真・女神転生〜ジャッジメントデビルサマナー〜 作:葉隠小太郎
今年度中にギルティマンション篇を終わらせたい。
師走の時期にそう思う作家をどうか応援宜しくお願いします。
数刻前…。
「にゃぁぁあ〜〜!!!」
「どうして盛りのついた猫みたいな声出してるんですか!?」
「それはご無沙汰だからですだよ!〔直っちゃん〕!!」
例のマンション前にて叫び散らすは童女の如く背の低い少女と髪の長い〔直っちゃん〕と呼ばれた女性の2人。
彼女達は物陰にて入口付近を覗き込みながら中を伺っている。
「うん。ビンビン来てるよぉ…!反り立つ壁ですらうっとりしちゃうマダム並みにビンビン来てる!」
「どうして喩えが妙な抽象的かつ淫猥な表現ですか…?」
少女らしく感じられない言動に〔直っちゃん〕、もとい〔白鐘直斗〕はため息を吐き、顔を両手で覆うのだった。
「直っちゃん。女の子だってムラムラするんだよ?エッチなことしたいのだよ?時には分厚い胸板にしがみつきながら熱い衝動を受けたいのです」
「申し訳ありませんが、其処まで溜まってないので…」
「おっと、やっぱイケメンモテメガネ君としっぽりずっぽりヤリまくってるのね」
「〔ない世〕さん…!!」
流石に弄り過ぎた故に〔ない世〕と呼ばれた少女は直斗にチョークスリーパーをかけられ、降参のタップを叩く。
「さて、真面目に戻るとして……直っちゃんはどう見る?」
「どう…とは?」
「どう見ても堅気とは思えない管理人に停まってるバンはスモークガラスで、防弾仕様…。明らかに日本で走らせたら一発免許取り消し処分間違いないと思うけど?」
「……確かに其れはありますね」
ない世の指摘通り、道交法違反な仕様の車両を扱う集団が傾きかけの集合住宅で何をするのか、直斗は顎に手を当て、考える。
どう見たとしても、良からぬ事を企む集団による違法行為の現場。
場合によっては強制執行も辞さない状況だが。
「どうしてか、通報したはずなのに一向にやって来る気配のない警察の対応…」
「明らかに藪蛇に首突っ込もうとしてるよね?」
「でも行かないつもりは?」
「ナッシング」
下手をしたならば社会的抹殺も出来る
だが、ない世の笑みは全く崩れること無く、直斗も頷いては同意する。
「中に入ってビバドッカンバトルしちゃおう!」
「出来たら穏便にお願いしたいですが…」
いつの間にか背中に大きな荷物を背負うない世。
多分言葉通りに派手な花火を打ち上げかねない事に心身共にハラハラさせられるのだった。
現在…。
「ってなわけでこのナイスボデェーなちゃんねーから"OHANASHI"してみた結果、マジカヨふぁっくゆー」
『アッアッアッ…』
女が見つけた屋根裏部屋にて、同じ様に忍び込んだない世はため息を吐いて苦言を呈する。
「主席連合…まさか世界的犯罪結社が関わってるとは…」
「怖くはないけど面倒くさい。喩えるなら満員電車の中で不意に下半身に力が籠もっちゃうてな感じに」
「喩えが謎です」
分かりづらい喩えに困惑する直斗を尻目にない世は瞳が上向きになっている女へ指を弾いて音を鳴らし、覚醒を促した。
『………ハッ…!?私は何を』
「さて、処分に困ったらどうするべきかな?」
「処分って…」
ない世の話術から抜けた女に対して、どうするべきか悩み考える中。
『おい、貴様ら一体!』
『ちょい待ってて。相談中だから』
『なっ…!?』
目が覚め、物申そうと口を開くが、制止させられる。
「さて、どうするかなぁ…都合良く記憶喪失とか出来そう?」
「意図的な記憶障害は脳へ重度のダメージを負うケースばかりだと思うので推奨出来ません」
「だよね。脅してお口チャックも難し……あっ、そうだ」
一つ何かを思い付き、踵を返して女の方へ向く。
『ちょっと質問良い?Ms.〔ボルチモア〕』
『なっ…!?どうして名前をっ!?』
『其処は良いから、取り敢えず聞きたい事あるんだよね?』
『あっ…えぇ…』
部隊員の女性、〔ボルチモア〕はない世から話すように促され、致し方なく頷く。
『明らかに任務失敗だけど、このまま撤退して「残念でしたね、今度はしっかりお願いしますね?」で済む?』
『………いや。良くて粛清、悪くて家族全員か所属先の頭目の首だろう』
『ヮ(゚д゚)ォ!』
やる行為が殺伐としている。
そんな感想が頭の中で出るない世。
『じゃあ、このまま帰っても不味いよね?』
『どうしろと?言っておくがお前達と協力した所で此方に何も利益など無いぞ』
『うーん。利益というか何というか…』
『証人保護プログラムって知ってる?』
同時刻
パレス内セーフハウス
「……一応ケリは着けられたか?」
「ええ、ありがとう御座います。ウリエル様」
「様付けはいい。出来たら【さん】程度の呼び方のほうが良い」
ウリエルが施したセーフハウスにて、ラビアンの説得が上手く行った友奈はホッと一息胸を撫で下ろす。
『さて。此処からどーすんだ?一丁魅了貫通してくるドスケベ女教師に殴り込みかい?』
「アンドラス。そもそも何故貴様は効かなかった?」
『あんっ?そりゃぁ……あっ』
話の輪に入り、厄介な主への対策と口を出した後、何か気がつく。
「どうしたんですか?」
『…そういやぁ…あれ…"精神相性"じゃねぇのか?』
「精神?相性??」
其れはどういう意味か。
友奈は疑問に感じ、頭上からクエスチョンが出てくるような状態でいると。
「所謂魔界魔法の分類…という物です」
ラビアンが助け舟を出す。
「時々あるんですよ。【火炎相性の物理属性攻撃】とか、【神経相性のBIND状態】みたいな属性とはまた違う効果を表す物が」
「あ〜あ!剣で斬るから物理かと思ったら火炎属性だったとかあるあるですよね!!」
「お陰で、装備選ぶにも時間が食う場合ががが…」
果たして魔法攻撃なのか物理攻撃なのか判断の付かないという理由でダメージを負った記憶があるラビアンは目を虚ろに思い出す。
何となくであるが理解出来た友奈にアンドラスが口を開いていく。
『私さぁ、魅了に耐性持ってるんだよね?だからMissってたわけだ』
「他の方には其れが無かったと?」
『精神相性とか神経相性に分類しない魔法が出てくるなんてやべえでしょうが!!』
アンドラスの叫びが周りを木霊す。
彼女?の言う通り、過去には神経属性や精神属性等に分類されていた【マリンカリン】や【シバブー】等の魔法及びスキルで対応していたケースが多かった。
しかし、近年では状態異常への対策が細分化されたことで多くの古参サマナーやバスターが死亡している。
スキルの連動効果で掛かりやすくなるケースや状態異常が個別化されたケースが遠因と言える。
「最早雑に分類する事も出来なくなった…スキルに【バリア*1】も必須になり、全滅を防ぐために必ず防げる仲魔で【アムリタシャワー】や【パトラ】を使えるようにしておくべきだな」
其れ程までに状態異常は危険な存在である。
尚、特定の状態異常に掛かっていた場合を条件に即死するスキルも多々存在する。
しかし、議論をしている場合でもなく。
「……近いな」
ウリエルが目を光らせ、構えを取る。
辺りは揺れが大きくなり、地響きを強く大きく鳴らし始め、大きくなりつつあった。
「アンドラス。対処法は思いついたか?」
『ひたすらアムリタシャワーぶっかけて回復しかねぇ!幸い手数増やす方法は持ち合わせて無い!』
「なるほどな。では2人共」
敵が迫る中、ウリエルがラビアンと友奈の前へ向き直り、一つ息を吐いてから言葉を紡ぐ。
「自分の出来る限りを頼む」
「…ハイ!」
「了解!!」
覚悟を決めた2人の表情は、決して諦めない意志を示している。
であるならば、ウリエルもまた自身の力を信じ、立ち向かう事とする。
祭壇の床がヒビ割れていく。
一つ二つと亀裂が作られ、徐々に伸びては大きくなっていくそれに待ち続けるしか無い。
「………来るっ…!!」【スクカジャ*2】
タイミングを見計らい、補助魔法を発動。
同時に床が地響きを鳴らしながら、大きく破砕。
大きな腕が床下から現れた。
『見ぃつぅぅけぇエエタァァァアアア!!!』
\カカカッ!!/
〔シャドウ:
身体つきは女性そのものである。
が、頭部や顔面はパレスの主たる〔織斑一夏〕であり、己の中にある欲望が歪なカタチに変わり果ててこの場に顕現する。
「…Lv…80オーバー…!?」
ラビアンのもつ機械式アナライズに表示されたのは、上位クラスに当たる高レベル。
これには一同も驚き、反射的に背筋から震えが生じる。
『はっ?まじかよ?!詐欺ってね?』
「表示差はあれど、根本から下とは言い難いぞ」
「そ…其れじゃあ…」
目にする巨体が迫る中、驚愕の真実を突きつけられながらもウリエルは長刀を振るい、背後の2人へ目を向け。
「…サマナー友奈、シスターラビアン」
「…ハイ」「ええ…」
覚悟を決めるよう促した。
「アンドラス!!」
『わーてるわーてる!!』【タルカジャ*3】
迫る敵に出来得る限りの補助を掛ける。
戦力としては心許ない。
だが、退くことが出来ない。
3人と1体の仲魔による戦いが始まった。
揺蕩う夢の中。
暑すぎず寒すぎず、ふんわりと暖かな雰囲気が身体を包み込んで眠気を誘う。
このまま寝ても良いかもしれない。
正直疲れた気がしているし、もう良いだろうと投げ出したい気持ちがいっぱいある。
微睡んだ意識が徐々に深みに嵌るように、沈みつつあるけれど、抵抗もする気になれない。
どう表現するべきか…。
こたつの中か、見た目麗しい美女の肌か、どちらにせよ拒否する代物ではないな。
『君は其れで良いのか?』
誰かが問う。
酷く懐かしい声が聴こえた。
『私が知る〔宮本真之介〕は己が誓った事を投げ捨てて葦の原野に向かう"賢い愚か者"では無い』
掴もうとしても掴めないダレか。
どんな事をしてでも忘れたくない人。
『頭のいい莫迦で、表情筋が死んでいるくせに変態で、冷静なくせして血が上りやすく…』
『………
指先にようやく触れた長い髪。
いつも撫でては鼻に当てて鼻孔いっぱいに吸っていた彼女の薫り。
恥ずかしげに頬を赤らめた姿が好きで堪らなかった。
ずっと愛を囁やき、毎日の逢瀬が俺の心に火を点けて滾らせた。
声を出さなければ。
ゴボゴボと水の中を泳ぐように音は到達することはなく、空気が上へと登る。
『…思い出と共に沈むのは止めてくれ。お前は前を向いて足を踏み出せ』
彼女が踵を返す。
夢で逢えたらなんて嫌だった。
抱きしめて、その身体に触れたかった。
俺の想いは儚く、指から抜けていく髪が名残惜しそうに振りほどけ、彼女の笑みが見える。
『前に進め。
その言葉と共に彼女は消えていった。
「……俺は」
また救えなかった。
彼女を。
「……〔由岐〕…」
彼女の名前を呼ぶと、思い出す。
「………あぁ。そうだな」
やらなければならない事を。
「…行ってくる」
心に熱を灯す。
焔を創り、前を向き、空気を吸う。
拳を前に、両足は肩幅に開く。
極限まで脱力。
ほんの数秒まで身体に練気を溜め、ゆっくりと体内へ循環された二酸化炭素を含んだ空気を吐き切り。
「……チェストォオオオオ!!!」
何処とも分からぬ空間に一発の正拳突きが放たれ、
戦いは熾烈を極める。
\カカカッ!!/
〔覚醒者:高嶋友奈 Lv21〕
\カカカッ!!/
〔覚醒者:ラビアン Lv28〕
この通り、〔Lv82〕とは雲泥の差を作り、ただの
それ故に、彼女達は後衛を維持しつつ、友奈はアイテムを使い、ラビアンはコンポジットボウによる遠距離攻撃が主となる。
\カカカッ!!/
〔堕天使:アンドラス Lv41〕
\カカカッ!!/
〔聖人:ウリエル Lv52〕
唯一高レベルであるアンドラスとウリエルが前衛にて友奈とラビアンを守りながら戦う事となる。
最も厄介なことは。
『『『イェェェエァァァァアアア!!』』』
プルプルとした身体のシャムシエル、オレンジ色の金平糖形のアザゼル、アフロヘアーのシェムハザの3体が魅了によって敵側になっていたことである。
但し。
「燃え散らせ…!【サンライズ*4】」
『『『あっ、やべっ』』』
【火炎エンハウンス*5】と【神の炎*6】による複合効果と相まって壁役程度にしかならなかった。
「何のために出てきたのですの!あの悪魔達は!?」
\カカカッ!!/
〔???:セシリア・オルコット Lv66〕
「知らないよ。よく分からないの出てきて困ってるの僕等の方だし」
\カカカッ!!/
〔???:シャルロット・デュノア Lv65〕
「…新手か」
『ふぅ、どっちも超人級でヤバそうなのが目に見えてるけど?どうする?』
「斬るしか無い。今も昔も」
『だな』
倒されたシェムハザ達を尻目に新たに現れた2人の少女が立ち塞がる。
アナライズ情報と特殊な金属で創り出された
「先手必勝!【ギガンフィスト】!!」
「ぶちのめしますわ!【アシッドレイン】」
超人が動かす倍以上ある巨大な鋼鉄の拳の一撃と青い長銃身から放たれる高水圧の一線が場を崩していく。
「ウリエルさん!?」
「…どうやら、大事無いな…!」
(…避けられた!?)
友奈を脇へと抱えながらウリエルは破壊された足場から飛び越え、聖堂の奥へと降り立つ。
同じく、ラビアンを抱えたアンドラスは頭部の一部を凹ませながら降り立った。
『致命傷は避けられたかな?』
「いや、大分まずいと見えるが?」
『へーきへーき、んんぬぬぬぬ!!』
どういう原理なのか、唸り声をあげ凹んだ部分が元に戻る。
まるで着ぐるみみたいだ。
『あのグラマラスラインなちゃんねー達が居る限りジリ貧だぜ?』
「そんな事は百も承知。香を焚くなりなんなり爆上げしか無い!!」
「えっと…【勾玉】とか使うべきですか?」
『頼むよ友奈ちゃん!』
唯一の手段、それは【タルカジャ】等のステータス上昇用のアイテムを使用し、殴りつけに行くしか無い。
「…【コンセントレイト】!」
『おい、便利なヤツあんじゃん!!?マカカジャ無い?』
「えっ…と…【魔撃の勾玉】がありました!」
『でかした!!』
最早出し惜しみなどしない。
そう言わんばかりに友奈の所持していた勾玉等のアイテムを取り出しては使用。
重ねに重ねて掛けられたステータスは、サイヤ人と超サイヤ人の差並みに広がっていた。
『これが予のメラじゃ…!【メギドラ】!!』
「メラじゃない!?」
「ツッコむ所は其処かね?【マハジオバリオン】」
「「…えっ?」」
シャルロット、セシリアが見たのは万能と雷撃の嵐。
雑魚を雑に倒すに最も適している万能属性と近年使われることとなった
無論、その余波はパレスの主にも響く。
『グォォォオオ!!?』
カーン系では防ぐ事の出来ない万能が肌を焼く。
強烈な雷撃が身体に痺れを起こし、行動させない。
しかし。
『……あはっ♡』
主は嘲笑う。
一つのギミックがここに存在している事を。
『…罪状、器物破損』
紙が飛び交う。
『罪状、傷害』
頭に付けた帽子からハンマーを抜き、台の上を大きな音を立てて叩く。
『判決……"死刑"!!』
裁判長が結果を言い渡す。
セーフハウスであった大聖堂はボロボロに砕け散り、巨大な法廷へと変わり、作り上がっていく。
「なっ…!?」
『やべぇ』
「…友奈さっ!?」
被告人達自らが証言台に立たされ、何が起ころうとしているかを直ぐに理解する。
友奈の元へと向かおうとする者。
小さく呟いて万事休すと考える者。
何かに託すことを決めた者。
『死刑執行…!!【闇の審判】』
黒い靄が場を覆う。
「ラビアンさん…!?」
触れようとした手は闇に覆われ、力無く床へと落ちていく。
バタンッ。
そんな音を響かせ、1人のシスターは命を失くした。
「あっ…」
目の前で命が消える。
ただ立ち尽くすしか出来ない。
思考は働かず、動く事も出来ず、ただ。
「ぁぁ…ああぁ……」
叫ぶしか無かった。
「ぅぅああああ!!!」
跳ぶ。
裁判長の元へと拳を振るおうとめいいっぱいの力を込めて繰り出す。
【鬼神楽】
唯一持つ強力な戦技。
相手を倒すことに特化したスキルでもある。
【ミナゴロシの愉悦】も【物理プレロマ】も【タルカジャ】も効いている。
しかし。
『…主文、判決を言い渡す』
効いている風も見られぬまま、裁判長は続ける。
『……死刑』
その手に持つ木槌が振るう。
レベルの差が大き過ぎればそれこそただの通常攻撃でも即死級。
しかし避ける事は難しいほどに迫っていた。
友奈は動くことの出来ない身体と視界が迫る攻撃だけを捉えている感覚のギャップが、恐怖を強調していく。
────ああ、ここで死ぬんだ。
木槌の染みへと変わり果てる未来が容易に想像された。
「………たすけ…」
一筋、涙が頬を伝って流れる。
様々な感情が押し寄せて弾けて消えゆきながら、少女は人生の終わりのその瞬間を感じ続ける。
一秒、木槌が眼前に(一つの影が目の前に現れる)
「……九頭…」
二秒、衝撃が走る(木槌から亀裂が走り、割れる)
「…右竜…」
三秒、けたたましい音が遅れでやって来る。
「…徹陣!!」
『…!!!?』
その一撃は主の手にしていた木槌を破壊し、巨大な腕をひしゃげさせ、グシャグシャに潰していく。
【九頭:右竜徹陣】
その効果は【敵単体に対して打撃相性の物理属性攻撃 連動効果として防御力を一段階下げる】というもの。
蝦夷の地より伝わる【九頭竜】は魔なる物へ対抗するために深海の竜が教えたと言われている妖拳法。
対仙人用仙術、
其れは"気"。
八卦掌や形意拳等と原理は同じく、体内に流れる気功、つまりはMAGの流れを操り、力とする為、マグネタイトの塊と言える悪魔も含め、シャドウやその力を有するパレスの主も例外なくダメージを負う。
『なっ…何故っ!!?』
主は驚く。
自身の属性相性からすれば
魔法攻撃は全体的に強くなっている為、安々とダメージは受けない。
だが、歴戦のサマナーであれば瞬時に気が付く。
九頭竜は"物理属性の耐性、無効、吸収、反射を貫通"する事が出来る。
『馬鹿なっ…!!そんな事が…!!』
今まで雑に倒してきた故の経験不足がパレスの主に起こっていた。
此処までダメージを負わせられ、有り得ない状況下に陥れられ、動揺が止まらない。
「…うるせぇぞ…大馬鹿野郎…!!」
主の胴体へ跳躍で迫る。
がら空きとなった腹部へ瞬時に2発の剛拳が入る。
『ごっ、がぁっ…!?』
有り得ない。
その思考が脳内を反芻させ、よろける身体がバランスを取ろうと後ろへ一歩二歩と下がる。
自身の
尋常ではない力によって半壊させられ、破れかぶれに変わりつつあった。
『…ま…まだ…だぁ…!!』
だがそれであっても、主の領域であることには変わらず、身体を再生させ、立ち上がろうと手をつきながら起き上がる。
「…頑丈だな。さて…」
ため息をつき、腰のバックパックから一つ【道返玉】を取り出しては、
『よぉーーしっ!!俺様復活!!』
棘がシナシナに変貌していた身体が水に漬けた千切り野菜のごとく復活。
飛び跳ねるように元気になった所を。
「アザゼル、【リカームドラ】」
『なして!?なしてぇぇ!?』【リカームドラ】
直ぐに自分を犠牲にしつつ、仲魔や瀕死の味方を黄泉の縁から引き上げていく。
後にもう一つ道返玉を使用し、アザゼルは二度目の復活を遂げた。
『復活!!俺等復活!!』
『これでようやく我がプルプル真拳を味わせられるぞ!』
『ふっ…待たせたな』
(相変わらず絵柄が忙しない…)
(何なんだ?一体何なんだ?)
よく分からない光景に困惑する復活したてのウリエル。
事情は知っていても近寄り難い気持ちで遠くから接するラビアン。
そんなよく分からない仲魔達に対して、宮本が述べた。
「いや、お前等はベンチね?」
『『『なしでさぁ!!?』』』
「いや、普通"万能"以外はダメージレスポンス低いのにカウンターしてくるのをどうしろと?」
『俺、万能持ってるけど?』
「そもそもMP無いから回復しろ。消費量の割に貯蔵量少ないんだよ」
『ギャフン』
割と切実な問題でもあった。
「…あっ…えっ…と…」
上昇と下降のギャップと同じく、場の状況に呑み込めない友奈はそのまま立ちつくし、目を丸くし続けている。
「…すまん。遅れた」
たった一言謝罪を述べてから友奈の頭頂部に右手を置き、わしゃわしゃと撫でる。
宮本真之介という男の在り方を示すカタチが見えると、その瞳から溢れ出さん限りの涙がたまり、決壊したかのように流し始める。
「うっ…えぇぇ……バカァ…馬鹿みやさん…。みやもとさんのバカァァ…!!」
「ごめんごめん、悪かったよホントに」
「…………ぅぅ…」
泣きじゃくる少女を優しく抱きとめる。
場所が場所ならば一発で銀色のミサンガを着けられる羽目になるだろうが、今は野暮という。
「…さて、まだ安心するのは早いな」
一頻り宥めること数分、宮本達の視線の先にパレスの主が瓦礫の中から立ち上がる。
宮本の拳撃によって砕かれた顔貌は最早真耶と一夏の顔をぐちゃぐちゃに掻き混ぜられた様におどろおどろしい姿を見せる。
『オオオッ…よくもぉ…。よくもぉ…ぉぉ…!!』
「お〜、めちゃくちゃ怒り狂ってる。大分殴ったつもりだけど随分タフだな?」
「…やはり、このパレスの核となる物が無ければ倒し切れんか…」
「だよねー。完全に泥仕合しなきゃならんのはキツい。スーパーアーマー持ちのボスを長距離でチマチマ撃ちながらってのは面倒くさい」
「一理ある」
目的達成に必要なアイテムを手に入れなければ確実に時間が食う事を宮本とウリエルが同意しあっては共に頷く。
『じゃあどうする?』
「うーん…ん?どうやら泥仕合は無くなりそうだ」
『ほぅ?』
長丁場も覚悟しつつ、状況観察に周りを見渡した際、一つ気が付いたことを目にするとその視線をアンドラスが追っていき。
『………マジか?どうしてここに?』
「ブッキング…かな?」
そんな呟きと共に。
『消えるがいいっ!【マハフレイ】「トォーーース!!」ぶべらぁっ!?』
首元へ何者かが飛び蹴りを入れ、またしても地面へと舐めさせるように伏せられた。
「…ふっ…、この世に悪は蔓延らせない…!何故ならば!!」
ビシッとポーズを決め、出てきたのは。
「この…
何処からともなく現れる様々な色合いのスポットライトが彼女を照らす。
まるでダンスを決めたら画面上の敵が踊り出して倒されるゲームみたいだと宮本は他人のふりをして目を逸らした。
「ない世さん、勝手に進行しないで下さい」
「いやいや、こういう時は先手必勝身敵必殺が有効打を与えうわっ!?」
『おのれぇぇぇええええ!!』
倒れた側で着地していた為、主が身体を起こし、その怒りを見せつける。
ない世、直斗は瓦礫の崩れる中からバランスを取りつつ走り抜き、宮本の側へと着地する。
「よっすよっす宮本さん!」
「お久しぶりですドクター」
「うんお久しぶり白鐘さん」
「ちょっとまてぇよ!私を見ろって!!」
「…人違いです」
「ナチュラルに直っちゃん呼んでたじゃないかワレェ!!」
「あだっ!?あだだっ!?竜巻旋風脚!!?」
無視されたことでない世は何処かの格闘家から教わったらしい必殺技で執拗に宮本の臀部へと蹴りを入れる。
「えっ?……何方様!?」
「さっ…さぁ?」
恐らく宮本の知り合いだとしか分からず困惑の表情でやり取りを見ていた友奈とラビアンに、顰めた顔のウリエルが重い口を開く。
「………生江ない世。名が出てから一年間で世界様々な犯罪組織が根切り撫で斬り破滅の一途を辿り、畏怖の象徴としてこう言われている…」
生唾を飲む音を鳴らし、言葉を続けた。
「【撲殺女帝〔生江ない世〕】と」
「ええぇ…」
誇張されているかも知れないが、ウリエルが嘘や冗談を言うブラックユーモア持ちとは思えず、おおよそその通りの人物なのだろう。
「………さて、久しぶりない世ちゃん」
「ええ。お願いした身ですけどあれやこれやめちゃくちゃ教え込んだ子を放逐するとはどんな鬼畜ですかな?」
「いやぁ……うん」
「ぬんっ!!」
「
的確な肝臓付近への打撃は体格差を凌駕するが、ない世のそれはフェザー級ボクサーを超える威力を誇っていた。
『おっと、ここで次回に続く』
「えっ!?」
to be continued