※この作品はR-18です。

アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ   作:姫鼠まりあ

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幕間小話-実は色々変わってて-(G度無しR18ちょみっと)

「産卵」

 

 

 それは魔素の造物が災禍となりて、たった数時間でこの惑星を覆いつくしたすぐ後の事。

 魔族大陸を中心に魔素の造物は消え去り、そして魔素も消えてなくなった。

 

 あの時は死を覚悟したものだと、シーファは独り言ちる。

 魔族として生まれたからには悟っている事──どんな魔族であれ、気付いていること。「自身は消耗品である」というただそれだけの事実。

 自分たちは主役ではない。自分たちは舞台装置でしかない。自由意思が許されているのはただ、今は必要ではないからでしかない。

 

 そういう自覚があった。

 

 そして──魔素源王なる存在を知り、それが死なば全魔族が死ぬことも知って。

 だから、魔素の造物が消えてなくなるということは、同じく魔素の塊であるシーファも死ぬのだろうと──その時は全てを諦め、今の今まで共に戦っていた家族たちに別れの言葉を吐いたのである。

 

 ──"ありがとね、今まで、すっごく楽しかった!"と。

 

 シーファは思う。

 あの時は死ぬほど恥ずかしかったものだ、と。

 全然消えなかった。どころか、想像していた冷たい死などとはかけ離れた「暖かいもの」で身体が満たされ──駆け寄って来たケル達に「何言ってるの」と揉みくちゃにされ、そこで。

 

 自分が魔族では……消耗品ではなくなったことを悟ったのである。

 

 

 その後、大陸の全域から魔素の造物が消えたと知り、リアやラクニシェルたちとの別れを済ませた後、シーファらは帝国の家へと帰って来た。帝国でもまた魔素の造物が発生していたらしく、どこもかしこも酷い有様で、少なからず死傷者も出てしまったようだったけれど、それでも人々の目は死んでいなくて。

 スイらギルドとの連携を取ったり、ラムナザール四世となぜかいたルウィンとも情報交換をしたりして、あっという間に一日が過ぎて──その夜のこと。

 

 シーファが魔素ではなくなった己の中のナニカを色々動かして遊んでいる最中、真夜中も真夜中な時間に、来客があった。

 一応。

 ここ、ケル邸は特殊な出自の者の多い家となる。暗殺組織出身、没落豪族出身、元天使と人間のハーフに魔族。

 当然警戒はした。した、けど。

 

「ごめんなさい、私が、待ちきれないので、開けます」

 

 という言葉とともに、裏面(リーヅェア)の技術の元作られた特殊なカギをものともせずに開錠した彼女の姿を見て、戦闘態勢にあった全員は顎を落とし──。

 

 そして、同じく呆然としているシーファとアウラニを、来訪者は思いっきり抱きしめて頬ずりをしたのだ。

 

 

 ──あの時の他の三人の生暖かい目は一生忘れない。

 シーファはまたそう独り言ちる。

 

「シーファさん、さっきから、何を、頷いているのですか?」

「私達の感動の再会を思い出してた」

「ああ。……本当に良かった、ですね」

「うん」

 

 今一緒にいるのは天使のアウラニ。自分たちに任されたタスクが丁度被っていたので同室での作業中。

 ヴェルグについては勿論考えている。彼の体質の真実。寿命。

 "自分たちと共に死ねることこそが幸せ"だなんて傲慢な考えはないけれど、永遠が苦痛であることはよく知っている。

 魔族、あるいは天使であった二人は特に理解がある。

 だからどうにかしたいと考えていたし、どうにかする気でいた。

 

 ──というのに。

 

「"ちょっと幸せについて考えるためにぶらぶらしてくる"……ってさ。なんか……なんか」

「ヴェルグさん、らしいですが、確かに、まぁ、肩透かしは、くらいましたね」

 

 そうなのである。

 あの頑固者の思考を変えようというのだ、泣き落としだろうが色仕掛けだろうが何をしても効果の無いだろうヴェルグの説得には、数週間、数か月はかかってもおかしくないと──そういう覚悟があった。

 あっさり過ぎる。色々。

 

「シーファさん」

「うん」

「──結婚式についてなのですが」

「うーん」

 

 今そういう流れじゃなかったよね、というシーファのツッコミ。どちらのアウラニも天然なところがあるけれど、とりわけこっちの天使のアウラニは天然オブ天然だ。

 彼女が二つに分かれた時から、天然が研ぎ澄まされている。人間のアウラニはそう考えると丸くなった方だとひしひしと感じた。

 

「結婚……する、んだよね」

「……あの日、頷いてくれたのは」

「ううん、嘘とかじゃないしノリとかでもないんだけど……実感わかなくて」

 

 結婚する。

 婚姻の契りを結ぶ。同性での結婚は珍しいこととはいえない事ではない。帝国では同性カップルがそれなりにいる。ただ三人で、しかも双子と──という扱いになっている──というのは中々な異例で、きょうびシーファは「魔性のテクで姉妹丼を頂いた」なんて誹りを受けている程。

 魔性であるのはあながち間違いじゃないし、テクも間違いじゃないけど、なんだかなぁと思う今日この頃。

 

「結局アウラニちっの精子って子種になるんだっけ?」

「……人間の、私の、精子は、なると思いますが……その」

「あ、そっか。魔素の塊じゃなくなったからって私別に子供作れないんだった」

「はい……」

 

 曰く、心化というものをしたらしいシーファ及び全人類は、けれど元の種族から何が変わった、とかはほとんどないのだという。

 よって生殖機能にも変化はない。三人の子供を作ることはできない。

 

「──ところが、そうでもないかもしれないぞ、ガブリエルの子」

 

 瞬時、天使スキルの剣らしきものを作り出したアウラニがその声に斬りかかる。

 当然のようにソレを止める声の主。もう片方の手で、シーファが作り出した槍も抑えていた。

 

「何を、しに来たのですか、ウリエル」

「焦るな、逸るな。天界の第一位に睨まれては委縮してしまうだろう」

「……私と、戦うことなく、投降して……そして、今、平然とこちらの、攻撃を、止めておいて。よく、言えますね」

「これでも手一杯だ。──それより、話しがあって来た。手を引いてくれないか、ガブリエルの子と……そしてその恋人よ」

 

 ウリエル。

 天界事情に詳しいとは言えないシーファでもその名は知っている。

 

 天の炎ウリエル。魔族からしてみれば、視界に入れた瞬間にでも逃げ出さなければならない相手。

 

「引くつもりがないのならこのままでもいい。さて、先の話の続きだが。ラファエルが自身と陸み合っていることは知っているな?」

「……はい」

「奴らの情事には然して興味が無いのだが、その最中に不可思議なモノが現れたそうだ。それがコレだ」

 

 コレ、と。

 ウリエルは、熱を持たない炎らしきもので、懐から球状の何かを取り出す。

 

「えっと……話についていけないんだけど」

「天界では今ラファエルという大天使が"自身を犯し合う"という珍事を行っていてな。その最中に出て来た更なる珍事を持って来た次第だ」

「これは、タマゴ、ですか?」

 

 ここでようやく、二人は剣と槍を引く。

 傷一つついていない両手を適当に払って、ウリエルは浮いていたタマゴを手に取った。

 

「そう、タマゴだ。……言っておくが天使は胎生。卵生ではないぞ」

「え、天使って子供作れるの?」

「なんだ、言っていなかったのか?」

「……その、こっちの穴は、弄ばれることはあっても穿たれることはありませんから」

「お前達の情事の詳細などどうでもいいのだが」

 

 知らなかった事実に、シーファは思わずアウラニの子宮を見る。服越しであってもドコにあるかくらいはわかる。

 

「それで、ウリエル。それは、なんなのですか?」

「天使の卵。……いいや、心の卵。そう表現すべきだ。私も低位種族……もとい、ヴェルグに確認を取るために来たのだが、不在か」

「うん、今はいない。……あれ、もしかして」

「察しが良いな、ガブリエルの子の恋人。──そう、心化によって存在ごと変質した私達は、生殖によってこの卵を得られるようになったのではないかと推測している。この卵がどのように育ち、孵るのかは定かではないが……ゆえにガブリエルの子」

 

 ウリエルは。

 赤の髪を持つ、この世のものとは思えない程の美男子は──告げる。

 

「これからの性行為にはしっかりと気をつけろ。"作る気のない子供がデキてしまった"などと泣きついてくる未来を私は」

「余計な、お世話、です!!」

 

 何か、天使スキルの近接攻撃なのだろうソレがウリエルに当たる──その直前に、ウリエルが消えた。

 

 沈黙が下りる。

 

「……えっと、アウラニち。……私、アウラニちの子供なら、産む気あるよ」

「シーファさん、フォローの仕方が、下手です」

「あ、でも人間のアウラニちも同じなら……どっちの子も欲しいかも」

「シーファさん……」

 

 クツクツと。

 あるいはげらげらと。

 天界に帰っていたのだろうウリエルの、面白くて仕方がない、というような笑い声が、ずっとずっと二人の耳朶を打っていた──。

 

 

「性」

 

 

 オリランカ・グランディオス。

 それが銀閃のカローライナ、あるいはシアルル王国第二王女のフルネームである。

 

 彼女は今。

 

「……あの、姉様。……その話は本当なのですか?」

「ええ。帝国のお友達のところに行きたい、冒険者に戻りたい。貴女の夢を叶えるには、これが一番良いって話し合ったの」

「私の意見とかは」

「だって貴女を会話に入れたら、"デメリットが大きすぎるから無しです"とか言うでしょ?」

「怒られるから混ぜなかったと……?」

「貴女が一番頑張ったのだから、貴女が一番に報われるべき。でしょ?」

 

 政略結婚の危機にあった──。

 

 否、危機ではない。当然である。彼女は第二王女、彼女の婚姻が政治の道具になるのはわかりきっていたことだ。

 けれど。

 

「結婚相手が、帝国のラムナザール四世のご息女というのは、その……色々おかしくないでしょうか!」

「妥当な話でしょう。王国は今まで終末防衛機構の封印のためとはいえ、酷く横暴な振る舞いをしてきました。その最も大きな被害者が帝国。ならば帝国との友誼を結ぶために、こちらの王族を嫁がせるのは当然のこと。次期王位継承者が私である以上、その次に位のある貴女が結婚相手に選ばれるのもまた当然」

「いえあの。同性で」

「ふふふ、それがね。魔素の造物が消え去った二週間のうちに、各国の研究院で面白い報告が出てきてるの。それがこれ」

 

 これ、と姉に渡された資料。

 オリランカはサッと目を通して、「は?」という間の抜けた声を出した。

 

「……意味が分かりません」

「じゃあ私が読んであげましょう。──判議会が発表した"事実"によると、我々人間を含むすべての生物が卵生に置き換わった模様。各国での魔物実験を含む検証の結果、それはやはり"事実"であり、そして性交は異性同性関係なく可能──ね?」

「何がね? なのですか……」

 

 資料には他にも、着床から卵が形成されるまでにかかる速度が驚異的な短さを誇っている点や、卵から生まれた赤子が胎生の赤子と遜色ないことまで記載されていた。

 人間と魔物が同一起源である、という、教会の信仰を少しばかり攻撃するような内容ではあったものの、データの揃い方が尋常ではない。

 

 まるでそうなるとわかっていた誰かが、事前に検証準備をしていたかのように。

 

「覚えていますか? 幼き頃、貴女とまぐわい、目くるめく女の子同士の快感を求め合った日々を」

「……まぁ」

「あの時に私は言いました。──"男は獣だから、獣欲に貪られるのが好きなら止めはしないけれど、貴女みたいな可憐な女の子は、私のようにしなやか指を持つ女の子に抱かれて、しとしととしたきめ細やかな快楽を得ていた方が、ずっといいと思うのよね"と」

「一言一句違えずに覚えているということは、今も思っているということですか」

「ええ、勿論」

 

 オリランカの姉、第一王女ユリア・グランディオスは生粋のビアンである。

 とはいえ自身らの婚姻が政治的な道具であることなど理解していたし、とっくに覚悟を決めていた──けれど。

 

 自分たちの変質と、生殖に纏わるアレコレが報告されて、それはもう驚き、それはもう狂喜乱舞した。

 

「シようと思えば、オリランカとの子も作れるのです」

「……でも姉様。私はもう男性とのセックスを経験済みで、個人的にはあちらの方が心地よく──」

「は?」

 

 ドスの利いた声だった。

 姉から出たものとは思えないその声にビクっとなって一瞬硬直したオリランカは、そのまま壁の隅にまで追いやられる。

 キスもたるや、という距離で──その爛々とした双眸がオリランカを見つめる。

 

「誰と。どこで」

「……その」

「言いなさいオリランカ。どこの馬の骨ですか」

「……恩人なので、馬の骨ではないですし……その、色々落ち付いたら、また交わることを約束していまして」

 

 顔の両側にドンと手を突かれ。

 股の間に膝を突かれ。

 

「ダメです。許しません。貴女はこれから帝国に嫁ぐのですから、……男と交わうなんて、絶対に許しません」

「で、でも、少なくとも姉様とヤった時より、男性との方が気持ちよくて……。嫁ぐ前なら一回くらい」

「許しません。……そして、なんですって? 私とヤった時より気持ちよかったとは、どういうことですか」

「う……わ、私は、その、しなやかな指でじわじわと静かにサれるより、男性の上に乗って……こう、子宮の入り口をゴツゴツと突かれる方が好きで」

「──オリランカ。この世には張り型というものがあります。特にラニドガエルの体液を固めて作った張り型は、手触りや挿入時の摩擦がとても心地よく……そしてその双頭のものであれば、どちらも楽しめます。どうですか」

「そ、それを一度でも試しているということは、やはり姉様も挿入自体はされた方が気持ちいいと思っているのですね」

「……それは、私だって……聞いたら、シたくはなります。でも男性とするのは……」

 

 無論。

 "一般的な姉妹"の名誉のために述べておくことだが、普通は身内であってもこんな会話はしない。

 これはこの世界にアダルトMODが導入されていて、会話の選択肢に「性的な話題」がある故のものであるのだけど、かといってこの姉妹の、特に姉の方の性的倫理がどうかなっていることも否定はしない。

 

 そして幼少の頃からその姉の言動に晒されているオリランカもまた──また、である。

 

「とにかく、私と性交をした男性は私の恩人なので、悪く言わないでください。そもそも私から襲ったようなものなので、これ以上貶すような言葉を吐くのであれば怒ります」

「別に男性を貶しているわけではありませんよ、オリランカ。私はただ、女性同士の方がきめ細やかな快楽を得られて、それが心地いいと、そして時たま味変したいのであれば張り型というものもありますから、激しく突かれるだけしかできない男性との性交よりバリエーション豊かですよとそう言っているだけで」

「男性とのセックスは別に激しいものだけではありませんよ、姉様。ゆったりとした……ほとんど動かない、ただ膣に陰茎を挿入しているだけ、というセックスもあります」

「そ、そんなことまでしたのですか?」

「いえ、それ自体は見ていただけです」

「……つまりその方は、オリランカ以外の女性とも性交をしていると」

「婚姻のための、世継ぎのための性交以外は、誰とシたところで関係なくないですか?」

 

 発覚する。

 この二人は──絶望的に趣味が合わないということが、ここで。

 

「一度会わせてください。貴女を誑かした男性と」

「だから、悪く言わないでください。誑かされてません。場の雰囲気に流されて、そしてお酒を飲んでいたことはありますが、私から襲いました」

「お酒!! だからあれほど貴女にお酒を近づけてはならないと……オリランカ、貴女はお酒を飲むと暴走するのですから、何度も何度も注意したでしょう!」

「あれは極上のお酒でした。飲んだことに後悔はありません。なんでしたらあのお酒のおかげで他のお酒を飲む気が失せました。ですから、私からお酒を遠ざける一助にさえなっていると言えます」

「極上かどうかとかは知りません。貴女は酔うと……幼くなって、欲望に忠実になって、性に奔放になるのですから、酔うのは私の前だけじゃないとダメです!」

「あー! 姉様といる時だけお酒を解禁してきていたのはそういう理由だったんですね!? なーにが"私といる時くらい、気を抜いてもいいのですよ"、ですか。姉様の方がケダモノじゃないですか!!」

「だって貴女可愛いんですもの! 小さい頃から揉み続けた成果か、こんなにも大きな胸と、冒険者家業で鍛えられた体! 指を入れるとぎゅうぎゅうと締め付けて離さない可愛らしい膣!」

「──は? 待ってください姉様、私は……幼い頃以外で姉様と性交をした覚えはありません。時折帰った時にお酒を飲むことはありましたが……まさか」

 

 サッと顔を逸らすユリア。

 

「は、犯罪ですよ姉様! お父様とお母様に言いつけます!!」

「じゃあ私は貴女が男性とセックスしたこと、この後もセックスをしようとしていることを言いつけます!!」

「いや姫さん方、外まで聞こえてるから音量下げた方が良いぞ。あとガキの喧嘩かよ。俺にとっちゃどっちも乳臭いガキのまんまって――」

「契約スキル:月の光が満ちし刻(Azeuph)」

「オイオイオイオイ冗談だ冗談! 陛下が呼んでるから呼びに来ただけだっつの! んじゃあな! クソ、陛下も陛下だ、なんで俺がこんな使い走りみてーなことを……」

 

 全力で遠くに行く気配。

 だけど、良い水差しだったと言えるだろう。

 

 ヒートアップしていた二人は「ふぅ」と息を吐き。

 

「姉様、ここは一時休戦で」

「そうね。……けれど、嫁ぐ前に性交する予定というのだけは言わせてもらいます。帝国との関係性に罅が入りかねませんから」

「ラムナザール四世の人となりを考えれば大丈夫だとは思いますが……。いやというか私が持っている札は消えていませんからね。普通にレイプですからね姉様」

 

 口笛を吹いて。

 ユリアはそそくさとその場を逃げ去る。動きに反してその素早さは、オリランカをしてアサシンスキルでも覚えた方が良いんじゃないかと思う程。

 

 オリランカは溜息を吐いて。

 

「……事が終わったらもう一度、という約束……忘れられてないと良いけど」

 

 なんて、彼を思い浮かべる言葉を。

 

 

「魔素源王」

 

 

 スミススキル:クラフト:トラーヴァの魔本。

 

 少女がスキル名を呟くと──周囲に集められた素材が次々と消費され、ソレが建造されて行く。

 

「おおー……」

「これは……壮観だね」

 

 少女。

 ラヴ・グラットル。あるいは世界の英雄と称えられておかしくない彼女は、なんかフツーに王国に戻り、金章冒険者としての生活を送っていた。

 突然預けられた幼女と共に。

 

 それは本当に突然。師匠であるヴェルグが転移でやってきて、「コイツ、実はドゥームスなんだけど記憶とか全部封印してあって今赤子状態だから。じゃ、よろしく」とか言って、また転移。

 決戦の場での搾乳、世界規模の授乳プレイの時からではあるけれど、「実はあの人尊敬には値しないんじゃないか」という疑念がラヴの中に浮かんでいた。ある意味、憧れと愛恋を分けて考えられるようになった──成長とも取れる。

 

「前文明の移動手段! 素材集めには苦労したが、苦労しただけはあったな!」

「……しっかし、スミススキルがこんだけ時間をかけるってのは、俺は初めて見るぜ。あとどれくらいかかるんだ?」

「えと……目算ですけど、五時間以上はかかるんじゃないでしょうか……」

「そんなにかい? ……グラットル、魔力は」

「あ、それは大丈夫。えへへ、私超絶強くなったので……今ならカラジェットにも勝てちゃうかも」

「おや。……魔力が多くなったからといって勝てる僕ではないよ」

「じゃあ、やる? 待ち時間長いし、久々の手合わせ」

「いいね、やろうか」

 

 イグニスの面々は「まーた始まったよ」という目。

 そして──。

 

「はいはーい、ドゥームスちゃん。これ何かわかるかなー? 数も言えたら偉いです!」

「……赤い、フルーツ、三つ」

「うんうん、正解!」

 

 フツーに王国に帰ってきたラヴに、これまたフツーに合流したヴァネッサ。

 そこにはちゃんと「感動の再会」があったのだけど、ヴァネッサはラヴが子持ちになっていることの方が驚いたらしく、涙ちょちょ切れながらも気になって仕方がない──みたいな、何とも言えない空気になった。

 なお、ポリウィックに関しては、生存自体は伝えられている。

 ラヴが何故一緒じゃないのかをヴァネッサに問えば、曰く──「いやー、あはは……その、ポリウィックさんは……今ドロッドロで。あ、溶けてるとかじゃなくて……え、えっちぃやつです」と。

 

 その原因がヴェルグにあることなど露知らず、「そっか。……でも、生きててくれて、ホントに良かった」なんて"太陽"を発揮するラヴに、ヴァネッサは苦笑いするしかなかった。

 一応、封印棺から解放された後、見ているのだ。メアリーにこれでもかと調教されたポリウィックの姿を。ヴァネッサを視界に収めて放った第一声が「お願い、何でもいいから突っ込んで、掻きまわしてぇ!」だったのを。

 

 いくら天然のヴァネッサでもわかる。

 わかるから現実逃避して、今は「お母さん」をやっている。その、ラヴはあんまり「お母さん」には向かない性格をしているから。

 

「うぅ……ヴァネッサたんが、魔素源王にとられた……」

「いやぁ参ったね。相手が魔素源王となると、いくら記憶がないとはいえ僕達じゃ敵わない」

「頼むからお前達余計なことはしないでくれ」

「出た出た~。ヴォーガーってば、あの人間と仲が良いからってなんかまとめ役みたいなこと言うようになったよね。ちょっとウザいかも」

「ふん、勝手にやっていろ。そしてヴォーガー。お前の言葉など聞くに値しない。俺は俺で」

 

 ぐりん、と。

 ヴァネッサと「お勉強」をしていたドゥームスが、精霊たちを向く。相変わらずヴァネッサには届かないその声は。

 

「……ほら、謝りなよゼニス。無理だって」

「……むぅ」

「どうしたの、ドゥームスちゃん。あ、セーちゃんたちが気になるの?」

「気になると、言ったら。貸して、くれる?」

 

 ぞっとする精霊たち。

 けれどヴァネッサは気付かない。気付くわけがない。

 

「うーん、ずっとは無理だけど、ちょっとなら、かな? セーちゃんたち優しいから、ドゥームスちゃんとも遊んでくれると思うし!」

「いやあのあのあのあのヴァネッサたん、その子実は魔素源王って言ってぇ」

「魔素源王の"遊ぶ"って、どういう意味なんだろうね」

「魔素は無くなったんだし、そんなに怖がること無いんじゃないの~? ──え」

 

 むぎゅ。

 ヴァネッサには光の塊にしか見えていないソレ。ディーネ──水の精霊が、ドゥームスに掴まれる。

 

 そして、ぱくりと。

 

「あ、ダメだよドゥームスちゃん。セーちゃんは食べちゃだめ」

「だめ? ……わかった、やめる」

「ぷはぁ!? い、今やばかった! 確実に取り込まれかけた! 魔素源王はやっぱ魔素源王だ、これヤバい!」

「食べる以外で、遊ぶ。……どうする、正しい?」

「んー、私の言葉もセーちゃんたちに届くわけじゃないから難しいんだけど……」

「『並んで』、『踊って』」

 

 ──埒外の強制力が精霊たちを襲う。言われた通りに一列に並び、思うように踊り始める。

 なおこれは精霊たちもが「心化」している故に、魔素源王……元気源王となっているドゥームスからの強制力であるのだけど、それをヴァネッサが知る由も無く。

 

「え、す、すごい! ドゥームスちゃん、精霊遣いの才能あるのかも!」

「えらい?」

「うん! ……凄いなぁ、私も頑張らなくっちゃ!」

「『余計な事』、『しないでね』」

「え?」

「ううん、なんでもない」

 

 精霊たちは痛感する。

 記憶や知識は確かに封印されているのかもしれないが──この幼女は確実に魔素源王だと。

 

 期せずしてではあるけれど。

 ヴェルグをして「厄介」と言わしめる五大精霊+ヴァネッサは、ドゥームスがそばに来ることで完全に抑えつけられる結果となったわけである。

 

 

 ちなみに、トラーヴァの魔本はヴェルグがラヴに贈ったものである。

 元々そのつもりで先に奪取したのだから、当然、と。

 

 でもその理由を言っていないから──まぁ。

 

 ラヴ本人がそのプレゼントをどう思ったかは、彼女のみぞ知る──。




ヴェルグ『不変存在』北風
グノーシス『未踏の理想郷』契機
マスカルウィン『継承者』転移
シーファ『反照』転換
ノーラ『クリトリス1m20cm』前世
メアリー『魂の奉仕者』分裂
アウラニ『天界の歌声』一位
バルクス『終末防衛機構』道具
オリランカ『第二王女』奔放
リア『戴冠の公姫』堅固
スイ『皇女』戸惑
ラヴ・グラットル『二重存在』太陽
ハルフィー『エルグの調律師』最大
デルフォイアー『真実の契約者』円鏡
ドゥームス『魔素源王』赤子
ファントム『陰に潜むモノ』心頭
フレースヴェルグ『騎士団長』生恥
オニキス・リオン『識の印璽者』事実
ワォスタクライン『孤高の英雄』理想
ユグドラシル『過去と未来の樹』未知
セフィロト『生命と邪悪の樹』愉悦
リシ『使者』胃痛
ハープーン『ガスタの隠者』封印
パピルサグ『当代最優』目惚
修復端末『何ここ/紹介?』自由
イサカリ『環境適応者』遺失
セレマ『法の外典』司祭
ウリエル『天の炎』愉悦
アウドゥムラ『理解者』先手
カワード『臆病者』後手
ヴィシャス『計画者』盤外
オブセルウェル『傍観者』観戦

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