※この作品はR-18です。

アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ   作:姫鼠まりあ

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幸せのある国(G度無しR18そこそこ)

 好きにすればいい。そう思っている。今でも。

 だけどそれは、ああ、思想の押し付けだったのだろう。

 好きにすればいいと言いながら、どこかへ行くのならどこかへ行けばいいと──どこかへ行く前提で話し、気に入ら無くなれば非協力的になればいいと、非協力的になる前提で話し。

 自身の周囲にいる人間は全て「自身から離れていくのが当たり前だ」と言わんばかりに壁を作る。

 

「知ってるさ。あいつらがそこまで薄情じゃないってことくらい。つーか、そういう奴らだから俺は動くんだ。カローライナの時もそうさ。直前まで助けてやるつもりも依頼を受けてやるつもりも……欠片も、ミリも無かったんだ。だけど、魅せられた」

 

 善性に。愛情に。

 同情じゃなくて情動だ。ひたむきであるその姿に心が動いた。

 シーファの種族階位を突破した時も同じ。彼女が友達想いだったから心が動いた。アウラニの種族を分けた時もそう。彼女が心からシーファを想っていたから動いた。

 

「貴方は"変わらない"のではなく"変われない"。変わろうという気が起こせない。だから貴方は"周囲の人間が幸せになれば自分も幸せだ"という結論に至った。だって周囲が幸せで埋め尽くされさえすれば、貴方に余波が来ることは無くなるから」

「ま、特に異論はない。そうさ、俺の幸福論は自己防衛のためのものだ。視界が幸福で満たされたのなら、俺がその輪にいる必要はない──裏を返せば、自身の幸福は何がなんでも求めたくない。こっちに目を向けようとしてくる奴を全員幸せにしていって、ソイツ自身の人生に夢中にさせてやれば、俺は蚊帳の外でいられる」

 

 全く女々しい話である。

 そもそも幸せになるために聞き込みなんかするくらいだ。わかるだろう。

 

 (コイツ)は幸せになろうとしていないんだ、って。

 この歳にもなって自身の幸せが何かを見つけられていないわけがない。別に何だって良いんだ。毎日エロいことして過ごしたいとか、金がたくさんありゃいいとか、長く生きたいとか。

 理想の幸福なんてものはそこらへんに転がっている。

 ただ俺はそれを享受できない……違うな、享受したくないと思っているから、こんな、世界中のほとんど、ありとあらゆるものを持っていて、潤沢なスキルとカンスト突破のステータスをしていて、寿命は永遠に等しくて金が湯水のように使えて、性奴隷も買いたい放題な上に俺とセックスしたがってくる奴までいて。

 

 十二分の幸せを、俺は享受したくないと思っている。

 

 それが傷でなくて何だというのか。

 

「なぜ、貴方はそういう考えになったのか。わかる?」

「善人ではないから、だろ?」

 

 そうだ。

 善人であれば、物事をいい方向に捉えることができる。幸福の二文字にネガティブなイメージを抱くことが無い。俺は悪人であるつもりもないけれど、善人でもない。

 だから──。

 

「違う。貴方がその考えを自らの心に根差したのは、貴方が物心ついたその時点で、周囲に幸福がありふれていたから」

「……やり過ぎじゃねえか、パインズ。そんなところはノーラでも収集できないだろ」

「取得先はアカシャの円盤。この世界に来て大分馴染んだ。貴方は二度、貴方の風景をこの世界に降ろしている。一度目は夢の世界。二度目は世界と対峙した時」

「……俺の記憶からサルベージしたって? プライバシー侵害だろ」

「今更」

「まぁ、そうだけど」

 

 それに、そうでもしないと無理だろうからな。

 こっちに来た時点からの俺の行動だけじゃ、俺という人間がどういう構造をしているのかわからない。

 

 ……あるいは、そうか。

 俺もまたファイル……テキストデータとなって、どこぞのフォルダに格納されてたりすんのかね。前世の俺はもう一生更新されないデータだから、読み取りはしやすいってか。

 アカシャの円盤(アカシックレコード)。成程、ドゥームスが世界の外側にいる修復端末まで心化できた理由は、そういう繋がりか。

 

「認めるよ。自白する。そうだな、俺は幼少期から周囲に幸せがあって──だからまぁ、早々に食傷気味になったんだろう。こんなに周囲が幸せなら、俺は幸せにならなくていい。それは次第に反転して──俺が幸せにならない方が、周囲が幸せでいられると。──いいや、そうか。だから」

 

 恋人がいた。

 けれど別れた。別れた理由は、恋人であるより友達でいた方が楽しいと思えたから。

 俺から幸福が離れた方が、それで周囲が幸福になった方が、楽しかった。

 

 とんでもない成功体験だ。

 くだらない勘違いだ。

 

「思えばそれがきっかけだな。それを機に俺は、自身から幸福を逃がすような行動を取り続けた。だってそうすればより楽しめる。より幸福になれる。"俺自身が愛されること"より"俺の大切な人たちが笑っている事"の方に比重が傾いた。そしてそれは、"俺を愛するくらいならば周囲の輪に混じってくれ"、なんて歪み方をしていった」

「うん。だから貴方は、自覚するだけでいい。──貴方を輪に入れたいと言っていた人たちのことを。愛する気はないから、早くこっちにおいで、と……手を差し伸べて来ている彼女らのことを」

 

 パインズが、中空に手を翳す。

 するとそこに。

 

 ──"あ"

「……まさかとは思うけど、今の今まで全部」

「うん。だってこれは貴方だけの問題じゃない」

「鬼畜だなぁお前。初対面の、しかも世界の機構寄りのお前だから話せた独り言みてーなもんを……」

 

 こっちをじっと見つめる少女らの姿。

 何のスキルか知らんが、中継されててもアダルトMODは適用されるんだな、とか思いながら──溜息を一つ。

 

「俺の傷については、これで終わりでいいか?」

「まだ。もう一つ。あと一つだけ残ってる」

「なら繋げない方がよかっただろ。独り言じゃないと知れば、俺は取り繕っちまうよ」

「大丈夫。貴方に聞くことは何もないから」

 

 パインズは。そしてこっちを映し出しているのだろうノーラは──異口同音に言葉を揃える。

 

「──ねぇ、彼がいなくなった世界は、幸せ?」

 

 騒音。……かと思うくらい、いろんな言葉の混じった……否定。 

 そして続く罵詈雑言。「そんなわけないじゃん」「馬鹿なの?」「前から思っとったがアホじゃろ」「早く帰ってきてよー」「対偶とやらを探し出して、ご主人様と共に在れるよう尽力しますので、どうか」「天使も、ギルドも、協力してくれると、言っています」「享受したくない、などという泣き言を今更受け付けると思っているのか、人間」「ここで何も言わないのが道具です」「私はそこまで重い感情はないけれど……恩というのはね、溶けて消えるものではないのよ」などなど。

 

 うるせー。

 

「"ノーラ=パインズ"」

「なに」

「お前は一緒に来るか?」

「行かない。貴方の下に辿り着いた"ノーラ"は、楽しそうだし。わざわざ聖獣の思念に干渉してまで呼びつけたのは、"ノーラ"のためだし」

「じゃあここで延々と怨嗟に呑まれ続けるってか」

「ほら」

 

 指を差される。

 ……なんだよ。

 

「善人でも悪人でもないけど、優しい。初対面で、心の暴露なんてものを仕掛けた私を、助け出そうとしてる」

「それがなんだよ。一回関わったんだ、害されでもしない限り、お前を放置して帰るなんて寝覚めの悪い真似するかっての」

「ほらね」

 

 だから何がだ。

 

「いい。私は別に、もう彼らのことを恨んでいない。あるのは憐憫だけ。だから」

「だとしても、意識あるまま動けないのは苦痛だろ。どっちみちもう肉体があるんだ、ノーラとは姉妹扱いでいいだろ。合体するわけでもないだろうし。するならするで方法あるしな」

 

 砕く。

 草案世界の原風景。死体の山の焼け野原を。

 

 いつでも脱出可能とはこいつが言ってたことさ。内鍵だからな、内からは簡単に開ける。

 

 パインズの手を引く。

 

「……いいの? 私がこのまま、第二の魔王になるかも」

「いいだろ。俺に関係ある話でもない。ラヴ・グラットルなり誰かなり、心を得た誰かが対処するさ。それがお前の生き方なら、俺は否定しないよ」

「……ほらね」

「自覚くらいしてるよ。いつもの知らないフリだってわかれ」

 

 出る。

 

 

 出た。

 

「わ! ……出て来た」

「成程、内側からであれば砕ける仕組みか。……聖獣」

「うん、ありがとうねエーテリア。死力を尽くして契約を遂行するよ」

「なら、いい」

 

 出てすぐに精霊王が消える。

 ……。

 

「察するに、この大陸に」

「この大陸に元素を満たす。うん、それで正解だ。そのためにはここを不魔の地にしている彼女をどうにかする必要があった……と言いたいところだけど、どっちが操ってどっちが利用していたのかは定かじゃないね」

「利用し合っていた。それだけ。──ホームポイント解除」

 

 あっさりと。

 それが解除されて──轟、と周囲に元気が満ちる。

 

 直後。

 

「……うげ」

 

 周囲の雑食植物が、次々と全裸美少女化していくではないか。

 まぁなー、気になってはいたんだよな。植物しかないのに雑食っておかしくね? って。

 

 下地はあったと。魔力がなかったから植物扱いだったけど、これで十二分な意思を得て、さらに心化して……あーあー。

 原生林がどんどん肌色に……。ワンチャン俺のオアシスになるかもだったのに。

 

「んじゃアウドゥムラ。対話したから、媚薬くれ」

「じゃあ、はい」

 

 ちゅ、と。

 ……あまりの早業。アウドゥムラがパインズを抱っこして、俺の顔に近づけて、無理矢理にキスを交わさせた。

 

 瞬間──オティヌティヌ様が激しく勃起する。

 いや、俺パインズの見た目そこまで刺さらないんだけど──。

 

「この子の称号、見える?」

「……ッ、『媚薬体液』……おいおい、『クリトリス1m20cm』に勝るとも劣らねーじゃねーか」

「ここにあったクリスタルはね、舐めるだけで似た効果を発揮していたんだ。時たま繁殖の難しい希少霊獣たちをここに連れて来ては舐めさせて、そのばで子作り、なんてこともやってたよ」

「うん。様々な魔物の、交尾を見た」

「あ、意識あったんだ」

 

 あークソ、俺の耐性全部ぶち抜く媚薬だなコレ。クーデター起こした民衆もコレで興奮してたとかなんじゃないのか。

 ……帰ってマスカルウィンとヤるか。

 

「何帰ろうとしてるの、可愛げのない人間クン。『イき疲れる』をやってみたいんだろ? ──適任がいるじゃないか。ヤってる最中に補充され続ける媚薬は、確実に疲労を呼ぶよ」

「遠慮する。つーかちょっと幼すぎ。媚薬でバキバキにはなってるけど、本来なら勃たん」

「勝手に性交させられそうになってるのも納得いかないけど、私の身体に興奮しないと言われる方がイラっとくる」

「知らん知らん。アウドゥムラとでも盛ってろ」

「……獣姦の趣味はない」

「つーかお前少女の時に反逆されたとかそんなんじゃないのか。性知識なんかどこで」

「"ノーラ"から得た」

 

 ああ。

 

「ふふ、それじゃあボクはこのへんで。エーテリアとの約束を守るために、大陸中の元素の澱みを解消しないといけないから──じゃ!」

 

 うわ転移しやがった。

 ……カワードが嫌うわけだ。マイペースで自己中で、何より勢いがエグい。カワード基本的に陰の者だからな。アレは苦手だろう。

 

 しかし。

 

 ちょい、エグいか。

 

「ヤる?」

「だとしてもちょっとここは気が滅入るから家に帰る。一緒に来るか?」

「うん」

 

 んじゃ一旦パインズをパーティに入れて、ホームポイント帰還。

 流石にね。原生林で青姦だったらまだイケたけど、所狭しと全裸美女美少女が立ち並ぶ中でガン見されながらックスはね。

 俺自身の羞恥プレイはそんなにだから。

 

 ……つーか、普通に恥ずいな。あのクソ青臭い独白みてーなの全部聞かれてたのか。

 家帰るのやめてどっか適当なところに──。

 

「確保!」

 

 身体に何かが巻き付く。拘束系魔法か? んなもん引きちぎ──っぶな!

 

「えっへっへ、引き千切ったら痛いよ? ──あたしが」

「ナイス、ノーラち! ふっふっふ、どう、ご主人様。クリトリスで拘束されたら振りほどけないでしょ! ノーラちは人間だから、ご主人様の力に耐えきれない!」

「そーだそーだ! ちょっとでもヘンな挙動見せてみな、いくら伸縮性に富むあたしのクリだって、簡単に千切れて流血沙汰だかんな!」

 

 ……いやまぁ転移すればいい話なんだけど。

 

「まぁ待てお主ら。それより先に言うことがあるじゃろ」

「おかえり、ヴェルグ。ソレ鎮めるの手伝ってあげようか?」

「あ、こらケル! ここはせーのでいうとこじゃろ! 何あっさり言うとるんじゃ!」

「いや俺お前の容姿じゃ興奮しないんだって」

「媚薬で勃起してるんだから、関係ない。ツゥから教わった房中術で果てしなく達させてあげる」

「あら、じゃあ私も参戦するわ。ケルの上達具合もみたいし」

「ご主人様、私とはセックスできない、したくないって言ってたけど──4Pなら問題ないでしょ!」

「今日ばかりは、私達も、混ざります」

「その、嫌でなければ、お尻も、挿せます」

「この規模の大乱交パーティは初めてじゃない? どうする? 疑念の塑像使ってユグドラシルも参加する?」

「余計な気を回すな、小娘。……見ているだけでいい」

「では私は食事の準備を──」

「メアリーさん、生殖機能や性的快感を覚えられない私の方がそれに適しています。メアリーさんは興じることができるのですから、どうぞ」

「いえ、私は」

「──いいよ、じゃあヤケだ、もう。呪詛スキル:従属、屈服、眷属:色情魔化」

「!?」

「っ!」

「あ、いいねそれ。呪詛スキル:従属:色情魔化」

「あう……」

「ぬ……久方ぶりに……!」

「であれば、天使スキル、スキル乱反射」

「えええナニソレ!」

「あのあのあの、私はお食事の準備を!」

「開発した道具を取り出す時はこの効果音を入れろとマスターに教わりました。てれれてってれー、認識混濁ポーション噴霧装置~。一時的に判断能力を低下させる自白剤ポーションの安全版だそうです。帝国で仕入れました」

 

 そのカオスの中で。

 パインズが俺を向く。

 

「ほらね」

「……らしいな」

 

 語るまい。

 その後の事など──ご想像通り、である。

 

 

 

 

 翌朝。

 

「お久しぶりですの、皆さん。エイルニルス公国の古文書に少し面白い記述があって、それを共有しに──きゃぁあ!?」

 

 という一幕があって。

 

「なる、ほど……その、それで……ええと、まだ収まらないんですの?」

「パインズちは体液が媚薬らしくてさー。私達はもう一瞬でダウンしちゃったんだけど、パインズちとご主人様とルウィンちはああやって一生盛ってる感じ」

「……出直した方がいいですわよね、これ」

「リアも混ざる?」

「混ざりませんわ!」

 

 とかなんとかあったらしくて。

 

 

 一週間後。

 

「……流石に、限界」

「うん。この子スタミナが無い。私はまだヤれるけど、どう?」

「残念ながら俺もまだヤれる。けど一週間経つと俺リセット入るから、多分精力も回復するぞ」

「負けない」

「マスター、お食事は置いてありますので、お好きな時にどうぞ」

「ああ、ありがとなバルクス。……お前にも性感系統の機能つけるか?」

「いえご遠慮しますではさようなら」

 

 アイツのコックピット入った時、「魂を掴む」ことが出来てたから……魂とセックス、ってのもいける気はするんだよな。

 まぁ嫌ならいいけどさ。

 

「パインズ」

「なに」

「現時点では『イき疲れる』のはちょい厳しそうだ。ずっとセックスできるのはありがたいけど」

「……成程。体液の濃縮。研究してみる」

「というか流れで俺の家来たけど別にお前出てってくれても」

「身寄りとか、あると思う?」

 

 確かに。

 別世界の住民だったわ。

 

「私の体液の研究、していいから。泊めて」

「泊まる、ね。いい言葉だ。それならいいよ」

 

 ツゥに感じていた居候的なもやもやのない言葉だ。泊めるなら全然かまわんさ。

 

 つーわけで。

 

「一旦打ち止めになった」

「ヤりすぎ。一週間ぶっ通しでとか……頭ぱっぱらぱーになっちゃうよ」

「お前に言われたくないよエロ目的で奴隷ごっこしまくってたお前には」

「こっちは連続じゃないもーん」

 

 いやぁ、ヤったヤった。

 それはもうヤった。

 

 けどまぁ、今後に課題は残しつつ、ってことで。

 

「他の奴らは?」

「普通に帝国戻ったり、ギルド行ったり」

「そうか。んじゃシーファ、パインズとルウィン頼んでいいか」

「いいけど……なに? また逃げる気?」

「いやいや。ちょいと俺は俺でやることがあってさ。今日なんだよ、ノズヴェルガーの奥さんが北の孤島に帰る日。その護衛してくるから」

「へー。……帰ってくるよね?」

「ああ。もう誤魔化したりせずに約束するよ。もう見ないふりはしない」

「ならいーよ。……あ、そだ。帰ってきたらでいいんだけどさ、カロちが会いたいって手紙くれてたから、行ってあげて」

「カローライナが? ……なんだろ。まぁ分かった、護衛業終わったら行ってみる」

「ん。じゃあパインズち……と、ヤり部屋にいるだろうルウィンちをお風呂にドボンしてくるね~」

 

 よーし、それじゃあ。

 

 自分の影からむんずとメアリーを持ち上げて。

 

「……あの、シャワー浴びてから出してください」

「いや思ったより時間押してるから俺の事迦楼羅炎で燃やしてくれ。俺は燃えないから」

「熱処理ですか……怪異スキル:迦楼羅炎」

 

 身体に炎ではない炎が点く。

 それは全身の精液やら愛液やらその他諸々の体液を全て焼き焦がし、臭いの元となる成分までもを消し飛ばしてくれた。

 耐性で炎ダメージは一切通らないから、なんかそういう風呂かなんか入った気分だ。

 

「OK、じゃあ行くか、メアリー」

「……一つだけ質問してもよろしいですか?」

「ん?」

「なぜ……勃っていないので? 今の今までパインズ様と性交をしていたのでしょう?」

「ああ」

 

 メアリーが自分からそういう話題振ってくるのは珍しいけど、よほど気になったんだろうな。

 

「丁度リセットが入った……っつーか狙ったんだけど、まぁそういう事」

「……体内の毒や薬も消え去ると。それはまた」

「まぁまぁ、良いから良いから。流石に俺も契約の一族との約束に遅れるってのは後が怖い。特にデルフォイアーは契約スキルのエキスパートらしいからな。俺は契約スキル欠片もわからんから、まぁまぁまぁ」

「人となりを聞く限り、デルフォイアー様はご主人様に危害を与えるようなことはしないと思いますが……」

「それでもだよ。──服装は、まぁ適当でいいか。んじゃ」

 

 はいはい転移転換。

 

 

 

「と……来たね」

「ああ旦那さん、すんませんね、本当に」

「いいのいいの、俺が気になってついていくことにしたんだし。んでこっちが旅の同行者、メアリーだ。よろしく頼む」

「ご主人様の家事奴隷をしておりますメアリーと申します。よろしくお願いいたします」

 

 メアリーの挨拶に。

 デルフォイアーは、その狐目をまん丸にした。

 

 やっぱりか。

 

「見覚えあるか?」

「……というか、瓜二つだよ。服装以外」

 

 いやそれは俺見えないんだけどさ。

 

「私達は生態が少し特殊ですので」

「まぁ、そういうわけなんだけど、コイツはぐれでさ。もしできるなら、同族と会わせてみ……やりたくて連れて来たって次第」

「成程ね。うん、わかった。アタシの知ってるコのとこまで案内したげるよ。……それじゃ、アンタ」

「おう。……達者でな」

「何言ってんだい。そうじゃないだろ? 蟠りも無くなったんだ、落ち付いたら里帰りする、くらいのこと言えないのかい?」

「いや俺は、商品の皆さんを置いてはいけねえから……」

「なんだノズヴェルガー。そういう話なら、今回のことが終わったあとくらいに店番変わるぞ。座標覚えりゃ転移も使える。そうすれば日帰りだってできるしな」

「いやいや旦那さん、そんな頼ってばっかはできやせんって!」

「何言ってんだ。俺はお前の事友達だと思ってるし、多分この世界で一、二を争う程に仲が良いって思ってんだぞ。友人の帰郷くらい手伝わせてくれたっていいだろ」

 

 ゴス、ゴスっと。

 デルフォイアーの肘鉄がノズヴェルガーにぶっ刺さる。

 

「──この人誑しめ。アタシだけじゃなくてヴェルグさんもかい。あの奴隷の人たちもアンタにえらく懐いていたし……浮気でもしてんじゃないだろうね」

「してねーよ! 俺は今でもお前しか愛してない……ってぇ、何言わせてんだ恥ずかしい!」

「ひひひ、その言葉が聞きたかったのさ。──じゃあね、アンタ。あの子ももう五つになるんだ、たまには"父ちゃん"をやりに帰って来なよ」

「うるせーやい!」

 

 え。

 ……子供いたのか。

 

 まぁいるか、そりゃ。

 

 ……良い話のネタになりそうだな、それは。

 

 

 

 さて、北の孤島へは船旅で向かう。

 俺が転移先の座標をよくわかっていないというのと、北の孤島は巨大な岩石をくりぬいて作られた島なので、上空に転移してからの着地が使えないというのがある。ゲーム時代なら転移先の事情とか考えずに転移できたんだけど、今は重なっちまったが最期、だからな。蘇生できるとはいえ。

 

 そして──いやスマンとは思ってるけど。

 

「うぅ……」

「そういやお前船無理だったな」

「酔い止めポーションを……ハルフィーさんから、買って来た……のですが、う、ぶ……どうやら、人間用らしく」

 

 まぁ上位種族向けではなかろうさ。

 パナケイアとか効く……んだろうか。でもあれ酒だからなぁ。船酔い中に酒はエグいんじゃないだろうか。

 

「ん、なんだい。船酔いかい?」

「ああ、知ってたんだけど失念してた。どうするメアリー、俺の影の中にいるか? それで多少は」

「契約スキル:借用:怪異スキル:船幽霊」

 

 何かが。

 ゴーストに似た……けれどスキルの性質を持つそれが、メアリーを背後から抱きしめる。

 すると。

 

「……え?」

「どうだい? 気持ち悪くなくなっただろ」

「あ……はい。それに、今のは」

「怪異スキル、船幽霊。海の性質を得られるスキルさ。が、欠点もある。曰く、このスキルにかかってる間は海に身投げしたくなるそうだ。だから」

「ちゃんと見張っておくよ」

「そうしてやんな」

 

 怪異スキル。

 メアリーのおかげでよく見るようになったそれだけど、結構不思議だよな。

 なんかこう……他のスキルとは別系統のものを感じる。

 

「にしても、海がこんなおだやかで魔物も襲ってこないってのは久しぶりだねぇ」

「ああそれは、最大範囲で威圧と重圧入れてるからだな。生半な魔物は近寄ってこないよ。んでもって魔法スキル:ストームヴィレッジと魔法スキル:グラヴィティフォールを魔術師スキルで周囲に追従させてる。風と波を無理矢理抑えつけてるって感じだな」

「……成程。あの人……ノズヴェルガーからヴェルグさんは魔物が斬れねえから護衛は無理だって何度も何度も力説食らったんだがね、それでもアンタが了承を返した理由は、こういうことかい」

「そそ。できねぇならできねぇなりにやれることがあんのさ」

 

 こう言うのもなんだけど、テュアナのような武士道精神を発揮する魔族や魔物はもうほとんどいないはずだ。

 魔素の造物が海を浸してこっち側の魔物はほとんど魔化して、そのすぐ後に心化している。

 だから恐怖に対して勇敢に立ち向かっていく、という善一辺倒な行動がとり難い。魔物は本能に従ってちゃんと逃げることができるようになったってわけだ。

 

 で、それでもぶつかって来そうな魔物はミニマップさんが捉えてくれるからな。殺傷能力の低いスキルを遠隔でぶち当てて止めるくらいのことはする。

 

「……はー、しっかしアンタ……前に一回会った時より、色々変わったみたいだね。アタシのことなんかは流石に覚えちゃいないんだろうけど」

「もしかしないでもフレースヴェルグの話してるだろ」

「ん……別人かい?」

「ああ。見た目と口調が似すぎてて間違えるのもわかるけど、アイツより俺の方が大分あくどい」

「はぇー……もしかしてアンタも分裂で増えるとか」

「そりゃ怖いな」

 

 アンタも。

 ……メアリーの種族については、ちったぁ知識があるようで。

 

「風魔法かなんかで追い風を吹かせることはできないのかい?」

「やっていいならやるけど。……船乗りとかって、自然の風じゃないと嫌だ、みたいなこと言うもんじゃねえの?」

「目的地に早く辿り着けるんならそれが一番さね」

「んじゃやるわ。ちょいと船長に話通してくる」

「はいよー」

 

 無断で、は流石にな。

 あと威力ちゃんと調節しないと折っちゃいそうだから、計算式引っ張り出してこないと。スクショスクショ。

 

 ──予感はしている。

 タイミングがな。あまりにもだから。

 

 "対偶"──さて、お前はどこの誰なんだ。

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