※この作品はR-18です。

アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ   作:姫鼠まりあ

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実情のない国(G度そこそこ)

 北の孤島。

 この島に名前らしい名前はない。それぞれが好き勝手に「契約の島」とか「妖狐の島」とか呼んでいるけれど、マップ上では「北の孤島」でしかなく、ここで起きるイベントにおいても「ここ……北の孤島では」とかって呼び方をされているので、マジで名前無いんだと思う。

 景観は他のどことも違う。

 巨大な岩をくりぬいて作られた国であることは前に述べたけれど、その中もボコボコと穴が開いていて、そこに淡水が溜まりまくっている。それらクレーターの湖の上にパルサ・アイルという樹木の板材が敷かれ、人々はその上に家を建てたり道を作ったりしている。

 パルサ・アイルは別名『不沈の樹』。淡水だろうが塩水だろうが、というか液体全てに対して『沈まない』という性質を持っている。ゆえにほとんど水上集落である北の孤島は腐食を恐れずに生活できているし、孤島でありながらどこよりも水害に強い。

 

 ……まぁ。

 その……ゲームの時は「はへぇ、そういうファンタジー植物が」とかって思ってたんだけど。

 

「ん、どうしたね。ああ、沈むことを恐れてんのかい? 大丈夫大丈夫、パルサ・アイルは上にどんな重いものが乗ったって沈まないよ。ひひひ、比喩だけどね。流石にタイタン種みたいなのが乗ってきたら沈んじまうだろうけど、アンタがそんな体重してたらまず船が沈んでるさ」

 

 ──見渡す限り、肌色と赤色。ところどころに白。

 成程成程。

 ここ、どこよりもエグいかもしらん。

 

 パルサ・アイル。つまりまぁ、それらは魔物だったと。植物魔物だったんだな、多分。簡単に伐採される、あるいは植林までコントロールされる程に弱い種。

 それが国の全土、道から建造物までの全てに使われているから……あー。いや、グロ耐性がないわけじゃないってのは何度も言ってる通りだし、時折見えてる肌色部分は女体家具みがあってちったぁ興奮しないでもないんだけど。

 

 ぜーんぶコレはキツいッピねぇ。

 

「……」

「ご主人様?」

「デルフォイアー。この島、魔物か何か飼ってるのか?」

「ん? まぁ飼ってる奴もいると思うよ。アタシらの一派にもいくらかいる」

「ならいい」

「……ああ、そういうことですか。デルフォイアー様、どうにもこちら……私達に敵意を向けてきている魔物がいるようです。心当たりはありますか?」

「まぁ余所者だからね、特にヴェルグさんは膨大な精霊力を垂れ流してる。そこに反応してる霊鳥なんかはいると思うよ」

 

 また精霊力か。

 フレースヴェルグに才能がないって言われた時点で諦めはしたけど、どーにかならんもんかな。

 

 ……つーか精霊王に会ったんだからあの時聞いておけばよかったくね?

 

 まぁ、いい。

 踏む。「三枚におろされた少女」にしか見えないその断面を踏む。──返ってくるのは、硬質ながらも軽い板材の感触。

 

「おお。凄い安定感だな」

「だろう? ほら、メアリーさんも。大丈夫大丈夫、パルサ・アイルで船酔いする奴は今んとこ見たことないからね」

 

 久しぶりにコリジョン問題を感じている。見えている輪切り……断面図や全裸の体表は当然のように凹凸しているんだけど、北の孤島の住民が毎日のように使う道なんだ、そんな凸凹してたらやってられないんだろう、かなり綺麗に並べられている。

 だからこう……肉だの胸だの尻だのの中に足がぞぶりと入って行って、けれど固い板の感触っていうこの……最近は結構慣れたと思ってたんだけど、うん、これは、うん。

 

「ほら、アタシの家はあっち。ついといで。それで、アタシの契約してる子にも伝達を出すよ」

「ああ、頼む」

「では私は少し市場を見て来てもよろしいでしょうか。一度も足を踏み入れたことの無い街となりますと、食材についての興味が」

「ひひひ、根っからのメイドさんってわけだ。それじゃ、あっちに見えるぽっかりした丘の、見えるかい? 緑色の屋根」

「はい」

「そこがアタシら一派の住まう住居になってる。そこの誰でもいい、アタシの名を出せば案内してくれるよ」

「ありがとうございます」

 

 これは多分、料理が振る舞われることを見越して、自分で作るために買いに行ってくれた感じだな。

 本当に助かるよ。

 

「そいじゃ行こうか」

「ああ」

 

 ……ミニマップにいる赤点表示。東西にいるそれらが本当に「飼われている魔物」だったら良いんだけどな。

 あんまここでドンパチってなやりたくない。ノズヴェルガーの故郷なんだ、スーパーノヴァとかビッグ・バンとか使う気は無いけど──仕掛けて来るならちゃんと大人げないことするぞ。

 

 

 

 

 やっぱり建材も全部パルサ・アイルだった。だからもう案内された部屋はそこかしこがアレなんだけど、肌色に関してはもう見慣れたからな。赤色も……まぁ、気にしなければ気にならん。見た目だけだから臭いとかしないのが救いだろう。むしろ匂いは結構いい。乾いた木の、それも甘い奴の香り。

 

 出されたお茶とお菓子……らしきもの。お菓子はガッツリ過ぎるから食えないけど、珍しくお茶は普通にお茶だった。茶碗も陶器らしく、この光景の中で浮いて普通。

 味は煎茶に近いかな。体に良さそう。粉蜜柑。

 

「待たせたね」

「ああいや、そんなことはないさ」

「……ノーリアクションかい。こりゃ相当女慣れしてるねぇ」

 

 ん。

 ……あー、なんかめかし込んできたか、あるいは過激な格好してんのか?

 すまん全部全裸にしか見えん。しかもお前妖狐族だからどっちみちだろ。

 

「お前の旦那からしこたま奴隷買ってるからな」

「奴隷ね。……ま、今回の一件で奴隷ってもんの見方は変わったけど……。あの人も言ってた通りさ、いつか奴隷制度なんてもんが無くなりゃいいとは思わないのかい?」

「一人で生きて行くに難しいって奴には救済制度だと思うがね。なんでもかんでも自分で考えて自分で実行できる、って奴ばっかじゃない。誰かの下にいたい、指示された方が動きやすい。そりゃ普通の従業員としてでも成り立つことだけど、そこにすら辿り着けない奴だっている」

 

 後は、一人で生活する気が無い奴も奴隷制度は助かると思う。

 何のやる気もなくて野垂れ死ぬだけ、みたいなのは自分から奴隷になるとか聞くし。なんでも奴隷になれば最低限生かされるのと、買われたら買われたで与えられた仕事やっとけば衣食住……まぁ衣は無いかもだけど、それが保障されるから、そういうの目的で奴隷になる奴は結構いるんだと。

 特に男の奴隷はそういうのが多いって聞いたな。シーファから。

 

「ふぅん。……成程成程」

「そんなこと考えつかないお前じゃあないだろ。今のは俺がどういう持論もってるかのチェックか?」

「ありゃ、一瞬でバレちまったかい。……ひひ、すまないね。あの人……ノズヴェルガーの目を疑ってるわけじゃあないが、命や契約よりも人情を大事にする妖狐ってな異端者さ。それを逆手に取られるって事件も昔にゃあった。あの人の言葉だけじゃない、自分で見ない事には何事も信用ってのは難しくてね」

「で、どうだった」

「まだ分析中」

 

 いいね、はっきり言ってくれた方が楽だ。

 一目で全幅の信頼を置いて、なんでもかんでも任せられる! ってなった方が怖いからな。ノズヴェルガーだってまだ俺に実力隠してるし。

 良い夫婦だ。

 

「あ、そうだ。特に他意とかないんだけどさ、子供いるんだって? ノズヴェルガーの奴、俺にそんな話欠片もしないでやんの。どうだい、ちゃんとパパ嫌いに育ってるか?」

「ひひひ、何が"ちゃんと"だい、って言いたいけどね、育ってるよ。ちんまい頃にアタシが語って聞かせたのも大きいけどね」

「まさかとは思うけど、"お前の父ちゃんは全裸の女を檻に入れて売る職業をしているよ"みたいなことを」

「そういうこと!」

 

 鬼畜の所業だ。

 まぁ奴隷制度無い国からしたら奴隷市場とかエゲつないものに見えるみたいだけど。ツバナも「今は慣れたが……初めは、蛮族の国かと思っておった」とか言ってたくらいだし。

 

「まぁ大丈夫さね。何が正しくて何が正しくないのかくらい、成長と共に覚えていくモンさ。……それに、ノズヴェルガーはこの島には悪評しか残してないからね。同じ"嫌い側"でいた方が何かと安全でさ」

「村社会ならさもありなん」

「ひひっ、言ってくれるね。その通りだけどさ」

 

 慣れたけど。

 全裸の人妻と肉肉しい空間で卓を囲むって……色々アレだよな。

 

「ん……なんだい、気になるのかい、この傷が」

「ああいや、すまん」

 

 傷なんか見えてないけど、俺が注視していた先にあったらしい。

 そういえばそういうのに関してはマジで見えてないんだよな。ケルとかマスカルウィンとかも傷なりなんなりがあったりするんだろうか。マスカルウィンは治してると思うけど、ケルは結構古傷とかありそう。

 そういうのも全部見えないんだよなー。というか俺に見えているあいつらの容姿って本来の容姿と違うからなぁ。

 

「謝ることはないさ。この傷はね、あの人につけられた傷なんだ」

「ノズヴェルガーに?」

「そ。昔話、聞くかい?」

「いや。あんまし興味ない」

「ひひひっ! こりゃ面白い人だ。あの人が気に入るわけだよ」

 

 惚気話はまぁ幸せそうで何より、ってなるから良いんだけど、不幸話が絡んできそうだからなぁ。

 要らん要らん。俺の視界は幸せで埋まっててくれ。アイツの暗い過去とか聞きたかないよ。

 

「デルフォイアー様。アリス様がお着きになられました」

「ああ、じゃ通してくれ」

「んじゃ俺もメアリー連れ戻すか」

「連れ戻すって……まさか転移なんかを使う気じゃあないだろうね」

「ダメなのか?」

「大騒ぎになるよ。北の孤島の民が持つスキルってのはいくらかの魔法スキルと戦士スキル、そんで大半が契約スキルだ。次元スキルなんか珍しいなんてもんじゃない」

「でもお前は怪異スキル使えるんだろ?」

「だからさ。仙狐の奴らは血眼になって探すだろうさ。次元スキル使える奴と契約したくてね」

「ああ……」

 

 契約によるスキルの借用。

 珍しいスキル持ちは良くてアイドル扱い、悪くて道具扱いなわけね。まだ心化したばっかりだからそうそうあくどいことは起きないだろうけど、この先十年二十年と経ったらエグい事件増えそう。

 

 借用のためだけに希少スキル持ちを……それこそ他の国の奴隷制度みたいな、帝国のそれよりも酷い扱いの奴隷が増えそうな。

 

「んじゃ帰ってくるまで待たせちまうが、いいのか」

「いいよ。っと、来たね」

「──デルフォイアー様、火急の用事と聞き、馳せ参じました。アリスにございます」

「入んな。来客がいるから、しっかりね」

「はい」

 

 スライド式のドア……だろうものを開けて、そいつは入ってくる。

 

 ──全裸のメアリー。

 

「挨拶を」

「はい。初めまして、デルフォイアー様のお客様。私はアリス。夢の一族の出自ではありますが、人々に危害を与えることはないと誓いを立てておりますので、ご安心くださいますよう」

「ん。ヴェルグだ。よろしく」

「……」

 

 全裸のメアリー……だけど。

 んん?

 

 なんだろうこの既視感。いや全裸のメアリーだから既視感あって当然なんだけど……んんん?

 

 いや待て、確かアイツが魂の装飾脱いだ時、なんか普通に……なんだっけ、サハギンスーツだっけ、ああやって美少女の皮に見えてなかったか?

 なんでコイツ全裸に見えるんだ。

 

 っつーか。

 

「……お前、メアリー・スーか?」

「……やはり、云万年と開いたせいで勘違いかと飲み込みかけていましたが、貴方ですか。……ふむ。こういう時になんと声をかけるべきでしょうか。──お久しぶりです?」

「なんだい、知り合いかい?」

「知り合い……というか」

「舐め腐りやがった言葉を吐いたので全力で応対したら、私達の想像以上の方であの時ぶつからなくて良かったと思った相手……に、ございます」

 

 知り合い。

 友人とは絶対に言えないけれど、草案世界で会ったあの時のメアリー・スー。名前をアリスに変えて、生き延びていたと。

 でも。

 

「……なんでお前人間社会にいるんだ? あんだけ見下してただろ」

「だからです。貴方とオルトコルリウム。与太話だと見下した二人に私達の目は負けたわけですから、私達の全てが人間の下につくのも当然でしょう」

「あーっと……なんだい、積もる話があるんならアタシは席を外すけれど」

「いえ、そこまで深い関係にありません。失礼しました、デルフォイアー様」

「まぁなんだ、昔共闘した関係なんだよ。関係値としてはそんだけ」

「へぇ。……しかし、それだとアンタの興味はあんましかい? メアリーさんに会わせてやりたかったんだろ? でも昔の知り合いだってんなら」

「いや……こっちにいると思ってなかったっつーか、いるわけがないと思ってたから丁度いいというか……」

 

 そもそもどうやって草案世界から来たんだって疑問はあるけど、マスカルウィン……というかユグドラシルといいパインズといい、そこそこの力の持ち主なら結構世界渡りできたりするんだろうか。

 

 と。

 ミニマップの青点表示が表示範囲に入って大きくなった。

 

「こっちも来たみたいだ」

「──遅くなりました。しかし、中々珍しい食材がありましたので──と」

「……」

「……」

 

 入って来たメアリーと、アリス。

 二人は一瞬睨み合い──そして()()()()()()()

 

「はいストップ」

 

 不可視のそれをベチィと叩き落せば、二人はまるで鏡合わせのように仰け反って涙目になった。

 

「ん……と。アリス。今アンタ、客人に何をしようとしたね?」

「メアリー。同族嫌悪はわからんでもないが、他人の家でいきなり攻撃はダメだろ」

「あの、デルフォイアー様、勘違いです。今のは」

「本能がそうしろと……なんでしょうか、今のは」

「ああ、口伝の為されていない個体ですか。今のは情報共有ですよ。この端子同士を接続することで、私達は自らの情報や記憶を共有します。そうすることで、いつ記憶を失ってもいいようにするのです」

 

 バックアップ取るってこと? 自分同士で。

 そりゃまた、変な生態だな。

 つーかそれ自己の境界とか曖昧になったりしないのか?

 

「共有する情報は選べますから。デルフォイアー様、前に誓いを立てた通り、私は黙って誰かを攻撃したり、食べたりはしません。ですからどうか」

「メアリー。お前がしたくないならしなくていいぞ」

「……いえ。私は自身の出自を全くと言っていいほど知りません。ですから……多少の恐怖はありますが、やってみたいと思います」

 

 デルフォイアーに目を向ければ、彼女は肩を竦めた。

 ま、だよな。よくわからんから止めようがない。それに尽きる。

 

 黙って見守るか。

 

「いいよ、好きにやりな。勘違いして怒って悪かったね」

「いえ。……では」

 

 再び二人のソレが持ち上がる。

 そして──くっついた。

 

 

 

 時間にして二分くらい。

 ぐでん、としたメアリーとアリスは、ぱっと目を覚まして。

 

「おはようございます、ご主人様」

「ああ、おはようさん。大丈夫か?」

「はい。……色々知りました。私とは何なのか。そしてご主人様が異世界で為してきたあの光景の全て」

「──正直、羨ましいです。なんですかあの幸せ空間。多種多様な仲間、家族がいて……誰もが厭わず、厭われない。デルフォイアー様。奴隷制度、結構いいかもしれません」

「なーに言ってんだい。その言葉、今回の遠征に行く前だったらアンタとの契約切ってたけどね。今は理解があるよ。アタシも割合そう思ってる」

 

 幸せ空間。

 人間に降ったとはいえ、根本的に人間を見下していたメアリー・スーが、それを言うのか。

 

 いや。

 メアリーを見れば……ぷい、と顔をそむける。

 

 ははぁ。

 

「デルフォイアー様。今日の夕食は私……ではなく、メアリーと共に作ってもよろしいでしょうか。異邦人……ヴェルグ、さんは、好き嫌いが多いようでして、ここの料理を汲み取りつつ彼でも食べられるものを作りますので」

「なんだい、メイドさんと繋がったから奉仕精神にでも目覚めたのかい?」

「そのようなものです」

 

 言って、アリスは全裸からメイド服姿に早変わりする。

 

「……久方ぶりに"服"を着ると……逆に恥ずかしいですね」

「私としましては常に"服"を脱いでいる方が落ち着かなさそうなのですが」

「慣れたら問題ありませんよ。──では」

「では」

 

 二人が部屋を出て行く。多分調理場のある方へ。

 

 えーと。

 

「……なんだ、俺もこうなると思ってなくてさ。混乱したか?」

「ひひひ、アタシとしちゃああも気丈に振る舞ってるあのコを見れただけでも儲けもんさ。どうするね、あのコやその仲間がこの島に流れ着いた時の昔話、聞くかい?」

「いや興味ない」

「だと思った」

 

 そりゃ大事な思い出だろう。

 俺に聞く権利は無いよ。大切にとっときな。

 

「……ちょい、この島を見て回っても良いか? 夕飯時には帰る」

「勿論さ。どうする、誰か案内をつけたげようか?」

「いや、頻繁に転移するつもりだからいい。勿論人目に付かないところでな」

「それならいい。……あ、この島の、この家の反対側にある赤い屋根の家には近づかないどくれ。もうアタシとアンタが一緒にいるところは見られているだろうからね、商売敵というか、間者かなんかだと勘違いされちまうだろうからさ」

「争ってんのか?」

「そうドンパチやってるわけじゃないけどね。ま、アレさ。あの人の……ノズヴェルガーの家系なんだよ。これだけで大体わかるだろ?」

「ははぁ、駆け落ちしたお前をこっぴどく嫌ってる姑でもいるわけだ」

「駆け落ちって……アンタといいあの人といい、どうしてそう青臭い、キザったらしい言い回しをするんだい。恥ずかしいなぁ、もう」

 

 顔をパタパタと仰いで、デルフォイアーは……それでも嬉しそうに笑っている。

 まんざらでもないわけね。はいはいごちそうさん。

 

「行ってくる」

「行ってらっしゃい」

 

 ──転移して、と。

 

 

 

 赤いの屋根の密集した地に、霧隠れで佇んでみる。

 特に種族的なアレはない。まぁゲーム時代から知ってたんだけど、ほら、緑が狐だったから赤は狸なんじゃないかって……逆だけど。

 

「お、おいどうしたんだいきなり! 飯は食ったばっかだろう?」

「いきなり気性荒げて……凶兆の表れでないといいが」

「あんまり暴れるようなら鎮静剤打ちなさいよ、やろうと思えばこの子ら檻壊せんだから」

 

 檻の中。

 がっつりこちらを睨んできているのは全裸美女。と、少女二人。

 赤点表示の内の一つがこの三人だけど……さて元の種族はなんだ。

 

 赤い目に真っ白に近い肌。髪も白い。アルビノなのはアダルトMODの仕様なんだろうけど、実際も似た色してたり?

 

「おうおう、どうしたどうした」

「あ、お頭! すいやせん、突然ゴルゴーンたちが声荒げて」

「そうかぁ、じゃあちいと離れてなぁ。話、聞いてみっからよ」

 

 出てきたのはこれまた全裸美女……というか、そうなんだよね。声男だし、騒いでたのも男だったっぽいんだけど……心化の影響で全員ソレにしか見えなくなってて。

 色々思う所あるワー。全存在全裸化計画やったのは俺なんだけどさ。

 

「で、どうしたね。話ぃ、してくれよぅ?」

「……そこにいる、男。危険だ。世界を滅ぼせる」

「男? ……どういう見た目だい?」

「わからない。見えない。多分石化耐性がついている」

「契約スキル:借用:道士スキル:ヘッドライト」

 

 おっと。

 的確に霧隠れを見抜くスキル使ってきやがった。やるな。

 もうそこに俺いないけど。

 

「……いねぇが、なんかいたなぁ。報告にあったデルフォイアーの新しい男かぁ?」

「気をつけろ、イスフェニチア。あっちの屋根の上にいる」

「ん-。おぅい! どこの誰とも知らねえお前さん! 用があんなら堂々と来てくれ。でないと魔物たちの気が立って仕方ねえ!」

 

 んじゃ去るか。

 敵対表示が何か気になって来ただけだし。ああやってちゃんと制御下にある魔物なら何も問題なし。騒がせて悪かったよ。

 

 後は、もう一つの方を確認したら戻りますかね。

 

 

 

「いなくなった。……死んだかと思った」

「俺もさぁ、マイハニー。……ありゃ特別やべー奴だな。喧嘩売らねえよう周知しとかねぇと」

「今日も……ス、するか?」

「勿論さぁマイハニー。へへへ、しかし世界を変えてくれた御仁とやらには本当に感謝しねえとなぁ。こーやってお前と子作りができるんだ……ふりかかる火の粉は全部俺が払ってやっから、バンバン孕んでくれよなぁ」

「言い方が悪い。……息子にも同じくらいの愛情を向けてやればいいのに」

「後悔はちゃあんとしてるさ。前の妻がいなくなって俺も荒れに荒れてたんだ。いつか謝れる機会がくりゃいいが……ノズヴェルガーにはノズヴェルガーの幸せってぇもんがある。帝国で元気にやってんなら俺は文句ねぇよぉ」

 

 とか。

 聞こえた気がするけど、無視無視。ま、アイツを里帰りさせやすくはなったけどさ。

 

 まだまだ善人ばっかだねぇこの世界は。

 

 

 

 

 掴みかかる。

 

「ッ──!」

「お、避けたか。偉いな」

「何奴!?」

 

 全裸美幼女。手には苦無と小刀。

 何故か首のマフラーだけがアダルトMOD適用されて尚残っている。

 

「何奴ってお前、そっちが敵意向けて来てたんだろ」

「……母上を誑かした男!!」

「アサシンスキル:弛緩」

「あぅ」

 

 投げられた苦無を掴む。良い練度の投擲スキルだな。

 で。

 

「お前さん、ノズヴェルガーの娘か?」

「ぬ、ぐ……やはり、悪鬼ノズヴェルガーの手先……くっ、殺せ! 悪鬼の手下に喋ることなどない!」

「いや誰が友人の娘殺すんだよ。……しかし五歳にして患ったか。将来有望だな」

 

 厨二病でくっころで女忍者とか。

 盛り過ぎだろ。しかもまだ幼女。忍者でマフラーはセンス二重丸だが。やっぱ忍者はマフラーだよな赤い長いマフラー。

 

「よっこいせ」

「わ……私をどこへ連れて行く気だ! 変態! お前も悪鬼のように女を辱め、見世物にした挙句売り捌くんだろう! くっ、私まで奴隷にする気だな!」

「弛緩食らっててそんな元気なのは凄いけど、妄想捗り過ぎ。つーかデルフォイアーの教育エグ過ぎ」

「母上の名まで……まさか! 母上に何をした! 私のことは好きにしても良いが、母上に手を出すのはやめろ!!」

「ちなみに今の今までのお前の声全部録音してあってデルフォイアーに見せることができる、って言ったら黙る?」

「……」

 

 よし、聞き分けのいい子で良かった。

 この苦無も玩具だし。なんか変な物語でも読んで影響されたものと思われる。五歳は早いっちゃ早いけど、平和な証だろう。

 

「お」

「ん?」

「……男に触られるの、初めてだから……優しくて」

「マセ過ぎ。なんもしねーよ。触られるの嫌なら、ほれ」

 

 魔法スキル:グラヴボール。

 闇属性の拘束魔法。対象を外側に引っ張る重量球の中に入れて、浮かせることで自由を奪う。

 欠点は別に魔法とか飛び道具とかを封じられるわけじゃないから、他の拘束系スキルと違って安心できないこと。ただ消費MPが少ないのと殺さずに固定しておけるので、取り巻き多い系のボスとかでは取り巻きの隔離に重宝する。

 

「ふわ……ふわわわっ!?」

「……んー?」

 

 おかしいな。

 赤点表示……コイツだと思ったんだけど、コイツ動かしてもミニマップの赤点表示が動かない。

 

 いやまぁそうだよな。子供の敵意程度をそんなデカデカとミニマップに表示するとは思えな──。

 

「聖騎士スキル:十字鎧」

「きゃああっ!?」

 

 久しぶりに使ったソレが、振り下ろされたナニカを防ぐ。

 ……形状がわからん。けど多分なんか固いもの。十字鎧にあの速度でぶつかってきて砕けてないのが良い証拠。

 

 んんー。なんだコイツ。いやアダルトMODのソレは見えてるんだけど、本来の姿がわからん。

 

「──エリザヴェータから離れろ、下郎」

「そりゃ構わねえが、今の攻撃俺が防いでなかったら当たってたぞ」

「下郎、お前だけを潰してエリザに当たる前に止めることなど造作もない」

「器用なことで。お前さんはコイツのなんなワケ?」

「知る必要は──ない!」

 

 よくわからん攻撃を防ぐ。なんだマジで。デカいのだけはわかる。威力もそこそこある。基礎防御力抜けるほどじゃないけど。

 何の魔物だ?

 

「ポ──ポイニクス、ダメ! 私の悪戯が母上にばれちゃう!」

「はい?」

 

 ポイニクスだと?

 なんで最強魔物がこんなところにいるんだ。つーかお前そんな見た目じゃなかっただろ。俺召喚獣で持ってるし、アダルトMOD導入後の二周目で戦ってるから見た目覚えてるぞ。

 そもそも今来た攻撃の属性炎じゃないし……。

 

「幼女騙して最強騙るのは楽しいか?」

「──越えたな、下郎。それは越えてはいけない一線だ」

「図星ってことだわな」

「口を閉じろ!!」

「ポイニクス! そ、それと悪鬼さん、喋れてるの? ポイニクスの言葉がわかるの!?」

「悪鬼さんて。いやまぁ名前教えてないからそうなるだろうけど」

 

 防ぎながら大体の大きさや形状を確かめる。

 避けることはしない。避けると地面砕けて島に迷惑かかりそうだから。

 

 しかし、ポイニクスを名乗るだけあって鳥っぽさは確かにある。

 ……そういやデルフォイアーが霊鳥がどうのって言ってたっけ?

 

 霊鳥ねぇ。……ポイニクスと似てる霊鳥……。

 シムルグ……? も、テイムしたし。ヤズ、スザク……も持ってる。メアリー・スー繋がりで草案世界の八咫烏の線も無いことはないけどアイツの見た目忘れる程俺は物忘れ激しくない。

 

 なんだ?

 

「エリザから離れろ。──次は額を刺し貫く」

「ん-。まとりあえず大地洞に」

「──契約スキル:借用:怪異スキル:蛇睨み、金縛り」

 

 ビクン、となってそのまま倒れる魔物。

 ……おっと。

 

「よっこいせっと……。おう、アンタだね、精霊力垂れ流してこの島入って来た大馬鹿野郎は。おかげで島中の魔物の気が立っちまって仕方ない。マギピコクはこっちでなんとかしといてやるから、とっととデルフォイアーのとこ帰んな。そんでもって早いとこ出てってくれると助かるよ」

「あ、ノスフェラトゥおばさん!」

「だーれがおばさんだこの思春期娘! 今回のことデルフォイアーに言いつけられたくなかったら次からはお姉さんと呼びな!」

「はーい。……それじゃ、悪鬼さん。一緒に帰ろう。ばいばい、ノスフェラトゥおばさん」

「ぶっ飛ばすよ!!」

 

 限界突破後で、レベル300。

 間違いなくこの島で最も強い奴。というか世界規模でも……恐らく最強に近い。

 

 そして、マギピコクだったらしい魔物や俺の腕の中にいるノズヴェルガーの娘なんかメじゃない程に……俺に対して敵意を向けてきている、本当の赤点表示。

 

 

 ノスフェラトゥ。

 

 

 あのそれ……魔族なんだけど。

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