※この作品はR-18です。

真・女神転生〜ジャッジメントデビルサマナー〜   作:葉隠小太郎

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PROLOGUE 1st

 

 

西暦2,000年に於ける終末論は、かのミシェル・ノストラダムスが提唱したと言われている。

 

恐怖の大王やパンドラの箱。

天変地異や核戦争。

未知の病気やテロメアの終焉。

 

数え切れない程、崩壊のキッカケが存在する中で人々は知恵を駆使し、生き残ってきたと考えられる。

 

 

しかし、人々が目に見えぬ裏の世界でも、崩壊が起こり得る可能性を孕んでいる事は理解していないであろう。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

中東 某国

 

イスラム教を中心とする過激派が支配する領域。

 

日々の糧を羊毛業と小麦の栽培で賄う山岳部族の村はタリバンを中心とした武装勢力によって、芥子畑の栽培を強いられていた。

 

芥子を主原料とする阿片生産はアフガニスタンを中心とし、欧州諸国や中央アジア、果てにはアメリカ大陸にも輸出されている。

 

但し、阿片の売上の殆どが武装勢力の活動資金へと変わり、村々全体にその恩恵など無く、むしろ前の生活が良かったと嘆く者も居る。

 

だが、武装勢力には驚異的な武器が多く所持し、村を1つ焼くにも手間とは思わない程強力な存在を従えていると噂される。

 

人々は嘆いた。

 

反論した夫は首を切られた。

 

出来るだけ穏便に済まそうとした老人がぼろ切れになるまで撃たれた。

 

小さな乳飲み子が電動ドリルで生きたまま頭を刳り貫かれて死んだ。

 

若い女は代わる代わる犯され、終いには村のど真ん中で首を吊るされて放置された。

 

非道に次ぐ非道。

 

めぼしい少年は親殺しを強いられ、芥子の乳液を舐めさせられ、一生のトラウマへと塗り潰し、残虐な事も平気で行える兵士へ変貌させる。

 

人々は其の者達を悪魔(シャイターン)と呼んだ。

 

 

 

………疲れた。

 

小さく息を吐き、出来る限り周りの見張りに気付かれないよう身体を休める。

 

彼等が行っているのは芥子の身を縦に傷を入れ、出てきた乳液を採取する作業。

 

朝傷を入れ、夕方にそれを採取して乾燥させると黒い粘土のようになった生アヘンが出来る。

他の場所では茎や其れ等も溶解処理してオピオイド成分を抽出するらしく、殆どが非効率そのもの。

 

其れを導入しないのは単に面倒なのか、それともその知恵が無いのかハッキリとしない。

ただ、今の状況では其れを導入するまでに生きていられるのかは正直に絶望的と捉えられた。

 

不意に思い出してしまう。

 

唯一生き残った若い男性の彼もまた、いつか最初の制裁と同じく、リンチされて四肢を切断されたまま砂漠に放置される恐怖に苛まれながら生きている。

 

このまま死ぬまで働かされるか、残酷な死を味わわせられるか、不安の中、乳液を道具で掻き出す。

 

「…おい。今サボってたか?」

「い、いえっ…!まだ液が出てなかったので別のを見てました!!」

「………次はないぞ?」

 

────危なかった。

 

数秒遅ければ、持っているライフルで撃ち殺されていた。

 

そう想像すると全身に鳥肌が立ってしまう。

 

もう少し上手くやれていた筈なのにと思っているが、冬に向かう割りには照り付ける太陽が全身にジリジリと体力を奪っていくことをまだ彼は知らない。

 

温暖化による気候変動が原因であることは間違いないが、其れを証明することはまだ難しく、其の知識のない彼等には全く理解出来ない状況である。

 

奴隷。

 

彼の頭に浮かぶのは唯一つその言葉。

 

今までも大変であったことは変わらなかった。

だが、のんびりと緩やかに流れる時間の中で羊の毛を刈り、乳を絞り、小麦を育てる。

自由に休むことも、自由に選ぶことも出来ない非道であり、しかも阿片では腹は膨らまず、人を堕落させることしか出来ない。

 

不満は多くあった。

 

しかし、それを言えば殺される。

 

堂々巡りの思考でいっぱいになる中、彼はあることに気が付く。

 

(………誰だ?)

 

芥子畑の中で作業しているのは彼を含め、老女と中年の女性ばかりで、若い女は2人だけ。

 

目深く被ったヒジャブとローブで姿を隠しているが、どう見てもこ(・)の(・)国(・)の(・)民(・)族(・)と(・)は(・)思(・)え(・)な(・)い(・)人(・)種(・)の(・)女(・)が(・)居た。

 

(……何処かから拉致されたのか?)

 

彼は風の噂でこんな事を耳にした。

 

都市に世界各地の報道機関が挙ってこの国の実情を報道しており、現政権に対する残虐な行いを弾劾している。

しかし、殆ど国内では規制されているため聞くことはなく、しかも一部報道員を国家に対するテロ容疑と称して拉致しては強制労働を行わせるらしい。

 

(…インテリにはキツイな)

 

少なくとも頭脳労働者には難しい仕事ではある。

 

身体を酷使し、しかも夜の相手をさせられる可能性を秘めていると、いつ同じ末路になるのかと考えてしまう。

 

(………すまない)

 

助けたくとも助けることは出来ない。

 

薄情な自身を戒めながら、掻き集めた乳液を入れた容器を持って作業場へと足を運び。

 

「おい、何処へ行くつもりだ?」

 

見張りに呼び止められた。

 

「あっ、いえ…容器が一杯になったので作業場の方へ行こうと…」

 

彼は正直に答える。

 

嘘をつく理由も無く、嘘をついても意味はない。

 

だが、嘘かどうかを見極めるのは。

 

「勝手に動くな」

 

あくまでも見張りの役目。

銃口が胸骨付近へ突きつけられる。

 

万が一でも引き金に指が掛けられれば一発で冥府へと落とされるであろう。

 

「で…でも…」

「俺の話を聞いていなかったか?」

 

これ以上は会話にならない。

 

潔く、引こうとし、口を閉じた時。

 

「…ごめんなさい。私の事を心配してくださったのです…」

 

後ろから声をかけられる。

 

見張りは視線のみを動かし、声の主を見た。

 

「……何時から此処に居る?」

 

先程、彼が見つけた女がゆっくりと歩いて寄って来ていた。

女はヒジャブで顔を隠し、身を縮こませながら答える。

 

「…分かりません。いつの間にか此処で働かされましたから…」

 

怯えの籠もった答えが返ってくる。

 

見張りの視線は女のつま先から徐々に脚、下腹部、胸部、そしてブルカ程まで隠された顔をよく見ていく。

 

(……なるほど。中(・)々(・)良(・)い(・)女(・)だ(・))

 

見張りもまた男。

 

長期間女日照で困っていた中で現れた恐怖に怯える雌に思わず舌で口元を舐めずりそうになる。

 

服に隠されていても薄っすらと分かる肉の付き方は、好みの範疇に該当。

たわわに実った其れを"一番"に頂けるならば。

そう思いながら、見張りは口端を吊り上げ、述べる。

 

「女。其処の納屋に行くぞ?」

「…………はい」

 

若干の間が空きながらも見張りの言うことを聞く姿に彼は為す術もない。

銃で脅され、何も出来ず、ただ見送るしか無い中で。

 

彼はあることに気が付く。

 

「……今…腕(・)に(・)何(・)か(・)着(・)け(・)て(・)た(・)?(・)」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

現在、拷問による自白は裁判で無効とされる。

 

しかし各国政府諜報機関ではまだ充分な情報集めとして使う事が出来、捕まった主犯格等を秘密軍事施設(ブラックサイト)へ送り、水責めや電気責め等を行う。

 

但し、彼女であればその必要はない。

 

「……答えて。こ(・)の(・)一(・)帯(・)を(・)支(・)配(・)し(・)て(・)い(・)る(・)幹(・)部(・)及(・)び(・)首(・)領(・)の(・)住(・)む(・)場(・)所(・)は(・)?(・)」

 

女の言葉は先程の怯えた声とは違う、凛とハリのある透き通った声が見張りの耳に入る。

 

何事なのか。

そう思いながら、見張りは手にする突撃銃(AKS-47)を構えようとする。

 

「……〚この村から東に3km程度先に向かい、岩盤の下の洞窟です〛」

 

しかし見張りはなんの気も無しに女の言う通りに話していき疑問も持たない。

 

「貴方が殺した数と女性達を犯した数は?」

「〚撃ち殺したのは6人。頭を生きたまま削ぎ落としたのは2人。子供を滅多打ちにしながら犯したり"血抜き"を行なって殺したのは8人です〛」

「………そう」

 

彼女は目を細め、残念だと言わんばかりにため息を吐き、見張りの首元を両手で触れていく。

 

「なっ…中々…いやらしい手付きしてるぜ…」

 

一方で見張りは今まで自分が質問に答えていた事を覚えていないのか、目の色が変わる。

 

細い指は男の首を蛇が這うようにゆっくりと絡ませ、次への期待を隠し切れず息が荒く吐き散らかす。

 

ヒジャブに隠された顔があらわになるとその整った美貌が男の性(さが)を擽らせた。

 

「………安心して下さい。出来るだけ苦しませんから」

「……はっ?」

 

女の声色に何か強いものを感じ取るも、既に遅く。

 

自(・)身(・)の(・)首(・)が(・)背(・)中(・)側(・)に(・)向(・)き(・)、(・)一(・)瞬(・)で(・)身(・)体(・)が(・)墜(・)ち(・)る(・)。

 

頚椎に回転を加え、あらぬ方向へへし折る。

其れを容易く行った女はヒジャブを取り、着ていた服を脱ぐ。

 

「……ふぅ。流石に"二重"は重い」

 

内側に着ていたのは、上下一体型の黒いライダースーツにマガジンポーチの付いたジャケット。

直ぐにポーチから親指と人差し指の第2関節までオープンにされたグローブを嵌めた。

 

「…さて。夜まで待ちましょうか」

 

そう言い、肩まで伸びたプラチナブロンドをかき上げ、待機する。

 

 

 

 

明かりの一切ない山岳地帯では月明かりが頼りとされるも、新月の夜ではその恩恵も得られない。

 

故にガムテープで銃身へとグルグル巻にされた懐中電灯や物見台の兵士のみソ連時代の暗視装置を使用する。

 

「……異常なし」

 

周囲を照らし、何も無いことを確認。

 

そろそろ交代の時間だと考えながら、パトロール場所から背を向けた瞬間。

 

「…あれっ?」

 

何かを感じる暇もなく、弾(・)き(・)飛(・)ば(・)さ(・)れ(・)た(・)。

 

 

 

 

「良いですか、ハディット将軍(ジェネラル・ハディット)。私は貴方方の同士として、ここにおります。宜しいですね?」

「分かっている。導師〔アスキン〕。まさか【メシア教】から多大な支援を頂けるとは思わなかったよ」

 

花崗岩の岩盤の下、過激派組織【アトラ・ハシースの子供達】のトップである男、〔ハディット〕が組織員達と共に創り上げた地下街を隣の男に見せながら通りを歩く。

 

〔アスキン・ナックルヴァール〕

 

世界的規模に展開する三大宗教、【十字教】の過激派【メシア教】の導師である。

 

「いえ。たとえ考え方は違えど同じ"主"を愛する隣人。悪しき帝国主義者達と戦う聖戦の同士であるならば尚更でしょう」

 

独特な立ち方をしながら、視線をハディットへ向ける。

さながらファッションショーで服の細部を披露するモデルを思わせた。

 

「ま…まぁ、とても個性豊かな方とはお伺いしてましたが…あっはははっ…」

 

ハディットは正直に思う。

 

とても聖職に関わる人間とは思えない身なりに金をかけた男。

聖戦の何たるかというものを知らない様子に、少しばかり苛立ちを覚えた。

 

アスキン・ナックルヴァールもまた、こう考える。

 

────主の名を使う愚か共。

 

聖戦(ジハード)の意味をどう理解しているのか。

余りにも阿呆らしく、冷静を装うにも綻びが出そうなほどに怒りが込み上げている。

 

("上"も何を目的にコイツ等に援助をする?やはりあの"噂"は本当なのか?)

 

導師という立場から得られる情報の中で、1つ心当たりを見出す。

其れがどういった意味なのかも。

 

「…どうかなさいましたか?」

「いえ。少し考え事と…」

 

 

「どうやら"闖入者"がお出ましのようです」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「Summon…【ヘカトンケイル】!【パズス】!」

『アバレマクッテヤル…!!』

『応じよう、〔サマナー〕!!』

 

地下街の入口にて爆音と土埃が立ち上がる。

 

    \カカカッ!!/

〔邪鬼:ヘカトンケイル〕

 

  \カカカッ!!/

〔邪神:パズス〕

 

現れたのは異形。

幾重も顔と腕の付いた巨大な怪物と背に羽根をはためかせる獅子の顔を持つ怪物の2体を引き連れた者が一人。

 

プラチナブロンドを靡かせ、土埃の中を全速力で走る。

 

「ヘカトンケイルは【会心の覇気】を!パズスは【テンタラフー】で場を掻き乱して!」

『リョウカイ!!』

『我は災いの風、混乱せよ!』

 

サマナーと呼ばれた女が命じる。

 

巨人ヘカトンケイルが力を溜め、邪神パズスが場の敵に対し、混乱を重ねる。

 

会心の覇気自身に次に行う力依存攻撃が必中になり、必ずクリティカルになるチャージ効果を付与する
テンタラフー敵全体に混乱を付加*1

 

 

「撃て撃てぇ!!撃ちまくれ!!」

 

見張り達の隊長らしき男が指示を飛ばし、銃撃を行う。

 

大量の7.62mm弾頭が飛び交い、現れた侵入者へと襲いかかる。

 

────仕留めた。

 

ニヤリと笑いながら隣の仲間の方へ目を向けると。

 

「…お…おい。何で…俺(・)を(・)撃(・)っ(・)た(・)?(・)」

「えっ…?って?おれも撃(・)た(・)れ(・)て(・)る(・)?(・)」

 

何が起こったのか。

その確認する術もなく、お互いを"同士撃ち"したことのみ知ってから倒れ伏せた。

 

「…ばっ…馬鹿なっ…!?」

 

隊長は唯一その信じられない光景を見た。

 

仲間同士で敵と言いながら撃ち合いをした事。

血飛沫を上げ、ゲラゲラと笑い合いながら撃ち続け、内臓や脳漿をぶち撒けては知る前に死ぬ。

 

如何に独善的な考えから生まれた過激派といえども仲間同士を撃つことは有り得ず、まるで何かに仕組まれたと考え、一旦退こうとした時。

 

『ブチカマッス!!』

 

暴れまくり敵全体ランダムに2〜5回中威力の物理属性攻撃。命中率が低い(会心の覇気により必中)

 

隊長の頭部は巨人の巨拳によって柘榴の如く弾け散った。

 

 

 

 

『…サマナー。やはり情報通りだ』

「ええ。全部【マネカタ】」

 

  \カカカッ!!/

〔外道:マネカタ〕

 

倒された構成員達のローブが剥げると、無表情を仮面にしたような顔つきが確認できる。

 

「まるで人形ね…」

 

人を殺した感覚が湧かない。

サマナーは同士撃ちとなった者達を見て思う。

 

『我等からすれば路端に座る者達と変わらん。死を待つしか出来ぬ"愚者"そのものだ…』

「……パズス、その言い方はやめて」

『……了解』

 

冷静に答えるサマナーにパズスは小さく頷く。

如何なる理由があれども、人から変わり果てた姿になろうとした者には同情の余地など無い。

しかし、それでも彼女は彼等の無力さを思う。

 

『…"奴等"だ。そろそろ来る』

 

パズスは地下街の奥から現れようとする存在に気が付き、構える。

 

「パズス、【バリア】をお願い。【スレイプニル】」

『了解』

 

バリア3ターンの間、状態異常を無効にする。

 

状態異常。

それはテンタラフーやマリンカリン等の混乱と魅了を付加し敵を同士撃ちに出来たりする魔界魔法効果。

これ1つで戦況を引っくり返せるとも言われ、一部装備等で対策を取るか、バリアによる無効化、もしくは回復手段を取り揃える必要性がある。

 

サマナーは左腕に着けた古いウェラブルデバイスを動かし、もう一体の【仲魔】を召喚する。

 

『ヒィヒィインンッ!!』

 

8つの脚を持つ馬。

北欧神話に於ける大神オーディンが騎乗した神馬【スレイプニル】が召喚に応じ、そのいななきを発する。

 

スレイプニルの役割は補助と回復を中心に行いつつ、サマナーが乗ることで場を留まらない移動手段としても活用される。

 

「スレイプニルは【ラスタキャンディ】でステータスを上げて。パズスは引き続きテンタラフーで混乱を」

『了解』

『ヒヒィィイイン!!』 

 

ラスタキャンディ3ターンの間、味方全体の全能力を1段階上昇させる。

 

力を増し、攻防を有利にさせる効果で蹂躙する。

ヘカトンケイルによる破壊。

パズスによる妨害工作。

スレイプニルによる高速移動。

 

たった一時間もせずに過激派による街は炎と煙が立ち昇る事態と化した。

 

『【マハジオ】』

『【ジオ】』

『【マハラギ】』

 

だが、敵方とてやられるばかりではない。

 

全体雷撃魔法(マハジオ)と全体火炎魔法(マハラギ)が飛び交い、暴れまわるヘカトンケイルへと襲いかかる。

 

『グォッ!?キタカ糞(・)天(・)使(・)ド(・)モ(・)!!』

 

ラスタキャンディによる効果で、当たらなかった魔法や当たっても軽減したことでダメージは少ない。

 

ギョロリと目を向け、放った敵対者へガンをつけた。

 

    \カカカッ!!/

〔天使:アークエンジェル〕

    \カカカッ!!/

〔天使:プリンシパリティ〕

 

翼を持つ天からやって来た御使い。

 

人は其れを"天使"と呼び、古来から崇め奉られる存在として言い伝えられている。

 

しかし、サマナーや仲魔達からすれば同じ【悪魔】。

カテゴリー上【天使】と呼ばれているに過ぎない。

 

故に。

 

「ヘカトンケイルは【溶解ブレス】。パズスは【マハムドオン】を」

『グォォオオオオ!!!【溶解ブレス】』

『了解、呪い死ぬ良い!【マハムドオン】』

 

共通した弱点である全体呪殺魔法(マハムドオン)と防御力、回避、命中率を下げる溶解ブレスで死滅させる事が最適解であった。

 

『『『グァアアアア!!?』』』

 

サツバツ!!

呪殺によって、天使達は為す術もなく倒され、消し飛ばされた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「はぁ…馬鹿共が。呪殺対策取ってなかったのか…」

 

駆けつけてみれば、辺りは散々な状況となっている。

 

元のお歯黒ドブに戻るマネカタ構成員。

呪殺を受けたことでMAG(マグネタイト)へ変換されていく天使達。

 

複数体操る実力があれども、たった1人に対して半分近くの戦力が消し飛んだことに苛立ちが募る。

 

「これ以上は不味いな」

 

導師であるアスキンにとってみれば、自身が管轄する領域を荒らされるわけにもいかない。

ましては悪魔対策として従事する天使達も負けるとなれば悠長な事をしている場合でもない。

 

「闘争を始めよう」

 

アスキン・ナックルヴァールの身体が燃える。

指先から鋭利な爪を生やし、皮膚が別の生物へと造り変わる。

 

      \カカカッ!!/

〔喰奴(アバタールチューナー) 大天使:スラオシャ〕

 

異形の鎧に身を纏い、全てを噛み砕かんとする並んだ牙を見せるその姿は聖なる者と思うだろう。

 

しかし其れとは裏腹に恐怖を創る存在であることは誰もが予期していなかった。

 

『………神罰を与える…!』

 

龍の眼光自身に対し行動回数を3回に増やす

マカカジャ味方全体の魔法攻撃力を一段階上げる

コンセントレイト自身の魔法攻撃スキルの威力が一度だけ2.5倍になる

 

 

『消え去れ…!【ニルヴァーナ】!!!』

 

ニルヴァーナ敵全体に対し神聖相性の中威力攻撃 50%の確率で瀕死を追加

 

突如、サマナーと仲魔に光が襲いかかる。

 

天使達が有する破魔属性魔法(ハマ)と似通っているが、それよりも遥かに威力が高く、破壊に特化している。

 

周りの建物ごと聖なる光で覆い尽くし、瓦礫の山を築く事も厭わないやり方は、ある意味メシアンの暴力性として手本にされてもおかしくない。

 

「…ヘカトンケイル。無事?」

『…サイワイ、【食いしばり】デキタ』

 

食いしばり戦闘中一度だけHPが0になる攻撃を受けた場合、1だけ耐える

 

冥府の巨人がサマナーを護りながらも瀕死にならず、立ち上がり、声を張り上げた。

 

直ぐにサマナーがポーチの横に付けていた瓶を引き抜き、ヘカトンケイルへと吹き掛ける。

中の液体が表皮を濡らすとみるみるうちに火傷や傷などが塞がり、表面が何もなかったかのように元に戻った。

 

『作戦は?サマナー』

 

辛うじて攻撃範囲から出ていたパズスが降り立ち、サマナーへと問いかける。

 

「あそこに妙なメシアンが1人。恐らく厄介な存在です」

『大きい。並みの天使じゃないことは分かる』

 

一目で見ればその力加減がどれほどなのか理解出来る。

アスキン・ナックルヴァールという男が只者では無い事をサマナーは肌でひしひしと伝わる中、反撃の狼煙を上げるべく、深く息を吸い、吐いていく。

 

『ブッツブシテヤル…!!』

 

力の差を真っ向から受け、怒り心頭の巨人が歯を掻き鳴らしながら、今か今かと力む。

 

『落ち着け』

 

同僚のその姿に、一応は落ち着かせようと声を掛けるも、それで冷静にするほど理論派でないことは理解している。

一方的な仲魔同士の殴り合いに発展しかねない中で、サマナーは呆れた顔をしつつ、対応策を練った。

 

「スレイプニル」

『ヒィヒヒィィィンッ!!』

 

先ず1つ。

サマナーがスレイプニルの背へと乗る。

 

2つ、首元に中指で2回タッチすると顔と頭をヘルメット状の物が展開され、全て覆い始める。

 

3つ、彼女はそのまま左腕のガントレット状の機械へ命じる。

 

「コマンダースキル起動。【突撃指令】【ブレイブハート】発動」

 

突撃指令味方全体の攻撃ダメージが上昇する(

一気通貫味方全体が敵の属性相性を無視してダメージを与えられる

 

「パズスはデカジャでその都度相手のカジャ系を消して、衝撃(ザンダイン)か呪殺(マハムドオン)で対処を」

『了解』

「ヘカトンケイルは溶解ブレスとか【挑発】でヘイト買って」

『グゥウウウ!!へいと!カワセル!!』

 

この反撃でどれほど削り切れるか。

サマナーは不安を覚えつつも、自身を鼓舞するようにスレイプニルの臀部へと1つ手で叩いた。

 

「行きます…!!」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

俺はいつだって余裕で優雅で粛々と行ってきた。

 

神聖属性は破魔を無効にする耐性には引っ掛からず、天使だからとかメシアンだからとかで対応するものではない。

 

万能属性だけで勝負する者も少なからず居るが、それも【ラクカジャ】や【スクカジャ】で回避もしくは防御に徹する事も必要。

 

万能はあくまでも7つ存在する属性耐性の影響を受けずに放たれる力であり、特出した弱点属性を狙うほうが遥かに効率がいい。

 

其れでも、防具やカーン等の防御魔法で対応を取ることが出来る故に、結局戦法には正解など無い。

 

まぁ、そもそも…。

 

『生き残った方が正解であるがな【空間殺法】』

 

空間殺法敵全体に打撃相性の大威力物理属性攻撃

 

サマナーへと向けた打撃は神馬の速力で当たり辛い上に相手の方は回避を仲魔に任せることで俺に注視出来る強みがある。

 

強さという点では少なからずとも此方が有利だが、サマナーは仲魔の手数で圧倒するつもりだ。

 

『ウォォォオオ゛オ゛!!【モータルジハード】』

 

モータルジハード敵単体に大威力の物理属性攻撃

 

巨人の一撃が此方に入る。

【スクカジャオート】や【スクンダオート】が入っていても当てられる辺り、必中のスキルを持っているのだろう。

 

『【ザンダイン】』

 

片方がバフを付けながら片方が攻撃を行う。

HPやMPに困ればサマナーがアイテムを使って回復させ、神馬も【ディアラハン】で回復出来る。

 

有象無象を混乱させて減らした後に呪殺で天使殆どを消し去り、唯一強力な相手を孤立させる。

 

中々上手い手だと感じ取れたし、格上相手であればセオリー通りと褒め称えたくなる。

 

故に。

 

『優雅さを捨てて本気を出せという啓示だな。これは』

 

導師アスキンではなく、アスキン・ナックルヴァールとして、ここに立たねばならない。

今、この瞬間に全力を込めなければ、サマナーの少女にも失礼であろう。

 

俺自身の為にも。

 

『我は何時に天変の力を下そう』

 

呪文とは異なる。

己の内側からマグネタイトを引き出し、力へと変え、放出する。

 

その工程に必要なアクションだと認識している。

 

故に。

 

『【エル・ジハード】』

 

エル・ジハード敵全体に特大威力の電撃属性攻撃 確率でSHOCK効果(見出し2列目)

 

聖戦の名を持つ強烈な雷光を生み出す。

相手の仲魔に電撃属性の耐性は持ち合わせていない事を見出し、出来得る限り最大級の魔法を使った。

 

『ガァッ…!!?』

『……グァァ…』

 

主力の2体を潰せた。

SHOCKの効果はほんの数秒だが、サマナーを倒すには充分過ぎる。

広範囲攻撃故に馬にもダメージを与えられたであろう。

 

装備していた【電池パック】*2のお陰とも言うべきかどうかはさておき。

 

『…見つけ…!?』

 

馬は居た。

 

が、その背には騎手は居らず、判断が遅れた。

 

『…くっそっ…!!』

 

上(・)に(・)跳(・)ん(・)で(・)い(・)た(・)。

 

攻撃の一瞬を突き、回避に務めていたのだ。

 

彼女の方が速い。

視界に入った瞬間、そう感じ取れた。

 

「……チェックメイト【モーンバレット】」

 

モーンバレット敵複数体に中威力の万能属性攻撃

 

竜騎兵(ドラグーン)の名を持つリボルバーの銃口から火が吹く。

万能の弾丸が額を貫く感覚をまじまじと感じさせながら、俺はサマナーの女の顔を見た。

 

金髪碧眼の美人。

こんな出会いで無ければ間違いなくドライマティーニを奢っては語り合っていただろう。

 

そんな風な走馬灯を見ながら、其れでもその出会いでは見ることは叶わなかったであろう。

 

勝(・)者(・)に(・)似(・)つ(・)か(・)わ(・)し(・)く(・)な(・)い(・)苦(・)々(・)し(・)い(・)表(・)情(・)は(・)。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

痺れ除けの御守り*3と大天使のブラ*4で何とかなった。

 

かつて電撃属性によるSHOCKとかで泣かされた経験から得た手段であったことと、相手が〔アスキン・ナックルヴァール〕であったことを念頭に置いていた事で勝利を掴めた。

 

基本的に情報集めな戦いであったが、生(・)き(・)残(・)る(・)事(・)が(・)勝(・)利(・)であるサマナー業界の常識に則った形なので間違いなく、私は此処に立っている。

 

「………はぁ…」

 

だが喪ったものは多い。

 

長らくの付き合いであったパズスとヘカトンケイルの標示は【LOST】。

【DEAD】状態ではない、データが全て消し去った状態。

 

格上相手でかつ強烈な威力の雷撃には彼等も耐えきれなかった。

 

耐性があれば壊れなかっただろうか?

もっと早く出来ることがあったのではないか?

判断が間違っていた可能性は?

 

終わりの見えない問いを己の中で感じながら、全てを吐き出したくなる衝動に駆られ。

 

『サマナー。落ち着き給え。まだ警戒は怠るな』

「………〔ガネーシャ〕」

 

  \カカカッ!!/

〔軍神:ガネーシャ〕

 

傍らに立つインドの神の一柱、片方の牙が折れた象頭と豊満な図体の豊穣神はサマナーたる私を守るために声を掛ける。

 

『急ぎ〔プライス〕に連絡を。直ぐに離脱だ』

「………ええ」

 

嘆く暇は無い。

 

ガネーシャをCOMPへと戻し、弱っていたスレイプニルに魔石を使い、回復させてから飛び乗り、疾走らせる。

 

COMP内の時計は発射時刻3分前まで迫っていた。

 

「頑張ってスレイプニル」

『ヒィヒィィィイインッ!!』

 

地下の街を駆ける。

何がここに置かれているのか私は知っている。

 

壊すべきかどうか悩むかも知れないけれど、其れでも未来を考えてみれば行わなければならないと考えた。

 

私(・)は(・)こ(・)れ(・)が(・)正(・)し(・)い(・)と(・)は(・)と(・)て(・)も(・)思(・)い(・)た(・)く(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)。

 

〚此方"ブラボー6"。後一分で爆撃が行われる!急いで出ろ!!〛

 

無線機から壮年の声が響く。

 

「後十秒で外に出れます!!」

〚そうか!其れは良かったぞクソが!!〛

 

残り三十秒。

それでヘリに乗るには流石に間に合わないかもしれない。

 

それでもスレイプニルを信じて走らせ。

 

外の光を浴びる。

 

〚……来いっ!!〔サリヴァン〕!!〛

 

私の名を呼び、ギリギリまで降下していた輸送ヘリのハッチから身を乗り出す。

 

砂と岩の荒野を走りながら彼の手を掴み、引き上げられる。

 

スレイプニルは直ぐ様COMPへ戻す。

 

全速力でヘリが空域を離脱する中、閉じられていくハッチの隙間から、強烈な爆音を鳴らし、飛翔する爆撃機と装填された空対地ミサイルが発射されるのを見た。

 

「……サンダーボルトの一撃には流石の方舟も吹き飛ぶか?」

「さぁ…どうでしょう?大洪水の中を渡っていた以上それなりに頑丈だと思います」

 

断続的に起こる爆撃の音は機内にローターの震えとは異なる振動を作り、その威力を伝える。

 

「……サーモバリック爆薬と地中貫通爆弾(バンカーバスター)使って耐え切れたなら本気で"ブラフマーストラ"でも使うしか無いぞ?」

「………かも」

 

爆発と共に、1つの光線が空高く飛んで消えるのが目に見えた気がする。

其れが何を意味するかまでは分からないけれど。

 

「………まぁ、向こう100年は安泰でしょう」

 

次に任せよう。

 

疲れ果てた身体を硬い床に預けながら思う。

 

────今度こそ会わなければ。

 

ヘルメットを展開し、COMPを操作し、アーカイブから1つの画像を開く。

 

無表情でぶっきらぼうな顔をした壮年男性の写真を見て、ため息をついて目を閉じる。

 

 

 

              to be continued

*1:
行動不可及び味方に攻撃してしまう

*2:
ペルソナ5ザ・ロイヤルから感電率UPのアクセサリー

*3:
ペルソナ5ザ・ロイヤルからSHOCK効果を防ぐ

*4:
電撃ダメージを大幅に軽減

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