※この作品はR-18です。

真・女神転生〜ジャッジメントデビルサマナー〜   作:葉隠小太郎

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生きてる生きてく

 

 

「さて、2年分の色々を発散出来た」

「ハートキャッチ(物理)はキツい」

 

散々溜め込んでいたであろう負債の返済出来たことでキラキラとまばゆい笑みを浮かべるない世に、ダウン中の宮本。

 

此処まで殴られると少しばかり気の毒にも思えていたが。

 

『知ってる限り、後二桁人位は居る』

 

アンドラスからの発言により、心配する気持ちを撤回し、友奈は何れ相見えるかも知れない女性達に刺されない程度で納めてもらうよう説得することとする。

 

やはり一度反省の意味を込めて修験道でも学ぶべきではとも考えたが。

 

『ちなみにあんな性格だが、師匠から山伏顔負けの修練受けてるからな?やろうと思えば寺の住職にクラスチェンジも出来るぞ?』

「ええぇ…生臭過ぎでしょ…」

 

どうやら僧侶の資格も持っているらしい。

仕事柄其れ等にも詳しいのだろうと想定する。

 

「…痴話喧嘩は終わりかね?一応切れていた効果をかけ直していたが?」

『イェーイ!マカカジャ重ね付けしたからブチかましてやれるぞ!!』

 

ここからはこちら側のターン。

 

明らかに人数を考慮しても多勢に無勢。

たとえレベル差があろうとも、手数では有利であると見せつけられている。

 

『………其れで勝ったつもりか…!!』

「…だそうですけど?」

「確かに」

 

だが、向こうもそれなりに対策をしている。

 

耐性を貫通させるスキルを持っているのも宮本のみであり、ない世もバランスを崩せたとはいえ、そこまでダメージを与えられた訳では無い。

 

が。

 

「これが何だか分かるかな?」

『はっ?何を言って……な゛っ゛!?』

 

ない世は見せつけるように取り出し、それを開く。

 

「………ストーカーか何かかな?」

 

中身を見ながら目で追い、内容が内容故に顔を顰めて口にする。

 

手にしていたのは日記帳。

その内容を更に暴露していく。

 

「…先生が使っているペンを手に入れた。今でも蒐集品として保管中…わぁぁ…」

『き…きさ…』

「下着盗んだの?使用済みの…?」

『ぶべぇっ!?』

 

どうして日記にしてしまったのだろうか?

コレ以上、内容を読むと顔の渋さが更に皺くちゃに変わってしまいそうだと思い、日記を閉じる。

 

「……度し難い」

「うん。…レベルも下がったな」

 

アナライズ情報からは〔Lv67〕と出る。

結構な勢いで下がる理由は唯一つ。

 

「イメージダウン。集合体無意識の塊で秘密が暴露されれば其れだけ支持率(レベル)も下がる」

『そ…其れでもまだっ!!』

「他にもレベルが下がれば…」

 

宮本は答えを述べ続けながら、人差し指と中指をまっすぐに伸ばし、突き付けるように見せる。

 

「…メ(・)ッ(・)キ(・)が(・)剥(・)げ(・)る(・)っ(・)て(・)こ(・)と(・)だ(・)よ(・)」

『………はっ?』

「呪殺【150】及び火炎属性弱点【200】!!ぶち抜け」

 

瞳の中に映し出される相手も知らない自身の情報を見定め、其れを伝える。

 

「調律完了、何時でもどうぞ」

 

直斗は、己の内なる仮面(ペルソナ)の能力、【調律】でない世のペルソナを組み上げる。

 

「…ありがと、直っちゃん」

 

ない世はニヤリと笑う。

 

『燃え散らすぜ…!【マハラギオン】』

『地獄の業火だ【アギダイン】』

 

最初に動くはアンドラスとアザゼル。

共に巨大な火炎を創り出し、其れが合わさると畝りを呼び起こしていき、パレスの主の身体を包み込む。

次第に強烈な焔へと変化すれば、身の回りを焦がし、灼き払っていく。

 

『なっ…!?熱いっ!!熱い!!?』

 

今までレベル差とワラワラ湧き出す下っ端達の波状攻撃で防いできていた主には全くの未経験である其れは、【合体魔法】と呼ばれる特定の属性やスキルを合わせると発現する強力な攻撃、もしくは補助となる。

 

火炎系と火炎系を合わせた攻撃は【灼熱獄炎】と呼ぶ単体大ダメージを生み出すスキルへと変わる。

 

これにより、たとえアギ程度であろうとも、上位互換にも相当する攻撃を与えることが出来る。

 

『なっ…!?ガァッァァアア!!?』

「まだ終わらんぞ」

 

ウリエルは柄を両手で持ち、振り上げながら跳躍。

刃に焔を纏わせ、振るい、切り払う。

 

「…【火迅斬り*1】」

 

斬られた部分から焔が吹き出す。

 

痛みが増し、追い詰められていく。

 

『何故だぁ!?俺は…!裁判長で!全てを決める権利がぁぁぁ!!』

 

叫び散らす。

一部が炭化し灰に変わり果てても、その巨体は四つん這いのまま手をついて進む。

 

「そんなの、決まっているでしょ?」

 

巨人に向かうは平均よりも小さなない世。

しかしその背後には7つの頭を持つ怪物が地を鳴らし、迫りくる。

 

「君が所詮、素(・)人(・)童(・)貞(・)だ(・)っ(・)た(・)か(・)ら(・)で(・)し(・)ょ(・)?(・)」

 

一つ、日記を読んだ事で出された結論を述べ、背に映る【女帝】の力を使う。

 

「呪怨の力で眠れ…!【ムドダイン】」

『うギャァァァ嗚呼あああ!!?』

 

呪殺の力は、主の身体を蝕み、まるで空気の抜けていく風船のように縮こまりながら。

 

本(・)当(・)の(・)正(・)体(・)へ(・)と(・)戻(・)っ(・)て(・)い(・)く(・)。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

負けたくない。

 

いつも同世代には負けなかった。

 

陸上部のエース級であるクラスメイトに100m走で打ち勝ち、勉学では学年順位10番圏内を維持し続けていた。

 

それもこれも、彼女に振り向いて貰いたいから。

 

山田真耶。

 

俺にとって初恋とも言える女性。

 

姉とは同級であり、高校時代はよく家に遊びに来ていた。

しかし姐が陸自に入ってからは、自然と疎遠になり、その頃は痛々しい程、やんちゃな反抗期を迎えていた為に彼女とも会う機会を逃してもいた。

 

会えない日々が続くと、その反抗期も薄れ、徐々に彼女への異常なくらいの好奇心が芽生え、女性として意識し始める。

 

彼女が遺した物を密閉袋で保存もしていた。

これから通う高校も事前にリサーチしてある。

 

後はさり気なくアピールをして、彼女の中に想いを芽生えさせるだけ。

 

そう思っていた。

 

彼女が、学校を辞めるまでは。

 

彼女に伝えた。

だが、悲しい表情で拒否された。

 

何故?

何故?

何故?

 

答えは出ずにずっと疑問が反芻する。

カラカラと回し車を走るネズミのように。

ずっとずっと、何かを思い求めながら。

 

「………ごめんね。本当の事を言えなくて」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「……ごめんなさい。全て私のせいなんです」

 

その声は背後から聴こえる。

一同が振り向くと、其処に立っていたのは。

 

「……真耶さん?」

 

友奈が口を開く。

 

山田真耶。

 

崩れかけた空間の中でただぽつねんと立ちつくす彼女は、何処か儚い美しさを持っている。

 

「彼に、イチカ君……いいえ、"一夏"に伝えるべきだったんです」

「………そうか。そうだったのか…」

 

苦しそうに自身の思いを吐露する真耶を宮本は左眼で何かを捉え、ハッキリと理解してしまう。

 

「…確かにそれじゃ添い遂げられないな…」

 

左眼を覆いながら、ため息を吐く。

 

その意味を理解出来る筈もなく、何が原因なのか置いてけぼりをあう中で。

 

「ごめんね。本当の事を言えなくて」

「………アッ」

 

真耶は歩き出し、ボロボロの身体となった主へと向かう。

 

もう存在を維持し続けることも難しいであろうその肉体は、白い物質へと変わりつつある。

 

ウリエルは其れが何かを知っている。

 

「…塩か」

『ソドムとゴモラの塩の柱か?悪趣味だな』

 

その意味に、アンドラスが愚痴をこぼした。

 

旧約聖書に於ける悪徳の街ソドムとゴモラが天の火によって焼かれた際、逃げ延びたロトの妻が振り向いてしまったことで塩の柱となってしまった物語。

 

狂宴と堕落に満ちた都市が悲惨な末路を遂げるという戒めと、オルペウスの冥界下りや黄泉比良坂の伝承と同じく、言いつけを守らなかった事による教訓が込められている。

 

「彼らを外に連れ出した時そのひとりは言った『のがれて、自分の命を救いなさい。うしろをふりかえって見てはならない。低地にはどこにも立ち止まってはならない。山にのがれなさい。そうしなければ、あなたは滅びます』」

『隕石説とかあるって聞いたけどな?』

「だとすれば本当の意味で我らが主は見ていたのかも知れないな?」

『日本じゃこういうぜ?『お天道様が見てる』って』

「ふっ、では悪事は長続きしないというわけだな」

 

古今東西似たようなことわざが存在している。

それを知り、ウリエルは軽い息遣いで笑った。

 

一方、元天使と堕天使の会話の中で、真耶は塩になりつつある一夏の側へと付き、右手を差し伸べて頬に触れる。

 

「………もう。終わりにしましょう」

 

固まった塩がポロポロと落ちる。

 

既にどうしようもないほどに出来上がった彫刻像めいた姿に成り果てても、小さく声が発される。

それであっても、彼女は涙を見せず、震える手でそっと抱き締めながら宮本へと声を向けた。

 

「…すみません。カレンさんに謝っておいてもらえますか」

「基本的に美人の願いは応えたいが、貴方の口でちゃんと伝えて欲しいな」

「……筋的には正しいですが、ごめんなさい。其れは無理です」

「………そう…か」

 

それ以上は口が縫い付けられたの様に言うことが出来ない。

 

彼女の他愛のない願いがどれほど叶える事が不可能なのかを分かってしまったから。

 

小さく歯ぎしりが起こる。

 

どう答えれば良いのか訳の分からない解答を頭の中で走り回り、多くあるワードの中から吟味していく。

 

「………分かった。出来る限りアフターフォローはしておくよ」

「……ありがとう御座います。もう少し早く会えてたら良かった」

「其れは俺も同様です」

 

選んだ答えが正解なのかは分からない。

其れでも、自分の心を偽らない答えを出せた事は間違いない。

そう感じて伝え、少しだけ気が晴れた。

 

「……ではこれを」

 

彼女から何かを手渡される。

 

手の平に乗せられたのは、うずらよりも大きく、普通の鶏卵よりも小さな卵状の物体。

 

宮本は其れを眺め、うっすらとマグネタイトを感じた。

 

「…"【宇宙卵】"。中のMAGは空ですが、器としては未だに健在。何れ所有者による争奪戦が始まろうとします」

「……ちょい待って?いきなり厄いアイテム渡すのは卑怯…「ありがとう御座いました」…ちょっ!?」

 

色々なものを託し、全てを消え去るようにまばゆい光が大きく映し、場を埋め尽くす。

 

強烈な光を防ぐために目で覆い、見えなくなっていく。

 

 

こうして、宮本達はマンションの異変を収束させることとなった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

???

 

「……これで全てかね、白鐘君」

「はい。私が持てる知識と経験、調査能力を駆使して纏めました」

「──そうか」

 

1人の老人が簡潔に纏められた書類に目を通し、内容を把握後、掛けていた老眼鏡を外す。

 

「…ご苦労だった」

「はい、有難う御座います」

 

内容に不備が無かった事にホッと胸を撫で下ろす。

 

その姿から老人は小さく右眉を動かすも、彼女が知るよしはない。

 

「現場は"9課"が保存。悪魔に関する情報を抹消後、所轄の方へ回す。異論は無いかね?」

「はい。【悪対*2】や【悪作*3】の導入があったとしても未だに各都道府県警の悪魔対策は整えられないのが実情。多少現場で齟齬が発生しても仕方がないでしょう」

「なら宜しい。下がりたまえ」

「失礼します」

 

直斗は背を伸ばし、右手で敬礼を行ってから踵を返し、部屋から出ていく。

その一部始終を見送り、老人は背もたれへ身体を預け、一つため息を吐いた。

 

「………ふぅ」

 

目を閉じ、おおよそ数秒考え事を行い、椅子を斜め右へ傾けて目を開く。

 

「どう思う?〔バトー〕」

 

視線の先、部屋の本棚前へ向けてみるが誰かが居る様子は見られない。

しかし、空気中の小さな揺らめきが一瞬だけ見え、其処に薄く陰を作る人型が在ることが分かった。

 

「────言(・)え(・)ね(・)ぇ(・)事(・)を(・)隠(・)し(・)て(・)る(・)。其れは分かった」

「成る程。大方宮本から差止めされたのだろう」

「良いのか?詳細な報告は必要だろ?」

「構わん。個(・)別(・)の(・)判(・)断(・)で(・)最(・)善(・)を(・)選(・)択(・)す(・)る(・)資(・)格(・)は(・)あ(・)る(・)。何れはすべき時に聞くこととなるだろう」

「信用されてるな、宮本(ドクトール)は」

 

揺らぎの中から声が発され、老人へ向けられる。

 

今まで直斗に見つからぬよう息を潜めていた"ソレ"がテレビを点けた時の画面から極彩色を見せるように姿を表す。

 

「…〔部長〕。この件、随分と根が深そうだぞ?」

 

白い頭髪と後ろ髪を纏めた巨漢。

目にはあるべき場所に眼球は無く、代わりに特殊な義眼が装着されている。

 

〔バトー〕

 

そう呼ばれた全身サイボーグの大男は〔部長〕と呼ぶ老人に向けて述べる。

 

「分かっておる。場合によっては儂の"古巣"にも頼むつもりだ。犯罪の芽を摘む"我々"の役目である以上、徹底的に洗い出すぞ?」

「了解」

 

確たる意志を持って職務に従事する。

バトーの半分程度の体格しかないものの、その瞳の強さは、どの官僚にも劣らずに示している。

 

名は〔荒巻大輔〕

 

内閣総理大臣直下、公安9課のを取り纏める人物であり。

 

 

元(・)〔(・)先(・)々(・)代(・)葛(・)葉(・)ラ(・)イ(・)ド(・)ウ(・)〕(・)で(・)あ(・)る(・)。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

東京23区内 某所

 

けたたましいサイレンが鳴り続け、赤いパトランプがその存在を指し示す中、大勢の物々しいスーツの人間が建物内へと入っていく。

 

辺りは黄色のテープによって規制線が張られ、青いビニールシートで中が視認出来ぬように覆われ、関係者以外立入禁止の状態へと作り出す。

 

「お疲れ様です」

「おう」

 

青い制服の警察官が規制線テープを上げ、ビニールシートで覆われた中へと入る。

 

現場入りした刑事の男は壮年に差し掛かろうとしていた。

 

「おっ、前の現場からこっち直行ですか?〔藤田〕さん?」

「ああ、本当に嫌になるぜ〔足立〕」

 

ビニール手袋を付けながら若いやさぐれた刑事の〔足立〕へ皮肉を込めて口を開く。

 

その鋭い目つきはどの様な犯罪であろうとも、見抜かんと狙い定める意志があった。

 

「被害者(ガイシャ)は?」

「都内の商業施設で働くパートタイム労働者の女性ですね。年齢は34歳です」

「にしては随分と高いマンションに住んでいるな?」

「…所謂アレ、"カッコウ"らしいです」

「…………」

 

職業の割にと都内でも有数の高級マンション在住の被害者を訝しむと、足立から補足される。

 

カッコウ。

 

その生態から由来する不倫用語であり、冷え切った夫婦関係に割り入っては妻の名義などを知らぬ間に変え、托卵行為を行い、最低限の慰謝料を払って出ていかせる。

 

財産分与請求も恐らく不可能、子供が居る場合は尚更ということもあり、裁判でも元妻側は勝てないケースが多発している。

(方法としては離婚届にサインしないという手段がある)

 

足立からカッコウの言葉を聞き、顔の皺が一つ増えそうな渋い顔をしながらもエントランスを抜け、エレベーターを乗り、被害者の住む階へとボタンを押す。

 

数分程上り、指定の階へと到着するとエレベーターのドアが開く。

 

「お疲れ様です」

「そちらもお疲れ様だ」

 

エレベーターホールでも警備の制服警官が立っており、厳重体制の元で捜査を行っていることを示している。

 

彼等が敬礼を行うと藤田も同じく敬礼で返す。

 

何時いかなる時でも敬礼を行うことは警察官の誇りでもある。

その思いを込め、敬礼を行い、素早く踵を返す。

 

目の先直ぐに現場が見える。

 

既にビニールシートで足元は覆われ、証拠品と思われる物を纏め、分類別に分ける作業を行う鑑識の姿を確認する。

 

「米沢さん。状況は?」

「ああ、藤田警部。今回も"例"の事件ですね」

「例の…か」

 

鑑識課員を纏めるリーダーの米沢は強調した口調で藤田へ語る。

 

その意味を直ぐに理解し、頭を掻いては靴に輪ゴム付きビニール袋で覆い、現場の部屋へと入っていく。

 

部屋は広々としたキッチンと小さなバーが併設されたダイニング。

リビングには大きなソファが並んでおり、大勢の客を呼ぶ事が出来るだろうと見渡しながら考える。

 

「コッチです」

 

案内されながら、入るのは寝室と思われる部屋。

来客用に複数寝室がある辺り、妙な感覚に包まれた。

 

「………嫌だな本当に…」

「わぁ…」

 

寝室内を覗き込めば、中に一つ彫像めいた物が鎮座していた。

 

白く、所々で砂粒を固めたような形をしている様子が見られ、石や木材でないことが分かる。

 

但し、素材が何で、元が何かというのを彼等は既に知っている。

 

「またしても塩(・)化(・)現(・)象(・)というわけですな」

 

米沢がため息を吐く。

 

彫像は両手を握りしめ、跪坐の状態で床に座る体勢になっており、まるで何かへ祈りを捧げている風に感じられる。

 

「年齢は34歳女性。この部屋の主で、相当派手な生活を送っていたようですね。クローゼットには春夏秋冬其々に合わせた高級ブランド服が多数あります」

「へぇ…、詳しくなくても知ってるブランドも沢山ありますね…。コレってエルメス?」

「ええ。エルメスのバッグです」

 

部屋の主が買ったとされる様々なバッグとポーチ、その他小物類やコート、スカートといった大量の洋服の数々。

これら全て知る限りの高級ブランド物であり、おおよそ一人暮らしの女性が購入するには難しいと考えられ、殆どが交際相手からのプレゼントだと判断する。

 

「金に困ってる事は無さそう…すね」

「ええ、古美術商に売れる物ばかりです」

 

此処まで大量にと証拠物品として押収されていくのを見ては呟き、呆れの入った表情になる。

 

「こうなったら、ブランド物もどうしようもないがな」

 

膝をついてしゃがむ藤田は覗き込む。

 

「安らかな顔だな。これからこんな姿になると思ってないって顔してる」

 

彫像の表情を見た感想を淡々と述べる。

皮肉としか思えない言葉を並べながら、立ち上がり、目元をおさえて口を開く。

 

「米沢さん。これで何件目だ?」

「…"6件"…ですね。老若男女職業も居住地もバラバラ…ネット上では【塩の柱】と噂されてます」

「────【塩の柱】か…」

 

そう。

置物の様に鎮座する塩の塊は元々人(・)間(・)であったもの。

 

一体どの様になったのかその過程は判明出来ず、被害者と思われる塩の彫像がその場に残っているのみ。

 

動かされた形跡は無く、基本密室状態の中で起こっている事だけが共通しているだけ。

 

ただ増えていくだけの状況に、藤田達を含めた警察は手をこまねくのみで煮え湯を飲まされ続けている。

 

「…規定通り、"箱"に詰めて保全回収。担当所轄と連携して広域捜査指定に切り替える」

「いいんすか?これ、"マル悪"対応じゃあ?」

「人海戦術に対して人手が足らな過ぎる。一昔ならいざ知らず、【東京封鎖】以降、度重なって悪魔関連事件が出てる以上認めざる得ない」

「あぁ…確かに」

 

言われてみれば確かにと足立が納得する。

 

同様の事件が多く発生している以上、少しでも情報収集を疎かには出来ない。

 

藤田の決断は、早期解決と犯人しか知り得ない情報を会得する為の苦渋の決断とも言えた。

 

「……警部」

「どうした?」

 

現場指揮として本部へ連絡を取ろうとした藤田に対して米沢がベッドの下から何かを見つける。

 

「………ペンダント?」

 

見つけたのはステンレス製のチェーンの繋がった板状のペンダント。

ブランド物を多数持っている被害者が身に着けるには少々安っぽさが浮き出ている代物だが。

 

「この板に何か彫られてます。何のマークでしょうか?」

「……さぁ?こっちは天秤か?」

 

金属の小さな板には、縦線に左右皿状の物が吊り下がった形状のマークとその下に、下三角と長方形の四角中央に丸が描かれたマークの2つがある。

 

恐らく熱された板を柔らかい内にスタンプをして作った物。

 

道の駅やパーキングエリアのお土産屋で売られているキーホルダー的なアイテムとも思われるペンダントの出来にやはり被害者の物とは到底思えない代物であった。

 

「………一応証拠として保存」

「分かりました」

 

手にしているペンダントを密閉袋へ入れ、証拠品の箱に詰めていく。

 

「………全く、とんでもない仕事だ」

 

 

 

 

            to be continued

*1:
敵単体にクリティカル率30%の火炎属性の打撃型ダメージを大威力で与える。このスキルによるダメージは物理攻撃力に依存する。クリティカル・ミスが発生する場合がある。

*2:
悪魔対策課。警察庁直下の悪魔事件に対応する刑事捜査専門の部署。殆どの課員が異能者である

*3:
対悪魔作戦群。陸上自衛隊傘下の特殊部隊。2年前の【東京封鎖】事件の後に覚醒者が続出と共に、編成された。

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