※この作品はR-18です。

アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ   作:姫鼠まりあ

90 / 100
幕間小話-青い鳥を追い求めて-(G度無しR18それなり)

 つまり、である。

 

「幸せについて本気出して考えてみたらいいわけだ」

 

 俺の目の前に広がるポルノな光景よろしく。

 

「え?」

「……え」

 

 俺の思想とこいつらの思想。その両方を両立……というか共生させるためには、どうあっても俺が幸せにならなければならない。俺が幸せにさえなればこいつらは俺について気を揉まなくて済む。そうなればこいつらは自分の幸せを気兼ねなく気負いなく追い求められるようになると。

 今のままだと客観的に俺が不幸すぎるから、こいつらは自分のことに集中できないと。

 

 多すぎるように見える問題点ってのは、こうやってすり合わせて単純化する方が良い。その方が動きやすい。

 

「んじゃなんだっけ、俺の対偶? って奴の捜索はお前らに任せる。んで俺は俺で自分の幸せ捜しっつーのをやってみようと思う。あれなんだよね、お前ら"俺が死ねない事"を勝手に苦痛だと思ってるみたいだけど、全然そうじゃないかもしれないだろ? 俺の頭の悪さはわかってんだから、そこについてはちっと時間をくれ」

「……適当、言ってない?」

「ああ。俺は今から本気で俺自身の幸福っつーのを考える。考えるし実行する。だからまず」

 

 ──ノーラに目を向ける。

 

「エロいことしようぜ。とりあえず俺の今の欲はそれだわ。最近ご無沙汰過ぎ」

「私も混ぜてー」

「おう」

 

 そういうわけで。

 

 

「イき疲れる」

 

 

 一か月と半分。

 買ってから長い間待たせ続けたノーラとのおせっせ。

 

「じゃあ、引っ張るぞ」

「ん……。っ……」

 

 ぐにゅーん、と。

 指の腹の摩擦だけで抓んだ陰核──ノーラのクリトリス。「芸に邪魔だから」という理由で包皮を切除したらしいソレを……少しずつ引っ張って行く。

 ゴム。あるいは粘土。いやもっともっと柔らかい、けれど弾力のある何か。

 生物の粘液特有のねばつき音を立てながら、小指の先ほどしかなかった丈を徐々に徐々にと増やしていく。本当にどういう仕組みになっているのか、ノーラのクリトリスは伸びに伸びて伸び続け──。

 

「うぁっ」

「……ようやく限界か」

 

 称号『クリトリス1m20cm』。小学生の体高と同じくらいの長さのクリが、その身を晒した。

 

「へへ……どう? すごいっしょ」

「凄い。……色々試してもいいか?」

「もち。そのための性奴隷っしょ?」

「んじゃ、奇術師スキル:フェザータッチ」

「んっ!?」

 

 奇術師スキル:フェザータッチ。

 奇術師スキルの中では珍しい、属性を持つスキルで、これは風属性。効果は対象に違和感を抱かせる──その実、対象の周囲の空気に干渉し、対象に「触れられているという勘違い」を起こさせるスキル。

 一周目とか装備整ってない時とかには結構お世話になるスキルで、これを使って魔物の気を引いて魔法ぶち込んだり、奇襲をかけたりする。何気にヘイト管理にも役立つ。ただ強い奴には何の効果も無いので、今となっては使う機会は無いに等しい。

 

 それをこの長クリに使う。

 

「ふぁ……ふ、ぁ……?」

 

 普通に息を吹きかけたり触るか触らないかくらいの距離で刺激するのとはわけが違う。フェザータッチはあくまでスキルであり、効果が伴う。

 ノーラがいつからこのクリを持っているかは知らないけど、割合大抵の刺激には慣れてしまっていることだろう。それを使って芸をしていたくらいだし。

 だけどフェザータッチは違和感を与えるスキル。彼女はその違和感を無視できない。

 

「おおー。……なんかこう、シンプルにえっちぃよね、ノーラちゃんって」

「ルウィン、お前わかるようになってきたな。そうなんだよ、ノーラは別に娼婦として働いてきたとかじゃないから、反応がこう……良いよな」

 

 素人っぽさが抜けてなくて。……いや別にマスカルウィンもグレイスも素人っちゃ素人なんだけども。

 

「……しかし、あれだな。ノーラの耐久性がわからんからどこまでしていいかわからん」

「あー。まぁ普通に人間だもんねーノーラちゃん」

「んぅ……でも、結構耐えられるよ。見世物小屋にいた時は、クリで全体重支えるのとかやってたし」

「ひゃあ痛そう」

「え、痛いからきもちーんじゃん」

「……苦しいから気持ちいのと同じ?」

「そそ。あ、でも被虐願望とかとはちょっと違うんだよなーここ。よく勘違いされるけど」

 

 ふむ。

 うーん。多少過激なことやってヤバいことになっても回復させりゃいい、という考えは俺の中にない。つーかクリが千切れて流血、とか普通にオティヌティヌ萎えるし。

 できればそういう方向性じゃないエロをやりたい。

 

「何だっけ、ある程度自在に操れるんだっけ?」

「魔物の尻尾みたいにはできるよ。モンキー種程ってわけにはいかないけど」

 

 じゃあ、指を離してみる。

 するとノーラのクリトリスは1m20㎝を保ったまま自力で持ち上がり、ふよふよくねくねと動き、そのまま俺のオティヌティヌへと絡みついた。あ、セックスするつもりだったから当然俺も脱いでるからね。

 

「うわ……面白い締め付けだな。弱いけど」

「まーね。……尿道プレイやってみる?」

「んー。……とりあえず普通にセックスしよう。ぶっちゃけ物珍しさで買ったけど、それを活かせるエロは今んとこ思いついてなくてさ。普通に3Pして、時たま弄らせてくれ」

「はーい」

「わーい」

 

 マスカルウィンも超ハードプレイしか嫌、というのは無くなったようで、こういう普通のセックス……果たして3Pを普通と呼ぶかについては疑問が残るけど、それでも構わないらしい。

 

 

 そうして──シ終わって。

 

「……ううむ」

「満足できない?」

「いや、気持ちよかったのは気持ちよかったんだが……」

 

 散々ヤりつくして、ノーラはもう立てない、クリも動かせないってとこまで行ってて、マスカルウィンも今顔だけこっちに向いて話してるってレベルで疲れてて。

 俺は。

 

「これ……かもしれん。俺の幸せの一個目」

「あー。()()()()()()()()って、ヴェルグさんレベルのスタミナになっちゃうと厳しいか」

 

 加えてアダルトMOD導入後の主人公って絶倫になるからな。射精量に上限が無いんだ。そこまで詳細に作られてないから当然なんだけど、ヤろうと思えば一日中NPCを犯して犯して犯しまわり続けられる。

 それでも人間であればスタミナの限界ってもんが来るんだけど、俺はそれもないから……マスカルウィンの言う通り、満足感、充足感に欠ける。

 

 賢者タイムが来ない、というわけではない。

 あー、気持ちよかったー! が来ないんだ。

 これは確かに、こんだけエロい世界に来ておいて……それが無いのは幸せでないかもしれない。

 

「……ルウィン。俺ずっと思ってたんだけどさ」

「うん」

「アウラニって……なんかスキルの開発やってるらしいじゃん」

「アウラニちゃん以外にも、スキルの開発ができる人はいるねー。私はできないけど」

「エロスキルって作れないのか?」

 

 今俺がやっているのは既存のスキルをエロいことに使う、だ。

 だけどハナからエロ目的のスキル……それこそ色情魔化みたいなアダルトMODで導入されたオプション的なノリでもいい。

 後天的にスキルを作る。それはセレマの外法にも似た行為に思えるけれど、アウラニがやってるんだからできないことはないんじゃね、っていう。

 

 っていうか。

 

「アウラニに作ってもらうのは、アリか?」

「でもシーファちゃんの番だよ」

「……エロスキルを作ってもらう、まではアリじゃないか? ほら、エルシータだって結婚したらしいけど、依然としてエロ魔物は作ってるらしいし」

「ヴェルグさんがアリだと思うならアリなんじゃない?」

 

 痛いとこ付いてくるな。

 俺はナシだと思ってる。

 

「けど、スキルの開発っていうのは良い着眼点な気がするなー。ヴェルグさんの疑似不死とかもそれで解決できそうな気もするし」

「ユグドラシルはなんかその辺詳しくないのか」

「……スキルの開発、作成、改造は、基本的には先天的な能力とされている。アイテムボックスや短距離転移と同じくな」

「あー」

「だから、そういう意味では作り得る者に頼るという発想は間違いではないだろう」

 

 ふぅむ。

 ……。ところで俺は今回遮断結界を用いずにヤってたわけなんだけど。

 

「他人のセックスを盗み聞きしてるそこの天使と元ハーフ。まぁ俺から頼むのは違うんだけど、自発的に行動してくれるのは特に何とも思わないってことだけ伝えておく」

「……はい」

「はい……」

 

 返事しなきゃいいのに。

 真面目だな。

 

「あの二人ってさ。……どっちにも生えてるわけだから」

「まぁできるよな」

「うわ見たい。……バルクスちゃんに頼んでそういう機械作ってもらおうかな」

 

 スキルの開発。外法の可能性。

 俺の幸福の一つ。あるいはすべての可能性、か。

 この世にはまだ俺の知らないスキルもあるはずだ。聖獣スキルとかな。

 それらを加味すれば──可能性をゼロだと決めつけるのは、確かに早計過ぎたのだろう。

 

「私もスタミナ回復量について研究してみようかなー。寿命に関してはヴェルグさんに並べそうだし、そうなったとき私とヴェルグさんで一生セックスしてるだけになって……こーやって私だけ疲れちゃうの勿体ないし」

 

 そうだ。いや一生セックスしてるだけになって、がそうなのではなく。

 死ねないかもしれないことをあいつらは嘆いていたけど、マスカルウィンだってその寿命は未知数だ。俺が短命に死ねば、コイツを置き去りにする。寿命に因る悲しみっつーのはまぁ仕方のないものだと考えているけれど、早期に死ねることだけが幸せなのではないという話をしたかった。

 

 もう一つ言うなら──薄情に聞こえるだろうけど、俺はまだまだいろんな奴と関わって行くつもりだから。

 あいつらと共に死ぬことだけが、俺の幸福ではない。

 

「先シャワー浴びてくるわ。ルウィン、回復したらノーラ連れてって洗ってやんな」

「はーい」

 

 うーむ。

 色々考えること増えたなぁ、って。

 

 

「幸福論」

 

 

 幸せ、幸せ。

 まー何が幸せかってのは人によりけりで千差万別過ぎるとは思うけど、とりあえず幸せそうな奴に対して取材しに行くのはアリな気がしている。

 

 故にまず目をつけたのが。

 

「あ、ヴェルグさんおひさし~!」

「よーっすエルシータ。ロリコン見つかって良かったな」

「開口一番ソレ!?」

 

 新婚夫婦やってるエルシータである。

 相変わらずのロリボディ。前は気にしてなかったけど自認があるってことはアダルトMOD通さない筋骨隆々世界でもロリボディってことだ。成程確かにこの世界でロリコンとして生まれた奴には垂涎モノだろうな。

 

「今日は何用? エロ魔物がご入り用?」

「なぁエルシータ。幸せって何だと思う?」

「ガン無視な上に激重話題……」

 

 エルシータはふむ、と一呼吸置く。

 

「無難に言うと……結婚」

「無難に言わないと?」

「"許されていること"かなぁ」

 

 おお。

 なんか深そうな言葉が出て来た。

 

「ほら、私って結構異端者なわけですよ。ハルフィーみたいにたくさんの人に認められることを職業としてないしー、エロ魔物だって事業として成立させるために結構苦労したし」

「まぁ、確かに」

「でも段々と功績が認められて、"そうであること"が許されて……これは私の容姿の話でもあるなぁ。先祖返りなんて他の国なら差別を受けててもおかしくなかったのに、皆が許してくれたから、私はここにいて」

 

 適当なノリで意味深なこと言っただけなんじゃないかとか思ってたら、本気の奴が来た。

 ……許されること。

 そこにいて良いと。誰もから赦しを得ること。

 

「うーん、上手く言葉に纏まらないけど……」

「いや。……参考になった」

「ホント? ならよかったよー」

 

 これ。

 ちょっと、単純に興味として……面白いかもしれん。

 

 

 

 次に訪ねたのはノズヴェルガーだった。

 

「おや旦那さん、お久しぶりで」

「ああ。あ、すまん。今回は奴隷買わないんだ。ただちょっと聞きたいことがあって」

「あっしにですかい。ええ、答えられることなら」

「ノズヴェルガー。お前にとって幸せってなんだ?」

「……っとと、なんですかいそりゃあ。……ええと、真面目な奴で?」

「割と」

「あー……」

 

 ノズヴェルガーはポリポリと鼻先を掻いて……ちらっちらと周囲を見渡し始めた。

 

「必要なら遮断結界張るぞ」

「……お願いしやす」

 

 神官スキル:遮断。

 すると、ノズヴェルガーはふぅ、と一息を吐いた。

 

「なんだ、そんなに知られたくないことなら無理に聞き出さないが」

「あ、いや……その、実はですね、今妻がこっち来てまして。……その、なんだ。旦那さんに話す分にゃ問題ないんですが、アイツに聞かせるのはちょいとこっぱずかしくて」

「妻……っつーと、北の孤島に残してきたっていう」

「へぇ、そうです。一か月ちょいくらい前からこっち来てて、もうすぐ帰るらしいんですが、まー……色々ありまして」

「今回は喧嘩別れじゃないってか」

「そうなりやすね。ヒヒ、そういう意味じゃあっしの幸せってのは結婚になりますかねぇ、無難ですが」

「無難じゃないのだと何になる?」

 

 ノズヴェルガーは。

 

「偽らずに済むこと……かもしれませんね」

「そりゃお前」

「ええ、あっしは偽りだらけですから、尚更にね。……いつかあいつにもあっしの全てを話せたらいいんですが、そりゃまた遠い未来の話で。けど、奴隷の方々を見てるとたまに思うんですよ。この人たちが、こうやって奴隷なんてもんに身を窶して、自らを偽ってなんとか生を掴まんとしていて……でもそうじゃなくて、この人たちがこの人たちとして生きていける未来があったら、そりゃあどんなに幸福なんだろうって」

 

 青臭い理想論ですがね、なんて付け加える。

 

「あっしは誇りを持ってこの仕事をやってる。奴隷として売られて来た皆さんにゃ最大限の敬意を尽くしてるつもりだ。だけど同時に、奴隷なんてものはこの世から無くなりゃいいと……そんな制度に頼らずとも、皆が皆ありのままに在れる世界になりゃいいって、常々思ってますよ」

 

 偽らず、ありのままに。

 ……同意するけど、俺の「自分勝手」とはまた違うな、これは。

 

「あーいけねぇいけねぇ、顔が熱くて堪らねえ。……ちょいと青臭過ぎましたかね?」

「いいや、参考になった。ありがとな、ノズヴェルガー」

「ひひひ、どうだいウチの旦那。カッコいいだろ?」

 

 ──何?

 一瞬殺気を向けそうになった。あり得な過ぎる事象だったから。

 

 言動から察するにノズヴェルガーの妻なのがわかるから斬りかかりこそしないけど、全然、普通に、知らん奴だったら一回殺してたまであるぞ。

 

「おっと……とと、ドラゴンの尾を踏んだかいアタシは」

「旦那さん、すいやせん、コイツは」

「ああいや、いいよ。そこまで気は短くないから。紹介はしてくれると助かるが」

「ええ、ええ。コイツはデルフォイアー。あっしの嫁です」

 

 申し訳ないけど警戒心は高めで当たらせてもらう。

 俺の遮断結界に入ってくるとか、ファントムでもできないからな。

 

 称号は……『真実の契約者』。

 

「嫁だなんてまたこっぱずかしい呼び方をするもんだね。結婚してから何年経ってると思ってんだい」

「……すまん、警戒を解くために聞きたい。どうやって結界に入って来た?」

「入って来たわけじゃあないよ。元からいたのさ」

「霧隠れか?」

「アサシンスキルじゃあないよ。そういうんじゃない。影潜みってスキルがあってね」

「怪異スキルを使えるのか!?」

 

 思わず大声を出してしまった。

 いやだってそれ、上位種族固有のスキルじゃ。

 

「それも違う。契約スキルだよ」

「すいやせん旦那さん、簡単に言うと、あっしら妖狐族の中でも仙狐って呼ばれるような階位に至った奴は、契約スキルに応用を利かせられるんでさ。んでコイツはそれを使って、"契約者のスキルの一部を借りる"ってなことができて」

「……怪異スキル持ちと契約していると?」

「そういうこと。……なんだい、そんなに驚くことかい?」

 

 それは。

 話が、変わって来たかもしれん。

 メアリーの同類。あるいは草案世界のメアリー・スーたちのような群れが北の孤島にいるかもしれないってことだ。

 

 俺の幸福がどうこう言ってる場合じゃないというか。

 それは確認しに行くべきだろう、流石に。

 

「……契約の一族。興味が湧いてきたな」

「なんだったらアタシの帰郷に合わせて来るかい? アンタ、相当強いらしいじゃないか。護衛にするにゃ持って来いだ」

「そりゃ無理だ、デルフォイアー。旦那さんは」

「いや。……その申し出、受けさせてもらう。その際もう一人連れて行きたいんだが構わないか?」

「応ともさ。よっし決まりだね」

「……旦那さん。無理はしなくていいですからね」

「大丈夫だよノズヴェルガー。俺は自分を変えてまで目的を遂行したいと思う奴じゃあないから」

 

 遮断結界を解く。

 っつーか。

 

「最初からいたってことは、ノズヴェルガーの幸福論も全部聞いてたんだよな」

「まぁね。でもコイツの隠したいことってのは耳を塞いでたよ。話す気が出るまでアタシは待ち続けるさ」

「……いい嫁さんだな」

「ええ、まぁ……あっしには勿体ないくらいで」

「でも何の断りも無く影に潜んでたのはどうかと思う」

「ひひひ、そりゃ若い時からの化かし合いの延長って奴だよ」

 

 ノズヴェルガーが良いなら良いけどさ。

 ……北の孤島か。タスクと言うか、目的追加、と。

 

 

「原初の聖獣」

 

 

 ところで、解決していない問題の一つと言うか、結局ソレはなんだったのかって話に、原初の聖獣というのがある。

 聖堂に言葉を伝えた最初の聖獣。カスパル、いやさキャスパーに話を聞こうと思ってヒーズァフロークを訪ねたら、なんでも今デート中とかなんとか。

 曰く、アポトシス聖の召喚獣として生き残っていた聖杖バルタザール……バレスアーサーと名を整えたもう一柱の堕天使と"イイ雰囲気"らしく、気前よくテイム解除をしたアポトシス聖の背押しもあって、今婚前旅行に行ってるとか。

 

 うーんファイナルファンタジー。

 どこもかしこも目に見えた災厄がなくなったことで恋路にリソースを割けるようになったのだろう、幸せ空間があちらこちらにある。

 前も述べたように、俺はそれを好ましいと思うタチだ。俺の幸せの一つがそれであるのは間違いないけど、今回に限ってはそれを達成するためにまず俺が幸福にならなくてはならないというディレンマを抱えているため、一旦これについては鳴りを潜めさせておいて。

 

 オニキス・リオンも結構忙しくしていて、他に頼れるのはベリル・トラウオン……はまだ知り合ってすらない扱いに等しいのでないにしても、ガルーダかパピルサグ……はおいそれと会える存在ではなくて。パピルサグに至ってはまだ帰ってきてないらしいし。

 どーしよっかなーってヒーズァフロークの内部をぐるぐる歩いていたら──発見があった。

 

 いや聖堂ってさ、神殿の豪華絢爛さとは違って、質素堅実というか質実剛健というか、THE☆秩序みたいな場所なんだよ。青と白を基調としていて、ルールとかも厳しくてさ。

 

 ──でも全存在全裸化計画で俺の目に映る「人々」は全員全裸美女美少女になっている。

 あれね。

 清楚なシスタードチャシコエロ概念ね。

 

 じゃけんくだらないこと考えてないでどうするか考えましょうねー。

 

「……あら、ヴェルグさん?」

「ん?」

 

 聞き覚えのある声に振り返れば。

 

「……え、リア? なんでいんの?」

「こちらのセリフですわ。貴方はあの家の方々に捕まったと聞いていましたのに……また抜け出してきましたの?」

「いやそれ流石に知り過ぎだわ。誰だお前」

 

 俺が捕まったのは昨日っつーか今朝なんだよね。

 エイルニルス公国にいるリアが知る手段はない。この世界、まだ遠隔での情報のやり取りが未発達だから。

 

「ちぇー。すぐ見破りすぎでしょ、可愛げのない人間」

「そりゃ悪ぅござんした。で、お前誰」

「ん-、やっぱり最も偉大なる者(アジン・カリン)だけど最も偉大なる者(アジン・カリン)じゃないね。ボクを見てそういうこと言うなんて」

 

 ああ。

 いや、これは全存在全裸化計画の弊害の一つだ。

 

 前以上に、俺は相手が人なのか魔物なのか魔族なのか判断がつかない。

 全員一律全裸に見えているから。

 

「まさかとは思うが、お前が原初の聖獣か?」

「そだよ。会いたがってる思念をキャッチしたから、ボクから会いに来てあげたんだ。聖堂からは行方知れず扱いになってるから、特別だよ?」

 

 思念をキャッチした、か。

 オニキス・リオンの推測、初めから人語を操れる存在、あるいは脳に語り掛けることができる存在のどちらか、というのは、どっちも当たってたってわけだ。

 

「ボクはアウドゥムラ。原初の聖獣にして神を名乗らなかった魔物」

「ああ、聖堂に神がいないのはそういう理由なのか」

「そ。ボクだって聖気を扱えるし、人語を解せるけれど……それで調子に乗るのは危ういと判断してね。適当の知恵と勇気を与えて自分は雲隠れしたってわけさ。もう聖気は使えないから、ボクは人間に化けることができて、ただ喋れるだけの魔物になっちゃったわけだけど」

「……ちょいと聞きたいことがある。場所を移してもいいか?」

「次元スキル:大地洞」

 

 空間に波紋が広がる。

 マージか。

 

「場所を移さずに場所を移すならこれが持って来いだからね」

「……恐れ入るよ、色々と」

 

 そこへ入った。

 

 

 サモン:カワード。

 

「久々に出されたと思ったら……嫌な奴がいる」

「わ、カワードじゃないか。相変わらずだね。臆病者のクセに歯に衣着せぬ物言いだ。敵を作るからやめなって前に注意したの、覚えてない?」

「聞き届けて欲しいのなら、聞くに値する言葉を吐いて」

 

 バチバチやん。

 うわ……ヴィシャスとオブセルウェルもここに呼んでみてえ。三柱テイム、断念はしたけど……これ見るとやりたくなるな。

 

「気分が悪い。帰る」

「帰っても再召喚するけど」

「……。用件はなに? 早く済ませて欲しい。一秒でもこいつと同じ空間にいたくない」

「なんでそんなに嫌ってんだ。そんなに嫌な奴なのかアウドゥムラって」

「いいから」

 

 よくわからんな。

 まぁいいや。んじゃ、聞きたいことを聞きますか。

 

「聖獣スキル」

「──聖獣スキルに寿命を操作するものはないし、スキルの開発については完全に天賦の才能だからボクでも手を出せるものではないよ」

「……じゃあ、アウドゥムラ、カワード。お前らの思う幸」

「ボクらの幸福はそれぞれに違うよ。ボクは自由であること。カワードは安全であること。ヴィシャスなら悪徳を積めることだし、オブセルウェルは覗き見ができることになるかな」

「お前」

「それは仕方ないんだ。ボクは思念をキャッチして会話をしているから、言の葉を紡ぐより先に返事が出てしまう」

「俺は味方だぞカワード」

「でしょ」

 

 確かにこれはウザい。

 言の葉の先を一生取られ続けると話す気力が失せる。

 

「じゃあ」

「君が死ねるかどうかについてはわからないな。ボク達でさえ未知の領域だ。だけど、一縷の望みがあるとすれば──"対偶"と"認識"。授けられるお告げはこれくらいかな?」

「……まぁ、そこは同意見」

「対偶ねぇ。……お前らは」

「それについてもわからない。概念として存在することはわかるけれど、誰なのか、何なのかは全くの不明だよ」

「そうかい」

 

 ウザいが、ちゃんと聖獣ではある、か。

 

「──ところでさ、可愛げのない人間クン」

「ん?」

「君さ、万象と会話できるんだろ? ちょっと会って欲しい奴がいるんだけど」

「お前のその先読みで何が起きるかわかったりしないのか」

「いやいや、ボクは未来視を備えているわけじゃないよ。思念をキャッチしているだけ。それで、どう? 謝礼は弾むよ?」

「たと」

「たとえば──希少霊獣とされるような、限りなく出生率の低い魔物が繁殖の際に使う媚薬、とか。人間が使えば一発で頭がパァンとなっちゃうようなものだけど、君なら……ってね」

 

 ぐ。流石聖獣。

 今最も欲しいものを的確に報酬にしてきやがる。

 

「乗った」

「決まり! じゃあ──今すぐ行こう」

「あーあ。それじゃ頑張って」

 

 自己送還するカワード。

 そして俺の腰をがっちりつかむアウドゥムラ。

 

「エクラカンシス」

 

 何語かすらわからないその単語を彼女が呟いた瞬間。

 

 ──俺は、原生林にいた。

 いやここどこ。

 




次も幕間小話になります。
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