真・女神転生〜ジャッジメントデビルサマナー〜 作:葉隠小太郎
本年もよろしくお願いします
身内の不幸があったのであけましては言えませんがとりあえず慣例に沿った形で。
其々の在り方
それぞれ人々の精神性に関わる属性であり、天秤や物差しで測るようにどちらかに傾く事で生き方が定まっていく。
ルールや決まった行動を良しとするコミュニティに居る者は基本的にLAWの側に寄る。
逆に放浪癖を持つ者や定住を好まない遊牧民的思考である者はCHAOSの側に寄る。
この思考は古今東西、老若男女問わず0と1の数量で積み重なり決まっていく。
但し、人の心は移ろいやすい物であり、時と状況で簡単に変わることも珍しくはない。
これは、LAWとCHAOSの陣営のお話。
東京都内
十字教メシア派本拠地【カテドラル】
「…由々しき事態ですなぁ…。〔イオク・クジャン〕騎士団長殿」
「は、はぁ…」
十字教が誇る巨大な建造物内の一部屋。
その居の中で一番に目立つ机と椅子を使う男が目を向ける。
男の名は〔ヴィットーリオ〕
十字教最大派閥であるメシア派の極東地区を管轄する枢機卿である。
対して、枢機卿の目線を向けられた若い青年は〔イオク・クジャン〕
メシア派に属する【テンプルナイト】の騎士団長を若くして務める騎士であり、名義のみであるが子爵位を承っている。
「団長。何故我々がこの最果ての異教蔓延る地に赴いているのか分かって居られるか?」
「当然でありますヴィットーリオ卿」
凛々しく、気高い心持ちのまま心臓の上へ右手を当てて背を伸ばし、高らかに答える。
「来たる日、聖書に語られる大洪水が世界を呑む時までに迷える子羊達を導き、1人でも多く救うことが我ら主の使徒たる使命であります!!」
「うむ。では我等がどの様にするべきか、貴殿は何をしているかな?」
「はい!」
イオクは一旦、息を胸一杯吸い込み、満面の笑みで答える。
「先ずは児童施設にて聖書の読み聞かせ、地域活動への積極的参加、地域おこし協力隊員に入隊と同時に様々な意見を下にどの様な形で貢献できるかを考え、発案をしております」
「……………」
「他にも!社会的弱者であるホームレスの炊き出しに片親家庭や困窮者への食事支援や無償教育の実施。無利子無担保の学費支援も活動目的として含まれており!徐々に我々メシア派への支持が上がっております」
「………いやっ!待てぃ!?」
枢機卿はキレた。
何故怒りを見せたのか全く理解出来ていないイオクは頭上にハテナマークを作る様な表情で傾げて疑問に思う。
「馬鹿か貴様ぁ!!何故即戦力になりつつアホな若者等を勧誘しないんだ!?そろそろ新卒や入学したての1年生を見繕う準備をする時期であろうが!!」
ヴィットーリオが刃を突き付けるように捲し立てては何も思っても居ないイオクへと物申していく。
「猊下。今や大学とて学生証を付けていない人間の出入りは制限されておりますし、かと言って大学側もカルトやその他新興組織の勧誘行為は厳しく見ているので表立って行うにはキツイです」
「ええい!阿呆そうな見た目の割には考えてやがってこんちくしょう!」
「それコンプライアンス違反に当たる言動なので今後注意を。この場では聞かなかったことにします」
「正論述べれば良いと思って言うんじゃない!!確かにそうだけどね!!」
如何に世界的に総数の多い宗教である十字教と言えども、スキャンダラスな事で即逮捕の目に遭う事も少なからず存在する。
其のことを痛く理解している枢機卿も額に血管を浮き立たせつつも頭を抱えて項垂れるしか無い。
「猊下。大学生等の若者を対象にするのではなく、警察なども把握出来ない底辺層…つまり、ホームレスや
「あれ、変に過激派になるから面倒なのだが…」
「メシア派の我々が言うのはちょっと違うような気がしますが?」
何もイオクも信者獲得の効率的な方法を考えている。
某宗教団体等の問題点である信者達からの布施という名の現金徴収は一切せず、個々の資産には手を出していない。
収入の殆どを助成金で頼らず、とある方法で稼いでいるため、必要なのは人手と信仰という生体マグネタイトの方。
完璧に信者へ変われれば後は逃さないように集合住宅等で飼い殺しがパターン化している。
尚、殆どがホームレスと犯罪行為に手を染めてアテが無い人間ばかりなので被害届や失踪届は今の所確認されていない。
「兎に角。急に上がると現場にも軋轢が生じますので今はこの状態を維持しつつ、少しずつ数字を上げていく方針で」
「………仕方がない。現場は任せよう」
「御意」
深々と頭を下げて数秒ほど維持してから背筋を伸ばし、踵を返してそのまま部屋を出ていく。
「……ふぅ…。現場指揮がまともで幸いだ」
イオクの去る姿を見ながら、頬杖をついてため息を吐く。
十字教メシア派。
現在進行系でカトリック教会と分派に分かれており、アメリカを中心とする新大陸一帯で信奉されている。
近年では文字通りの"奇跡"を目の当たりにし、カトリック側であった信者や教会関係者が鞍替え。
ローマにあるバチカンも、二分状態が続いている。
だが問題が一つ。
メシア派に該当する信者や神父及び教徒は軒並み"極端"な考え方をしており。
『異教徒は皆死すべし』
『串刺し後に野に晒せ』
『異教の施設燃やしたい』
という明らかに放火及び殺人も辞さない勢いの者達が目につく。
無論、イオクの様に物騒な考え方はあれども少なからず憲法や法律に触れる行為は厳しく律しており、その点では信頼できる部下である。
自身と同じく枢機卿の座に就く同輩が虚ろな目で頭を抱えていた姿を思い出し、尚更イオク・クジャンという部下の存在に嬉しく思う。
「さて、提案書の続きを…」
尚、提案書の内容が極LAWであることを思い出し、頭を抱えるのだった。
東京都内某所
「………ちょっとメシアンぶち殺しに行っていいかな?」
「駄目だ。休戦協定が引かれている」
「ええぇ〜!良いじゃん!別にメシアンの一人二人ブッちしたって良いじゃん」
「"我々"から提案したのを反故するのがガイアーズのやる事か?」
「……別に私が決めたことじゃない」
「生憎俺が決めたことでも無いがね」
喧騒賑やかなホールの中、ケミカルに色付くクリスタルボールが綺羅びやかに辺りを照らす。
乱痴気に踊り狂う男女にホールの中央でポールを使って回転するダンサー。
テーブルに白い粉を一直線に揃え、其れをストロー状はに丸めた
明らかに法治国家で行えば忽ち冷たい牢獄に閉じ込められるであろう違法行為のオンパレードが広がっている。
「……伯父貴に言われたろ?後"半年"待てってな」
「半年…あ〜、"クリスマス・イブ"?」
「ああ」
ソファに身体を預け、深々と口に咥えた煙草を吸う。
白のスーツを身に着けた大男とその隣に座る中性的な青少年が座る席は、この喧騒の中で唯一畏怖を醸し出している。
「12月23日23時55分をもって、
「へーーい」
限界まで吸われた煙草を灰皿に押し付けて消し、白スーツの男は立ち上がる。
「我等【八部連合阿修羅会】の構成員諸君!!今からてめぇ等の会計は全部持ってやる!!ドンドン飲んでヤリまくれや!!」
「サイコー!」「流石〔シュドナイ〕の旦那!!」「愛してるーー!!」
「イェーイ!」
「お前は自腹だ」
「ええ〜酷ーい」
「金なんて腐る程在るくせに何を言ってる」
「奢ってもらった酒ほど美味いもの無いんだけど?」
「だったら尚更貴様にやらん」
「ちぇぇ…」
シュドナイと呼ばれた大男はサングラスをかけ直し、足を店の出入口へと進める。
青年はそれについていくようにソファから飛び上がり、早足気味に歩き始めた。
「酒の代わりに別の方をご褒美にくれてやる」
店の外へと出て、スーツのポケットから一つ、メモ用紙を出し、其れを青年へと渡した。
「敵対関係の新羅組の本拠地。その住所だ…中に居るのは全員殺ってこい」
「…女は?」
「
「イェーイ!」
青年は喜ぶ。
新しい玩具をもらった子供のように。
「じゃあ、早速いいですか?」
「ああ、行って来い…〔ジャック〕」
「……アハッ♪」
青年は走り出す。
その意気揚々とした姿に呆れの顔をしつつも笑みをこぼしながら男は見続ける。
「嬉しそうで何よりだぜ…」
to be continued