アダルトMOD入ってるせいで超やりにきぃ 作:姫鼠まりあ
ずっと放置、というは気味が悪い……というのは理解できないでもないので、そこへ来た。
──教会。
彼女らは聖堂や神殿のような戦闘者ではないから関わる機会がほとんどなかったけど、実は教会に所属すると世界浄化教という異教徒と戦うことになったりするので、政治的且つ全面戦争的な空気が味わえる派閥となっている。
ただ主人公が教会に所属してから世界浄化教は発足するため、俺もフレースヴェルグもラヴ・グラットルも誰も教会に所属しなかったから作られなかったんだと思う。
そんな感じで今回ひたすらに影の薄かった教会……帝国にある小さな小さなその教会を訪れたわけだけど。
「まさか誰もいないとは」
「だから言ったじゃろうに……。時折この辺を歩くことがあるが、ここに人がいたのは二、三回程じゃ。信徒が祈りに来るでもなし、教会の者が月に二、三度掃除をして終わり。それが現状じゃよ」
「……勝手に入るのはアレか?」
「構わぬのではないか? 戸が開け放されている時点で金銭的なものは置いとらんじゃろうし」
一応ミニマップを見る……も、青点表示および赤点表示なし。
寂れているわけでもないから風情も無いし、誰かいれば全裸になっててこう……教会で全裸っていうこの……ね? が楽しめるわけでもなし。
足を踏み入れる。
……どこかに飛ばされるトラップも無し。
「マジで誰もいないだけなのか」
「だから行くときそう説明したじゃろ……」
丁度手すきの奴らがいなくて、ツバナだけが度の入ってないメガネをかけて勉強してたから、丁度いいと言わんばかりに案内役として連れ出した……んだけど。
ほら、ご近所付き合いとかあるのかなーって。俺が帝国離れてから結構経ってるから、今住んでるツバナたちの方が良いかなーって来たんだけど。
……何も起きず。誰も居らず。
「帰るか、流石に」
「じゃな」
背を向けても……突然オブセルウェルが攻撃してくる、とかも無く。
俺達は帰路に着くのだった。
相変わらず肌色で相変わらず色々グロい市場を歩く。
まぁね、流石にね。慣れたというか気にしない程度の心持ちはできたっていうかね。
「魔物素材をそのまま使う料理がダメなんじゃろ? これとかどうじゃ」
「……まぁ、うーん……」
この世界なー。
砂糖とか塩とかに値する物も植物魔物なんだよなー。
だから今ツバナが持ってきてくれた……多分べっこう飴的なノリのものも、こう……うっすらとしたピンクがぐちゃどろに溶かされてかき混ぜられたもの、に見える。
前ハルフィーさんに調味料として知られている、使われている植物魔物を見せてもらったことがあるんだけど、「ここが可食部。甘さはここから出るよ」と言って全裸美少女の頭を捥ぎ取ったことは今でも忘れられない。
だから多分これ脳で……。
「無理か。まぁそこまで無理せんでもいい。……というか、ある程度慣れたのなら、自分で探すのはどうじゃ」
「うーん」
「それも無理か。ならやはり市場になど出ん方が……お?」
お、と。
ツバナが向いたそこにあったのは──果実を取り扱う店。
へえ。
「ヴェルグ、これならいけるじゃろ」
「ああ。……どれ、いくらか買ってみるか」
店主に声をかけ、「帝国じゃ中々食べられないフルーツなどはないか」と聞くツバナ。声的にはオバチャンって感じなのに見た目は全裸美女な店主が選んでくれたのは、赤と白のギザギザの生えたフルーツ。なんだろうな、パイナップルをより攻撃的にした、みたいな見た目。
「これは?」
「大陸最西端にあるフルゴロって町にしか生えないゴールディの木ってのに生るフルーツでね。他の果実には無い独特の甘じょっぱさがクセになるよ」
「へえ」
「ああでも、切ると中の果汁が結構飛ぶからね、食べるなら家の中、且つキッチンじゃちゃんと受け皿作るなりしてやんないとダメだよ」
「ん。じゃあ三つ貰おうかな」
「まいどあり。……しっかし、アタシは売り手だから味は保障するけど、食べたことの無い果物いきなり三つは結構チャレンジャーだね」
「あんまし好き嫌い無いからなー。帝国にも市場にも滅多に出てこないから、買える時に買っときたいって感じ。美味かったら料理とかの研究もしたいし」
「成程ね。……よし、んじゃ紐で纏めといたから。お代は銀貨六枚!」
「安すぎだろ」
「何言ってんだい。今年はむしろ高い方だよ。ほら、先月前後で色々あっただろ? それであっちの農家が壊滅的なダメージを負ったとかでね」
あー。
……一次産業は心化も魔素の造物も結構アレだったか。
そりゃ悪いことをしたかもなぁ。
「銀貨六枚。ぴったりで頼む」
「はいよ! ああそうそう、こいつの名前はゴールディだ。また買いたくなったらウチに来な!」
「あいよー」
という。
この世界に来て初めてレベルの「普通の買い物」をして、ツバナと二人市場を出た。
特に急ぎでもないから徒歩で帰る。ケル邸は住宅街の端っこにあるため、ツバナと二人、住宅街を横切るようにして進んで行く……のだけど。
「お、ツバナさん男連れ? なんだよ、やっぱ彼氏いんじゃんかー」
とか。
「ツバナ~! ……っとと、え!? 凄いイケメンいるけど! ……抜け駆け!?」
とか。
「ちゃーんちゃららっちゃっちゃ~ん、ツバナちゅあ~ん、今日も美味しいカフェ巡り行こう、ZE☆ ……あ? 誰だお前ツバナちゅあんに……げぇ!? 白銀章の奴! 帰ってたのか!?」
とか。
「モテモテだな。男女ともに」
「ありがたいことにの。リアに幾らかアドバイスを貰って、そういう交友関係も増やしてみるようにしたんじゃ。いつまでもツンケンしていては変わるに変われん」
「……あんま誑し過ぎて背後から刺されたりすんなよ?」
「誑しとらんわ。それに、今声をかけて来た者の内、男二人は既婚者じゃ」
「へえ」
声が低いという理由で一人目と二人目が男……と判断したいところだけど、一人目はどちらかというと「女性声優が演じるボーイッシュな男装の麗人キャラ」みたいな声色だったからワンチャンわからん。二人目の声の高いのが男の可能性も大いにあり得る。
見えないからな。
「そうじゃ。丁度いいから、これを返す」
ツバナが懐から取り出すは──【「鬼」の根付】。
いやいや。
「俺に返されても。これはお前宛の」
「じゃからじゃ。私はもう鬼の国には戻らんし、リュウゼツ家とも関わらん。ただ種族が鬼であるというだけで、もう私は完全な帝国民じゃ。……ゆえに、この根付は最後の繋がり。私を過去に引き戻そうとする"証拠"にしか思えんくなった」
だから、要らないと。
「それを渡してきたのが母上であれ"鬼の国"であれ、私はもうただのツバナじゃ。理念を継承する気も、言葉を託される気も無い」
「……そうかい。んじゃ、預かっておくよ」
「ああ、そうしてくれ」
受け取る。
──その瞬間、ジジ、と焼け焦げ……灰になる根付。
「どうやらお前から不要と言われたらお役御免らしいな」
「そうか。……もう少し早くに決断し、解放してやれば良かったの。……安らかに眠るが良い、リュウゼツ。そして"鬼の国"」
狙ったかのように風が吹く。
灰となった根付を風が巻き上げ、空へと還す。
良いと思う。
なんでもかんでも継承するべきだとは思わないし、区切りを見つけられたのなら、そうして前に進むことも大事だ。
「──おさらば、じゃ」
彼女の見る方角は鬼の国。
けれどその目に映るのは──。
ケル邸に帰ると、ツゥがいた。
辺りに……おや。
「ふふ、別に四六時中一緒にいる、というわけではないのよ?」
「そうなのか。折角生き返ったんだからぴったりくっついてりゃいいのに」
「……なんだかそれも懐かしい話ね。二か月……三ヶ月くらいかしら? それくらいしか経ってないのに」
「俺とお前の関係値ってかなり微妙だからなー。年月が過ぎ去るのも早いのか遅いのかよくわからん」
俺の認識ではケルの彼女、ないしはケルの姉妹、あるいはケルの妻。
だからなんというか「仲間の恋人」という一番距離感掴みづらい所にいるのがツゥだ。
「ああ、丁度良いな、ツゥ。私は料理からっきしじゃから、頼む」
「……あら。これ、ゴールディ? ……市場に寄って来たの?」
「ヴェルグが多少は慣れたと言うからの。実際ダメダメじゃったが、フルーツはいつも通り、じゃ」
「なるほどね。ええ、じゃあ一つ切り分けましょうか。……切る時面白いものが見られるけれど、見る?」
「面白いもの?」
それがなんであるかは教えてくれずに、ツゥはエプロンを巻いて……全裸に戻り、キッチンへ立つ。
おい裸エプロンも許されないのか。いやツゥには興奮しないからいいんだけどさ。
「まず、こうして切込みを入れて」
「……硬そうじゃな。力が必要なら私が手伝うが」
「大丈夫よ。……こうしてこうして、周囲を切って行って……」
そこでツゥは調理場にあったスポンジのようなものを取り出す。アレ食器洗う用じゃないのか。初めて知った。あと魔物素材でもない……いや髪の毛が組み合わさっているようにも見えなくは……。
考えんとこ。
「えい」
スポンジに向かって、ゴールディがすとんと落とされる。
直後ゴールディはぱっかーんと割れ、店主が言っていたように果汁と果肉が飛び出す……ことはなかった。
「なんじゃ、騙されたのか? 切る時が大変じゃと聞いておったんじゃが」
「この【マーメイドのフリル】がないと大変なのは事実よ。けれど乾燥させたこれを断面付近においておけば、中身が噴き出す前に余分な水分を吸い取れるの」
「ああ、海底遺跡系攻略御用達の」
「そ。ゴールディの中身が吹き飛ぶのは、この果実が木に生っている間、あらん限りの水分を果実に集中させることで凄まじい圧力を得るからで、その水分さえ抜き取ってしまえば普通の果実と変わらないわ」
開くゴールディ。
その断面……というか中心には──全裸のミニマム少女が。
「……植物魔物なのか」
「いいえ、これは擬態。ゴールディは略称なのよ。ゴールデン・レディのね。……ふふ、この種をコレクションする好事家もいるのよ?」
「裸の少女が出てくるというのは……些か奇妙じゃが。まぁ種ならばよいか……」
え。
へえー。
……これはちゃんと「そういう進化」を遂げた植物ってこと?
俺だけに見えているわけじゃないんだ。まぁそうか、果肉は普通に見えるしな。
「それは庭に植えたらゴールディの木が生えるのか?」
「フルゴロの特異な地質環境と生息する魔物が関わってたはずだから、多分無理ね」
「やってみる価値はありそうじゃが……これを生き埋めにした挙句、育たなくて萎びたのを掘り起こすのも……色々とキツいの」
「種だから生き埋めも何も無いと思うけれど」
いや。
なんか、図らずも、ちょっとだけ「視界の悩みを共有した」みたいな感覚があってよかったわ。
心の傷……バルクスにアダルトMOD仕様のメモリーオーブを入れる、みたいな話でまとまってたけど、こういう風な癒し方もあるんだな、って。
「それじゃ、食べましょうか」
その後は特に何でもなく切り分けられるゴールディ。
メロン式といえば伝わるだろうか、果肉自身が皿となって果汁を貯め込む形で、その味は。
「……結構塩っ辛いの」
「ゴールディがフルゴロの河口付近にしか生えないのは、淡水と海水をバランスよく吸うため、なんて言われているわね」
「いや俺この味好きだな。海水っつーには……なんというか……小麦と大豆……だから」
フルーツという先入観を捨てて味わうと。
……砂糖醬油、か?
いや……美味い。面白い。うわ餅焼いて食いてえ。でもこの世界の餅……魔物素材でぇ……。
「あーでも一切れで大分塩っ辛いな。喉が渇く」
「じゃろ?」
「フルゴロにはこれに合うお酒もあるらしいのだけど、私は見たこと無いのよねえ」
「酒か。……やっぱ良いなー、地域特産の食い物と酒と。……色々見て回りたくなる」
「お主大体食えんじゃろ」
「そこはメアリーに調理してもらうんだよ」
宇宙旅行に目を向け始めていたけれど。
この星にもまだこういう"未開拓"があると考えると、うん、やっぱ俺の世界狭すぎたわ。
「ルウィンとか死ぬほど珍しい食い物知ってそうだよな」
「あー。じゃがあ奴はスキル目当てに食い漁っていただけじゃろ。スキルを使う植物なぞおらんわけじゃから」
「全部植物魔物か、いたとしても」
「じゃろうな」
「ん-……遠い昔の記憶だけど、
「樹皮とな」
「ええ。任務自体は上手く行ったのだけど、嵐に見舞われて……山小屋に入って夜を明かしている時、小屋の中にあったケースにそれが入っていたのよ」
「そんなもん食べるな危ないじゃろ」
「毒耐性は持っていますもの。それに、とても甘かったわ。……あの頃は持って帰って調べる、なんて選択肢が無かったから何もわからないけれど、あの近くに同じ樹があるなら噛み付いてみたいものね」
「やめてくれツゥ、お主は常識人枠なんじゃから」
「あら? でもヴェルグさんは目を輝かせているわよ?」
え、いやー、えー。
それ植物魔物じゃないんだったら食ってみてー。
俺も毒耐性完備してるからな。そういうファンタジー植物には憧れあるぞ。
「衛生観念が終わっとる……」
「そういやツバナって結構綺麗好きだよな。毎日風呂入ってるみたいだし」
「いや入るじゃろ普通。……面倒じゃからってシャワーだけで済ませるお主らの方がおかしいんじゃ」
「そんなこと無いと思うけど……」
「マスカルウィン城に大浴場あるのってお前ら知ってたりする?」
「なにっ!? ……それは一般公開されておるのか?」
「どーだろ。前俺が入った時はほぼ貸し切りだったよ。スイが後から入って来たけど」
「……スイに聞いてみるか」
綺麗好き、というか。
単純に風呂好きなんかね、この様子だと。
「秘湯巡り……とかやりたくね?」
「やりたいが、ルトが消えた今温泉などどこに湧くんじゃ」
「火燃石の温泉だけが温泉じゃないだろ。コールドスウォームの時間凍結が解除されたんだ、これからどんどん環境は変わって行く。……し、そうじゃん、コールドスウォーム! あそこの近くに温泉あったりしねーかな」
「……魔族大陸じゃったよな、確か」
「そうだけど、もう魔素の心配はないんだし。……いや、はぁ~、マジでまだまだ行ってないトコいっぱいあんなこの星」
魔素のせいでゆっくり探索できなかった魔族大陸とか、色々歩き回ってみたい。
魔族が消えたわけじゃないから襲われはするかもしれないけど、そこは封印棺さんと霧隠れさんに頑張ってもらって。
「──ヴェルグ」
「なんだ、神妙な空気出して」
「本当に秘湯巡りをするなら──連れてってくれ。私も色んな湯に浸かりたい」
「あら、じゃあ私達は置いてけぼり?」
「全員で行くのは大所帯過ぎないか」
「ヴェルグさんはあまり使わないけれど、転移門の設置、実はできるんでしょう?」
「まぁ。維持してるだけで魔力持ってかれるからあんまり使わないけど、できるな」
「いいじゃない、冒険しない組はお風呂時に門を開いてもらって、お湯だけ浸かる、とか」
「苦労の押し付けに聞こえるが、自分たちで探すのが醍醐味というのはわかる。……うむうむ、決まりじゃな!」
「けど良いのかツバナ。秘湯探しなんかすんごい時間かかるから、風呂入れない日が出てくると思うぞ。そう簡単に水浴びできるような川や泉があるとも限らんし」
「最近水魔法に手を出しての。体を洗う程度の水は出せるようになった」
へえ。
……やっぱ少しずつでもちゃんと前に進んでんだな。
「日程とかは後々決めるにしても、行くメンバーはそっちで話し合って決めてくれ」
「任された」
「私は……ケルが行くなら行こうかしらね」
「やっぱりべったりじゃん」
とか。
とてもとても、日常なワンシーン。
その日は本当にそれだけで終わった。
翌日。
昨日はケル邸に泊まったため、なんだか久方ぶりの感覚……起きたらリビングが姦しいその感覚に見舞われながら、ケル達に挨拶をする。
「おはよ、ヴェルグ」
「ああ。……どっか行くのか?」
「ギルド。今日はブルーミィバルーンの収穫日だから」
「収穫日とかいう概念あったのかアレ」
「年中収穫はされてるけど、大量発生した週は手伝える人総動員して狩りつくす」
「へー。……頑張れー」
「ん。行ってきます」
ブルーミィバルーン。
その名の通り満開の花々を背負った魔物であり、飛べこそしないものの非常に軽いためポヨンポヨンと移動する姿が特徴的。
ゲームのグラフィックだと毒々しい花を背負い、腹部に渦巻きがあってその中心に眼球がある……みたいなグロ魔物だったけど、アダルトMOD適用後の姿は知らんなそういえば。
狩りだから見に行く気はないけど、どうなってるのかは気になる。……腹部が膨らんだりするのだろうか。
「ヴェルグ、さん。今日、ちょっと、付き合っては、もらえないでしょうか」
「良いけど、何?」
ケル、ツゥ、ツバナのギルド組を見送った後、アウラニにそう声をかけられる。
どちらのアウラニにも、だ。シーファもいるけど、なんか複雑な顔をしている。
「──あの、その」
「その、あの──」
「シーファ。代弁頼む」
「……なんかね、エロスキル。試作段階のが完成したから見て欲しいんだってさ」
「マジ? 早くね?」
え、普通に楽しみなんだけど。
つーかスキルってそんな簡単に作れるものなの?
というわけで、もっぱらシーファとアウラニが使うヤり部屋……もとい「この部屋なら汚れてもいいよ部屋」に入る。
そうして──恐る恐る、といった風に、衣服を脱ぐ動作をするアウラニ。
おお。
「……そういえばそうだった」
パインズのもとから帰って来た時にも確認して落胆した覚えがあるけど、アウラニ……どちらのアウラニにも、今は"ただの"美少女になってしまっている。
そう。
ふたなりでなくなっているのだ。……俺の視界では、だけど。
心化によって「そういう魔物」みたいな扱いになっているアウラニは、だからもう生えていない。実際には生えているんだけど見えていない。
残念極まりない。
ただそう……オティヌティヌの興奮による反映がどこに行くのか、については、クリであることはわかったかな、うん。
「で、シーファはなんでそんな機嫌悪いの。やっぱ取られるの嫌だからか」
「違う。そこは私も混ざるからいーんだけど……アウラニち、このスキルの開発さ、実験台に自分たちの身体使ってたみたいで。……相談してほしかったなーって拗ねてるだけ」
「あーね」
申し訳なさそうなアウラニ二人。
つくづく友達想いだね、まったく。
「んで、どんなスキルができたんだ?」
「はい。……快楽スキル、強制絶頂と」
「快楽スキル、一撃絶頂、です」
「うわエロそうそれは」
しかし、前者はよく聞くからわかるけど、後者はなんだ。
「強制絶頂の方は、男女関係なく、使えるスキルで……文字通り、対象を、強制的に、絶頂させます。呪詛スキルを、組み込んでいるので、呪詛スキルの、オプションと、似た効果を、持っています」
「成程。で、一撃の方は?」
「男性……男性器を持つ相手に、使うスキルで……その、死の危険性が、あります」
「どゆこと」
それだけでシーファが拗ねてる理由は分かったけど。
……スキル開発って結構危ないんだな。ちょっと軽はずみ過ぎたか。反省しよう。
「このスキルは、相手を、射精させ続けます。普通、射精は、一回で出せる量が、決まっていますが」
「一撃絶頂を、食らうと、今貯め込んでいる、全ての精子を、一撃のもと、吐き出すことに、なります」
「それでテクノブレイクするってことか。呼吸困難、心臓発作……色々見込めそう」
「
「こわ」
「天使ですから、心臓が止まっても、死にはしないのですが、……人間の私に、蘇生されているところを、シーファさんに、見られてしまって」
「ほんっっとうに心配したんだからね」
「はい。ごめん、なさい」
そりゃ拗ねるわ。
まーた勝手にそういうことして。……俺は他人のこととやかく言えないからなんも言わんけど。
「今……ヴェルグさんに、それをかけることが、できます。……どう、しますか」
「んー。……とりあえず俺に調停かけてみてくんねぇ?」
「……? はい。天使スキル、調停」
落ちてくる枷。
それは俺の頭に触れた瞬間、パリンとガラスのように割れて砕ける。
「ああ、やっぱりか」
「……天使スキルも、効かなくなりましたか」
「ちょいと北の孤島で神を落としちゃってな。それでまた上がったらしい。だから」
「快楽スキル、強制絶頂。……レジストされました」
「ってこと」
ありがたいけど、って感じ。
一縷の望みは、やっぱり。
「じゃあご主人様を心化? して、契約スキル使えるようにして、耐性無効化ポーション飲ませて運命の契り結んで……その後だね、エロスキルは」
「快楽スキル、です」
「同じ同じ~」
しかし。
「なぁ、この快楽スキルって、呪詛スキルがベースなんだっけ?」
「はい。構造は呪詛スキルと、同じで、細部に、天使スキルの、再現を、あしらっています」
「俺も覚えられるか、これ」
「……わかりませんが、やってみる価値は、あるでしょう」
北の孤島での一件といい、カローライナに感化されたことといい、俺は今スキル収集に夢中になっている。
既にアモルファス聖を通じて聖女スキルの取得条件は聞き出してあるし、他の女性専用スキルも順次取って行く予定。
そこに新スキルですよ奥さん。
「頼むわ、アウラニ。報酬も支払うよ。古今東西なんでもござれ、ほとんどのアイテムを持ってるからな、俺は」
「アイテムは、要りません。……ただ、一つだけ、私達にも、スキルを、教えてください」
「スキル?」
「はい」
それは。
──夜。
霧隠れで姿を消しながら、それを見る。
シーファの穴……膣とアナルの両方がぐぱりと開いていて、そこに不可視の何かが出入りしている。
二輪挿し。シーファとアウラニ二人のセックスはもっぱらこれが定番らしい。
して──アウラニが、二人同時に射精する。
二穴から引き抜かれたのだろうソレには精液が玉のように付着しており、シーファの穴からは何も出てこない。
うん。
「合格だな」
「うわびっくりした! ……そうだった、見られてたんだった」
「吸収無効、オーラ。……凄いです」
「これで、中に出し放題、ですね」
「……別に子供作っても良いって言ってるのにナー」
教えて欲しいスキルは、魔剣士スキルの吸収無効オーラだった。
確かに魔剣士スキルは取得条件が複雑だ。独力で辿り着くよりこうして人から教わった方が習得は早い。
なんでも。
ウリエルがこの家に来て、「心化の影響で種族間関係なく子供がデキるようになったから、しっかり避妊はしろよ」というお告げをして去って行ってからというもの、中出しが怖くなって果てる前に萎える、というのが増えたらしいのだ。
それを解決するのが吸収無効オーラ。避妊率100%のこのスキルがあれば、何の気後れも無くセックスができる、と。
うんうん、アウラニも大分染まって来たな。
「んじゃ俺はこの辺で。存分になー」
「はい。ありがとう、ございます」
「まーアウラニちが喜んでるからいーやー。もっとやろー」
「はい、シーファさん。朝まで、とことん」
──後日、ケルとツバナから「最近大人しくなってたイチャラブ変態三人カップルがまたうるさくなった。何かした?」、「お主じゃろ吸収無効オーラとかいう凶悪スキル教えたの。アレのせいで夜がうるさい。遮音効果のある結界も教えに来い」との苦情が。
天使スキルにあるだろうからそっちに期待してほしい。すまんが神官スキルは神官にならないと覚えられないからなー。
蹴り破る。
重厚な扉を。
「な……お前、どうやってここに!?」
「……人間? いえ、ああ、ヴェルグ、ですか。初めましてですね、直接会うのは」
「ああはじめまして。で、リザとシエラだけか?」
「まぁ……クレイドルとヴェアトリチェは殺されたからな」
「そっか、そういやそうだったな」
ファントム四天王。
元々四人なのに、半分減っただけで少なくなったな、と感じる。
それはここが寂しい空間だからなのかもしれない。
「初めの質問に答えろ。どうやってここに来た」
「正規手段で。……丁度いいや、お前らで実験するか」
「何を──」
発動。
「ぁ」
「──が」
一撃で倒れ伏す魔族二人。
よーし。
「……ヴェルグ。入り口を通って来たってことは……初めからここに来る方法知ってたんだね」
「勿論。そんで、なんか知らんけど萎えてるお前と一戦やりにきてやったんだ、感謝しろよ」
「……それ、本当?」
「ああ」
ファントムは。
みるみるうちに頬を上気させ──歓喜に打ち震える。
まーフレースヴェルグもラヴ・グラットルも相手してくんないってわかった今、本気で萎えてたのは伝わってたしな。
「じゃあ、やろうか。"ストーリー性"は欠片も無いけど──正真正銘の、最後の戦いを!」
「ああ。──先手は貰うぞ」
「いいよ、なんでも来て良い。君の最強を、ボクに見せてくれ!」
よーし言質は取った。
言ったよなァ!
俺、お前に欲情するってェ!!
「快楽スキル:強制絶頂!!」
「──は? ……~っ!?」
ガクン、と。
海老反りになるファントム。
包帯の隙間から覗くピンク色の乳首が屹立し、股からは体液が漏れ、クリトリスがピンと上を向く。
「な……な、な!?」
「快楽スキル:強制絶頂!」
「あぐ、ぅぅぅっ!?」
コイツの元グラ……影が襤褸布を纏ったかのような姿が、今どんな風になっているかは知らない。来ると思ってなかったからだろう、天女の羽衣を纏っていないのももう知らない。
ファントムの性別は明示されていない。ならこっちの解釈次第、そして見えるものがすべて!!
「ハーッハッハッハ! 肉体を捨ててから云万年! いやもっとか! だからこそご無沙汰だろう! 生前セックスしたりオナニーしたりしてたかは知らないが──どうだ、幾星霜ぶりに味わう絶頂の快楽は!」
「……この。ボクの……歓喜を。馬鹿にし」
「快楽スキル:強制絶頂」
「──ッッッ!!」
真っ黒な炎が見えたのでもう一度使う。
おいおいいきなり第三段階のスキル使うとかダメだろ。が、残念だったなファントム。
お前の行動パターンは大体頭に入っているし──何よりこれ開発に天使が携わってるからな!
虚数とは相性良いんだわ!
「っは、っはぁ……っ! こ……こんなことして、こんな風に、のたうち回る……ボクを、馬鹿にするためだけに来たというのかい!?」
「いや違うって。前も言っただろ」
何度も言おう。
忘れてしまったのなら、何度でも。
「──俺はお前に欲情するんだって。今イき狂ってるお前、すげーエロいよ。快楽スキル:強制絶頂」
ああ、これ。
アレだ。
いつかメアリーに感じていた……俺のサドい部分。
「そら……とりあえず強制絶頂に慣れるまで一生ヤろうか。お前が負けを認めるまで」
見る者がいないからな。わからない。
果たして俺の顔は──ちゃんと人間になっているだろうか。
下弦の月を描く、エリザヴェータの言う通りの悪鬼羅刹になってやしないだろうか。
「快楽スキル:強制絶頂──」
まいっかー。
さて、適応できるかな、ファントム。──適応したところでまだまだ教えてもらった快楽スキルはいっぱいあるんだけど。
んじゃお前の痴態──全てスクショに納めさせてもらおうか!