上させる。ただし敵味方の区別を失い、さらに自傷さえも辞さなくなる。いや、いや。格上に使うにはもってこいのスキルだな。一対一なら尚更に」
「──ガァァアアア!!」
最早人語を失ったラムナザール四世。
踏み込み──じゃない。これは俺を通り過ぎる。おいおい暴走した上でフェイントなんか打てるのかよ。才能在り過ぎだろ。
大きく身を屈め、背後からの刺突を避ける。避けつつ、その伸ばした腕に向かってスキルでも何でもない強打をお見舞いする。ボキ、と確実に折れた音が響いたが、暴走状態のラムナザール四世に気にした様子はない。
むしろリーチが伸びたと言わんばかりにその腕を揮ってくる。剣を離さないのはどういう原理なんだろうな。何か使ってるのか、スキル。
「アサシンスキル:蛇咬刺突連撃」
本来ナイフとか短剣でやるスキルだけど、裁定剣で行う……行えるのは、こっちも圧倒的ステータスあってこそだ。多分一周目ステータスだとSTRとAGIが足りずに途中で失敗する。
「ム、グ、ガッ!?」
「暴走の弱点はな、ラムナザール四世。避けなくなることだ。理性あるお前なら避けることの出来た攻撃を気にも留めなくなる。確かに全ステータス100%向上は魅力的だが、達人という種の最も優れた武器は目だ。相手の動きを、相手の剣を、状況を環境を。その全てを視る目を失って、俺に勝つなど」
バヂィ! と雷のような音がする。
いいや実際に雷だ。俺の右拳が雷を纏っている。
「格闘家スキル:雷轟」
スキル自体は格闘家スキルだけど、一瞬ジャンプしてモーションキャンセルを挟んでのテレフォンパンチを行う。
拳はしっかりとラムナザール四世の顔を、頬を捉え──彼を観覧席の根元の壁にまでぶっ飛ばした。
「……やっぱりモーションキャンセルちゃんと使えるんだな。学び」
「フゥ、ゥゥゥウウ……」
「へぇ、偉いな。観覧席の奴らじゃなく、ちゃんと俺だけを敵認定しているのか。ちゃんと皇帝してんじゃん」
「──アタリ、マエ、ダ」
「お」
目は白目を剥いている。口からなんか蒸気みたいなの出てる。筋肉は隆起し、ところどころから血液が噴き出している――というのに。
いや、それ以前に、暴走は「自身の意識を手放す」というフレーバーテキストまであるのに!
「ヨハ──コウテイデアルゾ!!」
「──そうだな。礼を欠いたよ」
魔剣士スキル:プリズムオーラ。
フロストドラゴン相手に使ったダークオーラの光属性版。だけどその範囲は──帝国全土を覆う程の。
「……良い。……余は、この一撃を受け止めたい」
「暴走が切れたか、切ったか。どちらにせよ──意気や良し」
大剣豪スキル:一刀両断。
帝国全土を覆ったプリズムオーラ。その全てを裁定剣に収束させ、一瞬時間が止まったのではないかと錯覚するほどの静寂の中で──。
「オオオオオ! ガイアスラッシュ!!」
「見事だ」
戦士スキルの中でも攻撃の発生速度が最速であるガイアスラッシュ。対し、こっちは溜めの長い一刀両断。
判断は最適だ。
俺とお前が、対等のステータスを持っていたのなら、だが。
「──傷一つ、つかないか……!」
「神官スキル:死者蘇生、最大主教スキル:完全再生」
死者蘇生と完全再生を使いながら、裁定剣を振り下ろす。HP1残るつったって一刀両断するワケだから、どういう処理になるかわからん。一瞬だけHP1分生きて、そのまま死ぬ可能性もある。
だからこその保険だ。
して。
「いやぁ、流石は白銀章……いやいや、もっと上の称号が必要だろう、ヴェルグ殿には!」
「だとして、結局魔物とは戦えんがな。帝国民への良いアピールにはなったようで何よりだが」
「はっはっは、最後のは死んだと思ったぞ! ……いや、死んだな。死んで蘇らせられた。そうだろう?」
「どっちが早かったかはわからん。死者蘇生が効いたか完全再生が効いたか。この剣……奇跡の裁定剣はどれほどの攻撃をしても相手の一命を取り留めさせる剣だ。だから、まぁどちらにせよ、だな」
「……それは手加減ではないのかね?」
「俺に国を統治する手腕はないよ、ラムナザール四世」
いじけるラムナザール四世に肩をすくめる。
本気の本気でやるなら俺は初手で聖騎士スキル:
ただ範囲指定的に観客巻き込むからな。ステータス50%下がって心臓麻痺で死ぬ、とかなったらエグすぎるんで使わなかった。
「なんにせよ、完敗だ。……くぅ、悔しいな! 余は……まだまだ上がある!」
「良い向上心だ。皇妃様やスイに心配されない程度には現場に出るといい。公務ばかりじゃ鈍るだろう」
「返す言葉もない。そうだな、余は鈍っていたのやもしれん。スキル選びも悪かった。選んだ剣も悪かった。ヴェルグ殿を……心のどこかで、"とはいえ人間だろう"などと思っていた証拠だ」
「人間だが」
「ハッハッハッハ! 此度の試合を見たものでヴェルグ殿をただの人間だと思う者はおらんよ。懸念していたヴェルグ殿の奴隷たちへのちょっかいも減るだろう。逆に弱点だと捉える者もいるやもしれんが……」
「ああ、少し認識が違うな。法的に抵抗して殺したらマズい奴を散らせたいのであって、誘拐犯は殺しても構わん。それくらいのことは俺の奴隷達もできるし、何より俺が報復に行く。誰かが人質にされたとしても、丸ごと消し飛ばして蘇生させればいい話だ。盾にはならん」
「……いや、何も言うまいよ。所詮敗者の言葉だ」
倫理的にどうなの、って言いたかったんだろうけど、マジでそこまでやるってことは伝えておかないとね。
これだけのことがあってもラムナザール四世が俺に剣を向けないという絶対はないわけだし。
「して、敗者ながらに一つ頼みがあるのだが」
「なんだ」
「最後……余の暴走は切れていなかった。だが圧倒的な力を前に、余は理性を取り戻した。もしこれを故意にできるようになれば、とても強いとは思わぬか?」
「……まぁ単純に考えて覚醒の上位互換だな」
覚醒。全ステータス50%アップ。デメリットは効果時間切れの際にHP七割持っていかれること。
「実験に付き合え、と」
「時間がある時でいい。どうか頼めぬだろうか」
「……まぁ、本当に時間がある時だけだ。俺もそこまでアンタに付きっ切り、ってわけにはいかないからな」
「感謝する」
とりあえずは奴隷の問題を色々解決したい。
特にツバナかな。一応前衛として鍛えちゃいるし、本人は戻る気ない、みたいな素振りを見せているが……ありゃ未練タラタラだ。アンダーテイカーの時と違って鬼の国が健在なのがネックだけど、まぁ最悪ステータスゴリ押しでいけるだろ。
別に。
……別に、殺しがダメ、ってわけじゃ、ないからな。
「そろそろ帰らせてもらう。何か言っておくことはあるか?」
「点数が欲しい。ヴェルグ殿から見て、余は何点だった?」
「2点。100点満点中」
「──そうか。そうかそうか。つまりあと50倍は強くなれるのだな! おおおお、やる気が出て来た!」
ポジティブだなぁほんと。
ウチの食卓では今、重苦しい空気が流れている。
ラムナザール四世との模擬戦。やっぱり見に来ていたらしい奴隷ズ+ケルは、俺の圧勝を喜んでくれた。無反応のグレイスと笑顔の裏で滝汗かいてるシーファ以外。
そのままケルが「今日のご飯は豪勢にする!」とか言い出して買い出しに行って──すぐに戻ってきて。
何事かと思ったら、コレだ。
「──改めまして。お久しぶりですわ、白銀章冒険者、ヴェルグさん」
「ああ、久しぶりだな。エイルニルス公国がアンフェルミーナ・リアライズ姫」
「……」
「……」
やっぱり勘違いじゃなかったか。
使節団の人を待たせてまで何やってんだか。つーかよく一人で入ってくるの許されたな。
「何か、私に言うことがあるのでは?」
「無いな。礼を言われることをした覚えくらいしかない」
「──そうですね。本来ならば国を挙げて感謝を示すべきです。ですが今、ここにいるのは……ここで貴方と話しているのは、アンフェルミーナ・リアライズ姫ではなく、ただのリアですので」
「従属の呪いを無償で解いてやったんだ。礼を言われることくらいしか覚えはないな」
「ぐっ……それは、確かに感謝いたしますわ。お金を……ちゃんと払って、私達を買ってくださったというのに、それを無駄にさせてしまって……」
「まぁぶっちゃけお前の料理よりケルの料理の方が美味いからな。家事能力があればお前じゃなくても問題なかったさ」
ピキピキと青筋を立てていくリア。
あわあわしているツバナとシーファ。ふふんと胸を張っているケル。グレイスは奥にいる。
「お願いが、ありますの」
「なんだ」
「そのお顔、殴らせていただけません?」
「構わないが、お前の拳が割れるぞ。ラムナザール四世との戦いを見ていただろう。あの最後のガイアスラッシュ、俺は何のスキルも使わずに防いでいる。つまりそういうことだ」
後ろで「げ、まじ?」って聞こえた。
「……じゃあこの怒り、どう処理すればいいんですの!」
「知らん。自慰でもしたらどうだ」
「ケルさん!! ヴェルグさんの苦手なものとか、あれから発見してませんの!?」
「特には。魔物や魔物の血が苦手なことくらいしか」
「そ、それは、流石にトラウマを刺激するようなものを手段として使うのは……」
「あ、私ご主人様の弱点知ってるよ~!」
はいはーい! と手を上げるはシーファ。
……何を言うかによっては眷属の呪いのアダルトMOD部分を使う所存。
「ええと、貴女は?」
「あ、私シーファ! ご主人様の新しい奴隷でっす! それで、どう? 知りたい? ご主人様の弱点」
「知りたいですわ!」
「よし来た! じゃあ言うね、ご主人様の弱点は、亀頭ぜ」
「眷属の呪い:色情魔化:性的対象ツバナ」
「アヒャ!? ……あ、あ、ごめんねツバナ、これ呪いでさ、あはは、はぁ、はぁ」
「主、主! 何故私を巻き込んだのじゃ!? 私は何もしとらんじゃろ!?」
「いやだってケルにやらせるわけにゃいかないし、グレイスは俺のだし。リアを襲わせたら最悪外交問題だろ。じゃあツバナしかいねーじゃん」
「消去法!?」
よし。
悪は去った。というか亀頭攻めは俺の弱点っていうか全男の弱点だろ。下手な奴がやると痛いしアレ。
「むぅ……そうやって隠すということは、本当に弱点……」
「まぁそうだが、お前にゃできないよ。性格的にも立場的にも」
「……救ってもらって、お礼を言いたかったのに、というかお話したいこといっぱいありましたのに、何か嫌な予感がしてお部屋にかけつけたらもぬけの殻で……従属の呪いも解けていて! この、一気に失った繋がりという喪失感の穴埋めにどれほど苦心したことか! ですわ! だからその補填が欲しいですの!!」
シランガーナ。
いやそのつもりで置いてったのは事実だけどさ。そりゃ八つ当たりってモンだろう。
「結局どうして欲しいんだ? エイルニルス公国から去りたいのか?」
「それは、違いますわ。私は公国を……心の底から大事に想っておりますの」
「奴隷に戻りたいのか?」
「それも違いますの。というかそれこそ立場的に……あ、皇妃様も奴隷でしたっけ」
「いや屈服の呪いかけてあるだけで奴隷じゃねーよ。……つまりまぁ、久々に会いたかったって、そんだけだろ?」
言えば。
リアは、はぁ、と溜め息を吐いた。
「なんでそう……心情を推し量るのが上手いクセに、置いてけぼりにしたりしたんですの……」
「全部わかってんだろ? お前賢いし」
「……わかってますわ。私が抱いていた恩義。私が抱いていた貴方のそばにいたいという意思。それらは……エイルニルス公国の姫としては、邪魔になります。もしあのままあそこに貴方がいれば、私達はなんとしてでも貴方をエイルニルス公国に留めようとしていました。それは貴方の望むところではありませんものね」
「ああ。つーかな、まぁ立場の問題はあるだろうが、別にいいんだぞ。お忍びで来てくれたって。奴隷じゃなくなったんだ、友達感覚で来いよ。危険はあるだろうから、ラクニシェルとか、あの長身長髪の刀使いの奴とか、あとアニス・ウォーズマンとかに護衛依頼してさ」
「ああ、イグニスの。確かに私の国出身だという話は聞いていましたが、会ったこと無いんですわよね」
「声はでかいが気のいい奴だったよ。声はでかいが」
「……そうですね。お友達として、たまに訪れさせてもらいますわ。……でも残念です」
「何が?」
「公姫となってしまったので、貴方との性行為ができません。奴隷の時にやっておけばよかったですわ」
「なんだ、したかったのか。言ってくれりゃよかったのに」
「亀頭攻め。その時に気付いていれば……」
「ちゃんと聞こえてんじゃねーか」
ふふふ、なんて笑って。
ちょちょ切れかけていた涙は引っ込んだらしい。
「それじゃあ、そろそろ私は行きますわ。――改めて。故郷を救っていただき、ありがとうございました。この恩を忘れることは一生ないと思ってくださいまし」
「次来るときは手土産にエインドフルーツ持ってきてくんねぇ? あれ確か魔物じゃないよな。だから俺食えると思うんだ」
「あら、公国の特産品を良く知っていますのね。……ただ、まだ国が復活してから日が浅いので、果実が生るのは当分先になってしまいますわ」
「あー。まぁ生ったらってことで」
「ええ、わかりましたの。それでは」
「おう。じゃあな、リア」
ま。
こういう人間関係も良いものだ、ってことで。
「ちょ、ま、尻に腕を入れるとかお主の倫理観どうな、あ、あ!」
「流石鬼、耐久性が凄いね!! 私の腕が細いのもあるけど、これは……前もいけちゃう?」
「そろそろ怒るぞ!」
「えー、だって私は呪いでこれやらされてるだけだしー」
「──私に呪いはかかっておらん。つまり、じゃ」
「あ。……ちょ、ちょと。離してくれない? た、溜まる! 溜まる! 性欲が性欲が! 発散しないとおかしくなっちゃうって!」
「元からじゃろ。主が行動制限を解くまでお主の四肢は掴んだままとするからの」
「狂うってぇ~!」
とかなんとかあったとか。